外伝2『太平洋戦争編』
行間『心つなぐ愛』


――B世界と接触したフェイトは、502基地で、管野が行方不明になった真相と、『平行世界』の存在を実証するため、敢えて『A世界における、ラルの未来』を告げる。しかも、A世界のガランドと通信を繋げて。

『久しぶりだな、ラル大尉、いや、その時間軸だと少佐か』

『お久しぶりです、閣下……。休暇なのですか?私服姿など』

『ああ、ここだと、私は退役しているんでな』

『後任はミーナ中佐で?』

『いや、貴官だが?w』

『……は?』

流石のラルも、この一言には素っ頓狂な声をあげた。ガランドの後任が『自分』などというのは信じられないからだ。ミーナという懐刀がいるし、自分の先任は他にもいたからである。

『あくまで、こちらでの話だがな。ミーナ中佐はちょっと問題を起こしてな。それで、貴官を陛下に推薦した』

『しかし、なぜ自分を……い、いや、この場合はそちらでの『自分』か……、を?』

『実績と経験を買ったのだよ、少佐。ミーナ中佐は査問委員会になりかねないような『不始末』を、こちらでは起こしてな。それもあり、貴官を適任と判断した』

『分かりました。管野の保護はそちらが?』

『ああ。ちょっと待っていろ。ルーデルを呼んでくる』

『は?ルーデル大佐が?待って下さい、扶桑で保護されたのなら、何故、大佐が扶桑に?』

『任務だよ、少佐』

『た、大佐殿!?』

ルーデルが通信に出る。見かけが若々しく、自分が新兵時代に見かけた時と変化がないのもあり、ラルの度肝を抜いた。

『閣下の言われた通り、管野少尉はこちらで身柄を預からせてもらっている。こちらでは人手不足なのでな、こき使っている』

『人手不足?そちらでは何年の何月何日なのですか?』

『1948年の初夏だ。そちらとは『時間のズレ』があるようだな』

『1948年!?待って下さい。48年であれば、私にしろ、ロスマンにしろ、あがりを迎えているはずでは!?』

『こちらでは、『あがり』がどうの言っていられない時代を迎えているのでね。今から詳細を説明する。貴官はSFを読んだ経験はあるか?』

『はぁ。多少は』

『では説明しよう』

ルーデルの口から説明がなされる。A世界とB世界は『ウィッチ世界』という基盤の上に成立している『平行世界』の一つであり、普段はよほどの事がない限りは互いの存在を知ることはない。だが、ある『神』のような『存在』(ゴルゴム創世王)の策謀で、その境界線が不安定化し、管野はそれに巻き込まれて、世界を飛び越えたと。

『それでは、我々はその邪神の思惑で、混乱させられたと?』

『そうだ。そもそも、そちらで起こった出来事の一部は存在しない。管野少尉の扱いには難儀したよ』

『存在しないとは?』

『辿った歴史が根本的に異なる。こちらでは502はめぼしい戦果を上げる前に、501へ統合されている』

『な!?何故ですか!?』

『それもまたややこしくてな……簡単に説明する』

――A世界においては、巣を潰す事に成功した502だが、ティターンズの登場により、侵攻部隊の502はその存在意義を失った事、ティターンズの破竹の快進撃で501と統合するという案が通った事が説明された。そして、その後は中途より、501の一員という形で、ロマーニャ解放戦を戦った事。自分は一中隊長という形で、ミーナの配下となった事も。ラルは複雑な気持ちだった。また、その説明には、ZZガンダムとF91の戦闘中の映像が使用されたのもあり、ラルは納得した。

『敵の敵が味方になって、条件付きながら上がり問題が解決するも、別の問題で人員不足、とままならない訳だ。何せ、普仏戦争以来の人同士の戦争なのでな』

『それでは、人手不足というのは……?』

『そうだ。対人戦を拒否する者が多くてな。私達のような者たちが前線に立たざるを得ないのだ』

ラルはその意味を悟った。あがり問題の条件付きの解決はなされても、対人戦に立つことを拒否するウィッチは古参〜新人を問わず、大勢いるのだ。それ故、ルーデルのような『本来ならば引退して久しい世代』のエクスウィッチを呼び戻しているのだと。

『やはり……。私はその事を懸念していました……』

『仕方のない事だ。怪異の殲滅は害獣退治のような感覚だが、人との戦争は『血みどろの殺し合い』だ。それに不満を覚えるウィッチは大勢いた』

――例えば、旧・506のB部隊のマリアン・E・カールはティターンズとの戦争への従軍を当初は拒み、『ウィッチの力は、人を殺すためにあるんじゃない!』と、殆ど駄々をこねるかのような行動を見せていた。当然ながら、その行動は黒田からは思い切り引かれ、ハインリーケの激昂と侮蔑すら買った

『戦うことが罪なら……、あたしが背負います!!』

黒田はマリアンからの問いかけに、そう答えた。黒田は歴史改変の影響により、明確に『戦う事の意味』を見出していた。それ故、罵倒に近いマリアンの問いかけに対する回答と言わんばかりに戦った。その事がマリアンにとっての負い目となっている。


『506の黒田中尉は『戦うことが罪なら……あたしが背負います!』と言った。その言葉に身につまされるウィッチは多かった。彼女のように、戦う意義を見出す者はごく少数だがな』

『戦うことが罪なら……か。確かに、今のウィッチにとっては、戦争の道具になる事に嫌悪感を持つ者が多数派ですね。それが問題に?』

『そうだ。ハルトマンも、バルクホルンも、マルセイユも、戦う事の意義を見出し、戦っている。今は三名共に私の配下だがな』

『分かりました。そちらの情勢的に管野の帰還は無理そうですね』

『むしろ、こちらが猫の手も借りたいくらいなのでな。当面は返せん。その代わりに、フェイトを連絡要員として残す。連絡の確立と同時に、物資輸送も行おう。何なら、こちらで実用化された『ジェットストライカー』を送ってもいい』

『Me262ですか?あれはちょっと……』

『馬鹿者。あんな初期型ではない。もっと進んだ構造を持つ次世代型だ』

64Fは合成鉱山の素により、F-15Jストライカーを大量に調達している。その余っている分を回そうかと提案したのだ。正解に言えば、リバースエンジニアリングによる増産機だ。新撰組の分は確保したが、維新隊・天誅組などの分は確保できなかったので、23世紀と時空管理局の協力でリバースエンジニアリングを行い、生産を行っている。ルーデルはその内の何割かを回せるだけの権限を持つのだ。

『おーい、ガーデルマン。写真もってこい、写真!』

『只今〜!』

『ん?アーデルハイド少尉ではないので?』

『奴は別の隊に転属してな。何人か変わったんだが、ガーデルマンはその中でも最高の相棒だ』

ルーデルの相棒は、アーデルハイド少尉、ティターンズとの戦いで非業の死を遂げたヘンシェル兵長、そのまた後任の凡人『ロースマン』を経て、ガーデルマンとなった。ガーデルマンは元々、ルーデルと知り合いであり、ロースマンが精神的について行けなくなり、リタイアしたのを期に、ルーデルのバディとして着任した。治癒魔法持ちのウィッチだったのもあり、アーデルハイド以上に相性が良く、45年以後の僚機を担っている俊英だ。

『どうも、ラル少佐。ガーデルマン少佐であります』

顔を見せたガーデルマンは、初代相棒のアーデルハイドに似た顔立ちをしていた。だが、部隊最年少とされたアーデルハイドよりも年上で、ルーデルと同年代である事が窺えた。

『貴官が大佐の45年以降の僚機のウィッチか』

『小官の本職は医療ウィッチなのですが、促成でなったところで着任したのです。大佐の出撃は常軌を逸してまして、苦労させられてます』

『常軌を逸した?』

『ある時なんて、肋骨が4本折れてるのに、『休んでいる暇はないぞガーデルマン、出撃だ!!』とか言って、連行されました。あと、流石に負傷した時なんて、『しかしこの友邦の危機に、巨人共をしばらく撃破出来ないのが悔しい』とボヤきまして』

『……なんと言おうか……』

ガーデルマンという相棒を得た後のルーデルはますます冴え渡り、ティターンズも多額の賞金をかけて、アレクセイが演説で『我が最大の怨敵』とさえ名指しするレベルの強さを見せた。また、『氷の微笑』と言われるほどクールなアーデルハイドと違い、ガーデルマンの性格は明るめであり、その事もルーデルの精神的負担の軽減になっていた。

『しかし……ガーデルマン少佐、君はアーデルハイド少尉によく似ているよ。違うのは、目つきと瞳の色くらいだな』

『よく言われますよ』

アーデルハイドはクールであったが、ガーデルマンは温和であるが、人を煽るのが上手い性格である。その事もあり、ルーデルの戦果がますますアップした功労者である。アーデルハイドの面影を持ち、なおかつ彼女ではできなかった『精神的ケア』も心得ていたため、軍部も『ガーデルマンはルーデル専属な!』という通達を発している。因みに、芳佳の医学校留学が扶桑軍の都合でポシャった後、その埋め合わせをバルクホルンが迫った際に、バルクホルンが頭を下げてまで、宮藤家に家庭教師として送り込んだのが彼女である事から、相当な医学知識を持っているのが分かる。

『少佐、これが新型のジェットの写真です』

『うん?噴射口が先端に無い?』

『ええ。これは正確に言うと、第4世代なので、機動性の確保のために噴射口が移動したんですよ』

『だ、第4世代だと!?』

『未来から持ってきたものなので。オーバーテクノロジーとでも言いましょうか。背部に武器ユニットを装備してまして、任意に組み合わせを変えられます』

F91のヴェスバーに影響をかなり受けたレイアウトの武器ユニット、ISに影響を受けたエ噴射口を先端に置かないレイアウトなど、かなり従来のジェットの延長線上の設計には位置していないのが分かる。

『例えれば、これは扶桑の接近戦重視のウィッチの武器装備ですが………』

武子や黒江は、機動性の確保のため、背部武器ユニットにはIS用のビームライフルを入れている。単純なウェポンラックとしても、かなり容量があるため、スリーレイブンズはZ系のデザインのロングライフルと刀か剣、あるいは斧を常備している。

『ふむ……、良いな。何機確保できる?』

『少佐の望むだけの数をいつでも。友邦の艦隊に運ばせましょう』

『頼む』

――交渉は成立した。B世界には、連邦軍の一個宇宙艦隊(水雷戦隊)が派遣され、フェイトはその連絡要員として、B世界に滞在することが決められた。こうして、当時は解散していたB世界の501に先行する形で、502(B)はジェットストライカーへ一気に機種変更を行う事になる。F-15は使用者の魔力が少なくとも、それを補助する『魔力増幅器』を積んでおり、雁渕ひかりのような者でも起動が容易であるのもプラスであった。A世界のベトナム戦争以後に現れるはずのテクノロジーを、ルーデル達は、1944年末〜45年のB世界に持ち込んだのだ。ティターンズが百鬼帝国、ミケーネ帝国、ベガ星連合軍とも手を組んだ事に対抗するべく、扶桑軍も23世紀の超兵器や、21世紀水準の兵器をどしどし輸入していくように、B世界にもその考えを持ち込む。ラルは自隊の戦力アップのため、A世界と公的に手を組む。正式な協定締結の際には、空軍総監となった別の自分自身とも出会い、会話を交わしたという――




――その事がルーデルから、ラルAに報告されると、ラルは苦笑いを浮かべた。だが、別の自分の存在も知れたため、複雑な心境であった。が、ミケーネ帝国の量産型グレートマジンガーや量産型ゲッタードラゴンが戦場に現れ始めると、いくらなんでも、ウィッチ達では対応が難しかった。それに対抗できる仮面ライダーが来訪する。『仮面ライダーJ=瀬川耕司』である。彼はRXの後輩の一人であり、俗に言う『ネオライダー』に分類される。恐竜戦隊ジュウレンジャーのティラノレンジャー=ゲキと瓜二つの容貌を持っており、間違えられた事も多い。(ただし、改造時の年齢は光太郎より上だったので、外見上はネオライダーらのほうが上である)

「あれは仮面ライダー!?」

「仮面ライダーJ、彼も来ていたのか?!」

ラルAはロスマンと出撃していたところ、南洋島の人々の願いで巨大化した仮面ライダーJと鉢合わせた。Jは量産型ゲッタードラゴンとグレートマジンガーと対等に渡り合い、パンチと蹴りなどの徒手空拳の格闘で、まるで巨大ヒーローさながらの戦闘を繰り広げる。しかも市街地で。

『君たちは俺の後ろに下がっているんだ!巻き込まれたら、命の保証はできないぞ!』

『わ、わかりました!』

Jはジャンボフォーメーション化した場合、スーパーロボットの装甲も破壊できるほどのパワーを持つ。そのため、ゲッタードラゴンの『死骸』が市街地でその破壊された姿を晒していたり、外装を破損し、行動不能になった量産型グレートマジンガーが何体も屍を晒している。グレートは25mほどなので、ほぼウルト○マンサイズの仮面ライダーJとは、そのサイズの違いもあり、武器を使う前に壊される形で撃破されていく。Jの強さは、グレートとドラゴンのそれぞれ40体ほどの軍団を相手に一歩も引かないほどの圧倒的なもので、ラルは何かを思いついたのか、怯えるような動作を見せた量産型グレートの指揮官機と思しき、スクランブルダッシュ装備機のAIを叩き壊すべく、まずはスクランブルダッシュの基部に強いショックを与えて、機能停止に追い込んで墜落させる。

「ど、どうするんですか、閣下!」

『決まってるだろう。こいつを乗っ取るのさ。ロスマンはゲッタードラゴンを乗っ取れ!』

『え、ええぇ!?』

ラルAの思いつきに渋々ながら同意したロスマンは、ゲッタードラゴンの一機のコックピットに侵入、制御を有人に切り替え、Jの援護に回る。

『なるほど、これがゲッターロボG……。パワーは中々ね。加東大佐が惚れるはずだわ』

『大丈夫か?』

『音声入力で武器が使えるみたいなので、なんとか』

Jにそう返し、ロスマンはラルの思いつきで、ゲッタードラゴンを操縦する羽目になった。元々、虚弱体質により、一度はウィッチの採用を撥ねられた彼女だが、増幅炉のゲッター線で生命力が活性化されたか、これまでにない活力に満ち溢れていた。その影響により、普段は冷静な彼女も『ニヤリ』と不敵な笑みを浮かべ、ドラゴンを操縦する。それをカバーしつつ、仮面ライダーJは怪獣大戦争とも言うべき戦闘を繰り広げる。パンチ一つで量産型ゲッタードラゴンを大きく吹き飛ばし、ライガーのドリルを掴んで止め、ぶん投げる。

『トウ!!』

Jは機動兵器の戦闘に不慣れな二人のカバーをしつつ、仮面ライダー史上唯一無二の『巨大化能力』(最も、人々の祈りが集約した上で、精霊が力を与えなけれなければなれないので、完全な自己の能力ではない)を駆使した大がかりな戦闘を行う。まさか、ラルBは、別の自分が量産型グレートマジンガーを駆って戦っているなど、想像もつかないだろう。

『勇者を悪魔にされた礼をしてやる!……サンダーブレーク!!』

ラルの熱い叫びと共に、サンダーブレイクの雷が市街地を走る。その際の叫びは、ダウナー系である彼女のキャラに相応しくないほどの熱いモノで、どことなくであるが、御坂美琴を思わせた。武器が雷であるのもあり、美琴を知る者なら、『彼女』を連想しただろう。

『(恥ずかしいわね、これ!!)ゲッタァァァビィィィム!!』

ロスマンも日頃のストレスを溜め込んでいたのが、中々のシャウトを見せる。内心で羞耻心と戦っているらしいが、それでもスカッとするらしい。

『やれやれ。南洋島について最初の戦闘がグレートマジンガーを動かしての戦闘とはな。おっと、マジンガーブレード!』

グレートマジンガーのスペックはロマーニャで把握していたため、澱み無く全武器の名を叫べる。また、ラルは生え抜きのカールスラントの軍人らしく、戦中志願のミーナと違い、戦前の最後の時期に志願したため、それなりの戦闘訓練を受けていた事、圭子と面識があった事により、リウィッチ化後は怪我を繰り返さないためにも、対人戦闘訓練に性を出した事もあり、剣術にもある程度通じた。マジンガーブレードを扱ってみせ、自らの倍の体躯がある量産型ゲッタードラゴンと渡り合う。

『ブレストバーン!!』

流れるような連続攻撃を見せるラルA。元々が見越し射撃の達人であったため、ブレストバーンの照射範囲が見かけより広い事に気づき、ブレストバーンを照射する。量産型グレートマジンガーは、『元祖』よりも兵器としては『洗練されている』ため、ブレストバーンで数機を溶解させる芸当も見せる。

『ふぅ。飛行ゴーグルが役に立ったな』

ラルAはグレートマジンガーへ乗るにあたり、飛行機乗りがこの時代によくしていたゴーグルで『応急的な目の保護』をしていた。それによりスムーズな戦闘を可能にした。ラルは意外と、射撃方面の才能をグレートマジンガーでも活かし、鉄也にも劣らない戦闘センスを見せつける。





――それを聞きつけた圭子は、自身のドラゴン改を駆り、連絡があった市街地へ急行する。この戦闘が、ティターンズが『AI制御のスーパーロボット』を兵器として投入した初の戦闘であり、地下勢力とすら手を組む節操の無さを、連邦軍に知らしめた戦闘となった。また、仮面ライダー達の集結を示す事例ともなり、扶桑皇国当局はその説明に追われる事になる。仮面ライダーJという、13番目の改造戦士の登場は、扶桑にちょっとしたパニックをもたらすのだった。――



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