外伝2『太平洋戦争編』
九十五話『日本連邦軍の初陣2』


――日本連邦軍は設立時の段階でもトラブルを多く抱えていた。日本の沖縄出身者達が、沖縄を管轄下に入れている第十方面軍の幕僚達を鬼の首を取ったように無能、沖縄を見捨てる無能と書き立てられ、結局、全員が交代せざるを得なくなる事態も起こっていた。日本が手を焼いている事態は、関東軍/第十方面軍の幕僚達、元大本営参謀、近衛師団青年将校たちへの誹謗中傷で、日本の左派メディアの書きかたも『人格否定級』で、日本政府も問題視した。いくらなんでも無意味な行為だからで、連合軍将校にも同じことしているのに懲りないのだ――

――2018年の晩夏に差し掛かる8月 首相官邸――

「この談話を載せるように、アメリカ等への手配は済んでいますかね?」

「はっ。世界各地にこの談話を載せるように極秘裏に要請しております。沖縄戦を戦った軍人たちは勇猛果敢だった。その証明をしてみせます」

「すみませんな、アメリカ海兵隊司令の貴方にこのようなお願いを」

「私の祖父は沖縄戦を戦っております。亡くなる前に、よく日本人の勇猛果敢さを讃えておりました。私の祖父の名誉にも関わる事ですが、この国は敗者に冷酷すぎる。仮にも今生きている老人たちの父祖でしょうに」

「我が国には『勝てば官軍負ければ賊軍』という言葉がいつからか存在しています。かつての帝国陸海軍は敗者になった故に、警察官僚達にも見下され、一般人には戦犯と石を投げられた時代さえありました。今の自衛隊もそうです。一部の輩は自衛隊が帝国陸海軍の末裔であることを認めようとしない」

「自衛隊は我が国が命じて作らせた、戦後の日本軍でありますよ、実際は。結成時に警察官僚を転籍させたことは理解しかねますがね」」


「陸自は元々、機動隊の補完的組織だったのが軍隊になるのを察して、旧陸軍の参謀たちの大半を排除してできた組織です。実働隊員達は旧軍経験者を入れましたが、その時の警察官僚達や内務官僚は『旧軍参謀たちはプロとして負けたのだ。田舎で農業でもして隠居しておれば良い』と述べたら、組織が機能しなかったという話も伝えられています」

「やれやれ。父も言っていましたが、生え抜き軍人出身でない者が不相応に高いポストに収まっていたりするのはそれが原因ですね」

「警察官僚達は『自分達が治安維持の担い手である』とする奢りと言いましょうか、自負と言いましょうか…。そんな誇りがあるのです。警察内部の者達には国防に興味がなく、流行病とさえ宣う者もいます。表に出すと突かれるので言わないだけですがね」

現実問題、2018年にはロシアの学園都市への無残な敗北で大国の地位が揺らぎ、その代わりの大国を虎視眈々と狙うのが中国だった。日本連邦には表向きは不干渉を決め込んでいるが、裏ではウィッチ世界の台湾を掠め取ろうとしていた。しかし、同世界の台湾は扶桑では明国の統治が消滅したため、原住民などが近隣でもっとも強大な国である扶桑にすがった経緯があるが、自治領に位置づけられている。中華系も経緯上、多くが逃れており、台湾にいる富裕層の半分は明国の敏腕商人なり、有能な軍人の末裔らである。暗躍する中国の失敗は中華帝国が『明国で絶えた』というターニングポイントを調べていなかった盲点にある。

「我が国の仮想敵国は中国になりましたが、経済的利益が損なわれるから、戦争は起きないと財界は高をくくっております」

「馬鹿な、そちらの財界はWWWTが起きた理由を知らんのですか」

「第一次世界大戦が起きた理由は概ね、サラエボ事件だと思っていますよ。しかし、それだけであの凄惨な大戦が起きる要因にはなり得ない。英国とドイツも経済的には強い結びつきがあったのにも関わずも開戦した。連中は金には詳しくても国家外交を知らんのですよ」

安倍シンゾーはいずれ、日中が激突する日が来るのを予期していた。中国は文化大革命の痛手から立ち直り、前近代の頃の中華帝国の夢を追いかけているが、急速な発展の歪みが日本以上に速く顕現し、共産党でなければ、経済はとっくにバブルが弾けている。彼らはソ連共産党の崩壊で何かを学び、2018年までその命脈を保っている。彼らは扶桑による軍事的制裁を受けた韓国があっさりと倒れた事を受け、『軍備が整うまで敵対行動は慎む』という賢明な選択を取っている。韓国は稼働率はともかくも、旧西側の先進国水準の装備は有していたはずで、それが短期間で無力化されたことで、中国は策を変えた。特に、扶桑が繰り出したマンモス級の戦艦は米海軍さえも驚きの代物である。ぱっと見ると、アイオワの更に倍はあろうかという巨艦(三笠の廉価版たる播磨でも有に350m以上あり、アイオワが重巡洋艦にしか見えないほどの視覚効果をもたらしてくれる)で、しかも大和の46cm砲よりも二回りも大きい主砲を三連装五基も積んでいる。その威力は韓国軍のいかなる船をも一撃で海の藻屑にするに足りるものである。味方側のアメリカ軍でさえ、抑止力の観点から、『アイオワの現役復帰が無理なら、モンタナを作り直す』との判断を下すほどだった。日本経由で、大和の後継艦と通達されていた米国側も『播磨』の存在を『スーパーモンスター』と呼び、部内で恐れている。扶桑が日本連邦結成後に公表した公称スペック(ショックカノンなどの重要なスペックは秘匿している)各国の艦艇研究者をして『自分の頭がおかしくなったかと思うスペックである』と混乱させるほどのものであった。


――扶桑が『公表した』スペックは秘匿技術のショックカノンなどの要素を省いたものだが、それでも異様なほどの大型化と言える。前型の大和型が完成時に263mであるのに対し、それより90m以上も全長が大きくなっているし、幅も51cm砲の反動に耐えるためか、相応に拡大されている。砲熕武装以外は現用艦水準であり、砲の駆動方式も電動式である(宇宙戦艦の方式なので)。『長門級以前の日本式と米国式の混合と言えるが、装甲が多重空間装甲構造になっており、規格統一のために大和の姿を取っているが、大和型とは別物に変貌している』と評されている。速度も30ノット超えであり、まさに大和型とも比較にならない超戦艦だ。自衛隊は当初、一部は『張り子の虎』と馬鹿にしたが、戦艦の防御力と火力が遺憾なく発揮されたダイ・アナザー・デイ作戦で考えを一変させている。要は潜水部隊と航空部隊が近代兵器で決定打になり得ず、更に第二次世界大戦型の大型水上艦艇がウヨウヨいる戦場では、艦隊戦を前提にはしていない現用艦は生存力が落ちる事になる。自衛隊は戦時中の戦訓で被弾時の抵抗力が高いが、それをも上回る速さで弾が降り注ぐと、対応は不可能だ。扶桑が製造した、自衛隊の護衛艦のコピー品が建造中で装甲を施された理由は、当たれば粉砕されそうな質量の砲弾がドカドカ降り注ぐ海戦を生還するためでもある。(実際は防空と対潜哨戒、それと昔で言うところの大弓の射手的な役目であったので、コピー品はもちろん、自衛隊が厚意で派遣していた、とあるイージス護衛艦は無事に生還している)ミサイルはそれを迎撃可能な能力を備えたり、耐えられる装甲を有する戦艦が多くいると、一発や二発では迎撃されたり、装甲でダメージが通らないこともあるため、扶桑はミサイルを前近代での大弓に例えて使用し、戦艦の登場への露払いに用いた。その際にヘリなどからの観測を併用し、その護衛艦は本来なら見られない『古典的海戦』を目の当たりにした。そのレポートは海自側に重巡洋艦や戦艦の運用能力を与えるに充分なほどの映像資料だった。また、実戦での能力が判明したのが旧軍提督達の評価見直しにも繋がった。特に理論倒れと揶揄されてもいた小沢治三郎の再評価は凄いモノで、仕えていた参謀が『然るべき兵力さえ伴えば、小沢は名将足り得る』と評価していた通りの男であり、超大和型で東郷ターンをやらかす豪胆さは史実にはない豪胆さとして高く評価された。また、山口多聞も機動部隊司令としての冷静さと猛将ぶりを兼備している事が確定し、秘書が飛龍であるのも、自衛官を大喜びさせた。(小沢は瑞鶴であるし、空軍に移籍した井上は比叡である)播磨は数多の世界での敗者としての日本海軍の世界を超えた執念がウィッチ世界で作用して生み出した怪物と言える――


「談話を載せるのと同時に、この戦艦の特集を組んでくれたまえ」

「これは韓国への制裁で初陣を飾った……スーパーヤマトタイプですか?」

「超大和型戦艦です。我々の国のマスコミ連中はとかく、この種の大型艦は『金食い虫』と邪険に扱う。前の政権が大和以外を解体したいと防衛省に打診していたのも、そのためです。その点、大和を沈めた貴方方が高く評価すれば、左派連中も黙る」

「やれやれ。日本のマスコミの無知ぶりには参りますな、総理」

安倍シンゾーは扶桑が戦艦を維持する理由を知っており、そのための大義名分をアメリカ軍の弁護で得ろうとしていた。戦艦は然るべき改修さえ施せば、21世紀どころかそれ以降でも存在し続ける。かの宇宙戦艦ヤマトが23世紀初頭時点で『地球の精神的支柱』になっている事実もあるのだから。

「しかし、かの『ヤマト』が200年後には地球のシンボルになっていると公表すれば収まるはずですが?」

「そうもいかないのです。ラ號はどうにか国連の接収から逃れたものの、扶桑は大和以前の戦艦もまだ多くが残っている。こちらでは空母として知られる加賀、そして土佐。こちらでは完成すらしていない紀伊型。前の政権はそれらをスクラップにしろと宣い、先方に釘を差されている」

革新政権が扶桑の軍備で嫌ったのは、金食い虫と評価している大型水上戦闘艦で、中でも時代遅れと考えている戦艦の類だった。大和型でさえ、客寄せパンダとして『大和』を残して解体すればいいと提言した事もあるほどなので、大和よりも古い艦型の戦艦は日本の革新政権を連合軍が制止しなければ、全解体すらあり得た。野党に下っていた時の現政権与党は海自に極秘裏に根回しをし、武蔵で自衛隊の兵力で戦艦を撃沈できるかどうかのシミュレーションとレポートを出させた。そのシミュレーションレポートの結果である『自衛隊の保有戦力で戦艦を撃破できる可能性は無いことも無いが、撃沈に到るダメージを与えることはほぼ不可能』に革新政権の防衛大臣は腰を抜かすほど驚き、何度も海上幕僚長に問う(解任もちらつかせて)などの見苦しい行動を見せたという。

「これがその時の会話の記録ですか」

「扶桑側が記録していたものだが、読みやすいはずです」

「『自由リべリオン軍のハープーンの実弾試験で大破戦艦に撃ち込んだところ、バイタルパート、砲塔、司令塔等では破壊、貫通共に不可能という結果になった』とのことです』『現在の最新兵器があのような70年前のオンボロ戦艦を壊せないとはどういう事かね!?』ですか?呆れますな」

アメリカ海兵隊総司令は戦艦の頑強性を評価しており、その事も当時の日本の革新政権が人気取り以外に何も考えていないことを実感するのに繋がった。

「私の実家にマスコミの重鎮になっている従兄弟がおります。彼に頼んで大々的に特集を組みましょう。こちらもモンタナを作り直したところですので」

こうして、日本とアメリカは戦艦の保有でお互いに思惑が一致し、スクラム戦術でマスコミを味方につけようとする。それにキングス・ユニオンも乗っかったため、最終的には日米英の三カ国で戦艦の保有肯定論を息のかかっている保守系マスコミを使ってキャンペーンを行った。戦艦の保有は核兵器に代わる新戦略の要になりえると、アメリカではリベラル派も当初から肯定し、その影響で日本の反対論がしぼみ始めていく。どのように変遷したというと、まず、日本連邦結成がもたついていて、黒江も多くの訴訟を抱えていた最後の時代である2009年から2010年までの期間は戦艦廃止論が取り上げられていた。2010年には大和の人気を利用しようとし、若干の緩和が見られるようになった。その頃に彼が見たレポートが提出され、政権の構想が破綻している事が実例で示され、アメリカ軍関係者からも鼻で笑られる事態になるが、大和以外の解体は財政との兼ね合いと称し、頑固に譲らなかった。黒江が訴訟を終え、ようやく彼女ら扶桑出身者への冷遇も落ち着いた12年頃に政権が現政権に移行した事で風向きが大きく変わり、その前年からの学園都市とロシアの戦争や大地震でマスコミへの視線が一気に厳しくなったのが追い風になった。また、大和型は国民に高い人気があり、自衛隊から見ても高度なFARMが施されていた事が明らかにされ、元々、扶桑が大和型ファミリーで戦艦を更新する途中であった事も公表された事がトドメとなり、現在ではガチガチの左派以外はこの論調は鳴りを潜めた。だが、依然として財務官僚には大和と武蔵以外は予備役でいいだろう!とする論調があるのも事実である。これは扶桑の立場に無思慮という他ない。

「財務官僚達の上の年代は特に、戦前のシンボル的な戦艦をどうにかしてスクラップにしたがるのも事実だ。それには、貴方方の力が必要なのです。国際社会からの視線と言う名の」

「そちらの財務省は戦時というものがわからんらしいですな。戦前の反動というのは分かるが、戦時経済と言うのを理解していない」

「そんなものです。前の戦争の学徒兵でさえ、今では90代。平和が長く続くと、対策そのものがタブーになるのですよ。特に我が国ではね。レポートの顛末のように、自衛隊は撃沈は無理でも撃破できるとは言ってるのに撃沈に拘る当時の政府の軍事的無知と現有戦力で無理って話へ、『対策を立てて、何とかしようとする自衛隊』に、その予算も防衛大綱の改訂や予算措置を採らなかった事で、当時の政権の戦略の無さが浮き彫りになりましたが、彼らのシンパはそれでも頑固に譲らなかった」

安倍シンゾーは自分が政権を運営している5年以上の間、最初に総理になった際の前任者であるジュンイチローのアドバイスを受け、扶桑皇国との軍事的一体化を推し進めている。ようやく『日本連邦軍の固有部隊として、自衛隊を再編する』というジュンイチローの示した最終目標に手を付けているところだが、任期的に、自分にはあまり時間がない。野党の巻き返しも警戒されているため、それに『2019年』という目処が立ったのを嬉しがっている安倍シンゾー。彼は栄光の『日本連邦』を生み出した稀代の宰相として讃えられるのか。それとも扶桑の戦争に自動的に道連れにされる事を決定づけた暗愚な首相と罵られるのか。それへの解答が後の世である、23世紀の歴史書に記されていることだけは確かである…。














――扶桑皇国が詳細を明らかにしていないのが、23世紀でも最高の戦力とされるスーパーロボット達の最高位機種達である。存在は公表はしているが、真の詳細は明らかにされていない。その最たる例がマジンカイザーであった。その誕生理由は大まかには明らかにされており、扶桑のプロパガンダに使われているのは、大規模近代化改修前の黒主体のカラーリングの時の写真である。実際はマジンガーZEROの脅威への対抗として、かのグレートマジンガーに機能面でもカラーリングでも近くなる改修が既に施されていた――

――戦場――


「敵の機動兵器は?」

「今は甲児さんが抑えてるわ。モビルドールも奴さんに出回ったから、その処理をしているのよ」

「甲児に無理いって、ここに来てもらったけど、トーラスとかの始末にマジンカイザーのパワーアップ版はオーバーだぜ」

と、黒江が言った瞬間、そのマジンカイザーの攻撃でモビルドール化された『トーラス』の巡航形態が墜落して爆発する。ターボスマッシャーパンチが装甲を貫き、そこから誘爆したのだろう。

『な〜に、偶には操縦しねぇとカンが鈍るからね』

「甲児、随分と変わったよな、カイザー」

『おう。元はZEROの因果律兵器に対抗するための改造だし、その一環でゲッター炉を積み込んだからな。前より強くなったぜ』

甲児はここでマジンカイザーの姿がグレートマジンガーに近い精悍な(以前は筋肉隆々のマッシブなシルエットだった)姿になった事に触れる。改造でゲッター炉を積み込んだのも明確にされた。

「どうやって積んだんです?」

『ああ。陽子炉の製造技術の応用でメインエンジンの小型化に成功してね。その補助に、元は早乙女博士が遺した新型ゲッター炉の試作品を載せたんだ。そうしたらゲッター炉と光子力反応炉が相互に作用して、ゴッドと同等の存在、つまりは因果律兵器の効力外の存在へ進化したんだ。あれは純粋な『マジンガー』の派生存在、グレートマジンガーのような。それにだけ作用できる兵器に過ぎないしね』


甲児も弓博士も兜剣造もこの思わぬ嬉しい効果により、ライオネル博士の理論が正しいことを実感。改造後のマジンカイザーバージョンU、あるいはどこかの平行世界ではその姿で生を受けた事から、『マジンカイザー・オリジン』とも呼ばれている。(甲児達は今まで通り、『カイザー』と呼んでいる)因果律兵器の説明を芳佳にしつつ、甲児は更なる攻撃を見せる。改修後に加えられた武装であり、トールハンマーブレーカーよりも一回エネルギー消費が少なく、より効率的な同種の武装。『ゴッドサンダー』だ。

『ゴッドサンダー!』

ゴッドと同じ武器である。マジンカイザーが行うと、胸のZの紋章が光り、瞳に黒目が入るという、マジンエンペラー同様の現象が起こる。ゲッターの力が加わった事を明確に示す姿だ。マジンカイザーを追ってきたモビルドール部隊はこれで電子回路が瞬時に焼かれ、黒煙を上げながら、錐揉み状態で墜落したり、空中で大爆発を起こす。

「ヒュー♪ご機嫌じゃねーか」

『ああ。これでカイザーも『黒鉄の神《ゴッドマジンガー》』に並び立てるようになった。モビルドールなんざいくら来ても屁の河童だぜ』

甲児もご機嫌で黒江に答える。トーラスは射撃戦前提の機体であり、ガンダニュウム合金に打撃は与えられても、進化した超合金ニューZαにトーラスカノンが当たっても、傷もつかないし、逆に腕を突き出すだけで、物理的にビームやレーザーを跳ね返される。

『今度は有人機のハイザックのドダイつきかよ。へっ、お見舞いするのはこいつだ!!ファイヤーブラスタ――ッ!!』

以前と違い、動力にゲッターエネルギーが混じったおかげか、超高熱のエネルギーが渦を巻き、相手を自分で追いかけて命中するというホーミングレーザーじみた芸当を見せるファイヤーブラスター。しかもそれが広範囲と来ているので、ハイザック部隊は咄嗟に回避行動を取った機体以外は一瞬で熔解し、消滅した。黒江も、芳佳も、武子もこの光景には圧倒される。

「すげえ!まさに無敵じゃねーか〜!」

「ひぇ〜、おっそろしい。味方で良かったぁ。ティターンズには何よりの脅しになるね」

「これが改造されたマジンカイザー……。見てみたいわ。鋼鉄の神々の行末を!」

武子はマジンガーの系譜の進化の道への探究心、黒江はその威力に単純に大喜び、芳佳が敵への示威に使えると、今後のための考えを巡らす。三者三様の反応だが、本来のポジションとは全く異なる反応でもある。黒江が一番に子供っぽい反応であるのも、Gウィッチとしての立ち位置の証明でもある。黒江が最も純真な反応であるのは、黒江がB世界で辿っているような、本来担うはずの『大人』としての立ち位置とポジションをその代わりに、『角谷杏』としての要素を持つようになった芳佳が担い始めた表れであり、黒江が外見通りの少女らしさを強く持つようになっている事の証明のようなものだった。戦闘では『狂奔』の阿修羅の要素を強く持つ薩摩武士の子孫らしさを持つ一方、強く憧れていたり、自分が頼っている対象の前では、外見相応の可愛い反応を見せるのが当たり前。甲児も今回はそれを受けて『年下』の扱いをしており、前史とは、明確に異なる接し方をしている。これは甲児のみならず、剣鉄也、デューク・フリード、流竜馬、葵豹馬、剛健一、竜崎一矢、藤原忍なども同様である。ガイちゃんに『あーや』呼びを許すのも同じで、一番に深層心理の中で、10代の頃の純真な精神状態に戻りたがっていたのが黒江であることも精神カウンセリングの過程で判明したため、相対的にだが、智子が保護者的な側面を持つようになった。圭子もレヴィとしての粗野さを押し出す一方で、以前の保護者的な側面も残っていることを示し始めており、相対的に智子と武子のコンビが『大人』として振る舞う機会が増え、そこに芳佳も加わるため、三人は『保護者』としての苦労を共有し始めるのだった。



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