外伝その307『死闘、ショッカーライダー戦3』


――戦闘を開始したキュアジェラート。そのフォローに入るキュアルージュ。なんとも豪華であった――



「しょうがないわね、あたしもフォローに入るわ!ストロンガーさんはあれを!」

「よし、チャージアーップ!」

その瞬間、ストロンガーの体内にある超電子ダイナモが起動し、黒江のアーク放電の更に100倍の威力のエネルギーをストロンガーに与える。ストロンガーと一号の間で、『本郷さん、コイツら試して良いか?』 『判ったフォローする!』というやり取りが交わされており、ジェラートの攻撃でダメージが大して入らないのを想定して、一号とストロンガーがフォローに入る態勢である。ルージュは戦闘に入るにあたり、ドリームと同じ領域のパワーアップをしており、ジェラートとはスペックで差が生じている。

「キラキラキラル!ジェラートシェイク!」

ジェラートはアイテム『キャンディロッド』で氷塊を作り、それをパンチで砕いて、礫を浴びせる。しかし、ショッカーライダーには通用しない。

「なぁ!?効かねぇ!?」

「プリキュア!バーニング・ストライク!」

ルージュは自己の力でスーパー化し、ファイヤーストライクをパワーアップさせた技を放つが、これも効かない。だが、真の目的は彼女自身の攻撃ではない。

「ライダーフライングチョップ!!」

一号がフライングチョップでショッカーライダーの態勢を崩し、チャージアップしたストロンガーの必殺技の中心軸に巻き込ませる。

「超電!!ドリルキィ――ック!!」

超電子ドリルキック。ショッカーライダーの一体の首を跳ね飛ばし、そのまま中隊の中心に叩きつける。その瞬間、ジェラートには『赤い雷が地面に落っこちた』ということしかわからなかった。

「な、なんだよ、今の赤い雷!?」

「見たか、これが再改造超電子の威力よ!!」

超電子。黒江がアーク放電に到達しても、その上をいくエネルギーをストロンガーが出す理由。電気を超えた電気と正木博士は茂に言ったが、正しく、超電子は黒江の発電量の更に100倍を誇るのだ。

『茂、何が試すだ?自分で全部持っていったじゃないか』

『最近は村雨のやつもイナズマキック使うし、電気を操る身としちゃ、ガキ共にバシッと見せたかったんスよ』

脳波通信で苦笑いの一号。自慢げのストロンガー。

『下手な都市型発電所並の電力だからな、お前』

『あのビリビリも目じゃないぜ、本郷さん。俺が本気だしゃ、バスターコレダーもおもちゃだぜ』

何気に凄まじい会話だが、敵は部品の雨と、ドリルキックの余波で大ダメージ。隊列がすっかり乱れている。だが、それでも、グリーンブローブの隊長格のショッカーライダーは余裕を崩さず、そのうちの一人が仮面ライダーの装甲も撃ち抜くライフルを取り出し、撃った。とっさにルージュがジェラートを庇い、肩を撃ち抜かれる。

「嘘でしょ、パワーアップしてるこの状態の防御を貫くなんて…!?」

ショッカーライダーのグリーンブローブタイプの一体が余裕を見せつつ、肩を撃ち抜かれ、血を流すルージュを嘲笑する。

「ほう。改造人間の腕を吹き飛ばすライフルで無事とはな。流石にパワーアップしたプリキュアだけの事はある」

「お、おいっ!……なんだよ、あのライフル!めっちゃ古いライフルじゃねぇのかよ!?」

「見かけはドイツの狙撃銃だけど、弾丸が違う!プリキュアの防御も撃ち抜くなんてね…」

のび太も唸る。見かけはドイツ製のGew98の狙撃仕様だが、弾丸は特別製のようだった。ボルトアクション式で、狙撃精度は高い事が分かる。のび太がルージュに地球連邦で応急処置に使用される止血テープを貼り、応急処置をする。

「対改造人間用のフレシェット弾か。左腕、動かせる?」


「ダメ、動かせない……。骨に罅がいってるわね…」

「君たち、うかつに動くな!動いたら、あいつに撃たれる!」

のび太がプリキュア達に警戒を促すと同時に、自分が進み出る。

「どうやら、僕が始末するに相応しい相手のようだ。ライダーの皆さんは僕とあいつに誰も近づけさせないで!サシでやりたい」

のび太は西部劇のように、決闘を望む。ジェラートとホイップは慌てて止めようとするが…。

「なーに、西部で僕にドロウで勝てた奴は一人もいないさ」

のび太はどこからかスーパーブラック・ホークを取り出す。シングルアクションのほうがドロウ向けである事でのセレクトであった。のび太は銃を持つと、西部のガンマン然とした振る舞いを見せる。子供の頃に西部劇に傾倒していた名残りだが、ガンマンという存在に憧れていた者の誇りを感じさせる。

「ふ、これはこれは……。まさか、伝説の『ノビータ』と決闘できるとは」

「へぇ。バダンにも、僕の評判は鳴り響いてたわけかい」

のび太はそう言い、決闘らしく構える。

――コイツには.357MAX(マキシマム)の敷島博士特製弾頭が詰めて有る、一撃で決めなきゃな――

のび太とショッカーライダーの決闘。勝負は一瞬のはずだが、プリキュア達には果てしなく長く感じられた。

「ドリーム、ピーチ!なんで、あの人を止めないんですか!」

「大丈夫だよ、ホイップ。のび太くんは射撃の天才だよ。決めてくれるよ」

「うん。のび太くんはあの――」


ドリームとピーチはのび太を信頼し、勝負を見つめる。不安そうなホイップとジェラート。のび太のドロウの速さに賭けるルージュと歴代仮面ライダー。一瞬が無限の長さに感じられたが、勝負は一瞬だった。

「ば…かな、改造人間の速さを超えてくる…だと…!?」

銃声と共に崩れ落ちるショッカーライダー。遅れて、彼の弾が頬を掠めるのび太。

「Mr.東郷と対等を謳われたんだ、君みたいな連中に負ける道理ははなからないさ」

のび太は決めた。ホルスターに銃を収め、ショッカーライダーのライフルを回収し、ライダーマンに渡す。

「のび太くん、すごぉ〜い!やったよー!」

嬉しさのあまり、地が出ているドリーム。のび太は『フッ…』と微笑いかける。子供の頃と違い、かっこよく決める。

「仮面ライダー達がカッコいいのに、僕がやらなかったら、ドラえもんに会わせる顔がないさ」

のび太、28歳、まさに男を見せた瞬間である。

「のび太くんがやってくれたんだ、決めるよ、ドリーム!」

「ホイップとジェラートもきたんだ、派手に行くよ!!」

ドリームとピーチは第二弾を決めるつもりのようである。ただし、前口上は初代の別の技との混合である。

『希望の力よ、光の意志よ!!』

『未来へ向かって突き進め!!そして、私達の魂が邪を打ち砕く!』

二人は初代プリキュアの技を借りるが、前口上は別の技と混ぜていた。招雷させた雷の色が白とピンクであるからだろう。

『プリキュア!!』

『マーブルスクリューゥゥ!!』

『マァァァクス!!』

『スパァァァク!!』

同時に片方の手のひらから放つ虹色の光線。完全に生前の縛りをぶっ飛ばしている必殺技であるので、後輩二人とルージュは呆然自失である。

「ああ、なぎささんとほのかさんになんて言えばいいのよ…」

肩を落とすルージュ。それに触発されたストロンガーが最後に最高の技を見せる。空中で大の字になって高速回転し、鮮やかな電光を脚に集中させる。

『ガキンチョ共、俺からのサービスだ!よく見てろ!……超電!!稲妻キィィ――ック!!』

超電子最高の技が炸裂し、キノコ雲が発生する大爆発を起こす。ショッカーライダーの殆どはこの二撃で倒され、あたりに残骸が散乱する。大団円かと一同が考えたその一瞬であった。

『…雑兵共では、やはりこのザマか』

声が響いたと思えば、A-1スカイレーダー風のプロペラ戦闘機がいきなり飛来し、一同を機銃掃射しつつ、その機から、一人のホッパータイプの改造人間が降り立つ。その男こそ、組織が求めたホッパータイプの改造人間。その名も『仮面ライダー四号』であった。

「アンタは!?」

「俺の名は仮面ライダー四号。貴様らに宣戦布告しに来た、と言えばいいか?プリキュアのお嬢ちゃん達」

仮面ライダー四号。三号に続く、V3と別の派生で生み出された改造人間で、プロテクターは航空兵を模したデザインであり、ライダーマンを参考にしたマスクのデザインをしているが、一号からのデザインラインが残っている。

「お嬢ちゃん達に地獄を見せるのが『彼の方』からの俺の任務でな。何人かは俺が殺した」

「アンタが……、みらいちゃんを……リコちゃんを……みんなを……!」

ドリームはその言葉が逆鱗に触れ、拳を握りしめて、憤怒の表情を見せる。ホイップとジェラートが呆然とするほどの怒りだが…。

「やめろ、ドリーム」

「止めないでください、先輩!みらいちゃんとリコちゃんの仇が目の前にいるのに、大人しく見てろと!?俺は……躾けられた犬じゃねぇっ!」

錦の激しさが表に出た場合、のぞみは一人称が俺になる。錦との融合が始まっている証拠でもあり、一人称が俺になった時こそ、のぞみが完全に頭に血が上っている証拠である。黒江がドリームを止めているが、完全に血が頭に上り、まるで獣のようである。ホイップとジェラートは完全にアゴが外れかけるほど開いた口が塞がらないようだ。と、そこへ。

「無駄な事を…、幾つ世界を壊しても、時間分岐点がその前に本流を分岐させる。それに、特定の基軸世界には干渉した時点で時間軸の分岐で放り出されて、別の流れになるだけなのさ、可能性を増やし、次元世界の拡大してくれるとは有難い事だ」

「士!」

仮面ライダーディケイドが愛車を駆って現れた。昭和ライダーの手前、いつもの態度は多少は抑えているようだ。彼は次元を渡れるため、次元世界の真理に気がついているようだ。

「やり口は気に入らないがな」

「ふん。ディケイド、貴様も現れるとは好都合。俺の初陣に華を添えるとはな」

「勝手にしろ」

ディケイドはカメンライドを実行し、555の姿になり、アクセルフォームを使い、四号とスピードで争う。二人のスピードは互角であるようだ。

「こいつについてこれるとはな。流石にバダンが贅を尽くした事はあるな」

元の姿に戻る。四号はアクセルフォームと互角の加速に耐えられる事を証明した。ディケイドはここで、ドリームにあることを伝える。

「そこのお前。キュアドリームだったか。お前の友達の蘇生作業は最終フェーズに入って、意志の疎通も可能になった。そいつらからお前に伝言だ。『借りは私達で返す。だから、私達を殺された憎しみに囚われないでくれ』と」

みらいとリコは事のあらましを、意識が目覚めた段階でディケイドから伝えられた。のぞみが自分達を殺された憎しみに囚われかけていることを憂い、ディケイドに伝言を頼んだのだ。ドリームはこれでクールダウンし、嬉し涙を流しつつも、四号を睨む。

「フハハ、それはいいニュースだ。ZEROも喜ぶだろうよ。奴はグレートマジンガーとマジンカイザーを憎んでいたからな」

四号は高笑いをする。マジンガーZEROはグレートマジンガーとマジンカイザーを倒すためにバダンと組んだ事が彼の口から明言された。

「奴は何を望んでいるのだ、四号!!」

「知りたいか、本郷猛。奴は自分の兄弟すら自分の最強性を脅かすと怯えているのだ。笑えるだろう。地球を焼き払い、月も崩せる魔神が憎むのは、他ならぬ自分の弟、グレートマジンガーなんだからな」

四号はグレートマジンガーを憎むZEROを嘲笑する。Zがグレートマジンガーに助けられる際に、コンピュータの回路のどこかで生まれた感情。それは憎しみであった。それが肥大化し、変異した存在。ZEROの根源はグレートマジンガーを倒すというZの邪な憎しみである。なんとも皮肉な事実であろう。

「なんと愚かな、そして醜い感情だ…。自分の兄弟すら憎むか」

一号とライダーマンが明確に憐れむような声で言う。四号は続ける。

「奴は自分以外のヒーローを認めん。お嬢ちゃん達も例外ではない。奴はグレートマジンガーとマジンカイザーを倒すためには、彼の方とも手を組むのさ」


『ほう?なら、この俺の存在は予測していなかったようだな』

雷が奔り、マントを羽織ったような姿の鋼の魔神が飛来する。剣鉄也とマジンエンペラーGである。ZEROの予測すら超えたグレートマジンガーの後継者。それが偉大なる魔神皇帝である。

「ほう。それがグレートマジンガーの後継機か、剣鉄也」

『そうだ。これこそが偉大なる魔神皇帝、マジンエンペラーGだッ!』

「鉄也さん、どうしてここに!」

『何、ウラル方面の平定が終わったところに、シローから連絡があってな。そのまま飛んできた。バダン、ZEROと手を組んだのなら、俺達も貴様達を全力で倒させてもらう。ZEROに伝えろ。二大魔神皇帝が貴様を輝くZ神の名のもとに原子にまで打ち砕くとな。』

「良かろう。貴様が来るとは思ってもみなかったよ。スカイサイクロン!」

四号はスカイサイクロンに乗り込み、言いたいことは言って、残存部隊を率いて引き上げた。マジンエンペラーGまでが駆けつけては不利だと悟ったのだろう。

「へッ、逃げ足が速い奴だぜ」

悪態をつくストロンガー。

「士のカメンライドした555とまともにやれるということは、タイマンでの実力は大したもんだと思う。ご苦労だったな、士」

「あんたらに言われた事はやった。後は連中次第だな」

二号にそう返すディケイド。そして、四号を退散させたマジンエンペラーGの勇姿。錦としての記憶で、エンペラーの存在を知っているドリームでも度肝を抜かれるので、ホイップとジェラートなどはあまりの急展開すぎて、完全に言葉を失っている。

「巨大ロボットが……」

「空飛んでる……」

やっと絞りだせたのがこの一言であり、一同は緊張が抜け、どっと笑いが起きる。だが、そうも楽観視はできない。

「綾ちゃん。計画を急がせろ。ディケイドのおかげで次元世界の真理はわかったが、ZEROの犠牲が増えることは避けたい」

「了解。のび太と鉄也さんに相談してみます。上にも具申してみますが、上がうんというか」

「俺が力を貸す。上層部も俺の名を出せば、折れるはずだ」

「僕も協力しますよ、一号さん」

一号は黒江に指示を飛ばし、のび太も同意する。続いて。

『俺も協力しますよ、本郷さん。軍の上層部ってのは、動くのに理由がいりますからね』

「よし。それまでに子供達を鍛えておけ。バダンは我々が抑える。君たちはプロジェクトの最終フェーズに進んでくれ」

「了解!」

本郷猛/一号ライダーは『P計画』を最終フェーズに進ませろと指示をする。プリキュア・プロジェクトの第三フェーズ。それは……。


「なんか、あたしたちを置いて、話がどんどん進んでね?」

「急展開すぎて、ツッコむ気も失せるわ…。」

すっかり蚊帳の外の三人。重大な何かが話し合われているのは分かるが、それが何であるか。ルージュは知っているが、後輩には、まだ知らせる時ではない。そう考え、お茶を濁す言い方で端的に心情を言うに留めるのであった。







――こうして、新たなプリキュアの来訪が起こった。プリキュアは並のウィッチの一個中隊(通常形態で)に相当するとされ、覚醒した者、そのまま現われたプリキュアの変身者は軍に取り込まれ、戦う大義名分を与えられる。実質、従来のウィッチに代わる『特権階級』の一翼を担う事となった。当時、21世紀世界の政治的干渉でウィッチの特権意識是正、女性軍人向けの様々な福利厚生の向上がなされつつあったが、これに理解が及ばぬ者がクーデターに加担する事になる。また、ウィッチは『花嫁修業』代わりになるとした親たちの恐慌もあり、ウィッチ志願数は壊滅的な様相を呈し始めた。『婚期』を理由に親が退役させるケースも相次ぎ、新人が入ってこなくなる状況が、扶桑では顕著に現われた。また、日本から流入した反戦の風潮で軍隊の志願定数そのものも低下し、人的補充がままならない状況に陥った。そのため、一騎当千のプリキュア、英霊を含むGウィッチに特権を授与するのは、挙げてくる戦果との兼ね合いでも当然の流れで、現場のバランスの問題で『Sウィッチ』枠が創設されるに至った。古参兵の功績を称える意味合いでもあるため、ウィッチの新陳代謝が一時的でも停滞していたこの時期には特に重要視されていた。ただし、当時の常識が常識であったため、坂本が嘆く通りに古参と中堅の対立の沈静化には繋がらなかった。戦線の主役は近代兵器であり、スーパーヒーロー、スーパーロボットであったからだ――












――連合軍は通常兵器をウィッチのバックアップ目的に使用してきたが、メインで使用するには足りない数であったモノも多かった。そのため、零式や隼は完成品の在庫が底をつき、次第に烈風や紫電改、五式戦、はたまたジェット戦闘機に置き換えられ始めた。また、隼も三型へ改装されたため、元の主力であった二型は本土に僅かに残る程度になった。また、史実と異なり、20ミリ砲を積む三型乙がラインに乗り、事実上の最終型式とされた。鍾馗は史実の二型の後に予定されていた三型が中止(リベリオンのエンジン供給を前提にしていたため、現地改装はあっても、新規生産はできなかった)され、二型の火力強化型がその代替とされた。これは代替エンジンに目された国産大馬力エンジンへの換装に設計者の一人である糸川博士が難色を示したからでもあり、当面は武装強化でお茶が濁された。しかし、鹵獲エンジンへの現地換装で実質的に三型相当のパワーアップを果たした機体は相当数が存在していたため、それらが実質的にそれと見做された。(燃料そのもののオクタン価も連合軍基準であったため)飛燕は史実と異なり、メッサーシュミットのコピーであったことで、現地でオリジナルのエンジンに換装されていた個体がかなりあり、五式へ改造不能な個体が続出した。また、川滝からの苦情、カールスラントの厚意への対応など、扱いにとにかく困った統合参謀本部は、カールスラントとの関係悪化を嫌う現場の声に動かされ、現地でのエンジンの換装を認め、カールスラントにエンジン機材の提供を約束させた。そのカールスラントはドイツの干渉、アメリカの策謀で航空産業の衰退が始まったため、ノウハウ維持のために、既存機のメンテナンスと米軍からのライセンス生産で場をつなぐ事になるが、扶桑とて、米軍機のライセンス生産が大半を占める事には反対論が根強く、その事がキ99のクーデター軍での活躍、横須賀航空隊の震電の焼却に繋がってしまうのである。(救いがないわけではなく、カールスラントはターボプロップエンジンの新規開発に一枚噛む事で技術の維持を行えたという)震電の血統が生き永らえたのは、米軍機の調達で費用を安く済ませようとする官僚の言を良しとしない技術者や軍関係者の動きがあったのを鑑みての政治的判断で、最後の『日本軍式戦闘機』の血統として生き永らえる事になり、間接的にコスモ・ゼロに影響を与えたという。この時期に試みられたカールスラントの生き残り策は成功し、一説には、30世紀のスペース・ウルフ戦闘機はフォッケウルフの末裔ともされるなど、カールスラントの技術は30世紀の未来世界に足跡を残したという。――




――501 前進基地――

「日本が既存のストライカーの生産を再開させたか。これで混乱も収まるわね」

「閣下、日本は何故、今になって?」

「使えるかわからない新兵器よりも、既存兵器の補充を望む声が大きかったからよ。性能も日本側の実機のカタログスペックより良好なモノが陸戦を除いて多かったし」

「調、静夏、ひかりを広報が所望しててね。若い子たちへのアピールに血眼になってんのよ。だけど、日本からかなり反戦の空気が入ったし、良心的兵役拒否もある。当面はサボれないわよ、ハルカ」

「お察しします」

「やれやれ。日本がうちらに技術と引き換えに与えるのが混乱ってのは分かってるのだけど…、今回は参ったわね」



智子が嘆く通り、扶桑の軍需産業は日本からの口出しにもめげず、必死に既存兵器のマイナーチェンジを進め、黒江が要請していた破砕砲の開発と生産が進み、陸戦ウィッチ用に手持ちの折りたたみ式破砕砲も『チリ-U』ストライカーと共に生産され、64/501のみが使用していたISとそれに類する試作品ほどではないが、従来より身軽かつ、全ての性能が飛躍した新型陸戦ストライカーが生産された。だが、それを実戦で扱える中堅はサボタージュし、実働中の古参の機種転換を、敵と戦いながら行わざるを得ない状況。戦争といえばそれまでであるが、坂本が前史から通して嫌う『新人をそのまま訓練無しに投入する』状況は避けられてはいるが、軍部としては、形式上でも『新陳代謝が行われている』事は見せたいのが現実的な思考で、新世代と目されているウィッチを公表したかった。その兼ね合いで、Gウィッチでありつつも、外見が若めの月詠調(対外的には、正確には誤字であるが、名字をその漢字で通しており、この頃には定着している)、服部静夏、雁渕ひかりの三名をプロパガンダに用い始めた。調は黒江の弟子筋として、静夏は坂本の教え子、ひかりは孝美の妹として。当時に一般に知られた著名なウィッチの関係者であることは、部内で嫌われようと、一般社会へのアピールにはうってつけだった。年齢も若く、誰かしら、戦線のGウィッチと関係を持つ三人。既に任官済みの調はともかく、当時に兵学校未卒であろうが、まだ学生であろと、現地任官という形で作戦に従事させる事は坂本の反対があったが、単に『広報の写真撮影のために呼び寄せたのでは、派手に出征式をした二人の故郷への言い訳が立たない』とする智子と赤松の政治的判断で、竹井(みなみ)の行動は追認されている。坂本は静夏とひかりを前線に置くことには反対だが、派手な出征式が故郷でなされた者に手柄の一つは立たせないと、軍部の政治的立場がないのも事実だ。

「やれやれ。坂本を納得させるのも一苦労だったし……。…ん!?」

「どうしました?」

黒江からのメールだが、内容が内容なので、智子は『ぎょえ〜!?』と奇声をあげて、腰を抜かす羽目に陥ったという。



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