外伝その341『扶桑の苦しみ2』


――扶桑海軍がダイ・アナザー・デイの直後にクーデターの中枢になってしまうのは、日本が戦艦に単艦無双のイメージを押し付け、史実の結果に基づいた批判が展開されたからでもある。『日本の装甲板はカタログスペック値の半分の実性能でしかない』、『大和は鈍足』という批判も彼らに火をつけたのは否めない。日本側は逆に超近代化された大和型に驚く羽目になったのは言うまでもないが、日本財務省が長門以前の旧式戦艦の整理を迫るのにもっともらしい理由を与えてもしまった。ただし、史実でも米軍最新のトーペックス系魚雷に耐えられる防御力は持っていた日本戦艦は他国から見ればオカシイ防御力であるが。現場の反対と、扶桑国民の廃棄への反対運動との妥協で『紀伊型戦艦は一部を航空戦艦に転用、加賀型戦艦は上陸支援艦に種別変更』ということで手打ちになった。かくして、戦艦は大和型とその派生クラスで統一されたわけである。大和型戦艦とその派生クラスがあれば、戦艦の用は足りると言うことだろうが、ウィッチ世界では移動砲台としての役割が主流とされていたため、高コストな大和型戦艦とその派生クラスで戦艦を統一する用兵思想に反対論があるのも事実であった。――




――2019年 野比家――

「扶桑海軍の発表によりますと、第一戦隊は本日……」

日本でも報じられる扶桑海軍連合艦隊第一戦隊の活躍。複数の観測機からの撮影のカラー映像として、アイオワ級戦艦が大和の砲撃で轟沈する様子がTVで流れる。アイオワ級の設計コンセプトは艦隊決戦が行われた場合には『脆い』事を証明するものであるが、大和型の主砲が60口径という、史実を大幅に上回る長砲身化されていた事で得た戦果と揶揄する声もあった。(史実の時点で最強の火力だが…)扶桑としても、本来は48cm砲(50口径)か51cm砲(45口径)への換装を俎上に載せていたが、大和型の船体規模では弊害のほうが大きい事がわかり、長砲身化と砲弾の更新に計画を切り替えたのである。特集まで組んで『艦隊決戦での日本戦艦』が報道されるのが、日本にとって『戦艦同士の艦隊決戦』が遠い昔のおとぎ話』である証明であった。また、日本で未だに議論されている『連合艦隊司令部は前線にあるべき』という論調の犠牲になったのが『戦艦富士』である。富士は23世紀の技術で作られしフネであるので、優れた指揮能力を持つが、本来は本土の連合艦隊司令部の統制を受ける事が想定されていた。だが、連合艦隊司令部が本土にいる事が猛批判(日本の海軍出身義勇兵含む)を浴びたため、小沢治三郎連合艦隊司令長官(当時)は富士での直接指揮を余儀なくされた。日吉に建設途中だった連合艦隊司令部はマイナスイメージもあり、工事は中断。参謀の大量粛清の負の影響により、連合艦隊司令部は大淀から富士に移る(正確には日吉に既に仮説の司令部が置かれていたが、日本側の批判で引き払いを余儀なくされた)事となり、連合艦隊司令部が最前線で戦闘に従事する光景が再現される事になった。扶桑が愚痴ったのは、地球連邦軍との協議で陸に置く事が決定されたはずの連合艦隊司令部を『連合艦隊司令長官を前線に出させる』ためだけに政治的に横槍を入れ、最新最強の戦艦に置かせたという出来事で、統合参謀本部でも日本連邦でのこの経緯は批判の的だった。豊田副武や栗田健男への見せしめを狙ったのだろうが、連合艦隊司令長官は既に小沢治三郎である。機動部隊司令長官も山口多聞であるので、些かの的外れ感がある。日本は保守派提督に前線に出ろと圧力をかけたつもりなのだ。

「……下らんな。日本は軍事のイメージが大昔で止まっている。連合艦隊司令長官に前線で死ねとはな」

TVを見ていたキュアマーチ(緑川なお/ラウラ・ボーデヴィッヒ)は日本の軍事音痴ぶりに呆れる。現時点の連合艦隊司令長官の小沢治三郎には『マリアナの敗将』という誹りがあり、本人もそれを気にしているのは周知の事実だが、日本は海での戦いでは、東郷平八郎の築いたイメージに支配されている感は否めない。それに連合海軍全体が振り回されているのだ。(扶桑の提督の不在で、前線にいる提督同士の協議が開けない弊害がある。小沢はあ号作戦での稚拙な指揮を論って、無能と罵倒される事も多い。扶桑海軍内部では『海空両面にわたる兵術家で、青年将校からの羨望の的』という評価があったため、青年将校にかなりの不満が蓄積している。)

「ラウラ、何してるの」

「閣下に頼まれて、扶桑の内偵だよ。あそこは史実の記録を拠り所に、海軍将校も多くが出世の根を摘まれているからな。戦前の日本軍人の気質的に反乱は免れんだろう」

「ずいぶんと政治的ですわね」

紅茶を飲みながら、セシリアが言う。ちょうど、ティータイムの時間だからだ。シャル共々、スコーンを食べている。IS姿で。

「軍隊というのは、政治と無縁ではないからな。扶桑では『航空閥や機甲作戦に理解がある提督や将軍』だけが重宝されることに不満が溜まっている。あそこの海軍は陸上航空戦力を主力化しようとしていたからな」

「それって海軍じゃなくて、空軍じゃ?」

「身も蓋もないがな。第二次世界大戦の時から、空母は金食い虫と嫌う提督が多いのだ。その考えの産物だが、史実太平洋戦争の結果が伝わり、更に朝鮮戦争での戦訓で根底から覆された。海軍は陸上で訓練中の航空部隊の内、空母航空団の母体にしている部隊の訓練が終わり次第、空母に戻そうとしたが、日本の事務屋の勘違いと手続きミスで、空軍に持っていかれたのだ」

当時の扶桑は600番台航空隊を母艦航空隊としていたが、日本の官僚や政治家には特攻隊と勘違いする者が続出しており、『人員を守るために空軍に移す』としたが、実際は扶桑海軍航空隊の形骸化を進めるのみに終わった。空自の大反対で海軍航空の再建が決まったのはダイ・アナザー・デイの直前であった。それまでに既存人員の空軍移籍の手続きが始まってしまっていた事も重なり、ダイ・アナザー・デイでの母艦航空隊は義勇兵が多数派を占めるに至った。史実で戦死したはずのエースパイロットも仮名で複数が参戦しており、本来は主力に予定されたはずの扶桑生え抜きパイロットはむしろ少数派であった。また、空母の搭載機数確保のため、第一線を退いていたはずの天城型『天城』(艦種種別変更で天城型とされた)までもがウィッチ運用装備を外された上で『予備空母』として動員されるに至った。露天駐機までさせて。プロメテウス級が動員された理由はひとえに兵力不足を質で補うためである。

「日本って、なんかこう…、極端すぎない?」

「イギリス空母部隊が、てんで宛にならんと分かったから、扶桑で一線を退いていた赤城型の『天城』、『愛鷹』まで動員するという話も出たからな。だが、愛鷹は購入したドイツが10年も放置していたから、船体の痛みも酷くてな。飛鷹型航空母艦二隻を慌てて、戦地に動員したそうだ。残っている正規空母のほぼ全部を欧州に動員した事になる」

「あれ?雲龍型は?」

「完成している内の半分が別用途に転用されたから、空母のままのほうが少なくなったそうだ。それで他の戦線は海上航空戦力がないと文句が出ている」

「宛にしてたのも多そうだしね」

「激戦地に主力を注ぎ込んだもんだから、他が手薄になったが、事実上の遊兵になっていた人員も多いからな。結果的に欧州に扶桑の人的資源の七割を注ぎ込ませたそうで、批判も大きい」

欧州にかき集められた戦力、特にウィッチはその更に数割がサボタージュをしたため、実際に戦闘に従事する人数は意外に多くはない。64Fが多いと言っても、ウィッチそのものは増員を入れても、欧州で活動する戦闘要員はせいぜい40名。士官級かつ、エースパイロットに限定すると、各地からかき集めても、本来は30人前後が限界である。Rウィッチ化し、本来は別部隊の所属であったり、明野飛行学校教員であった人員を配属させても40人。統合戦闘航空団の二個分で精一杯であった。501を取り込んで60人近くを確保したが、個人戦闘力が不安視されてしまうという予想外の反応が帰ってきた。ウィッチは『育成の費用対効果が低い』という問題が伸し掛かっており、『現役期間が5年〜10年では、野球選手以下。近代軍隊には不向きな能力である』とまで断じられた。それが後の兵科消滅の理由である。また、フェミニズムの観点から、ウィッチの昇進速度が『逆差別』とされた事から、昇進速度が通常軍人より多少早い程度にされたが、佐官までは戦果での昇進対象にされるなど、高い地位を持つ事変世代との差を少なくしようとする努力もなされた。扶桑空軍はそんな状況の最中に産声を挙げた。皮肉な事に、それは1945年の事であった。実働は9月を予定しているが、組織は8月中に始動しており、64Fもそれに伴い、空軍の部隊と名のれるようになった。

「日本って、何がしたいんですの?」

「大方、少ない損害で最大の戦果を出せと現場に強要するんだろう。だから、エースパイロットを一箇所に集めて運用するんだろうな」

「エースパイロット部隊って、軍事的には?」

「非合理的な行為だが、日本としては分散配置よりも、ベテランの集中運用のほうが効果を出した歴史があるからな。第二次世界大戦の敗戦国の美点と語られるんだ。特に日本は特攻で人的資源を浪費した歴史があるから、エースパイロットの優遇を好むのだ」

「エースパイロットは優遇されて然るべきでは?」

「通常ではな。だが、日本海軍航空隊にはそういった『個人を称える』風習はなかったと言う。そこに欧州と米国の常識が入る事を嫌う者も多いんだ。そこが閣下らと中堅の対立の根底にある」

キュアマーチの言う通り、帝国海軍航空隊、ひいては扶桑海軍航空隊には『撃墜王を称える文化』はなかったが、連合空軍内部での対外的な立場の均等性などの観点から『スコアの自己申告、個人的に撃墜王を名乗る事は禁止していない』というのを組織としての対外的な言い分にしていた。撃墜王の公的な名乗りの禁止は事変世代の高齢化による練度低下への対策、隊員の連帯感強化を目的に生まれた平時の風土に過ぎない。戦時では英雄が求められるのだ。これは陸軍航空隊における黒江達の再度の持ち上げでも明らかであった。(江藤への処罰も、それが大いに関係している)

「特攻で浪費するよりは、前線で酷使するというのが日本の考えなのだろうが、交代要員をロクに送らんなど、頭がおかしいとしか思えん」

「それじゃ、国営放送のこのニュースは?」

「英雄を求められる戦時の風土に適応出来ない輩の更迭だよ。多いんだそうだ、海軍航空には」

呆れ顔のキュアマーチ。対外的に撃墜王を宣伝しておきながら、部内で誇るのを戒める扶桑海軍航空の風土は、活動内容が空母航空団と対潜哨戒機部隊のみになっていく事での規模縮小で消えていく事になる。例えば、日本が要請した『大西瀧治郎の更迭』は史実の戦闘機無用論などの行為を理由にしての見せしめであり、彼が賛同していた戦闘機無用論の影響力を消すための予備役編入も検討されたほどだが、日本人の若い左派系暴漢に『旧軍高官』ということで集団リンチされ、哀れな事に入院してしまったために同情論が出たのと、史実では『自決した』彼の名誉回復を求める嘆願が部内から出たため、扶桑の国民感情との兼ね合いで見送られた。ウィッチ世界における戦闘機無用論は、レイブンズのあり得ないほどの実力を背景に確立された『ウィッチの運用拡大による通常兵器の運用縮小』であり、史実と意味合いが異なったからだ。結局、この理論は『否定』される。ウィッチとしては歴代で五指に入るほど強力なはずの宮藤芳佳でも、黒江達の発揮した戦闘能力には及ばなかった事、レイブンズとクロウズを頂点としたチームの戦闘能力的ピラミッドが世代交代が進んでなおも崩れなかったからだ。つまり、芳佳(みゆき/杏)はウィッチ世界の戦闘機無用論に引導を渡した事になる。

「なんだか、日本のサムライの時代からの風習が考えを伽藍じめにしてますわね」

「それもそうだ。日本は近代化しても、行動の根底に士道がある。それが近代戦には足枷になっているのさ。それと日本は誰がなんと言おうと、年功序列の縦社会だからな。私も、前世で大人になってからは、先輩達には敬語だった。ドイツ人になってみて、初めてわかったよ、日本人を他国の人間が理解しきれん理由をな」

キュアマーチはセシリアに日本人の不思議な精神性を説明する。ラウラ・ボーデヴィッヒとしての視線で日本人を見ると、日本人は中国の影響圏の人間達よりも欧州の人間達に近い精神性を持つが、独自性もかなり強い。その窮鼠猫を噛むの精神が史実の太平洋戦争で『ハル・ノート』を最後通牒と受け取り、戦端を開いた理由であったと理解したのだ。(ちなみに、自由リベリオンは自分達が国を追われ、少数派に成り下がる事で初めて、大和民族の精神性を完全に理解した。自由リベリオンは新島を租借する事でアイデンティティを保とうとしたが、冷戦時代の長い年月の内に次第にリベリオン人本来の精神は薄れ、日本連邦と半ば一体化していく。ブリタニア連邦は連邦のコモンウェルスを繋ぎ止める事に躍起になった。連合国の盟主としての自尊心で、連邦の空中分解こそ避けたが、財政的意味で軍事活動は縮小していく事となり、ダイ・アナザー・デイの時点でウィッチ世界の超大国は交代し、実質は日本連邦になっていたと言える)

「向こうの世界のイギリスは遅かれ、財政負担が限界に達し、大規模な軍事活動を控える様になる。向こうの世界を守れるのは、アメリカが内戦に入った以上は日本だけだ。だが、ここの世界の干渉は激しい。史実の主戦派は官僚、軍人を問わずに多くが階級剥奪か、公職追放だ。これでは、青年将校が226や515のように、激しく暴走するのは目に見えているではないか」

「日本の二度の青年将校によるクーデター事件だね」

「そうだ。太平洋戦争前の日本軍人の思考回路は戦後日本人の理解を超えている。セシリア、シャル。図書館から515と226、それと宮城事件の周辺の時代の歴史関連の本を借りてきてくれ。軍事関連は私が自衛隊に用意してもらう」

「わかった(わかりましたわ)」

キュアマーチは、黒江の要請で、史実のクーデター事件の研究をしている。扶桑で『時間の問題』とされるクーデターの早期鎮圧のための研究であり、そのためにセシリアとシャルに協力してもらう。また、『1945年8月15日』以前の日本人の思考回路が戦後日本人と根本的に異なるものであることそのものを戦後日本人は半ば忘れている事に触れるなど、日本人が扶桑に対して自覚しない『モノ』が何であるか気づいていた。その点で言えば、キュアマーチは生前より頭脳明晰かつ、聡明になったと言える。









――シンフォギアC世界の響にキュアメロディは語る。模擬戦をしつつ。そもそもの『事の起こりは黒江(メロディは調の師匠と表現している)が時空管理局という組織の行う古代遺跡の調査に随行し、そこである遺物を発見して触れたところ、遺跡が起動してしまい、調を古代ベルカに飛ばし、黒江をシンフォギアA世界に飛ばした事。容姿を入れ替える形で。黒江はすぐにマリア達の元から脱走。しばしの間は放浪していたが、小日向未来がウェル博士に利用された戦いで初めて、二課側について戦ったことがきっかけで二課の面々に協力する事になった事、フロンティア事変の最終局面で、黒江がそれぞれ異なる神託の甲冑(聖衣のこと)を使い、エクスドライブモードのシンフォギアをも凌駕する実力を見せた事、その直後に響Aが黒江に『調を演じる事を強要してしまった』経緯を説明する。『切歌の精神がこれ以上壊れないように!』という大義を振りかざし、切歌の精神を守ることに意固地になる響Aが黒江を押し切った事はお世辞にも褒められた選択肢ではない。響Aは『切歌ちゃんも調ちゃんも傷つかないようにするにはもう、これしかないんです!!だいたい、貴方が入れ替わらければ、切歌ちゃんと調ちゃんの仲は…!』と黒江に敵意さえ見せた。トラウマにスイッチが入ったかのように、一方的にまくしたてる響Aは周囲を『幻滅』させてしまった。響Aはあくまで、『切歌を守り、調の帰る場所を守るための善意』でまくしたてていたのだが、姿を借りているだけの別人に代役を押し付けるなど、倫理的にとんでもないことであった。黒江が折れた事で、その場は収まった。だが、響Aは場の空気を感じつつ、『我を押し通した』事への疑問、周囲に幻滅される事への恐怖、切歌らの救済は自分達とは別次元のところで既に決まっていたことで、自分の主張の正当性がすぐに瓦解した事で、自分への『承認欲求』が強まってしまった。小日向未来が支えなければ、すぐに精神が壊れるほどに疲弊してしまった。それが魔法少女事変での大失態、ダイ・アナザー・デイでの『侵食』に繋がったのだと。――

「嘘、そんな事になってるんですか…?」

「向こうのお前は、その人が調の居場所を奪ったんだと思ったんだと。代役をやらせたのも、切歌の心をその人が壊したと思ってな。殆ど無理強いに近かったそうだ。それで顰蹙を買ったお前は、『自分は正しい事をした』と言い聞かせないと壊れるような状態になった。どーやら、向こうのお前はトラウマのスイッチが『誰かの居場所が侵される事』らしいな」

「……」


レイブンズも手を焼いた、響Aが心の底で抱く恐怖。それは誰かの居場所を守ることへの執着心の強さが他の世界を上回る事で生じた闇の深さの証明であり、偶然で入れ替わった黒江を『事の元凶』として嫌うなど、彼女本来の博愛性はどこへ行ったと言うべき不安定さが徐々に認知され、本人はますます、引っ込みがつかなくなった。肝心の調本人がSONGを抜けた事で事の重大さを認識し、その問題がひとまず落ち着いたと思えば、『ガングニールの絶対性に固執し、原典のグングニルより上位の宝具の存在を認めようとしない』問題が発生。それがエアで否定されると、今度は英霊因子の覚醒で自我を侵食されるなど、どうにもパッとしない。確固たる信念を持つCに比較し、Aは『自分の信じたモノ(考えや観念)』を否定する結果に繋がるモノを頑なに否定しようとするいう弱さが出ていると言える。

「それに加えて、自分の力を上回る何かが現れても、変な方向に諦めない。あたしらが素でノイズと戦えるってわかると、怯えた目をしたからな…」

「そ、そんな…」

「多分、お前以上にいじめのトラウマが強くて、自分を必要にしてくれるモノ、得た居場所に異常に依存して、それを守る事に執着するようになってるんだろう。父親が家に戻ってからは緩和されたけどな。お前はその点、ずいぶんとマシだよ。」

キュアメロディの言うことは、Aは立花響という存在が小日向未来を持ってしても拭いきれないほどの心の闇を抱え込んだ場合の可能性である事の示唆であった。Cはなんとも気まずい思いであった。自分が騒動をこじらせた元凶であると同時に、グングニル以上の聖遺物がある事を認めようとしない頑なさで周囲を振り回す。第三者として傍観すると、自分が如何に子供じみた思いを振りかざし、迷惑をかけたのか。自分が入れ替わりたいくらいだと、戸惑いつつも漏らす。調Aがなぜ、SONGを去ったのか。その答えを正しく理解できず、黒江たちとの折り合いも悪い(響から見て)など、別の自分が犯した失態をカバーしたいという気持ちを見せる。つまり別個体である事を良いことに、自分が入れ替わる(Aは肉体を沖田総司に使われているため)事ができるなら、入れ替わりたいとまで言う。立花響という存在の名誉回復。それを自分がやりたいと言い、何か上手い口実を考えてくれと言われ、困惑するメロディだった。








――キュアピーチはドリームの直接の後輩であり、戦闘と浄化の双方で高いレベルの能力を発揮する。プリキュアの必殺技の目的が『敵を倒すこと』から『敵を浄化すること』に変化し始める過渡期のプリキュアである。戦闘能力そのものは歴代ピンクでも五指に入る強者であり、アガートラームを纏うマリア・カデンツァヴナ・イヴを圧倒せしめる。身体能力面では大差はないが、ピーチはイーグレット(ウェンディ)から受け継いだ風の力があり、それに加えての覚醒した小宇宙の力もあった。それらが複合した力は強力そのものだった――

「く、あああっ!こちらの防御が……通じない…!」

「悪いねー。手加減無しでやらせてもらうよ、マリアちゃん」

「だから、私は…!」

「多分、アタシはマリアちゃんより年上だと思うよ?92年くらいだし、生まれたの」

「……は…?」

「違う世界の出身だからね。この時代だと、アタシとドリームは20前半から、半ばくらいなんだよ」

「嘘……、それじゃ」

「マリアちゃんより一、二歳くらいは上じゃないかな?2008年くらいに14だったからね、あたしとドリームは」

プリキュア達は肉体年齢は現役時のものだが、精神的には成人後の状態であるため、装者で最年長のマリア・カデンツァヴナ・イヴを子供扱い(彼女は当時、21歳前後)できる。一見して、現役時代と変わらないようなラブ/ピーチだが、精神的には成熟している。戦闘面でも、マリアの攻撃をいなす巧者ぶりを見せた。

「ハッ!」

ピーチは掌底でマリアのバランスを崩すと、そのまま腕を絡め、投げ飛ばす。マリアも戦闘能力は高いはずだが、ピーチの見かけによらず高い格闘センスに圧倒されていた。マリアは態勢を立て直し、アームドギアを蛇腹剣にし、それを振るうが……。

「蛇腹剣か。それくらいじゃ、アタシには効かないよ?」

「強がりを!」

「そうかな?」

ピーチは精霊の力を発動させ、蛇腹剣の伸びる刀身を風圧で逸らす。マリアの蛇腹剣の軌道のコントロールをできなくさせるほどの風であった。

「風で刀身を逸らす…!?なら、これでどう!?」

剣を左腕部ユニットの肘部側から装甲内部に納刀するように接続し、左腕部を後の真ゲッタードラゴンの『ポセイドンアタック』のように、ビームを撃つための砲身へ変形させ、更に左腕部に熱を逃がすための放熱板を形成。砲身からエネルギーの奔流を放つ。技名は『HORIZON†CANNON』。だが、ピーチは風の精霊の力によるバリアで容易く弾く。

「なっ…!?バリア!?」

「いい攻撃だったよ?それじゃ、こっちもちょっと本気を出すよ?」

ピーチは構えを見せた。すると、風が吹く。突風と言うべきか。マリアの懐に入り込み、強烈なアッパーカットを食らわせる。同時にピンク色の暴風が吹き荒れ、マリアを空高く吹き飛ばす。

『プリキュア・ライトインパルス!!』

射手座の黄金聖闘士の技の一つ『ケイロンズライトインパルス』。それにピーチがアレンジを加えた技である。マリアはアガートラームのギアに備わる腰部バーニアで態勢を立て直そうと思考を巡らせるが、その瞬間、別方面から吹き飛ばされてきたクリスと空中で激しく衝突してしまい、両者は共に地面に叩きつけられる。


「が、…ッ!嘘だろ……!?あいつら、ここまでの強さなのかよッ!」

先に起き上がったのはクリスだが、りん/ルージュにお得意の火力での制圧に持ち込む前にボコボコにされたようで、ヨレヨレであった。

「大人を舐めるんじゃないわよ、お嬢ちゃん。ご自慢の火力も接近すればどうということはない。当たらければ〜って奴よ」

ルージュも明らかに現役時代より強さを増しており、クリスCをボコボコにしたらしい。また、精神的には大人であるためか、クリスを躾けるかのように言う。

「ルージュ、なんか言われた?」

「某有名忍者漫画のアレよ。あのネタは弟と妹に言われるので勘弁だっつーの!!」

跳躍してきて、ピーチの隣に降り立つルージュ。かなり不機嫌だが、額に怒りマークが浮かんでいたり、表情もギャグめいているなど、コミカルさを感じさせる。だが、肝心の戦闘面ではクリスの火力を封じ込め、プリキュア・ルージュ・バーニングなどで炎を操り、プリキュア・ファイヤーストライクの至近距離での発射を行い、クリスを吹き飛ばすなど、格闘に持ち込むことでクリスの持ち味を封じ込んでいる。

「さーて、おイタはここまでにしましょうか」

「クソッタレッ、チョーシ乗るんじゃねぇぞ!」

「粋がるのって、この年代特有の現象なのよねぇ」

「あたしは18だっつーの!!」

クリスは外見は実年齢より幼く見られるため、ルージュからの子供扱いに反発する。そして、アームドギアとして、携行型の2連装ガトリングガンを形成するが……。

「プリキュア!!サニーィィィ……ファイヤー!!」

ルージュはガトリングガンの発射を阻止するため、後輩のキュアサニーの『プリキュア・サニーファイヤー』を使った。やはり、サニーと同じように、バレーボールの要領で撃つ。クリスはガトリングガンを構える間も無く、炎に焼かれる。

「うあッ……!……嘘だろ、こっちが構えるより早く…!?」

炎に焼かれ、さらなるダメージを負わせられただけに終わったクリスC。ルージュは淡々という。

「抜き打ちが零コンマの人の特訓を受けてんのよ、こっちは。そんな大仰なダブルガトリングガンなんて、接近した間合いで構えるもんじゃない」

のび太に特訓を受けさせられ、一瞬の隙を突けるようになったプリキュア達。のび太は『最低で、零コンマの隙を突けるようにならないと』と厳しく特訓しているが、仮面ライダーBLACKRXは0.1秒の隙を普通に突けるし、黄金聖闘士は何万分の一秒の隙を突ける。シンフォギアは身体能力は飛躍的に強化するものの、反応速度は通常時より多少向上する程度であるため、反応速度は個々で差がある。その点はプリキュアに及ばないと言える。模擬戦はプリキュア達が圧倒的に優位に立っており、調Cはアトミックサンダーボルトで吹き飛ばされて、数百m先の地点でのびている。シンフォギアC世界側は外堀を埋められつつあったと言える。マリア、クリスは一矢を報いる事ができるのであろうか。



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