外伝その349『地球の未来とは?』


――地球連邦政府は23世紀時点で繁栄を謳歌し始めていた。しかしそこから更に数百年すれば、『銀河百年戦争』、更にそこから数百年もすれば『イルミダス』への敗戦が待ち構えている。そのイルミダスはゲッターエンペラーの力で瞬く間に滅ぼされ、失地回復はその時に成る。イルミダスはあまりにも傲慢過ぎた。それがゲッターエンペラーの目覚めを促し、自分達が逆に捻り潰される羽目に陥るのだ。そのゲッターエンペラーはその当時に使われていたネオゲッターロボの末裔を軽く撚るイルミダスの戦艦を、ゲットマシンのビーム一発で衛星ごと屠る破壊力を発揮、復活した23世紀に最強とされていたスーパーロボットらを従え、その覇業を開始する。エンペラーの肉体の直接の前身はゲッタードラゴンであり、精神的前身は真ゲッターロボである。エンペラーの意志はゲッターに関わりつつ、ゲッターエネルギーとの親和性の高い者達の集合体だが、主に流竜馬の意志が代表の形で表出している。その行動は敵対勢力に恐れられているが、過去への干渉すらも可能とする事は知られておらず、それがマジンガーZEROをエンペラーが倒せるとされる所以である。エンペラーは23世紀に干渉し、百鬼帝国がウザーラを手に入れた事を視覚すると、巴武蔵を送り込み、真ゲッタードラゴンを呼び覚ます。ゲッタードラゴンの進化が急速に進んだのは、エンペラーの差し金であった――



――新早乙女研究所跡 『地獄門』――

ゲッタードラゴンが発する高濃度ゲッターエネルギーが織りなす危険地帯『地獄門』。そこに繭になったゲッタードラゴンは眠っていた。繭はゲッタードラゴンの腹部からライガーの頭部が飛び出し、後部がポセイドンの頭部の意匠を象っている形状だったが、その繭がひび割れ始め、エネルギー状になったゲッタードラゴンが目覚めの咆哮を挙げる。


「馬鹿な、早すぎる!」

現地で驚愕のあまりに慄く橘博士。ゲッタードラゴンは実体化していくが、もはや以前のゲッタードラゴンそのものではなかった。地上の橘博士のもとに現れしそれは『真ゲッタードラゴン』と呼ぶべき進化体であった。体躯は60mほど、ゲッタードラゴンを真ゲッターロボ以降のデザインラインで再構築したようなボディを持つそれはゲッタードラゴンが真ゲッターロボの力を得たかのようだった。真ゲッターロボと同じようなデザインになった胸部のハッチが開き、行方不明当時と変わりない姿の車弁慶がひょっこりと出てきた。

「君は……弁慶君…なのか…」

「俺は死なないと言ったでしょう?橘博士」

服装はゲッターポセイドンに乗っていた時の野球のキャッチャーのプロテクターを纏った姿に変わっているが、まさしく弁慶であった。橘博士も早乙女博士に『俺は死にません!』と告げた時の声を聞いていたのだ。

「弁慶君、まさか、時間を?」

「ゲッターが俺に課した役目ですよ。武蔵さんや早乙女博士が託したゲッターがこの『真ゲッタードラゴン』です」

「真…ゲッタードラゴン…」

真ゲッタードラゴンは弁慶の操縦でネイサー基地に運ばれ、そこで橘博士の指揮での調査が行われた。調査は機体の隅々に及んだが、ゲッター炉心すら『真ゲッター炉』規格に変異しており、『真・ゲッター線増幅炉』というべき代物と化していた。変形機構は未知数だが、ドラゴン形態でライガーとポセイドンの武器が扱えるようになっている。ビームとシャインスパークはとんでもなくパワーアップしたと推測された。未調整の状態でも、23世紀水準のスーパーロボットとしては最強クラスは間違い無しの超性能である。ただし、予定より早く『羽化』した影響か、モーフィングでのライガーモードやポセイドンモードに切り替えるのに数秒かかり、その間が無防備になるという弱点を持ったため、出撃時にしばらくは三形態のどれかに固定しての運用を余儀なくされた。しかし、能力値自体は真ゲッターロボとゲッターロボアークを超越する水準に仕上がっており、さしたる弱点と見なされていない。弁慶の帰還は竜馬と隼人を喜ばせた。弁慶は身体チェックのため、ネイサーに留まるが、『號でもベアーに乗せて、真ゲッターに乗れよ』と竜馬に告げた。それを聞いた竜馬は喜々として、號をベアー号に押し込み、真ゲッターに乗った。





――ダイ・アナザー・デイの前線――

『チェェンジ!!真ゲッターァァゥアン!!』

竜馬は成人後は独特の発音でゲッターの合体コードを叫ぶ。その点は竜馬の声変わりも関係している。加齢で以前より低く、野太い声に変わったが、こちらのほうが好評である。曰く『以前はキ○肉マンってネタにされてたから、助かったぜ』とのこと。空手の修行で声を張り上げていた関係もあるのか、声は以前より低くなっている。ドスが効いてきているため、迫力満点。號をベアー号に押し込んで、真ゲッターで出撃した。戦法はブラックでのそれよりは従来のゲッター1系のものに近いものに回帰していたが、ゲッターランサーをぶっ刺した後にゲッターサイトに変形させて斬り裂く戦法を用いるなど、荒くなっていた。


「バケモン共、俺と真ゲッターが来たからには、皆殺しにしてやるぜ!!」

真ゲッターロボの脅威を感じ取った怪異が集団で真ゲッターに群がるが、敵ではなかった。

『ゲッタァァァ!!ビィィィム!!』

真ゲッターロボのゲッタービームはピンク色で、熱線に変換して撃っている。変換の過程で、どうしてもエネルギーのロスは起こる。真ゲッターロボの出力自体が高いので気にされないが、意外にエネルギー効率は悪かったりする。

「隼人、大物が来たぞ!」

「リョウ、俺にやらせろ。最近はデスクワークが多くて、体が鈍ってるんでな」

「こいつらはゲッターがお嫌いなようだぜ」

「怪異は定期的に現れる星の免疫体のようなものとも、この世界の地球特有の生命体ともされるが、研究が進んでいない。だが、ゲッター線に弱いことは確かなようだ」

真ゲッター2に変形しつつ、隼人は言う。研究者になった故か、前史から引き継いだ記憶をもとに説明する。そして。

『ドリルテンペスト!!』

怪異は真ゲッター2に翻弄され、ドリルテンペストからのドリルアームで貫かれ、消滅する。スーパーロボットはその火力で強引に怪異のコアを露出させ、倒すことが可能なため、怪異の手っ取り早い掃討の任務に重宝されていた。怪異はコアを破壊されないように核兵器でも再生するが、再生の間もない攻撃であれば、通常の攻撃でも効果がある。スーパーロボットは『ドーラ』がおもちゃ扱いの火力を出せるため、ドーラ用の特殊砲弾の試作が止まり、ドーラは本来の目的に転用された。『怪異の巣ができても、スーパーロボットにぶっ飛ばして貰えばいい』。これが当時の連合軍が導き出した結論であった。また、ドーラの三号車の製作が中止されたが、ゲッタードラゴンのシャインスパークや真ゲッターロボのストナーサンシャインを宛にしての決定であった。(砲口径を52cmに減少させた代わりに砲身長を43mにまで増加した長砲身型に変更される予定であったが、ドイツが『戦略爆撃機から巡航ミサイルを打ち込んだほうが早い』とした事から、製作用の資材が集まった段階で中止になってしまった。列車砲の兵器としての宿命か、むやみに長砲身にしたところで、砲威力に差異が出るわけでもないため、列車砲の運用コストの問題が伸し掛かった)

「連合軍、俺らを完全に当てにしてねぇか?」

「仕方あるまい。怪異の再生を無視して撃破可能なのは俺たちスーパーロボットか、特別な技能を備えた人間だけだ。連合軍もドーラを怪異用に投入しようとしたが、日本のアニメで迎撃されることがわかり、結局は有耶無耶のうちに元の想定運用に戻した。人同士の戦争が再開された以上、怪異にかまける必要は無いという判断だが、ウィッチは存在意義が怪異と戦う事だ。それで迫害を逃れてきた。欧州で魔女狩りが史実より小規模だったのも、怪異を倒すのに必要だったからだ」

「中世じゃあるめぇし、1940年代に魔女狩りが起きるか?」

「魔女狩りは別に『魔女』がお題目に無くても、普通に起きるものだ。オラーシャでは、お互いが疑心暗鬼になった挙句に起こったそうだ。それで各国はウィッチの保護に躍起になっている。人間というのは、針が極端に触れると、どんな非道にも躊躇しなくなるものだ」

「バダンのようにか」

「そういう事だ。ギレン・ザビを思い出せ」

「あのアジテーター野郎か。本当、あの野郎は後世に禍根しか残さなかったからな。そういう点は『ヒトラーの尻尾』だな」

「お前にしては、当を得ている答えだな」

「うるせぇ」

流竜馬と神隼人も認識する、人々の間にある『モノ』。理性と倫理観のタガが外れた時、人は地球を痛めつける事すら躊躇わない。ギレン・ザビやデラーズ・フリート、ティターンズなどはそれを証明している。

「逃げた魔女が悪しき魔女として狩られる立場になったせいで、オラーシャのウィッチ部隊は機能不全だそうだ。扶桑でもリンチ被害が報告されている。そのためにGウィッチが『利益がある』事を証明しなければならん。人は利益になれば、犬だろうが、チンパンジーだろうが、金にするからな」

「ジオンも、ニュータイプをわざと戦争の道具にしたみたいにか」

「人はそういうものだ、竜馬。ジオン・ダイクンにしたって、所詮は選民意識に取り憑かれたカリスマ的アジテーターにすぎん。ザビ家はそれを知っていて、わざと偶像に仕立てた。聖人君子のように。実際は妾に子供を産ませた男にすぎんのに」

隼人は若き日に学生運動家の経験があるため、ジオン・ダイクンの本質がアジテーターにすぎない中年男である事をその時代から掴んでいた。隼人が研究者に転じたのは、その経験で政治への興味が薄れた事も関係している。

「昔取った杵柄って奴か?」

「魔王鬼にされた俺の従兄弟とグループ、覚えてるだろう。若い時はああいうものに熱を上げる事はある。俺がそうだったように。だが、お山の大将にすぎんことが分かっちまうと、冷めちまうのさ。急激に」

隼人は学生運動に熱を上げたのが嘘のように、研究者と連邦軍将校を兼任する仕事人になり、20代に入ると、早乙女博士の後継者として頭角を現し始めている。ゲッター線に魅せられ、見届ける事を義務付けられし者。それが隼人だ。

「別の世界で俺と號が火星に行くビジョンは見ただろ?あれが俺らが20世紀に生まれた場合にゲッターが取る選択だろうぜ」

「俺はそんな事は御免だがな。また別の世界では、俺はミチルさんに告ることができないまま終わった。ミチルさんが敵に意識を乗っ取られる前に自殺したが、ミチルさんも狙われたのかもしれんが、後味悪いビジョンだぜ」

「武蔵よりマシじゃねぇのか。武蔵はどの世界線でも死ぬが、一番ひどいと事故死だぜ」

「武蔵は死にやすい運命でもあるのか?一番マシなのが『ゲッター炉を腹から引きずり出して、恐竜帝国を道連れに自爆』で、ひどいものだと、ゲッター3を擱座させられて身動き取れなくされ、コックピットごと潰されるからな」

「ゲッター炉をオーバーロードさせて、自爆するのが一番ましたぁ、あいつはドラゴンができる上で必要な犠牲なのか?」

「新しいゲッターが完成する前に恐竜帝国や百鬼帝国が襲って来て、あいつはゲッター1を自爆させるのが大多数の世界線の流れだからな。そうかもしれん」

「あいつがゲッターGに乗る世界はあるのか?」

「無いわけではないが、貴重なのだろうな。ゲッターGも最初は真ゲッターの代案だったという話を聞いたことがあるからな」

「武蔵はゲッターGを最初に目撃して、博士と俺達に後事を託して、自爆した。あいつのやったことは正しかったのか?」

「武蔵は必要なことだったと言っていた。俺たちに『真龍』を残すために」

「例のアレか…。アレが博士と武蔵が残した本当の『偉大な遺産』なのか?」

「複雑な意味合いだが、真ゲッタードラゴンは偉大な聖龍だよ。武蔵が導いて羽化させた、な」

「…エンペラーの差し金か?」

「それはわからんが、エンペラーも目的があって、俺たちに干渉している。それは確かだ」

23世紀の戦乱期やウィッチ世界に、ゲッターエンペラーは何の目的で『過去』への介入を行うのか。それはまだわからない。だが、少なくとも、地球人類を守護するためという事はおぼろげにだが、見えてきている。エンペラーが何を目指すのか。その目的は…。









――一方、歴代プリキュア達は、敢然とP-80の大編隊へ挑んだ。爆撃機編隊の護衛戦闘機なのだろうが、空を覆わんばかりの敵機と味方。第二次世界大戦の太平洋戦線では稀であった『視界内に多数の敵味方が入り乱れる状況』。史実で言えば、バトル・オブ・ブリテンのような状況であった。バルクホルンやハルトマンには、『戦果を挙げ、ロシアによって陥れられしJG52の汚名をすすぐ』目的も多分に含まれていた。実際、同部隊は戦果の粉飾疑惑が持ち上がり、同部隊所属経験者の戦果は意図的に差っ引かれる割合が大きく、カールスラント空軍部隊の士気は崩壊寸前に追い込まれた。その事もあり、64Fはその代わりの戦線の士気の拠り所とされ、上層部に持ち上げられた。ただし、ドイツ系軍隊の部隊であるがために軍紀に厳しかったJG52と異なり、64Fは自由勤務権が認められており、『対外的な態度をきちんとしていれば、普段の勤務態度は問わない』、『法に反しない範囲なら、機材融通に優先権を持つ』特権を持つ一方、アットホームな雰囲気を持っている事、常に最前線に置かれている事などから、JG52ほどの嫉妬を持たれる事はなかった。実際、501を取り込んだ事で多国籍部隊にはなったが、総司令はあくまで、武子であり、ミーナは一中隊長の地位である事、その上位たる大隊長に黒江達が君臨している事で押さえが図られている。これはミーナが覚醒する前の騒動を受けての措置であるが、覚醒後は地位に拘らなくなった事もあり、中間管理職で落ち着いている。――


『プリキュア!!クラッシュイントルード!』

ドリームとフェリーチェはオーラをそれぞれ纏い、敵に突撃する。二人がパワーアップしている事を示すかのように、キュアスカーレットの『プリキュア・フェニックスブレイズ』もかくやの、それぞれのイメージカラーの鳥の形のオーラを纏って戦場を飛翔。一気に40機近いP-80を空の塵にする。

「おいおい、クラッシュイントルードをマジでやりやがった…、あの二人…」

「どういう事、メロディ」

「この前、黒江さんがのぞみに90年代前半のアニメとOVAを見せてたろ?」

「あ、ああ…。えらくマニアックなチョイスだと思ったけど……まさか!?」

「そのまさかだよ。新技をよ、のぞみとはーちゃんは同時に考えていた。考える事は同じだったようだぜ」

ルージュとメロディは、のぞみとことはが同じ考えに行き着いた事、そして、心の底で望んだ光景の心象が『大切な想いを抱き続け、皆と共に飛翔する』という共通したものである事もを悟り、微笑う。のぞみとことは。この二人はいつしか意気投合していた。のぞみも、ことはも『のび太に精神を救われた』、のび太を介して『家族』になるという(のぞみがのび太の養子と結婚する事で、戸籍上であるが、のび太の義理の妹であることははのぞみの義理の叔母にあたる)共通点を持っている。

『真!トマホォォォク・ブゥゥメラァァン!!』

フェリーチェがゲッターエネルギーを操り、ダブルトマホークを象ったエネルギー刃を多数、空中に生成する。それを敵へ向けて投擲する。もはや、プリキュアと関連性ゼロかつ、思いっきりゲッターロボ寄りな攻撃である。これを見たルージュは一言漏らす。

「ねぇ、メロディ。あれ、もう、ゲッターロボっしょ…」

「フェリーチェ、攻撃魔法は覚えてなかったからな。それが負い目になって、のび太んとこで攻撃を覚えたそうだ。そんでもって、鍛えた連中が連中だしなぁ」

「まさか」

「そのまさかだよ」

ゲッターチームが講師に含まれていたおかげで、フェリーチェは『あまねく命に祝福を』という名乗りとは裏腹に、敵には容赦しない姿勢が鮮明になっている。物理攻撃が主体になったのは、魔法の因果をZEROに操作され、効果を封じられた経験によるものだろう。光子力とゲッター線に由来する力を手に入れたため、双方のエネルギーの制御を可能とした。魔法を過信できなくなったため、攻撃は物理的なものに転換した。(既存の必殺技も既に破られているためだ)

「で、アタシたちはどうすんの?」

「プリキュアとしての必殺技は乱発すんな。戦闘機相手にファイヤーストライクは当たるかわからねぇしな。あたしはこれでいく」

「MVSと輻射波動?」

「慣れてるかんな。前世が紅月カレンだった関係もあるかもな。」

「それで、のび太君に『ぶん殴りたいやつがいる』って言ったの?」

「ああ。あんにゃろども、人をのけ者にしやがって。特にルルーシュの奴…!な〜にが『LL』だ!女を乗り換えやがって!しかも、あの子がいないと、生き返るフラグが立たないだぁ?ふざけんなよ、あのペテン師!」

(あの子とは、ルルーシュ・ランペルージの良心とされ、尚且つ、最初の想い人だったシャーリー・フェネットの事である。今の自分の愛称が『シャーリー』なため、彼女のことに言及する時は表現をぼかしている)

「溜まってるわねぇ、あんた」

「ゼロ・レクイエムは除け者にされるわ、口車に乗せられてこき使われるわ……、元からクラスメートだったけど、ゼロ・レクイエムだけは許せないんだよ。世界を股にかけて、大芝居打っといて、後で生き返らすしか無くなるってのは不甲斐ない気がして」

「で、結局、その女の子は生きてたの、死んだの?」

「そこが平行世界が分かれる分岐点だけど、あたしが経験した世界じゃ生きてたよ。今から思えば、あの子、リズム―奏―に似てたんだよな」

「まさか」

「今となっちゃ、確かめる術はないからな。もし、そうだとすればって事は考えてる」

シャーリー・フェネットはキュアリズム/南野奏の転生体だったのか?その疑問は今になって生じたとしつつ、もし、そうだとしても、南野奏本来の姿でどこかに再度の転生をしているはずだとも述べ、どこかで希望は持っていると述べる。

「もし、奏に会えたら、何十年かぶりに話してみるよ。色々とな。もし、あの子を経ていたら、ルルーシュはぶん殴るけどな」

「は、はは…」

「さて、輻射波動でふっ飛ばす。ワイドレンジでかますぞ!!」

メロディは自身が紅月カレンとして生きた頃の心残りをルージュにはっきりと言う。ルルーシュ・ランペルージはどんな理由があろうと、一発、思いっきりぶん殴るという一言も添えて。輻射波動を放ち、P-80を避ける間もなく、複数を消し飛ばす。絵面としては、右の掌から輻射波動のマイクロ波を放つもので、歴代『紅蓮』のそれを再現したものだが、放つ時の自身の姿がプリキュアであるので、ある意味ではシュールである。得物は『MVS』であるなど、スイートプリキュアとしてのスペックには頼っていない。

「黒江さんもそうだったけど、こういう無双って、お硬い参謀とかには嫌われんだよ。黒江さん、思いっきりやりまくったスコアの半分も認定されなかったからな。それが今になって、大慌てで認定するから、ガキ連中が暴発すんだよ」

「あんた、相当にあの参謀を嫌ってない?」

「記憶が戻る前にレーサーだった時期があってさ。その時にゃ、あの三人の伝説は有名だったよ。記憶が戻って、カラクリが分かれば、否応なしにあの参謀はいけ好かなくなるさ」

黒江が気にしてないために、北条響は表ざたにしていないが、江藤は自国はともかく、他国のウィッチからは強い反感を買っていたことが分かる。江藤は自分の時代の慣習がまさか、事変から10年もしない内に否定されるとは考えもしなかったのか、バツの悪い思いで職務に励んでいる。江藤は事変後すぐに『退役』を申し出たが、レイブンズの直属の上官だったため、予備役に編入されていた。そのため、復職が楽だったのだ。そのため、『まさか、元部下らが他国で『伝説』扱いされているとは』と、状況を露知らずであったため、一概に責められないという状況ではある。江藤は昇進し、空軍中枢を担うようになる後年には『広報とプロパガンダに熱心』な方針で鳴らす空軍司令として知られるようになるが、その発端は、この時に周囲から睨まれた苦い経験にあったと言える。また、扶桑軍の古い風習であった考え『隊で任務にあたった以上、その勲功は部隊全体のものであり、個人が誇るべきものではない』が個人主義の台頭、連合軍や地球連邦軍の方針で一掃され、志願数減少で予算確保のためにエースパイロットの活躍を報じなければならなくなった事も関係したという。

「プリキュア・フォーチュン・スターバースト!!」

フォーチュン・スターバーストを腕からの光線として放つルージュ。もはや、転生でプリキュアの垣根を超えたためと、汎用性が高いことから、ルージュは多用し始めている。プリキュアの垣根が意味を無くしたことは、ドリームとピーチがスプラッシュスターの二人の決め技を放った事で証明されているため、そこもプリキュア達が『強くなった』事の証明であった。さらに言えば、『シャイニングルージュ』とも言うべき姿であるため、そこも以前より実力を増した証であった。

「それと、メロディ。フェリーチェとドリームは何にムカついてんの?」

「あたし達がどうして、のび太と付き合ってるか、そういう私事にまで、心無い誹謗中傷が来てるからさ。みんな、のび太の事は小学校時代のダメ少年のイメージで考えてるけどな、実際はあたし達よりよっぽど強いんだぜ。精神的意味でもな。のぞみはガキに自分を否定されたショックで、鬱になっちまった状態を引きずったままだけどな、のび太はどんな時でも前を向いてる。どんなに躓いても必ず起き上がって、少しでも今より良くなろうと生きてる。あいつ、大学までテスト、まぐれで取った一回しかないんだぞ、100点。」

「わーお」

「のび太を最低のクズだって言うんなら、人を口車に乗せて利用して、仲間と思った人間にも真実を明かさず、二人だけで世界の闇を背負って、変えようとしたあの馬鹿野郎共(ルルーシュとスザク)はどうなんだよ!!」

「落ち着きなって。愚痴になってる」

ルージュが諌めるが、メロディはヒートアップする。紅月カレンとして溜め込んでいたものが一気に溢れたのだろう。

「あいつらはあたしに相談せず、勝手に重大な事を決めた。あたしがクズって言いたいのは、世界の闇を背負って、後世に暗愚な君主って罵られる事になるのも、名を捨てて、正義の味方として生きることを強いられるのも承知の上で、表舞台から身を引く覚悟も無しに、感情的に誰かを罵るしかできない連中共だっ!」

メロディは紅月カレンとして抱えていた想いを吐露した。のび太の『強さ』の源が亡き祖母が亡くなる直前に漏らした一言である事を友人として知る身でもある故か、どこか怒りがこもっている。ルルーシュとスザクが最終的に選んだ道を『馬鹿』としつつも、やったことは正しいが、人として褒められる選択ではない事、友人として『共犯者』にして欲しかったとまで言い、ルルーシュに未だに愛憎入り交じった感情を抱く一方、スザクには表面的には『和解』しつつも、心の底では憎しみに近い感情を抱き続けた複雑な心理が窺えた。(実際、スザクはカレンに自白剤を投与しようとした事があり、スザクは結果としてその行為がカレンに決定的に嫌悪される原因になった)その一方で、ルルーシュとスザクが元は親友であった事は分かっているため、割り切れない感情があった。のび太や転生した自分達への罵詈雑言への怒りの体裁であるが、半分は紅月カレンとして抱いていた感情に区切りをつけるためのものでもあった。

「あんた、半分は前世での感情でしょ」

「半分は合ってる事さ。罵詈雑言並び立てることなら、幼稚園や保育園のガキでもできる。だけどな、あいつの言う通り、のび太は『撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴』って事を分かってる。そこが重要なんだよ。最も、ルルーシュはフィリップ・マーロウの本から受け売りしてたみたいだけど、のび太は大人になってからは元ネタを知った上で引用したけどな。それと、のび太は、『タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ、生きている資格がない』って言った事もある。本当に強い奴はな、ルージュ。優しいんだよ、どんな時もな。明日は明日の風が吹く……ってか」

「あんたはスカーレット・オハラかっての」

ルージュは一応、ツッコミを入れる。しかしながら、のび太はどんな存在にも別け隔てなく接する。歴代のプリキュアに対しても同じである。『男はタフでなければ生きていけない。優しくなれなければ生きている資格がない』と、ドラえもんがフィリップ・マーロウか、『野性の証明』のキャッチコピーのどちらかを引用して、のび太に言い聞かせていた通り、青年になったのび太はその通りに育った。のぞみが好意を抱き、ことはが兄のように慕うようになった最大の理由。戦いつつも、のび太の高潔さに惹かれる理由を説明し、紅月カレンとしての想いを吐露し、自分達にとって、かけがえのない友人であるのび太を『都合のいい精神安定剤』とまで罵詈雑言を浴びせる者達への痛烈な批判を吐く。また、これは過去に春日野うららと気まずくなった事があったルージュ/りんへの戒めも兼ねていた。なんとも複雑な心理だが、のび太を『守りたい』と考える一方、ルルーシュへの『未練』、自身に自白剤を投与しようとしたスザクへの割り切る事のできなかった怒りが渦巻いていた事を示していた。キュアメロディがのび太に憧れているのは、紅月カレンとして生きていた時間で犯した少なからずの過ちを、『明日の糧にすればいいんだよ』とのび太は全てを受け止めてくれたからだ。キュアドリームやキュアフェリーチェ、それと自分に、『明日は明日の風が吹く』という考えを示してくれ、更に『転んでも起き上がること』の大切さを身を以て教えてくれたと。のび太はその慈愛で世界を何度となく救った。プリキュア達の心も例外でなかった事から、ドリーム、メロディに比べて、比較的にニュートラルな立ち位置のキュアミラクル/朝日奈みらいとキュアホイップ/宇佐美いちかからは『天然記念物ものの横綱スケコマシ』と評されたという。(みらいは蘇生後、ことはがのび太の義妹になっていた事を聞かされ、分かっていたとは言え、やはり、そのことへジェラシーを抱かずにはいられないらしい。特に、ことはを中高大と、普通の学校に通わせた事が羨ましいらしかった)




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