外伝その363『連合軍の悲哀6』


――日本連邦は機甲兵器の生産ペースが落ち込んだ事を対戦車ミサイル、航空兵器、戦闘ヘリの普及で補おうとしたが、戦闘ヘリ、対戦車ミサイルは1940年代当時は概念はあったが、試作品は作られていないものである。史実ですでに就役していたはずの『シコルスキー R-4』は設計こそ完了していたが、ウィッチ世界ではウィッチ装備が優先されていた都合で試作品の製造にも至っていなかった。そんな世界に『AH-1 コブラ』や『AH-64 アパッチ』をいきなり扱わすのは無理がある。そう判断した日本連邦評議会はノウハウを持つ陸上自衛隊に『AH-1 コブラ』のレストア機を充てがい、当面の間、ウィッチ世界における戦闘ヘリ運用を行わせる。なぜ、コブラなのか?それは『AH-64D アパッチ・ロングボウ』が高額であるからで、戦闘力そのものより、装備の有効性を知らしめる目的が主であるからだ。数が確保されていない機甲兵器を補うのも目的に含まれるため、機体性能よりも数が求められたからでもある。ヘリコプターはそもそも、対地支援目的で戦闘用が開発されたが、有効性を示すにはコブラ程度の能力でも充分だった。また、多くが生産された故の中古の入手のしやすさもあるだろう。その最新型のAH-1Z ヴァイパーの扶桑採用の芽になりえると判断したアメリカは話を聞きつけるなり、日本連邦に多数を有償提供する事にし、自由リベリオンへの融通を条件に、複数機を提供した。これにより陸上では近代化が進むが、扶桑海軍はちょっと難儀であった。伊号潜水艦の近代化改修を応急処置的に行わせつつ、おやしお型潜水艦の調達を促進させた。この改修と調達は数カ年がかりであった。特にウィッチ搭載改修がなされていた『伊四百型潜水艦』は静粛性能の低さを理由に退役を予定されたが、扶桑のウィッチ出身軍人達は潜水艦による対艦攻撃の生起など想定外だったと反論し、更にウィッチを輸送し、対地攻撃を想定していたとした。いくら、ウィッチの軍事的意義が薄れたと言っても、21世紀自衛隊の一部が欲しがった巡航ミサイル搭載型潜水艦への再改修は非現実的である。ウィッチ出身軍人達を追い詰めた事がクーデターを目論む背景なので、近代化改修後は妥協的にGウィッチ専用に運用する事になった。(晴嵐開発にかかった金を捨ててまでウィッチ搭載改修を行って間もないのに、退役の検討はあまりにも理不尽であったため、一騎当千の強者であるGウィッチ専用のものとして運用させるしか、艦種の延命手段がなかった。改修完了後は64Fの保有になる予定である)扶桑の伊号潜水艦を日本側の官僚は『動く海の棺桶』とバカにし、保有全艦の退役も検討させたが、防衛産業から『モーターの現代型への換装や現代の吸音材などの装着、エンジン据付の架台を現用準拠のゴムパッド入りに換えるなどの処置で充分に使用に耐える』という調査結果で覆された。同時期のカールスラントが輸送型Uボートの建造を中止させられ、ドイツ主導で『設計は完了していながら、陸軍の要望で実物は建造されていない』XXT型Uボートに強引に切り替えられた経緯よりは穏便な決着であった。自身の構想が認められたデーニッツとしては朗報だが、カールスラントの潜水艦隊と陸軍にとっては凶報で、てんやわんやのうちに対艦攻撃に潜水艦隊の存在意義と目的が切り替えられ、大パニックになった騒動を鑑み、『既存兵器を活かしつつ、新兵器に時間をかけて切り替える』方針に切り替わり、おやしお型潜水艦を生産しつつ、そうりゅう型潜水艦の将来的運用に備えてのノウハウ獲得(サンプル品は極秘に運用されていたが)、輸送潜水艦に代わる『輸送機』の充実を図るなどの施策が次々と決められた。そうりゅう型のライセンスは既に扶桑に発行済だが、施設の更新などの都合で時間がかかる。自衛隊で余るおやしお型潜水艦を扶桑で新規生産名目でレストアさせ、実戦で運用する。そうりゅう型をいきなり手渡す事に懸念があったため、回りくどいやり方での育成に舵を切ったのだ。近代潜水艦運用ノウハウの取得目的であるので、繋ぎという位置づけだが、おやしお型潜水艦の能力証明を実戦で得られると意気込んだ防衛産業は乗り気であり、ダイ・アナザー・デイでも、サンプル品代わりで使用されるそうりゅう型と共に通商破壊作戦に従事しているという。日本の世論に理解が得られにくい戦略爆撃機については、カールスラントの『Ju488』のドイツ主導での中止、ランカスター爆撃機に代わるジェット戦略爆撃機の生産遅延、リベリオン製B-29の大規模新規生産が難しい事などから、扶桑の『連山』、『富嶽』、その後継『飛天』(ジェット機)の増産が世界的に望まれた。当初は戦略爆撃機へ忌避感を持つ日本世論による抑え込みで将来的な生産中止が決まりかけたが、自国での生産が捗らず、しかし一刻も早く戦略爆撃機を必要とするチャーチル、ド・ゴール、アイゼンハワーの三者による外交圧力がかけられた。日本の世論は激しく反発したが、『国際協力』を大義名分にしての三者の演説を国連でされては、立つ瀬がない。渋々ながらも生産継続が認められた。既に、流星の策定仕様の二転三転による生産と配備遅延でスカイレーダーの運用拡大が前線で行われていることで一種の危機感がメーカーで共有されており、日本側の望む機種の他、扶桑独自の戦闘機選定も行われた。『戦艦一隻を建造するには莫大な費用がかかるけれども、飛行機なら戦艦一隻の費用で三千機が作れる』とは中島知久平(ウィッチ世界では長島知久平)の弁だが、航空機もジェット化と電子化で価格の高額化が進む宿命である事に困惑したが、量産効果で単価を下げる方向を見出し、ドラケンのライセンス生産などに勤しむ。この選定は南洋防空用の防空戦闘機を欲しつつ、安全保障上のリスク回避を望んだ扶桑軍の独自選定で、『F-104の増備でいいではないか』、『F-8の陸上運用機確保で充分』などと嘲笑されたが、扶桑皇国空軍としては『航空基地が多く確保できる土地用の局地戦闘機なんだよ!!』であり、主力機は航続距離がある機種を選んでいると釈明している。実際、ドラケンは扶桑にとっては、疾風、鍾馗、雷電、紫電改、月光などのレシプロ邀撃機の後継機であり、要地と南洋の防空用が主である。扶桑は『日本側の要求する行動半径がデカすぎる。我々は要地防空に使用するのであって…』とし、リスク回避のためもあって、複数機種を運用していると説き、ようやく納得された。日本も複数機種で防空体制を維持しているからだ。日本列島と南洋の気候に適応できるのかという疑問が生じたが、スウェーデンは『日本列島の気候に適応可能である』としたため、ダイ・アナザー・デイ中にGウィッチ専用機として初期生産機が納入された後、データをフィードバックした扶桑制式型が46年よりラインに乗り、旧厚木航空隊がクーデター軍の持ち出した橘花改、火竜改、梅花、天雷を鎧袖一触で粉砕する戦闘が量産された機体の初陣とされる。この時に投入された扶桑の開発中止試作機の中には、パルスジェット機である梅花が混じっていたが、カールスラントの飛行爆弾『V-1』を有人にしたような珍妙な外見に、厚木航空隊は失笑したという。ちなみに、橘花と火竜改は原型機がMe262の初期試作機であり、それに小手先の改良を加えたものにすぎない、制式量産は見送られた機体であり、天雷は単なる従来型双発戦闘機である。第二世代ジェット戦闘機であるドラケンにとっては模擬標的に等しいガラクタであったという。なお、ドラケンはそれに先行して、ダイ・アナザー・デイ中には、64Fの新選組と魔弾隊で先行して使用されており、グンドュラ・ラルがその内の一機を使用していた。



――駐屯地――

「グンドュラ、お前、ドラケンに乗るのか?」

「同位体のF-104選定で嫌味をドイツ軍に言われたからな。憂さ晴らしだよ、トゥルーデ」

「そう言えば、お前はマルヨンの選定の時の空軍総監の同位体だったな」

「エーリカにはブーブー言われる、ドイツ軍には嫌味を言われる。カールスラントであれを選んだのは、あたしじゃないわよー!!」

「あ、キレた」

「ハンは欠陥あったし、マルヨンしか選択肢ないのよ。ドラケンは閣下の興味を惹かなかったし…」

「やれやれ。閣下はマルヨンは邀撃機としては最善に近いと言っとったがな」

「加東閣下、お戻りに?」

「東郷が最後の衛星を落とした後、カプセルで帰還してきた。彼とは宇宙で別れたよ」

圭子が帰還してきた。早くもいつものタンクトップとホットパンツ姿で、その上にフライトジャケットを羽織っている。

「東郷はバレットM82ベースのカスタム銃で人工衛星を落としていった。あたしはその観測だった。ティターンズ宇宙軍も東郷を恐れて、ボールもトリアーエズも出してこねえんで、拍子抜けしたけどな」

「あの、その間、閣下は何をしておいでで」

「生身で宇宙遊泳だよ。あたしは宇宙服はいらない体になってるしな」

圭子はゲッター線に選ばれているため、宇宙服の着用を必要としない体を得ている。そのため、黒江に宇宙から電話もするなど、暇を持て余していた。東郷が手際よく仕事をしていったからだ。その際に荒涼地帯になり、ペンペン草も生えない不毛の地に成り果てた中国大陸と朝鮮半島を宇宙から確認している。圭子は怪異による汚染が全土に及んでしまった中国大陸と朝鮮半島に憐れみを覚え、東郷に中国と李氏朝鮮がなぜ、ウィッチ世界で滅んでいったのだろうと聞いてみたという。


『……中国、いや、明朝は腐敗していたのだ。豊臣秀吉の朝鮮半島への侵攻で軍事費を使い込んだことは要因の一つにすぎんが、歴代王朝の中でも明朝は暗愚な皇帝が多く出ている。恐らく、元を北に追いやった時に、元が培っていたウィッチの軍事利用ノウハウを有効性に気づかずに捨ててしまったのが敗北の直接的要因だろう…。李氏朝鮮は歴代中華王朝の単なる属国に過ぎん。諸共に滅んでしまったのは、説明がつく…』

との事。彼らしい物言いである。

「さすがは」

「お前らだって、覚醒した以上は大丈夫だぞ。死を乗り越えた者に許される特権だ。もっと言えば、聖人の連中は、普通の肉体で宇宙出てるしな」

「十字教にいましたな、そういう刀使い」

「あたしらはなにかしらの力を得てるんだ。遊び感覚で私利私欲を満たしてる、力自慢の連中っていう誹謗中傷をしてる連中は拗らせてるバカ共だ。バダンやマジンガーZEROに正面から立ち向かえる力を持ってる以上は誰がために戦わきゃならん。それがあたしらに課せられた使命だ。他の世界で起こってる出来事を捻じ曲げようがな。それを遊び感覚で私利私欲を満たしてるって言われる筋合いはねぇんだ。テンプレ通りの悪が出てくる時代劇を見たことねぇ連中の言うことだぜ」

「閣下、詳しいですな」

「時代劇は坂本が馬鹿みたいに好きなんでな。水戸黄門や暴れん坊将軍とか剣客商売とか、大江戸捜査網」

後に21世紀日本が調べたところによれば、誹謗中傷をしていた者たちは2019年時点での10代半ばから20代までの若年層が主であったという。Gウィッチは遊びで他世界に介入を行ってきたわけではなく、そのままいけば滅んでいった世界を存続させたり、仮面ライダーディケイドや鎧武にプリキュア救出を依頼し、大地母神になる因果を断ち切られ、通常のプリキュアにまで退化させられたキュアフェリーチェを救うなど、そのままいけば、全員が倒されていたであろう魔法つかいプリキュアを救っているのだが。

「私利私欲ってのは、ジャギとかアミバとか、ジャコウとかの連中がやってたことを言うんだよ。ラオウだって、ある種の目的があってああやってたわけだし。あたしらは日本連邦政府、ひいては地球連邦政府の方針に則って動いてる職業軍人なんだぜ?それと時々、正義の味方。昭和風のな。平成後期や令和のガキどもは変にこじらせすぎだっつーの」

昭和の時代以前の勧善懲悪的な価値観は21世紀では陳腐な価値観と馬鹿にされる。職業柄、分別は弁えている。ドラえもん達は基本的に静香がブレーキ役だったが、静香も『戦うべき時は戦う』ことは弁えており、独裁者などは倒されるべきものとしている。のび太達は基本的に勧善懲悪の価値観を少なからず持つ『昭和の人間』(昭和末期の生まれなため)だが、平成や令和年間に生じた価値観も尊重している。

「我々の時代は単に勧善懲悪で済んでましたからな。平成や令和の時代は面倒になりましたな」

「ああ。変なクレームがフェミニストから来やがる。あいつら、軍隊を極道者と思っとるのか?」

「さあ。日本は自分達さえ平和なら、政治はどうでも良いのです。軍隊が政治を語る事を禁忌として封じ込め、便利な政治的駆け引きの道具として見ている。軍人には息苦しい国ですよ」

ラルは御坂美琴の同位体であったためか、かつての祖国である日本をそう評した。だが、日本連邦政府の樹立で日本単独で軍事は決められず、ウィッチ世界からの外圧で軍事の事柄が覆される事に不快感を持つ層も左派に多く、それが頻発する私刑事件の黒幕であった。カーチス・ルメイやジョージ・パットンもその被害者だが、パットンは真美が暴漢をノシたため、足一本の骨折で済んだが、カーチス・ルメイは車に跳ねられ、肋骨を数本折る重傷を負わせられている。大西瀧治郎などに比べればマシなほうであろう。中には史実で特攻隊の参謀であった『倉澤清忠』少佐は鉄パイプでリンチされ、生死の境を彷徨う重体になるが、日本の誰からも同情されないという哀れな状況に陥った者もいる。同位体の罪で私刑にすることは左派傾向のある者に多く、日本国内でも非難が起こるほどだった。確かに、同位体は罪を犯したかもしれないが、後世に伝わった事は当時の事情を反映しているとは限らないし、当時の倫理観も考慮していない。これにはカーチス・ルメイの戦略思想やジョージ・パットンの白人至上主義的言動も入る。扶桑の井上成美の『海軍航空軍化』ドクトリンへの誹謗や山本五十六への航空への傾倒、小沢治三郎の指揮能力さえも批判の対象となっているハチャメチャぶりだ。


「閣下らも大変ですな」

「まぁな。こっちは山本のおっさんや井上さんが特に誹謗中傷されてる。井上さんなんて、学者と言われたからって、空軍に移るって言って、比叡が泣いた」

「ああー…」

「井上さんは空軍を有事の際の陸海基地航空の連合って考えてたから、完全独立の軍隊に仕上げるのは考えてなかった。ヤマトショックで立場が悪くなってたのは事実だが」

井上成美はヤマトショックで各国が次々と新型戦艦を作り出すことに困惑し、立場が悪くなったが、大和型戦艦の規模が当時としては巨大にすぎ、各国海軍が大和型戦艦を恐れ、建艦競争になることを予測していなかったという凡ミスを犯していた。これは事変時に艦娘・大和が現れた際の艦影から、従来型より強力な砲を絶対に積んでいると予測されていた事を知らなかった事も原因である。もっとも、日本側の批判材料である空母機動部隊の機動力に基地航空が尽く粉砕されていった戦訓など、彼に知る由はなかったので、理不尽であった。空母機動部隊を大事に後方に下げ、他の水上艦を捨て駒にする運用すら、ウィッチ世界では、『レイブンズの戦闘力が前提の旧態依然の思考』とされ、実質的後継とみなされたクロウズに『そこまでの力』(戦略レベルに影響を及ぼす)がなかった事から、中継基地代わりに『空母は前に出る』ドクトリンが研究される有様だったのだ。レイブンズが転生を繰り返し、大国の軍隊の戦略を『戦術で覆す力を得た』事に坂本が理解を示したのは、自身も転生した今回が初めてであり、それまでは否定的だったように、井上成美にしても、完全独立の空軍の設立に理解を示したのは、山本、岡田(岡田啓介)、源田の説得によるものだ。このように、同位体の失敗を挙げ連ねて、ある人物を失脚に追い込むことは日独の一部が『正義のため』と詭弁を弄して正当化しており、のび太と東郷の稼業の標的になっていたりする。


「で、ガリアの議会に向かったモードレッドから報告は?」

「議会をジャンヌ・ダルクと共に説き伏せた後はそのまま紅城トワと『交代』し、キュアスカーレットとして、怪異を倒したとの事です」

「あいつも大変だな。ま、ペリーヌにとってはスパイスが効いてるだろうよ。ノーブルウィッチーズの消滅の一因である自分が、一番にノブリス・オブリージュを体現してるんだからよ」

ペリーヌはノーブルウィッチーズの消滅でロザリーへ自責の念を持つようになり、それが彼女に眠っていた『紅城トワ』と『モードレッド』の魂を目覚めさせ、ペリーヌは自我の統合を望むことがなかったため、一つの肉体に三つの魂を宿し、共存する事になった。そのため、ペリーヌは最近はどうしても必要な事柄以外はトワとモードレッドに一任している

「あいつは最近、戦いに出ませんな」

「あいつはガリア開放こそが戦いへのモチベーションだったんだ。それが果たされた以上は銃後の守りのほうが重要だ。ペリーヌは政界に出たいと言ってるから、次の戦争が終われば退役するだろう」

バルクホルンに言う圭子。ペリーヌは『ガリアが下手な動きを見せる前に政界に出るしかないだろう』とし、太平洋戦争が終わる時にペリーヌ・クロステルマンとしては軍から退役したいと言っている(モードレッド、トワとしては現役軍人を続ける)。ペリーヌは共和主義者だが、家が領主の家系であるため、貴族の完全消滅は望んでいない。日本の『扶桑華族廃止論』が萎んだのは、共和主義者のペリーヌが貴族の出であり、ノブリス・オブリージュを実践していたからでもある。また、ウィッチ世界では史実より貴族が腐敗していなかったこと、オストマルク皇太子が大スキャンダルと名高いマイヤーリング事件を起こさず、陣頭で壮烈な戦死を遂げた事も理由だった。扶桑も皇室の誰かどうかが必ず戦死、華族も戦役の度に一族から戦死者を出していたため、解体する理由がなく、明治期に定められていた身分の特権もほとんど廃止済みの旧武士/公家の名誉称号にすぎない。個人主義の過度の浸透で国防に支障が生ずる危険を危惧した扶桑国民の考えもあり、日本の左派は当てが外れた形であり、追い詰められていた。ペリーヌはそんな彼らとも戦うため、軍人を退く決意である。戦いはいずれ、トワとモードレッドに全て任せる旨の発言をしている。それがノーブルウィッチーズを空中分解に追いやったとされる原因の一つと目されたペリーヌとしてのけじめなのだろう。(退役直前、太平洋戦争後に64F内部の中隊として再編されたノーブルの隊長をしているが、それがロザリーへのせめての気遣いである。なお、変身する際のメイン人格が異なっていても『プリキュア・プリンセスエンゲージ』は可能なため、モードレッドの人格を保った状態でキュアスカーレットになることもあるという。その時は口調や振る舞いがモードレッドになるので、周囲にネタにされている)


「なるほど」

「当面の問題は、日独の横槍で攻勢が延期された事だ。連中のおかげで兵器の配備と訓練の完了を待たないとならなくなった。ヘリと対戦車ミサイルの安定供給の目処が立つまでな。こりゃ、八月中に終わんねぇな」

「新兵器の普及を待ってたら、この作戦は終わりませんよ、いつまで経っても」

「スーパーロボットがあるってたって、無理はさせられねぇんだ。連中の望むのは『最新兵器で旧式を圧倒する』光景だ。こちとら連中の『戦争ゲーム』に付き合わされてるんだ、相応に代価は支払ってもらうさ」

「代価とは?」

「21世紀水準の色々なもんさ。2019年の水準なら、インターネットとかのインフラも整ってるからな。おお、そうだ、お前ら、広報部向けのコラム考えとけよ。プリキュア達は出したからな」

日本向けに統合幕僚会議が発表するコラム記事に歴代プリキュア達が寄稿したのだが、多くが現役引退後の大人になった後の状態である都合で、現役時代のイメージとかけ離れた事を書く者も多い。それが特に顕著であるのがドリームこと、のぞみであった。

――『あの日に誓った想いがこの胸に輝く限り、不死鳥のように蘇って、みんなの夢を守ってみせる』――

のぞみは人生を左右するほどの決定的挫折を味わった世界線からの転生であったため、星飛○馬のように、『かつてのように再起する機会』を強く望んでいた。(あまり知られていないが、星飛○馬は最終的に右投手として再起し、プロ野球にカムバックしている)ある意味、転生をプリキュアでもっとも喜んでいたのは彼女と言える。その後の人生での挫折が『プリキュアとしての再起』を望ませた点では皮肉としか言いようがないため、ルージュことりんは悲しんだという。のぞみは『自分の死後、子供達がいずれ、プリキュアとダークプリキュアに分かれて殺し合うのではないか』という危惧を抱き、そうなったら自分が止めようとしていたが、それが果たされぬままに肉体的にも病気を患い、なおの看護もむなしく、死の床につくという無念が根底にあった。そのため、のび太から借りて読んだ『巨○の星』シリーズの星飛○馬が年月を経たとは言え、不可能とされた再起に成功(右投手としてだが)し、再度の魔球投手に返り咲く(例によって、生涯のライバルにして義兄により、その魔球は打ち砕かれたが)様に感銘を受けたらしい。(余談だが、黒江が趣味の範疇として、仮面ライダーディケイド/門矢士に星飛○馬のその後の可能性を調べてもらった結果、星飛○馬は70年代後半の現役復帰後、『蜃気楼の魔球』を打ち砕かれた後も不死鳥の如く、第5号となる魔球『蜃気楼ボール』の開発に成功。その魔球は全魔球の中で最強を誇ったという。その魔球の登場は『史実で入団するはずのエースピッチャー』が体の故障の顕在化で選手生命を絶たれ、ジャイア○ツに入団しなかったという出来事が分水嶺となり、星飛○馬はV9世代で最年少に近かった事実、現役復帰時でも20代半ばと若かった幸運もあり、復帰までのスポーツ医学の進歩も重なり、80年代入団の次世代が完全に育つまでの間、ジャイア○ツをV9経験者の最後の生き残りとして支えたという、選手としては『最も幸福』な世界線が発見されたという)のぞみは彼の見せた不死鳥のような闘志に感銘を受けたのか、これ以後は現役時代以上に闘志を燃やすようになり、ルージュ/りんがその参謀兼お目付け役となっていく。(誰かに影響されやすいとも取れるが、のぞみは元々、誰かを守りたい思いの強さは歴代ピンクでもピカイチで、その思いがプリキュアへの覚醒にも絡んでいる。また、一度決めたことは曲げない芯の強さもあり、それがカリスマ性に繋がっていた。)

「読みましたよ。『あの日に誓った想いがこの胸に輝く限り、不死鳥のように蘇って、みんなの夢を守ってみせる』……。奴は読んだんですかね、巨○の星」

「綾香に聞いたら、新巨○の星まで読破したそうな。のび太からの借りもんだそうだが、のび太は昭和生まれだからなー。だから、あたしらが持つ、いささか昭和じみてる勧善懲悪な価値観を分かってくれるのかもな」

「恐らく。あたしらが遊び感覚で私利私欲を満たしてる力自慢だってんなら、のび太はなんだっていうのでしょうかね。『正義は人それぞれ、僕は自分の正しいと感じた事に出来る程度の力を貸す、僕自身は正義じゃないけど、納得出来る正義には味方する、だから正義の味方なんだ。さすがにジャスピオンみたいに『俺が正義だ!』なんて、ハマーみたいなセリフは僕に似合わないでしょ?』と、ノビスケ君に言い聞かせてるというのに」

ラルはそう嘆く。バルクホルンも同意する。

――『正義は人それぞれ』。21世紀の日本では、ある種のフェミニズムが麻疹のように流行っていたが、静香いわく、『日本ではフェミニストが一番、フェミニズムに理解が無い』としている。死線を越えてきただけに、のび太達の中では最も達観しつつも、自分の正しいと感じた事に出来る程度の力を貸すという夫のポリシーに賛同している。『自分自身は正義ではないが、納得出来る正義には味方する』のび太の行動指針はドラえもんから受け継ぎ、ことはと調、実子のノビスケへ、ひいてはセワシに継承されていくものだ。のび太は『導き手』としての役目も担い、影に日向にGウィッチを支えていく。彼が『ノビ少尉』として転生する未来は、のび太の不死鳥のような生き様、時や次元も遥かに超えた友情の象徴であり、友を思う血潮が真っ赤な限り、灰の中からよみがえるという、のび太の確固たる信念と意志の集大成であろう――



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