外伝その377『GとN2』


――ゴルゴ13。少なくとも日系人である事は判明している超一流のプロ。その出自は謎に包まれているが、少なくとも、かの東郷平八郎の係累ではないかと言われている。駆け出しだったともされる時代に30代前半ほどの外見だったとされ、その正確な活動期間は不明である――


「東郷。アンタはこれから何を?」

「俺は各地で仕事をするだけだ…」

「デイブから、アンタの銃で渡しきれなかったもんを預かってる。武器庫で確認してくれ」

「分かった…」

黒江と別れ、部屋を出るゴルゴ。それと入れ違いにドリームが入ってくる。

「先輩、今のは」

「Mr.東郷だ。会釈はしといたな」

「え、ええ」

「彼には粗相の無いようにしろよ。それと、後ろには立つなよ」

「分かってます。あの人が、あのデューク東郷…」

「そうだ。のび太と同じ異能生存体にして、肉体を極限まで鍛え抜いたプロだ。東西冷戦時代に主要国の策略に関与し、重宝された存在だ」

ゴルゴはデウス・エクス・マキナ的な運で窮地からも脱出した事もある。異能生存体であると黒江が気がついたのは最近の事だが、ゴルゴはクローンで代替わりをしており、2019年現在は三代目が活動中だ。三代目は二代目と違い、若き日の初代に近い饒舌さを持つので、周囲は察する事をさほど必要としなくなるため、多少は気が楽であるという。

「…ふう。東郷といると、気を張らないとならんから肩こるぜ」

「ゴルゴって日本人なんですか?」

「日系人である事は分かってるが、それ以外は不明だ。東郷平八郎元帥の係累だという推測も出てるが、憶測の域を出ない。キュアハートとラブリーは手続き中か?」

「はい。今、隊長に挨拶してるところです」

「これでピンクチームの強者枠はだいたい出揃ったが、問題はパッションがどこにいるか、だ。ラブが気にしてたしな」

「せつなちゃんを?」

「のび太やドラえもん、ディケイドに探させている。他の世界でプリキュア達が倒されていっている以上は敵より先に見つけんとならん。幸い、美琴からダイヤモンドは見つけたと連絡が入った。直に来るはずだ」

「六花ちゃんが!?」

「ああ。そっちは問題はないが、パッションはアカルンを持ってるはずだろ?」

「でも、あれ、居場所を知ってないと転移できないはずじゃ」

「何ー!?」

「わたしも又聞きなんですよ、そこは。体力以外の制限がないって聞いたこともあるような…。ただ、次元世界は広いですからね…」

「ドラえもんも仕事が終わったから、こっちに戻るそうだ。パッションの捜索は長引きそうだぞ」

「ラブちゃんもそれは覚悟してます」

「わかった」

「先輩は何やってるんです?さっきから」

「東郷と話してる内に、ハラスメント攻撃について、いいアイデアがでたからな。烈風を使えないか研究してるところだ」

「烈風?ゼロ戦の後継になりそこねたって有名な?」

「そうだ、史実だと時期を逸してるとか、無駄にデカイとか批判されるあれだよ。誉エンジンの悪評を決定づけた戦闘機だが、素性は悪くないし、空気抵抗係数は紫電改より良好だよ。史実よりいい工業能力で機体を作って、史実より遥かに良質の燃料入れてるんだぜ?670キロ出て当然だよ。元は艦上戦闘機で、陸上機よりハンデがあるんだぜ?もっと強力なエンジンに換装すりゃ、700キロはカタイ。日本はF8FとP-51Hを気にするが、ベテランなら抑えられる。俺の同位体が43でモスキートを撃墜してみせてるように。現に、戦線ではF6Fとコルセアを零戦二二型で翻弄する義勇兵が多い。カタログスペックが優秀でも、パイロットが性能を扱えないと意味はねぇんだ。それと、空中指揮管制も優秀だしな、うちらは」

「それで烈風を爆装させるんですか?」

「ラインを生き残らせたのは、戦闘爆撃機に転用させる目的もある。そのためにロケット弾の懸架が可能なように設計を変えさせた」

「コルセア化ですか?」

「要はそんな感じだ。紫電改のモデルチェンジの陣風が出た以上、制空戦闘機一本槍で運用する理由も無くなった。日本はジェットに主力を移してぇようだが、リベリオンはF4Fが行き渡って、F6FとF4Uへの機種変更が矢継ぎ早に行われたばかりだ。ベアキャットはまだ初期生産機の段階だし、大規模投入はないだろう。この前まで複葉機に乗ってた連中がレシプロ最末期世代の高性能機を充てがわれたところで、まともに扱えないだろ?軽自動車しか乗ってないやつにフェラーリやランボルギーニを運転させるような感覚だ。うちも九六式から機種転換訓練が間に合ったパイロットは一航戦の連中だけだ。だから、義勇兵を大量に雇ったんだよ」

黒江がゴルゴとの会話でヒントを得た『烈風のヤーボ化』。ヤーボとは、ドイツ軍が使っていた『戦闘爆撃機を指す造語』であり、紫電改の後継機種『陣風』が生産され始めた時勢では、相対的に旧世代機になった烈風の生産ラインを生き残らせた理由は『ロマン』や『メーカーの雇用対策』ではなく、『簡単に戦闘爆撃機へ転用できる機種の確保』のためだ。烈風は史実と違い、戦闘爆撃機に転用可能なように翼の構造と機体強度を強化されており、搭載量も史実を数段上回る。『烈風は直線翼から逆ガル翼に設計変更されたから無理がある』という批判もあるが、実際は当初から逆ガル翼機であり、運動性能を重視して翼面荷重を妥協した結果だ』と、かつては宮藤博士の右腕であった『曽根嘉年』技師が告白している。黒江は実機が開発中の段階で曽根技師に入れ知恵し、戦闘爆撃機に転用可能なようにさせた。基礎設計が古いためと、零戦系の宿命か、『高速でのロール性能は紫電系統に劣る』ため、烈風は主力制空戦闘機にはなり得ないが、戦闘爆撃機として化ける可能性を秘めている。操縦性は紫電改より良好ともされるため、黒江は烈風の存在意義を『ヤーボだ』としていた。

「烈風って、なんであんなに大きいんですか」

「運動性能重視の弊害もあるが、時代的にグラマンとシコルスキーに対抗する重装備が求められたからだよ。空母機動部隊の艦上機と見るなら、パイロットに受けは悪いが、大型空母用の戦闘機として見るなら、悪い機体でもない。ロール性能は紫電改より落ちるが、零戦よりはマシだ。俺は開発中に入れ知恵して、ヤーボに転用可能なようにさせてある。和製コルセアだな」

「宮菱はなんて?」

「ぶーたれてるが、連中にはジェットの開発と生産に取り掛かってもらわんとならん。だから、烈風の生産ラインを生き残らせたんだ。手っ取り早く、ヤーボを得るためにな」

「日本はなんで、紫電改と五式の一本槍なんですか」

「史実の実績と、機種を絞って生産効率を上げるためってのが言い訳だよ。ジェットを造るため、レシプロの生産ラインを整理したいのが狙いだが、前線の機体の稼働率が落ちてるから、保守部品を用意せんとならんし、現地換装の容認問題もある。前線じゃ、F4Fも大量に飛んでるってのに、こっちはシーフューリーとタメを張れるレシプロ最終世代だぞ?制空権は容易に取れる。ましてや史実の一航戦、二航戦、五航戦の猛者達を動員して乗せてるんだ。敵はジェットはストライカーとラインを食い合って少数生産に留まってるし、新鋭レシプロ機はF6FとF4Uだ。」

「なるほど」

「その改良型にしても、一部の精鋭部隊にしか配備されてない。より新型のF8FやF7Fなんてのは、配備もごく少数。パイロットの練度は言うまでもなくお粗末だ。制空権確保に関して言えば楽だよ」


「日本は神経質にすぎません?」

「ま、史実の開発速度を考えてのものだよ。だから、それ前提で飛行機の切り替えをすると、パイロットの育成が混乱する。数年ごとに機種転換訓練をやんないとならんからな。敵はそれもあって、F6Fとコルセアの配備で精一杯なんだ。」

「でも、こっちはどんどん変わってますよね」

「仕方ねぇだろ、政治だよ。こっちはシュワルベなんて目じゃない性能のセイバーやマルヨンが出回り、直にクルセイダーやファントムも本格的に出る。ウルスラが拗ねとるが、日本がそうさせてるんだよ。少なくとも機体の質は敵が10年頑張ってようやく追いつけるくらいに優れてる。防衛装備庁は鹵獲されることを極端に恐れてるけど、鹵獲したところで、相応の性能の耐熱合金や、航空力学や流体力学の研究がおっつかんとコピーも作れんのだぞ」

「確かに…」

「それと、艦上機の大型化で今までの護衛空母は使い物にならなくなったし、雲龍型で『小型』扱いの世の中だ。大型空母を揃えんと、戦後式空母機動部隊の整備は出来ん。日本が欲しがるような『空母機動部隊』はな」

黒江は机に飾ってある『F-8』戦闘機と『原子力空母・エンタープライズ』の模型を手に取りながら、ドリームに言う。艦上機の大型化で空母機動部隊の維持費はかつての戦艦の艦隊を揃えていくより高額になり、アメリカ以外の国々は整備を半ば諦めた状態になったのが史実の戦後世界の状況だ。日本が憲法の関係上で持てない『攻撃型正規空母』を扶桑に持たせようとしている現状だ。護衛艦隊の整備に邪魔と見做された戦艦が『怪異の存在上、保有の放棄ができない』のは防衛装備庁の誤算だろうが、超近代化でむしろ、戦後型艦艇にはない『攻撃への直接耐久性』と『主砲などの電子装備に依存しない大火力投射能力』を備える事が着目されている。オートメーション化を一定水準まで行った『新戦艦』は史実のアイオワ級より遥かに少人数で運用出来、それでいて、核ミサイルにさえ耐える耐久性は『核兵器の陳腐化を起こし、核兵器を廃絶させたい』日本には政治的に都合のいいものであったし、『儀仗的意味でも見栄えする』とされた。(それは史実戦後の米海軍も同様に考えていた)ただし、戦艦の保有数は革新政党政権の時代から議論され続けており、革新政権は当初、『戦艦は時代遅れだから全廃』と述べていたが、後に人気取りのために『最新型の大和と武蔵以外は全廃』に切り替えた。政権交代後はウィッチ世界の情勢への配慮と、敵国の空母機動部隊の整備をコントロールする狙いもあり、『戦艦の維持』は容認された。ただし、太平洋戦争時に既に老朽化していた金剛型から伊勢型までの戦艦、艦齢が高齢化している長門型に関しては退役、『大和型とその一族で連合艦隊の戦艦を時間をかけて規格統一する』とされ、ダイ・アナザー・デイ中より、大和型の血統を持つ新戦艦が旧世代戦艦の代替名目で建艦されていく。旧世代艦は退役とされたが、実際は海援隊の組織改革と近代化の一環で同組織へ状態が良好なものは『譲渡』され、太平洋共和国の守護に使われていくのだ。

「戦艦の維持は高額化した空母機動部隊を一式揃えるよりは安価だ。だから、Y委員会はラ號を餌にして、日本を口説き落とした。ラ級戦艦が使われちゃ、戦後型護衛艦は形無しだしな」

「あれ、オーバーテクノロジーの塊じゃないですか」

「動力はな。実際は武装とかは多くが当時の水準だ。だから、宇宙戦艦化でかなり弄ったんだよ。それにモンタナにしろ、ラ號にしろ、何万トンもあるのが超音速でかっ飛んでみろ。イギリスは制空権の確保されてない戦場で使うのを萎縮して死蔵したが、ジェット機の空対空ミサイルくらいは弾き返せるのが実際のところさ」

ラ號などのラ級戦艦は三次元戦闘を想定した構造をもつため、原型艦より異様なほど頑強に作られている。特に、ラ號は元々が『超大和型戦艦計画』の産物であった都合で、装甲はラ級でも頑強な部類に入る。(日本軍が戦況打開のため、やたら頑強に設計していたおかげ)ラ號のコピーかつ、姉妹艦に相当する『豊葦原』(俗名・轟天)は日本海軍の構想通りに三連装51cm砲を積む設計で建造中である。(64Fに配備予定。『計画』のプロトタイプであるため、実戦での試験運用が必要とされた)

「今、各国用にラ級の量産を用意している。そのプロトタイプとして『海底軍艦轟天号』が作られている。配備先はウチだ。名目上、大型航空機扱いで。それでノウハウを連合艦隊にもたらした後に、量産型を海軍に配備するって寸法だよ。プロトタイプだから、量産型でオミットするレーザー兵器、ビーム兵器てんこ盛りだ。ま、試作ってことで予算使いまくれるせいだが」

「天姫や姉貴からの手紙にあった『南洋の地下街』の本当の目的ってそれですか」

「うむ。地下で作ったほうが安全だしな。日本の目を誤魔化すためでもある。日本にバレたら、ティターンズがマスドライバーで質量攻撃する危険が大きい。だから、地下をジオフロント化させるんだ。地下街整備の大義名分が使えるから、予算確保は楽だったそうな」

「それでですか」

「うむ。戦車道世界で実験して、ドラえもんがその成果をつぎ込んだから、一部は完成している。軍用区画だけだがな。そこで作ってる。再来年には艤装が終わるだろう。本当はこの作戦に使いたかったが、戦艦は熟成に二年はかかるしな」

黒江の言う通り、地球連邦軍は数ヶ月で宇宙戦艦を完成させる実力を持つが、日本が艦艇の慣熟に時間をかける意向なため、それも前線の兵力不足に拍車をかけており、日本も流石に折れ、戦力補充名目での兵器の生産速度を早めている。戦時では平時と違い、兵器は消耗するものなのだ。

「ドラえもんから連絡が入ったよ。アナハイムの試作品のデータが必要だから、バンバン使ってくれと催促されたそうだよ」

のび太が入ってくる。

「例のトライオン3の剣だろ?スカーレットがさっそく使ったそうだ」

「他のプリキュアにも使わせてくれってさ。ああいう剣の武器は見栄えもいいしね」

「やれやれ。出資者は難題を仰る。プリキュアに剣はあまり例がないんだがな。それにプリキュアに剣を持たすことにブーイング来そうな時代だしな、昨今」

「私の時代より厳しいですもんね、昨今(2019年時)は」

「ああ。2018年のキュアエールは当の女子から批判されてるんだけどな。社会派ぶってるって。日系社会ってのは、妙に保守的だからな。日系社会はある種、親の地位と懐事情で子供の未来が決まるところが大きいからな。それと、エールみたいな自己主張激しいタイプは嫌われ者になりやすいからな。日系社会では『なりたいものとなれるモノの違い』を容赦なく突きつけるからな。」

「出る杭は打たれる、だよ」

「実際、警察官になりたかった奴が二等親にヤクザものがいたってだけで弾かれて挫折したって話は聞く。大人の世界ってのは理不尽な方が多いんだよな」

「まぁね。大人の世界ってのは、狸の化かしあいって形容されてるからね。特に2010年代になると、SNSとかで気に入らない相手を炎上させたりできるし、勝ち組の社会での地位を誰でも揺るがせられる時代になってる。そのくせ、ヒーローやヒロインには古くからの理想像を押し付ける。日本人の悪い癖だよ。キュアエールは理想論を言ってるだけだって言われてるよ。ヒロインには現実を感じさせない存在でいてほしいんだろうけど」

「あの子はどこか自分のお母さんの幻影を追ってたところあるからなぁ。それが重荷だったんだけどね、わたし」

「応援ってのは、そう単純じゃないんだよ。僕だって、自分の誕生日を何度かおふくろ達に忘れられて、それで家出した事かある。生きるって事はそれ自体が戦いなのさ。不死になろうとも、ね」

「そうだ。世の中、理想だけで食っていけるほど優しくないからな」

「史実の第一次大戦の和平案の一番過激な案は『ドイツを17の国に分割してそれぞれにヴェルサイユで掛けられた賠償金を掛ける』案だったそうだよ。こんなのしたら、欧州が共産化する危険が大きいって。仏と伊は本気でやろうとしてたらしい。だから、ティターンズはそこに漬け込んでるんだろうな。キュアエールの思うより、現実は非情だからね」

「本当だよな。俺達もそうだ。存在の位が神になったくらいで全知全能って見られちまうからな。俺達は戦神の従神くらいの地位だぜ?それに何を求めるんだよ、まったく」

「神様ってつくだけで、全知全能って思うのが多いってことさ。ギリシア神話や日本神話も知らない子供が喚いてるのと一緒だよ。僕でも、そのくらいは知ってるしね」

のび太も、21世紀の人間たちによる黒江達への誹謗中傷には手を焼いているようだ。ここである提案をのび太が出す。

「いっその事、強さ表でも作ればどうだろう。誹謗中傷してる輩は『強い割にこいつとは戦って、こいつとは戦わないのか、俺つえーしながら説教カマすとは何事か、こんなんにのびたとか勝てるはずないだろ』だしね。模擬戦をする時に同時に出そう」

「いろいろいるし、基準が決められねぇだろ」

「何でもいいんだよ、こういうのはね。出してしまえは、こっちのもんだよ。不死性なんてのはおまけなんだしさ」

「出すったってなぁ…」

「僕なんて、間違いなしに腕っぷしはEかF判定だよ。鋼線で暗殺するのは覚えたけど、あれはタイマンの喧嘩には使えないしね」

「それと、腕っぷしはプリキュアはバラけるぞ」

「わたし達はなぎささんとほのかさんに代が近いほど、腕っぷしは強いですから…」

「日本の神々はどちらかと言えば精霊みたいな物だし、ギリシャ・ローマ神話や北欧神話、ケルトの神々やトーテム、カムイ等も同じ。アブラハムの宗教の神くらいしか、『全知全能』をかたってないんだぜ?あー面倒くせぇ。近頃のガキはなんでもかんでも、ランク付けかよ」

「分かりやすいじゃない。仮面ライダーだって、昭和と平成じゃ比べられないけど、スペック表はあるしさ。栄光の7人ライダーは殿堂入りだし、RXはスペックだけなら昭和最強だろ?」

「確かに」

「わたしもですよ。ピンクチームでいうなら、なぎささんと咲さん除けば、わたしは上の方だって自覚あるし」

「お前が最後だしな。二年間戦ったピンクは」

「ええ。サザエさん時空を一回してますけどね」

「ま、普通に行けば、かれんとこまちは中学でてねぇといけないはずだしな。それが起こって、アクアとミントを引退する世界線もあるはずなんだよ、理論上は」

「ありますかね」

「普通に時間が経過すれば、な。ただ、お前らはどうも、その流れを超えた節がある。かれんとこまちは四年も中学生っておかしなことになってるのは、そのせいだろう」

「どうしてそれが起こったんだろう?」

「フレッシュが出るまでの空白期間を埋めるプリキュアが必要だったからかもしれん。世界的にはそうとしかいいようがない」

プリキュア5は事実上、現役時代が二年間に及んだ。それは『フレッシュ!プリキュア』の誕生まで、地球を守るプリキュアが必要だったからでは、とする仮説を黒江は立てる。フレッシュ以降は一年での世代交代が当たり前だが、ドリームが強いとされるのは、『最初に最強フォームを手に入れたピンクでありつつ、二年間の経験値を持つから』だ。

「多分、プリキュア5の世界は僕の世界の時空融合の煽りを受けたんじゃないか?それで周囲の時間感覚が緩やかになっていたとか。その分の経験値はあるから、君はかなり上の方だよね」

「腕っぷしは自信あるけど、ピーチほどじゃないんだよなぁ」

「ピーチは格闘技してないよね?」

「うん。ダンス一本槍だけど、なんか、やたら強いんだよね。殴り合いできるし」

「あいつは変身してると、相当いい動きするんだよな。それと、ラブリーとハートも相当やるそうじゃないか」

「あの二人は近年の成長株ですよ、先輩。ま、まぁ、わたしほどじゃないけど〜」

「最強フォームなら、だろ」

「初期のオールスターズのセンター張ってたんですよ!?」

「張り合うなっての」

「7人ライダーは殿堂入りでいいね?」

「あの7人はレジェンド枠だよ。力を技で抑えられる古強者だ。俺と智子が一本も取れねぇから」

栄光の7人ライダーの殿堂入り。これはスペック云々以前の問題ではなく、ヒーロー華やかりき昭和後期を生き延びた猛者としての強さを称える意味合いも大きい。聖闘士になった後の二人を抑え込むほどの強さ。特にスペックでは最旧式のはずのダブルライダーは、人間の時に極めた武術を更に昇華させ、黒江と智子を容易く抑え込んでいる。ある意味、『柔よく剛を制す』を体現した存在が後発の仮面ライダーが出現した後のダブルライダーかもしれない。

「柔よく剛を制すっていうだろ?特にダブルライダーは武術の達人だぞ?卍キックとかアレが技巧じゃないなら、何が技巧だっての」

「避けられるだろって批判来るかもね」

「バーロー、いくら聖闘士でも、ライダーキックを避けるのは大変なんだぞ。実際はものすごい速さで来るから。昭和ライダーは改造人間なんだからな」

「ライダーキックは実際、どんな感じなんです?」

「急降下爆撃の爆弾が降ってくるようなもんだ。三号のライダーキックとか食らった経験あるけど。一瞬で骨が逝くぜ。俺はそれで聖闘士を目指したんだからな」

黒江は仮面ライダー三号に痛めつけられ、無力感に打ちのめされた事がある。黒江の力への渇望の根源はそれである。

「ファイズのキックだって、テレビじゃ何秒かかけてじっくり見せてるけどよ。実際にはミリ秒単位で加速されてるし、昭和ライダーのキックもテレビの演出の1/10以下でヒットしてるはずだぜ。遅いのでもな。あれ食らった瞬間、死ぬんだって実感した。骨がポキンと折れていくんだぞ?軽く」

「クロックアップはそれ以降に身に付けたとか言ってたしね」

「ああ。3号に対抗するために死ぬ気で覚えた。単に俺つえーをしたけりゃ、兵士連中を無思慮に殺しまくってるよ。ティターンズにはそういう輩が多いからな。ライダーキックはイキナリ、MBTの主砲弾が飛んでくるか、AC-130の攻撃食らうようなもんだぜ。ダブルライダーで、だ。ストロンガーさんやV3さんのなんて、艦砲並だぞ」

「7人ライダーは改造人間だしねぇ」

「俺つえー系とか説教系じみてるとか言われるがな。クロックアップやアクセルフォームの速度だって、昭和ライダー系の敵はは対応できるだけの力があるし、俺達が介入しなきゃ、滅亡してる世界だってあるはずだ。それに、世界が違うってだけで、悪い連中のやること見過ごせっての?」

「連中はこういうだろうね。再生は破壊から生まれるから、自分達と関係ない世界が破壊されても再生のための犠牲だって、受け入れろってね」

「その理屈で言えば、ZEROが好き勝手に世界を破壊しようと、親しい友人の同位体が死んでも、罪悪感など感じるなってことになるぞ」

「そうさ。君達や僕たちはゲームでの属性で言えば善であり、光だが、ZEROとかブライ大帝、ドクターヘルは闇、ギレン・ザビは混沌にあたる。相容れない価値観があるんだよ」

のび太は自分達を善と光の属性を持つと例える。対して、ドクターヘルやブライ大帝は闇そのもの、ギレン・ザビは混沌。根本的に相容れない価値観というものは存在する。実にゲーム的だが、表にするとわかりやすい。


「一号ライダーが言ってたろ?どんな手を使ってでも、最後に正義が勝つって」

「本郷さん、人質作戦を余裕でかますからなぁ」

「……」

「一号さん、求道的なとこあるけど、戦いになるとシビアだぞ。人質作戦するし、アジトは放火するし」

驚きのあまりに固まるドリーム。

「要するに、勝てば官軍負ければ賊軍って奴さ。表にしてみると、そういう頭脳面も強さの指標になるよ」

のび太はそこはシビアに判定する。

「お前だって、一年目のときに、敵に啖呵切ったことあるだろ。ナイトメアの重役相手に」

「あ、あれはその場の勢いで…」

「それにしちゃ、肝が据わってたぜ?みんなの命がかかってたからか?」

のぞみはいざという時に肝が据わっている一面を見せる。その場の勢いといいつつ、完全に切れた時は猪突猛進の勢いで殴りかかった事もある。ドリームの強さは精神的に肝が据わっている面も作用していると言える。

「ま、総合的に見て、東郷と7人ライダーは殿堂入り。僕は条件付きでS、綾香さん達は無条件でSランクだね」

「私たちは?」

「それはみんなを調べた上でね。単に個人戦闘力じゃ、赤松さんがSSになりかねないしさ」

「まっつぁんは単にウィッチで最強、聖闘士としては白銀最強の孔雀座だからなー。黄金に匹敵するし」

「うぅ。大先輩は反則だぁ…」

ウィッチ出身者は個人戦闘力は高くない者も多いが、赤松は白銀聖闘士最強の孔雀座にして、扶桑ウィッチで右に出るもの無しと謳われる猛者である。公的撃墜数は50機から80機ほどだが、実際は400をこの時点で超えているはずだと吹聴している。

「若いの中だと、ハルトマンが成長株だ。飛天御剣流を我流で覚えちまってるからな。」

「その他のライダーと戦隊は調べておくよ。スカイライダーが最弱判定でちゃうしね、経歴的に」

「あの人、ただのハンググライダー部員だし…」

「仕方ないさ。そのために友情の大特訓でパワーアップしてるけど、映画だと噛ませ犬だし」

「洋さんが憤慨してるんだよ、あれ」

「スカイライダーはバイクが強いしね」

「わたしもせっかく覚えたの使わないと…」

「少なくとも、お前は錦の残した遺産はモノにしろ。それをのび太とドラえもんとの模擬戦でぶつけろ。手加減なしでいいと頼んでるからな」

「分かってます」

「ま、君のフルーレに対しては、僕は名刀電光丸を使わせてもらうよ。DX版をね」

「いいの?」

「いいさ。鋼線は暗殺術であって、タイマンには向かないからね。HELLSINGの執事のようにはいかないさ」

青臭さを覗かせつつ、ドラえもんの道具込みで模擬戦を戦う事を明言する。自分の運動神経の鈍さを自覚しているようだ。簡単な『強さ表』を書きつつ、楽しんでいるあたりはかつてと変わらぬ童心を覗かせるのび太であった。なお、ドラえもんの最終兵器『石頭』の存在を失念しているキュアドリームだが…?



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