外伝その379『GとN4』


――プリキュア達に代わり、人造人間ハカイダーと戦闘に入ったキューティーハニー。

「では、新しい変化を試すとしますか。ハニーフラ――ッシュ!!」

「ハンターハニー。銃撃戦向けの新変化、これなら、ハカイダー。貴方にも対抗できる」

その変化は自己改良進化で身につけた新たな変身の一つ。ハンターハニーと呼ばれし変化で、ハリケーンハニーの上位互換にあたる変化である。箱帽子タイプのキャップとポケットの沢山着いたベストに乗馬ズボンにジャングルブーツと、ハンターである事が子供でも判別可能な衣装を纏う。早撃ちはのび太とデューク東郷に伍するレベルに達している。なお、銃撃戦全般で能力が強化されるのと、作る銃はちゃんと実銃である。

「ほう。ウィンチェスターライフルか。これまた玄人好みのレバーアクションを」

ハカイダーは関心する素振りを見せる。レバーアクションは玄人が使えば、ボルトアクションより連射が早いともされ、のび太も実際にやってのけた事がある。

「だが、強力な弾薬を使えん構造のレバーアクションで俺にどう挑むのかね」

「まぁ、見てなさい」

微笑むハニー。すると、ハカイダーと撃ち合いを始める。目にも留まらぬ速さで初弾が放たれる。

「ちょこざいな!」

ハカイダーはハニーの放つウィンチェスターの弾丸をバク転しながら避けつつ、ハカイダーショットを撃つ。ハカイダーショットはたいていのアンドロイドを一撃で撃ち抜く威力を持つが、強力な分、エネルギー弾にしろ、実弾にしろ、リロードに多少の時間を要する。ハニーはハカイダーと違い、骨格と中枢部などは金属であるが、全身が人工筋肉で覆われている分、動きに柔軟性を備える高度なものだ。ハカイダーも人間くさい動きは可能だが、隠密行動に向かない弱点があるため、アンドロイドとしてはハニーのほうが技術的に高度である。


「ふふ、ご自慢のハカイダーショットは見かけ倒しかしら?」

「そいつはどうかな。なにも俺は銃撃だけが能ではなくてな」

ハカイダーは剣を構え、ハニーはそれにボウイナイフで応戦する。打ち合いは目にも留まらぬ速さであり、ハニーの戦闘能力はハカイダーに対抗できることの証明である。

「凄い…私達の目に見えないなんて」

「それがハニーだ。あれは単に変化の一つで、本気じゃないんだぜ?」

黒江がドリームをお姫様抱っこした状態で降り立ち、解説する。

「はぁっ!」

つるし罠を空中元素固定で出し、わざと押される形でハカイダーの足をワイヤーで縛ってバネで空中に放りあげる。放り上げた直後にライフルを撃つ。ハカイダーの装甲は貫けないが、ダメージは与えられる。

「うーん。声を張り上げると、こまちさん…ミントにそっくり、さすが姉妹…」

「黒江さん、何処のロリコンタキシードみたいなムーブしてんですか?」

「関心はそこか?ルージュ。こいつをなんとかしてくれよ」

「あ、す、すみません。ほら、ドリーム」

「ひーん〜、ルージュぅ…あたしの、あたしの技が全部……」

「ほら、泣かないの。黒江さんも困ってるわよ」

「だって〜…」


ドリームはショックで泣いている。ルージュがなだめすかせつつ、黒江からドリームを受け取る。

「「技が破られたなら、新しい技を身につける、1号(本郷)さんからの伝統に従うしかないな」

「なんですか、その昭和的発想」

「昔の技は漫画的理論的に破られるだろ?俺も特訓でここまでになったしな。ドリームはこれから特訓メニューだな」

ルージュに言う。黒江はドリームを特訓させると。既に休暇を使っての特訓は何回かさせているが、本格的にさせるつもりらしい。

「まぁ、死にかける状況を何回か経験すりゃ、何かしら目覚めて新しい技の一つ二つ出るだろ?…おい、ハニー。遊んでないで、ハカイダーをとっととどーにかしろ」

「ちょっとは楽しませてよ。でも、ここらで試すのも一興ね。愛のため、乙女は変わる!ハニーフラ――ッシュ!!」

ハニーは変身をまた敢行するが、今回は違った。すべての世界のキューティーハニーで最強のポテンシャルを持つ『ハイパーハニー』へ変貌する。

「え、な、なんですか、それ!」

キューティーハニーのコスチュームに黄色のウエストラインが1本加えられ、色も上半身が白、下半身が赤に変わるなど、大幅に変わっている。すべての世界を通してのキューティーハニーの最強形態『ハイパーハニー』。

「さしずめ、ハイパーハニーと言うべき形態よ。あなた達に最強形態があるように、私にもあるのよね」

コスチュームに追加された白いロングスカーフもあり、変身ヒロインの面目躍如のハニー。ド派手な変化である。プリキュアの最強形態の芽はキューティーハニーやセー○戦士の時代にはあったのだ。

「おお、それが全次元世界でも最強のキューティーハニー、ハイパーハニーか!ん?お、お前、ゲッター線でも浴びたのか?のび太の世界のキューティーハニーの体にはないはずの機能だぞ」

「自己進化とか色々よ。お父様の想定は既に超えているもの」

驚く黒江。ハニーも『今の自分は父(如月博士)の想定を凌駕している』と述べているように、自己進化で強くなった事を明言した。言わば、平行世界中に散らばる自らの以外の空中元素固定装置との共鳴もあり、リミットを超えた状態であり、ハイパーハニーへの変化は平行世界のハニー自身の能力を取り込む事で実現させたもので、23世紀世界のハニーの体に組み込まれた本来の機能ではない。のび太という特異点との接触も助けになっている面も大きいが、ハニーはこれでスーパープリキュアに見劣りしない形態を持ったことになる。

「さあて、平行世界の自分の記憶が頼りだけど、やってみるか!ハニーヴァージナルインビテイション!!」

シルバーフルーレにエネルギーを集中させ、虹色のVの形のエネルギー波という形で放ち、ぶつける。これはプリキュア5の活動末期での極め技『プリキュア・レインボー・ローズエクスプロージョン』に酷似しているが、ハニーのほうがアイデアとしては先んじている。ルージュは『プリキュア・レインボー・ローズエクスプロージョン』との類似性に気がつく。

「似てる…、『プリキュア・レインボー・ローズエクスプロージョン』に!これって偶然なの?」

「技のやり方は90年代までに出尽くしてるから、今更だぞ、ルージュ。それにレインボー・ローズエクスプロージョンは破られたことあったろ」

「げ、現役期間中は無敗でしたし。オールスターズの時のあれはフルポテンシャルじゃなかったし、ノーカンです、ノーカン」

黒江とルージュの小気味良いやり取り。その間にもハニーの必殺技はハカイダーに大ダメージを与える。

「さすが、と言っておこう」

「あら、負け惜しみ?」

ハカイダーは余裕を崩さない。技に耐えきり、相手に称賛を送る。

「これは貸しにしておくぞ、キューティーハニー、それに小娘共。…各員、目的は達した!後退だ!」

ハカイダーはバイクに再度跨がり、一言言い残す。

「キカイダー兄弟に伝えろ、キサマらはこの胸の悪魔回路にかけても破壊するとな」

ハカイダーはニヒイズムに溢れし台詞で去っていった。ハカイダーの使命はキカイダーの破壊。それだけが彼の作られた目的。なんともダークだが、彼なりの美学を感じさせた。

「あれがハカイダー…」

「人造人間キカイダーとその兄、キカイダー01の抹殺だけが奴の存在意義だ。考えようによっては悲哀たっぷりのやつさ」

黒江はキカイダー兄弟の好敵手『ハカイダー』をそう評する。仮面ライダーV3から話を聞いていたからだろう。

「なんかアンドロイドへの見方、変わりそう…」

「アンドロイドってのは人間型ロボットの意味合いがあるからな。ハニーも広義の意味じゃアンドロイドだな。ハカイダーは曖昧なのよな。制御中枢が脳みそだし」

「私は人間として育てられてたから、ややこしいのよ。お父様は本当の娘さんの代わりに私を作られたから」

ハニーは自分はアンドロイドという自覚があるが、確固たる自我を持ち、如月ハニーとして高校生をしている。そこに秋元まどかとしての記憶と自我が混じりあったため、そこもハニーをややこしくしている。

「別に作られた身体だからって自我を持つことが禁止なんてされてねぇんだ、ドラえもんやヤマトのアナライザー見てみろよ、姿形なんて関係なく魂は宿り人格を認められるんだ」

「それもそうね…」

「あの、ハニーさん。わたし、どうすれば…」

「特訓よ、ドリーム。昭和の頃からの伝統文化。何事も自分を見つめ直すのは肝要よ。こまちにも、そう教えてたし」

「そうだぞ。俺たちや昭和ライダーの皆さんの特訓が待ってるぞー。ラブリー達は事前に一定の特訓は受けてもらっているしな」

「また、ジープで追いかけるんですか?」

「いや、今回は昭和ライダー恒例、岩場での特訓だ。スカイライダーはそれで強くなった」

「え、鉄球とかキックの受け止め……」

「少なくとも、電気は浴びせられるはずだ。ストロンガーさんのエレクトロファイヤーとか」

「せ、先輩…」

「大丈夫だ。変身してりゃ死なねぇだろ。補正で」

スカイライダーが受けたのと同様の特訓は既にラブリーとフォーチュンには課されていた事、ハートもラ號でハッピーの特訓を受けていた事が示唆され、ドリームは青ざめる。ハニーの応急処置を受けているのだが。

「ご愁傷さま…」

「何抜かしてやがる。お前もだよ」

「嘘ぉ!?」

「ピーチとメロディも混ぜる?」

「いや、ピーチは今週はローテーションに入れてるし、メロディは多忙だ。美雲・ギンヌメールの影武者もやってるし」

「それで、ルミナスウィッチーズの存在意義に疑問が出たのね?」

「慰問専門部隊は嫌われるしな、財務に。それに、死んでも二分以内ならタイムふろしきで蘇生しても法律的にセーフらしいからな」

「いやいやいや!?」

「今日はメロディの奴、ビートをバックバンドのメンバーに入れて、ワルキューレの歌を歌ってるはずだ。Gフォースへの慰問だから、キュアメロディの姿で声は美雲って高度なプレイで…」

「貴方の部下達はハイレベルなこと要求するわね」

「その高度なプレイのせいでトゥルーデが拗ねたけどな。あいつ、歌に自信あったみたいでな…」

「なんでバルクホルンちゃんが?」

「聞いてみたら、ミーナに次ぐ歌い手の自信あったんだって」

ハニーは呆れるが、64はルミナスウィッチーズの担っていた慰問任務も代行せねばならなくなったのは事実である。ミーナは正式な音楽教育を受けていたし、バルクホルンも一応は趣味の範疇でだが、歌唱に自信があるとしている。イリヤはピアノ演奏等に天賦の才能がある。64は意外に音楽の才能持ちが多い。

「俺達はロックンロールやポップミュージックに対応できるからな。そこもルミナスウィッチーズの役目が疑問視された理由だが、まだ生まれてないジャンルを要求するほうがおかしいぜ」

黒江の言う通り、ルミナスウィッチーズの音楽は時代相応の流行歌か、ピアノ演奏、吹奏楽などであるため、たしかに自衛隊や米軍の慰問には向かないだろう。だが、1940年代にロックンロールやポップミュージックを求めるほうが本来は異常なことである。

「俺達が対応できるからいいようなものの、この時代の人間にハードロックやパンクミュージックとかやらせるのは、リ○ンの騎士の時代にプリキュアを思いつくようなもんだ。だから、俺達が自前でせねばならん」

「青い山脈や東京ブギウギも世に出てない時代に『ドント・ストップ・ミー・ナウ』とか『ウィーウィルロックユー』を演奏させるようなものだものね、言うなら」

「ジャズにすればいいんだろうが、今の若い自衛官とかはジャズやシャンソンを知らんだろ。まだアニソンしたほうが受けが良い。ドリーム達のアニメの主題歌歌ってやった事あるんだよ、俺」

「へ、先輩…?」

「まさかモノホンに会うとは夢にも思ってなかったしな。それに前、シンフォギア世界でETERNAL BLAZE歌ったら、翼のやつが放心状態になったし、箒の姿でNO,Thank You!を歌ったら、織斑一夏に突っかかられた事ある。知るかっつーの」

黒江は歌は好きなほうだ。フロンティア船団滞在中にグレイス・オコナーからも才能を認められていた事もあり、母親のスパルタ教育がいい方に作用した数少ない例だ。圭子曰く『人間ジュークボックス』と渾名されており、それが調の立場に置かれても、本人以上のポテンシャルを容易にはじき出せた理由の一つだ。黒江はのび太達と関わってからはポップミュージックやロックンロールが好みであるため、箒の代理でIS学園に行った時はそこで一夏に不審がられ、正体がバレた後で突っかかられた事がある。(このように、一夏は失態を短期間の内に三度も重ねたため、千冬の信頼を失い、キュアマーチに戻ったラウラとも気まずくなるなど、踏んだり蹴ったりである。挙句の果てに、フェニックス一輝に『小僧』と一笑に付された)

「マーチが言ってたけど、故郷の世界の友だちと、なんで気まずくなったんです?」

「それがなー。厨二病じみた理由なんだよ。それでビートもため息だよ」

キュアマーチは記憶が戻り、変身した場がIS学園であったことから、織斑一夏と関係が気まずくなった。一夏は『自分の都合のいい存在としてのヒーローが嫌いなんであって…』と釈明する羽目になった。まさか、ラウラがヒロインに変身するとは思ってもなかったのもあるが、箒やシャルからも睨まれることになったため、針の筵状態。千冬からも事後に厳しく叱責される(これは後にマーチがビートに泣きつき、それに怒髪天を衝く勢いで怒ったビートが千冬の声色を使って叱責したのだが)など、踏んだり蹴ったりである。

「ビート、前世がそいつの姉貴でな。それもあって、マーチと電話変わった時に怒髪天を衝く勢いで怒った事があるんだ。ついこの間の事だ」

キュアビートは声色を低めにし、ドスを利かせる事で織斑千冬として応対し、しこたま怒った。一夏は度重なる失態からか、姉からの信頼の喪失を恐れている。仮面ライダーブラックRXから、『俺達、スーパーヒーローは悩みも感情もない作り物とでも思って居るのか?そんな存在はヒーローになんてならない、本物のスーパーヒーローってのは何かを失い、力を得て、奪われた物を奪った相手を滅ぼそうと血の涙浮かべながら生まれるんだ。そして誰かの愛に報いる為に戦う決意を持ったから戦い続けた、そうして周りからヒーローって言われる様になった、そんな俺達を作り物と馬鹿に出来るだけの何かを持っているのか、君は?』と問われた上、その意味を知り、なおかつ千冬が前世の一つであるキュアビートもそこを強調して叱責している。ビートはマーチを泣かせた事も含めて叱責し、一夏は姉からの強い叱責に怯える無様な姿を受話器越しに見せた。それを聞いていた箒が同情するレベルの。

「報告を受けたが、ビート、かなり怒ってたからなー。俺に『一発、プリキュアとしての姿でぶん殴りたい』ってぼやいてたくらい。前世じゃ弟だったからか、『不肖の弟でごめんなさい…』と言ってた」

キュアビートの叱責は一夏を怯えさせたが、口は災いのもとという事を思い知らせる事にもなった。千冬には黒江が口裏合わせを依頼し、一応は黙らせたが、ラウラの一件は千冬に派遣を決断させる一因となった。ラウラはのび太の世界への派遣後はキュアマーチとしての姿を通しており、機体のフル展開はかさばるなどの理由もあり、ISを使うことはなく、プリキュアとして活動している。また、ビートが千冬を経ていたことから、『教官と呼ぶべきか?』と聞いたところ、ビートは『今は黒川エレンで、クラン・クランだから、気にしないでいいわ。むしろ、大尉でいい』としている。また、キュアビートもマーチ同様、数日の休憩中は変身した姿を通し、2019年で国営放送が放送したプリキュア大投票での結果に一喜一憂し、キュアブルームとイーグレットが圏外なことに同情したりしている。後にこの投票の結果は黒江達がオールスターズの戦いに混ざった際に本人達に伝えられ、ブルームは『ふーんだ。ブラックのコンパチだって言われてきてるもん…。絶不調ナリぃ…』と落ち込む羽目になった。2019年はその戦いがあった2010年からの近未来であったが、ブルームはブラックとドリームに挟まれたオセロのコマ扱いで落ち着いた自分のポジションに落ち込んでしまい、ブラックとメロディがフォローするのに必死になるという珍事を起こす。なんとも世知辛いが、ブルームはどうにも印象が薄いのだ。

「そうそう。ビートがそれをやった日に日本の国営放送がプリキュア大投票の結果を出したんだが、ブルームとイーグレットが圏外で、思わず同情したとか言ってた」

ただし、ランキングはスイートプリキュアもビートのみがトップ25入りという結果であり、メロディはそれを聞き、『なんでぇ〜!?』と泣き叫び、ミューズは『日本でもっとアピールしとくべきだった』と憤慨。対して、ドリームはマリンには及ばなかったが、初期プリキュアのピンク勢ではブラックに次ぐランクを叩き出し、国営放送の計らいでメッセージを発信する時間をもらえた。(実質、なぎさとほのかの代理も兼ねている)ドリームはこの結果に頷けられるように、プリキュア界の風見志郎とされ、メディア露出も多いが、V3に例えられることについては『私はあそこまで目立ちたがり屋じゃないもん〜』と愚痴っている。

「わたし、風見さんみたいに、あそこまで目立ちたがり屋じゃないですよ?」

「あの人は伊達男も兼ねてるんだぞ。いいんだよ。三代目の宿命だ、大和にとっての信濃、仮面ライダーのV3、マジンガーZのグレンダイザー…」

「ドヤ顔したいだけじゃ…」

「馬鹿、ルージュ!逆ダブルタイフーン食らわせられるぞ!」

風見志郎は新命明や番場壮吉との交流を持ってからは『トイヤ!』の掛け声、『さっそくおいでなすったな』などの伊達男風の台詞回しを好んでおり、ドヤ顔で現れる率は高い。実際、プリキュア達の前にもドヤ顔で現れる事が多いため、ルージュが指摘するが、黒江はそれを注意する。V3は『如何にカッコよく出てくるか』を日々研究するなど、元が体操選手だった名残りを見せており、本質的にヒーロー向きの性格なのが窺える。

『いやあ、ごめんごめん。援護のしどころ見極められくて』

「いや、却って雑魚どもへのプレッシャーになったぜ。で、強さ表は書き上がったのか?」

『まだだよ。英霊とプリキュアに食い込んでる子もいるからね。君たちのことを『己の意思ひとつで人間の都合や善悪なんぞ、文字通り武力で凪ぎ払えるのだから、居場所を造る云々以前に既に自由を手にしている』なんて連中もいるしね。それじゃ大首領やZEROと同質の存在でしかないんですけどね』

「力で言うこと聞かせるのは、獣の理屈なんだけどなぁ。それじゃ、パンサークローやデーモン族と何ら変わらないわ。のび太くんに何を求めるのかしらね。子供の頃に充分に英雄的活躍はしてきてるはずよ」

『最前線で目立つことかしら。子供の頃みたいにね。まったく。いつまでも、子供の頃みたいに目立つわけにもいかない。僕にも立場があるからね。父親としての』

「要は貴方がこの子たちみたいにバリバリ戦って勲章もらうか、模擬戦でもいいから、勝ってみせないと連中はいつまでもクレームをつけまくるわ。でも、それは戦いが終わってからよ」

『少なくともイベリア半島から敵を追い出さない限りは模擬戦をやれる目処も立たないからね。君たちは『死にたくても死ねない』体だし、僕は半英霊とは言え、カミさんと同じように生きるために今の肉体での不滅性は持たない事を選んだんだけど、君たちは転生を繰り返したり、不滅を願われるプリキュア、キューティーハニーになった以上、嫉妬はどうしても買うさ』

ハイパーハニーと黒江は、のび太は『運命を司る神々との取引で野比のび太としての肉体では絶対的な不死性を付与しない』事を約束させ、その交換条件としての転生を承諾した事を知らされている。のび太は神々からも称賛を受ける存在だが、転生を交換条件に、今の肉体での不死性は得ない。全ては妻のためである。もっとも異能生存体である以上、戦闘で死ぬ確率は極めて低いし、ギャグ漫画補正も加わるので、寿命で死ぬことを保証させたのと同義の取引ではある。

『僕はゼウスの使いに出会った事あるからね。それは普通はないよ。君たちとて、ヒーローやヒロインになる確率は極めて低い。人は嫉妬するのさ。僕は不幸になるはずが、勝ち組の人生に変わった。それ自体がムカつくんだろう。甲児さんが鉄也さんに対して罵倒したように』

兜甲児も過去に剣鉄也に対し、『ウダウダグチグチと不幸自慢しやがって!』と罵倒したら、弟のシローに軽蔑され、タマを蹴り上げられた一件を失敗と述懐している。甲児はその一件以来、シローと気まずくなり、数年間はまともに口を聞いてもらえなかったように、うかつに嫉妬を表に出すと、ろくな事にならない。理不尽な例では江藤敏子が該当する。『当時は合法だったのに、七年後に突然、処分を下された』という趣旨の不満を時より覗かせている。江藤は上層部の不手際等もあり、当時の現場責任を負わされる形で訓告を受けた。本来、彼女に責任は無いが、当時の関係者の多くは1945年では退役済みであり、復帰していた彼女に責任を被ってもらうしか選択肢はなく、軍部は彼女をスケープゴートに仕立てる事でウィッチ部門の引き締めを図った。だが、伝統と風土の保全を第一に考える海軍の中堅層が暴発し、日本の政治的介入を招く事になるのだ。

「江藤隊長の一件もか?」

『あれは江藤さんに責任をおっ被せることで、軍の上の連中が保身を図ったのさ。前任者から引き継ぎを受けてない情報も多いしね。もう随分と時間がたったし、江藤さんはちゃんと報告はしていたから、参謀本部に責任があるとなったから、訓告に留まったのさ。それが原因で起こったカールスラント軍が現場単位でやった差別は当事者が裁かれているからね』

カールスラント軍は他国軍を見下す傾向が有り、ドイツが人員削減を大規模に行い、陸海空軍の陣容は急速に衰え始めた。グレーテ・ゴロプのカールスラント至上主義はドイツに危険分子と判定され、家族も国外追放処分となったし、ミーナは覚醒前の黒江達の冷遇の責任を取る形で二階級降格となった。カールスラントはゴロプよりもミーナの降格のほうに震撼した。ミーナは覚醒で実質的に別人になっているので、反論もできる立場であるが、『自分の無知が招いたことです』と処分を甘んじて受けた。ドイツとしても、人種差別が前線で蔓延っている現状を撲滅したい思惑があり、ゴロプは既に不名誉除隊に処したし、ミーナのケースも十分に不名誉除隊になり得たが、先に連合軍が軍法会議で重い処罰を下していた事で難を逃れている。現場の士気を保つためもあり、それほど悪質ではなかったし、エーリカが情報を流すことで事の重大さを認識し、扱いを徐々に改善しようとしていたミーナは『反省が見られる』とされたのだ。

「確かにな。それでカールスラントの上が震撼して、責任を取って、501関連の権利を手放したから、日本連邦がその運用権を棚からぼた餅で得たようなもんだよ」

『今はデリケートな世の中だよ。教育の名目で個人戦果を出さない、勘定しなかったらいじめって判断されるし、人種差別的発言を公ですれば、よほどの大物でないと重い処分になるし、マルセイユさんだって、今は大言壮語を控えてるだろ?』

「そうだよな。あいつも愚痴ってるもんな。好きなことを言えなくなったって」

『扶桑海軍のウィッチ中堅層の暴発の原因はそれだよ。上に戦闘詳報から個人戦果を廃止するに命令を受けたら、それが僅か二年で廃止された上に、文章に恣意性があるって言われちゃね。それに、海軍は数年の内に撃墜王を公には推奨しない文化ができた。それを粉砕するためにも、日本は海軍航空の形骸化を進めるだろうね』

「坂本も志賀に手こずってるからなぁ」

坂本はこの時期、志賀に代表される中堅層の頑なさに手こずっており、クーデターの矮小化に尽力していた。のび太が指摘するように、海軍航空の形骸化は空自主体での航空部隊の集中管理を構想した防衛装備庁の意向もあり、形式上は存続している海軍航空隊の部隊番号を空軍の空母搭乗時に『防諜のために空軍部隊へ割り振る』という形で具体化するが、組織の再建を願う扶桑海軍の意向、軍事予算のバランス調整の関係等もあり、太平洋戦争中盤には組織の再建が決まるのである。

『ま、この時期の苦労で、海軍は他人に媚びへつらう事を覚えるさ。そうでないと、次の年の予算が出ないもの。それに基地航空隊に軸足を移そうとしたら、史実の戦訓で思いっきりぶん殴られる上、空軍の設立で育てた人員を取られたんだしね。空母が単独で運用できないのを屈辱と思うだろうけど、特攻で人材を浪費した同位国の歴史を思い知らせる事でビビらせるしか、あそこを叩き直す方法はないよ』

「だろうな。潜水艦はこの世界じゃ研究が遅れてるし、海自とぶつかれば、リベリオン潜水艦隊は数週間で海の藻屑だ。核ミサイルとかは怪異への効果に疑問符がついたから、研究は止まるだろうし」

「ある意味、環境には優しいけど、金属資源がジャブジャブ使われる世界ね」

「核兵器撃ちまくって、星が滅ぶよりはましだよ、ハニー。潜水艦と核兵器の相互確証破壊に怯えるより、艦隊決戦でケリをつけたほうがよっほどマシだ」

ウィッチ世界はその後、核兵器の持つ弊害が効果より先に伝わった事で、核エネルギー研究は扶桑が『隕石破壊用』名目で研究を行う以外は下火になる。宇宙進出で金属資源を確保する狙いを早期から持っていた扶桑は『宇宙進出』のためにも研究を押し進めていく。超大国である事をいいことに、大金を注ぎ込んで。二代目レイブンズの時代にはラグランジュポイントにスペースコロニーを建造し始めるまでに至るが、それは科学の異常発達で成し得たものである。また、その過程で波動エンジン製造技術も自家薬籠中のものとし、波動エンジン艦の整備をその頃には、ある程度は可能にするに至る。その中でウィッチは魔導理論の数世代かの革新を挟み、軍での地位の一定の保全には成功していた。核兵器にかけたはずの膨大な資金と歳月が宇宙開発へ注ぎ込まれるためだ。

「うちのガキの時代には宇宙開発の時代にを迎えてるそうだ。多分、のび太の世界も、核兵器にかけた労力を宇宙開発につぎ込んだら、21世紀の始めには月に基地は作れたろうな」

「核兵器は一種の禁断の果実に近いもの。核兵器で平和にはなったけど、大国が崩壊すると、箍が外れた小国や武装組織の紛争が絶えなくなった」

『それを止めるために地球連邦が構想されたんだけどねぇ。実際は戦争で大国を統べないと無理だったし、それもサイド国家の思想が生まれて対立構造になった。次は星間戦争の時代さ。で、30世紀にゲッターエンペラーさ。ジオンもティターンズもよほど、この世界で何かを残したいんだろうね。ハカイダーと手を組んでまで』

「あいつはサブローハカイダーに近いな。ギルハカイダーとはわけが違う」

『恐らく、ハカイダーの予備としてダーク残党がシャドウに手土産として渡した個体なんだろう。サブローハカイダーは倒されたはずだしね。量産型が用意されてたと、キカイダー兄弟が僕に手紙を寄越してきた』

「お前、キカイダー兄弟と面識が?」

『仕事でハワイ行った時に、隠棲してる彼らに会ったことがあるんだ』

のび太は仕事の関係でキカイダー兄弟と面識がある事を語り、彼らから『ハカイダー軍団』構想をダークとシャドウが持っていた事、その内の一体であろうと推測する。

「ハカイダー軍団、か。こいつらを一人前にさせんといかんな」

「せ、先輩…」

「昭和ライダーの特訓の洗礼を浴びせてやるぜ。覚悟しろ」

「の、のび太くぅ〜ん、りんちゃ〜ん…」

「この人、ノリに乗ると止まんなくなるじゃない。ここは勘弁したら?」

『綾香さんはそういう人さ』

「そ、そんなぁ〜…」

しょげるドリーム。のび太からもそう言われては立つ瀬がない。平成生まれのドリームは昭和ライダーの昭和的特訓を受ける事となる。昭和ライダーの課す特訓は過酷そのもの。昭和ライダーの特訓はかつてのなのはが持論としていた『特訓でホイホイ強くはなれない』という一つの事象を否定する形になるが、皮肉なことに、そのなのはも今や特訓でMSパイロットなどの副職を得ているのである。この時の特訓はのぞみの『開眼』に繋がり、同位体と違う『自己』を確立させる礎となったという。



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