外伝その393『図上演習と戦闘5』


――日本・防衛装備庁は史実の航空機開発競争から疑心暗鬼であり、矢継ぎ早に機甲兵器と航空兵器を更新させたがったが、生産設備や前線のインフラの問題で早急には不可能だった。通常兵器の生産を阻害していると思われたストライカーの生産設備の縮小が議論されたため、現地の不安を煽ったのは確かであった。ただし、メタ情報でストライカーそのものの開発は促進されてはおり、『究極の第一世代宮藤理論式ストライカー』と謳われる『F-86』は量産され始め、第二世代の魁『震電改二』が制作開始の段階にあった。前線のサボタージュは既に大問題になっており、MAT側も急に入隊志願が相次いだため、事務処理が追いつかないために一時的に新規入隊を規制する事態となった他、軍部の戦略が根底から崩れ、グローリアスウィッチーズを引っ張り出す羽目となった。当時の同隊のウィッチは世代交代の途上にあったため、第一大隊以外は当時の若手が中心であり、実戦経験も部隊の任務の都合で過小な者が5割近くを占めていた。圭子が『物見遊山』と述べたように、末端の隊員に至るまでが二桁撃墜王という異例の編成の64Fに比べれば見劣りする陣容だった。64が当時に『異端児』と言われたのは、他の戦線を切り捨ててまで撃墜王を集中配置した編成だからで、実際は航空軍編成に膨れ上がっていたからである。その練度が異常と言われるのは、幹部級で固められし新選組が本当に一騎当千であることにも理由がある。圭子が久しぶりに『キ100』ストライカーで直属の部下の数名と移籍間もない隊員を数名を訓練も兼ねて出撃したところ、要請した空域の制空権を10分以内に掌握したという報告を受けた連合軍は瞠目した。早すぎるからだ。当時、通常兵器との交戦でウィッチ隊が制空権を掌握できるに要する時間は通常編成の部隊では20分近く。あまりにスローすぎるため、一瞬で制空権を奪い返されると揶揄されたが、64は8分もあれば『空を支配』できた。これは通常部隊が12.7ミリから7.92ミリ機銃を主要火器にし、対爆撃機用にフリーガーハマーを転用するのみであるのに対し、64Fは近接格闘用の武器の携帯を義務付け、火器は20ミリ、もしくは30ミリ機関砲に更新されているし、魔導誘導弾も携行し、時代のトレンドを先取りしていたからだ――







――日本連邦軍発足後の扶桑軍の改革の一環として、従来の陸士と海兵を統合した『統合士官学校』が発足する手はずとなった。2000年代後半までに防大に潜り込ませた士官や士官候補生らの報告で陸士と海兵の統合が望ましいとされたからだ。扶桑軍人が防衛大学校に潜入調査を行う魁は黒江であり、黒江が防大二学年になる頃に源田実が口添えし、進路を航空要員にさせたのがきっかけである。この潜入調査は防大にとっては、『面倒なお客さん』であった。2000年当時、黒江が既に実戦部隊で実績を挙げた上級将校(当時は佐官)であると、源田実から知らされた当時の防大学校長は『既に実績を挙げている佐官を我が校に送り込まれても……。我が校ができるのは基礎的な教育だけなのですよ。彼女が航士を卒業済みの士官なら、幹部候補生学校に行かせて下さいよ』と愚痴り、その愚痴が10年後に聞き入れられたか、(正確には、役目を終えたとされた)2010年代以降は扶桑軍の士官の自衛隊勤務時の教育は自衛隊の幹部候補生学校への留学に切り替えられ、防大には士官候補生が行くことで、お互いの折り合いがつけられた。これは防大の『シゴキ』が実戦部隊に既に属している人間には通じない事、黒江のように『学校の主になってしまう』事例が複数回あった事の兼ね合いも含まれた。潜入調査が正式に完了宣言を出される2010年代前半までに防大を出た扶桑軍人は数十人ほどで、初期は実績を豊富に持つ実戦部隊の将校が送り込まれ、後期は将来を有望視される士官候補生が送り込まれていた。2010年代後半になると、その人員も中堅以上に昇進してきていたので、元々は統幕入りを阻止するための統括官というポストは時代の変遷と共に重要ポストとなっていた――




――黒江は見かけは若いが、自衛隊では2010年代末時点で勤続16年ほどの中堅層に属する。統括官在任は既に6年近くに達するが、その次のポストがない上、若くして将官になってしまったのもあり、自衛隊では扱いあぐねる存在であった。当の黒江はそれを良い事に、気ままに過ごし、統括官という身分を使って陸海空のすべての訓練を受けるという生活を送り、空自出身ながら、海軍士官としての教育も正規で受けている事になった。その経歴で参謀の粛清人事に悩む連合艦隊の要請で、参謀も兼任したのだが、海軍ウィッチからは陰口を叩かれていた。(陰口自体は幹部候補生学校で仕込まれた事、練習航海にも同行している事が開示されると、途端に止んだという。海軍ウィッチと言っても、この時代は洋上勤務の経験者は少数派であったため、洋上勤務も相応にこなした黒江に比して『潮風を知らない』者ばかりだったため、と後ろめたくなったからとも)その批判は黒江本人はどこ吹く風だが、組織レベルでは大問題であったので、扶桑海軍は広報の華々しさと裏腹に、組織としての内実はパッチワーク状態に近かった。特に、妙なところで史実通りの対立があるのは大恥もいいところであった。陸軍出身であるとは言え、海自できちんと教育と勤務を経ている黒江への批判はその対立に根差すものであったため、黒江が海自の幹部候補生学校で教育を受け、洋上勤務も経ていることが示されると、当時は陸上要員の育成が主と化していた海軍航空は何も言えなくなった。(小沢治三郎と山口多聞もそこを認識して抜擢したため、二人の顔に泥を塗った事にもなる)後に、坂本が海軍の『ご意見番』として君臨するきっかけがこの時の誹謗中傷であるというのは、なんとも情けない話である。連合艦隊が華々しく栄光を味わっている裏で、海軍航空はウィッチたちの子供じみた行為のせいで顔に泥を塗られ、懲罰的に航空機部門共々、空軍への統合が再検討されるに至る。(逆に言えば、特権意識が薄れるきっかけが身内の度重なる不祥事というのは、坂本の胃をキリキリさせる事案であった)陸軍航空の大物と認識されていた黒江への反発もあったのだろうが、この時代は本来、坂本らの世代からそれ以後の代への世代交代期にあったため、『世代交代』を旗印にしての上層部への叛逆の意味合いもあったと思われる。しかし、太平洋戦争が差し迫ってきている時勢では『実戦経験を持つ熟練兵』が何よりも求められたのが、彼女らの目論見が的外れに終わる何よりの理由であった)この混乱はGウィッチ達が軍を定年で退官するその日まで前線、ないしは前線に関わる役職であり続けた理由であり、退官後も軍での身分を有し続ける『元帥』に任ぜられる遠因になる。また、黒江達がここから『一年後』に使うことになるギガストリーマーとパイルトルネードは警察から軍隊へ管理が移されたのもあり、この頃には64Fの武器庫に搬入されていた。





――格納庫――

「うっわ、何だこれ!?」

「ジャッカー電撃隊が送ってくれたツールだよ。平成の初めに犯罪の高度化を懸念した警察が開発していたものだ」

「とてもそうには見えませんよ」

「そりゃな。オーバーテクノロジーを用いて造られたものだしな。元は日本警察にあった特殊部隊用に造られた。特警ウインスペクターとか、特捜エクシードラフトとかのあれだよ。それが廃された後、防衛装備庁に管理が移されてたのをレストアして回してくれた。90年代に想定された事態は起きなかったとか言って、2000年代に公安委員会が警察から取り上げていたのを、防衛装備庁が譲り受けて保管していたものらしいぜ」

「例によって、革新系の時代か、ケイさん」

「そうだ。シャーリー。その姿でいるのも慣れたか?」

「過去生で変身してたから、もう自分の一部っすよ」

景気が良かった時代に造られた『古ぼけた』装備と防衛装備庁は認識していたのだろうが、実際には学園都市も真っ青な技術で構築された超兵器である。しかも、クラステクターやソリッドスーツなどのパワードスーツを前提にして開発されたのがギガストリーマーやパイルトルネードなのだ。それが忘れ去られたのか、自衛隊に装備の試射をさせる事もないままで保管されていた。メカトピア戦争の際に持ち出されて使用され、紆余曲折の末に配備されたというわけだ。

「ものすげえの回してきたな」

「お前らでも、通常形態じゃ扱いかねるだろうな。このギガストリーマーは反動が25Gを超えるそうだから、変身してても反動でぶっ飛ぶだろう」

「うへぇ」

「ウインスペクターとソルブレインが使用してた武器だ。開発の名目は障害物破砕機器だそうな」

圭子がキュアメロディに説明する。ギガストリーマーは破壊力が軍用に転用するにしても過剰と思われた上、反動が車載にしても強すぎるため、防衛装備庁も死蔵するしかなく、パイルトルネードも似た理由で倉庫の肥やしにされた。だが、プリキュアを内包するGウィッチであれば扱えるとされ、回されたわけだ。

「防衛装備庁も扱いあぐねてたんで、あたしらに回したのか?」

「ジャッカー電撃隊の要請って形でな。エクシードラフトに至るまでの装備を倉庫から集めさせてもらった。公安委員会が政権交代で取り上げたんだろうな。元は警察の装備だし」

格納庫の中には、特捜エクシードラフトのヘビーサイクロンに至るまでのかつてのレスキューポリスの装備が集積されていた。『警察の装備』としては過剰とされたのか、組織の解散後に公安委員会が装備を警察から取り上げた事が申し送りの書類に記されていた。そして、最終的に64Fで再利用される。パワードスーツ前提の装備だが、変身したプリキュアなら使用が可能と見込んだのだろう。

「先輩、同期から手紙来たんですけど、幼年学校卒だと出世できなくなるって噂が」

「あん、本土じゃそーゆー噂が流れてるのか、那佳?」

黒田がやってきた。

「ええ。ほら、日本の政治屋は幼年学校生を世間知らずって侮蔑してるから」

「今の高官たちだって、幼年学校出てるんだがね。それの兼ね合いと、この時代でトップレベルに整備されてるから、陸軍系ウィッチはほとんどが幼年学校卒だし、綾香のような士官学校コースは少数派だよ。ま、日本からすれば『幼年学校は世間知らずの軍国主義者』なんだろうな」


圭子の言う通り、陸軍幼年学校卒の経歴は扶桑陸軍将校の立身出世の登竜門の一つだった。だが、日本側が幼年学校卒の経歴を持つ若手将校を弾圧し、一般から士官学校を経て入隊した層を優遇し、幼年学校からの軍人を冷遇する傾向(ただし、その後に士官学校を出ていれば、その限りではない)を持ち、必要知識を多くすることで『役に立たない』士官をふるい落とす思惑を持っていた背広組の暴走は扶桑軍ウィッチの中堅層の空洞化を起こし、古参層が軍内の多数派になる逆転現象を起こす。そこが背広組と制服組の認識の乖離と言えた。

「ったく、背広組は現場を混乱させるのが趣味か?パイロットは六割以上が義勇兵だし、ウィッチはよってかかってMATに移籍しやがったから、うちらが最大規模になっちまったんだぞ」

「黒江先輩があれこれ動いてますけど、うちの規模はますます大きくなりそうですよ。南方に軟禁された111と112Fの連中の内の希望者の移籍が通ったんで」

「マジかよ。何人だ?」

「基幹幹部になるはずだった尉官と佐官連中です。下働きさせて鍛えます」

「かーっ。二個戦隊の幹部級を引き受けかよ。うちは身元引受所じゃねーぞ」

「仕方ないですよ。防衛省が明野の教員の実戦参加を禁止して、分離させてた連中の部隊設立根拠の軍令が廃止されて、軟禁状態だったんですから。うちに回して、現場の不満を抑えたいんでしょう」

「だからって、荒くれ者の多いうちに、明野の教員してたよい子を回すかね?」

「ま、技術は確かですよ。天誅組に四割は回したんで、あとは私らの部下の経験があったり、実戦経験が最近の連中を欧州に行かせました。明日には定期便で来ます」

「なら安心だな。問題は機材だな」

「43の三型でも与えておきます。100はまだ幹部用しか確保できてませんから」

「そっちも大変そうだなぁ」

「お前はアイクが優先的に機材を回してくれるから良いけど、ウチは防衛装備庁が渋ってやがるからな。ストライカーを合法、非合法で集めないと定数も満たせねぇ」

「いや、そいつらはジェットへの転換に回しとけ」

「綾香、どういうことだ?」

「南方に亡命したノースリベリオンがハチロクの生産供給を約束してくれた。ジェット要員は時間がかかるから、ジェット要員を確保しとく必要がある」

「ハチロクは機種転換しやすいが、時速500キロ台から遷音速はきつくねーか?」

「この時代では破格に動き回れるから、橘花と火龍に乗せるよりマシだ」

「セイバーの登場を早めたのか?」

「ノースリベリオンが試作機を持ち込んだから、技術情報流して仕上げさせた。本格生産は再来年以降だがね」

「マルヨンは無理か?」

「無茶言うな。ありゃ超音速に耐えられる耐熱合金がエンジンに必要だし、理論が出てない。いくら宮藤の旦那でも無理だよ。基礎技術が理論に追いつかなきゃ、絵に描いた餅だぜ」

黒江は『セイバーの生産は早められたが、スターファイターは技術的問題で早められない』と名言した。スーパーセイバーが出ないことには第二世代理論の基本形も完成しないとは、吾郎技師の談。超音速はこの時期、第一世代理論の限界値を示す指標となっており、ノースリベリオンが自由リベリオンの方針で仮称・『セイバー45』(後のスーパーセイバー)のプロジェクトを開始していたが、第一世代理論では遷音速が限界なのだ。第二世代理論は魔導ターボジェットエンジンの世代交代と耐熱合金の性能向上、魔導理論の革新が合わさってできるものだ。第三世代理論は燃費を大幅改善させる新理論を上乗せしたものだ。第一世代理論で実現可能な最高性能がMIG-15か、F-86相当程度なので、多少なりとも背伸びさせてるのは事実だ。

「で、先行生産機を回したのか?やめてくれよ、トラブルは」

「俺がテストしたんだ。信用しろ。前史より程度は良いはずだ。最終型の設計を渡したんだからな」

「お前がテストしたんならいいけどよ。マルセイユの件があるからな。どーしてもな」

「カールスラント技術部に話したら泣いてたぞ、それ」

圭子が先行生産機を信用しないのは、マルセイユの一件が原因である。黒江がカールスラント技術部に話したところ、先行生産機にトラブルはつきものなのにと愚痴ったという。

「しかたねーだろ。実戦で耐久テストなんてのは、ガンダム系くらいしか例がないんだし、そもそも、ファーストガンダムだって、稼働試験は済ませてたろうが」

「まぁまぁ。で、メロディ。セッティングは終わった?」

「ああ。オデッサ作戦にしといたぜ。ガキども、ああいう戦略シミュレーターは初めてだろうから、ボロボロに負けると思うぜ?あ、一部除いて」

「ゲームが得意な連中は手こずらせると思うが、図上演習は俺が得意な分野だ。ガキどもをギャフンと言わせてやるぜ」

黒江がプリキュア達に課そうとする図上演習は俗に言う戦略シミュレーションゲームの部類に入る。リアルタイム型であるため、リアルタイムストラテジーゲームにも似ている。メロディは第一期プリキュアでは唯一、黒江の補佐役のために参加しないが、暇な時に休憩時間に黒江と対戦して負け越しているとの事。

「マカロンの講義が早めに終わったから、食事の時間までちょっと余裕があるから聞くけど、アルファ・ロメオはどうすんのさ」

「俺が乗り回すよ。スネ夫に無理言って調達してもらったしな」

「ルパンが乗ってる型だよな。良くオークションで落とせたよな、あいつ」

「スネツグが成功して、資金面のバックアップをしてくれたから落とせたそうだ」

黒江がスネ夫に頼み込んで調達させた『アルファロメオ・グランスポルト・クアトロルオーテ』。この時には黒江が譲り受けており、入念な整備をして、ドライブを楽しんでいる。21世紀には高額で取引されるクラシックカーに入る部類の年式だが、意外と小気味良い走りをするため、黒江の道楽に拍車をかけている。ちなみに、黒江の道楽はのび太が青年期に車道楽に足を踏み入れた原因でもあり、のび太がミニを愛用する遠因である。

「あたしも道楽者の自覚あるけど、綾香さんは変わり種を狙うな」

「ま、スピードは自分で光速出せるから、スーパーカーは名車以外は興味ないんだ、俺」

「カウンタックとか、ロータスとか、歴代のフェラーリとか?」

「そそ。フレデリカからは911買ってくれと強請られたぜ」

「国産は?」

「2000GTなら欲しいかな。俺はバイクも持ってるから、見栄えする車が欲しくてよ」

「あたしはミウラとかほしーかな?クロが買えって強請ってよ」

「アンニャロ、自分の第一の母国の買わせる気じゃねぇか」

「ディーノとどっちがいいかな?」

「ま、ディーノは細かいメンテが必要だから、ミウラで良いと思うぜ?ランボルギーニは農耕メーカーだし」

「Ok。スネ夫の傘下のディーラーに返事しとく。でも、スネ夫、自動車産業に手を出したのか?」

「家を継いだ後、子供の頃からの道楽が講じてクラシックカーの輸入業者を興したそうだ。金持ち向けの道楽と社内で馬鹿にされたそうだが、実用車にエレカーやハイブリッドが出てきて、誰も彼も買うから、没個性を嫌う層にバカウケしたのよ、あいつ」

「いつ継いだんだ?」

「えーと、大震災の年だったかな?大学出てすぐだよ。親父さんが支社の再建の心労で倒れて、引退したそうでな」

「あいつに兄弟いたのか」

「ああ。小学四年くらいの頃に叔父の養子にもらわれた3歳下の弟がいてな。それがスネツグ。叔父がどうしてもってんで、本家への資金援助を条件にもらっていったそうだ。それでベンチャーを興して大成功しててな。アメリカの市民権持ってて、国籍も向こうなんで、便宜を図ってもらってるそうだぜ」

骨川家も大震災で経営する会社の支社が被災したことで苦難の道を辿り、スネ夫とスネツグ兄弟が立て直したという事が語られた。アメリカに地盤を築いた叔父の事業と自身の興したベンチャーを両立させたスネツグは苦難の兄を助け、スネ夫はその資金援助で立て直し、財閥と言っても差し控えないほどのコンツェルンを形成している。のび太夫婦が頻繁に海外での任務を遂行できる理由の一つがこの骨川コンツェルンの形成と台頭である。スネ夫が趣味の範疇で設立したディーラーはスネツグの人脈による資金力と整備の行き届き、アフターサービスの良さで日本連邦で評判になりつつある。もちろん、顧客第一号はのび太であり、ミニのレストアが初仕事であった。話を聞きつけた歴代の仮面ライダーも自分達では整備が難しくなった古めのライダーマシンの足回りのレストアを頼むようになり、ヒーロー御用達という看板も手に入れた。黒江たちも昇進で給与に余裕が出た段階で顧客になっており、ウィッチで一番の大口は黒江であるが、マニアックな車種を注文してくるというので、社内に調査部が置かれるほどだったという。

「アンタ、無理難題言ってるんだって?」

「何、トレーニングだよ。アルファ・ロメオとかベンツのSKKを調達しろって言っただけだ」

「ロータスとか、2000GTを美品で調達する並の高難度だぞ、それ」

「広告に使えるだろ、奴の」

実際、黒江の課題を達成したディーラーの評判はうなぎのぼりで、のび太が30代になる時期には『カーマニア垂涎のディーラー』として雑誌に取り上げられている。ちなみに広告にキュアフェリーチェも協力しており、女性層の開拓に一役買っている。自家用車に実用性を重視するようになった時代、プリキュアを使ってカーディーラーの客層を広げる発想を実行したのはスネ夫が初だった。これはフェリーチェがのび太の義妹であった事もあって実現したもので、『本物のプリキュアが広告に出た』初の例であった。ちなみに、ドリームの映画の声の出演はこの広告戦略の大成功を受けての実現であった。

「で、フェリーチェの広告で大成功したから、アニメ制作会社が興行収益の向上と話題作りでドリームの無茶なお願いを引き受けてくれたんだよ。俺だって、聞いたときゃ、バカヤロウと諌めたんだぞ」

「で、完成間近のプロットを変更して、声優さんが急病で、あいつ自身がアフレコして、完成か。随分と出番増やしてもらったんだな」

「中興の祖の特権だよ」

のぞみの映画での出番は増えたが、アフレコ日に担当声優が急病になり、急遽、自分で自分の吹き替えをする事になるという珍事が発生した。(この時にりんもテストを受けたが、ダメ出し食らってボツとなっている)のぞみ曰く、『出身世界でうららの手伝いした事が多かった時期があって、その時にアフレコ経験を積んだ』との事。

「いいよなー、その日、あたしは勤務日だったんだよ」

「仕方がねぇさ。のぞみがアフレコできるのには本当に驚いたんだぞ、俺とはーちゃん。ただ、魔法つかいプリキュアの担当声優さんたちが大興奮だったけど」

「あー。だいたい想像つくわ」

2018年のプリキュアオールスターズの筋書きは初代と5の外伝色が色濃いものとされ、現役世代の影が薄いと現役世代の子供からは不評気味だったという。ただし、のぞみの要望が取り入れられ、フレッシュとスイートは比較的に目立つ活躍をするように書き換えられたのがアフレコに参加できなかった組のラブ、北条響の救いであった。アフレコ現場は『本人』が二人も来た事に大騒ぎであり、のぞみは『本人役って事になるのかなぁ?』と苦笑い。見学していたはーちゃんはアイドル的人気であった。ちなみに、アフレコ終了日には、お礼という形で生変身を披露し、スタッフ共々、感動の渦に巻き込んだという。

「スタッフの皆さんも喜んでたし、結果オーライで良かったよ。ハートとラブリーはHUGっとの次の代のプリキュアの映画とライフステージのゲストにすることで手打ちだよ」

「ああ、コスモがいるところか」

「うむ。コスモの登場は俺が漏らしといたおかげだよ」

アニメにキュアコスモが出るように口添えした事をバラす黒江。のび太の世界ではキュアコスモの登場は検討されてなかったが、黒江の口添えで登場の運びになった。こうして、見事に恩を売った黒江はコスモを参戦させたのだ。

「その見返りってことで、戦車道で忙しいのを呼べたんだよ。キュアピースの留学のことで愚痴られたんだけどな」

「あの子、今いる世界でロシアに行くんだって?」

「ああ。大学も向こうのに行くそうだ。それで愚痴られた。イリヤとクロを行かせて、ピースを仕込むつもりだ」

「綾香さん、あんた、絶妙な人材活用だよな」

「将官なんて仕事してると、自然と覚えるもんさ。コスモとハートは戦車兵としても働いてもらう予定だしな」

「コスモの奴、ドイツ系に乗れるのか?」

「大丈夫だそうだ。ソ連系の人間工学ガン無視のもんより乗り心地良いって言ってる」

「ハートはレーヴェを見て、何か言ってたか」

「足回りがいいなら、ビバ!重戦車だそうだ」

「あの火力馬鹿…」

逸見エリカとしての重戦車好みの気質はキュアハートも引き継いだようだが、ティーガーの経験から、足回りの事にはうるさくなっており、戦後技術で足回りを改善したレーヴェに大喜びであるとの事。

「レーヴェ、どうやって完成させたんだ」

「戦後の技術で軽量化して完成させた。足回りは戦後の技術で作ったものに変えてあるし、内張りの装甲に戦車道用のカーボンとペクトラ系シート内張りを使ったゼータク品だ」

黒江曰く、レーヴェは戦後の技術で大改良が施されて初めて、『モノになった』戦車とのことであり、戦車道用のカーボンとペクトラ系シート内張りを貼り、乗員の安全性を高めたという。その大改造を施されて完成したレーヴェは70口径105ミリ砲と1200馬力超えのエンジンと戦後の技術で改善された足回りを兼ね備えた一品で、コンカラーと戦えると評判である。戦中ドイツ型最後の重戦車ながら、MBTの始祖にもなり得るポテンシャルを持つという点では、コンカラーより優秀である。コンカラーも連邦の恩恵に預かる形で近代化予定であり、仮称は『スーパーコンカラー』である。こちらは120ミリ砲と当時最高の火力が売りであるため、120ミリ砲の21世紀現用モデルへの換装が取りざたされている。

「コンカラーも近代化改装型の計画はあるが、イギリスがチーフテンを作らせたがってるからな。そこは未定なのよな」

この近代化計画は遠からず現れるであろう『パットン』戦車シリーズを見越したものだが、当時のリベリオンのM4至上主義ぶりから考えれば杞憂と言える。ただし、レーヴェの近代化に度肝を抜かされたキングス・ユニオンはチーフテンの開発に手間取る事を考慮し、この近代化計画を承認する事になる。ただし、ティターンズの催促でM26とM46の生産本格化にリベリオンが乗り出したという情報が入るので、結果オーライな事にはなったという。ただし、制空権を抑えているので、戦線への配備は遅々として進まず、M4が戦線の主役であり続けるのであった。

「ただ、敵はパットンを造るだろうが、名前は変えてくると思うぜ」

「プラモであったシャイアンとか?」

「だろうなぁ。パットンはこっちが造るし、使うだろうし、あのおっちゃん、大喜びよ」

「お、そろそろ食堂が開く。お前ら、早く行かねーとキュアホイップのスイーツが品切れになるぜ」

「そ、そりゃ困る!」

一同は駆け足で食堂へいくが、黒江と黒田は黄金聖闘士なので、一、二番にスイーツをデザートとして確保しており、圭子をして『あいつら、チートしてやがる』と憮然とさせるのだった。(いちかが固まるくらいに一瞬で現れたからとのこと)



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