外伝その403『図上演習と戦闘15』


――扶桑海軍航空隊の組織は存続したものの、空母機動部隊の艦上機配備の事務処理のためだけに生かされたも同然だった。実務上に問題はないが、生え抜きの海軍航空隊ウィッチは航空隊の処遇がまな板の上の鯉の如き有様な事に反発し、陸軍出身でありながら、連合艦隊航空参謀を兼務した黒江を中傷した。だが、黒江が海上自衛隊幹部学校できちんと海上自衛官としてのカリキュラムを終え、護衛艦への乗艦経験を持つことが布告されると、彼女たちは一転して窮地に陥った。彼女たちの多くは戦中の簡略化されたカリキュラムで教育され、必要最低限の知識しか持っていない。一方、黒江は統括官に就任後、陸海の自衛隊の幹部学校に通い、カリキュラムを修了し、視察名目で部隊勤務も経験していた。その差が海軍航空ウィッチを窮地に陥らせた。黒江は航空自衛隊出身ながら、三自衛隊の派遣部隊の責任者になる立場だが、三自衛隊のことを詳しく把握するためと称し、現場で勤務するのを好んでいるのも海軍航空ウィッチの運の尽きだった。黒江を参謀に抜擢した小沢治三郎や山口多聞などの高官の顔に泥を塗るも同然なためだ――




――64F・新選組はさらなる前線に進出した。これは上層部が彼女たちに艦隊防空を担わせたいからであった。当時の連合海軍はリベリオンとヴェネツィアの離反、ロマーニャ海軍の壊滅、ガリア海軍の四散、オラーシャの機能不全、カールスラント海軍の衰退で有名無実化しており、未来科学で強化された扶桑海軍のみが実質的にその戦力を担う有様だった。黒江は統合任務部隊の指揮官としての教育を受けたため、海軍の軍略にも詳しく、航空分野に特化されて教育された坂本を上回る。坂本は空母は専門だが、通常戦力との連携や指揮の経験は前史のベトナム戦争くらいしかなく、経験は多くない。そこも坂本が空母の指揮管制官を志した理由である。元は門外漢のはずの黒江に専門教育を受けた自分が遅れを取るのはよほど悔しいらしいが、経験の差は如何ともし難い――



――移動中の機内――

「あれ、坂本さんが寝てるの珍しいな」

「ここんとこ、土方兵曹との入籍やらで忙しかったしな。それに海軍の中堅の懐柔で動いてもらったからな。寝かしといてやれ」

「そう言えば、入籍は済ませたとか?」

「ああ。ガキの教育を今度はしくじりたくないそうだからな」

「でも、近いところだから、あまり」

「敵の制空圏を迂回するから、50分はかかるぞ。入り組んでるんだよ」

「どうして、そんな事に?」

「ドイツが撤兵させたからだよ」

ドイツの撤兵命令は前線の制空権を混沌としたものに変えてしまった。軍縮を強引に行うため、前線の部隊を撤退させたのだが、そこをリベリオン軍がすぐに確保してしまったためと、日本連邦の補給の混乱もあり、制空権争いができなくなっていた不運もあり、イベリア半島の制空権は街単位で制空権が入り乱れる群雄割拠の状態に陥ってしまった。これはサボタージュで中央の統制が効かない飛行場もかなりあるためで、前線間の移動でさえ迂回コースを取らなければならなかった。敵の主力機種はF6FやF4Uが主体だが、F8FやF2Gなどの発展型も少数出回っており、生半可なレシプロ機では護衛が危うい。そのため、64Fの輸送機の護衛はGフォース航空部門が保有するセイバーフィッシュが行っている。新選組単独での移動なので、人員輸送用輸送機は一機で済んでいる。

「いいんですか、赤ズボン隊を正式に異動の形で追い出して」

「病院で寝てる上、いきなりゴーストに叩き落されたことで、ロマーニャ公はお冠だよ。親父さんが説得したから良いようなもん、下手すると降格されそうだったそうだ」

「あちゃ〜…」

「ゴーストは俺たちでないと、落とすのは極めて困難だからな。のび太や東郷みたいに普通の見越し射撃で落とすバケモンもいるが、マッハ5の速さでかっ飛ぶ奴は普通に無理だよ」

ロマーニャの赤ズボン隊は主要メンバーが序盤に無人戦闘機『ゴースト』に一蹴され、病院送りにされた事で『役目を果たす』前に脱落してしまった。彼女たちも統合戦闘航空団の籍は書類上は維持されていたが、治療が思ったより長期に及ぶことから、キュアマーメイド(竹井醇子)の判断で正式に人事異動の名目で除籍の運びとなった。その代替は歴代のプリキュア達という事になった。ルッキーニは表向き、特務に引き抜かれた形だが、実際はクロエ・フォン・アインツベルンとして在籍し続けている。元の姿は日本で有名になりすぎており、その兼ね合いで別人の姿を取り、別の名を名乗るのは、Gウィッチの中ではごく当たり前のことであった。(軍事的意味合いの強い取り決めでもあり、迂闊に姿を晒すと、有名すぎて所属部隊の行動を予測され、軍単位での作戦行動に支障が出てしまうためである)

「そう言えば、日本の連中からの中傷はだいぶ減ってきましたね」

「歴代のプリキュアも転生者の一種だし、のび太は大人になれば、エリート官僚でオリンピック代表選手だ。本当にクズなのは、その場の行いだけで、その人物の器を決めちまう連中だ。エジソンだって落ちこぼれだったし、信長も青年期はうつけ者だったんだからな」

それは真理である。かの東條英機にしても、敵対者には情け容赦しない暴君になる悪しき側面はあったが、従順な者には慈父であったし、自分が忠誠を誓う昭和天皇の前では従順な臣下の顔を見せていた。国外追放に遭った彼に多くのウィッチが退役して付き従ったのは、ウィッチの少なからずに金銭的援助を惜しまず、後ろ盾になっていたからでもある。

「名誉回復の機会を一度くらい与えてやらんと、その人物は腐る。例えば、五十六のおっちゃん。連合艦隊司令長官としては無能かもしれんが、軍政家としては一流だ。史実で黒島のハゲチョビンを重宝したからって、この世界では、おっちゃんの在任中には戦はなかったんだし」

黒島亀人。史実では山本五十六の時代に連合艦隊首席参謀であったが、この世界では特段の働きを見せずに任期を終えている。日本は史実の行為を理由に現職の更迭と階級剥奪を目論んだが、ウィッチ世界では『可もなく不可もなし』の一軍人でしかなく、一時、山本五十六時代の連合艦隊で参謀であっただけの男である。素行に問題も無いことから、現場の萎縮を抑えるため、流石に階級剥奪は見送られ、アリューシャン方面軍の参謀に追いやることくらいでしか、日本は溜飲を下げられなかった。宇垣纏にしても『戦犯として裁かれるよりも、軍人としての死に場所を…』という心理で行動したにすぎず、日本人が旧職業軍人の行動心理、戦前期の人間たちの武士道的倫理観に無理解に等しいことも混乱の原因であった。これが原因で、現場は参謀とウィッチ不足が致命的になり、Gウィッチでカバーしきれないところをのび太やゴルゴの働きでどうにかするしか方策が無くなったのだ。今回は一見して、Gウィッチの万能性が明らかになった戦だが、扶桑としては『通常ウィッチに軍事的価値が見いだせなくなってしまった』戦でもあった。

「日本はどうして、こう…」

「自分達の世界でこうだったから、ぜったいそうするに決まってるって強迫観念が強いのさ。単純に、その状況じゃその選択を選んだってだけなんだがな。お前らプリキュアにしてもそうだがね」

黒江はシニカルである。芳佳にそう返す。その芳佳もアニメのような人物像ではなく、どちらかというと、角谷杏寄りの『食えない』人物に変貌している。それでいて、キュアハッピーへの変身能力がある状態なのだ。

「それがなぁ。二年後に会う同位体になんて説明しようかなぁ。この変身能力」

「ピンチの時の切り札で通せ。実際、そうなんだし」

「先輩、三つの結婚式を一纏めですか?」

「我慢しろ。お前らの式のたびにお偉方を呼び出すわけにもいかんだろ」

「うーん。でも、まさか旧軍の軍服を着る事になるなんて思ってなかったなぁ」

「そのうち、自衛隊のものに統一したいそうだ。日本での受けが悪いんだと」

この時期、扶桑軍の軍服も自衛隊の制服と同デザインにする案が評議会で出されて審議中であった。これは日本の内政干渉と取られかねないため、太平洋戦争と第二次扶桑海事変の後まで結論は出ず、1960年代に自衛隊の制服と同デザインに正式に変更される事になる。

「内政干渉じゃ?」

「日本で行動する時は旧軍の軍服と同じものじゃ、政治的に困るっていう背広組の提言だよ。ま、着替えればいいんだがな。たぶん、こっちの参謀とかが胸に飾緒をつけてるのが気に入らないんだろうさ。渉外事務の時や儀仗部隊、それと将官の礼装くらいしか縁がないしな」

「内輪もめしてる場合じゃないってのに」

「自衛隊の一部は旧軍の同位軍であるウチに乗っ取られるのを異常に恐れてんのさ。俺の統幕入りや幕僚長の道を閉ざした内務閥のようにな。左派政権が俺をこの職にしたのは、正式に自衛官としての教育を好成績で修めてるのに、俺が『職業軍人』だってだけで、窓際に追いやろうと理屈を考えた末の産物なのさ。旧軍人出身の幕僚長は昔はごちゃまんといたから、それで問題になって、背広組が妥協的に俺を派遣部隊の指揮官にしたわけだ。階級も将にしてな」

「政治的ですねぇ…」

「民主主義国家の軍隊は銃後の機嫌一つで予算が変わるからな。そういうもんだよ。つか、前線要員は軍の全体じゃ少ないほうなんだがな」

軍隊の組織構造は前線要員は少なめ、後方要員が多めである。現に米海兵隊の組織構造がそうである。だが、日本は『扶桑は猫も杓子も戦わせろ』という無茶苦茶な物言いで顰蹙を各国から買い、扶桑国内のウィッチ志願数は大きく減っている。

「日本の連中は日露戦争や戦国時代の認識で止まってる上、太平洋戦争でマイナスイメージついたからな。『猫も杓子も前線に』じゃ、言い方があれすぎて、ウィッチは軍隊に来なくなるよ」



黒江は扶桑ではダイ・アナザー・デイの直前には大佐になっていた。だが、自衛隊で将補、さらに作戦中、責任者と言うことで将に昇進したので、扶桑でも将官にするかどうかの議論が起こり、最終的に陸上幕僚長の上奏で妥協的に准将が設けられ、更に作戦終了と共に中将への昇進が決まった。当初の案より却って出世している(当初の案では、昭和天皇の要望に則るが、若年であるということで少将に任ずる流れであった)。黒江の自衛隊での昇進速度が扶桑軍の予測を遥かに超えていたのだ。また、勤務階級は職責の関係で既に中将であり、64Fの幹部層の階級がインフレしてしまった。扶桑軍はこの関係で、それまで大佐で留め置かれていた者が次々と准将に任じられる形で続々と昇進。その余波で今度は現場責任者としての大尉が多くなるという歪な人口分布となっていた。また、日本の大衆からの圧力が『将官だろうと、温室にこもらずに戦え』という形で表れているため、作戦会議は野戦テントで行われる事も多い。日吉で工事されていた連合艦隊司令部の移転作業もこの圧力で取り止められ、(ただし、掘っていた地下壕は避難用として流用された)当面は三笠型『富士』に置かれることで妥協された。(護衛艦隊司令部は陸に置かれているのに、連合艦隊の司令部は海に置けと言うのかとする批判も出たため、扶桑への言い訳に苦慮した政治家達は自国の大衆を説得する羽目に陥った)。この混乱の関係もあり、富士は常に矢面に立ち、扶桑海軍、ひいては連合海軍の看板を背負っていく。日本の大衆の海戦への認識が日露戦争で止まっていたからだったが、攻防に優れる戦艦が旗艦という事は心理的安心を生むという事で、連合軍の間で象徴的息合いが大きい慣例として定着していく。(これはウィッチ世界では空母よりも戦艦のほうが心理的に信頼されるという理由も大きかったが)



「郷土戦友会もウィッチ紹介をボイコットし始めてますけど」

「あと20年もすりゃ、連中は自分らの行いを後悔するさ。兵科は20年もすりゃ、竹井のじいさまが亡くなって、自然消滅するだろうからな。分かってるのは、その後は『特技班』って形で運用能力の維持がされる事だ。ウチのガキ共の時代だと、『特技班』ってまとまりが作られる事でウィッチに対応してるみたいだしな」

「やれやれ。そう考えると…」

「ドイツ(カールスラント)よりマシだろ。扶桑と同盟は結んでないのに、日本から同盟扱いで猛抗議されるわ、賠償金をふっかけられるわ、ドイツの首相の意向での強引なリストラ。散々だぞ」

「確か、莫大な違約金で政府が傾きかけたとか?」

「日本が最初に提示した金額はカールスラントとオストマルクの国家予算の3年分に相当したからな。アメリカが仲介して、だいぶ値切ったというが、それでも莫大な違約金と賠償金だ。実質は人種差別やモルヒネデブのG元帥のボッタクリの示談金だと言われてる。おまけにシュワルベのライセンス料の値切りとザラマンダーの開発中止だ。連中は大泣きだそうだ」

「うへぇ。具体的な金額はいくらなんだろう?」

「さーな。日本円で数百億くらいの莫大な賠償金を分割で払うっていう噂だ」

「日本の外務省は連中を死に体にする気ですかね?」

「アメリカが圧力かけて相当に値切せるだろう。今のままじゃ、ナチスを生んだ経緯の繰り返しになっちまうからな」

「軍用機はアメリカの軍用機のライセンスを買えばいい話だし、ドイツは戦前期の軍需産業が生き続ける事は必ずしも望んでないけど、カールスラントの革命を煽るつもりはないだろうから、どこかで妥協するだろうね」

「それに比べりゃ、うちらは天国だぞ。未来装備は戦果を出すバーターで黙認されてるし、給料も削減されたカールスラントの連中の倍以上はもらえてるからな」

芳佳と黒江はのぞみに説明する。カールスラントは日本からの政治的圧力に実質的に屈しつつあること、アメリカは日本の手綱を握りつつ、自国兵器を有償援助の題目で扶桑に売りつけて利益を上げつつ、しれっと連合軍を軍事援助する『死の商人』ぶりを発揮していることを。

「アメリカも強かだよ。ブリタニアがイギリスの軍縮の意向に逆らえずに少なからずを撤兵させたのに漬け込んで、代わりに軍事顧問団名目で少なくない部隊を置いたからな。アメリカの常套手段だが、それで助かったのは事実だしな」

「この戦、殆どアメリカ軍とキングス・ユニオンとウチの三カ国しか戦ってないんじゃ」

「ロシアは学園都市にボコされて、それどころじゃないし、中国も静観を決め込んだ。中華民族の国がとうの昔に無いんじゃ、表立っての手出しはできないしな」

「フランスは?」

「それどころじゃないだろ、国内のデモや大聖堂の火事で。外人部隊も送らねぇくらいだし」

「なんか妙に現実的だなぁ」

「例の半島はウチが制裁加えてからは大人しくしてるが、扶桑要人ヘのテロを行ってる。この前はダンプカーで車列に突っ込もうとして、翔鶴が片腕で突進を止めたそうだ」

「翔鶴さん、何万馬力でしたっけ…?」

「えーと、160000馬力…」

「つまり?」

「鉄腕アトムより力持ちってことだよ。大和さんで150000馬力だから、それ以上。人間サイズでそのパワーだから、テロリストが戦車で突進してこようと余裕だよ。あのおっとりした外見で」

「嘘ぉ……」

「空母はパワーあるからな」

艦娘は基本的に人間サイズで艦のスペックを発揮できるため、力において最高峰の翔鶴型であれば、テロリストがダンプカーで突進してこようと、戦車で来ようと片腕で受け止めることが出来る。

「万馬力単位なんだし、艦娘は。良い護衛をつけさせましたね」

「ま、過激派にこっちの要人を暗殺されても困るからな。念には念を入れておいた。艦娘なら防御力もあるし、手榴弾くらいじゃ傷つけられないからな」

「日本って、そんな危なかったっけ…?」

「のび太の世界の21世紀じゃ、学園都市が戦争でロシアをボコボコに叩きのめしてから、アジア情勢が危ないんだよ。それで連邦組んだら組んだで国内もきな臭くなったんだ。だから、のび太とゴルゴが暗躍出来るんだ」

「なるほど〜。先輩、メールですか?」

「ああ、自衛官の連中からの要望が届いてな。小遣い稼ぎしてるっていったろ?今度はサクラ大戦のヒロインになってくれってさ」

「真宮寺さくらですか?」

「いや、エリカ・フォンティーヌのほー」

「そ、そっちぃ!?」

「さくらは外見は可愛いけど、その、嫉妬深くて、苦手ってのがいるんだよ。巴里のエリカ・フォンティーヌのほうが天然ボケの分、まだいいってやつ」

「あれ、紐育のえーと、カウガールは?」

「あいつは印象薄いし、俺も演りにくいからパスと言ってある」

「作戦中にその相談ですか?」

「息抜きは必要だろ?四六時中戦ってるわけでもないし、比較的に余裕の取れる航空部隊だしな、俺らは」

「先輩。エリカ・フォンティーヌって、天然ボケのシスターじゃ」

「お前も似た者同士だろうが、そこは。そういう役なら俺の得意分野だ。息抜きまで生真面目キャラでいるのは疲れるからな」

黒江の小遣い稼ぎとなっているブロマイド撮影の写真レパートリーはサクラ大戦もカバーしているが、真宮寺さくらよりエリカ・フォンティーヌを得意としている事を明言する。

「私達だって、必死に戦ってるのに、どうして誹謗とかあるんだろう」

「俺らの戦いは自分たちには関係ないからさ。日本の大衆にはこの世界を『若い労働力の源、いくらでもある金のなる木』程度にしか見てない連中もいるからな。それに扶桑には、日本が戦争で失った領土、街、文化財、軍事力が現存してる。…羨ましいのさ。石油も自前で取れる扶桑が。それに、俺らは聖闘士やプリキュアとかの力を持ってるからな。ズルして無敵モードだって思ってんのさ。実際は俺だって血反吐吐きながら、地道に黄金聖闘士にまで登りつめたし、お前らだって、偶発的にプリキュアに戻った。だが、それをチートだの騒ぐクレーマーは何処にでもいるんだよな。」

「嫌になりますね。教職時代、モンペアに絡まれた事は一度や二度じゃなかったし。何処の世界にもいるんですね」

「だが、俺達はそれでもやる。いや、俺達とのび太達がやらなければ、誰がやる…ってか。俺たちはやるしかないんだよ、のぞみ」

「何のために、ですか?」

「愛の御旗のもとに……、ってか?」

「そこで変身します?」

「ま、このネタは令和の30代以上じゃないと通じないからな。サクラ大戦のシリーズが元気だったのは平成の中期頃で、俺が防大に潜り込んだ時代だしな」

「サクラ大戦の元祖シリーズがヒットしたの、私が子供の頃くらいでしたしね」


黒江はそこでサクラ大戦シリーズのヒロインの一人『エリカ・フォンティーヌ』の姿になった。令和が始まった時代には『ミドル層』以上のゲーマーなどにしかわからないだろうと言いつつ。黒江のレパートリーは意外に広い事に芳佳は関心し、のぞみは黒江の遊び心に呆れつつも楽しむ。駐屯地間の異動という束の間の移動時間も楽しむのが黒江である。そう実感するのぞみ。その斜め横の席で坂本が可愛い寝息を立てていたりするのだが。



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