外伝その420『地上空母とは何か?』


――スーパーロボットの活躍はウィッチの存在意義を問う事になった。MSなどを遥かに凌ぐ超兵器であり、条件によっては核兵器でさえ無効化できる怪異も神を超え、悪魔も倒せるとされる力の前には無力に等しく、各地で撃破されていった。皮肉な事に、科学と魔法の境界線が曖昧になるほどに科学が発達した事で体系だった魔法が確立されていないウィッチたちの軍事的意義は低下した。更に未来世界でマジンガーの上位機種『魔神皇帝』シリーズが登場した後であったため、余計に威力が桁違いになった事も、ウィッチの存在意義を問われる一因となった――







――武子はキュアラブリーとスネ夫から『地上空母』についての報告を受けた。かつてのナチスが構想した兵器であるというが、そんなものを構想するほど、ナチスは荒唐無稽な集団だというのか?――


「地上空母…?そんなものを本当にナチスは?」

疑問を口にする武子だが。

「構想そのものはそれほど不可能ではない……」

「Mr.東郷……」

ゴルゴ13が姿を見せた。武子が驚いた顔を見せたが、依頼を受けた時以外に彼が姿を見せるのは極めて珍しいからだ。

「どういう事ですか、Mr.東郷」

「こちらでも調査を行った。地上空母は東部戦線もたけなわの頃、ある空軍高官が構想をぶち上げたのが確認された……」

「本当ですか!?」

「そうだ……。当然ながら、第二次世界大戦当時の技術力では空想でしかない事は明らかだったが、大戦の終局が近づくにつれ、研究も熱を帯びていった。日本にも伝えられたが、当時の日本では使い道がない上、懸架装置をを作れもしないために、すぐに計画は破棄されているが……」

地上空母は帝国陸軍とドイツ空軍が起死回生を目指して検討したが、いずれも当時の技術力とインフラの問題などで頓挫した。だが、ドイツはかなりの成果を終結間近に達成したという。その研究成果は東西冷戦時代の米国が接収して、青天井の予算で研究を続行させ、遥か後年の統合戦争時代に建造が検討されたという。ティターンズはそれに着目し、試作艦を造ったのだろうと目星をつけたゴルゴ。

「ティターンズは何故、陸上戦艦で実用化された大型ホバークラフトではなく、古臭い『無限軌道』で?」

「ホバークラフトは整備に手間がかかる上、維持費も高額だ……。残党である彼らには新造するだけの財政的余裕はない。だが、古典的技術と言える無限軌道であれば、ベース車両さえどうにかなれば、作れないわけではない……」

地上空母はホバークラフト案が東西冷戦時代の頃から出ていたという。だが、これも様々な兼ね合いで頓挫し、結局は無限軌道での堅実な案でティターンズは完成させた。

「だが、21世紀中の原子力空母と同等以上の搭載量を達成するには、あの倍の車格が必要になる。小型機と無人機を搭載したとしても、多く見積もって、30機前後が限度だろう……」

「さすがは……」

「問題はあれがデータ取りの試作品という可能性だ……。何分、空母の働きをする車両など、史上初だからな……」

「空中空母は古典的なアイデアですが、地上空母は逆転の発想のようなものですからね」

「Mr.東郷。敵は何故、そんなものを?」

スネ夫が疑問を口にするが、ゴルゴは的確に回答を提示する。

「敵はこの世界の現状を鑑み、無人機主体の地上空母を投入すれば、制空権を握れると踏んだのだろう……。怪異だけを倒す前提で訓練されてきた航空ウィッチなどは近代兵器の攻撃を的確に加えれば、意外と脆いものだからな……」

ゴルゴのこの回答こそが航空ウィッチの権威の衰退理由の一つでもあった。航空ウィッチはこの時代には『怪異を倒す事』に特化した教育が施され、対人戦闘も考慮されてストライカーに装備されていた防弾板をデッドウェイトとみなし、取り外す部隊が大多数であった。だが、ティターンズが台頭し、リベリオンがその手中に落ちると、ゴルゴが示してみせたように、『兵士の突撃銃や狙撃銃による不意打ちの一撃にさえ耐えられずに、ストライカーユニットが致命的損傷を被る』事例が続出した。シールドの展開には誰でも一定のタイムラグがあり、そこを突く熟練者がいたのだ。また、正規のティターンズ兵は携帯式対空誘導弾を使うため、ミサイルの破片でウィッチそのものが重傷を負うケースが生じた(逆に言えば、無人戦闘機『ゴースト』のミサイルで重傷を負った赤ズボン隊は幸運なケースである)のも、防弾板の見直しと1000馬力級ストライカーの淘汰に繋がった。夜間でも『カン』だけで飛行する標的を正確に射抜ける腕を持つ者たちがティターンズにはいるため、防弾板のない戦闘ストライカーでは『死にいく』のと同義になってしまったのだ。

「夜間でも動く標的に見越し射撃がこなせる腕があれば、ウィッチを狩るのはそう難しいことではない……。それが知れ渡れば、航空ウィッチの権威の低下は免れんだろう……。」

淡々と述べるゴルゴ。彼の一言はこの後の時代における航空ウィッチの権威の低下を予見するもので、対怪異にあまりに特化しすぎたウィッチ兵科の命運が尽きることは確定事項のようなものと扱われていた。

「……この時代のストライカーは防弾装備が外され、歩兵が持てる小銃や狙撃銃の一撃で軽く炎上する……。夜間に飛ぼうとも、腕がいい者なら、僅かな光などがあれば、カンで見越し射撃を行える。俺やNほどでなくとも、それは可能だ……」

ゴルゴの示した事実は並の航空ウィッチの盲点を突いたティターンズのハンティング手法の手本でもあった。ティターンズの中でもよりすぐりの者なら、夜間の見越し射撃も容易く、ティターンズが発見した『弾芯を純鉄で固め、魔力を無効化する』方法が周知されたことと併せ、ウィッチ・ハンティングが行われた。そのことも彼らの躍進に繋がり、日本連邦が第二世代理論を急いだ理由である。魔導師の防壁であろうと、それは有効であり、防げるのはプリキュアのバリアのみだからだ。

「妖精払いの蹄鉄から鋳直した弾が一番、ウィッチには効くはずだ……。まともに防げるのはプリキュアのバリア技だけだ。魔導師の防壁であろうと、容易に貫通する。それで敵は動乱で時空管理局の威信を打ち砕いたのだから…」

「じゃあ、どうすれば?」

「力学、あるいは物質化のような力が必要だ。プリキュアのバリアは物理的強度を備えている。クリスタルウォールも力学的エネルギーでの防壁だ……。あるいは仮面ライダーたちのような電磁シールドか、宝具である『わが神はここにありて』を使うのが手っ取り早いだろう。『全ては遠い理想郷』はハードルが高い…」

「ジャンヌさんの旗ですか。あれ、目立つんですよねぇ」

「……ある意味では、お前達の力を見せる格好の代物ではあるだろう?シャルル・ド・ゴールは泣いて喜ぶだろう……」

わが神はここにありて。ジャンヌの誇る防御用宝具で、エクスカリバーすらもいなせるほどの出力を誇る。ただし、彼女の存在を否応なしに知らしめることになる。ド・ゴールが泣いて喜ぶとゴルゴが例えたのは、ジャンヌのような聖女的な英雄を求めているのは歴史的に明らかになっている事だからだ。

「その彼女は今、どこで何を?」

「連邦軍の護衛でダブルゼッツーで一暴れしたみたいですよ、隊長。彼女に連邦軍本部からこんな要請が」

「ギアナから?」

ギアナ高地(23世紀の連邦軍の本部がある)からの連絡で、『ミネルバから接収したインパルスとデスティニーは改造に手間取るから、オーブから返還されたストライクルージュのコピー機を改造したから、そのテストをやっておくれ』という要請があったと、ラブリーが伝える。

「そのテスト、本当はオーブの姫様に打診してたんじゃ?」

「立場的にできなくなったみたいで。ストライクフリーダムをコピーしようにも、数ヶ月はかかるみたいで」

そのテストはジャンヌ当人が難色を示したため、朝比奈みらいにお鉢が回され、彼女が担当する事になった。ジャンヌはストライクフリーダムのコピー機の方のテストを引き受けたという。それは何故だろうかと物議を醸したという。






――そのストライクルージュのテストは回り回って、朝比奈みらい/キュアミラクルが担当する事になった。ストライカーパックは重武装のオオトリのままだが、日常でその武装はあまり使う機会はなかった。装備があまりに大仰だからで、オオトリの一部武装は未来世界での既存装備に置き換えられているが、21世紀の世界ではオーバーである――


――野比家――

「そのストライカー、どうしてつけてるの、みらい」

「え?そのまま飛べるから。」

「飛ぶんなら、エールストライカーでも間に合うよ?」

「ビーム・サーベルとライフルだけじゃ不安で…」

「まぁ、本体の武装はナイフとバルカンくらいだもんね、ストライクは」

野比家でくつろぐ、人間大に縮小したガイアとストライクルージュ。明堂院いつきと朝比奈みらいが乗っているわけだが。

「でも、この機体は未来世界のコピーだけど、いつきちゃんのはオリジナルの改造だよね?」

「かなり手間取ったし、MA形態はロックがかかってる。まぁ、四足歩行MAはホバークラフト移動がある世界だと、有効性が疑問だしね」

「いつきちゃん、ライフルは出かける時に持ってる?」

「いや、ボクなら素手でどうにかできるし、固定のビーム砲はメガ粒子砲に置き換わってるから、ライフルは使わなくていいくらいさ」

「ああ、確か…道場の」

「跡取り候補だったんだ。兄様は病弱だったからね」

「対艦刀は二本付いてるけど、剣は門外漢でさー……どうしよう」

「はったりに使えるじゃない。振るだけで車くらいは戦車でも斬れるし」

「それはそうだけど…。そういえば、リコは?」

「リコ、ラグナメイルに乗ったみたいだ……」

「そ、そっちぃ!?」

「ほら、赤いライバルっぽいの。つぼみの妹さんとお揃いで……」

十六夜リコはフェイトとコンビを組み、ラグナメイル(リコは正確には龍人器に分類される、焔龍號。フェイトはヴィルキス)に乗り込んだ事がここで伝えられた。フェイトはヴィルキスに乗ると、何かのスイッチが入るのか、口が悪くなり、周囲の爆笑を誘っている。また、焔龍號にリコが乗っていることも話題になっている。後にみらいは機体武装の活用のため、アルトリアへ弟子入りし、剣技を磨くことになる。また、リコは直近の前世がセレナ・カデンツァヴナ・イヴであるため、機動兵器のパイロットもプリキュアと兼任することはで彼女の前世での姉であるマリア・カデンツァヴナ・イヴが大パニックになったので、苦笑いものであるが。

「リコは今頃は前線かぁ。もうちょいダイ・アナザー・デイが遅ければ、三人で戦えたんだけど」

「仕方ないさ。僕も今の兄代わりの人が心配するから、つぼみに断りいれなくちゃならなくてね」

「そうかぁ。大変だね。」

「過保護すぎて、逆に困るくらいさ。今のぼくはプリキュアだよ?並のコーディネーターは目じゃないってのに」

シンの過保護ぶりに困っているいつき。

「あのさ。こういうのもあれだけど、つぼみちゃん、あまり強くないような?」

「経験である程度はどうにかなるけど、能力値自体は低いからね、つぼみは。先代のおばあさんがハートキャッチ最強の座にいたから、本人もかなり気にしててね」

「そうなんだ…」

「ボクだって、ハートキャッチと違う先代のプリキュアの存在を知った時には腰抜かしたもんさ。歴代のピンクでも低い能力値だし、つぼみは」

キュアブロッサムは歴代のプリキュアでも能力値がかなり低く、第一期プリキュア(ピンク)では最弱である。つぼみの運動神経などが反映されたためだが、プラス補正が小さめとも言える。そのため、ラブ、のぞみがなぎさと咲を除いた場合は第一期最強格になる。現役時代の時点で最強フォームを別個に保持するのは二人が始まりだからだ。

「でも、どうして最初がのぞみちゃんだったんだろう?普通に行けば、なぎささんじゃ?」

「のぞみが一番に転生を願ったからだよ。多くの世界でも一番に不幸だった世界線が確認できたからね」

「それねぇ。わたしの場合はは大学生になって、みんなとまた会えてからそんなに経たない内に襲われたからなぁ。本当は19歳なんだよ、わたし」

「それ言ったら、ぼくなんて地球連合の使い捨ての強化人間だったんだよ?しかも寿命間近。未来世界の技術でなきゃ死んでたよ」

「シン・アスカさんだっけ?あの人と同じ?」

「いや、シンと違う世界線から転移したんだ、ボクは。Zガンダムに助けてもらなければ、錯乱して死んでたよ」

「わたしより苦労してない?」

「しばらくはカミーユさんのところで世話になってたからね。記憶が戻ったから、君達の事を聞いて、ロンド・ベルに志願したってわけさ。そうでなければ、ここにはいないさ」

「でも、なおちゃんから聞かされて、リコと一緒に腰抜かしたんだからね?」

「いいじゃないか。はーちゃんも精神的ショックが大きすぎて、鬱状態だったそうだし、彼のもとで過ごしたくらい」

「で、でも、はーちゃんが中・高・大を出たなんて〜!見たくても見れなかったのに〜!」

「まぁまぁ。大変だったんだそうだよ。ショックのせいで数ヶ月はフェリーチェのままでいるしかなくて。来た当時はプリキュアなんて誰もいない時代だったから、説明に四苦八苦……」

「え、そうなの」

「2000年だよ、2000年。なぎささんやほのかさんもまだ小学生の頃だよ」

「…どう説明したの?」

「魔女っ子」

「……古くない?」

「時代考えようよ、みらい。当時は魔法少女って単語はまだポピュラーじゃないんだ」

フェリーチェの事を魔女っ子で通すドラえもんとのび太もすごいが、フェリーチェの姿でしばらく過していたことはの苦労や如何に。もっとも、2011年にもなると、フェリーチェの姿でキャンパスライフを楽しんだりしており、時とともに割り切ったらしいが。

「そんなわけで、だんだんと慣れたみたいで、数ヶ月後にはのび太氏の迎えとかを頼まれるようになって、すっかり家族の一員扱いに。ご両親が養子縁組したのは変身を解けるようになった後だって聞いた」

「は!?よ、養子縁組ぃ!?」

「ドラえもん君から聞いてない?」

「う、うん!」

「あちゃー……。のぞみからも聞いてないのかい?」

「ぜんぜん!!」

「あのドジ……」

ここで、ことはの養子縁組のあたりの詳しい事情をのぞみが伝え忘れていた事が判明した。いつきはため息をつきつつ、のび太の両親が身寄りのないことはを不憫に思ったこと、黒江が学費などを負担すると伝えた事から、のび太の両親はのび太が中学入学の頃までには養子縁組を行い、便宜的な生年を1991年と設定したという。

「と、いうわけ。中学生から学生生活をエンジョイするようになったんだ、あの子。で、プリキュアのアニメが世の中に定着した頃に、プリキュアの一人ってカミングアウトしたみたい。アニメが君たちの代になった頃には、コ○ケで売り子しだしたしさ」

「……なにそれぇ〜……」

膨れるみらい。ことはは2016年(自分たちのアニメが放映中の頃)から黒江と艦娘・秋雲のサークルの売り子になり、アルバイト料で意外に儲けている。基本的にプリキュアに変身した状態で売り子をするため、会場で起こる騒動にも迅速に対応ができ、ある夏の熱中症続出の時には魔法で活躍したという。

「ウ=ス異本じゃないからね、あの子が売り子してたの」

「む〜〜…。わたしだって、キュアミラクルの姿ですればぁ…」

妙に対抗心があるみらい。だが、この時代(2020年では、2019年になる)での直近のコミケでは、キュアアクア、キュアミューズも加え、ひったくり犯をお縄にしたという伝説を作っている。

「のぞみ、最近はアクアとミントのいる世界の目星がついたみたいでね。アクアが時々、様子を見にくるんだ」

「フェイトちゃんが探したの?」

「うん。のぞみやりんとまた違う世界でね。ダイ・アナザー・デイが終わったら、その世界に詳しい事情を言いにいくんだって」

時間軸が前後するが、キュアアクアとキュアミントのいる世界を見つけたのはダイ・アナザー・デイの途中だが、詳しい事情を伝えるのはその後のことになった。その際にのぞみも顔出しで説明したのだが、その世界の同位体と揉めてしまったわけで、ことはが後々に強引に連れ出す事の伏線となった。その世界のプリキュア5はまだ戦いの最中であり、フェイトも接触して、アクアとミントと面識は持てても、連れて行けなかったのだ。確かに、自分達の知るのぞみの都合だけで連れ出せないのは事実であり、水無月かれん/キュアアクアがのぞみの様子を見に行く事から始めるしかなかったのだ。様子を何回か見に行くことで、のぞみの精神状態の危うさに危惧を持った彼女はこまちとの協議の結果、ことはの要請に応じるのである。もちろん、その世界の事情と天秤にかけた末の決断であったが、その世界ののぞみの思いも尊重し、ある時期からは分身ハンマーで分身を作ることにするのである。これは二つの世界を守りたいとする二人の想いを反映したもので、数回ほどの接触の後、不満を顕にしたのぞみBを説得するため、最終的にはのぞみの身元引受人でもあるドラえもんとのび太も間に入っての長時間の説得と、その世界のプリキュア5との協議が行われ、その世界ののぞみもドラえもんとのび太。この二人の熱心な説得に応じる形で受け入れることになるのだった。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.