過去に行くに当たってユリカとイネスはいくつかの計画を立てていた

一つ目は、単純に火星の後継者たちからアキトを守り続けること

これは、歴史を変えずにそのまま見続け、
火星の後継者たちに攫われそうになるところを助ければいいだけだが、
それ以後に別の組織に彼が狙われる可能性が大きい

二つ目は、歴史をアキトが関わらずに流れていくように改変すること

これは、アキトをナデシコに乗せないなどして歴史の本流に関わらないようにすればよいのだが
その後も潜在的に火星出身という理由によって狙われる可能性が残る

三つ目は、歴史を大幅に改変し、根本的にアキトを狙われることの無いような状況を作り上げること

これは、火星の住民を助け、アキトに狙いが行かないようにする、
あるいは火星の後継者などが生まれないようにするなどといったように
歴史を変えることでアキトが根本的に狙われないようにすればいいのだが
それを行なった時点で、未来が全く予想できないものになり、
戦争など別の要因でアキトに被害が及ぶ可能性がある

結局、この中でユリカとイネスは三つ目の選択をすることになる

飛んできた年代が2185年で蜥蜴戦争の10年前という微妙な時期で、
地球政府や木蓮との交渉によって、火星の住民を生き残らせられる可能性が高く
また、未来技術などで新たな会社を起こし、クリムゾンのような立場に立てる可能性もあったからだ


そして母艦の整備をイネスに任せ火星に下りたユリカが向かったのはユートピアコロニーだった

2185年といえばテンカワ夫妻がネルガルと軍により暗殺される前年であり、
どのように歴史に介入するにしても彼らの協力があったほうがアキトの安全性が上がると考えたからである

一応の予定としては、テンカワ夫妻を助け出し自分たちに協力してもらうつもりだが
不確定要素が多すぎてどうなるのかわからないのだ


ユートピアコロニー
人口約三千万人が生活する、アスカインダストリーが設計、建設した大規模コロニーである

イネスにとってはアイと呼ばれていた時代を過ごしアキトのポゾンジャンプに巻き込まれた場所でもあり
ユリカにとっては幼い頃アキトと共に過ごした思い出の場所であった


その活気に満ちたコロニーの中をユリカは歩いていく

未来では見る影もなく破壊されしまっていた故郷が記憶のままに残っていることがユリカにとっては嬉しかった

だが、視界に公園で三人の子供たちが元気に楽しそうに遊んでいるのを見た瞬間
ユリカの瞳から大粒の涙がこぼれ始めた

そこで遊んでいる三人組は紛れもなく幼い頃のアキトとユリカ、それに幼馴染のカグヤだったのだ

それはある意味で必然が呼び起こした対面だったと言える

ユリカは幼い頃の記憶を頼りにテンカワ家へと向かっていたのだ

ならば当然、その道は自分たちが幼い頃にもよく使っていた道のはずなのだから

三人の子供は泣き崩れているユリカに気が付かないまま、楽しそうに遊んでいる

自分が泣いた理由が元気なアキトに再び会えた嬉しいからなのか、
あのアキトが未来のようになってしまったことが悲しいからなのか
あるいはまったく別の感情によるものなのか
それはユリカ自身にも判別がつかない

ただ、彼を未来のようにしてはいけない

それだけは確かな事実としてユリカの中に残った

なら、がんばらなければならない
彼があのままでいられるかどうかは私たち次第なんだから

そう気分を奮い立ててテンカワ邸へと向かう

あの三人の姿を胸に刻み込み

絶対にあのような悲劇を起こさないと胸に誓って



そしてテンカワ邸へとたどり着く

右にアスカの社長が住んでおり、左に軍の将官が住んでいるということを知らなければごく普通の家であった

私は歴史を変えようとしている

その事実が重く、緊張としてユリカに圧し掛かってくる

だが、その程度のことで諦めるようなら彼女はここまで来なかったであろう

「ふぅ〜」と緊張を解きほぐすように深い呼吸をした後、ユリカは来客を告げるチャイムを鳴らす

程なくして「どちら様でしょうか?」というテンカワ夫人の声がチャイム越しに聞こえてきた

「・・・どうしても、貴方にお話しなければいけないことがあるんです
少し会っていただけないでしょうか?」

突然現れて、お話したいことがあるんですと言う女性

自分が怪しい人物に見えるということはユリカ自信理解している

だが、テンカワおばさんは見ず知らずの人に対してもある程度の礼節をもって接してくれると言うことを
ユリカは幼い頃の経験から確信していた

「・・・何か訳があるようですね
いいでしょうお入りなさい」

その声が聞こえてくると共に、ガチャと鍵が開く音がした

「お邪魔します」

そういってユリカは家の中へと入る

そこではユリカの記憶にあるがままの空間に、あるがままの姿でテンカワ夫人が待っていた

不意に涙が零れそうになるが、まだ泣いてはいけないと自分を励ます

「こちらにどうぞ」

彼女はそう言い、ユリカを部屋へと案内した




「それでお話したいこととは?」

部屋で向かい合って座ったあと先に口を開いたのはテンカワ夫人だった

やはり歴史を変えることの恐怖は大きく、ユリカはどうしても先に言い出すことができなかったのだ

だが、ユリカはアキトをあんなふうにしてはいけないんだと自分を奮い立たせ
ついに歴史を変える行動にでる


「私はミスマル・ユリカです
それが何を意味するかおわかりですか」

呆然

それを聞いたテンカワ夫人の様子を表すのにこれ以上の表現は無いだろう

空言だというには、彼女の面影はミスマルユリカ、そしてその母親に似すぎていた

そして、自分が研究している内容の一つは時空間移動である

その二つを考えれば、彼女が大人になったユリカであると考えることも可能だが
未来からやってきたなどということはあまりにも現実離れしており
まだ、ユリカの親戚がやってきたと考えた方が納得がいくのだ

「貴方が、ユリカさんだと言う証拠は?」

混乱する頭を無理矢理整理し、テンカワ夫人は尋ねる

「私しか知らないことを知っています
おばさんがアキトを寂しがらせないために、私に遊んでくれるように頼んだこととか
遺跡の中を探検した時、変な物体を見つけてきたこととか」

それは、まさしくユリカ・ミスマルとテンカワ夫人しか知りえぬことだった

だが、それはミスマルユリカから聞き出すという手段があるために
決定的な証拠とならないことは二人とも理解している

それでも、テンカワ夫人は不思議と彼女を信じてみようという気持ちになっていた

あるいはユリカには他人から信用されるなにかしらの才能があるのかもしれない

「本当に、未来からやってきたのですか」

「ええ、アキトを救うため私はもう一人と共に2206年からポゾンジャンプでやってきました」

テンカワ夫人の質問に対して悲しげにユリカが答える

「アキトを救うためとはいったい・・・・?」

テンカワ夫人にしてみればこの質問は当然だろう

逆行とそれに伴う歴史の改変

それがどれだけ禁断の所業であるかはテンカワ夫人とて理解している

だからこそ、ポゾンジャンプやロストシップを公開するようにネルガルに働きかけているのだ

そして、目の前の女性は、自分の息子を救うためにその禁断の所業を行なったと言うのだから

気にならない方がおかしい

だが、ユリカはそれに直接は答えず一本の映像ディスクを渡す

「これを見てください
未来に起こる大まかなことが編集されています
貴方には辛いものになると思いますが・・・」

このディスクを見れば未来で起こることがわかる

ユリカに言われるまでもなく、それは期待よりもむしろ恐怖をテンカワ夫人に呼び起こした

だが、渡された以上見なければならない

なにより、息子のためと聞かされて黙っているわけにはいかないではないか

そして、そのディスクが電子画面に再生される

そこでは、テンカワ夫妻が暗殺された火星クーデター事件から始まり、
アキトが死ぬまでの内容が順々に映し出されていく

見終えたときテンカワ夫人の目には涙がうかんでいた


「本当、に、このような、悲劇が起こるというのですか」

涙ながらにテンカワ夫人が尋ねる

「そうです、
アキトは私を命をかけて助けてくれた
だから今度は私がアキトを助けたいんです
協力していただけませんか」

ユリカの質問に沈黙が続く

「ごめんなさい
これを見た以上、私は貴方を手伝うことはできないわ」

やがて返ってきたのは拒否の言葉だった

「なぜです、こんな未来を繰り返すつもりなんですか!」

それを理解できずにユリカが叫ぶ

「そういう意味じゃないわ
私たちが発見した遺跡がこんな悲劇を引き起こしたというのなら私はその責任を取らなければならない
最低でも、未来のようにネルガルが独占して悲劇を起こすなんていうことは避けなければいけないのよ
だから、アキトのことは手伝えない
私は、今まで以上に情報を公開するように働きかけることにするから
まぁ、結果として助けることはできるかもしれないけどね」

それは、テンカワ夫人の考古学者としての意地だった

「そんな
殺されちゃいます
公表しようとした貴方たちがどうなったかはわかったのでしょ」

ユリカが、死んで欲しくないと叫ぶ

「それでも、やらなければいけないのよ
貴方だって艦長をやっていたのならわかるでしょ
自分の指示のせいでで無関係な人々が傷ついて行くのがどんなに辛いことか」

それを言われるとユリカも反論できない

ナデシコでそのような経験を幾度もしてきたのだから

「でも・・・」

それでも何とか反論しようと声を絞り出す

「安心しなさい
私だって死ぬつもりはないわ
そう何度もネルガルに殺されてたまるもんですか」

ユリカを元気付けるように、明るい声で言う

「そうですね」

ユリカがそれに答える

だが言葉とは裏腹に口調には不安が滲み出ていた


「ところで、貴方たちはこれからどうするつもりなの?」

テンカワ夫人が話題を変えるように尋ねる

「私と一緒にこちらに来たイネスさんと共に会社を興して、ある程度の影響力を持とうと思います
後はそれがどのくらい上手くいくかによって変わってくると思いますが」

「それなら、多少の協力はしてあげられそうね」

ユリカの答えに、満足そうにテンカワ夫人が言った


しばらくして、ガチャとドアが開く音がする

「ただいま」

公園で遊んでいたアキトが帰ってきたのだ

それは今回の話し合いの終わりを告げていた


「本当に、ネルガルに抵抗しようとするんですか」

最後にユリカ尋ねる

「ええ、貴方がアキトを救うために来たように
私は少しでもいい未来をつくるために行動する
そういうことよ」

そして歴史を変える第一歩となった会談は終わりを向かえた

「あれ、お客さんですか?」

母親を探して部屋に入ってきたアキトがユリカを見てい言う

たったそれだけの行為なのに、ユリカは自分が泣かないようにすることだけで手一杯になってしまった

「そうよ、だからもう少し待ってて」

アキトに対してテンカワ夫人が言う

「お話を聞いていただいてありがとうございました」

このまま帰るのは拙いと泣きそうになるのを堪えながら別れの挨拶をする

「こちらこそ、貴重な情報をありがとう
また今度きてくださいね
夫とも話しますから」

テンカワ夫人はそういって泣きそうになっているユリカを玄関まで送っていく

「それでは、また」

「ええ、また会いましょうね」

別れの挨拶を済ます二人、そこへ

「またね、ユリカに似たお姉ちゃん」

アキトの声が入ってきた

それでもアキトのを方を見ることはできない

見れば間違いなく自分は泣き出してしまうとわかっていたから

ユリカは振り返らずテンカワ邸を去り、そして公園にたどり着いたところで糸が切れたように泣き始めた

アキトを守るという決意を固めながら、盛大に泣き続けた




テンカワ夫妻はユリカとの会談の後、本格的に遺跡とロストシップの公表へと動き始める事となる

それは、研究仲間に古代火星技術の独占の危険性を指摘することから始まり、
極秘裏に友人であるアスカインダストリー社長、シルヤ・オニキリマルを通じて
産業界にその情報を流すことまで、ありとあらゆる手段が取られていた

そして、このテンカワ夫妻の行動は、完全にネルガルの予測を超えることとなる

彼らは、テンカワ夫妻が公表するように動くとしても、それはネルガル内部だけであり、
後でどうとでも揉み消せると考えていたのだ



二ヵ月後、ネルガルの上層部がテンカワ夫妻の行動に気がついたとき、
遺跡とロストシップの情報は既にアスカインダストリー経由でマーベリック、クリムゾンにまで流れ始めていた

ただ、ネルガルににとって救いがあったとすれば
マーベリックとクリムゾンがこの情報をそれほど重要視しなかったことであろう


そして悲劇は起こる

ことの始まりは単純だ

ネルガルの重役会議で一人が、テンカワ夫妻が情報を持ってアスカなどに引き抜かれることの危険性を指摘した

ただ、それだけ

だが、それは重役会議という場において劇的な化学変化を見せた

重役たちは、古代火星技術の独占の夢が崩れそうになることに青ざめ、
それを回避しようと様々な意見を出し合う

だが、もはや暴露された技術を独占する手段など思いつくはずもなく、会議は難航

それから重役の一人がテンカワ夫妻の暗殺を提案するまでに時間はかからなかった

こうして、後にオリンポスの悲劇と呼ばれ、
ユリカとイネスに歴史を変えることの責任を思い知らすことになる事件が始まろうとしていた




その頃、ユリカとイネスは、オ級コンピュータ『キボウ』に二人の経歴の偽造をさせつつ
それぞれがヒミコ・テンカワ、アイ・ランズベルクを名乗り、
新会社設立に向けて活動を開始していた

ちなみに「なぜヒミコなの」とイネスに尋ねられたユリカの答えは「なんとなく」だったそうだ

また、テンカワ夫人の紹介により、
アスカから多額の資本を受けられたこともその活動をより活発化させる要因の一つであったろう

二人は、まずはアキトの治療のためにイネスが作った医療用ナノマシンを主力製品として売り出すことに決め
特許の出願や安全性の確認など行ないつつ、本社ビルの買取、研究所の設置などをして
会社としての体裁を整えていった




そして、そんな中のよく晴れた日の午後、

二人が現実の辛さを思い知らせる報告を持って三人の来客が二人の元にやってくることになる



彼らは応接室に入るなり、二人に衝撃的な事実を告げた

「テンカワ夫妻を含む研究者六名がオリンポス研究所で襲撃を受け亡くなりました」

その声には悲しみと悔しさがにじみ出ていた

「そんな!
嘘ですよね」

ユリカが声を荒げる

「・・・今朝のことです
私たちがテンカワ夫妻指揮の下、オリンポス研究所でいつものように研究を行なっていると
突然、研究所で銃撃戦が始まりまったのです

後で助けていただいた方に聞いたところによると、
ネルガルがテンカワ夫妻を事故に見せかけて殺すために送ったSSと
アスカがそれを防ぐために極秘裏に配置したSSの間での戦闘だったそうです

私たちはテンカワ夫妻と共に逃げようとしましたが
二人は彼らの目的は自分たちだから貴方たちはかまわず逃げなさいと言って・・・

もちろん、私たちもテンカワ夫妻を連れ出そうとしました

でも、二人がこれを貴方たち二人に届けて欲しいと

私たちの意志は、彼女たちが継いでくれるからと

そういって無理矢理私たちを非常用エレベータに載せたのです

そして急いで研究所に戻った時にはもう・・・・・」

そう語る彼の顔は助けられなかったことによる悔しさで歪んでいた

その内容にユリカは絶句する

私が未来を教えなければ、テンカワ夫妻は少なくともあと一年は生きられた?

そんな考えが頭に浮び、強い後悔となって襲い掛かってくる

「過去にポゾンジャンプすることを決めた時点でこういうことが起こることは覚悟していたんでしょ
なら、後悔するだけじゃなくて、これからのことを考えなさい」

イネスは他人には聞こえないように小声でユリカにそう言うが、沈みこんでいるユリカには効果がなかった

ユリカ一人のために客を待たせるわけにはいかず、
イネスは彼から手紙とディスクを受け取り、ユリカと共にその手紙を読み始める




『親愛なるお二人へ

この手紙を貴方たちが読んでいるということは私はもうこの世にはいないでしょう

例え死ぬことになっても、少しでも良い未来を残しておきたかった

その思いだけは変えられなかったのよ

だから貴方たちが私の死を気にする必要はないわ

せっかく教えてもらったのにごめんなさいね


それとこれはお願いなのだけど

貴方たちが新しく興そうとしてる会社に遺跡やロストシップを研究する部門を作ってくれないかしら

ネルガルの独占を避けるにはそれが一番よさそうだから

貴方たちなら、その重要性は理解しているだろうし、そのために必要な人員は私の知り合いに頼んでおいたわ

ディスクの方に協力を頼んでおいた友人たちとネルガルの弱み、
それに今までの研究成果を載せいておいたから、それも有効に利用して


貴方たちが私たちの意志を継いでくれることを願っています

アキトをよろしく                      テンカワ』


「テンカワおばさん・・・・・」

ユリカが呟く

『私の死を気にする必要は無い』

そんなの嘘だ

だって、私が余計なことをしなければまだ生きていきていられたのだから

手紙を読めば読むほどよりいっそう後悔が強くなっていく


「それで、どうする?
幸い、アスカからの資本があるから、新しい部門を作ることもできるけど」

後悔で潰れそうになっているユリかを見かねてイネスが尋ねる

無理矢理にでも前を見させないと、ユリカは立ち上がれないと判断したのだ

「・・・・・・・・・
テンカワおばさんの死を無駄にはできません
私は彼女の意志を継ぎたいとおもいます」

ユリカが自分の意思を告げる

自分で言ったことであるのに、その言葉は自身の胸に沁みこんでいった

歴史を変えて、このような結果を起こしてしまった事に対する責任を
テンカワおばさんの意思を継ぐことで少しでも償う

そう考えると後悔は消えないにしても、少なくとも前向きな思考をすることができた

「なら、テンカワ夫人の知り合いに連絡を取らなければいけないわね
さすがに私一人で三つの部門も掛け持ちするなんて不可能ですもの」

ユリカが何とか回復しつつあることにイネスは安堵しつつそう言って、
ディスクを持って部屋を出て行こうとするが、客に呼び止められた

「私たちもそちらの会社で働かせてもらえないでしょうか」

客の一人が告げる

「えっと・・・
こちらとしてはそのほうが嬉しいのですが
貴方たちはいいのですか?」

戸惑ったようにユリカが言う

まさか彼らが自分たちの会社で働きたいなどと言うとは思っていなかったのだ

「私たちは、テンカワ夫妻を暗殺したネルガルでこれからも働きたいとは思っていません
なら、そのテンカワ夫妻の意思を継いでくれるという貴方たちのもとで働きたい
貴方たちが遺跡やロストシップを調査すると言うのなら必ず役に立つはずです」

三人が三人とも頷いていた

「わかりました、
まだ正式に会社が発足したわけではありませんがこれから一緒にがんばって生きましょう」

ユリカが嬉しそうに言う

だがそれは歴史を変えることへの不安の裏返しでもあったのかもしれない

まあ、さすがの彼女もオリンポスで働いていた研究者たちの大半が
この後、彼らと同様に自分たちの下で働くことになるとは予想していなかっただろうが





そして翌日、再びユリカたちを驚かせる知らせを持って客がやって来ることとなる

まだ完全にはテンカワ夫妻の死から立ち直っていないユリカはそれでも来客を迎え入れるが
やってきたのはテンカワ夫妻の親友にしてアスカインダストリーの社長、シルヤ・オニキリマルであった

挨拶と多少の企業的な話を終えた後、シルヤが本題を話し始める

「実は、テンカワ夫妻の遺書の中に、
できることならヒミコ・テンカワさんにアキトを預かって欲しい
という内容が書かれていたのです

アキト君に聞いたところによると、知らない親戚のもとに行くぐらいなら貴方の下に行くと
言っているのですがどうしますか」

「へ?」

わざわざ、アスカの社長が来るぐらいだからどんな用件なのかと身構えていたユリカは
あまりに想定外のことについマヌケな声を出してしまう

「え、えっと
此方としてはアキト君を預かるのには問題ないです
というかむしろそうなるようにお願いしたいぐらいというか
と、とにかくアキトさえいいのなら此方で預かります」

混乱したままヒミコが承諾する

そして、手紙の最後に書かれていた『アキトをよろしく』がこういう意味であることを理解した

「そうですか、それは良かった
正式な話はお葬式が終わってからになると思いますが
今夜にでも彼と会ってやってください
カグヤやユリカちゃんが一生懸命に慰めていますが、やはり保護者というものも必要でしょう」

ユリカの様子に苦笑しつつシルヤが言う

「そうですね、一通りの仕事が終わったら、行こうと思います」

嬉しそうにユリカが言う

かつて夫だった人の保護者になるというのは少々複雑だが
それでも彼を守りやすい環境になるということはありがたかった



その後、テンカワ夫妻のお葬式、アキトを引き取るための手続きを経て
イネスとユリカは会社を立ち上げるために本格的に活動を開始する

ヒミコ・テンカワ(ユリカ)が社長、アイ・ランズベルク(イネス)が技術部長に就任し
新しい会社の社名をテンカワ夫妻の意思を継ぐものとしてテンカワの英訳であるミルキーウエイとした

そのうえで、テンカワ夫妻の親友であったプロスペクター(本名不明)を会社に招き入れ
着実にスカウトで人員を増やし、医療用ナノマシン部門、次いで考古学研究部門、技術開発部門にて活動を初め
会社としての体制を整えていくことになる


テンカワ夫妻の死は、ユリカとイネスに歴史を変えることの難しさを実感させると共に
彼女たちの会社を著しく成長させ、そしてネルガルの考古学研究部門を衰退させるという
結果をもたらすこととなった

そして一年に及ぶ遺跡とロストシップを巡るネルガルとミルキーウエイの戦いが始まる






後書き、というか言訳

ご都合主義が出まくりの第一話

完全に私の力量不足です

これ以外に会社を急速に大きくする方法が思いつきませんでした

ついでにいうと、場面の切り替わりが少し不自然なのも私の力量不足によるものです(泣)

このへんは、下手なSS作家だな、程度に流しちゃってください

後、ここはこうした方が、良くなるよ、などといった意見がある人は教えてくれるとありがたいです










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