俺たちがラウンズ入りしてから3日が経った、そして今日はダールトン将軍と約束の食事に行く日だ。

俺たちは新たに加わったラウンズとしての仕事もそこそこに、約束の時間になると3人で待ち合わせる。

そしてダールトン将軍と合流すると、ダールトン将軍は俺たちを引き連れていかにも高そうなお店に入って行く。

ジノもアーニャもこういう店に慣れているようで、堂々としている。

しかし俺はもとは庶民、こんなお店初めて来た。絶対に場違いな雰囲気が出ているに違いない。

「どうした、レイス?そんなところで立ち止まって? もしかして別のものが食べたいのか?」

ダールトンはそわそわする俺に気がついたのか、そう声をかけてくる。

「いえ、こんな高そうなお店に来るの初めてなので、圧倒されていただけです」

変に言い訳をしても仕方ないので俺は正直にそう話す。

「そうか、まあお前もこれからラウンズになったら今までとは生活が少なからず変わるだろうからな、こういう店に来る機会も増える事になるだろう。今日はその日のための練習だと思えばいい」

豪快に笑いながら、俺の肩を叩いて店の中に入っていく。

「はい、そういうことならまあ気楽にやってみます」

もともと庶民的な俺はラーメンなどが大好きだが、これからはこういう食事にも慣れていかなければならないのだろう。

これからのための練習と自分に言い聞かせ、俺もそのあとに続く。

店に入ってメニューを渡されると、ジノは「さあレイ、ダールトン将軍を後悔させてやろう!」といって後先考えずにドンドンメニューを注文する。

俺もメニューに目を通すが、なかなか聞いたことのない料理ばかり。仕方がなく、その中でも聞いたことのあるメニューを数点選んで注文することにした。

アーニャと将軍もすぐに自分の料理を決めると、店員に注文していく。

それからしばらく談笑していると、続々と注文していた料理が運ばれてくる。

食事中はジノもアーニャもすごくきれいに食べていて、一つの絵のようになっている。やっぱり小さいころからマナーとかも教えられているんだと思う。

俺も見よう見まねで悪戦苦闘すると、アーニャは間違えそうになると注意してくれて助かった。

30分後、ジノは「もう食えねぇ」といって限界を向かえていたが、まだ頼んだメニューが残っている。いかにも待っていましたと言わんばかりの顔をしたダールトン将軍が、ジノに「自分が頼んだ物は自分で処理しないとな」といってジノに残った料理を食わせていた。

その光景に思わず俺も笑みをこぼす。

アーニャもこの展開をなんとなく予想していたようで、現在はダールトン将軍とジノの光景を携帯に記録している。

「今日はご馳走様でした、今度は俺たち3人が将軍にご馳走しますので楽しみにしていてください。な、ジノ、アーニャ?」

「ああ、楽しみにしててくださいよ将軍!」

「ご馳走します」

俺たちの言葉に驚いたのかダールトン将軍は「そうか、それなら今からその日の事を楽しみにしておくとしよう」と言って帰っていった。










俺は今KMFの騎乗している、そして俺のまえにはもう一機のKMF。

そのKMFにはジノが騎乗しているようだ。

通信用のモニターを通じてジノに声をかける。

「なぁジノ、馬上試合って先にラウンズ入りしてるメンバーとやるんじゃなかったっけ? なんで俺とジノがやるんだ?」

ラウンズに入るにあたって、その実力を皇帝の前で披露する。

それが馬上試合、御前試合ともいう。

もともとは中世の騎士が馬に騎乗して戦うことを指す言葉であったが、今ではそれが馬からKMFに変わったのである。

「ああ、俺がどうしても一度レイと戦いたいと陛下にお願いしたんだ。そしたらなんと許可してくれたんだよ。」

ジノの言葉に余計なことをと思いつつも、決まってしまったものはしょうがない。

そう決意して、俺は開始の合図を待った。








<ジノ>

俺は自分の親友と戦っている。何時も一緒に戦ってきた大事な戦友だ。

その戦友と今、本気の試合を行っている。味方である以上、眼前の相手と本気で戦える機会など少ない。

だが、どうしても一度だけレイと本気で戦いたかった。

今、目の前で俺のランスとレイの剣が鍔迫り合いをしている。これでもう20回ほどランスと剣を交えただろう。

これまでフェイントを用いて何回も攻めているのだが、そのたびに俺の攻撃は止められる。

まだレイは自分からは攻めてきてはいないが、俺が隙を見せた瞬間一気に形勢は逆転するだろう。

俺がレイと知りあってから、俺たちがKMFで戦った回数は3回しかない。仕官学校の訓練で2回とロイド博士の開発した剣の運用試験の時に1回。

この3回のうちにレイは1度も本気で俺と戦った事はない。訓練の時は手は抜いていないが全力を出してはいなかった。

剣の運用試験の時は切れ味がどれほどかわからないので明らかに力をセーブしながら戦っていた。

これまでレイとアーニャと一緒に戦ってきて、レイの実力をいつも横で見てきたからわかる。

レイは俺たちの間に入って、接近戦も射撃も俺やアーニャとほぼ同レベルでこなしている。

以前俺とレイが本気で接近戦をやったら俺が勝つといっていた。今でも接近戦だけなら簡単には負けない自信はある、だがこれがオールレンジになると俺の勝てる確率はぐっと下がるだろう。

この試合で使えるのは接近戦用の武器だけで、アサルトライフルは周りに観客がいるので使えない。なのでこの試合は俺の方が有利なんだ。

にもかかわらず、俺は攻め手を欠き、レイに一撃を加える事ができない。

そして一瞬俺が後退して体勢を立て直そうとした隙を逃さず、一気に攻めてきた。

ランスで剣の猛攻を防いではいるが、もう持ちそうにない。さらに10回剣を受けたところでランスが弾き飛ばされてしまう。

ああ、やっぱりお前はすごいぜレイ。でも次に試合が出来たら絶対に俺が勝たしてもらうからな。








俺がジノのランスを弾き飛ばすと「そこまで」と審判が止め、ようやく試合が終わった。

何とか勝つ事ができたけど危なかった。ジノの猛攻を防ぎきれたのは正直奇跡と言ってもいいと思う。

ジノは攻めあぐねたらいったん下がろうとするから、その隙をつかせてもらった。

でも俺が気づくのだから、仮にEUなどでジノの癖を研究されてたりしたら大変だ、後で教えておこう。

ジノもナイトメアから降りてきたので観客の前へ向かう。

「お前たち、双方よい試合であった。これからもその腕を磨き、我がブリタニアのためにその腕を振るうがよい」

陛下のお言葉を頂き、俺たちは拍手で送られながら庭園を後にした。

廊下を歩きながら俺はジノに先ほどの事を伝える。

「ジノ、攻めあぐねたら後ろに下がるのが癖になって来ているから気をつけておけよ」

「まじで? 俺ってそんな癖があったのか? よくわかったな、レイ!」

俺の忠告にジノは本当に驚いたように表情を変える。

「普段は俺やアーニャがいるからあまり後退しなくてもすむからな、でもこれからは俺たちもラウンズとして別々の戦場に送られるかもしれないから直せるうちに直したほうがいい」

「ああ、そうするよ。それにしてもレイはやっぱ強いな!全然攻め手が見つからなかったぜ」

ジノはやれやれと言った表情でそう言う。

「まあ今回は披露会だからな、俺も何時も以上に気合をいれて戦ったし、負けたくなかったからな」

「次は絶対俺が勝つからな、その時まで誰にも負けるなよ!」

「努力するよ」と言って俺たちはそれぞれに与えられた部屋へと分かれた。

この後アーニャもノネットさんを相手に試合を行ったが、もともと射撃に特化しているアーニャ。

奮戦したがやはりノネットさんにはかなわなかった。

翌日、陛下に呼び出された俺たち3人は謁見の間へと参上する。

俺たちのまえには玉座に腰掛けた皇帝の姿があった。

「お前たちラウンズは専用のKMFを作る事を許しておる。スタッフはこちらで用意して置いたので好きに使うがよい。とりあえず三ヵ月は時間をやるのでそれまでに形にしておけ」

「「「Yes, Your Majesty」」」

「それではまた3ヵ月後に次の指示を出す、下がってよいぞ」

「「「Yes, Your Majesty」」」

謁見の間を出た俺たち3人は今後の予定について話し合う事にした。

「3ヵ月はそれぞれ自分のKMFにかかりきりだろうな」

「そうだな、完成したKMFを見せて2人を驚かせてやるぜ!」

俺の言葉にジノはそう声を上げる。

「わかった。ラウンズの仕事中に顔は合わせるだろうけど、お互いそのことについてはノータッチってことでいいよな」

俺の言葉に二人はうなづく。

「それじゃあお互い完成を楽しみにしよう」

そう言うと、俺は2人に別れを告げて自分の研究室の方へと向かった。



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