こちらの話を聞いていたのかキョウカちゃんたちもこちらを向いている。


「アマツカ・ヤシロといいます。よろしくお願いします!!」


こうして過去から来た少年アマツカ・ヤシロは未来での生活がはじまった。

そして舞台は3年後より始まる……。



機動戦艦ナデシコ〜異界より来し者〜

第2話  〜ひと時の別れ、新たな道〜




日本某所ウリバタケ邸


「おーい、そこのスパナ取ってくれ」

「はい」

「サンキュー」

「いえいえ」


ギュルルルルルルル!ガンガンガン!ジューーッ

セイヤさんが謎の機械(趣味の一環)を作っているなか俺は依頼されていたプログラムを作っていく。

カタカタカタカタカタカタ!

自分で言うのもなんだがこの3年でタイピングスピードは大幅にアップした。

セイヤさんの所で住み込みで働かせてもらってから3年間、初めはそれこそ基本的なことすらわからず荷物運びをするのが精一杯だったが、

セイヤさんの教育の元、今では俺自身が仕事を持つことも出来るようになった。

というか出来なければウリバタケ家が借金に押しつぶされて身投げでもしていたかもしれない…。

3年前からセイヤさんも通常の仕事もするようになったがその稼いだ金を趣味に使ってしまって大して返済できていなかったのだ。

おかげで俺も出来る範囲で仕事をもらい(セイヤがつまらんといって断わったもの)返済の足しにしていたので

技術も当然上がり今ではセイヤさんとほぼ同等のスキルを手に入れたのだ。


(手に職を持てたのは良かったけど…よく生きてたよなぁ)


この3年間、気に入られたのかキョウカちゃんが抱きついてくるたびに感じる殺意の波動および実力行使になんど殺されかけたことか。


(実際キョウカちゃんが「いっしょにおふろにはいろ〜♪」なんて言われたときは死ぬかと思ったもんな〜)


どこにもっていたのか実弾を撃ってきたときは死に物狂いで逃げ出した。(そのあとしばらくキョウカちゃんに無視されてヘコんでいたが)

その後もことあるごとに実験台にされかけたが、この身体の身体能力が信じられないほど高かったので逃げ延びることが出来たのだ。


(この3年間で世界の情勢も変わったしね)


ここで生活してから得た知識…第一次火星会戦、チューリップという敵兵器を破壊した英雄フクベ中将…明らかになった人類の敵「木星蜥蜴」…

木星蜥蜴の出現により宇宙連合も防衛戦を開いたが結果は惨敗…今ではクリムゾン社製の地球防護膜・ビックバリアによって何とか進行を止めているものの地球 に降下したチューリップが

いつ再び機動するかもわからない状態だが、対岸の火事よろしく危機感を感じることはほとんどなかった。それよりも…


(このIFSはパイロット用とオペレータ用どちらとも違うみたいだけど俺もセイヤさんたちも知らないんだよな)


そうヤシロの右手に見えるIFSはパイロット用のものともオペレータ用のものとも浮かび上がる模様が違うのだ。本人は指して気にしていないが。


(まぁ、とにかく今考えるべきは借金返済だな)


いくら働いて稼いでも思うように返済することができず、セイヤさんが隠れて借金していることも発覚し(もちろん家族全員でボコった)

気がつけば莫大な金額になっていた。

ヤシロとしてはお世話になった家族になんとか御礼をしようと考えていたのだがいい案が浮かばず、働いて返すことしか出来なかった。

一人考えに沈んでいるとシャッターが開き


「はい、ごめん下さい」


とメガネをかけたちょび髭の男性とガッシリとした体つきの男性が現れた。


「どちら様でしょうか」


セイヤさんは今は奥に引っ込んでいるので一番近くにいた俺が尋ねてみた。


「あ、申し遅れました。私はこういうものです」


と懐から名刺を取り出し渡す。


「プロスペクターさん?」

「はい、言いづらいようでしたらプロス、と読んでいただいてかまいませんよ」

「わかりました。それでそのプロスさんがこちらにどのようなご用件で?」

「はい、実はこちらにおられるウリバタケセイヤさんをスカウトしたいと思いまして」

「スカウト…ですか?」

「はい、呼んでいただけるでしょうか」

「あ、はい。少々お待ちください」


スカウトという言葉に頭を捻りつつセイヤさんを呼びに奥に向かった。

ズギャギャギャ!キィーーーーーーン!!ガリガリガリガリッ!

<セイヤの実験室>と書かれた部屋に入ったとたん鼓膜を破らんとするかのような音が響き渡った。

耳を押さえつつセイヤさんの下に向かい、聞こえるように大声で叫んだ。


「セイヤさん!!」

「ああ!?」

「セイヤさんに用事があるって人が来てるよ!!」

「なんだって!!?」

「ああ!!機械を止めて!!!」


止めての言葉は何とか聞こえたのか機械を停止させた。


「んで?どうしたんだよ」

「玄関にセイヤさんをスカウトしたいって人が来てるんだよ」

「スカウトォ!?」

「うん」

「はっはっはっは!俺をスカウトしようたぁずいぶん見る目のあるやつじゃねぇか!!」


そう言いながら玄関に向かったが気になったので少し離れたところから聞くことにした。


「俺をメカニックに!?」

「違法改造屋だが、良い腕前だと聞いている」

「是非とも、うちの会社が開発した…」


既に交渉は始まっていたようでセイヤさんは子供のように目をキラキラさせながら聞いている。(よほど興味の沸く話なのだろう)


「それでお給料としてはこれくらいで…」

「!!」

「どうでしょうか?」

「…もう一人薦めたいやつがいるんだが…」

「ほう、技術者ですか?」

「ああ、おいヤシロ!!」


呼ばれたみたいだな。ってことは俺も付き合うのか?

セイヤさんの所に向かいながらどうするかを考えていた。


「彼がそうですか?」

「おお、うちで3年間みっちり叩き込んでやったからな!そこらの技術屋には負けねぇよ」

「そうですか、まぁあなたが言うのなら…ヤシロさん、私達ネルガルは優秀な技術者をスカウトしているのですがあなたも来ていただけますか?」

「ちょ、ちょっと待ってください。セイヤさんちょっと…」

「あ、なんだよ?」


セイヤさんを物陰に連れて行く


「セイヤさん彼らの話を聞いてたんですか!?少なくとも一年は家を空けることになるんですよ?」

「だからなんだよ」

「キョウカちゃん達はどうするんですか!?」

「まぁ、待てよ。あいつらの話を最後まで聞いてみろ」

「は、はぁ」


そういってセイヤは戻っていった。

納得はしていないが理由があるようなのでセイヤさんについていく。


「お話は終わりましたか」

「はい」

「そうですか、それではお給料の話になりますがこのくらいでどうでしょう」


そういって電卓に表示された額を見ると今まで働いて得たお金の何十倍もの金額だった。


「こんなに!?これだけあったら…!!」


溜まっている借金の半分以上返すことが出来ると気づきセイヤさんを見ると、苦笑を浮かべながら答えた。


「まぁ、あいつらには迷惑かけっ放しだったからな」

「セイヤさん…」


その言葉を聞いたとき俺の答えは決まっていた。


「これからよろしくお願いします」

「おお、そうですか!それではこの契約書にサインを」


いつの間に出したのか契約書が目の前に置かれる。

セイヤさんは契約書を読まずにサインをしてしまったが…


「プロスさん、この最後のは?」

「よく気がつきましたね、そのまんまの内容ですよ」

「……」


一番最後の欄に小さく書かれている部分に横線を引いた後、サインをした。


「しょうがないですねぇ、わかりました。これで結構です。それではいつ頃にこちらに来ていただけますか?」

「ああ、それじゃ明後日には行くことにするよ」

「わかりました、それでは…おや?あなたはIFS所持者なのですか?」

「あ、はい。そうですけど…持ってると入れなかったりします?」

「いえいえ、ただパイロット用ともオペレータ用とも違うようですが?」

「俺もわからないんです」

「わからない?」

「実は「こいつは3年前にうちで拾ったんだがな、それより前の記憶がねぇんだよ」…セイヤさん」

「そうだったんですか、それでは後ほどIFSの性能テストを受けてもらえますか?こちらとしてもそれがどのようなものなのか知りたいわけでして」

「は、はい。わかりました」

「それでは、私達はこれで失礼させてもらいます」


プロスさんともう一人の男性(名前を聞くのを忘れていた)が帰っていくのと入れ違いにキョウカちゃんが帰ってきた。


「ヤシロお兄ちゃんただいま!」

「キョウカちゃん、おかえり」

「今日のテストでね、ヤシロお兄ちゃんに聞いたところが出たんだ!」

「そうなんだ、それで解けた?」

「もちろん!!」


ほのぼのと会話をしていたなかにセイヤさんが入り込んできた。


「キョウカ」

「あ、お父さんただいま」

「ああ、おかえり。それでな、少し話があるから母ちゃんを呼んできてくれねぇか?」

「話?」

「ああ、大事が話があるんだ」

「わかった。今呼んでくるね」


キョウカちゃんが家と一緒に家に入り、居間で待っているとキョウカちゃん達が入ってきた。


「それで、話って何だい?」


夕食を作っていたのかエプロン姿でやってきた。


「俺とヤシロはネルガルで働くことにした」


セイヤさんもさすがにふざける雰囲気じゃないのか真面目に話し始めた。


「「え!?」」


さすがに突拍子もない話の上、結論のみしか言っていないので2人ともついていけていないようだ。


「先ほどネルガルの人がセイヤさんをスカウトに来まして、その話を受けたんですよ」

「それで、ヤシロもスカウトされたのかい?」

「ええ、セイヤさんの推薦で」

「なんでだい?あんた企業に入るとやりたいことが出来なくなるっていうんでこんな仕事をしていたんだろう?」

「ネルガルでの仕事の内容には興味があるからな。それならってんで受けたんだよ」

「それで?なんでヤシロお兄ちゃんもついていくの?」

「うん、俺も少しは興味あるし…待遇も良さそうだったからね」

「……」


この理由もうそではない、ネルガルが開発したという機動兵器とやらにも興味がある。もちろん第一の理由としては借金返済があるが…

「それで?その働きどころはここから通えるのかい?」

「いんや、明日にはここを出て佐世保に行く」

「えぇ!?それじゃいつ帰ってくるの?」

「正確には分からないんだ。ただ少なくとも一年以上は帰って来れないかな」

「そんな…お父さんだけならともかくヤシロお兄ちゃんもなんて…」

「キョウカちゃん(汗)セイヤさんが落ち込んでるから」


見れば部屋の隅でセイヤがのの字を書いていた。


「…うちにいてなんか不満でもあったかい?」

「そ、そんなことないですよ!ここに居候させてもらってから3年間、そりゃセイヤさんの暴走や実験体にされたのは迷惑でしたけど…本当に感謝しているんで すよ」

「そうかい…それなら好きにしなよ」

「お母さん!?」

「2人が自分で決めたんだ。あたしから何を言ったって無駄だよ」

「……」

「ただこれだけは約束しな。2人とも仕事がすんだらちゃんと帰っておいで、それが守れないんなら縄で縛ってでも行かせないよ」

「ああ、そりゃもちろん帰ってくるさ」

「はい、必ず守ります。帰ってきますよ」

「ヤシロお兄ちゃん」

「キョウカちゃん、絶対帰ってくるから待っててくれるかい?」

「うん………わかった」

「はいはい!それじゃこの話はこれでおしまい!しばらく家を出るんだ、うちの味を忘れないように今日は豪勢にいくよ」

「あ、それじゃ俺も手伝います」

「私も」

「それじゃ俺も「あんたは邪魔だから出ていきな」」


立ち直ったセイヤさんに止めをさし、台所に行くのについていった。




この日に食べた夕食は特別なものは出なくても今までのどんなものよりも暖かく美味しかった。





〜あとがき〜

あれ?ウリバタケの性格がなんか違うような…。

でもセイヤさんのスカウトされたときのことは変えないとヤシロが絡まないんですよね。(汗)

はじめは無理やり連れて行くことも考えていたんですけど、借金も解決しときたいしと色々考えながら書いた結果こうなりました。

自分の読んでいたSSではウリバタケははっちゃけてますけど根はいい人ってのがほとんどだったので、こんな感じでもいいかなぁと思ってますがどうでしょ う?

こんな作品でもまぁ、暇つぶしにでも使えたら感謝です。

それでは失礼します。



感想

コヒルさん第二話ご投稿♪

ネルガルスカウト話ですね、ウリバタケさんの性格ですか…彼の場合真面目モードとバカモードがありますからね。

基本的にこのバカモードが目立っているのではっちゃけて見えますが、真面目モードならそれもいいかと。

ネタの問題といいますか、TVナデシコはギャグ5割、マジ3割、ラブ2割位でやっていたような気がしますので(賛否両論あるでしょうが)

その比率次第でしょうね、SSではわりとその辺どうにでもなりますので…

しかし、特殊なIFSって流行なんですかね…よく目にします。

主人公にそういうのをつけると格好いいですしね。

もっとも、私のSSのアメジストもそんな感じですが…(更に特攻モード付き…汗)

まあ、アメジストなんてお邪魔虫の事はどうでもいいですが、この先アキトさん や、私、艦長なんかも出てくるわけです、

整備員から入る主人公は珍しいので、違った視点を確保できると思いますが…


うん、それはこの作品の魅力にできるんじゃないかな? 整備班は普段目が行かない部署ではあるし…

更に整備班に女の子がいたら面白いかも?(私もやろうかな〜)

〜光と闇に祝福を〜に関して言えば やめておいた方が賢明です。

人数多すぎて崩壊寸前
じゃないですか!!

あう、面目ない。






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