out side

 さて、美希達がボルテクス界に来てしまった次の日。美希と君嶋、香奈子は翔太達と共に探索へと来ていた。
なお、克也と直貴、京介はボルテクス界の翔太の家で留守番をしている。
今回は少々危険な場所に行くため、もしもの場合のことを考えての措置であった。
まぁ、京介が町を調べてみたいと言い出したおかげで、克也と直貴も納得したのだった。
それで翔太は少しばかりお金を渡すこととなってしまったが……なお、ミナトは翔太達と一緒に行動している。
 で、その探索の際に美希は妖魔コッパテングを、香奈子は妖精ゴブリンを仲魔にした。
これまた少しの会話だけで……その光景に翔太が落ち込んでいたりするが――
「翔太、チャクラドロップが欲しいホ」
「ボクも欲しいホ」
 そんな彼にそんなことを言うのはジャックフロストとジャックランタンである。
「あ〜、はいはい……でも、今日はこれだけだからな」
「わぁ〜い! ありがとうだホ!」
「うん、美味いんだホ!」
 そんなフロストとランタンに翔太はため息を吐きつつもチャクラドロップを渡し、その頭を撫でてやった。
それを嬉しそうに受けるフロストとランタン。2人は翔太が大好きだった。
なんやかんや言ってもこうしてチャクラドロップはくれるし、戦闘で無茶なこと言ったりもしない。
それに一緒にいるとこんなにも楽しいから――
そんなことを思うフロストとランタンの首に掛かる、Dr.スリルからもらったペンダントが輝いていた。
 なお、チャクラドロップは魔石と同じように砕いて使う物で、フロストとランタンのようにアメのようになめる物では無いことを言っておく。


 in side

「え〜、もう帰るのかよ?」
「あのな、俺達だって帰んなきゃならないんだっての。学校だってあるってのに……」
 ガレージに俺達が集まってる中、不満そうな顔をする直貴にため息混じりにそう答えておいた。
そう、今日は元の世界に戻る日なのである。いくら穴を通れば時間がずれるといってもやはり限界というものがある。
土日とかの休日ならまだしも、平日ではやはり3日が限界なんだって。それ以上になると夜遅くになっちゃうしな。
流石に夜遅いと親達だって怪しむだろうし……難しい所なんだよねぇ。
「あの、それにしても私達まで行って、大丈夫なのでしょうか?」
 と、刹那がすまなそうな顔をして聞いてくる。何のことかといえば、刹那と真名とミナトを俺達の世界に連れてくることになったのだ。
今までは泊める場所が無くて出来なかったんだけど――
「構わん。泊める場所は私が用意するからな」
 などと腕を組みつつ言ってるのは美希であった。そう、刹那達の宿泊場所に美希の家を使うことになった。
なんでこんな事になったかといえば、ある時ミナトが俺達の世界に行きたいという話をして、それなら来るがいいと美希が言い出したんだよ。
で、泊まる場所とかどうするのかと俺が言ったら、自分の家に泊まるといいと美希が答えたと。
なんでも、ある程度は誤魔化しが聞くから大丈夫だと言うんだけど……本当かね?
「あら、賑やかね」
「あれ? ウルスラさん? それにクノーさんも?」
 そんな時に声が聞こえたんで振り返ってみたら、ウルスラさんとクノーさんがなぜかいた。造魔であるルミアとバスクも一緒に。
なんでいるんだろうかと首を傾げてしまったが――
「どうかしたんですか?」
「何、君にギルドのことで少し話しておきたいことがあってね」
 とりあえず聞いてみたら、クノーさんからそんなお言葉が返ってきました。
そういや、ギルドのこと詳しく聞いてなかったしな。どんなことするのか聞いてみるのもいいか。
「ああ、それなら――」
「その前に私のお願いを聞いてくれないかしら?」
 話を聞こうと思ったら、そんな声が聞こえてきまし……ちょっと待て?
今の声は聞き覚えがあるんだけど……んでもって、なぜか嫌な予感しかしないんだけど?
んなことを考えつつ、振り向いてみたら……空間の裂け目から上半身を出してるスキマ妖怪がいました。
わ〜い、八雲 紫じゃねぇか……なんでいるのさぁぁぁぁぁぁ!?
「知り合い……かな?」
「ええ……一応……」
「あら、初めまして。わたくし、八雲 紫と申します。以後、お見知りおきを」
 クノーさんの疑問に一応うなずく。俺もクノーさんも顔が引きつってたけど……
で、スキマ妖怪こと紫は空間の裂け目から出て、笑顔と共に優雅な仕草で挨拶したんだが――
なぜだろう……その笑顔に胡散臭さしか感じないのは……
「あ、あの……翔太さん……あの方は悪魔……なのですか?」
「一応、妖怪……だったと思う……」
「世にも珍しい一人一種族妖怪ですわ」
 顔が引きつる刹那にそう答えておく。あ、真名の顔も引きつってら。
で、紫はといえば笑顔でそんなこと言ってるが……いや、一人一種族妖怪ってなにさ?
「な、なぁ……翔太……八雲 紫って言ったら……」
「一応……考えてる通りだ」
「マジかぁぁぁぁぁぁ!?」
「待て!? それは激しく死亡フラグだから!?」
 なぜか呆然としてる直貴に答えると、克也はすっげぇ喜んでたが……全力で止めておいた。
確かに幻想郷の実在が嬉しいのはわかる。だが、克也に直貴よ……お前達が考えてる幻想は……たぶん、粉微塵にされると思う。
そういう意味での死亡フラグなんだが……幻想は幻想のままに留めた方がいいこともあるんだって。
それはそれとして――
「とりあえず、お願いってなんすか?」
「ええ、ちょっと厄介ごとを片付けてもらおうとね」
 とりあえず、気になることを聞いたら、紫は笑顔でそんなことを言ってきました。
うん、激しく嫌な予感しかしないよ? ていうか、厄介ごとって何さ!?
「詳しいことはあちらで話すわ。だから――」
「ちょいと待った。落とすのは無しだからな?」
「……ち」
 んなこと言いつつ、閉じた扇子を振り上げた紫に待ったを掛ける。
おい、今の舌打ち……落とす気だったのか。ていうか、落とす気満々でしたか!?
「なぁ、あの人って……大丈夫なのか?」
「気持ちはすっごくわかるけどな……」
 なにやら困った様子の真名にそう言っておく。うん、紫って油断出来ないんだよね。
油断してたら、何されるかわからんし……それはそれとして――
「あ〜、すいません……そういうことなんでちょっと行ってきますね」
「ふむ、それに私達が行ってもいいかしら?」
 と、すまなそうに言ってみたら、ウルスラさんにそんなことを聞かれました。なぜに?
「クノーから聞いてるわよ。あなたが世界を守るために行動してるって。だから、どういうことをしてるのか気になってたのよ。
まぁ、ここしばらくは暇な時間があるからってのもあったのだけど」
「はぁ……まぁ、世界を守るといっても、大した理由じゃ無いんですがね……」
「そういえば……君はどうしてそんなことを?」
 ウルスラさんに言われて後頭部を掻きつつそう言うんだけど、君嶋さんに聞かれてしまった。
そういや、俺が何してるかは話したけど、理由とかは言ってなかったな。
「いや〜、死にたくないだけなんですけどね」
「え? 死にたくないって……だったらなんで……」
「いや、世界が崩壊するってことは俺達も死ぬかもしれないってことでしょ? そんなの嫌ですし。
後、知り合いが死ぬのも嫌ですしね。まぁ、それでなんですけど……」
 俺の話に香奈子さんは戸惑ってるけど、構わず後頭部を掻きながら答えておいた。
いや、というか俺としてはそんな理由なんだけどね。後はあのゴスロリボクっ娘に睨まれてるのもあるけど……
うん、ゴスロリボクっ娘のことは言わないでおこう。なんか、情けない気がしてきたしな。
「やれやれ、大物なんだか、そうじゃないんだか……」
『だが、わからなくもないな。死ぬかもしれないという危機に立ち向かうのは、ある意味当然とも言える』
 なんだか呆れてるクノーさんだが、バスクがあごに手をやりながらそんなことを言ってきます。
でも、立ち向かうとか、そんなカッコイイものでも無いんだけどな。
「それで……どうするのかしら?」
「ああと……ここにいる全員がってことになりそうだけど……いいかな?」
 ため息を吐いてる紫にそう聞いておく。俺や理華、ミュウなどの仲魔達は当然として、美希や君嶋さん達も興味を持っちゃってるし。
克也と直貴はもう行く気満々だしな。
「いいわよ、厄介ごとを片付けてくれるならね。それじゃあ――」
「何度も言うけど、落とすのは無しだからな?」
「……ち」
 嫌な予感がしたんで念を押しておくと、話していた紫は小さく舌打ちしやがった。
ていうか、やっぱり落とす気だったんかい。あぶねぇ……確認しておいて良かった……
そんなわけで紫が開いた空間の裂け目を入っていく俺達。美希や君嶋さん達は戸惑った様子で付いてきたけどね。
克也と直貴だけは嬉しそうだったけど……いいよな、お前らは気楽で……たぶん、幻想は打ち砕かれるんだろうが……




 あとがき
そんなわけで翔太達は再び幻想郷へ。しかし、そこで待っていたのは幻想郷を代表する者達だった。
果たして、紫の言う厄介ごととはいったい? 次回はそんなお話です。
今回は短めな話になっちゃいましたが……まぁ、次回は長くなると思います。たぶん……(おい)



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