out side

 その光景を霊夢は呆然と見ていた。
スカアハの叫びの後にいきなり突き飛ばされ、文句を言おうと顔を向けたら翔太の右腕が氷に包まれていた。
いきなりのことが理解出来ず、思わず思考が止まってしまうが――
「馬鹿者! いつまで呆けているつもりだ!」
「え? あ……」
 その時に聞こえたスカアハの叫びで霊夢は正気に戻った。
気が付けば、あの大きいフロスト……本当の名はキングフロストと言うが……が迫っている。
霊夢はすぐさま弾幕を放つが――
「えぇ!?」
「うそぉ!?」
 翔太も一緒になって、その光景に驚いてしまった。なにしろ、霊夢の弾幕がキングフロストに効いていないのだ。
当ってはいる。だが、大したダメージでは無いようで、気にした風も無く近付いてくるのである。
「く! この!」
 それでもなんとかしようと霊夢がスペルカードを構えた時だった。
「え?」
 その光景に霊夢は思わず固まってしまった。なぜなら、ジャックフロストとジャックランタンが前に出てきたからである。
正確には翔太の前に……フロストとランタンは偶然にも近くにいた。だから、すぐに助けに来れた。
大好きな翔太が危ない。ただ、それだけの理由で助けに来たのだ。
 実を言えば、怖かった。いくら悪魔といっても自分以上の高位な悪魔と向き合えば、そう感じてもおかしくはない。
それでもフロストとランタンは退かない。このままじゃ翔太が危ないのは目に見えている。
だから、守りたい。優しくて楽しくて……そんな想いにさせてくれる翔太を。
「お前なんかに――」
「翔太は倒させないホー!!」
 それはフロストとランタンの想いだった。その想いをぶつけるが如く、2人は魔法を放つ。
「ホッホッホ、効かないホー」
 だが、キングフロストは構わず近付いてくる。
フロストの氷結魔法は意味を成さないし、ランタンの火炎魔法もキングフロストから出てくるフロストによって阻まれていた。
「そこをどきなさい! 霊符――」
 このままではダメだと、改めてスペルカードを発動させようとする霊夢。
だが、フロストとランタンは退かなかった。気付かなかったのだ。翔太を助けたい一心で。
逃げたくない。逃げたら翔太が……その想いで周りが見えなくなっていた。
この時、霊夢は構わずスペルカードを使おうとしていた。
霊夢は仲間意識というものはあまり無いが、それでも危ないとわかっている者を見捨てるほど無情ではない。
彼女としても守りたかったのだ。だが、それは成されなかった。なぜなら――
「え?」
「へ?」
 フロストとランタンがいきなり輝き出したからである。
その光景に霊夢と翔太は呆然としてしまう。他の仲間達も同じであった。
「な、なんだホ!?」
 逆にキングフロストはこの光景に戸惑うが――
「ジオダイン!」「アギダイン!」
「ホォー!?」
 その輝きから飛び出してきた魔法に突き飛ばされ、キングフロストは轟音と共に倒れていった。
一方で何が起きているのか理解出来てない翔太と霊夢。やがて、輝きは消えると……そこにはフロストとランタンはいなかった。
いたのは2人の少女。1人は雪のように白銀に輝くロングヘアに可愛らしく整った顔立ち。
しなやかな肢体に豊かに張り出た胸を白いレオタードに包み、手足を手袋とブーツに頭に乗せられた帽子。
それらとレオタードも相まって、どことなくフロストを連想させた。
 もう1人は炎のように紅いロングへアにこちらも整った顔立ちだが、目付きはどこか鋭さを感じる。
こちらもしなやかな肢体に豊かに張り出た胸は一緒だが、それを包むのはマント1枚だけのように見える。実際、何かが見えそうだった。
そして、頭にはなぜかランタンの顔を少し小さくした物が乗っており、その上にこちらも少し小さい魔法使いのような帽子が乗っていた。
「なにあれ?」
 その2人を見ていた翔太が疑問の声を漏らす。実際、あの2人に翔太は見覚えが無いのだ。
だが、なぜだろうか。翔太には確信めいた物があったのだが、反面否定したい気持ちもあったのである。
「な、なぁ……あの2人って――」
「ジャックフロストとジャックランタンだろうな、間違いなく」
「やっぱり!?」
 思わず問い掛ける翔太に駆け寄ってきたスカアハは様子を見ながら答えると、翔太は思わず叫んでしまった。
いや、そうなのだろうとは思ってはいた。思っていたが……疑問の方が強かった。というのも、姿が違いすぎるのである。
たぶん、白いレオタードを着た方がフロストで、マントを羽織っているのがランタンなのだろうが――
まぁ、ぬいぐるみのような姿から完全な人型……というか、少女になれば翔太のように思ってしまうのも仕方ないかもしれない。
「成長した悪魔は進化し、その姿を変えることはあるにはあるが……しかし、あれは変わりすぎだろう……」
 もっとも、それはスカアハも同じらしく、どこか呆れたようにも見える。
成長した悪魔が進化することはそれほど珍しいことではない。もっとも、そこにいたることが出来る悪魔は希ではあるのは事実だが。
それによって姿も変わるが……今のフロストとランタンのような変わり方をするのはまず無いと言っていい。
「まぁ、これはチャンスか……このまま一気にたたみかけるぞ! 霊夢! いつまで呆けてるつもりだ?」
「え? あ……」
「あの、ちょっと……俺はどうしろと?」
 色々とツッコミたかったが、キングフロストが倒れてる今は好機と考えて指示を出すスカアハ。
その時、呆然としていた霊夢は声を掛けられて正気に戻ったが……実は翔太とスカアハ以外はほぼ霊夢と同じ状態になっていた。
まぁ、フロストとランタンの姿がいきなり変わったのを見れば、そうなってもおかしくないかもしれないが――
 そんなスカアハの指示に翔太は少し戸惑った。未だに右腕が氷に包まれていたからであり、もしかしてこのままとか考えたのである。
「お前も少しは考えて行動して欲しいものだがな」
「お、サンキュー。あ〜、冷たかった」
 ため息混じりにスカアハは氷を砕き、助けられた翔太は右腕を確かめるように動かしながら礼を言っていた。
「お前達、許さないホォー!?」
 その間にキングフロストは立ち上がろうとするのだが――
「あいにくだが、付き合ってやるつもりは無い! マハラギオン!!」
「アギラオ!」「「ガルーラ!」」「「ジオンガ!!」」
「霊符『夢想封印』!!」
「恋符『マスタースパーク」!!」
「大奇跡『八坂の神風』!!」
「奥義『西行春風斬』!!」
「ホホォー!?」
 叫びながらスカアハが巨大な炎の魔法を放つと共に掛け合わさる理華の炎とモー・ショボーとシルフの風にルカとアリスの雷の魔法――
更には霊夢、魔理沙、早苗、妖夢のスペルカードの弾幕がキングフロストを突き飛ばし――
「ジオダイン!」「アギダイン!」
「ブホォー!?」
 そこにとどめと言わんばかりにフロストの巨大な雷の魔法とランタンの巨大な炎の魔法がフロストを呑み込み――
「翔太! 行くぞぉ!!」
「おお!」
 キングフロストが倒れた直後にクー・フーリンの掛け声に翔太が一緒になって飛び込んで行き――
「「うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!?」」
「ホォォォォォォォォォ!!?」
 一緒になって槍と剣を額に突き刺すと、突き刺されたキングフロストは悲鳴を上げ、そのまま砕け散ったのだった。
「はぁ……なんとかなった……」
「そうだが……翔太、もう少し後先を考えろ。霊夢なら先程の攻撃は避けることが出来たぞ」
「あの状況で無茶言うな!?」
 キングフロストを倒したことで肩を落とす翔太であったが、スカアハのひと言に思わず叫んでしまう。
翔太は戦い初めてすでに1ヶ月半を超えようとしているが、その期間で極められるほど戦いは容易いものではない。
現に咄嗟の判断に難がある。霊夢を助けようとしたのがその現れであった。
もっとも、こればかりは培ってきた経験が物を言うので、仕方がないとも言えるのだが……
「にしても……フロストとランタンのその姿はどうしたっていうんだ?」
「ホ?」
「ボク達がどうしたホ?」
 ふと、顔を向けて疑問を漏らす翔太であるが、フロストとランタンは首を傾げる。
で、互いの顔を見てからまた首を傾げ、更には自分の体を見回し――
「か、変わってるホ!?」
「なんでだホ!?」
「気付いてなかったんかい……」
 驚くフロストとランタン。その2人の様子に翔太は呆れていたのだが――
「でも、これで翔太と一緒だホ!」
「そうだホ!」
「てぇ、なぜに抱きつかれますか!?」
 いきなり抱きついてくるフロストとランタンに翔太は戸惑った。
まぁ、無理もない。今のフロストとランタンは美少女でスタイルも抜群。
しかも、フロストはほぼ薄着だし、ランタンにいたってはマント以外は何も着ていないのだ。
だから、フロストとランタンの体の感触がモロに伝わっている。それは嬉しくないわけではないが、何かまずいような気がしたのだ。
 一方でフロストとランタンは嬉しかった。翔太と同じように人の姿になれたことに。
人の姿になれれば、翔太ともっと仲良く出来ると思ったから……抱きついたのもそれ故である。
「む〜……」「うう〜……」「う〜……」
 で、この様子に理華とミュウとアリスはむっとしており、クー・フーリンはなぜか悔しそうな顔をし、
ルカとシルフは睨むように見ていて、美希は羨ましそうな顔をしていた。
「ははは、なんか楽しそうじゃないか」
「当事者じゃないから、言えることだな」
 その光景を魔理沙は楽しそうに眺めており、スカアハは呆れたようにため息を吐く。
もっとも、呆れていたのはウルスラにクノー、君嶋に香奈子、刹那と真名もだったが。
なお、早苗と妖夢はどうすれば良いかと困った顔をしていたが、霊夢だけはなぜか複雑そうな顔をしているのだった。


 in side

 まぁ、色々とあったがなんとか問題も解決し……他の問題は解決出来て無いけど……
それはそれとして博麗神社に戻ると――
「あだだだだだだ!?」
 なぜか、永琳さんから整体を受けていた。いや、マジで痛いんですけど!?
「まったく、何をしてたのよあなた? 体中の筋が歪みまくってるわよ?」
「やはり、そうであったか……」
「何がそうであったかなのざぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 スカアハの漏らしたひと言が気になったんで聞こうとしたら、呆れてる永琳さんの整体のせいで悲鳴になったけど。
いや、マジでどういうことさ? 後、永琳さん。痛くならないように出来ないんですか!?
「お前の場合、急激に力を身に付けたせいで体が追いついてない。体の筋の歪みはそのせいだ。
このままなら、取り返しの付かないことになっていただろうな」
「そんな……」
 スカアハの話に理華が戸惑ってるが……俺としては大して違和感も無かったけど……
そういや、戦ってると痛いな〜と思ってたが……あれって、筋肉痛か怪我のせいだと思ったけど、もしかして違ってたとか?
「でもさ、これで治ったんだろ!?」
「んなわけ無いでしょ。今やってるのは歪んだ筋の矯正であって、治療ではないわ。
同じようなことを続けていたら、治るものも治らないわよ」
「それは難しいな……我々の目的を考えると戦いをやめることも悠長に治療も出来んしな。
腕のいい整体師に定期的に治療を受けさせるしかないのかもしれんが、当てがな……」
 大したこと無いと思ってたんだが、すっげぇ痛いことしてくれた永琳さんに否定される。
ていうか、マジで痛いですよ!? 色々と当ってますが、それを確かめることが出来ないくらいに痛いですよ!?
スカアハはといえば、あごに手をやりながら悩んでたけど――
「それならば、なんとかなるかもしれぬ」
「本当か?」
「うむ、私も何度かお世話になった人だ。簡単にではあるが怪我の治療も出来るし、信頼も出来る人だ。頼んでみよう」
「頼む……翔太の体への負担は出来るだけ減らしたいからな」
 うなずきながらそんなことを言う美希にスカアハは真剣な眼差しを向けるんだが……
もしかして、俺の体って結構大変なことになってたりするの? 自覚無かったんだけど……マジでヤバイの?
それも気になるが、今一番気になるのは……
「ところで……あの2人はどうしたんだ?」
「あ〜……それは……ねぇ……」
 なぜか、2人並んで体躯座りをし、見た目からしてすっげぇ落ち込んでる克也と直貴に首を傾げる。
どうしたんだろうかと思ってたら、京介さんが答えてくれたんだが――
 俺達が向かった後、魔法が解けた2人は幻想郷の人達に話しかけていたらしい。
離れていたんで話の内容まではわからないそうだが、なんかことごとく断られたり怒られたり……
しまいには映姫から説教までされて、あんな風になったそうだが……あいつら、オタク全開なことしたな?
きっとあいつらのことだから、二次創作的なことでも考えてたんだろう。で、現実を見せられて落ち込んだと……だから言ったのになぁ……
俺もルーミアにマジな意味で喰われそうになったり、紫に落とされたせいで早々と現実を見る羽目になったしな。
「あだぁ!?」
 なんてことを考えつつ、俺は永琳さんの整体を受け続けるのであった。
というか、マジで痛くないように出来ませんか!?


 そんなこんなで夕方となり――
「なんで宴会なんてしてるんだ?」
「気にしたら負けかと思いますけどね」
「あの、明らかにお酒飲んだらダメな歳な子がいない?」
 少し呆れ気味の君嶋さんにそう言っておく。まぁ、気持ちもわからなくはないな。
後、香奈子さん。それも諦めた方がいいです。見た目以上に年取ってるのもいますし。
 さて、もうおわかりだろうが、博麗神社の境内では盛大に宴会が行われている。
というかすでにどんちゃん騒ぎになってるし……
「しかし、人と妖怪……妖精に神様まで一緒になって宴会とはね。普通なら信じられないな」
「ふふ、ここは幻想郷……あらゆるものを受け入れる地ですので。種族の違いなんて、ここでは大したことでもありませんわ」
 感心してるような真名にそんなこと言うのは紫である。こいつ、いつの間に来たんだ?
あ、そういえば――
「そだ。エヴァのことだけど、やってくれた?」
「ええ、それでエヴァンジェリンから伝言を預かってるわ」
「へぇ〜。なんて?」
「覚えておけ、ですって」
 紫が楽しそうに答えるが、聞いた俺はといえば思わず固まってしまった。
なにそれ? すっげぇ、不安なひと言にしか聞こえねぇんすけど?
「なんでまた、そんなことに?」
「あら、私達は楽しくお話をしてきただけよ?」
 思わず聞いちゃうけど、紫は微笑むだけ。そうだった……こういう奴だよ、紫って……
「あら、どうしたのかしら? 落ち込んじゃって?」
「とりあえず、色々と後悔してるところだ」
 やってきたレミリアにため息混じりにそう答えた。
紫がなにしたかわからんが、エヴァにまた会った時に何されるか……うん、すっげぇ不安だよ?
「あら、そう……そうだ……覚えてるかしら? 自分のことを聞く覚悟があるかしらというのを?」
 なにやらニヤリと笑うレミリアだが……そういや、前に幻想郷に来た時にそんな話をしてたような……
「ああ、あれか……嫌な予感しかしないんだけど……まぁ、気になるし……」
 そのことを思い出しながら答えてみる。うん、本当に嫌な予感しかしないんだけどね。
でも、気になるじゃん? ここまで意味ありげに言われると。とまぁ、俺としてはこの程度の認識なんだけど――
「そう……あなたの運命には呪いが掛けられてるわ。世界を巻き込んだ呪いがね」
「はい?」
 なぜか、したり顔で答えるレミリアだが、俺はその意味が理解出来ませんでした。
いや、何……世界を巻き込んだ呪いって?
「あなたにはボルテクス界や幻想郷などに起きている異変に巻き込まれるような呪いが掛けられているわ。
そして、その呪いが厄介な所はそのような異変が起きるように世界に作用しているということ」
「え〜と……それってどういうこと?」
 レミリアの話が理解出来ずに思わず聞き返す。いやね、なんか嫌な予感しかしないのはわかってるんだよ?
というか、ろくなことじゃないってことも……うん、やっぱ聞かなきゃ良かったかな?
「簡単に言えば、とてつもない厄介ごとに巻き込まれる呪いを掛けられてるのだよ、お前には。
しかも、更に厄介なことにお前の行く先々で起るようになっているオマケ付でな」
「なにそれ!?」
 いつの間にやら来ていたスカアハに俺は思わず叫んでしまう。というか、なにそのはた迷惑な呪いは!?
ていうか、誰よ!? そんな呪い掛けたの!?
「ちなみにだが、この呪いは今回の異変を解決せねば解けることは無いぞ」
 スカアハの追い打ちなひと言に顔が引きつったのを感じた。
なに、そのとんでも状況……というか、本気で誰さ!? 俺にそんな呪いを掛けた奴は!?
「どうして、そんなことに?」
「掛けた奴の戯れだよ。ちなみに掛けた奴はお前も良く知っている奴だ」
 君嶋さんの問い掛けにスカアハは呆れた様子で答えてたけど……俺の知ってる奴?
俺の知ってる奴でこんなことしそうなのって……まさか――
「あんの、ゴスロリボクっ娘かぁぁぁぁぁ!?」
 そのことに思い至って思わず叫んじゃったけど、俺は悪くないよね?
ていうか、あの野郎なにしてくれてんだ!? 文句言っていいよね? 殴りたいけど……うん、それは無理か。
「まぁ、このことはあまり人に話さないようにしろ。これを聞いて、馬鹿なことをする輩がいないとも限らんからな」
「あら、私達はいいのかしら?」
「お前の場合は損得勘定で動くだろうからな。幻想郷の損にならん限りはそうするつもりも無かろう?」
 何か意味ありげな視線を向ける紫に、ため息を吐いていたスカアハはそう答えたけど……
馬鹿なことってなに? 嫌な予感しかしなくて、聞くに聞けないんだけど?
「でも、そんなことって……」
「言っておくが、翔太は被害者だ。翔太が何かをしたわけではない。そこの所だけは知っておいて欲しい」
 なにやら心配そうな顔をする香奈子さんだが、スカアハはため息混じりにそんなことを言っていた。
うん、確かにあのゴスロリボクッ娘に何かした覚えは無いな。理華を助けてくれると言うんで頼んだ以外は……
本気でなんでだろうね? なんで、そんなとんでもなさそうな呪いを掛けられなきゃならんのは?
「翔太〜……って、どうしたの? なんか、落ち込んでない?」
「色々とあってな……」
 やってきた理華にため息混じりに答えるが……うん、へこたれるよな……
だってさぁ、自分がとんでもないことになってるって知ったら普通ショックじゃないか?
「ほら、翔太も来るホ」
「みんな待ってるホ」
「おいおい……」
 と、いつの間にやら来ているフロストとランタンに両腕を引っ張られる。
見てみると刹那は妖夢と仲良くなったようで話し込んでるが……なんで、翼を出してるのさ?
克也と直貴は……あ、映姫に説教されてら。京介さんは慧音さんとなにやら話し込んでるし……
クー・フーリンは萃香と勇儀さんと飲んでる。他の仲魔達もそれぞれ楽しくやってるようだ。
「へいへい、わかったよ……」
 少々呆れつつも引っ張られる俺。うん、今は嫌なこと忘れて楽しもう。
決して、現実逃避してるわけじゃないよ?
「やっと来たわね」
「まぁ、色々とあってね」
 やっと、フロストとランタンから解放されたかと思うと霊夢が話しかけてきた。
しっかし、ここの連中って賑やかだよなぁ……ホント……それが少し羨ましい。
いや、今は考えるのはよそう。考えても欝になりそうだし。
「なによ、元気ないわね?」
「そりゃ、色々とありすぎ、て――」
 霊夢に訝しげな顔をされたんでそう言っておく。渇いた笑みも添えて……と思ったら、頬に何か触れた。
え? なに? なんで霊夢が俺の横にいるの? なんで、顔を近付けてるの? なんで、顔を赤らめてるの?
「これは……助けてくれたお礼よ……じゃあね……」
 なんて、顔を赤らめる霊夢はどっかに行ってしまいました。
ええと……これ、なんてエロゲ? なんて考えてしまった俺は悪くないと思いたい。
「翔太、どうしたの?」
「いや、なんでもない……」
 理華にそう答えるが……俺は呆然と立ち尽くすのだった。
なお、これは後で聞いた話だったんだが、文の奴今のを写真に撮っていたらしい。
それでとんでもない騒動が幻想郷で起きたそうなんだが……俺、悪くないよね?


 out side

 翔太や君嶋達が宴会の輪へと向かい、ここにはスカアハと紫、レミリアだけがいた。
「それで……あなたはどなたなのかしら?」
 ふと、紫がスカアハに視線を向けながら、そんなことを聞いてくる。
気付いていた。スカアハがただの悪魔で無いことを。いや、悪魔ですら無いことを――
「それは――」
「まぁ、色々とありましてね」
 スカアハがどうしたものかと考えながら何かを言おうとした時、紫とレミリアにとって聞き覚えのない声が聞こえてくる。
同時に自分達の周りに結界……認識阻害のための物が一瞬で張られる。そのことに紫は少なからず驚いていた。
一瞬でしかも周りには気付かせずに、違和感すら消し去るほどの高度な結界を張る。
現に自分達以外にこの結界が張られたことに気付いた者はいない。こんなことは自分以外に出来る者を知らない。
そんなことを思いつつ、紫は振り向く。そこにこの結界を張ったであろう人物がいると見越して。
「いつの間に来ていた?」
「つい先程ですよ……幻想郷に別の穴を空けた悪魔がいましてね。そいつをぶちのめしてきた所です」
 紫の思惑通り、そいつはいた。スカアハと話し合う青年……アオイ シンジが――
「良いのか? そんなことをして?」
「今回は別口ですからね。翔太さんには関係無いので。
まぁ、余計な手出しをされて、翔太さん達の負担にさせるわけにもいかないでしょう」
「ところで……あなたはどこの誰なのかしら?
 スカアハと話し合うシンジに紫は首を傾げながら問い掛ける。視線に殺気を含ませて――
「ああ、これは名乗らずにとんだ失礼を……アオイ シンジ。
訳あって、陰ながらに翔太さん達のお手伝いをしている者です。
翔太さん達には私のことは内緒にしておりますがね……理由があって……と、思ってください」
 優雅な仕草で頭を下げながらシンジは名乗り、そんなことを話す。
それに紫は目を細めた。シンジは見たところ一般人と変わらないように見える。それこそ、翔太の方が遥かにマシに見えるほどに。
だが、なぜか一般人に思えない。確かに結界や今の話などもそうだが、何か別のものを感じるのだ。
「翔太に内緒って、どうしてそんなことを?」
「私は少々厄介な立ち位置にいましてね。もし、私のことが奴らにわかってしまったら……翔太さんは苦境に立たされるかもしれません。
私としてはそれは避けたいのですよ。まぁ、いつまでも隠し通せるものでもありませんので、時が来たら……となりますがね」
 レミリアの問い掛けに、シンジは人差し指を立てウインク混じりにそう答えた。
それを聞いていた紫はというと、なぜか顔をしかめていた。シンジから自分と似た何かを感じる。
それ故に軽い嫌悪感が出てしまったのだ。
「それで……あなたはどんな人なのかしら?」
「そうですねぇ……通りすがりの人といつもならそんなテンプレなのですが……
今はこうお答えしましょう。お節介好きの小悪党と……ね」
 紫の問い掛けに口元に手をやり笑みを浮かべて答えるシンジ。
だが、その程度で紫とレミリアが納得するわけもなく、逆に睨ませてしまったが――
「ああ、そうだ……スカアハさんのことですが、いずれお話ししますので……今日はこれで我慢して頂ければと」
 にこやかに話しつつ、翔太は一升瓶6本を紫に手渡した。ちなみに銘柄はお目に掛かる機会が中々無い物とだけ言っておこう。
「では、私はこれで……まぁ、またお会いすることになるでしょうがね」
 そう言いながら優雅に頭を下げるシンジ。そのまま、まるで景色に溶け込むかのように消えていった。
それと同時に結界も消えるが……紫とレミリアはただ呆然と見送っていた。スカアハだけはくすくすと笑っていたが。
「なに、あいつ?」
「ああいう奴だ……あまり気にしない方がいいぞ」
 思わずレミリアから漏れ出た疑問に、スカアハは笑みをこらえながら答えていた。
紫とレミリアがシンジの正体を知るのはまだ先の話である。



 あとがき
そんなわけで幻想郷異変第二幕はこれにて終了。その中でフロストとランタンがパワーアップしましたが――
姿は完全に趣味です。いいじゃないですか、エロくて!(おい)
それはそれとして、幻想郷にはまた訪れることになるのですが……さて、次回は日常編になります。
刹那と真名とミナト、更にはウルスラとクノーを連れて元の世界に戻ることになった翔太達。
しかし、その前にルイ・サイファーが言っていた悪魔を見つけ、翔太達はある場所へと向かい――
というわけで、次回はペルソナからあの方にゲスト出演してもらいます。
うん、資料集めが不十分なんでキャラ性出せてるか不安なんですが……



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