in side

 さて、あの後美綴達に説明を求められたんで話す羽目になった。
といっても、説明はほとんどメディアがしたんだけどね。
 まず、この冬木で聖杯戦争が起きていて、それがどんな物なのかを。
士郎はそれを止めるべく参加しており、セイバーは士郎のサーヴァントであること。
ちなみに士郎が魔術使い見習い(メディアに言わせるとそういうものらしい)というのは言わなかった。
そういや、聖杯が汚染されてるってのも話さなかったな。なんでだろ?
まぁ、聖杯戦争が魔術師がらみであることは話したけど……それに氷室が異常に興味を見せていたように思えるのは気のせい?
 で、俺達はそれとは別に起きていることを解決するために来たと話しておいた。
ただ、ここでも俺達が異世界から来たというのは言わなかったけど。まぁ、こっちは当然かな?
普通は信じられないだろうし……麻帆良でも凜も簡単には信じてもらえなかったしな。
んで、今は聖杯戦争に巻き込まれた美綴達をどうするかを話し合っているわけだが……
「あの、私達はどうしたら……」
「まぁ、私達と一緒にいるのが一番なんだけど……あなた達はそうもいかないでしょうしねぇ……」
 美綴の疑問にメディアは考える仕草をしながらそんなことを言ってたけど……確かになぁ……
一緒にいれば守ることは出来るんだろうけど、それはまず無理だし。
美綴達だって学校はあるし、家にも帰らなきゃならないし……うん、無理だよね。
「まさか、士郎の家に泊めるわけにもいかないだろうしなぁ」
「それが理想だけど……確かにそうよね」
「え? そうなんですか?」
 俺の言葉にメディアがうなずいてるが、士郎はなぜかキョトンとしてました。
いや、普通そうだろ? だってさ――
「じゃあ、聞くが……美綴達がお前の家に泊まるとして、そのことを藤村さんにどう説明する気だ?」
「あ……」
 俺の話に士郎はようやく気付いたようである。女が男の家に泊まるだけでも色々とあるかもしれないってのに……
しかも、それが4人もだぞ? 凜と桜も入れれば6人……あ、セイバーも入れれば7人か……
うん、なんか色んな意味でヤバイよね。噂的な方でさ。
「じゃあ、結局どうするの?」
「それを考えるために士郎の家に向かってるのだけどね」
 理華の疑問にメディアはため息混じりに答えてたが……忘れてたが、今俺達は士郎の家に戻る最中である。
学校では結論が出なかったから、士郎の家で話し合おうってことになったんだよな。
あそこなら凜やスカアハもいるし……あれ? そういや、凜の奴学校にいなかったが……どうしてだ?
「あら、何してるのですか?」
 声を掛けられたんで振り返ると、そこには普段着の上にコートを羽織った凜がいた。
美綴達の前だからなのか、猫被ってるみたいだけど……こっちとしてはとっとと話せゴラァという表情を向けられた気がしたがな。
それはそれとして――
「それはこっちのセリフだ」
 と言いつつ、俺は指を差す。なぜか、荷物を抱えてるアーチャーを――
ていうか、なによあの量は。いくつものバッグを両肩に提げてるだけでなく、両手で抱え込んでるって……どんだけだよ?
「ほら、話していたじゃないですか? 家のリフォームのことを。
それが終わるまでの仮住まいへの引越しですわ。彼は業者の方でして、引越しを手伝ってもらってますの」
 などとにこやかに答える凜だが……いや、確かに士郎の家に下宿するのは聞いてるけどね。
まぁ、アーチャーを手伝いにしたのは、美綴達がいるからかな? ん? ということは――
「まさか、それで学校にいなかったのか?」
「ええ、学校が終わってすぐに……というか、話しておりませんでしたか?」
「聞いてないな、俺は」
「え?」
 それに気付いて聞いてみたら凜はうなずくんだが、逆に聞かれたんでそう答えておく。
そしたら、なぜか嘘!? という顔をしたんだが……あの、凜さん……激しく嫌な予感がするんですけど……
「アーチャー、話して無かったの!?」
「そんな命令は受けていなかったのでな」
「あ……」
 凜が素に戻りながら問い掛けると、アーチャーは肩をすくめていました。
それに凜はなにやら思い出したような顔をするのだが……いや、まさかお前……
「言うのを忘れていたというわけじゃないよな?」
「そ、そんなわけないじゃないの……」
 ジト目で聞いてみたら、凜はそんな風に答えましたが……顔を微妙にそらしながら言っても信用性無いと思うぞ?
「たく、そのせいで苦労したのか……」
「どういうことよ? 私達の話を聞いたんじゃ無いとしたら、なんで士郎と一緒なのよ?
それになんで綾子達も一緒なのかしら?」
 ため息を吐く俺に凜が訝しげに聞いてきたので、学校で起きたことを話しておく。
ああ、ランサーにまた襲われるかもしれないから、美綴達の記憶もいじってないこともついでに。
「あ、そう……ごめん、それはこっちが悪かったわ……謝っておく……」
 と、凜はため息混じりにうつむいていたが……ただ、これは俺の考えなんだが、美綴達は運が良かったんじゃないかと思う。
普通に考えてれば士郎も凜も帰ってた頃だろうしな。美綴達は誰の助けも受けられずに襲われて……となっていたはず。
しかし、凜が引越しで早く帰ることを伝えなかったおかげで士郎が居残り……それで襲われた美綴達を発見。
で、セイバーを呼んだんで、それで異常に気付いた俺達が駆け付けたと……なんというか、怪我の功名?
 ただまぁ、結果的にそうなったってだけだしな。いいか、悪いかでいうと……微妙?
「ところであなたはマスターにそのことを言わなかったのかしら?」
「確かに言うべきだったのだろうが、マスターがあまりにも不機嫌だったのでね。
言うべきタイミングを逃してしまったのだよ」
「う……」
 メディアの問い掛けにアーチャーは不敵な笑みを浮かべるが、それに凜の顔が引きつっていた。
どうやら、事実らしいが……な〜んか、おかしい気がするなぁ……メディアもアーチャーのこと疑ってるみたいだし。
「な、なぁ……遠坂の様子がいつもと違わないか?」
「そ、そうだよ……ね」
「ああ、凜はあんなものよ」
 と、蒔寺と三枝が戸惑っている所に美綴がそんなことを言うのだが……
たぶん、凜の素を見たのがこれが初めてなんだろうなぁ……でも、なんで氷室が興味深そうに見てるのかは疑問だが。
「それで綾子達はどうするの?」
「それは戻ってから考えるのよ。ただ、どの道記憶のいじるのは無しね。襲われるかもしれないのに、そんなのは愚行だわ。
まぁ、周りに話しそうな子がいるから、その子には対策をしておくつもりだけど……」
 凜の問い掛けにメディアは蒔寺に視線を向けつつ答えたが……どうやら、メディアも蒔寺が危ないとわかったようで。
まぁ、ここに来るまでになんだかんだと一番聞いてきたのが蒔寺だったが……明らかに理解してないような様子だったしな。
凜もそれを見て納得してたけど……まぁ、そんなこともあったが、俺達は士郎の家にたどり着き――
「なに、これ?」
 それを見て、思わず問い掛けてしまう。いやね、何か聞こえるんで庭の方に行ってみたんだけどね。
そしたらさ、ライダーに桜が抱きついて泣いてるのよ。それをスカアハ達やイリヤに式、それにメイドさん達が眺めてたんだけど……
ん、メイドさん? 今頃気付いたんだが、この人達ってイリヤの所のメイドさん達か? 確か、セラとリーズリットだっけ?
「メイドさんは……まぁ、いいとして……あれ、なにさ?」
「まぁ、感動の再会といった所だが……お前達の方はどうなんだ?」
 聞いてみたら、腕を組んでるスカアハにそう言われる。
まぁ、確かにこっちも色々とあったんで話しておいたが――
「ごめん……ごめんね……」
「いいのです、サクラ……あなたが無事ならば……」
「ね、ねぇ……あの人って、私達を襲った人だよね……それがどうして……」
「あの子のサーヴァント……みたいだけど、あなた達を襲ったのはワカメのせいでしょうね。
ま、詳しいことは聞かなきゃわからないけど」
 で、泣いてる桜を抱きしめるライダーを指差す美綴にメディアが答える。
そういや、なんでワカメがライダー連れてたんだっけ? そこら辺は調べて無かったな。
「まったく、次から次へと問題が出てくるな」
「まったくだねぇ……」
 話を聞いたスカアハはため息を吐くが、俺もため息を吐く。
いや、本当に問題ばっかだよね……どうしたんもんだろうか?
「とりあえず、美綴達の事だが……む?」
 と、スカアハが何かを言おうとした時だった。なんか、黒い……穴?
いや、そうとしか言えない物が目の前に現われたんだって。しかも、地面にじゃなく宙に浮いてる状態で。
「な、なんだこれ……」
「シロウは私の後ろに!?」
 それを見て戸惑う士郎の前に立つセイバー。他のサーヴァントも自分のマスターの前にかばうように立っていた。
その間に黒い穴から誰かが出てきて……って、はい?
「美希? それに君嶋さんに香奈子さん?」
 そうなんだよ。その穴から現われたのは美希や君嶋さんに香奈子さんの3人。3人が出てきたら穴が消えたけど。
「なに、あんた達の知り合いなの?」
「まぁ、1人は幼馴染みだし……で、どうしてここに?」
「シンジの奴に伝言を頼まれたんだ。あいつはやることがあってここにはこれないらしくてな。
これはお前達に渡して欲しいと渡された物だ」
 訝しげな凜に答えてから聞いてみると、君嶋さんが答えながら手紙を差し出してきた。
それを受け取って開いてみる。何々――
「ええと……ネギ達の世界で非常事態発生。
美希達が現われた10分後にネギ達の世界へのゲートを開くので、その間に準備をして士郎達と向かわれたし……って、なんだこれ?」
 読んだ後にそんな疑問が出てきたが……いや、マジでなにさ?
ていうか、ネギ達の世界で非常事態発生って……何かあったのか?
「幻想郷でもそうだったが、まだ悪魔の影響があったのかもしれん。
それに士郎達も一緒にということは、それだけ事態が切迫しているのかもしれんな。
翔太、理華、士郎。着替えを含めて準備を急げ。最悪、あちらの世界で泊まりがけになるかもしれんぞ」
「へ〜い……」
「ちょ、ちょっと……どういうことよ?」
 スカアハの話に納得する。そういや、幻想郷でも悪魔がまた現われてたっけ。
で、凜は戸惑っていたが――
「悪いがお前達にも来てもらうぞ。異世界の事とはいえ、今回の危機を見過ごすととんでもないことになるかもしれんからな」
「ふ〜ん……まぁ、異世界ってのも気になるし、私はいいわよ」
「よろしいのですか?」
 スカアハがそう言い放つのを聞いてかイリヤは楽しそうに言ってたが、セラさん……だよな?
その人が視線を向けつつ問い掛ける。まぁ、いきなりこんなこと言われて納得出来るわけないわな。
「あら、彼女達の話が本当かを確かめられるじゃない。それに異世界よ、異世界。
まさしく第二魔法を見ることが出来るのよ? それってまたとない経験だと思わない?」
 と、本当に楽しそうに話すイリヤだが……それを聞いた凜はなにやらぶつぶつよ言い出した。
なんか、「第二魔法……私の……遠坂の悲願が……」とか言ってるんだが……
気にはなったが、とりあえず言われた通りに準備をしてくる。といっても、防具に着替えて着替えを持っただけだけどね。
「ほほぉ……」
「うっわ! ゲームに出てくる人みたいだ!」
 で、戻ったら氷室に興味深そうな目で見られた挙句に蒔寺にそう言われたが……
まぁ、見た目コスプレに近いしなぁ……当然といえば、当然か……そう考えると恥ずいな……
「翔太、仲魔を全員喚んでおけ。行ってすぐに戦闘もありえるからな」
「へいへい」
 スカアハに言われて早速GUMPを操作し――
「「ヒーホー!」」
 フロストとランタンの声と共にみんなが出てくるのだが――
「ねぇ……なんで女性ばかりなの?」
「聞くな……」
 凜の問い掛けに顔を背ける俺。確かに全員女性だよ……でもね、なんでこうなったのかはわからないんだって。
気が付いたらこうなってたし……俺、意識してたわけじゃないんだよ?
「凜、本当に行くのか? 今は聖杯戦争の真っ最中なのだぞ?」
「わかってるわ……けど……」
「先程も言ったが、異世界のこととはいえ見過ごすわけにはいかん。
それにこの世界にも影響を与えることだ。お前達だって、それは嫌であろう?
文句は言いたいだろうがな。すまないが協力してもらうぞ」
 アーチャーの言葉に凜も何かを言いたそうだったけど、その前にスカアハがそんなことを言い出す。
まぁ、何かあったら聖杯戦争どころじゃなくなるような気もするけど……
だってさ、何回かボスみたいなのと戦ったことあるけど……あれ、とんでもないよ?
普段戦っている悪魔がまだ可愛いと思えるくらいに……そんだけ凄いんだって。
「あの、私達はどうしたら……」
「む、そうであった……桜、すまないがライダーと共に残ってもらえないか?
危険だとわかっている場所に一般人を連れて行くわけにはいかんからな。残って彼女達を守って欲しい」
「あ、わかりました」
 自分を指差す美綴にスカアハはそのことに気付き、桜はその指示を聞いてうなずいていた。
何が起こってるかはわからないが、これから行く所はやばいかもしれないしな。
 今思ったんだが……俺って、すでに一般人じゃ無いのね……なんか、すっげぇ悲しく感じたのは気のせい?
「来たな……色々と聞きたいだろうが、今は時間が無いかもしれんからな。
終わってからにしてくれ。では、行くぞ」
「はい!」
 美希達が出てきた黒い穴が再び現われたんでスカアハが視線を向けてからそんなことを言い出した。
確かに凜やセラなんかは何かを言いたそうにしてたけどね。士郎は元気良く返事をしてたが……
まぁ、そんなこんなで穴に入る俺達。さて、ネギ達に何があったんだか……面倒臭いこと起きてなきゃいいなぁ……


 out side

 翔太達が空間に空いた黒い穴へと入っていくのを美綴と氷室、三枝に蒔寺、桜とライダーは見送っていたのだが――
「なぁなぁ、私達も行かないか?」
「え? あ、何言ってるんですか?」
 そんなことを言い出した蒔寺に桜は戸惑いながら問い掛けた。
いや、言ってることが理解出来ていないのではなく、なんでそんなことを言い出したのかがわからなかった為に。
「いやさ、異世界ってどんな所か気にならないか?」
「言いたいことはわからなくもないがな」
 蒔寺の言葉に氷室は気にした様子を見せながら答えた。
確かに何が起こっているかはわからないが、異世界という意味はわかる。今まで聞いた話は半信半疑だが――
そんな物があるのなら見てみたい……と、思ってしまうのもある意味仕方のないことなのかもしれない。
「けど……危ないって言ってたよ?」
「大丈夫! 行ってすぐに帰ってくればさ!」
 おどおどと三枝が忠告するが、蒔寺はそんなことを言い出し――
「というわけで、私は行ってくる!」
「あ、待ちなさいよ!?」
 そう言って、なぜかまだ空いている黒い穴に蒔寺は飛び込んでしまった。
それを止めようと美綴も慌てて入ってしまい――
「あ、ダメです! ライダー、追い掛けるわよ!」
「はい!」
 それを見て桜も慌ててライダーと共に飛び込んでしまい――
「まったく、あやつは……いたしかたないか」
「あ、待ってぇ〜」
 ため息を吐いてから氷室も追い掛けるために穴へと入り、その後を追うように三枝も入ってしまった。
その直後、黒い穴は閉じてしまう。後に残るのは静かな衛宮邸であった。


 こうして、翔太達は新たな戦いへと向かうことになった。
それが物語を新たな場面へと繋がることを知らずに――



 あとがき
そんなわけでなんの事態も解決していないままに翔太達はネギ達の世界に戻ることになりました。
しかも、士郎やセイバーだけでなく凜達も……なぜか、美綴達も向かうことに。
果たして、シンジの思惑とは? そして、ネギ達の世界では何が起こっているのか?
しかしながら……なんか、安直な面が否めません……うう、時間があれば……

次回は修学旅行の最中にこのかを攫われてしまったネギ達。
それを助けようと追い掛けるが、そこに待ち構えていたのは小太郎と月詠に千草とフェイトが喚んだ式神や悪魔達がいた。
このままでは……と思われた時に翔太達が駆け付け――
というようなお話です。次回をお楽しみに〜



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