out side

 始まろうとするアスラと翔太達の戦い。それを離れた場所で見守っている者達がいた。
美綴達やハルナ達では無い。その彼女らとは別の位置で見ているのだ。
「あんなのが出張ってきているなんて……どういうことなのかしら?」
 アスラを見て、顔をしかめながらも疑問を漏らしているのはリリスであった。
そう、この場にいるのはリニアス達である。彼女達はある世界を見た後にミーシャによってここへと連れて来られたのである。
ちなみに前にいた世界はどんな所だったかはいずれ話すとして、そこで見たことはリニアスにとって色々と考えるきっかけとなっていた。
 話を戻そう。顔をしかめているのはブラックマリアも同じであった。
アスラのような存在がどれだけの力を秘めているのかを知っている故に――
「確かに……あれだけの力を持つ者が理由も無しにここにいるはずがありません。リニアス様、どういたしましょうか?」
「様子を見る……翔太が戦おうとしているようだからな」
 ブラックマリアの問い掛けにリニアスはアスラから顔を背けずに答えた。
自分ですらまともに戦えるかどうかもわからない相手に翔太は挑もうとしている。
なぜか、それが非常に気になった。勝ち負けではなく、翔太はなぜあのような存在と戦おうとするのかに。
「翔太は……勝てるのか?」
「勝つしかない……彼には後が無いのだから……」
「後が無い? どういうことなのかしら?」
 リニアスの疑問にミーシャは答えるが、リリスが怪訝な顔をしながら問い掛ける。
自分ですら手に余る相手と戦おうとするのは理由があるのだろうとは思ってはいた。
だが、後が無いとはどういうことなのかがわからなかった。
「この戦いが終わったら……翔太がなぜ戦おうとするのか……それを話す」
 その疑問に対し、ミーシャもアスラから顔をそらさずに答えていた。
その返事にリニアス達は自分達の顔を見つめ合い、軽く戸惑ってしまうが……
しばらくして、戦いの行方を見守るために顔を向けるのであった。


「なんだ……あれは……」
 その光景をアーチャーは信じられないといった顔で見ていた。
翔太は間に合わないとアーチャーは確信していた。あの娘は……刹那は助からないと。
同時に翔太は現実を見ることになると……だから、嘲笑を浮かべてしまった。だが、結果はそれを根底から覆されてしまう。
翔太がいきなり落ちたかと思うとアスラの目の前に現われて激突。どさくさに紛れて刹那を助け出していた。
そんな、ありえない出来事にアーチャーの思考は停止してしまうが――
「紫か……ま、今回ばかりは感謝といった所かな?」
「あやつが? どんな風の吹き回しだ?」
「さてね……だが、嫌な予感がするのはなぜだろうか?」
 一方で何が起きたのか理解したスカアハだが、エヴァの疑問に答えつつもそんなことで首を傾げる。
まぁ、この時翔太はフラグを立てていたりするのだが……予感とはたぶんそのことだろう。
「ま、それは後にするとして……アリス! 行ってこい!」
「え? でも……」
 スカアハの指示に戸惑うアリス。スカアハが自分に何をさせようとしているのかを理解したためにだ。
しかし、そんなことをしたら翔太は――
「今回の相手は全力を出さずに勝てる相手ではない! だからこそ、短期決戦で挑むしかない。その方が翔太の負担が少なくて済む!」
「うん!」
「クー・フーリン! ケルベロス! お前達も行って翔太の援護を!」
「あいよ!」「わかった!」
 アリスの返事を聞いてから続くスカアハの指示にクー・フーリンとケルベロスも飛び出し――
「バーサーカー! あなたも行って!」
「■■■■■■■■〜!!?」
 イリヤも何かを感じ取ったらしく、バーサーカーに指示を出して向かわせた。
「く!」
「待ちなさい!? そんなことをしたらあなたは――」
 と、腕輪を取ろうとする理華をセイバーは止めようとした。
その行為に事情を知らない者達は首を傾げるが――
「わかってる……けど、翔太が戦おうとしてるのに……ただ見てるだけなんて嫌なの!」
 つらそうにしながらも叫んだ理華は腕輪を外してしまう。
それと共に理華の体が輝き、悪魔化した姿へと変わっていく。ただ、その姿は少しばかり変わっていた。
前髪の一房だけだった金髪が前髪の半分ほどまで染まっており、体に浮かぶ紋様も右手の甲まであった。
「理華! ネギ達を下がらせろ!」
「わかった!」
 叫ぶスカアハに理華は返事を返してから駆け出す。その光景を事情を知らない者達は呆然と見ていたが――
「理華さんのあの姿は……いったいなんなんだい?」
「詳しくは後で話すが、わけあって悪魔化しているんだ。今はまだ人間としての面が強いが、いずれは……」
 少し戸惑っている真名の問い掛けにスカアハはどこか悔しそうに答えた。
最後の方は言葉にしなかったが、真名はそれだけで悟ってしまった。すなわち、理華はこのままだと人では無くなることに。
「やれやれ……私も負けていられないかな?」
 なぜか、そんなことを考えてしまうが……いや、もう誤魔化せないだろう。
自分は翔太に――
「なぜだ……なぜ、あんなのと戦おうとする?」
「なぜ……だと?」
 一方、戸惑うアーチャーをスカアハは睨みつけた。アスラにどうやって戦うというのだ?
それが見えない為にアーチャーは戸惑うのだ。だが――
「貴様は何を聞いていた? 翔太には……いや、我々には逃げ場所なんてどこにもないんだぞ!
たとえ、この場を逃げたとしても待っているのは世界の崩壊だ。貴様はそれでも良いのか!?」
「だ、だが……そうなったとしても守護者が動き出すぞ」
「そんな者が動いた時にはすでに手遅れだ! それは貴様にもわかるだろうが!」
 襟首をつかまれながらも反論するアーチャーだが、スカアハは睨みつけながらそう言い返す。
守護者……それは士郎の世界に存在する者。アーチャーやセイバーといった英霊などがそれにあたる。
だがしかし、守護者は事が起きてから動く。普通であれば、それで良いのかもしれないが……
今回ばかりは事が起きた時点で世界の崩壊が始まってしまう。その前に守護者が動き出す可能性も無いわけではないが――
「今は出来るか出来ないかを言い合うつもりはない! やるんだ! 可能な方法を考えてな!」
「そうは言うが……あるのか? その方法が?」
 アーチャーの襟首をつかみながら叫ぶスカアハにエヴァは腕を組みつつ問い掛ける。
あのアスラにただ攻撃しても意味が無いように思えたのだ。
「く……」
「波状攻撃……それしかあるまい。我々が持つ最大級の攻撃を立て続けにな」
「力押しか……芸がなさすぎないか?」
「小細工をしてちまちま攻撃しても倒せるような相手では無いからな。
だから、力押しだよ。ただし、少しばかり小細工もするがね」
 話を聞いてくすりと笑うエヴァにアーチャーを離したスカアハはそう答える。
確かに存在感からしてアスラが普通ではないのはわかる。その相手に普通の攻撃が通じるのか疑問なのも。
そのことに関してはエヴァとしても異論は無い。かといって、ただの力押しだけでは問題があるのではと思ったのだが――
「小細工だと?」
「ああ……で、セイバー達に聞きたい。宝具の使用は可能か?」
「え? あ、はい……全力での使用は可能です」
「一応出来ますが……今の魔力量では全力は流石に……」
 首を傾げるエヴァだが、それを無視して問い掛けるスカアハにセイバーは一瞬戸惑いながらもしっかりと答える。
逆にライダーはすまなそうにうつむいて答えた。まぁ、ライダーの場合はしょうがないだろう。
ある方法でワカメこと慎二をマスターにした副作用で魔力の供給が大して受けられない状況にあったのだ。
そんなことがあり、チャクラドロップを使ったとはいっても万全な状態とはならなかったのである。
「仕方ないか……士郎、お前のCOMPに生体マグネタイトはいくらある?」
「え? えっと……800ちょっとです」
「よし、100ほどライダーに与えろ。それでお前はどうなんだ?」
「私は……」
 士郎の返事を聞いて問い掛けたスカアハは指示を出しながらアーチャーに問い掛ける。
しかし、アーチャーは答えるのを躊躇った。使えるかどうかで言えば使える。しかし、自分の宝具は――
「”矢”だけで構わん。使えるのか?」
「それなら……」
 しかし、スカアハの次の問い掛けにアーチャーは渋々といった様子で答えた。
なぜ、そこまで知っているのかは気になるが……それなら使っても大丈夫だろうとアーチャーは判断したのだ。
「みんな、良く聞け。我々は――」
 その返事を聞いたスカアハは指示を出す。今、この戦いに勝つための方法を――


 in side

 さて、啖呵を切ったはいいが……どうやって戦おうか?
いや、だってさ……普通に戦っても勝てないよ? マジで……しかしながら、今更逃げるのも……無理だよね?
「お兄ちゃん!」
 と、アリスの声が聞こえたんで振り返ってみたら、彼女がこっちに向かって走ってきてた。
その後ろではクー・フーリンとケルベロスにバーサーカーもこっちに来ようとしていた。
ちなみにケルベロスは幼女のままである。そういや、式神や悪魔の時もあの姿だったような……
あ、理華もこっちに……なんで悪魔化した姿出来てるんだ?
それは後で考えるとしよう。今は――
「アリス! 行くぞ! 刹那、わりぃがネギ達の所に行っててくれ」
「うん!」
「あ、はい!」
 アリスが来たんで魔人融合をすることに。使うとかなりキツイけど、あのデカブツと戦うにはこのままじゃ無理っぽいし。
なのでアリスに言ってから、抱えていた刹那にもそう言っておく。あれ? 刹那の顔が赤いような気がするのは気のせいか?
「はぁ!」
 刹那を降ろすと共にアリスが光の塊になって俺の体に入った。
「でりゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『むぅ!』
 その直後に斬りかかるんだが、デカブツは腕であっさりと受け止めやがった。
ちぃ! 強いのはわかってるが、傷無しって流石にへこみそうなんだけど!?
「はぁ!!」
「うおぉぉぉ!!」
『ぐぅ!?』
 そこにクー・フーリンが槍を向けながら突っ込んでくる。ケルベロスもライダーキックのように飛び込んでいくが……
両方とも手で受け止めております。腕がいっぱいあるのは伊達じゃないってか? ごめん、自分でも何言ってるかわからなかった。
「■■■■■■■〜!!?」
 そこにすかさずバーサーカーもでっかい剣を振り抜こうとするだが――
『ぬん!?』
 やっぱ受け止めやがった。
ていうか、顔こそ少ししかめてるように見えるが、俺達の攻撃受け止めるってどんだけ頑丈だよ!?
「みんな! そこから離れて!」
「わかった!」
 そこへ理華の叫びが聞こえたんで、俺の返事でみんなが一斉に離れ――
「アギダイン!!」
 理華の魔法によってデカブツが炎の竜巻に包まれた。普通ならこれで終わりだろうが――
『こざかしい!』
 いっぱいの手であっさりとかき消されました。ていうか、無傷だし……
くっそ、前回もそうだったけど、今回も大概に頑丈だな。
『その程度か?』
「やっかましいわデカブツ! ぜってぇにぶっ飛ばす!」
 明らかに余裕がありますって言葉にそう言い返す。ちっくしょう……少なくとも俺は全力だぞ!
『デカブツではない……我が名はアスラ。我は――』
「知ったことかぁ!!」
 なんか、名前で気に障ったらしいデカブツことアスラに、俺は叫びながら突っ込んでいく。
ええい! ぜってぇにぶっ飛ばしてやる!


 out side

「このちゃん! ネギ先生! 明日菜さん! 大丈夫ですか!」
 一方、刹那は急いでネギ達の元へと向かったのだが、ネギ達はただ呆然と戦う翔太達を見ているだけであった。
「みなさん! 早く逃げましょう! ここにいては翔太さん達の邪魔になるだけです!」
「で、でも……あいつらはどうするんだよ……あんなの勝てっこねぇよ……」
 叫ぶ刹那だがカモは怯えた様子でそんなことを漏らしてしまう。
本能でわかってしまうのだ。アスラには敵う敵わない以前に何もかもが違うと……勝てるはずが無いと……
「刹那さん! 早くスカアハ達の所へ行って!」
「理華さん? あ、わかっています!」
 翔太達の援護の為にアサルトライフルを撃ちながら叫ぶ理華。
その彼女の姿に刹那は最初は戸惑うものの、理華だと気付くと同時にその姿が気になったが、すぐに返事をした。
「確かに、あのアスラという者には我々では戦うことすらも叶わないでしょう」
「だったら――」
「ですが、翔太さんはそういう相手とも戦わねばならないんです。そうしなければ……」
 話を聞いたが、それでも戦うのはなぜなのかを問い掛けようとする明日菜。
それに対し、話していた刹那はどこかつらそうな表情で答えた。
翔太がなぜ戦うのかを刹那は知っている。だが、今説明するのは難しいし、それに――
「ともかく、ここにいては翔太さん達の妨げにしかなりません。早く逃げましょう」
「で、でも……」
「ネギ先生!? お願いですから早くしてください!?」
「ひ!? は、はいぃ!?」
 今、ここにいるのは危険なだけだからだ。だから、刹那は逃げようと言い聞かせるのだが……
ネギは食い下がろうとしてしまう。このままでいいのか? なんとか翔太達を手伝えないのか?
そう考えてしまったのだが……刹那の怒鳴り声を聞いて思わずすくみ上がってしまう。
「申し訳ありません……ですが、ここにいても危険なだけなのです。だから、早く!」
「う、うん……せっちゃんがそう言うのなら……」
「わ、わかったわ……」
 自分のしたことに気付いて頭を下げる刹那だが、このかはすまなそうな顔をしながら、明日菜は困惑しながらそう答えた。
このかの場合は刹那が必死だとわかったが故の反応であった。反面、普段見たことの無い刹那の姿にどこか心が痛いような気がしたのである。
明日菜の場合はネギと心境は似ている。本当に逃げていいのかと考えてしまったのだ。
それでも同意したのは刹那の気迫に負けてしまい、思わずうなずいていた。
 これによって刹那達はスカアハ達の元へとようやく迎えることとなり――
「お久しぶりです」
「ああ……すまないが挨拶は後だ。お前がネギだな。魔法はまだ使えるか?」
 久々の再会に刹那は頭を下げるが、スカアハはそんな返事を返してからネギに問い掛けた。
「へ? あ、その……まだ、大丈夫だと思いますけど……」
「そうか。悪いがすぐに今使える中で最大級の魔法の準備をしてくれ。時間が無い。急げ!」
「え?」
 いきなりのことに戸惑うものの、答えるとスカアハからすぐにそんなことを言われ、ネギは首を傾げるはめとなった。


 in side

「だあぁぁぁぁ!?」
 走り抜けながら斬り付けるんだが……アスラはダメージを受けてるようには見えない。
いや、あの……本気で斬りかかったんだけど……うっわ、マジで傷ねぇし……
「でりゃあぁぁぁぁぁ!!」
『それだけの力を持ちながら、なぜ人間の味方をする?』
「ち!? そんなの決まってるだろ! 翔太は俺の仲魔だ!」
『そのようなもの……醜いわ!』
「く! うっせぇ!」
 槍で突いたり払ったりしているクー・フーリンだが、アスラもそれをいなしたり受け止めたりしている。
うん、やっぱりダメージ受けてる様子がねぇし……どんだけ頑丈なんだ、あいつは!?
「ぐおぉぉぉぉ!!」
『ぐ! 貴様も……なぜそれだけの力を持ちながら人間に味方するのだ?』
「勘違いしているようだがな……私はあいつがどうなっていくのかを見たいだけだ!」
 吼えながら拳を突き出して突っ込むケルベロス。それも受け止められる上にアスラからそんなことを聞かれていたが……
ケルベロスは何を当然なことをと言わんばかりの顔で答えていた。
なお、ケルベロスはいつの間にか女性バージョンに姿を変えている。
「奴は面白いのだよ……そのあり方がな」
 などと妖艶な笑みを浮かべつつ言ってくれるケルベロスだが……なにそれ?
なんだろう? なんか、乏しめられているように思えるのは……気のせいだよね?
『愚かな……人間は醜い存在だ……我らが導かなければ醜いままの存在なのだ!』
 それに対し、アスラも好き勝手言ってくれるし。ていうか、なにそれと思った俺は悪くないよね?
「好き勝手言ってんじゃねぇ!!」
 なので、これ以上好き勝手言わせてたまるかと言わんばかりに斬りかかるのだが――
『小賢しい!』
「ぐお!?」
 振り回された腕に弾き飛ばされる。いっつ〜……デカイくせに動きも速いし……
『潰れろ! 醜き存在よ!』
「やば!?」
 て、野郎殴り掛かってきやがったし!? こっちは倒れたままなんですけど!?
「ちぃ!?」
 なんとか体を起こすが避けるのは間に合いそうにない。受け止めるしかないかと考えて構えたんだが――
『なに!?』
「はい?」
 と、目の前に誰かが立ったかと思うと、アスラの拳を受け止めて……いや、ちょいと待とうか……
「こんな奴に何を苦戦している?」
「いや、その前になんでお前がここにいるのさ?」
 顔を引きつらせつつ、リニアスが言ったことにそう返してみる。
うん、なんでお前がここにいるの? いや、助けてくれたのはありがたいんだけどね。
とまぁ、俺は目の前にリニアスと……ベルセルクだったっけ? がいることに疑問を感じられずにはいられなかった。
何がどうなってんのさ!?



 あとがき
そんなわけで始まったアスラとの戦闘。しかしながら、その強さに翔太達は苦戦。
スカアハ達はなにやら準備をしているようですが……そんな中に現われたリニアス。
彼女の思惑とは……次回は戦いに決着。それと同時にあいつが久々にやってくる?
そして、フェイトは……というようなお話です。次回をお楽しみに〜……

ところでアーチャーの反応……読み直してみると失敗だったかなぁ〜……と反省しております。
うん、あれはアーチャーらしくないよね^^;



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