「ハテ? 私は何故ここに居るのカ?」

超 鈴音(チャオ リンシェン)は開口一番に自身の置かれた状況が理解出来ずに呟いた。

「確か、昨日は研究レポートを完成させて……」

その後の記憶が上手く思い出せずに超は首を傾げる時、

「起きたわね」

背後から掛けられた声に振り向き……一瞬の躊躇の後で尋ねる。

「ここは一体……何処ネ、師父?」

造りの甘い木造の家で……しかも窓にはガラスがなく、木戸らしいものが代わりにある部屋。
しかも窓から見える風景には解けていない雪があるから……麻帆良ではない。

「ふ、狩りに行くわよ♪」
「ハ?」

とりあえず超に分かったのは……師父であるリィンフォースに拉致されて、別の次元世界に来たらしい事だけだった。





麻帆良に降り立った夜天の騎士 課外授業

超 鈴音のハンター日記変?


By EFF





「一体、いつまで寝ぼけているのよ」

リィンフォースの不機嫌な声を聞きながら超は村らしい場所を観察する。

(文明レベルの低そうな土地ダナ)

木造の建築物、毛皮をなめした服装が主流みたいな村の住民を見る限り……科学が発達している場所には思えない。

「マ、マンモス?」

鼻提灯を見せて眠りこけている動物を見て、地球上では超は絶滅したはずの生命体がいる事に驚く。

「ポ○よ」
「……○ポ?」

よく見るとマンモスではない。
巨大な牙を持ち、限りなく似ているが……確かに違う。

「此処は何処ネ?」
「フ○ヒヤ山脈の麓で○ッケ村よ」

リィンフォースが差し出した串を手に取り、刺してある肉らしい物を口にして、

「……美味いネ」

シンプルに火で炙っただけなのに……今まで自分が口にした肉と違う味に舌を唸らせる。

「ポポ○タン……アレのタンよ」
「……ホォ、向こうの世界で五月に食べさせて、調理させてみたいナ」

自身が知る才能溢れる料理人四葉 五月(よつば さつき)ならば、どのように調理するのか想像する。
彼女なら、この美味しい素材の旨味を更に引き出し……お客を唸らせるのは間違いない。

(う〜ん……師父に協力して貰って、流通経路を確保するべきカナ?)

限定品としてメニューに加えようかと超は考える。
しかし、超が舌鼓を打つ事でリィンフォースから肝心な事を聞き忘れていたのは言うまでもなかった。



村の中を歩きながら、超は考える。

(小さな集落ネ……村全体の規模から考えて、人口は40〜50人くらいカナ)

厳しい環境というのは見れば分かる。
陽射しから春だと感じるが……所々に雪が残っている以上は寒冷地みたいな場所なのだろう。
厳しい自然環境だというのに村に生きる者達は明るく今を精一杯生きているのが感じられる。
リィンフォースで見慣れているのか、自分の服装を見ても驚かない。
よく見ると猫人間らしい存在も村に当たり前のようにいるので……気にしたら負けカと現実逃避しようかとも考え始めている。

(ナイロン製の服なんて、まだナイロン?――テ、疲れているナ

そろそろテンパッてきたかと自分でも思いながら先を歩くリィンフォースに声を掛けようとすると、

「オババ」
「おやまぁ……新しいハンターの子を連れて来てくれたのかえ?」

村の長らしき老婆に挨拶するリィンフォースに割り込みを掛けられなかった。

「ちょっと違うけど……訓練兼ねているから、そんなところです」
(ハテ、訓練? …………そう言えば、戦闘訓練をやる話を忘れていたネ)

ようやく今日の目的を思い出して、超は納得して頷くも、

「デカイ飛竜の討伐ってありますか?」
「ふむ、初心者にいきなりやらすとは……相変わらず厳しい子じゃのう」
「時間もないですし、ま、死なないでしょう」

竜討伐というとんでもない事態に超は硬直していた。

「師父……いきなりは酷くないカ」

一応、中止を促す声を掛けるも、

「ふむ……フ○フルならば、一つあるが?」
「ちょうど良いわね。帯電飛竜フ○フル……アルピノの中落ちあたりが剥ぎ取れると高く売れそう」
「そうじゃの。ついでに生肉を剥ぎ取ってくれると助かるのう」
「承知しました」
「すまないねぇ」

完全に無視されたというか、リィンフォースに絶対の信頼があるみたいで超の心配などしていない様子で狩りを斡旋する老婆に超の頬は大きく引き攣る羽目に なっていた。

……本日のクエストは"雪山に潜む影"に決定した。





冷たい澄んだ空気に、湖面に浮かぶ美しい雪化粧で覆われた白い山が綺麗だと超は思う。

「ちょっとベースキャンプの設営を手伝いなさい」
「……いきなりは酷くないかネ」
「は? 待ち合わせの時間に来ないでラボで寝ていたのは誰かしら?」
「…………スマナイネ」

問答無用で連れてきた事に注意するも、自分が先にリィンフォースに待ちぼうけを喰らわしたと知って抗議を砕かれる。
レポートの完成を急いでいたのは今日の訓練のためだったが……忙しさのあまりに忘れていたらしい。

「師を一時間も待たせるなんて……いい度胸してるわ」

本末転倒な自分の行動に超は天を仰ぎ……失敗を悟る。
頑張ったつもりが、最後の最後で最大のポカをしてしまった。

「致し方ない。どんなドラゴンでも相手にするネ!」

超は開き直る事で現実と向き合う決意を固めた。
この世界のドラゴンが如何に強かろうが開き直った自分なら負けはしないと叱咤する。

「安心しなさい。この世界のドラゴンで障壁を展開するタイプは古竜クラスだけだから」
「……古竜?」

聞き捨てならない単語に超はリィンフォースを見る。

「そ、今回の相手は体内で電流を発電する巨大電気ウナギだと考えれば、気が楽になるわよ」
「電気ウナギ……ネ」
「危なくなったら、助けてあげるから死なない程度にガンバレ」
「……師父の優しさが嬉しくて、涙が止まらないヨ」

さり気なく嫌味を混ぜた言葉をリィンフォースに告げるも、

「褒めても何も出ないわよ」

……効果はなかった。




キャンプの設置を終えて、雪山を頂上へと駆け出して行く。
超は見ているだけだが、リィンフォースは山の中にある鉱物資源をピッケルで掘削し、植物を採集する。

「……ホォ、珍しい金属ダナ」
「あの村には世話になっているから……持ち帰りたいの」

洞窟の中を歩きながら慎重に二人は歩くと……、

「……ギ○ノスね」

二足歩行の地球では太古に絶滅した恐竜に近しい存在がこちらを威嚇しながら接近してくる。
白い鱗を全身に纏い、尖った嘴に鶏冠のある姿は鳥の頭部にも近いが、翼がなく、鋭い爪がある点は鳥とは違う事を示す。

「口から冷凍液を吐き出すわ」
「分かったね、フレイムロード」
『お任せを』

リィンフォースが一歩下がると同時に超はバリアジャケットを展開して魔法攻撃を行う。

「ブラ ストスマッシュ!」

真っ直ぐに飛び込んできた一頭をギリギリのところで避けて……横腹に炎を纏った拳を叩き込む。

――ギャァ、ギァァ!

直撃を受けたギ○ノスは吹き飛んでピクリと動かない。
超は非殺傷設定を解除している事を思い出しながら、次のギ○ノスを倒していく。

「何と言うカ……二つの時代が混じっているみたいダナ」

三頭のギ○ノスを退治して、超はこの世界の感想を述べる。

「文明レベルは低いが、人自身はそう変わらない。
 しかし、このような恐竜に近しい生命体が同時に存在しているネ」
「まあね。だからこそ訓練にはちょうど良いのよ」

ギ○ノスの身体から鱗や皮を剥ぎ取りながらリィンフォースが話す。

「いつ、この世界に来たカ……聞いても良いかナ?」

リィンフォースが一時期、麻帆良のある世界を基点に次元世界を調査していたのは聞いた。
その目的が、自分がいた世界に帰りたいという願いから発生したのもエヴァンジェリンが教えてくれた。
しかし、調査結果がリィンフォースの願いを完全に打ち砕いたのは……皮肉とも言える。
誰よりも自由に世界を移動出来る人物なのに……故郷への帰還は不可能。

「……ちょっと絶望しかけた時に世話になったのよ」
「……そうカ」

詳しく聞きたい気もするが、これ以上聞くのは野暮だと超は判断して話題を変える。

「ところで、フ○フルとはどんな飛竜ダ?」
「まず目は退化しているのか……良くないけど、その代わりに鼻が利くわ」
「ホォ」
「身体は柔らかくて、衝撃を吸収しやすい」
「フム」
「体内で電気を生み出してブレスという形で放出する。
 後は発電時に身体に纏うくらいかな」
「それは厄介ダナ。接近戦時には注意するヨ」

これから倒す予定のフ○フルと呼ばれる飛竜の詳細を聞き、超は気を引き締める。
洞窟内を歩き、頂上の近くまで辿り着いて外へ出ると、

「あれがフ○フルよ」

リィンフォースが指差す先に、真っ白いゴムのような柔らかそうな皮膚を持つドラゴンが鼻息らしいものを響かせていた。

――ヴォ、フォ フォフォ!

周囲の匂いを嗅ぎ分けて、自分以外の存在の有無を確認しているように見える。
二本足で歩き、翼と前足が一体化している部分は地球上に存在した翼竜に近しい。

―― ヴォ、ヴォォォ――ッ!!

咆哮を上げて、身体から青白き放電を見せることろは電気ウナギみたいだと思いながらも発電量は桁違いだと超は思う。

「ライトニングプロテクションは必須よ」
「なるほどネ」

リィンフォースの忠告を素直に受け入れて、超は戦闘準備を完了させる。

「イクヨ! フレイムロード!」
『はい!』
「基本はヒットアンドウェイ。常に動いて距離を取りながら戦いなさい」

リィンフォースの指示に頷いて、戦いが始まる。






「あ……一つ言い忘れていたけど、この世界の飛竜って、気を使うのか……頑丈だから」
「……そういう事は早く言て欲しかったナ」

血気盛んに挑んだ超だが、フ○フルの予想外の強度の前にリィンフォースに担がれて撤退していた。

「何、言ってんのよ。これが古竜だったら大怪我してるわ。
 周囲に粉塵爆発を起こすわ、竜巻を発生させて物理攻撃をガードしたり、カメレオンみたいに周囲に景色と同化して消えるし。
 バリアジャケットを持たないハンターの偉大さが身に染みるでしょ」
「ナント!? そこまで強いのカ!?」
「そうね……体力的にはフ○フルの倍以上ある飛竜を単独で倒すハンターもいる。
 しかも魔法を使わずに……ね」
「……この世界の住民は化け物カ?」
「多分、魔法じゃなく、気を無意識のうちに効率良く使っているんじゃないかな」
「……本能カ?」
「そうかもね」

戦闘を始めて、一定の距離を保ちながらフ○フルを攻撃し……追い詰めていた。
ただ……魔法は確かに効いているが硬いというか、柔らかい皮膚が吸収するのか……ダメージを軽減されたようにも感じられた。
しかし、"このまま勝てる"と判断していたが、巨大昆虫ラン○スタが背後に忍び寄って一刺し。
バリアジャケット越しでも通用した麻痺攻撃に身体を痺れさせられて……ダウン。
しかもフ○フルが首を上げて咆哮したのを至近で聴いて……硬直した時にブレスを喰らって二重に麻痺した。
事前にライトニングプロテクションを施していても痺れたのは意外だったが、おそらく気で強化されていたと感じて……非常に不本意だけど納得せざるを得な い。

「で、もう諦めるの?」
「……続けるネ。電気ウナギもどきに負けたなんて……ちょっとヤダ」

……意外と負けん気が強い超だった。
それともスプリングフィールドの家系の気質かもしれないが。





この後、超は先程の戦闘で得たフルフルの癖を読み切って……倒した。

「……良し。ま、次回はもっと早く片付けてね」

勝利、達成感を台無しにするリィンフォースの言葉に涙しつつ、魔法でフ○フルの死体を解体して部位を剥ぎ取る。

「電気袋ね……武器の材料になるから持って帰るわ」
「発生器官を持っているカ……」

超が手にする部位を見て、リィンフォースが解説する。

「出来るだけ綺麗に皮を剥ぎ取って」
「……分かったネ」

魔法攻撃で焦げた部分は諦めるとしても、他の無事な皮膚はきちんと剥ぎ取る。

「これ使うと良いわ」

リィンフォースが放り投げた一辺が三センチ程度の長さの箱状のキューブを受け取る。

「空間を制御して、たくさんの荷物を中に入れられるボックスよ」
「ホォ、それは便利ダナ」
「使用方法はフレイムロードが知っているから」
『それでは収納を開始します』

剥ぎ取った素材を収納して、二人は村へと帰還する。


――この日、一人の少女が新たなハンターとしてデビューしたか、どうかは定かではない。





「……超くん、限定メニューのポポ○タンは?」
「残念ネ。数に限りがあって……オーダーストップヨ」
「そりゃ残念だな」
「申し訳ないネ……なかなか入手しにくい食材なのダヨ」

超包子のメニューに載った限定メニューポポ○タンは意外と好評だった。
なかなか歯応えがあって噛めば噛むほど、風味が出てきて美味しいとの評判。

「……次はホ○イトレバーを出してみるカナ?」
「熱○イチゴをミキサーしたジュースなんてどう?」
「フム……栽培してみるカ」
「後は厳○キノコに特○キノコの料理も良いわね。ま、乱獲しないように注意しながらだけど」
「そ……ダナ。何事も程ほどにカ」
「そ、そ」

超包子の次元を超えた食への追求が始まるかもしれなかった。










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EFFです。

シルフェニア2000万ヒット記念に書いてみました。
即興で書いてみましたが、面白いと良いかな〜なんて思いつつ、黒い鳩さん、おめでとうございます♪

今、モンスターハンター2ndGにハマってます。
そんなわけで次元世界の一つとして題材にしてみました。
アクション系のゲームは苦手ですが……ぼちぼちやってます。
次元世界を移動出来る魔導師なら、こんな話も有りという事でお願いします(汗ッ)





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