かつて日露戦争という大戦があった。その原因がなんであったかと自説をひけらかす者は多い。推論するものはさらに多い。ただ一概に固定的な理由であったと断言するものは少なかろう。そこで私はその断言を行いたいと思う。自ら賢者になった覚えはないが、あの異様な戦いと異様な結末を断ずるには何か一言で済む言葉が必要なのではと考えたからだ。

それは…………


 「隣国を省みれなかった大国と隣国を恐れることしかできなかった小国の条件闘争」


 それがあの一年戦争なのではなかったのか?  ――ある史書の抜粋――





―――――――――――――――――――――――――――――





1904年2月4日 御前会議、対露西亜交渉打ち切り

同年2月6日  小村寿太郎、露西亜公使に国交断絶を通告

同年2月8日  日本艦隊旅順港封鎖作戦開始

同年2月9日  仁川沖海戦、第1軍仁川上陸開始

同年2月10日  大日本帝国、対露西亜帝国宣戦布告、

同日     露西亜帝国、対日本帝国宣戦布告


戦争が始まった。




 東亜細亜・黄海、太平洋に比べ荒波が少なく古き時代より大陸と半島、そしていくつかの列島を結ぶ海洋交通路として栄えてきた海だ。今日は風がなお穏やかで海を渡る鳥たちも翼に孕む風に難儀している様子。その凪いだ海を50隻余りの船が白波を蹴立て、北へ舳先を向けている。
 橙子は一隻の船の舳先に立ち心地良さそうに風を感じている様。今日は橙の長着の上に薄緑の羽織、(えんじ)の娘袴姿である。周りの欄干を海鳥が行儀よく並んで翼を休める様は欧州の少年合唱団の趣だ。その後ろ、艦橋付近で我ら2人は備品の空き箱に腰を下ろした。時に明治37年3月20日、日本帝国満州総軍所属第3軍第2陣は遼東半島に向け出征の途上にある。


 「しかし山本閣下、なにも貴方まで戦場に来る必要は無いと考えますが?」


 山本権兵衛(やまもとごんのひょうえ)、【ゴンベさん】の渾名で知られる現海軍大臣だ。今頃海軍省は大騒ぎだろう。現役大臣が仕事を放って無断前線視察など言語道断の所業である。理由が無ければ儂自ら船より引き擦り降ろしていた。ニヤリと口を歪め彼は儂の舌鋒を避わしてみせる。


 「なぁに、旅順に張り付いている連合艦隊の視察と激励に行くついでじゃよ。海軍省も儂一人居なくて仕事が滞るのでは困るからな。内々には部下が察するじゃろうし買い入れた船を大臣が見たこともないというのも難じゃ。そこでひとつ便乗させてもらうことにした。」


 今、整然と隊列を組み北上を続ける船団、これは二重の意味で存在しないものだ。『橙子の史実』では遼東半島に最初に上陸するのは奥保鞏(おくやすかた)大将率いる第2軍、それも五月になってからの筈。それが何と三月末、我が第3軍に切り替わっている。
 まず、第3軍で旅順を封鎖しこれを解囲せんと南下してくるロシア極東軍司令官クロパトキン大将率いる露西亜軍を、続いて上陸する第2軍と朝鮮半島を猛進する黒木為槙(くろきためもと)大将率いる第1軍で挟み撃ちにする。出てこなければ満州の要のひとつ遼陽まで分進合撃し決戦を挑む。相手の動きが早ければ、第2軍、第3軍で敵を受け止め第1軍はロシア軍後方を脅かす。参謀本部の案は新味は無いが堅実な作戦と言えるだろう。
 そしてもう一つの意味……何故こうも早く第3軍が動けたのかは理由がある。高知尖兵44連隊、漁業と海運の街らしく高知には船を生業とする者が多い。そこで橙子は彼らに新型兵器だけでなく船を与えたのだ。何故『橙子の史実』では宣戦布告前後から1〜3軍全てを展開できなかったのか?簡単だ、輸送する船舶を御国が用意出来なかったからにすぎない。そのため迅速な兵力展開ができずむざむざロシア軍の後退を許したとの研究もあったそうだ。今度はそうはいかぬ、第1軍だけでなく第3軍が同時に満州に展開を始めている。その力の源がこの船達だ。
 【艦】ではなく【船】それも陸兵を輸送するのなら……と軽い気持ちで儂も応じたのだが。



『不味かった……どうしようもなく。』



 橙子が寄越した輸送船はどう見ても輸送船に見えなかった。片や戦闘艦に類似した前半部に後ろ半分は小艇を連続発進させることが可能な傾斜甲板(スロープ)をもち戦艦並の速力を出せる、片や箱形の船体に直接兵士や兵器を陸揚げできる巨大な前方扉を持ち船倉に大量の物資を積み込める。どちらも速射砲や機関銃を備え海軍の旧式艦なら撃ち合えそうな代物だ。なお驚いたことに、これらは40年後の御国の兵器だという。一等輸送艦と二等輸送艦、あの最悪の戦争で技官達が作り上げた最良の兵器のひとつ――――本来海は海軍の管轄、縄張りを侵されたと感じた海軍士官達が大挙して陸軍省に押し掛けたのも当然である。その時は一喝して追い返したものの国家の中枢のひとつ、大本営では侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が続き、


『陸軍の作戦の下、海軍の嚮導で船団として運用する』


 という玉虫色の判断が下された。よく帝国議会の遡上に昇らなかったものだ。故に船団の先頭を海軍でも骨董品扱いの機帆船(フリゲイト)が務めている。中々に諧謔味ある光景だ。


「しかし心地好いのーぉ。海軍軍人たる者、潮風にあたらぬとしてなんとする……か。」

「閣下。」


 山本閣下の声、老人の呑気そうな間延びした一言にも聞こえるが、その声色自体が(くら)い。彼は何か言い返えしてくるのではないかと思ったようだが、儂が一言だけで沈黙しているとそのまま言葉を続ける。目ほど喋る口は無いとはよく言ったものだ。


 「言うな、赤煉瓦(海軍省)に籠っていたら心身共に腐ってしまう。下らぬ法律・規則に雁字搦めにされ外に目を向ける余裕が無くなる。今から30年も経ってみろ、己の為に法を曲げることしかできぬ軍人共が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)することになるぞ。」


 胸が痛む。彼に『橙子の史実』を教えるべきではなかったのかと。我らが必死で救った御国が50年保たず滅びる。“大東亜戦争、又は太平洋戦争”、政府も軍も国民すら己を弁えず分不相応な夢に酔った。そして、徹底的に叩き潰された。帝国海軍を心血注いで育て上げた彼からすれば存在意義を否定されたのも同義、彼は責任を投げることはないが心中に大きな穴を穿たれたのは間違いないだろう。


 「負け方を教えねばなりませんな。」    


考えた末、言葉を発する。その言葉に閣下は冷たい声音で答えた。


 「今か?今負ければ国が滅ぶぞ。勝てば否応なく競争せざるを得ず、負ければそのまま奈落の底、それが帝国主義というものだ。そして、それができるほど我が国は苛烈にはなれん。」


 その通りだ。しかし御国、我らが祖国は楽観的にすぎる。今度の戦争も妥協して譲り臥薪嘗胆を続ける事もできるのに皆、戦争という目先の心地良い言葉に逃げ縋っている。


 「我々が範となれば良いでしょう。幾多の勝ち戦も一瞬で無に帰せば国も民も戦を起こした我らを恨みます。戦で物事は解決せず戦で骨折るは国と民のみ、そう認識すれば我らは白眼視され時代の波に沈んでいくはず。番犬以上の価値無き存在として自らを弁え後進に認識させる。我々は悪しき範となれば良いのです。」

 「乃木君……君は両軍が消耗し尽くし我が国もロシアも講和でなにも言えぬ状況に持ち込めというのか?唯唯諾諾と仲介国の言葉を受け入れ双方大損のまま戦争を終えろと?無茶だ、それこそ国が潰れるぞ!」

 「一時的に潰れる覚悟はしております。ですがそれ如きで潰れる国民では無い筈。我等は少なくとも150年先まで国を残さればならないのです。」


 閣下は儂を睨みつけ艦橋の側壁に拳を打ちつける。


 「まさに政治家の言葉だな。君の立場と言動が矛盾していると気付かないのか?軍人でありながら国の行く末を語る……それを政治の壟断と言うのだ!」

 「我等は後30年も生きておれませぬ!ならば後進に何が悪いのか示唆すべきです。繰り返さぬためにも!」

 「言葉が過ぎた……すまぬ。」   山本閣下が頭を下げる。

 「いえ……不作法をお許しください。」   儂も頭を下げる。


 我等が話を打ち切ったのは熱くなりすぎたせいでもあるがそれ以上に気配を察したからに過ぎない。橙子が舳先から戻ってきたのだ。海鳥の幾羽かが何かを期待するように後ろから付いてくる。小魚でも与えていたのだろうか?


 「御爺様、山本様、浦塩(ウラジオストック)艦隊が動き出しました。」

 「ホゥ!……ということはいよいよ我が国の海上交通線を遮断に来ましたな。乃木さん、貴方の孫は千里眼の持ち主でもあるようだ。東郷と上村に言伝してやりましょう。」


 揶揄を交えた上機嫌な声を山本が出す。彼が孫を信用するかはともかくその情報を信頼しているのには訳がある。儂と彼は橙子の真の姿を見たことがあるのだ。
 馬鹿馬鹿しい程の代物だった。海軍の最新鋭艦【三笠】が玩具にしか見えぬ威容、恐るべきは人によって作り出された形を持ちながら人が乗り、扱うことを前提としないバケモノだった。性能等、比較するにおこがましい。いかなる敵性運動力をも制御し弾き返す空間歪曲障壁(クラインフィールド)、自己再生、再構築能力をもつ強制波動装甲、光そのものを破壊力に換える各種光線砲(レーザーカノン)に物質を縮退させ自己破壊に至らせる侵食兵器(タナヒレイトウェポン)、挙句に倫敦級の大都市ひとつを跡形もなく蒸発させる超重砲(グラヴィティブラスト)……。彼女がその気なら全世界の海軍力を港湾都市付きで破壊し尽くすなど容易いことだ。現に彼らの“大海戦”では今とは比較にならぬ兵器と戦力を持つ人類側が為す術なく敗北し海から叩き出されたという。
 我々はロシア帝国という敵だけではない。【彼女】という未来からの脅威とも戦わなくてはならないのだ。


 「どうします、機雷にでも触れたことにして潰しましょうか?」


 人差し指を頬に当て思案する顔をした橙子を儂は一瞥し制する。


 「止めよ、人の戦に自ら出しゃばるな。」

 「橙子嬢の申し出は有難いのですが上村君に苦労させた方が良さそうですね。千人もの陸兵を犠牲にするのは居た堪れない限りですが。」


 儂と閣下、二人揃って反対したがどちらも人命を軽視するつもりはない。戦力以上に彼らにも親子兄弟がいるのだ。しかし、孫を頼りきれば歯止めが利かなくなり誰も彼もが彼女の意思なくして動かぬようになる。一個人が軍、引いては国家全てを牛耳る等、悪夢に等しい。そして彼女は現在の味方であっても未来の敵になるのは確実なのだ。それでも彼女――孫であったモノは釘を刺してくる。


 「でも、この船団に襲いかかって来た場合は躊躇しません。」

 「好きにしろ。50隻もの【戦闘艦】にたかが3隻で挑む酔狂はおらんし、下にいるのだろう?旅順艦隊と連合艦隊、余さず吹き飛ばせる“幽霊船”が。」


 儂の投げやりな返事を聞き、ぎょっとして閣下が海面を覗き込む。1時間ほど前、鯨にしては大きい影がこの船の直下を通り過ぎたのだ。そんな怪物に思い当たるものなど一つしかない。


 「はい。」


 あっさりと認め微笑む橙子。それを尻目に儂は軍帽を深めに被り直し表情を隠した。





―――――――――――――――――――――――――――――






 「橙子御嬢さん、黒木閣下から書状が届きましたぞ。」


 遼東半島・塩大澳の港、貧相な桟橋だけでなく其処此処の浜辺にも輸送艦が伸し上がり、扉を開いて軍隊を吐き出し続けている。沖でも輸送艦がスロープから次々と短艇を降ろし浜辺に向かわせている。浜辺には彼方此方に兵器や物資の梱包が山積みにされ、さながら貿易港である神戸が引っ越してきたようだ。鍵島伍長より手紙を受け取ると橙子は礼もそこそこに早速読んでいる様、少しばかり儂は眉を顰めた。そして橙子の傍らで直立不動でいる彼。
 硫黄島以来、鍵島は儂付の従兵となっている。しかし儂は自らのことは自らでやるつもりであり彼の仕事は専ら橙子の相手である。そして橙子自身も軍属ながら士官待遇で編制に入れられている。良く言えば視察にきた後援者、悪く言えばオマケという立場だ。 司令部でも橙子の位置は微妙である。御国の後援者かつ司令官の孫娘であることを納得しても男社会の軍隊に10歳にもならぬ娘がいる方がおかしい。神棚の御神体のように遠巻きに眺めるといった者が多い。参謀長の伊地知は露骨に嫌そうな顔をしたが山県侯の推薦と儂が告げると障らぬ神になんとやらと言った風に引き下がった。好きにはなれないが彼の権勢に感謝すべきなのだろう。
 書状を読み終えた橙子はとてとてと此方に歩んできて書状を自慢気に見せる。


「御爺様!やはり黒木閣下は名将ですわ。」

「橙子、目の前で書状を広げてはならぬ。皆の目もある、行儀良く振る舞え。」


 少しばかり叱りつけ書状を受け取った。書状の中はびっしりと文字で埋め尽くされている。


…………硫黄島製の機関拳銃(マシーネンピストール)の威力甚だ強烈也。身体強健かつ体格大なる露西亜兵を一撃のもとに打倒し白兵の危険を減らすこと大也。特に歩兵個々が機関銃を持ち突撃できることは士気に多大なる高揚をもたらす也。去れども、問題点として弾薬の著しい射耗を覚悟せねばならず既に2度の会敵を行った部隊においてその充足率は2割を保てぬ模様。補充要請とともに35年式40型機関拳銃(MP40)の使用は塹壕内近接戦闘に限定することを至当と判断す。野戦においては10(メートル)以上の射程で著しく命中率の低下がみられ……


 黒木閣下は以前会った折、無頼の気がある御仁と見たが自ら筆をとり報告をしたためた様子から随分とまめな人のようだ。それに取扱説明書と実戦での不確かともいえる情報から最新兵器の利点と欠点、運用法から編成の要点まで調べ上げるなど大したもの。儂なら参謀達に文面を投げ判子を押すだけだというのに。
 その彼率いる第1軍も予定以上の速さで進軍している。既に朝鮮半島と満洲の境目たる鴨緑江を渡河し近傍のロシア軍を撃破、九連城を占拠したとの事。迅速な進撃にロシアの派遣部隊は機先を制されじりじりと山岳部に後退を続けているらしい。『史実』とは違う展開になったものの戦果は大きく、補給に苦労はしても戦死傷者は少ない。良い傾向だと口元をほころばせそうになり顎を引き締める。
 補充要請を出したのは恐らく第12師団の士官達だろう。北九州出身の気の荒い兵で構成されたあの師団は特に攻撃に向いている。最新兵器を与えられ、士気天を衝くが如くで攻めかかったのは良いがたちまち弾を使い尽くしてしまったのではないか?皇軍ではこういった地方ごと、兵の質が違う。兵士の質を均一化させ、指揮統制を容易にする本来の近代軍では致命的と言ってよい事項だがこれを統制し使いこなす黒木閣下は確かに名将の名に恥じぬものがあるだろう。


……なお鴨緑江渡河の際、増水する河で輸送船を使い捨て、臨時の橋梁兼城塞にする知謀は痛快也。御国他に見ぬ贅沢な戦に将兵一同、感謝の念に堪えざりけり。


 手紙を読み終えてふと気がつく。増水した河を渡るのに硫黄島製の輸送船を使い捨てるのは承諾済みだったが。孫はよくこのようなことを思いついたものだ。兵器を供与するにせよ与えっぱなしで、どう戦場で運用するか頓珍漢(とんちんかん)な答えばかり返していたものだが。


 「橙子、少々尋ねたいことがあるが……ん?そうか、今の橙子でなく【管制システム】と言った橙子のほうだ。」

 「?……私がその管制システムの橙子ですが。」


 不思議そうな顔をして首を傾げ答えを返してくる。儂はさらにもうひとつの疑問が湧きそちらの方を先に問うてみた。


 「そうなのか?。と、いうことは幼子のふりは皆演技か。」


 合点がいったようで橙子は微笑んで説明を始める。要約すればこうだ。


――彼女には“人格”と呼べるものはない。そもそも高次元の存在であったとしても兵器である以上、性別、人格、それ以上に過去や未来という概念すらない。もともと彼女達はそういった存在だったのだ。ひとつめの変わり目は彼女の上司に相当する存在、艦隊総旗艦の言葉『人は限界をもつ不自由なもの、だからこそ、それを克服するために思考し、やがて至高の域へと達する。』
 ふたつめの変わり目は“橙子”との出会いだった。機能停止を起こした一個体を再生しその思考を演算し続けることで人間という限界をもつ不自由なモノが至高へと達する過程を知ることができると考えたのだ。――


 だからこそ“ソレ”は橙子となった。人を真似、人を理解し、人に対抗する。

失われた勅命(アドミラリティ・コード)


を解きほぐす為に、その最初のステップである人類評定を見届けるために。


 「ですから私は“橙子”の記憶野より情報を抽出し彼女が常に外的要因からどのような反応と対応を行っているか演算を繰り返しています。普段御爺様とお話している橙子は“橙子”の思考を形態反射させていると考えて結構です。つまり……」

『橙子は“橙子”とともに此処に居るということです、御爺様。』


 クスリと笑って橙子が話を切った。儂はぴしゃりと額を叩く。欧州の高名な医師にでも聞かねば訳が解らん。ただ解かったのは“橙子”の心がこの管制システムの原点として存在し行動を掣肘しているということだ。即ち“橙子”が自ら死を選ばぬのでない限りこの場で管制システムが敵に回ることはない。
 そういうことか、納得すると共に少しばかり安堵する。そのまま疑問に思った点を指摘し答を得る。先ほどの質問を知っていればどうということのない答えだった。話が一区切りつくと橙子が思い出したように言う。


 「御爺様?それでも戦争が終わればお別れです。私は自らのナノマテリアルで肉体を構成し元気になった“橙子”より離れるでしょう。契約時間もそれ位ですしね。」


 1年ほど前に橙子言ったことを思い出した。やや契約が短くなっているが彼女が人を理解するという本来の目的の他にこの戦争で御国を想う匂いが感じられる。兵器が情を移すと思えば不思議な話だが物に魂が宿る――古い言い伝えで考えればあり得ぬことでもなかろう。
 そして、戦が終われば孫も帰ってくる。『橙子の史実』が何だというのだ!家族と安穏の日々、それも英雄とも愚将とも無縁な元司令官として今世を過ごす。何の不満があろうか。










 後、この時の判断を己を括り殺してやりたいという後悔と共に思い出すことになる。子供が戦争を動かし、何をするか全く解っていなかったのだ。儂は…………










あとがきと言う名の作品ツッコミ対談




 「どもっ!とーこです。ついに作者も週刊連載打ち切り?」


 予定通りだけどね。開戦までは週刊連載、開戦してから月1〜2連載のペースでいくと考えていたし。コラコラ、原稿漁らない。確かに30話分書き貯めてはあるけど一気に出したら連載崩壊しかねないから。


 「たしかに全部下書きじゃ人様には見せられないからね〜。でも融通利かせてもう少し進めても良かったんじゃない?せめて第一章分とか。」


 無理だった。下書きはともかく清書と校正に信じられない程、時間かかっているから。このサイトの数名の作者様に添削と称して茶々いれている以上、フェリ自身まともな文章を出さなければ人のことは言えないからね。


 「自業自得〜♪(砲口を向けている)」


 まだそれで突っ込むべきじゃないだろ。まぁいいや、今回突っ込み所は既に史実とずれが出ている点だよね。鴨緑江だけど実は史実より若干悪化してる。第1軍の展開が早すぎてロシア軍全体が集まってから潰走でなくて逐次投入各個撃破に陥っているのさ。


 「そっちの方がいいんじゃない?実際被害も少ないし。」


 いや、鴨緑江渡河戦自体極めてタイミングが良かったんだよ。あそこでロシア東方軍が潰走したが為に一気にクロパトキン大将が満州領内に防衛線を下げたから第一軍は吉林省までそれほど戦闘はしないですんだ。
でも今度は勝てるとはいえ細切れになった防衛部隊を次から次へと相手にせざるを得なくなってるから補給自体が圧迫されるようになってきているんだ。唯でさえ山岳行軍だから苦労するのに毎度毎度戦闘補給しなくちゃならんから第1軍は史実の通りに分進合撃できなくなってしまったわけ。
 じーちゃまからすれば予想以上だけど史実からすれば想定外てとこかな?長蛇の列と補給に悩まされながらのろのろと満州に物資を入れなきゃならないし鴨緑江近くの町に
補給拠点を設けて橙子の手配した二等輸送艦で仮設港を作ってる。言わばWW0のマルベリー港てわけ。規模は比較にならん程ちっこいけどw


 「またマイナーな新兵器を……特型輸送艦といいいコレといいマイナーな物ばっか使うのよねぇ。」


 でも有効だよ。日本陸軍の建軍時からの最大の弱点は兵站システムの脆弱さだから。基本国力比例な数字に過ぎないわけだけど今回装備面で比較にならない程兵站が圧迫されるから技術的なブレイクスルーだけはやっとかんとね。これの御蔭で黒木閣下は苦労はしているけど参謀本部自体が「これはイカン……今後外征すると国が倒れてお釣りがくる。」とドン引きしたのは間違いない。
 実際のところ計算したら橙子の渡した兵器だけで巻き戻りで時価換算しても400億円超えてるから。史実の日本借金が18億円、参謀本部が卒倒するわな。


 「30年式とStG44と同価格で計算するとか粗なんてもんじゃないけどね〜。これで日本陸軍は理性では外征反対に回るわけだ。実際は感情に任せてとか、なんとなくとか、面子だから効果は疑問だけど。後、あのルビは何?タナヒレイトとか明らかに造語だしGBは明らかにナデシコから引っ張ってきたように思えるし。」


 そこら辺は第3章からだね、苦労してもらうつもり。あ……それか(笑)原作設定のタナトリウムと対消滅のアニヒレイションを組み合わせてみた。GBはその通り。このサイトにおけるリスペクト(尊敬)みたいなものだね。


 「でも最後のアレは露骨すぎない?わたしが諸悪の根源みたいな書き方。」


 当然でしょ?たかが9歳の餓鬼んちょに戦争が動かせて堪るか、とちょっとまて!これはストーリー上の展開であって……」


 「連射開始♪」(轟音と悲鳴が交錯)



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