大きく傾いた床、立っていても靴を濡らすほど浸水した廊下、隔壁扉を必死に塞いでいる候補生。僅かな時間とはいえ私はぼんやりとそれを眺めていた。


 「ここは?」

 「触雷したようです。長くはもちそうにありません。動けますか?」


 高野候補生の言葉を聞いて納得する。だが状況は最悪の一言、隣の救護室とは隔壁扉で隔てられたものの海水は容赦なく扉の隙間から噴き出している。しかも今、床に溜まっている海水はそこから流れ出したのではない。反対の通路側から流れ込んでくるのだ。もうすぐ其方から海水が雪崩れこんでくるだろう。そして自分の状況。下半身が全く利かない。腰が砕けたか……
 天井を見て覚悟を決める。体をずらし隔壁扉を塞ぐよう自らを押し込めた。軍帽が無い、どこに忘れたのやら?


 「候補生、貴様は天窓から脱出しろ。それまでは持ち堪えてやる。」

 「しかし!」

 「黙れ、またぶん殴られたいのか? 急げ!」     ニッと笑う。


 彼も私が助からないことなど先刻承知なのだろう。酷い有様の顔を拭って敬礼し梯子に手をかけ必死で登る。彼を見上げながらかつて見た映像を思い出す。破局の音が近くで響く。
 今よりずっと老けた彼、真珠湾目がけて突入していく飛行機械、南洋の名も無き空で散った最後……不朽の願いを籠めて怒鳴る。


 
山本(・・)五十六候補生! 御国を守れ!!!」



 その声が届くことも判らぬまま濁流に呑まれる。悔恨の言葉は紡がれることなく、愛娘の泣き顔が一瞬視界を過ぎり…………




―――――――――――――――――――――――――――――


榛の瞳のリコンストラクト   第1章第11話 
 
   
西暦1904年 8月 22日 黄昏
 





 もはや転覆寸前の【初瀬】に【ウネビ】が船体ごと接舷する。次々とナノマテリアルが形状を変えて沈みゆく船体を固定しさらに10本以上の牽引光索(トラクタービーム)がそれを補助する。しかし沈降は「ウネビ」を巻き込んで続く。四千トンの巡洋艦が一万五千トンもの戦艦を支えようとする事自体不可能…………


 その常識が覆った!


 海面が割れる?いや凹んでいくのだ! 【初瀬】と【ウネビ】を中心に海面が重力子による空間位相に耐えきれず半球状に押し広げられていく。空中に静止し、船内に飲み込んだ大量の海水を滝のように流しながら宙に浮いている2つの艦体。
 異様……いや幻想的ともいえる世界の中心を橙子は走る。ウネビの舷側を跳び、ナノマテリアルでできた仮設橋を駆け初瀬に乗りこむ。願うは父の無事のみ!!
 ここに橙子はいない筈、彼女は乃木希典と共にいる。では何故存在するのか? 簡単だ、複製してしまえば良い。本体こそ人間と艦艇構築体(ナノマテリアル)の半融合体に過ぎないが十分な素材さえあればそれ以上のモノ(メンタルモデル)を作ることができる。人格? 意思?? その程度のモノ、1年データーを撮り続ければシュミレーションなど可能だ。全てはコアユニットA248-343-300Hの命ずるまま、戦争を実装せんが為。


 いない! いない!?


 脱出艇に該当反応無、船内にも該当反応無、何処? 何処にいるの?? 御父様! 瞳に一つ物が映る。海軍士官が被る制帽……尖った鉄管を軸に衝撃に煽られクルクルと自らを回している。まるで自らの存在を伝えるように。
 それをを取る。半ばズタズタになり、鍔にすら鋭利な切れ込みが入った血塗れのソレに文字が見える。乃木勝典の縫い取り……紛れもなく父の物!
 そして見てしまった、眼下の光景を。
 ――天井が引き裂かれ露わになった救護室、海水に呑み込まれ水が抜けた今、累々と横たわる屍の山――視界の隅で消えた識別信号!!!


 「構成体シュミレーションプログラム自壊の危険性により強制シャット……」 

 「シュミレーション続行、ウネビと同調継続」


 複製素体のセフティをコアユニットの指令が覆す!その結果は……


 
「あああぁあ……ア゛アアアアアァァァア゛ッッッ!!!!!!」



 彼女の口から言葉にならぬ絶叫が迸る。





 瞬間、【ウネビ】が爆発した! 液状化した【ウネビ】が初瀬の艦橋に艦体に破孔に襲いかかり、白銀色の奔流が艦も人も物も覆い尽くす。有機物も無機物も一緒くたに喰らい分解し、再構成しながら艦内を白い光輝で満たしていく。内部から溢れ出した白銀の濁流はありとあらゆる窓を突き破って噴き出し、青白い稲妻を伴って初瀬の周りを龍が取り巻くがごとく旋回を始めた。
 【ウネビ】が【初瀬】を喰らう?いや逆だ。【ウネビ】は急激にその質量を減じ形すら崩していく。そして【初瀬】は…………


 
在り得ざるモノへその身を変えていく!



 艦底に開けられた破孔は急激に塞がり、舵機故障を招いた艦橋直撃弾の損傷すら元通りに再生する。もぎ取られた副砲も、先ほどまで発砲していた補助砲も同じ形のナニカに擦り替わっていく。そして「ウネビ」の4門の主砲は装着形式も口径すらも代わり二揃えの連装砲塔として【初瀬】の前後に装着される。
 元の主砲塔など塵のように艦体から排出され、遥か下、剥き出しの海底に落下する。だが塵のように排出されたのは兵装だけではない! 艦尾のスクリューは愚か艦の心臓であるはずの主機関がまるで要らない物のように艦体から零れ落ち、【ウネビ】から引き出されてきた紡錘状の塊が機関のあった場所に据え付けられる。艦尾は形状すら変化し、2つのベクタードライヴジェット推進口が顔を覗かせた。
 そして艦首の菊の御紋が溶け崩れ、その艦首全体に錨を図案化した――かつて時の彼方で世界中を恐怖のどん底に叩き込んだ――輝光の紋章が現れる。

 
起動(エンゲージ)


誰かの言葉と共に一隻の艦が大日本帝国海軍籍より消えた。外観は変わらずとも異形と化した元大日本帝国軍艦【初瀬】。いや、もはやその名で呼ばれることもない。


 
霧の戦艦【ハツセ】



 そう呼ばれることになる“霧”が其処に居た。





―――――――――――――――――――――――――――――






 目撃者が少なかったのは僥倖だったのだろう。しかし、目撃者等関係なく【ハツセ】は行動を開始する。前後の連装主砲、本来なら前方から左舷に旋回するだけでも数十秒かかるものがものの1秒で終了、さらに主砲の砲身が上下に爆ぜ割れ、内部構造が露わになる。もはやソレは火薬で砲弾を発射するような代物ではない。遥かなる未来の者ならこう言うであろう。


 【電磁収束型高圧縮粒子加速照射砲】……所謂、粒子ビーム砲と。


周囲を取り巻いていた稲妻がまるで喰われるように砲塔に集まる、眩いばかりの光が砲身の中で収束していく。正視出来ないほどの輝きとこの時代に有り得ぬ破壊が解き放たれようとしている! 目標は異常事態から逃れる? いやこの海域から逃れようとするあまり“初瀬”に自棄糞の砲撃を当ててしまった2艦、ロシア旅順艦隊分艦隊装甲艦(せんかん)『ツェザレヴィッチ』と巡洋艦『アスコリド』に向けられる。


 
「あの艦が父様を殺した!」



 誰かの絶叫と共にまず副砲と補助砲が火を噴く、否! 砲口から火を噴いたのではない。砲塔の接続部が割れ長い砲身が飛び出したのだ。傍からみればこれほど滑稽な話はないだろう。しかしあの“大海戦”を生き残れた僅かな人間なら戦慄するしかない。飛び出した砲身が空中で僅かに銀色の砂を撒き散らし自らを造り替えた今なら!!


 【対艦誘導弾】


 「大海戦」において21世紀の強力かつ正確な対ミサイル迎撃システムを平気でかい潜り、人類の最終決戦艦隊に破滅的な損害を与えた数世代差という言葉すら生易しい超兵器。それが1艦あたり17発、合計34発。たかが1900年代の“旧式艦”には1発すらオーバーキルと言える破壊の権化が自らの噴射炎で音の壁を破りながら突進する。
 2艦の艦尾に掲げられた白地に青のクロス、ロシア帝国海軍旗、それを榛の瞳で睨みつけながら誰かが叫ぶ。


 
「あの国が父様を殺した!!」



 その言葉と共に主砲構造物が電磁場を解放、粒子加速された陽子が外気へ向かって押し出される。主砲の砲口、海に突き出た砲身の先から海と空に向かって真円の衝撃波が生まれすべてを切り裂いていく。そして、その中心点からかつて人類側の超大型空母を3枚に下ろした光輝の刃が飛び出す! その光は音速を超えて先行している筈の対艦誘導弾を軽々と追い抜き、軸線上の誘導弾数発を衝撃波に巻き込んで破壊しながら2艦を襲う。
 木材、鋼鉄、海水といった物質に関係なく、砲塔、機関、竜骨といった構造にも関係なく光の刃は、


全てを分断した!!



 これだけですら2艦の命運は尽きている。人間が生き残っていると考える方がおかしい破壊、しかし止めとばかりに光に追い抜かれた誘導弾が次々と着弾し膨大な運動と熱エネルギーを解放する。もはや原形をとどめぬどころかそこに有った証拠すら消えてしまうほどの破滅を2艦が見せつけている中、コアユニットの命令が届く。


 「コアA248-343-300Hヨリ索敵ユニットA248-343-300H-S07、状況停止、構成体解体、帰還セヨ」


 凹んだ海面が崩れ海水が滝のように窪みに向かって流れ落ちる中、【ハツセ】は海中に身を沈めていく。こうして渤海海戦で現われた異変は現われた以上の唐突さをもって海神(わだつみ)に消えた。




―――――――――――――――――――――――――――――






 最新鋭戦艦【敷島】に続いて日清戦争の殊勲艦【吉野】までやられた。しかしそんな悲劇がどうでも良くなる程に……そう、どうでも良くなる程に“初瀬”に起こった全ては異常かつ異質だった。【三笠】の艦内、上は連合艦隊司令長官から下は一水兵まで不気味な沈黙と、得も知れぬ恐怖に慄いている。
 唐突に司令長官が言葉を発した、この人が自ら命令を発するのも珍しい。


 「秋山参謀。戦闘詳報1830、遼東半島沖“初瀬”触雷により沈没。但し、沈没寸前の砲撃によりロシア旅順艦隊戦艦【ツェザレヴィッチ】巡洋艦【アスコリド】轟沈、以上。」


 明白な戦闘詳報改竄の指示。歯を食いしばる形相から閣下にとってどれ程の屈辱か解る。


 「しかし!」


 無茶だ。ロシア人は距離の関係上あの2艦の乗組員のみ、おそらく一人残らず死んでいるだろうが、それでもあの恐るべき光景を百人単位の我が軍将兵が見ているのだ。防諜で防げる事態ではない! それでも東郷長官は話を続ける。普段海の凪のような閣下がその激情を寸前で抑えつけているかのように拳を震わせている。閣下は負けただけでそれほど激することはにない。恐らく……己が世界を謀らねばならないことに憤っているのだ。閣下は何度か瞬きして目じりに指を当て眼脂を拭う仕草をする。


 「秋山君、戦闘には常に不測の事態が付きまとうものだ。我々は願望の余り夢を見た。……それでよかろう。」


 確かに我々にとってこの戦は負け戦だ。【敷島】、【吉野】、【笠置】そして【初瀬】。第一艦隊の3分の1が沈み軽微とはいえ生き残った艦も損傷している。対する旅順艦隊の損害は我が軍以上とは言え、まだ太平洋へ回航されてくるバルト海(バルチック)艦隊が存在するのだ。今の戦いで旅順艦隊が戦闘力を失ったとしてもまだ我々の方が分が悪い。
 実質的な負け戦の上で誰がこんな与太話を信じるものか! 酒宴でも精々第一艦隊の負け惜しみと評されるだけだろう。そして東郷長官の言った言葉は【初瀬】の伝説として語られる程度のもの、この戦で何が起こったか判断できる材料にはならない。奇跡の一発といった類だ。
 戦闘詳報を書きながら防諜上の対策を頭で練る。こんなことができる者など自分が知り得る限り一人しかいない。数か月前、山本権兵衛閣下をこの艦に連れて来た輸送船団。陸軍が海軍以上の軍艦を保有するなど有り得ぬ話だった。石炭でなく重油のみを使い、世界中探しても試作でしか存在しない“タービン機関”を備えた【艦】。驚いたのはそれ程の最新鋭艦が外国特有の雰囲気を持たず、御国でも数少ない『国産艦』の雰囲気を醸し出していたことだ。
 それに乗ってきた第3軍司令官『乃木希典』の御孫嬢……。あの榛の瞳を見た時、全てを見透かされたような本能的な恐怖と、初めて軍艦を見た者が感じるであろう圧倒的な畏怖を感じた。


アレ(・・)は人間なのか?」   と……


 質問事項を東郷長官に聞くため話しかけようとすると。閣下は私が口を開く前に呟いた。真紅色(あか)い夕日を背に旅順要塞を見据え唇が動く。


「乃木閣下……。貴方は何を喚び出したのか解っておられるのですか?」


 その言葉は戦場の狂騒が過ぎた海に漂い、夕闇の中に消えていった。




―――――――――――――――――――――――――――――






 
「申し訳ございません!!!」





 大連の野戦病院。その病室のひとつ、寝ていた名も知らない海軍士官候補生が飛び起き床に土下座して額を擦り付けんばかりに平伏する。体の所々に包帯が捲かれ、左手の指が2つ欠けたその候補生は自らを頸り殺さんほど責め続けて居るのだろう。なにしろ彼は目の前にいる軍司令官の息子……父様を見殺しにしたのだから。



 「よい、候補生。勝典の最後を見届けた事、まっこと感謝しておる。話してくれるな? 息子の最後を。」



 彼は涙ながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ。“初瀬”の最後を……父様の最後を。御爺様は慟哭しておられるのだろう。南山から半年……そう、たった半年しか運命は変わらなかったのだから! しかし御爺様は自らの意思で完璧にそれを抑え込み淡々とその言葉を咀嚼していく。私は今にも崩れそうになる心を支えるだけで精一杯だった。コアユニットと量子を介した概念通信を行いコアユニットがどう介入したかも情報を取り寄せた。結局救出行動は間に合わず、シュミレーションでも不測の事態で済まされる可能性に過ぎなかった。


 でも……でも!   父様は死んだ!


 もう拗ねて父様の陰に隠れることはできない! 父様の顔を見て笑うこともできない! あの微笑みを向けられることもない!!
 壊れそうになる心を必死で繋ぎ止める。【私】の虹彩が僅かに榛から黒へと遷移する。唐突に気づいた気づいてしまった。“わたし”は、


 父様に恋していたことに。


 話しが一通り終わったのか御爺様が立ち上がる。まだ彼は平伏したままだ。主導権が奪い返される。黒から榛へ……


 「高野五十六候補生、御苦労だった。橙子、海軍大尉乃木勝典戦死 喜べ。」


 私の矜持が崩れたのは御爺様の冷酷な最後の言葉ではなかった。ありえない名前……何故その名前が!? 思わず後ずさり絞り出すように言葉が出る。


 「何故? 何故貴方がここにいるの!?」


 日進乗り組みの筈だった。そして日進はこの海戦に参加していない。なのに何故! 僅かに遷移しようとした“わたし”が阻まれ押し込められる。でも私の膝は崩れへなへなとその場に座り込んでしまった。それを抱きとめた鍵島伍長が怒りを滾らせながら抗議を叫ぶ。


 「司令官閣下、今の言葉訂正して頂きたい! 御嬢様に対し余りの暴言ですぞ!!」


 振り向き御爺様は“わたし”達を睨み付ける。いや軽蔑ともいえる眼を向ける。


 「これしきで狼狽たえるなど士道不覚悟。橙子に言っておけ! 取り乱すなら他でやれ、士気に関わる。」


 そう言い捨てると軍帽を目深に被り直し“彼”は足早に病室を出て行く。“わたし”は足掻く。御爺様を“彼”と考えてでも“わたし”を押し込め、枷を付けた橙子に喚き続ける。
 扉が閉じた音だけが大きく響いた。




―――――――――――――――――――――――――――――







 「(索敵ユニットA248-343-300H-S04よりコアユニットA248-343-300Hへ連絡、素体契約者による契約修正を要請、概念パッケージにて送信)」

 「(解凍……特に必要性を認めないが?大日本帝国1904での継戦能力では残り14ヵ月をもって限界に達しその攻勢限界点は人類標準位置:北緯43度53分東経125度19分(長春)と見られる。それまでにロシア帝国との国交再交渉(講和)が妥結する見通しは82.2%と推定。)」

 「(その確率では不足とのこと。更なる確立上昇を望むとの要請。)」

 「(……了解、プランR:J/1904-0207ならば94.6%まで上昇、それ以上は全世界への影響が大きい。)」

 「(了解、0207ダウンロード…解凍、大きすぎないか?と疑問を付託)」

 「(問題なし、1次被害を除けば歴史上の修正域の範疇と想定する。)」

 「(アドミラリティ・コードは?)」

 「(評定は1914以降、前回の1945での“不完全稼働”と“消失”に比べれば些細な問題。)」

 「(……了解、作戦行動続行。)」


 我の体を形作る構成体(ナノマテリアル)の殆どは硫黄島の軍港、生産設備、探査・防衛システムへと移行している。だから我が動くことはない。我と共に時の彼方、それも始まりの時より過去に転移してしまった4つのコアユニットに任せれば良いだけだ。


 「コアユニットA248-343-300HよりコアユニットD713-505-230【ハマカゼ】。予備ナノマテリアルの使用許可、緊急権限特例320459発令、【VZ07Ω】及び歴史名称“PC-1400”の使用による攻撃命令」


 地下軍港に係留されている一隻の“第2次世界大戦型駆逐艦”のコアユニットが答える。「……攻撃目標受領、艦隊旗艦に質問事項、VZ07Ω及び“PC1400”は補助ブースターて投射?」

「いえ、直接落着させてください。飛行船の形態なら整合性がとれると考えます。」

「了解、艦隊旗艦」










 かくして娘と翁は舞台に上がり牛車は引き出された。違っていたのは娘こそ地獄を望み、翁はそれを知らなかった事。彼方から来し大殿によって篝火は焚かれ松明が投げ入れられる。そして……


 
幕が開く













あとがきと言う名の作品ツッコミ対談






 「どもっ!とーこですっ。初っ端からパパ行殺した不埒な作者に制裁中です。しばらくお待ちをー♪」


 (轟音と悲鳴と怒号と絶叫が交錯中……ついでに菓子盆も乱舞中)


 「…………で、いつまでやってもきりないから始めるけど。霧の艦艇投入して蹂躙なんて仮想戦記としてのスタンスからすれば御法度もいいところだよ? 作者による作品蹂躙は読者を引かせるだけだし、作品中でももみ消しようがない失態だと思うけど?」


 作者全殺し仕掛けてその台詞かぃ! ……全くどうしてこんな性格になったのやら? 作品蹂躙どころか作者蹂躙して何が楽しい!!(不手腐れ)


 「(あ、やりすぎたか?)まーまー、演出に力入ったということで。でも“乃木勝典”をSSでここまで書いた作品なんて初めてだし娘役としては感謝してるんだよ。それに今回の描写は【バトンタッチ】でしょ?願いは56に想いはあたしにってところかな? 想いって辺りがちょっと嬉しい♪」


 煽てても何も出ないぞ? 前のあとがきでこのパートは本来入れるものじゃないって言ってたよな。実質的なBADENDだと。つまり霧が現出しただけでこの物語が潰れる可能性が高いのよ。しかしアルペジオを扱う以上、霧は外せない。だからこそこの展開を作り出したわけ。


 「何が言いたいの?」


 『コアユニットが作り出した箱庭』今回の舞台を一言で言うとこうなる。極限状態で橙子がどのような行動に出るか? 巨大な実験装置であるわけ。実際このころになるとコアユニットは橙子の特性を理解し始めている。ならば確かめなければならない。彼女の力がユニットにどう干渉するかをね。それがあの結果、感情のまま暴走して自爆した。


 「は?」


 あの時点ではまだ乃木パパが助かる可能性はあった。しかし橙子を模倣した実験的なメンタルモデルはパパが死んだと勝手に判断し暴走を開始、結果殺してしまったわけ。
ここに橙子の本性が隠れてる。細かいことは設定にもかかわるから言わないけどじーちゃまが言った『軍人に向いてない』がはっきり表れたわけだ。少なくとも戦闘指揮官としては落第レベルだね。


 「ちょっとまって! それじゃコアユニットは乃木パパをわざと殺したわけ!?」


 違う、殺したのはあくまで“橙子”の本性。コアユニットはそれを追認しただけにすぎない。模倣された人格と本来の人格をコアユニットは同一視しているからどっちにせよ結果は同じとみている。だからコアユニットは橙子が乃木パパを殺したと結論付けているだろうね。そして今までの人間の行動パターンから橙子がそれで納得しないのも解っている。後知恵を言い出す前に状況を歪めて「こうならざるを得なかった。」「契約に乃木パパの生命の保証は入っていない」と誘導するだろうね。そしてその後知恵を完全に黙らせるために狡猾な手法を使う予定。


 「コアユニットってそこまでするわけ? まるきり外道……」


 じゃ本文でも言ったけどコアユニットの目的って何よ? コアユニットは橙子の味方ではあるけれど人類の味方なわけじゃない。じーちゃまだって駒の一つにすぎないしね。コアユニットの本来の目的はアドミラリティ・コードの解析、副次的かつ個としての目標として戦争の実装なのは前に書いたとおりだから一個人の生死どころか一国の命運すら屁とも思ってないと作者は考えてる。


 「こんな馬鹿げた敵だして大丈夫なわけ? 物理的な破壊は勿論、精神的にも人間と相いれそうにもないし。」


 文字通りの【霧】さ。捉え所が無く、しかも彼方(未来)を遮る者。しかも本質が水(科学)だからから人類は無視できない。否定したら最後それは生存の否定になりかねない。ある意味ワーストコンタクトだろうね。ただコアユニットも万能ではない。そこら辺は作者の匙加減だけどね。


 「これ以上話しても作者の妄想ばかりダダ漏れしそうね。でも、もうひとつ」


 あー最後の一文か?章名を箇条書きにするとこうなる。元ネタは当然大先生のアレ。全集とか楽しんで読むからこれからの章名もほぼ確定している。そして大先生も出演決定!……ま、一節分だけどね。


 「またこの作者は調子づきおってからにー(砲口ハンドル回転中)」


 まて!ツッコミ砲もナノマテリアル製だったんかい!それも何気に口径拡大してるし。


 「とーぜん!【ハツセ】になったんだし30.5cmにパワーアップ♪」


 (轟音と悲鳴が交錯)



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