布団にくるまれた小さな躰、苦しげに弱弱しく上げる小さな吐息、その周りで駆け回る大人達。昨日まであんなに元気だったのに! 私の背中に張り付いてみたり膝に上がろうとしたり……『ねぇね? ねーね!』と舌足らずな声で一緒にいることをせがんでいた燐子が何故!?
 御医者様が難しい顔をしている、【病気】なんだ。外から車の音がした。御爺様が帰ってきた! 慌ててわたしは立ち上がり、玄関に出る。こっそり燐子の血液サンプルは取得済み、もうすぐ御艦(コアユニット)から結果が出てくる。それを御爺様に話せば……





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榛の瞳のリコンストラクト
   

第3章第7話









 唖奴(コアユニット)の検査結果と、医師の見立ては同じだった。流行性耳下腺炎、もっと俗な名前で言うならば【おたふく風邪】だ。これだけなら重病というものではない。数日で熱は下がり橙子の話では体に抗体が作られて二度と罹患しないという。だが医者と違い、唖奴の見立てはさらに詳しいものだった。

 ムンブスウィルスによる髄膜炎症の発生

 フラビウィルスの検出

 ドイツ帝国にて脚気予防の学会に出ている森林太郎君――いまや陸軍少将、医学博士、作家を掛け持ちする御国きっての秀才――が居ればと(ほぞ)を噛む。


 日本脳炎


 対症療法しか効果は無く、致死率二割。助かっても意識障害、運動麻痺、呼吸困難等後遺症の目白推しである。橙子が悲鳴を上げて燐子を抱え上げようとしたのを儂は張り倒し、その躰を蹴倒す。情報開示と共に行動を起こされては儂も対処できなかったろうが橙子と“橙子”、己を切り替え行動に移す時、若干の隙(タイムラグ)が生じる為付け入る事が出来るのだ。その程度で橙子が傷つく心配等していない。やろうと思えば即座にクラインフィールドで儂は愚か、この屋敷ごと吹き飛ばすだけの力を橙子は持つ。

 「馬鹿者! あの日の惨劇を繰り返すつもりか!!」

 「でも! このままじゃ!! このままじゃ燐子がしんじゃう!!!」

 縁側まで派手に転がった橙子と使用人に寄って集って羽交い絞めにされた儂、鬼気迫る形相から周りの者は儂が孫を殺すとでも思ったのだろう。悲鳴のような声で哀願した橙子に言葉を叩きつける。


 「言っておくぞ橙子! 手前の浅はかな願いが一国を潰したのだ。これ以上、手前勝手な願いを積み重ねてみよ!! その素っ首落としてくれる!!!」


 その程度で殺せるとは思わんが、あらん限りの力を顔面に注ぎ込み威圧する。橙子は兎も角、“橙子”にはまだ覚悟ができていない。己の意思を貫き通すが為に人を喰らってでも生きるという覚悟が。おろおろと状況に流されるだけの【人間】に“上役”の力を使わせるわけにはいかぬ。その証拠に大粒の涙をボロボロ流して狼狽え続ける孫を見て思う、

 『まだ早すぎる』のだ。

 ふと隣を見ると女子(おなご)がいる。確か山県候の縁者で学習院の留学生扱いでトラキアに来た真瑠璃嬢だ。軽く頭を下げる、口を覆っているが悲鳴を上げなかった辺りかなり肝の据わった娘だろう。女学部長も絶賛に近い評価をしている。会釈し弁解する。


 「(いささ)か醜態を御見せした。真瑠璃お嬢さん、済まないが橙子を自室に連れて行って貰えまいか。」


 彼女は頭を下げると橙子を抱きかかえるようにして部屋から出る。しゃくり上げる泣き声混じりの声が聞こえなくなると、儂は医師と看護婦に経過を任せ、部屋を出た。


 「あなた、よいのですか?」


 廊下で控えていた静子が声をかけてくる。厳しい目をしている、人一人の命がかかっているのだ。たかが矜持や見栄で儂が橙子の意を蹴った様に見えたらしい。拳を握りしめ押し殺したように声を出す。


 「良いわけ無かろう。勝典の子だぞ! 儂がどれほど(すが)りたかったか解るか?」

 「では聞いたはず。一刻を争うと……」


 日本脳炎は脳に細菌が入り込み、抗体と戦うことで炎症を引き起こす。その経過で脳神経系がそれに耐えきれずに自壊するのだ。これがこの病気の併発症の大本、時間との勝負なのは先ほど聞いた。それでも…………


 「それでもだ。世界を揺るがせる血の繋がらぬ孫と、可能性だけを持つ血の繋がった孫、どちらかを取らねばならぬとしたら儂は躊躇なく前者を取る。たとえ橙子に恨まれ憎まれてもだ。孫は元よりこの国引き換えにしてでも橙子にはこの世で生きるべき心棒を叩き込む。」


 握りしめた拳を開く。爪の当たった部分が赤く腫れ血が(にじ)んでいる。何度か手指を屈伸させ解すと、能面の様な顔で感情を殺している静子に言いつける。


 「静子、儂は明日よりイスタンブールに発つが帰ってくるまで総督府護衛兵をこちらに回す。絶対に橙子を家から出すな。力ずくでこじ開けることはしなくても闇夜に抜け出す悪知恵位あるだろう。」


 まだ睨んでいる。ひとつ溜息をついて言葉を続けた。女子とはここまで執念深いとはな……


 「心配するな。死ぬ可能性は二割、低くはないが逆を言えば5人に4人は助かるのだ。勝典の子が病如きで死ぬものか。」


 頭を下げる妻から(きびす)を返し、儂は総督府へ戻った。




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 イスタンブール――滅びに(ひん)したオスマンの首府にして回教(イスラム)の揺り籠、そして第二のローマ(ビザンチウム)と讃えられた欧州の都の一つ。モスク、バザールを行きかう人の波。100万都市の賑わいには来る度に圧倒される。滅亡しかけている国とは思えぬ栄華の都。
 ドルマバフチェ宮殿の迎賓室のひとつで儂はエンヴェル将軍と向き合っている。将軍は不機嫌だ、怒っているといっても良い。本人からすればどうしてこんな好機を逃がさねばならないのか! と絶叫したい心持なのだろう。儂は行儀悪く豪奢な椅子の上で足を組み否定の言葉を続ける。


 「何度同じことを言えば解りますかな? 貴国に必要なのは時間であって領土ではない。正直運河(スエズ)を欧州に抑えられている以上、貴国がパレスチナ・紅海沿岸を無理して保持する必要など無い筈です。まず重要なのは本土たる小アジア(アナトリア)、そして穀倉地帯にして油田の宝庫たるメソポタミア(イラク)ペルシャ湾岸港(バスラ)、その他の有象無象など切り捨ててしまえば宜しい。」


 そして先ほどの言葉を繰り返す。


 「貴官が妄言する故地中央アジア(トルキスタン)の回復等、論外という事です。」

 「何が妄言だ!!!」


 ドンとテーブルを叩きエンヴェル将軍が吠える。


 「好機、好機なのだぞ! 今あの北の蛮族共(ロシアじん)が混乱している隙に我らはかつて追われた祖国を取り戻す。貴国にとっても計り知れない利益を用意した。バクーという世界最大の産油地帯を!!」


 『橙子の史実』から彼の人物像は理解できる。愛国者で高潔な人物でもあるのだが、徹底した民族主義者……いやロマンチストと言って良い。本来トルコ民族は中央アジアに由来する民族だ。民族移動とオスマンの拡大政策によってより豊かなこちらに本拠を移しただけの事。いくら国民を啓発するにしてもそんな夢物語は成功しても何も(もたら)すことは無い。国の衰亡と国民の疲弊を招くだけだ。それを強引に進める為だけに彼は儂に援助を願った。だからこそ儂は此処にいる。彼の思い違いを張り倒してでも変えるために。
 彼はそうは捉えなかったようだ。腹を割った話し合いなら密約位は結べるだろう? と考えたのだろうが、そうは問屋がおろさない。儂は彼の暴挙が“第一次世界大戦”で何を引き起こしたのか知っているのだから。微苦笑するのが彼に解るよう表情を作り替え反論する。


 「産油地帯? 確かに我がトラキアは金に困っております。ただし、大陸にはこういった格言がありますな。『渇しても盗泉の水は飲まず。』――綺麗事と言われようが我欲に(まみ)れて悪行を働けばその報いは必ず跳ね返ってくる。ちなみにトラキアは貴国の宗主国でもありますが、欧米列強の意思によって存在していることを忘れてはいません。彼らに逆らえば……こうです。」


 首を指でなぞる。悲痛な声をあげて将軍は叫ぶ。


 「私、私の買いかぶりだったのか!? トルキスタンの回復が私の我欲であるのは認める! だがトルコ国民がトルコ国民たるにはこうするしか手が無いのだ。宗教、民族、慣習、身分! 全てを纏めるにはトルコ国民としてのアイデンティーが必要なのだと。パシャはそれすら蹴るというのか!!」


 橙子と同じだ――――そう思う。この男には軸が定まっていない。オスマントルコの復興という理念は軸では無い事から目を背けている。トルコという国の生存こそが国家指導者たるエンヴェル将軍の軸である事を自覚してもらわねば。静かに答える。


 「エンヴェル将軍、儂は陛下より迷い往く国と新たなる国の灯となれ……と御言葉を頂きました。今思えば、迷い往く国とは御国のことだけではなく、このトルコも含めての事なのではと思っております。今我らが道を過てば黄色人種最後の希望は潰えます。下のバザールを見てくだされ。威勢のいい物売りの声、笑いさざめく人々……如何なる領土財物富貴名誉、是に代わるもの等ありませぬ。我らの理想が潰えても人々がそれを継いでいける――そんな国、そんな理想を掲げるべきなのです。我等が理想は国家百年の大計、トルコ人たるお題目如き目先に惑わされてはなりませぬ。」


 鞄から二冊の書物を出す。今回の交渉における切り札といったところだ。一冊は我が国の軍事機密を橙子がトルコ語に翻訳したもの。もう一冊はとある愚行をドイツ人参謀――旅順で観戦武官として会ったゼークト中佐――が未来、書き留める筈の物を手渡す。そしてポケットから鉄のフラスクを取り出して中身を呷る。小村君の受け売りだがやらぬよりはマシ。おっと此処は回教国か。


 「何故ロシア国境が決壊し、人民が押し寄せて欧州が騒乱になっているのにトルコ―ロシア国境が静かなのか解りますかな? その理由がその二冊です。ひとつは皇軍が日露戦争前に雪の山渓に挑み、無惨な敗北を喫した事件。もうひとつは『もう一人の貴方』が行った愚行のあらましです。それを貴方が読み、そして貴方の部下のケマル君にも読ませてください。彼ならきっと真実を見極めることが出来ましょう。」


 彼は書物を受け取ると不思議そうな顔をする。本来トルコ語で書かれた日本の軍事機密を見るなど初めての経験だろう。それに後半の部分は彼を戸惑わせるには十分な筈だ。儂の話すトルコ語は間違っていなければな。思わず独りごちる。ようやく儂の話に彼の理解が追いついたようだ。彼の部下、後の“トルコ共和国初代大統領”の名を口にする。


 「ケマル……ケマル・アタチュルクの事ですか? 優秀とは聞いておりますが……!! 今! 今なんと仰りました!?」


 儂は恍けたようにフラスクを呷り天爵を喉に流し込む。さて酔っ払いの戯言、いや失礼! 回教徒の前での飲酒は御法度でしたかな? 薄く笑う儂の前でエンヴェル将軍は何か得体の知れないものを、彼流にいえば最高神(アッラー)を笑い飛ばす魔神(イフリート)を見るような顔つきをした。儂は顔を歪めると彼に囁く。儂ここに来る理由とした提案を。うろ覚えのトルコ語で話す。


「エルサレム、メッカ……邪魔だと思いませぬか? 国家の施策に坊主があれこれ口を出す謂れはない。イスラムの守護者という虚名より近東の大国の方が貴国にはより相応しい。」


 彼には悪魔の囁きに聞こえれば良いのだが…………





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 そっと寝台から抜け出す、一緒に寝てくれている真瑠璃ちゃんが起きないように。子供扱いは噴飯モノだけど面倒見の良い友達だから巻き込みたくない。わたしの鞄は起動中、今頃燐子のお部屋で寝ずの番をしている看護婦さんは居眠りの最中かな?
 寝巻を脱ぎ捨て、机の引き出し――予備のナノマテリアル塊――を少し回収、動きやすい黒のミニスカートとカットソーに再構築。御爺様も御婆様もこれ着ると『はしたない!』の大合唱だけど動き易いんだもの……今からタソス島まで休む暇なんてない。
 引き出しの中の蒔絵箱、蓋から少しはみ出してしまった【飾り紐】が目に入る。御父様の贈り物……後で知った陛下からの心尽くし……持っていこう。白帯を左の腿に巻きつけてその上から帯締めの様に飾る。いい色合い、きっととても高価(たか)い物なんだろう。これを身につける時、私は御父様と一緒にいられる。
 ドアを静かに閉めて燐子の部屋へ。うん、やっぱり寝てる。睡眠導入の音波を発していたから看護婦さんはぐっすりだ。クスリと笑うと燐子の枕元に近づく。弱弱しい喘ぎ声、わたしの妹・燐子。今助けるから!
 そっと抱え上げると同時に瞳の中に治療プラン、行動プランが浮かび上がる。今からあの(タソス)の治療室まで二時間、すでにお迎え(ユキカゼ)は半潜航状態で待機中。海岸までわたしの脚で三十分!
 足音を忍ばせて外へ、思ったより曇ってない! 今日は満月、真ん丸の耀(ひかり)が薄雲に(けむ)っているだけ、困った。裏口は兵隊さん達がいるからきっと見つかる。だから表の庭がら堂々と、子供が高さ三メートルの壁をひと飛びで飛び越えられる訳は無いからきっと手薄だ。……そう思ったのに巡回している兵隊さんと鉢合わせしかねない。庭の配置をダウンロード、月光の照射範囲から影を想定――それを繋ぎ合わせて――うん! これなら大丈夫。
 忍び足で切り揃えた灌木をゆっくり廻り蔭へ蔭へ。小さな手が私の首筋を引掻く。辛いよね? 苦しいよね?? 燐子……もう少しの辛抱だから。


 
「何をしているのです。橙子!」



 反射的に体が跳ねた!! でも、土壇場で私は間違った。『ぼすっ』、と後頭部に当たる着物の感触。あらん限りの力を脚に注いで逆向きに土を蹴る。引き剥がされないようにぎゅっと燐子を抱きしめる。――結果わたしは庭の砂地にしゃがみこんでしまった。
 振り向くと、月に照らされた御婆様がいた。



◆◇◆◇◆




 あきれた…………。本当にあの方の言うとおりに辿ってくるなんて。縁のある海軍士官(たかのさん)が所用で立ち寄った折、冗談混じりに彼が言った通りになった。少し厳し目に声を紡ぐ。良いことは良い、悪いことは悪い。少なくともこんな夜更けに妹を抱えて外出は悪いこと


 「御爺様の言葉を忘れましたか橙子? あなたが為した事、それが沢山の人々を不幸にし、そして今も不幸にしています。私は貴女の力を知りません。でも人でありながら人で無き力を振うはその責任全てを負う覚悟が出来てから。未熟者に燐子を救う事など出来はしません。」


 震えている。顔だけ此方を向いて涙目で睨んでいるけど、それがこの子の必至の矜持。本当に燐子は幸せね、こんな妹想いのお姉ちゃんがいるのだから。


 「あたし……あたし帰らない! 御母様から言われたもの、『幸せを与えてあげて』って。燐子全然幸せじゃない。だからわたしが護るの! 幸せにするの!!」

「バカッ!!!」


 嬉しかった、本当に嬉しかった。この子はたとえ血の繋がらなくとも乃木の子だ。だけどそれがあの人(おっと)の悪い点でもある。責任を全て背負いこんでしまう。人が抱えられる責任など僅かなもの。無理をして、無理をして……最後に自分を殺してしまう。
 夫はもう変えれないけれどこの子にはまだ機会がある。唯、当り前で幸せな一生を送る機会が。そしてそれがどんな力を得ても替えられないものだと言う事も。ふと目を落とすと橙子の腿に何か巻きついている。白帯、え? それを飾っているのは、


 「橙子、あなたに尋ねます。何故その飾り紐を持ち出すのですか? 陛下からの心尽くし。燐子を救うに関係ないでしょう。」

 「陛下だけじゃないもん! 御父様、それに御母様もだもん!! このトラキアには燐子を見ているのは私だけ、でも私が……私が人でなくなっても、グジュッ……人でなくなっても燐子の幸せを私が覚えていられる様に。これを燐子に遺すの!」


 ズキリ、と胸が痛む。とっくにこの子は覚悟を決めている。自分が人としての生活も幸せも望む価値が無いという事に。だからせめて妹だけも幸せにしたい。そんなちっぽけな願いをこの飾り紐に託して遺す気でいるのだと。
 そしてその飾り紐こそが橙子を人として繋ぎ止めておける鎖。やっとわかった、これは心尽くしではない。私、夫、息子、義娘、陛下までもがこの只の紐に想いを託し孫の暴れ出しかねない暴性(いし)を押さえつけている。……そう橙子が認識し強く強く願っているのだ。
 何時の頃だろう? 私の息子達が独り立ちたのは……橙子より遅かったのかもしれないし、私が気付かないほど速かったのかもしれない。飾り紐にそっと手を当てる。私の想いを注ぎ込むように。


 「良いですか橙子? 貴女の覚悟の程解りました。でもそれは貴女が御爺様と同じく血を吐きながら世界の先頭を駆け続けるという意味なのです。時に脚を緩めるのも良いでしょう、振り返る事も認めます。しかし! 立ち止まることは絶対に許しません。」


 橙子が頷く。月光に照らされ黒い服を銀色に染め上げて……聖なる子を抱く幼い聖母の様に。思わず抱きすくめる。口から迸ったのは先ほどの厳しい声と裏腹に、


 「バカな子! 本当にバカな子!! 生まれる前から苦しんで、こんな不条理な運命まで背負わされて苦しんで。この子には幸せなど与えないと言うなら私はそんな神等、呪ってやる!!!」


 涙が止まらない。何故孫は選ばれてしまったのだろう、こんな呪われた運命に。止め度めもなく流れる涙が橙子の顔に落ちる。橙子も必死に自分を抑えようと顔を引き締めてもその目じりから流れていく涙は止められない。
 駆動機(エンジン)音が響き渡る。全てを急かす音、ゆっくりと抱いていた手を離し橙子の頬を包むようにして涙を拭う。


 「お行きなさい。外で高野大尉が待っているわ。絶対に燐子を救いなさい! そして帰ってきたら……もう貴女を子供と思いません。一人前の女として扱います。そのつもりで。」


 硬い返事が届く。緊張感に満ちた声、覚悟を決めた声。小走りに塀に向かって走る姿が消えるまで私は孫の姿を見送っていた。




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 イスタンブールにてイタリア大使、スペイン大使を会談の後、儂は征京に戻った。どちらも欧州では数少ない米穀生産国、武器輸出の見返りにかなりの量の輸入を承諾させることが出来た。両国とも工業力は低く基本的には農業国だ。工業国であるドイツやイギリスに輸出しても植民地多数を持つ二国の事、安値で買い叩かれるのは目に見えている。特に欧米人にとって需要が少ない【コメ】は尚更だ。最後は鍔迫り合いの果てに『どちらに旨い米料理があるか?』で両国の伝統料理を食わされる羽目になったのは御愛嬌と言うべきものだろう。
 児玉閣下も草葉の陰で喜んでいるに違いない。最後の最後まで遠征した将兵、移民した民草に米の飯を腹一杯食わせてやれと遺言して逝ったのだから。そして来年には兵器の慣熟と試験運用の為、両国から顧問団が来る。貧乏暇無し……まだまだ楽はできんな。
 家に帰ると玄関が開け放しにされており、隣の板の間で燐子が独り遊びをしている。快癒したかとホッと息を吐くのも束の間、燐子は儂を目にし舌足らず声で家の奥へ『じぃじ! じーじィー!!』と声を張り上げる。近寄り、抱き上げると何処で覚えたのか両手を使って肩叩きの真似事を始めた。御褒美に少し揺すってやると大喜びでしがみつく。
 奥から静子と橙子が出てくる。橙子は静子の着物の裾にしがみつき不安そうな顔、その頭を撫でている静子の顔から儂は何が起こったか瞬事に察知した。橙子に燐子を任せ奥に行かせると、居間で着替えを手伝わせながら静子に問うてみる。


 「もうあの子は立派な大人です。それだけの覚悟を決めています。」

 「中身は甘ったれた餓鬼に過ぎんな。正直な話、出来うるだけ安穏で幸せな時を過ごさせてやりたかったのだが。」

 「女は急に大人になるものですよ。特に誰にせよ執着(こい)を覚えた娘はそんなものです。」


溜息を一拍(ひとつ)吐く。どうしてこう橙子は……と考えたところで静子が先回りして言葉を繋げた。


 「良いではないですか。あの子の重み、家族で……いえ、この国の皆で少しずつ分け合いましょう。皆に支えられている、そう感じている事こそがあの子が今世を生きる軸となるのですから。」


 部屋着のままじっと姿見を見つめる。いつもの老人の顔、怪異な左頬を右掌で掴み思わず言葉が漏れ出る。


 「何故、橙子は儂に……。」   「乃木希典の孫ですもの。良くも悪くも。」


 言おうとした言葉を返され言葉に詰まる。燐子の容体の説明の前に、感謝の言葉の前に、ひとつ拳骨を落とさねばな。そう考えて儂と妻は奥の間に向かった。





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 「さてフィッシャー提督、首尾の方はどうだったかね?」

 バッキンガム宮殿の一室、英国諜報機関によって徹底した洗浄が行われた秘密の部屋にボクを含め三十人余りの人間がいる。閣僚級の人物、海軍の重鎮、経済界の影の指導者、王族の末席……決して議会政治という表舞台に立たず、隠然たる影響力のみを振るう者達。本来こういった場所に集まることなく各自が各自の愛国心をもって大英帝国に貢献する者達がいる。
 ボカァ新参者だ、この会にどれだけの人数がいてどんな人物がいるのかすら解らない。それでもこの議事を進行する大役を仰せつかった。…………単に皆、面倒なだけかも知れんが。
 元第一海軍卿(フィッシャー)がゴトリと金属の塊を置く。初瀬の残骸、あり得ぬ力によって根本から変えられた我々(ヒト)が作り出した筈のモノ。その断面を見せて彼が発言する。


 「想像以上です。この秘密を解き明かしただけで大英帝国の栄華は四半世紀は伸びる。この根源となった物資……ナノマテリアルを扱えれば大英帝国と限らず人類全体が信じらねない高みへ昇ることが出来ます!」

 「そして、その物質は世界の海洋に広く分布しています。概算で一億トン、単純計算であの戦艦6500隻分。」


その筋では有名な海洋学者――彼はこの会の面々の要請で世界に散らばる驚異の物質の量を調べていた――である白い顎鬚を蓄えた老人が答えると、参加者はそれぞれ顔を見合わせる。ここにいる人間は陸軍の新米士官が覗いた報告書(ハツセ)を知っている。実質その戦闘力が近代要塞を駐留兵力、駐留艦隊ごと消し飛ばすだけの力を持つことも知っている。その証拠がロシア港湾都市の惨状だ。それが6500隻分!!
 古めかしいバロック朝の貴族服を纏った男が溜息と共に口を開く。


 「話になりませんな。正直王立海軍(ロイヤルネイヴィー)を解体し、彼女に全て任せてしまえば150年間は我が国(コモンウェルス)の安寧は護られる。そちらの方がより現実的だ。」

 「御言葉ですがそれは得策とは思えません。政府の統制利いての軍隊です。ダグラス少尉、いえ現在は大尉だそうですが満州の鉄嶺にて起こった事件から察するに……!?」


 彼に視線が集まる。フィッシャーも傲慢を絵に描いた様な態度をとれる男だが此処にいる連中はそもそも桁が違う。視線だけで『お前に議論する権利は無い、黙れ。』と態度で示され押し黙らざるを得なかった。
 現状再確認のためには仕方がないなと思いつつボクが残りを繋げる。


 「少なくとも彼女が日本帝国軍は(もと)より、世界の誰が命じても勝手気儘に動き回るのは明白です。しかし、彼女は経験不足だ! 今まで彼女が行ってきたであろう行動は眩いばかりの成功か、目も当てられない失敗だけです。つまり、力があってもその加減が出来ない。ならば先達たるボク等が導くべきでしょう? 統治のなんたるかをね。」

「では、何故君は彼女を我が国に導かなかったのかね?」


禿頭の初老の男が尋ねる。先の財務卿、日露戦争にてユダヤ財閥に日本国債の優先的買付を(そそのか)した人物だ。当然の反応、しかしボクは最初にその考えを弄び……却下した。


 「簡単です、手に負えないからです。彼女をヒトと考えないで頂きましょう。我々の思考や論理が通用するとは限りません。そして一度の失敗が紳士諸君の破滅に繋がりかねないのだと。」

 「滅ぼすのは論外、操れるのかどうかすら不明……故に手元に置かぬ。その度胸は結構だが、あの植民地人共はそうは考えんぞ! 勢いだけで世界を破滅させられては堪らん。」


 鋭い不機嫌を露わにした元海軍提督に対してやんわりと答える事にする。その前の断言をことさら強調して。


 
第三大悪魔(リヴァイアサン)。」



 聴衆の沈黙が流れるのを待ち、言葉を続ける。


「しっくり来ると思いませぬか? 海洋を支配し、最も冷酷凶暴で、如何なる武器も祈りも通用せず、女性に取り憑く。」


 最早聴衆の感情は沈黙ではなく絶句だろう? 今の揶揄が彼らはどのような想像をさせたのか。そう、真実を垣間見た数人ですら自らの眼を疑った程。十かそこらの幼い少女が世界の支配者(タイランツ)だという悪夢のような現実。元海軍提督はそこまで知る筈も無いが、彼女が自らの想像を超えているという事は解ったようだ。また誰かの不機嫌な声が響く、


「ふん、だから統治か。その彼女とやらに世界を投げ与えて我等に利でもあるのか?」


 ここら辺りが我が王室海軍とあの黄色い帝国の海軍の差だ、微苦笑する。勝てば良いというものではない。ツシマの勝利は確かに偉大であったが、彼らはそれを戦争終結のキーワードにしか使えなかった。彼らの持つ戦艦や装甲巡洋艦が外国製であることを国民に喧伝し『自分達だけでこの戦は勝てなかった。』それを国民に納得させれば我らを警戒させることも無かったのに。
 私の周りを囲む皆の戸惑った顔に気づく。微苦笑の筈が笑みが思わず顔に出てしまったようだ。――まぁ彼女がいる限り不可能だろうから、あの国の政府は開き直った……と考えるのもアリだろうな。
 さてと、彼女とジェネラルに対して仕込みを行うのにどんな話題を持ち出すべきか? と考えた途端、隅の椅子で興味深そうに会話を眺めていた男が発言した。


 「なーるほどね。この世界は巨大なる宮廷、彼女こそその主たる女王、各国政府は直臣であり我等は彼女の姿すら拝めず、また彼女も我々下々を顧みぬ陪臣と言った所ですか。」


 貴族の銅鑼息子的な言い方だが、極めて明晰な思考を持つ者の揶揄。いきなり話の腰を折られてしまい思わず愚痴をこぼしてしまう。


 「アーチャー卿、単刀直入に言わないで頂きたい。なんなら議事進行役を譲って差し上げても構わないのだが?」

 「謹んでご遠慮申し上げる。」   


 肩を竦めて手を開き、『それは勘弁』のポーズと御度戯(おどけ)た言葉が返ってきた。ただ表情は鋭いまま、ボクに対しても此処にいる全員に対してもこれ以上の不毛な前置きを認めないという仕草(ジェスチャー)
 締めすぎた蝶ネクタイを指で解しながら言葉を推敲する。そして、


 「そろそろ頃合いでしょう。彼女の力を測るときが来たとボクは考えます。まずは各国の援助を減らす。それに対して彼女がどう出るか? ジェネラル・ノギの反応に注視しましょう。」


 隣にいた陸軍の予備役将官が不満と諦観を露わにして発言する。


 「また技術供与で来られても困りますな……恥ずかしながら世界一の科学技術を持つ筈の祖国が彼女が与えたものすら呑み込めぬ有様を見ていると泣きたくなりますよ。あのボロネギ野郎め! 海軍に戦車開発を投げ与えた挙句、何が『議論するつもりはない。それが僕の思想』だ!!」

 「それなら彼女の価値も知れたものです。」


 薄笑いを浮かべながらボクは答える。彼・ヘイグ陸軍中将(ボロネギやろう)ならそう言うだろうな。だからこそ機械技術に慣れた海軍が新兵器を独占できる。ボクは海軍に恩を売り、支持を取り付け易くなるわけだ。しかし、陸上戦艦【ランドバトルシップ】とはネーミングセンスを疑いたくなる。設計図に書いてあった水槽【タンク】の方がまだマシだ。


「では細部を詰めましょう。」


 私の声と共に幾人かが発言する。英国枢密院、議会の外にあり議会以上の権力を振るえる存在が此処にある。





◆◇◆◇◆






 吾輩は東洋人種である。名前は日本人。生まれたのは欧州から考えるに最果ての島、訳が解らぬ戦争の御蔭で見たこともない地にやってきた。で、在るからに欧州人たる人間を眺める傍観者だった筈……だったのだが?

 吾輩は当事者どころか首謀者になる謂われ等無いぞ!

 首に掛けられた鈴を恨めし気に見る。霧で出来た、涼やかに音を出す鈴を……恨めし気に見る。






 あとがきと言う名の作品ツッコミ対談





 「どもっ!とーこです。イタタタタ……まだ後頭部が痛いし腫れてるしー(泣)」


 そりゃ蹴倒す段階でバックステップして倒れる演技内容だけどまさか後頭部を敷居にぶつけるとはねぇ。ホント鐘の音だったしカット入るし(笑)


 うるさいうるさい! ちょっとまじめに演技すれば茶化すんだから……いよいよとーこの主人公パート開始!! って、この話だけかい!!!」


そんなに長くやるわけないだろ。この作品の基本スタンス忘れた? あくまで橙子は話の中核であっても一人称の存在じゃない。皆の目から見た橙子という三人称なんだよ。だから苦労するのさ。


 「苦労? ……なんのこっちゃ?」


 ええいこのアホの子め(笑)この時点で何故最終的にじーちゃまを出して止めなかったか解らんだろとーこ! じーちゃまだと男視点と女視点の食い違いが破局を呼び起こしかねない。じーちゃまの視点『この国引き換えても心棒を叩きこむ』ととーこやばーちゃまの視点『命はかけがえのないもの』は真逆の論理なのよ。だからばーちゃまおかんむりにじーちゃまが『死ぬはずがない』と苦しい言い訳をせざるを得なかったのさ。


 「うわ……冗談程度だと思ったけど本気で朝ドラ考証してたのか。」


 当然だろ、モノ書きとしては苦手分野でもちゃんと資料集めて自分の考えで書かないとね。……その割に他作品のネタ振ってるあたり作者もこんな言葉言えんわな(汗)


 「なーに自爆してんだか(笑)じゃツッコミいこっか? そのいち、うわぁ! じーちゃま本気で歴史改変始めてるし。しかもオスマントルコに直接介入?」


 というよりすでに起こった改変を暴走させないようブレーキ掛けているだけだけどね。すでにオスマントルコを【書き換える】作業は始まっている。某国の文革をたたき台にしてそれに英国の植民地統治方法と日本の植民地開発方法をミックスした形。昭和初期の『大日本帝国』を近東で再現しようとしているのがじーちゃまの狙いかな?


 「あまり参考としては宜しくないような?? というか毛の悪行そのものだし(呆)」


 でもさ国家総動員体制での挙国一致政体をでっちあげないとオスマントルコは遅かれ早かれ分裂滅亡必至だからね。史実の某国が失敗したのは己の失政を糊塗するためだけにこれをやった事、でもオスマントルコでは初めからそうしないと国そのものが統制できなくて自壊しちゃうのよ。


 「エグイなぁ……それで金がかかるし何かと煩い聖地を切り捨てかぁ。イスラムからすれば裏切りにも等しいわよ。」


 大丈夫、列強の中東進出はこれからが本番。イスラムの退勢はまだまだ続き酷いものになる。トルコは本土アナトリアだけではなくイラク・シリアだけでも列強の市場としてでもトルコ領として残してもらえただけ御の字だよ。このころイラク北部やシリア東部の油田はまだ可能性でしかない。エルサレムを捨てたのはこのころ最盛期のユダヤ資本に媚を売ることも含めてだ。しかもこれでスエズ運河の安全性は確保された。ドイツが出張ってきたとしても肝心のトルコはスエズにちょっかい出せる位置を英仏に売り渡してしまったから3B政策の目標のひとつ【スエズの封鎖または無力化】は御破算になったわけ。これでトルコに対する列強の警戒感は大きく下がるね。『近東の大国』程度なら世界情勢にコミットできないからな。


 「難しいなぁ……でも今後トルコ“共和国”がシリアとイラクを飲み込んでいると考えると湾岸戦争もシリア内戦もまるで変わっているかも。」


 だろうね。某フセイン氏や某アサド氏はイスラムから中東の解放者扱いかもしれないけどおそらく鬱陶しい欧州からアメリカに乗り換えたトルコがテロリスト制圧の名目で大弾圧やっているかもしれないね。


 「え…………んな無茶苦茶な(大汗)」


 そもそもこの世界ではもう通常の世界大戦が起こるかすら疑問なのよ。つまり列強の植民地支配が長く続き、延々と世界は収奪国と被収奪国で色分けされた世界になる可能性が高い。


 「もしかして……この世界史実より悪化してない??」


 ある意味ね。でもそのおかげでアルペジオとしての下地が完成していくから皮肉なもんだよ。今の時代から20年で大海戦が出来るまで世界中の海軍を育成するのは不可能だしね。それを可能とするように歴史を加速させていく。救える者を救わず、切り捨てられる物を切り捨て、技術を暴走させて初めてあの時代と同じ地平に立てる事を作者として考え、拙作を構築している。


 「また話が製作概念まで進んでるし……この話は切っとこう。じゃツッコミその2
アーチャー卿ってまさかアルペジオでチラ出しただけのあのアーチャー卿?」


 そうだよ。一応英国出でもう一人チャーチル閣下の相方が必要として史実からキャラ探していたんだけど必要が無かった。なにしろ転位キャラが作れる事が解ったからねこの点については原作者様に感謝感謝だ。


 「でもこの言動とキャラ構築(資料パラパラ)こっちじゃどう見ても男じゃない?」


 そう、彼女(彼)の場合キャラネームすらまだ明らかでないからね。ならばと思って思い切った手段に出たわけ。


 「つまり……TS処理と原作の雰囲気に合わせたキャラの独自構築、もうオリキャラと変わらないじゃん!」


 その点は致し方が無い。他に史実から何人か候補はあったけど彼が一番雰囲気に合ったのよ。御蔭で英国がまんま悪の帝国になってしまった(爆笑)


 「MI-6辺りから銃弾飛んできても知らないわよ(呆)さてツッコミその3というか今章最大のツッコミ!!!」


 また大げさな。いったいなんだ?


 「ナンダもヘチマもあるかー! 陛下の御下賜品をこう使うかー!! 植村大先生すら設定上のワンショットしか書いてない三島塔子の【太腿リボン!!!】原作設定でもパパと結婚できますようにという小学生児の勘違い願掛けだったのにあたしまだパパの事引きずっているわけかぃ。ほんとエディプスコンプレックスだし。


 あーその件か。本来お遊びのつもりだったけど橙子と乃木という家族を深く掘り下げるにここまで役立つとは思わなかった。ただとーこが言うエディプスコンプレックスの対象は間違いだね。初めの“橙子”は「乃木パパに執着し乃木ママを反骨対象にする」と言った感じだけどこれがパパの死によって「乃木パパを憧憬し乃木じーちゃまに執着する」という意味にすり替わってきているという意味なのよ。だからこそ妹の燐子にあれほど拘るわけ。じーちゃまがこうでも乃木パパならきっとこうしただろうをちゃんと考えているのよ。数年前の暴発幼女からすれば随分と成長したもんだね。


 「えへへ〜〜すごいでしょ!」


 惚気るな!!(笑)でもこうやって橙子を成長させていかないと4章では大変なことになる。また「気に入らないからぶっ潰す」をやられたら今度こそ世界の破滅だ。彼女に対するストッパーを大量に組んでそのうえで橙子にそれを意識させてないと物語が破綻しかねないのよ。作者自身として彼女の歴史改変能力はゼロどころかマイナスと見ているくらいだからね。


 「ひどーぃ! そこまで言う訳?」


 今度は非難かよ(笑)そこまでしなきゃならない。橙子もコアユニットも正しい選択が常に出来るわけじゃない。全ての登場人物が苦しみ悩み選択することでこの物語は動いていくのさ。さて最後は自己ツッコミするけど英国枢密院は捏造だから。


 「まてやコラ! 本気であると信じた読者になんて失礼な!!」


 でも似たような存在はあったとフェリは考えている。どう見てもこのころの英国議会に大英帝国全てを管制する力は無い。議会と内閣そして植民地政府機関を繋げる橋渡し役がいたはずなんだ。それも表向きにはできない諮問機関としてね。そんな感じで作ってみた。


 「で……わたしが人外扱いか〜。喜ぶべきなのか怒るべきなのか……じゃわたしからも最後のツッコミ! とうとう出たわね。今度は夏目大先生の新聞掲載作品ですか!! よくもまぁ名前負け確定な名作を。」


 実はこれについては二章より先に決定したくらい。吾輩を日本人に書き換え、明治の人々でなく欧州の人々を眺めると言う事をこの第三章に構築したかったからね。


 「でも何故、首謀者扱い?」


 それは台本を読んでくれ。仮想戦記小説や仮想歴史小説関連で全世界規模のこれほどの無茶をやった事例は無い。事実この通りに動くかどうかも解らないし全世界で同時多発核テロやるような事になったからな。


 「おぃ……」


 と言う訳で作者としては逃げる。後宜しく(脱兎)


 「え? あ?? お! ……わたしが説明ってか出来るわけないじゃん作者まてー!!!」


 (轟音と悲鳴が交錯)



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