静かに次を待つ。静子とは長らく話をした。『あなたらしい、ですから最後まであなたらしく。』そう励ましてくれた。
 先程話をした楓君には何かと頼み事の多い結末になってしまった。トラキアの事、バルカン半島の事、御国の事……橙子の事まで、楓君から見れば『今までよくも世間が公表しなかったものですな。』と呆れていたがそれほどまでに荒唐無稽かつ重大な事であるからこそ誰も信じたくはない。其の意識が強かったのだろう。
 浦上君には橙洋の事、不出来な愚息と溜息をつきたいが、彼は大笑して『親が不出来不出来言っている間にいつの間にか親が追い越されている物ですわ。橙洋君にとって閣下が絶壁のような存在でも愚直に乗り越えるでは無く、迂回し別の道を歩きはじめました。閣下の行った戦車群機動戦法と同じ事ですな!』彼も二児の親、家を放棄し軍務にばかり精を注いだ儂より人の親らしいかもしれぬ。
 虫が鳴く声が聞こえる。今日は快晴と言うことだから良き月夜であろう。月日を鑑みれば同じ頃、孫が守るべき者を得た日、駆け抜けてきた維新の世を、日清日露そしてバルカンの戦野を、それを想い(めし)いた両目を開く。


 「御爺様。」

 「来たか、橙子。」


 儂に残された数値、視覚野に直接投影された命の時間、その全てを持って最後の時を過ごす。





◆◇◆◇◆






 小さな映写機による映画会が終わると。電灯がともり柔らかな光の中、人々が出て行く。彼等は今から大変な騒ぎだろう? ボカァ予測はしていたがこれほどまでに派手になるとは予想もできなかった。大半の人々が出て行くとボクは隣でまだ呆けている新聞記者に話しかける。


 「どうですかかな? 真実を知った気分は。」

 「これを……これをギリシャ政府は隠蔽しようとした。そういう事ですか? 信じられません。こんな物、隠しとおせる訳も無い。」


 映画会が始まる前で持ち前の調子で機関銃の様に言葉を並べていた彼が呻いている。デイリーメールに彼がいるとは思わなかった。未来の履歴は知っている。彼の思想の始まりの体現者であり、そしてそれに従った主たる三国で最も惨めな最期を遂げるであろう男。」


 「ベニート・ムソリーニ君、これが現実と仮定して講和条約をどう行うべきか私論を語らせてもらえないかな?」


 報道員としての良識とそれに対する影響の大きさを両天秤にかけているのだろう? そしてそれを真実とした場合の影響すら。沈黙が流れた後、彼は相当に硬い声で注意深く喋り出す。この程度で狼狽するなら違う世界のイタリア国民は初めから愚かな指導者を選んでしまったと言う事だ。


 「これほどの事実を隠蔽しようとした。これだけで列強各国の怒りを買うには十分ですな。で……時にトラキア及びインペラートレ・ジャポネの両政府はどうなのですか。双方が隠し通すならば同罪と考えますが? ウィンストン・レナード・スペンサー・チャーチル卿。」


 ニヤリと笑って答えを返す。


 「それについては報告を受けている。インペリアル・ジャパンの政府はそれどころではないし、トラキアのゲネラル・ノギもまた然り。だが、其の報告がこの映像だ。」


 しばし彼はボクを凝視して言い放つ。


 「卿、それは東洋の新帝国、その上に鎮座する何かがいると言う暗喩ですかな?」

 「さて、どうだろう? これ程の海魔を膝下に収める国家ならホーフブルグの講和は無かったし、世界は随分と詰まらない物と思わないかね??」


 チリチリとした視線が交錯する。成程、調子のよい男だけでは無く新聞記者特有の悪辣さを併せ持つ。政治家としては及第点には当たるか。彼は一度眼を閉じると掌を叩いた。丁度その東洋の帝国の教会に当たる場所で祈りをささげる前の様に。やっと喉の閊えが下りたのだろう? 彼らしい口調に戻る。


 「これは失礼! どうも我輩は浪漫主義が好きでしてな。ちょっとした事にも真実を探したがる癖があるのですよ。…………しかし、これをギリシャ政府が隠蔽したとなれば差はつけるべきですな。ブルガリアは負けた、セルビアは負けなかった、そしてギリシャは何もしなかった。列強の論理としては何もしない国に正義なぞ存在しない。特に列強の利害にコレは直接関与する。」


 肩を竦めて結論を述べた。彼としてはギリシャ王国等己に関係ないと言う考えなのだろう。


 狂気と裏切り(イエロー)の旗を掲げた愚か者には相応の報いをくれてやるべきです。欧州の正義の為にね。」

 欧州と言う言葉に眉がピクリと跳ねる。我々が調整した欧州内乱劇、それが民衆と国家の血を捧げて行う欧州連盟の為の茶番劇である事に気づいているのか!? ……それは無いだろうな。偶然の一致、私の過大評価と言うものだろう? 控室に居る“我等が御上”の事も含めて彼の言葉を素早く反芻する。
 うん、そうしよう。ただし、ボクの考えているのは全くの逆だ。彼女の力、それをまたしても扱いきれなかった彼の国には相応のペナルティを与えるべきだ。150年後、私の寿命を持ってしても遠い世界だが国家としての寿命と考えるならば以外に近い。150年後の祖国を生きながらえさせる為にも彼女を最大限利用すべきなのにトラキア政府は彼等を相争わせるという愚行を犯した。それで我等列強のみならず人類が得られた物は膨大すぎる位だがそれでもなお足りない。彼の国の人々が言う『下駄を履かせてもなお足りない』のが今の世界だ。

 我等は島国だ、海洋交通路を失う事は祖国を失うと同義


 「君の言葉は心に留めておくことにしよう。願わくば君が政治家の道を志さない様願うものだ。」


 彼には緘口令が敷かれる。当分諜報6課(MI-6)の監視の対象となるだろう――どうせデイリー本社の嘱託職員だ。大英帝国の中で己の祖国の記事を集めることに専念するだろう。彼が退出した後、変わって入ってきたのは私の気の置けない友人とそれより数段低い背丈しか持たないモノが入室した。ボカァ恭しく一礼し『上奏』する。


 「これで宜しいのですかな? まさか上に居わすは二人とは思いませんでした。」


 そのモノ――いや外見は少女と思わしき人形――それが答える。そう、彼女は人間では無い。それを彼女は私達の目の前で実現して見せた。今の映画、画像を己の記憶野より抽出し映写機に直接焼き付けたのだ。


 「二人では無く、二つの組織と言うべきですね。私と称されるコレは単なる端末に過ぎません。我等には未だ個と言う概念すら希薄なのですから。」

 「…………とまぁ、こんな調子なんですよ未来の宰相閣下。兎に角、意思疎通に致命的な齟齬を来しかねない。トラキアで使われている万国対応単語帳が欲しい位です。」


 無礼なと! ジロリとその気の置けない友人を睨む。勿論冗談の類、私が彼の相手をしているときにも着々と彼女への理解を推し進めていたのだろう。思えば貧乏籤を引いたものだ。御度戯るように肩を竦め友人であるアーチャー卿が彼女に質問した。


 「して単純に疑問に思ったのは陛下の、いえこの場合端末と呼称して居られる事から殿下と呼ぶことにいたしましょう。コホン、殿下の瞳は榛では無いのですな。」


 成程、此方も思い当たる。二つの組織と言った事から端末もまた別の物を用意したのだろう。此方は薄い水色、何処までも広がる紺碧の空の色。彼女は事も無に頷いて返答を返す。


 「当然です。向こう側はオリジナルと其の複製に過ぎないのですから。此方側は向こうの知識から良い物を選ばせて頂きました。もし1945年5月の大西洋上で向こう側の私が誤起動しなければ『この私』は存在しなかったとも言えます。」


 彼女はそっと微笑む。


 「人類側呼称『霧の艦隊』というカタチを『私達』に与えた存在、それが私の名前となります。」

 「「グレーテル・ヘキセ・アンドヴァリ。この世界においてもオリジナルを探しておくべきですかな?」」

 「御随意に……少し遅れたようですね。」

 私達の唱和した言葉とそれへの感情無き返答と共にこの屋敷、それも海岸沿いの海面が盛り上がる。波が破れ其の巨体が現れる。我々の弩級戦艦を一回り以上大きくした姿、ドイツ的な艦橋と背負い式に搭載された連装主砲4つ、恐らくその艦上には佇む殿下を此処まで送ってきた双子の姉妹をいるのだろう? 勿論人では無い。彼のトラキアの少女を模造した存在、それを彼等の艦艇制御人格として洗練させ、人類評定が開発した量子知性・メンタルモデル
 覚悟を決める。彼方の世界の霧はジェネラル・ノギを選び、此方の世界の霧はボク等を選んだ。其の結末は? 笑みを浮かべ慇懃に一礼する。

 「では皆々様、HMSビスマルクに搭乗頂き我等の基地、アイスランドに向かうとしましょうかな?」




◆◇◆◇◆






 「これで良かったのですか?」

 「良くは無いな。だが外交とはこういった物だ。妥協の果てに全員が不満を持ちつつも最低限の利益を得る。6分の勝ちで良しとせよ、だ。」


 結局バルカン大戦と言うバルカン半島の主要国を巻き込んだ戦はソフィア講和会議で終幕を見る事となった。ただ困った事に当事者以外の国、それも列強や列強級の大国も我も我もと参加を求めてきたのだ。その原因を探った儂ですら唖然とするしかない。橙子の主でない此方側の霧『人類評定』がとんだ爆弾を投げ込んできたのだ。

 エーゲ海での霧対霧の激突、その実況映像

 そいつを各国政府に送り付けたのだ。これは最早言い逃れは出来ぬと覚悟を決めた儂だが、それを話してきた列強の外交官から逆に不思議な顔をされるばかり。御国の、それもトラキアの外交証書と正規の外交郵便で送られてきたというのだ。そしてそれは其のまま『その事実を公表しなかった』ギリシャ政府と海軍に向けられる。妄想、未確認情報とのギリシャ政府の反論――と言うより言い訳――に列強の外交官は納得しない。

 片方が御国の初瀬に酷似していて、片方が国籍不明艦となればギリシャ海軍に決まっておろう? その直前まで大海戦をやらかし、負けそうになるや否や“禁じ手”を使って勝敗を覆そうとした。

 そう取られても文句が言えぬ。四面楚歌のギリシャは列強中の国内査察かトラキアへの賠償かを突き付けられたのだ。列強中の査察と言う事は国家解体、亡国確定。ギリシャはトラキアがトラキアたるべき理由になる全てを吐きだすことになったのだ。

 ギリシャ王国は歴史上遡ってのトラキア領有権を放棄し、その証明としてアリアモン河以北をトラキアに割譲する。――当然かのアレクサンドロス三世陛下の都ヴァルナも含めて。即ち大日本帝国欧州領トラキアを真の古代トラキア、アレクサンドロス大王の父・フィリップス三世の支配圏へと増大させる事を認めさせられたのだ。

 仰天したのは儂等トラキア政府。大日本帝国欧州領たる本土部分が旧東トラキアに加え南トラキア全土――ギリシャ領トラキアも含めて――に増えてしまう。統治の負担は今までの倍以上! 今までのトルコ、ブルガリア、セルビア、ギリシャに加えてモンテネグロとアルバニアにまで国境線が広がり収拾がつかない。さらに未だトラキア本土だけでも日本人は60万人、これは総人口90万人の6割、これが今回拡大する新領土を加えると4割以下まで下がってしまう。これではトラキアが日本人の移民国ですら無くなってしまう。
 つまるところマケドニア三総督領の内、テッサロニキ周辺の南トラキアを欧州領が防衛線として実効支配していたことが仇となったのだ。『オスマン総督府に統治者足る資格なし、現状の勢力圏を大日本帝国欧州領として認識せざるを得ない。』欧州列強の論法はこうだった。
 それでは名分が通らぬとトルコ政府に泣きついては見たが、彼等もまたマケドニアを投げ捨てるように賛成票を投じ南トラキアを放棄してしまった。『役に立たぬ飛び地よりも防波堤としての緩衝国を』御国は、トラキア総督府は見事なまでにトルコ政府からも切り捨てられたのだ。文句? 言えるものではない。

『美名の名の元、負担を強制される外交的失策を犯した。その是非は兎も角、責任は当事者が被るべき。』――それが外交と言うものだ。

 初めはカンカンになっていた孫だが今では必至になって勉学の身だ。気にいらないから殴り倒すでは論外、言葉を武器に民に楽をさせよ。それが外交の目的であるのだから。


 「橙子はどうしてる。」 

 尋ねると孫では無い『橙子』が答える。最早見分けがつかぬ程二人は其の意思・思考・感情まで酷似させているのだ。


 「ずっと閉じこもったままです。御爺様からあの時、最後の言葉を貰ったからと頑として外に出てきませんわ。」


 思わず顔が綻ぶ。本当に悪い所まで……。これでは墓に入った後、静子も楓君も浦上君も毎日のように愚痴りに来るだろう。下手をすれば墓から叩き出されかねぬな。


 「儂でもそうするだろうて、本当に血は繋がらなくても良くも似るものだ。」


 袖で顔を隠し彼女が笑う。彼女も随分と人間らしくなった。もはや己の肉体を持つ事無く孫の補助人格に過ぎぬとは言え10年前那須であった時とは雲泥の差だ。消滅しないのは“橙子”がなりふり構わず共存の道を選んでいるのかもしれない。本来は分担すべき事柄をあえて重複させているのだから。


 「頑固に日本人だけで国を作るな。列強は利害を別にしてもそう諭したいのだろうよ。御国が長く鎖国によって他国と交わらぬ事に慣れてきた。それが亜米利加合衆国に国開かれ、国民一丸で富国強兵に邁進できた理由なのだろうが、それで目的果たした時驕りが残った。日の本、何をも為し得るとな。」

 「それは第二次世界大戦の敗北原因だと?」

 「それでも変わらなかったな。」   思わず盲いた瞳を床に向ける。


 列強は講和会議に介入し、三国同盟は既に瓦解したものとみなした。そして、バルカン三国の全てに差をつけた個別講和条約を結ぶよう働きかけたのだ。ブルガリアは無条件降伏、故に講和に改訂するなら双方が納得いく物とせよ。セルビアは戦術的辛勝、現行の国境線を軸に講和を行え。ギリシャは国際秩序を乱した。列強の裁定を必要とすると。つまるところトラキアは存在理由と名誉を贖う為に富を吐き出させたのだ。そしてその富が注がれるブルガリアと割譲したギリシャ領土を列強は己の市場に変える。当然、其の幾割かはトラキアに帰せられるがそれすら貯め込む事を許さない為にセルビアという当面の敵を用意し維持させる。


 「結局、御国は敗北しても本質は変わらなかった。亜米利加軍を番犬に大人しく気前の良い飼い主として存在し続けたに過ぎぬ。そしてそのまま両極大融解で其の亜米利加から駐留軍ごと見捨てられたいうことだ。」

 「そして私達は目覚めた。1945年5月に歪められた命令のままに。」


 シナノも此処まで来た。今までの命令から切り離されたことによって最後の命令たる失われた勅命(アドミラリティ・コード)に疑問を持ち、検討し、それを人に命ぜられた贋物と否定できたのだ。すでにこの世界での対策も練っておろう。どうなるかは儂如きでは想像の埒外だが…………


 「故大海戦の敗北など結果でしかなし。…………失われた勅命、それをそなた等が愚直に遂行した事が向こう側の人類滅亡になったと言えるからな。今度は変わるかな?」

 「まだ解りませんわ。全てはこれから、私達は種を播いたに過ぎないのですから。」


 大したものだ。御国の小村君を初め今外務省の下っ端としてあくせく働く吉田君や大使として駆け回る東郷君でも出来ぬ所業だろう。いや出来なくて当然なのだ。外交交渉とは個人で無く組織の戦い。個と個の話し合いで戦が止まれば苦労はせぬ。御国と違い外交こそ真の戦と認識する欧米列強だからこそ此処までの事を行うのだろう。
 そして、この講和条約の後にトラキアはバルカンの一国として認められるようになる。植民地の名前を叫んでも欧州諸国は胡乱な目を向けるだけだろう。オーストリア=ハンガリー大使が『東京から征京へ遷都すべきですな。それで大日本帝国も名実ともに欧州列強です。』これが欧州諸国の当然の反応なのだ。
 いくつか孫に言伝を頼みいくつかの孫の頼みを聞き届ける。勿論了承済みとして周囲は動いているから遺言の様なものだ。時間も残り少ない。いや贅沢を言っても始まらぬ。戦終わって二年、二年もの間、シナノは儂を生かし続けた。儂の体内にコアユニットとナノマテリアルを打ち込み徹底して体調管理を行った程なのだ。戦の末を見届ける事とそれを実装する事、シナノから連絡を送り付けられたが体の良い御役目御免、退職手当と言う物だったかもしれぬ。
 頭を上げる。電子情報では無く盲いた眼から辛うじて明るさが増すことが感じられた。貧しい長州藩徒としての誕生、明治維新、忘れもせぬ西南の戦、栄光の日清の戦、全てを変えた日露の戦、そしてあり得ぬ運命たるトラキア総督とバルカン大戦…………戦と共にあった人生であったな。あぁ、それでも…………


 「孫に、橙子にこう伝えてくれ……なかなか良き生であった、と。」


 眼に写る大山さん児玉さんや奥。共に征き、先に逝った兵達。そして陛下の後ろ姿。背嚢を背に、軍旗を担ぎ、儂は駆け出す。




―――――――――――――――――――――――――――――






 廊下をただ歩く。“わたし”がこの家に居るべき理由はもうない。コアユニットは今後の私の指針――というか予定帳を組んでくれてる。考える事は一杯、やることも一杯……角を曲がると弟が欄干に腰掛けていた。月下の下、声を掛けてくる。


 「姉貴、爺様は…………」

 「逝きました。いいえ征くと言った方が正しいかもしれません。御爺様は陛下の崩御にも立ち会わず毅然として己の立場を貫いたのですから大急ぎで発ったのでしょう。」


 あの叛乱から数カ月後、睦仁天皇が崩御した。そう戦争の最中。その渦中でも御爺様は一顧だにせずバルカン大戦を戦いぬいた。真の忠節というものは何であるかを知っていたから。殉死を逃げと考え、全てをやり抜き倒れる事を望んだ。苦しみも喜びも両腕一杯に抱えて三途の河で陛下にご報告しているんだと思う。
 弟にはユニットを通して相応の事を話した。――全てでは無い、混乱するだけだろうから――弟も疑念は確信に変わり納得していたようだった。俺はこの国を守る。霧の力を持って成り立ってしまった虚構の国、それが今日本人の国として立ち上がろうとしている。そこに私は必要ない。


 「橙洋、これからこの国は何度も危難に見舞われるでしょう。歴史上でしかなかった国が消えるどころか確固たる足場を持って世界の中心である欧州に足をつけてしまった。奪おうとする者、利用しようとする者、もっと単純に妬む者は真砂の砂より多いでしょう。」

 「それを世の裏側から見つけ出し表沙汰にしない。そんな下らない事に人生全てを差し出すのか? 姉貴、幸福になる権利は誰にだって……」


 そっと弟の口に人差し指を当てる。それを言ったら泣いてしまいそうだから。


 「今でもそれなりに幸福です。だってこの国を生みだした国母だと思えば少しは誇らしくはなりますよ。」

 「お姉たま?」


 辛そうな顔をする橙洋とわたし、其の声に振り向く。燐子が寝巻のまま寝床から起き出し枕を持って近づいてきた。


 「お姉たま、いかないで!」    何かを感じたのか私に縋りつき、くずり始める。


 呆気に取られる。勘の鋭い子だ。大切な大切な私の妹。かあさまと
繋がる唯一の絆。


 「何処も行きませんよ。燐子の姉様は何時だって燐子の傍にいます。見えなくてもちゃんと居るのですから。」


 まだ七つだ。難しい理屈が解るわけでもなく言い訳を繰り返してもなかなか肯んじない。誰に似たのかしら? 橙洋が戸籍謄本を鞄から取り出した。御爺様の最後を見届ける事、そして橙洋からこれを受け取り署名して返す事。それが今日すべき事。


 「大方此方で用意したが姓名だけは姉貴が書いてくれ。証明にならないからな。」


 ふと間抜けな事柄に気づく。名前は橙子のままでいい。人類評定と関係も持ち、蠢動を始めた大英帝国宰相となる漢。彼への牽制になる。只、乃木の名を使うのはやり過ぎだ。トラキアと私の関係を明言してしまうことになる。旧姓の石鎚では相手はその意図を計りかねるだろう。マイナー過ぎると言う事。ならいっそと考え其のままにしていたんだった。


 「今役所は大騒ぎだ。あの現実離れした大海戦で欧州中の記者であふれ返っている。今日中に押し込んで知らぬ存ぜぬで行きたいからな。」


 弟の言葉に閃く。ハツセが行った狐跳び(フォックストロット)、海上を進む艦が天へ駆けあがり誘引した海水を翼の様に広げながらアーチャーフィッシュに襲い掛かる姿、自分が制御しながら認識できずシナノの記録映像で綺麗とすら思った。あぁ、そうかそうしよう。私の新たなる銘を口にする。


 「姓を天羽(・・)に。天羽 橙子、それが私のこれからの銘です。」 




―――――――――――――――――――――――――――――



蒼き鋼のアルペジオSS 榛の瞳のリコンストラクト
 




終章・蒼き鋼のアルペジオ Depth008 アナザー







 「おそい!」

 「すまん、迎えに来てくれないか。場所は…………」

 艦長の端末から問答無用の一言、笑みを浮かべて彼も返事を返す。元首都高の高架線、その上をオレ達は歩きながらたった一人の留守番娘に端末で指示を飛ばそうとする。いつもの事だ、悔しい話だが霧と人では根本的にスペックが異なっているのは事実。今回の事態急変に艦長へ留守番娘が文句をぶっ放してきたと言う訳だ。それを合図に皆一斉に端末で指示を飛ばす。


 「イオナ、全兵装システムオンライン 残弾確認 通常魚雷マガジン装填」

 「エンジン、ステルスモードで起動 エネルギー経路の脈動を常にモニターして」

 「艦内機密チェック 隔壁閉鎖 空調巡回システムを戦闘モードへ」

 「全センサーオンライン、海中進出と同時に高周波ソナーで海面をトレース」

 「ドック管理システムのプロトコルを解析、ハッキングして強制出港だ。」

兵装担当の橿原杏平、機関担当の四月朔日いおり、副長の織部僧、電測担当の八月一日静、艦長の千早群像。そして“オレ”、これがイオナ、いや伊401巡洋潜水艦の全クルーだ。


 「イオナ、動力伝達甲冑(ムーヴァルトレーサー)無人稼働開始、出港後の航海パターンをN-18で、機動パターンをB-6で動かしてくれ。」

 「効率悪いぞぅ? 最大25秒遅れる。」

 イオナの返事が返ってきた。


 「相手は大戦艦二隻だ。此方の手の内を把握されると艦長もやり辛いだろ?」

 「ふぅ〜ぅ? りょ〜かい。」


 何故かオレと話す時だけイオナは妙な言葉遣いをする。ま、杏平と並んで学院の不良生徒だから対応の変えようもあるんだろう。振り向き事態の確認を艦長に求める。


 「で、どーするんだ艦長、どう見ても分が悪いぞ! 横須賀要塞港内に大戦艦ハルナとキリシマ、外縁に“マヤと一個水雷戦隊”、イオナに海中ゲート開けさせてトンズラこくのが利口だと思うが??」


 全く北幹事長に拉致られた途端コレだから霧の連中には感謝してもし足りないくらいだが相手が相手だ、少々前にヒュウガをボカチンした時だってシコタマ浸食魚雷ぶち込んでやっと撃沈だったから現状じゃ……。


 「いや、此処でどちらか一隻、沈める。」


 まてやこら、無茶はいつもだがそれは無謀以外の何物でもないぞ!


 「ほっ! 始まったぜ艦長の無理難題!!」

 「しかしヒュウガの時、我々は浸食魚雷を“10本”叩き込んでようやく沈めました。現状日本政府に渡した物を含めて“7本”しかありません。」


 おどける杏平に論理的に考える僧、これに冷静な静とムードメーカーのいおりでオレ達は何とかやっている。オレ? 単なる反骨者だ。


 「戦い方によりけりさ、今度はこっちに地の利がある。真瑠璃もいるしね。」


 【響 真瑠璃】は以前艦を降りた後、最新鋭艦の連絡将校になったと“聞いた”。確か名前は……


 「統合軍は白鯨を出す気か?」


 艦長が頷く。日本防衛軍の最新鋭潜水艦、ナノマテリアルフレームを中枢艦に採用した“世界初の霧と人類のハイブリッド艦”、それに研究用で置いていった浸食魚雷の1本は其の為か。それでも手駒は少ない。


 「橙洋、イクス-ユニットは使えるか?」

 「調整済み。ただしヒュウガとタカオ戦で一つずつ使ったからな、一つしかないぞ。」

 「十分だ、此処にあらかじめ配置したい。」


 携帯端末の覗きこむと成程、海浜公園の屑鉄(みかさ)か。囮を囮として諳んじさせる。ならばさらにこれで手持ちは一発減ると考えていい。切り札を2枚以上用意するのは戦術として常套手段だからだ。


 「じゃ浸食弾頭仕込ませてくれ。どう使うかは群像、御前に任せる。」

 「あぁ、それと残り発射ブロック(アーセナル)をナノマテリアル散布ユニットに換装、合図したらそれを屑鉄にぶちまけろ。」

 「いいのか? これでヒュウガの分合わせて貰ったナノマテリアル全部使いきっちまうが?」

 「貰いものだからな。借りにはならんさ。」


 渋い顔だなヲィ! 解らんでもないか。自分の頭を叩ける学年トップが“目の前でああなれば”な。オレの先祖らしい乃木希典陸軍元帥も魂消ただろうさ。自分の孫が霧の使徒になったんだからな。


 「気にすんな、アイツ(コトノ)は何処まで行ってもアイツ(コトノ)だった。今だってそうだろう? 群像、お前はお前の道を行くべきだ。だからオレは此処に居る。」


 其の返事を聞き終わる前に海が割れ時代遅れのシルエット【伊401巡洋潜水艦】が現れる。いいや、“
東南アジア解放戦争”で使われたポンコツ支援艦と違い霧の艦艇はガワなんぞ見せかけ、戦闘能力は大戦艦よりも格下のコイツ(401)ですら全人類艦を敵に回して戦える。ハッチが開き小柄な少女【イオナ】が現れ、

 「遅れた!」

 「おそい!」

 機嫌を直したのか笑みを浮かべて艦長が皮肉る。さらにこの巡洋潜水艦のメンタルモデルであるイオナがこっちを振り向いて、大きく手でバッテンを作る。しかもその上に文句が飛んでくる。


 「ついでに操舵担当、N-18はもうやめ! つかいにくいぞぅ!!」

 「じゃN-19作るか?」


 軽口を叩きながら皆乗艦する。敵は大戦艦二隻、いやそれ以上と考える。今のうちに気を抜いておかなければ。


 「頼むぞ、操舵担当(とうよう)。」


 艦長の言葉でオレはカラコンを外し左目を裸眼にする。隔世遺伝らしい榛の瞳、それがオレの因縁を感じさせる。

 
伊401潜操舵担当 出雲 N 橙洋


 それがオレの名だ。





―――――――――――――――――――――――――――――






 さくり、さくりと砂浜で歩を進める。前に居る少女はくるり、くるりと裾を翻し踊るように歩を進める。機嫌が良いのは解ってる。どんなに意識から追い出していても学院の万年二位に拘っていたから。その彼が動き出した。今までの戦闘等人類の言う演習程度。大戦艦二隻を含む『黒の艦隊』横須賀要塞港襲撃部隊、彼等はどう対処するのかしら? 振り向いた彼女が言葉を発する。誰とは無しに。


 「そうして、其処までしても歴史は変わらなかった。人類は“大西洋戦争”という世界大戦を繰り返し、霧を目覚めさせた。一時の眠りは17年前に再び破られ、人類は歴史通り海から駆逐された。」

 「変わったわ。」  私の反論に彼女は人差し指を振って否定する。

 「いいえ、人類滅亡なんてそう簡単には起こり得ない。霧のロジックからすれば向こう側の世界ではまだ人類は生存し、そして抵抗しているでしょう? 今の状況も同じ!」

 「それでも変わったわ。人が霧を知ってから、霧が人を知ってから、人も霧も考え続けぶつかり合ってきた……150年もの間ね。極僅かな人々がそれを行っただけでも考えられない程のうねりとなった。」


 少し不機嫌そうに彼女が呟く。遥か東――カフカスの向こう側――を一瞥し、この島の対岸、明かりも見えないかつて国があった場所を鋭く指さす。


 「あんな出来そこないの海……潜水艦が満足に動けない最大水深300メートルの“テーチス海”ひとつで世界が変わった? それが為にかあさまの国は粉々になった。」


 溜息をつく。真実を知ったらこの子は絶対に自分を忌み、責め続ける。現に今がそう。対岸に150年前突如現れ、栄華を続け、突然消えてしまったトラキアと言う国。その興亡は彼女の遺伝学上の母親、そして私の姉でもあった霧の意思で行われたのだ。私ももうヒトではない。人としての存在は既に死し電子生命体(メンタルモデル)として存在するだけ。


 「でもヒトを遺す事は出来た。【トラキア連合共和国】は中央アジア――拡大カスピ海たるテーチス海沿岸――に国民を避退させ、正面から霧を迎え撃った。人類が言う大海戦、其の大敗北の中でのたった一条の希望、霧の地中海艦隊撃破という事実を。」


 怒りを露わにして彼女が喚く。たったそれだけの『姉様の史実』とは違う事象で悲劇は起きた。


 「それだって覆されたじゃない! 霧はインド洋と大西洋からありったけの艦艇を注ぎ込み、出来ない筈の“無差別地上攻撃”を敢行した!!」


 「其の時に私達は実装出来たのよ、『恐怖』という感情を。それは多分向こう側の霧は絶対に実装できない事。だからこそ霧は五つに分裂した。」


 五つという単語に彼女は唐突に思考をフル回転させる。そう本来の霧たる【芒】(しろ)、千早翔像提督率いる【緋】、インド洋で活動中の【翠】、そして私達、5つ目は無い筈――日本本土を封鎖している【黒】等数の内に入らない。アレは重巡【マヤ】が監視する只の駒に過ぎない。【400】も【402】も霧にとっては捨て駒のひとつ、それに本人達も疑問を持たない辺り悲しくなるけど……少し考えると彼女は胡乱な眼を向けて答えを弾きだした。


 「ソレは群像君の【蒼】も含めての話? 【伊401】一隻だけで艦隊なんて良くも言えるものね燐子叔母様?」

 「ヒュウガが居るわ、それにタカオも硫黄島に接触した。彼女なら利害と言う餌で引き抜きを掛けるでしょうね。それに、こっそり硫黄島にナノマテリアルを送ったのを私が知らないと思って、琴乃?」

 「本当、いつも私は叔母様の手の内で踊ってるだけ! ヤになっちゃう!!」


 とうとう癇癪。両腕振りおろして拳を握りしめ、思い切り舌を出して不満を表明する。ホント姉様の子らしい。トラキアの非合法組織生命の泉(レーヴェンスホルン)欺瞞用遺失技術管理組織(アーネンエルベ)によって完成した霧と人を繋ぐ新世代、でも中身は姉様とそっくり。――特に感情と表情がころころ変わる点においては――私と姪、同時にデータを受信、


 「無謀としか言いようがないわね。要塞港内でどう戦闘をする気かしら彼?」

 「群像君ならやるわ、多分……コンゴウには悪いけど二隻とも沈める気よ。」

 「良く解るわね、愛と言う物なのかしら?」

 「ちーがーいーまーすー!」


 茶々に素直に反応した後、姪は胸に手を当てて呟いた。


 「私のナンバーワン(副長)ですから。」


 優しい目でそれを聞かなかったふりをしながらもう一つのデータに目を通す。其処には超戦艦ムサシの船首下に据えられた演説台、そこで静かに話す漢と隣で聴衆の視線を釘付けにする少女――ムサシのメンタルモデル――琴乃も興味深げに声を上げる。


 「翔像おじ様も動き出したわ。本当なんという偶然!」

 「これでは霧の欧州方面艦隊旗艦【フッド】も北大西洋方面艦隊旗艦【モンタナ】も黙っていないでしょうね。」

 「あはは、でもあの二人が協力するかしら? 態々メンタルモデルの感情プログラムに元の艦の因縁まで組み込むんだから。」


 面白がる彼女、私が提示した条件が次々と解除されていくのを見て興奮を隠しきれないんだろう。少しディアルタスクしてみる。【フッド】は動く、確実に。翔像提督が非公式に【緋】を名乗った時から仮想敵に定めていた位。東洋艦隊にも召集命令が下る筈。では【モンタナ】は? 双方のコアユニットが遺恨を実装しているのは大西洋戦争の影響としか言い様が無いから、姉様の直接指示(・・・・・・・)が無い限り……まずは様子見と言った所かしら?


 「きた! 401重力子エンジン稼働確認!!、もういいでしょ叔母様!!!」


 もう待ちきれないとばかりに彼女が叫ぶ。


 「せっかちねェ。【蒼】がモノになるのかどうかすら解らないのに?」


 私の呆れと小言などお構いなしに機嫌良く彼女が言葉を並べる。


 「私は全部振り棄てて此処に来た! 学院も群像君もヒトとしての全ても!! 私は人類評定も信じないし、失われた勅命なんかに従うつもりもない。私は私だけの【航路を持つ者】になりたい!」


 私の前に立ち彼女が手を伸ばす、私がその手と取る。約束の時が来た。姉様、貴女の傍にまた……」


 
「「疑似デルタコア、再起動!」」



 別たれていた私達の、脳に偽装された、いいえ脳として擬態していた真なるコアがその頸木を解き放たれ情報として鍵と錠前が連結、


 
「ドミニオンコア、起動開始!」


 
「(所属全艦艇、稼働開始)」



 小さな島、かつてはタソス島と呼ばれていた島の残骸――霧のインド洋・大西洋合同艦隊によって原形すら解らない程破壊された筈の島――17年で回復する筈もない地表が、緑が、ヒトの痕跡が鳴動を始める。
 偽装された立体映像が消え、剥き出しの地表が捲れ上がり、破砕された岩塊の隙間から飛び込んでくる海水が沸騰を始める。クレーターばかりの無惨な島に穿たれた多数の巨大な亀裂、その中に収まるモノ達――私達の手足たる艨艟!

 
大日本帝国八八艦隊9号艦 大戦艦 紀伊


 
アメリカ合衆国ダニエルズプラン7番艦 巡洋戦艦 レンジャー


 
大英帝国王立海軍プラン1941 一番艦 海域強襲制圧艦 ジブラルタル


 
ドイツ戦闘海軍 巡洋艦建造1935年計画4番艦 重巡洋艦 ザイドリッツ


 
フランス共和海軍 新戦列艦計画5番艦 戦列艦 リヨン







 時の彼方で建造されず、図面すら遺されず、データベースの僅かな痕跡だけがその計画だけを物語る15隻の艨艟達。それが今

 
再新生(リコンストラクト)する。


 そして124年前以来ね。あのビスケー湾を沸騰させアイスランド島半分とスペイン・ガリシア州をこの世から消し去ってしまい『破滅の日曜日』として記憶される元凶の片割れ、私達の立つ岩場が爆ぜ割れていく。下から現れるは強制波動装甲の甲板! 私達の後ろで三連装砲塔が、塔型の艦橋が、湾曲した煙突が、異形と言われた後部飛行甲板が……そして巨大な艦体そのものがせり上がってくる。
 姉様が私に託した艦・こちらでは計画すら存在しない彼方の災厄、此方の希望。乃木家の、いいえ連綿と続いた人の想いを乗せ今シナノが、

 
再新生(リコンストラクト)する。


 艦全体に広がる知の紋章が輝く。それは私達が私達で無くなったと言う事。私・燐子の記憶と琴乃の記憶が統合され二重の思考体系を数百の索敵ユニットが支える。更にそれを15隻の艨艟が支え本来のシナノ、その中核たる【我】でない【私】、ドミニオンコアが起動する。
 全ての権能はメンタルモデルたる私・燐子が、全ての想いは次世代微小構造統御人類(アドヴァンスド・ヒューマノイド)たる琴乃が、メンタルモデルたる私が完了を告げる。知の紋章がその形態を変え、本来のシナノではないモノを形作る。

 
それはこの沖合で姉様が見せた奇跡の続き。


 
もう届くこと無い神話(アルペジオ)を今超えて行く階。



 
「「シナノ、起動!」」



 合計16隻の艦艇群。それが今、ドミニオンコアによって艦隊に変わる。どの霧ですら到達できていないカタチ――艦隊の形をした巨大な集合コアユニット――それを琴乃が掌握する。その名、その銘を琴乃が謳いあげる。


 
「榛の艦隊、出撃!」








 
第一部 完




 









あとがきと言う名の作品ツッコミ対談


 「どもっ! とーこですっ!! 読者の皆様、読了感謝っ!!! コラ作者、あんたも土下座してないで挨拶しなさいよ。」

 ……ども、作者です。誠に申し訳ない事態となってしまい連載が此処まで伸びた事、付してお詫びいたします。

 「まーね、でも予想通りと言うか途中から3隔週連載に成った時点でアタシ諦めていたし。」

 次を考えるとね、本来リコンストラクトは2015年2月完結予定でその年の記念作品をめどに新連載に移行できる体制を整えるだけのインターバル区間を設ける積りだったんだ。だけど完全に破綻した。移行できるか非常に怪しい。特にその原因は4章を5話分追加せざるを得なくなった点だな。

 「でもさ-16話から18話って場面違うだけで同じ状況の繰り返しばかりじゃん? 思い切って纏めれば良かったのに?」

 そうもいかなかったのさ。あくまでこの作品は『周りから見た橙子という枠外の主人公』を書いていっただろ。彼女の決断によって誰が史実と違うどのような行動をとり何を思ったかを書く為に殆ど全キャラを展開することにしてたのよ。その分帝都騒乱は削るつもりだったけど……

 「マックの暴走で破綻したわけか。」

 それもあるけど20話が最悪だったね。アレ現状ですら2話を強引に纏めた代物だから。ついでに言うと其の前座を18〜19話に強引に挿入したから実質最終戦闘が3話構成に成ったんだよ。呆れた話だ、己の計画不足にこれほど嫌になった事は無かったな。

 「でもさー話変わるけど20話、どうすんのよ!? 殆どアルペジオの超兵器ネタ出しつくしちゃったじゃないの? それも第二部のネタまで使い尽くした上、某ゲームのドリル戦艦まで持ちだしたし。戦闘シーン今後大丈夫?」

 確かにミラーリング位しか残っていないからそこら辺は原作者様のアイデア頼みと言う事で、コラ! まだ下書きすら進んでないのに46糎ツッコミ砲振りかぶるな!

 「その第二部初っ端で最終戦闘のスタートシーンやること確定してるのに何を言うかこの作者ぁー!」

 オヒ……

 「あ……今のナシ! ナシナシでー(泣)」

 もう遅いわい。ただ困った事態なのは確か、第二部ではいよいよ霧対霧の闘いが複数回で行うようプロットが出来てる。其の為のネタ全て吐き出して最終戦闘組んじゃったからな。いろいろ作品見て考え直そうと思っているよ。原作も現在11巻だけど20巻行っても終わりそうもないしね。

 「他力本願に走ってるなこの作者……さていろいろ申したい事があるけど終章、これコミック版準拠なの? それともアニメ版?? 両方のネタが絡み合って特定できないよ。」

 作者としての誤導だね。双方のネタを等分に使う事でどちらかに悩ませる。でも考えても見てよ? もうこの時代に成るとアルペジオではなくてリコンストラクトだよ? コミック版にもアニメ版にも囚われない独自展開に決まってるんじゃん。

 「まてやコラ、そんだけの為に琴乃ちゃん再配置? どーすんのよ総旗艦のメンタルモデル!! オリジナルで読者納得するわけ無いじゃん!!!」

 いや適任が出来たじゃないの。だから琴乃ちゃん総旗艦役から落とされて自由行動という『航路を持つ者』に成れたんだし。

 「へ? 出来た……??」

 海洋を支配し、最も冷酷凶暴で、如何なる武器も祈りも通用せず、女性に取り憑く。(荘厳全開w)

 「え? あ……あ! わたしかー!」

 御名答、つまりリコンストラクト側での総旗艦ヤマトのメンタルモデルは天羽橙子となるわけだ。

 「どうするのよ(オソルオソル)つまりこの作品一部だけで延々65話費やして手のつけられない人類の敵を生みだしちゃった、というオチな訳?」

 そうでもしないと群像君と琴乃ちゃんによるアルペジオ、つまり本来の意味の和音が成立しない。あ、勘違いすると困るけどこの時点でもう橙子も、そしてこの時点で燐子ですらも霧の側に立った。つまりシステムとしての人格というキャラ視点終了に成ったと言う事だね。此処からが群像君や琴乃ちゃんの物語に成っていくと言う訳だ。だからそれを見る視点が必要になる。

 「あ! だから操舵手が要るわけか。なんで401クルー追加オリキャラ? と思ったけど近場で群像君、俯瞰で琴乃ちゃん見る視点が必要、だからこその……出雲N橙洋ってもう呆けるしかないわ。」

 厄介な事に作るだけ作って第二部の其のネタほったらかしの有様、こらまたツッコミ砲向けるな! 今のところアドミラリティ・コードが確定してないからね。妄想で考えたネタが取捨選択されて2つまで減ったけど殆ど正反対の構築に成るからな。たぶん原作で片鱗が見えただけでかなり筆が進むよ。

 「大丈夫かなぁこの作者? その暇潰しにアレ投稿するのか……管理人様に18禁送りされても知らないわよ??」

 その暇潰しも二通り書いてるんだけどね。下書きが片や2話、方や14話の状況ならどっち取るか自明でしょ? それに18禁に抵触する恐れは否定できないけど基本寸止めだしな。15Rである事は確定かもしれないケドね。

 「もう自爆してるし(笑)では読者の皆々様、二年半以上と言う長丁場に付き合って頂き誠に有難うございました。応援、感想一つ一つがこの自称モノ書きの力になったのは間違いありません。作者も次回作に向けて根を詰めておりますのでまた機会がありましたらご愛顧の程宜しくお願い致します。」

 「「有難うございました。」」











 「ねぇ、最終戦闘でわたし変身したけど胸どのくらい?」

 そんな事後ネタかよ。Aだろ普通?

 「酷っ! 何故!? 身長だって伸びたし!!」

 試しにシナノのコアユニットに判断してもらったが性能面で合理的な答えが返ってきたから。

 「合理的? まさか二部への伏線??」(オソルオソル)

 うんにゃ『デットウェイトに何の意味が?』(脱兎)

 「ツッコミ砲46糎バルカンモード!!!」

 (轟音と悲鳴が交錯)



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