テンカワ・アキトは多忙な人間である。
いや、多忙と言ったって、別に定職に就いているワケじゃあない。
まぁ、しいて職業欄に書くとすれば


「職業:闇の王子。職種:テロリスト」


見事に不審人物である。
就職活動であれば書類審査で一発でアウトだ。
人としてもアウトだ。
だからテンカワ・アキト(24)の職業欄には

「飲食店店主(ラーメン屋屋台)」

と、こう書く他無い。
他に一体何を書くというのだろうか。
だがテンカワ・アキトは職業欄に何を書くのか悩む必要はない。
っていうか履歴書何て書く必要が無い。
だって戸籍上死んでるもの。

それはともかく、テンカワ・アキトは多忙である。
前述したように定職には就いていない。っていうか就けない。

かといってボランティアをしているワケでもない。

強いて言うならばケジメを付けるというやつである。
カッコ良く言うのならば「血塗られし遺恨の精算」であるし、カッコ悪く言うならば「お礼参り」である。
その対象はと言うと、もう説明するのはかなりめんどくさいので端折るが『火星の後継者』である。
構成員が木星人であるが火星の後継者。
木星にはバイバイしゃちゃって火星の後継者をいけしゃあしゃあと名乗っている厚顔無恥な連中である。
『バイバイ・ジュピター』並にしょっぱい連中である。
尚、バイバイ・ジュピターを知らない人はググれ。


超余談であるが、『仮性の後継者』と書き込んでやると多分地味にスゴイダメージを負うであろう。
主に男性陣が。

話が逸れたが、テンカワ・アキトは超多忙である。
毎日毎日せっせとお礼参り。
頻度としては週に四日はお礼参り。
残りの三日は家族サービス。
家族と言っても該当者は現在約一名のみ。


その名は我らがラピス・ラズリ。


『電子の妖精』に対抗して最近ネットで『電子の天使』と韻を踏んだハンドルネームを使って日夜せっせと星野ルリ関連スレを尽く荒らし、サーバーをパンクさせてる恐怖の存在である。
ユーチャリスの制御は良いのかって?
北辰というアホのように強いオッサンをミンチにしたテンカワ・アキトとブラック・サレナのコンビにタイマンで敵になりそうな奴は最早スパロボに参戦でもしない限り探すのは不可能だ。

『絶対王者』と書くとノア信者の心をくすぐる響きだ。

よってラピスは超暇なので荒らしを行っているのである。
今も『星野ルリ様にふみふみされたい その231スレ目』に『ひんにゅうひんにゅうひんにゅう…』と驚異の16ビートもまっつぁおな速度で
書き込みをしている。ちなみにテンカワ・アキトはその間元気にウサ晴らし。お礼参り。



今日もサレナは絶好調!


ハンドカノンが火を噴くぜ!!


っていうかハンドカノンしかないんだぜい!!!


ってな具合である。

まぁ■されている仮性…もとい火星の後継者も自業自得なのでどこの軍も見て見ぬふり。
もっとも、殆どのデータはテンカワ・アキト再婚基初婚相手筆頭(自称)星野ルリ嬢が握りつぶしているのでお上は殆ど知らず。
星野ルリ(17歳)は哨戒任務と称してユーチャリスを、というかテンカワ・アキトをストーキング。ファンが見たら泣くぞと言いたくなる程ねっとりとストーキング&ウォッチングしている星野ルリ(もうすぐテンカワ姓になります。キャッ)の『ブラックサレナ バトルデータファイル』もそろそろvol.20へと入ろうというものである。

それはさておき、主人公テンカワ・アキトに視点を向けてみると、残党処理も終わったのか、ユーチャリスに着艦許可を求めている。
そして、ようやく長い前置きが終わり、このシリーズ(化するのかは未定だが)は幕を明ける。





〜アキトとラピスと時々ユーリ〜〜その一:ユーリと申します。




『ああん……マスタァ〜〜はやくぅ〜〜早くマスターの熱くて黒くて硬いものをユーリに突っ込んでくださぁ〜〜い』



唐突にして展開されるウィンドウは決してアキト秘蔵の『ご主人様と可愛い淫乱雌猫〜あなたのマタタビが欲しい〜』のワンシーンではない。そういうものはとうにラピスによって発見&滅却されている。
それをアキトが知って滂沱の血涙を流してラピスに迫った際に、


「アキトはラピスの身体に満足してないの!!??」


と逆ギレされて泣き喚かれ、土下座を超える土下寝をかますはめになるのはまた別の話である。
だが、冒頭の頭に桃色のウジが湧いたのか、それとも脳が腐ったトマトのように溶けかかっているようなセリフは正確には音声にあらず。
文字通りウィンドウ上のメッセージであったりする。

アキトはこめかみをグイングイン押しながら必死に頭痛を抑え込むと溜息混じりに呟く。


「ブラックサレナ……着艦する……」



『ああああああんんんッ!!熱いのぉ、マスターのとっても熱い相棒がユーリの中に入っちゃうぅぅぅぅ』



そんな桃色というかショッキングピンクなウィンドウとは裏腹に、映像的には鋭角的且芸術的フォルムの戦艦ユーチャリスのデッキがガコンムと言わんばかりに開き、激戦を終え装甲の至る所に熱を持った『呪い』の花言葉を持つ闇の王子様の相棒ブラックサレナは、

『ふぅ〜やれやれ、ようやく一息つけるわぁ〜』

と言わんばかりに着艦し、固定される。
ちなみに、メンテ等をしてくれるのはバッタの皆さん&みんなのマッドサイエンティスト、ウリバタケさんだ。
冷却を済ませ、ハッチを開き出てきたアキトを笑顔で迎えるウリバタケさん。
そして、息せき切ってかけてくるのは純情可憐、純真無垢なる天使。
アキトの唯一の家族にして、小さなアキトのお姫様。
桃色の髪を揺らめかせながら駆けて来るのはラピス・ラズリである。


「アーキートー」


「トー」の部分でジャンプしたラピスの小さく、華奢で柔らかい身体をガッチリキャッチするアキト。
ラピスは満面の笑み。
アキトも満面の笑み。



『ハロー』


ウリさんは微笑ましげに満面の笑み。
こうして愛らしい天使に出迎えられるとアキトの疲労も吹き飛ぶ。



『こんにちは〜』



その愛らしい笑顔からは先程まで悪質な荒らしをせっせとやっていた名残は一切無い。


『あれ?聞こえてないのかな?』



アキトは素直に天使の微笑みに癒される。お礼参りやその他の疲れもラピスの温もりと甘い香りと笑顔に癒されていく。



『お〜い、マスター〜〜』



その他の疲労と言うのは具体的に言えば先程の脳に障害が発生したようなウィンドウとか。



『マ〜ス〜タ〜ってばぁ〜〜!!』



そのままアキトはラピスと手を繋いで歩いていく。
今日という日を無事に終えることが出来、明日はオフの日ということでラピスが華やいだ声を上げる。

「アキト、アキト!明日はお洋服買いに行きたいの」
「はいはい、了解しましたお姫様。明日は一日付き合うよ」


『お洋服ですか〜いいですね〜〜私も行きたいですぅ〜〜』


「うん!!アキトそれからね、観たい映画もあるの」
「ああ、あのカンフーの映画だっけか?」


『マスター〜〜無視しちゃいやんですぅ〜〜』


「ちっが〜う!!コロニーの一区画に閉じ込められるヤツだってばぁ」
「ごめんごめん」
初めて出会った頃に比べて遥かに表情が豊かになったラピスを微笑ましく見ながら、アキトの凍り付いていた心は順調に癒されていく。
それを見るウリバタケはまるで兄のようにそんな二人を微笑ましげに見ている。





『…………………テンカワ・アキトは真性のペd「うるさぁい!!」』






アキトは遂に耐え切れなくなったのか、大声を張り上げ、先程からザックンザックンウィンドウを自分の頭に刺しまくっている主に怒鳴りつけた。怒鳴りつけられたのは清楚にして可憐。見目麗しく、人形の如き美しい造詣という点ではラピスに勝るとも劣らない白銀色の髪をポニーテールにして、両サイドの伸びた髪を縦ロールにした少女の姿をしたモノであった。

その身に纏うのは着る者を選びに選びまくるであろうゴシックロリータチックな服装。

まぁ、いわゆるゴスロリである。


少女は両手で目元を抑えると泣くような素振りを見せる。


『マスターがユーリを無視するのがいけないんでゲスよぉ。ユーリアレ以上無視されていたらもうグッすんグッすんと泣きながらも、新しい快感にグッすんグッすんとアソコを濡らすはめになるところでしたよ。ところではめになるって何かヤラシイですね』


ゴスロリ美少女は凄まじく下劣な言葉を吐き出す。
吐くと言っても、音声機能はまだ無い。
此処まで読んだ人ならばもう薄々感付いているだろうからバラすが、このゴスロリ美人こそユーチャリスの『恋するAI、ユーリ』である。ちなみに製作はウリバタケさんである。




「うるっせいぃ!!」



アキトは劇場版公開から早10年によって確立してきた闇の王子様のクールな仮面を剥ぎ取り、思いっきり脳の湧いたAIに突っ込む。
ユーリはマスターが、最愛のマスターがこっちを向いてくれた事に頬を染めてはにかむ。
頬を染める機能をつける暇があったら声を付けろよとか、はにかむところじゃないとかそういう突っ込みはめんどいのでパスする事にしよう。


『マスターのいけずぅ〜マスターはユーリの事嫌いなんですか?』


両手を組んで、上目遣いに見つめる姿はまさに可憐。
アララギさんあたりが見たら「生まれる前から好きでした!!」とルパンダイブしかねない。
しかし、アキトは頭痛を抑えていた指をびしりとユーリに向ける。


「嫌いとかじゃない!!お前に耐えられないから見て見ぬフリをしてるんだ!!お前のその湧いた格好に!!」


ユーリはウィンドウで背後に『ガガーンッ』と律儀に効果音までつけて仰け反る。



『似合ってませんかッ!?』



「あのな………似合う似合わないじゃないんだ……そもそもお前は……っていうかお前のボディーは……………」



アキトは思い切り溜める。
何故なら、これが今回のオチだからだ。




「男ですから!!!!」




残念!!と付けなかったのはネタが古いからであった。
ユーリはその言葉を受けると、そっと俯き呟く。


『てへ☆』



明らかにミスマッチなセリフと共に、ユーチャリスの賑やかな遣り取りは続いていく。













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