虎の章/第58’話『未来へ向けての安らぎ〜アニキの心、親父の心〜』


ギィィン!!


快晴の空の下に響き渡る金属音。
今日は練兵場で皆それぞれに訓練ってとこ。
ちなみに俺の相手は──


「ハァ……ハァ……っ!」

「少し休む?」

「ま、まだまだよ直詭!相手が誰だろうと手は抜かないで!」

「なら、手を抜かれないようにかかってこい」

「望むところよ!」


腕を磨きたいって言うことで蓮華の相手をしてる。
雪蓮と比べるのは可愛そうだけど、刀一振りで事足りる。
ま、仮にも次期王……
体に傷を残してやるのは可愛そうだし、その辺は考えて相手取る。


ギィィン!!


蓮華の太刀筋は良くも悪くも愚直。
フェイントの一つでも入れねぇと、俺から一本取るのは随分遠い話になるだろう。
ま、よくよく考えてみたら俺もそこまで腕が上がってるってことだ。
自分のことながら、冷静に振り返ってみるとゾッとする。


「ほら蓮華、そんなに息が上がってるのに攻め立て過ぎだ」

「私はまだまだいけるって──」

「呼吸を整えるのも重要だっての。現に、俺の動きなんてお構いなしに突っ込んで来てるじゃねぇか」

「そ、それは……っ!」

「まずはお互いの間合いを見極めろ。んで、相手の呼吸や佇まいから動きを察知する。コレが出来てねぇと、俺も二本目は抜けねぇぞ?」

「……分かったわ」


自分の体制が整ってねぇのに、攻撃を仕掛けるってのはマズい話。
ぶっちゃけ、カウンターを食らっても文句は言えない。

ま、蓮華の気持ちも分かる。
小一時間くらいやり合ってるのに、未だに俺から一本も取れねぇなら焦りもする。
“手を抜くな”とか言ってるけど、そもそも俺は二刀流が基本。
一振りしか使ってない時点で手を抜かれてることにも気付いてねぇらしい。


「ふぅー……」

「少し呼吸も落ち着いたらしいな。俺はいつでもいいぞ」

「えぇ。なら、いざっ!」


ギィィン!!


うん、さっきより太刀筋が良くなってる。
それは蓮華自身も感じてるんだろう。
打ち込んできたときの表情がさっきとは大違い。
……ただ、そこで満足してるようじゃ、及第点にも届かねぇな。


「ほら、そこ」

「へ?きゃうっ?!」


次の動作に入るまでが遅すぎる。
空いてる手で肩を突き飛ばす。
たったそれだけで蓮華は体勢を崩して……


ヒュン!


「うっ……!」

「……ほら、立って」

「え、えぇ」


体勢が崩れた蓮華の首筋に寸止め。
かなりの速度で振るったから、流石に蓮華も尻餅着いた。


「よし……もう一回、構えるところから──ん?」

「……どうしたの直詭?」

「いや……あっちは随分と血気盛んだなぁって」


俺の視線の先で仕合をしてるのは思春と李緒。
どっちも速度に優れた武を持ってる。
破壊力よりも、いかに急所を攻撃できるか……
二人の攻撃は良く似通ってる。


「てやぁぁぁぁ!!」

「ふっ!」


ギャリィィン!!


それぞれの得物の性質が違うのに、ああやって渡り合えるのはさすがだと思う。
思春の場合だと、攻撃を受け止めるのには不向き。
李緒の場合なら、間合いの内側に入られると不利になる。
お互いにその辺は理解してるだろうし、だからこそあれだけの高速での試合が出来る訳で……


「──……にしても、どっちも頭に血が昇り過ぎだな」

「考え過ぎじゃないの?二人とも真剣にやり合ってる様にしか……」

「いや、何て言うか……」


どっちかと言えば李緒の方だ。
攻撃に容赦がないのはお互い様だけど、あからさまに目の色が違う。
あれはまるで、本気で敵を殺しにかかってるような──


「っ!?」

「え、なお──」


ギャリィィン!!


「「ぁ……っ!?」」


蓮華が俺に声をかけるのなんてお構いなしだ。
二人の間に割り込んで、それぞれの得物を受け止める。
衝撃の凄まじさは響いた音で十分すぎるくらい分かるだろう。
ただ、二人は俺の顔を見て、ばつの悪そうな表情に変わった。
なにせ──


「……お前ら、何考えてやがる……?」

「「……………」」

「今、本気の殺気出したな?」


闘気と殺気は似て非なる。
その違いが分かる領域まで俺も成長してる。
んで、こういう訓練の時、闘気があふれ出る分には何の問題もない。
ただ……殺気はマズい。


「二人とも、得物降ろせ」

「……分かった」

「アニキがそう言うなら……」


俺の言葉に従順に、二人は地面に得物を置いた。
んで、次に何を言われるか待ってるらしい。
一言も発することなく立ち尽くしている。


「……俺は二人の上司ってわけじゃねぇけど……流石に今のやり取りは目に余る。仕合は中止。部屋に戻って頭でも冷やして来い」

「「……………」」

「……じゃあ、蓮華。二人に命を」

「えぇ……直詭の指摘は尤も。今日一日、二人とも外出禁止よ、いいわね?」

「「御意」」


重々しい口調で返事すると、二人とも別々に練兵場を後にする。


「……良く止められたわね」

「気には掛けてたからな」


仮に雪蓮辺りと仕合してたら間に合ってねぇだろう。
今回は色々と条件が良かったってだけの話だ。


「ねぇ直詭。仮に今止められてなかったら、どうなってたか予測は付く?」

「……ゾッとするぞ?」

「え……?」

「思春の方は頭蓋骨に、李緒は頸椎に、それぞれ甚大な怪我をしてただろうな」

「っ?!」


戦場で敵対してたなら何の文句もない。
ただ、仕合とは言っても同じ主を仰ぐ味方同士。
そこで本気の殺し合いをするなんて馬鹿げてるにも程がある。


「あのまま放置してたら、それだけの大怪我をして……結果、どっちも軍から外さないといけなくなる。国にとっては致命的だ」

「……止めてくれてありがとう、直詭」

「今後あの二人が仕合する時は、俺とか雪蓮が近くにいたほうが良いかもな」

「そうね」


とは言っても、前々から気にはなってる。
どっちかと言えば李緒の方だけど……
思春に対して敵愾心を持ち過ぎと言うか……


「なぁ蓮華。あの二人、前からああなのか?」

「そうね……お互いの武を認めてない訳じゃないけど、用がない限りは言葉も交わさないくらいには険悪ね」

「知ってたんなら──」

「黙って見てたわけじゃないわよ?」


……まぁ、そりゃそうだろうけど……


「思春の方は比較的穏便に済ませようとしてくれてるわ。さっきはちょっと、頭に血が昇り過ぎちゃったみたいだけど……」

「じゃあ……李緒は?」

「……止むを得ない事情があるのよ。李緒にとって思春は──」

「……………」

「……私の口から話すのは野暮かしら」

「他の皆は知ってんだろ?なら、遅かれ早かれ誰かから聞くこともあるだろうし、出来れば教えてほしい」

「分かったわ。あのね、李緒のお父さん──凌操って言うのだけれど、思春が呉に仕える前に水軍を率いていたの」

「けど聞いた話、今の水軍って江賊上りが殆どなんだろ?」

「えぇ。凌操が思春に敗れたことをきっかけに、水軍の体勢が変わったの。主に、元々思春の部下だった者達が召し上げられた形になったわ」

「……ってことは、凌操さんは?」

「水軍頭領の座を思春に譲って隠居したわ。若手の教育に残って欲しいって声もあったけれど、“敗者に語る口無し”って聞かなかったわ」

「そっか」


自分の親を打ち負かし、その座を追いやった、か。
仇に近いな。
なら、李緒が思春を恨んでるのも分かる。
それが普段からの振舞にも顕著に出てたってわけか……


「李緒は隠し事とかしない性格だし、思ったことをそのまま言動に移すから……姉様ともできるだけ、二人きりにならないように手は回しているの」

「んじゃ、今回は?明命でも呼べば、二人が仕合うこともなかったんじゃねぇのか?」

「明命にだって仕事はあるわ。今回は偶々、悪い方向に事が重なったの。でも、近くに直詭がいたのは不幸中の幸いだったわね」

「あんまり楽観すんな?次に同じことが起きて、俺が同じように留められる保証は無ぇ」

「えぇ、分かってる」


けど……
俺としては二人には和解してもらいたい。
それは蓮華とか雪蓮だって同じ筈……
同じ孫呉の将として、歩みを揃えなきゃいけない場面だって山ほどある。
それが普段から仲違いしてる様じゃ、いざって時に味方にとってのデメリットになる。


「……ねぇ直詭」

「ん?」

「直詭から、李緒の話を聞いてあげてくれない?」

「何で俺を指名するんだ?」

「さっきもそうだったけど、李緒が素直に引き下がったのは直詭に言われたのが大きいと私は思うの」

「……思春だって素直だったぞ?」

「思春の場合は、私が後ろで見ていたからよ。けど、きっと李緒の目には私は映っていなかったはず……」

「……話を聞くって、それで何か変わるのか?」

「分からないわ」

「おい……」

「でもね?確信があるわけじゃないけど、直詭と話すことが今の李緒にとって良いことだと思うの」

「……随分な大役任せてくれるんだな」

「ふふっ。それだけ直詭の事を、私も見てるつもりなのだけれど?」

「ったく……」










敢えて少し時間を置いた。
あの場では素直に引いてくれたとは言っても、頭には血が昇ってたんだ。
落ち着くために多少なり時間は必要になる。


「ふぅ」


李緒の部屋の前まで来たはいいけど、何を話すべきやら……
話を聞きながら言葉を選べるほど器用と言う自負は無い。
まぁ、溜まってるものを吐き出させてやるくらいは出来るか……?


コンコン


「李緒、俺だけど」

「……アニキ?」

「入っていいか?」

「……あぁ」


承諾を得て部屋に入る。
……ちょっと想定外の光景があった。


「……随分荒れたな」

「悪りぃ、アニキにこんなの見せちゃって……」

「気にしねぇよ」


部屋に戻ってからも憂さは晴れなかったんだろうな。
床には割れたコップの破片が散らばってるし、ベッドの上には破れた服がいくつかある。


「……今、片付けるから……」

「気にしてねぇって言っただろ?……少し、俺と話さねぇか?」

「……………うん」


足元に気を付けながら、ベッドに腰掛ける。
李緒も俺に倣って横に座ってくる。


「……いつも、あんな感じの仕合なのか?」

「あ、その……」

「……そうだな、さっきの仕合を蒸し返すのはやめとくか」


いつもは快活なくせに、しょんぼりと俯いてる。
そんなに俺に叱られたのがショックだったのか?
けど、こういう叱責なら雪蓮とかからもされてるだろうし……


「……なぁアニキ」

「ん?」

「アニキはオレよりも……思春よりも強いだろ?」

「戦績ではな」

「……謙遜しねぇでくれよ」

「んで?」

「あ、あぁ……その、どっちが強いと思う?」

「……どっちとは?」

「オレか思春か……どっちの方が強いと思う?」

「……さぁな」

「っ!は、はぐらかすのかよ?!」

「そうじゃねぇよ」


また頭に血が昇らないように、少し言葉を選ぶ。


「李緒は、何のために戦うんだ?」

「へ?そ、そりゃ……雪蓮様とか呉の皆の為に……」

「あぁ。俺も同じだし……思春も同じだよな……?」

「っ!?」

「呉に仕えてる将兵は誰しも、呉の為を想って武を振るってる。その思いが共通してるなら、どっちが強いかとか考える必要なくねぇか?」

「で、でも……っ!」

「……ま、そう簡単には割り切れねぇか」

「ひょっとしてアニキ、オレの親父の事……誰かに聞いたのか?」

「あぁ。李緒が思春を恨むのも分かる」

「……………」

「そういう風に生きろって凌操さんから言われてんなら、俺が口出しする話じゃねぇな」

「そ、それは……っ!」

「……どうやら、違う風に言われてるらしいな」

「……あ、あぁ……」


昂ってた感情が冷めて行くのが分かる。
凌操さんの言葉が今、李緒の頭の中でいっぱいなんだろう。


「なんて言われたか、聞いてもいいか?」

「……(コクン)」

「……何て?」

「……俺も今でも意味が分からねぇんだけど……“新しい風が吹いた”って……」

「……そっか」


どういう風に凌操さんが敗けたかまではわからない。
けど、思春と対峙して、これからの孫呉を託す存在だと感じたんだろう。
だからどれだけ卑下されようと、身を引くことを選んだ。

……あくまで李緒の感情交じりの話だけど、何となくそうなんだろうと思う。
当の李緒はそこまで凌操さんの気持ちを理解できてない様子……
ま、無理もないか。


「ちなみに李緒。凌操さんは強かったのか?」

「へ?あ、あぁ!水軍筆頭と言えば親父を置いて他にはいねぇ!」

「他の皆も同じように?」

「あぁ……だから、隠居することに反対した人は多かった。オレだって反対した!けど……」


それだけ自慢の親なら、なおの事思春に敗れたって事実は受け入れ難いな。
……ってか、凌操さんも完全に隠居する必要はあったのか?
蓮華も言ってたけど、若手の教育とか、軍に残れる要素はいくらでもありそうだけど……


「なぁ李緒。凌操さんは今どうしてるんだ?」

「……田舎で療養してる」

「何か重い病気でも患ったのか?」

「そうじゃなくて……表向きはそういう風に話してくれって……」

「じゃあ、実際には?」

「田舎にいるのは違わねぇけど、最近は専ら本を読み耽ってるらしい。前の親父なら考えられねぇんだ……」

「ちなみに……どんな本を読んでるかは聞いたことあるか?」

「へ?んーっと、確か……子育てに関する本だって言ってたような……」

「へぇ?」

「オレは親父に男手一つで育ててもらったけど、別に不満なんて感じてねぇのに……何で今更子育ての勉強してんのかさっぱりで……」

「……ってことは、普段からの言葉遣いとかは凌操さん譲りってことか?」

「そうだけど……別に変じゃねぇだろ?アニキだけじゃなくて、他の皆だって普通に喋ってくれてるし……」


……一つの仮説が浮かんだ。
この仮説が正しいなら、凌操さんは戦と無縁でありたいと思ってる筈……
けどコレ、李緒は納得しねぇだろうなぁ……


「アニキ?」

「んー……李緒、散らかってる服とかって自分で買ったのか?」

「そりゃそうだろ?オレだってもう子供じゃねぇんだし、着たい服くらい自分で買うって」

「けど、流石に小さい頃は凌操さんに買ってもらってたんだよな?」

「アニキ、何当たり前のこと言ってんだ?」

「あー……遠回しになるけど、確認したくてな。小さい頃って、今と似たような服だったのか?」

「まぁな。動きやすい服が好きなのは小さい頃から変わんねぇんだ」

「そっか」

「……アニキ?」


ま、多分だけど仮説は当たりだろうな。


「最近、凌操さんから何か送られて来たとかあるか?」

「何にもねぇよ?」

「……なら、まだまだ勉強中ってとこか」

「勉強?アニキ、何の話してんだ?」

「想像の範囲を抜けねぇんだけどな?凌操さんはきっと、李緒を女の子にしたいんだと思う」

「……………はぁ?!」


俺の言葉が理解できなくて、目を見開いてやがる。
……まぁ、少し端折り過ぎたかもな。


「その当時の水軍で最強誇ってたなら、跡継ぎの李緒にも期待はされてた筈だよな」

「さ、流石に知らねぇけど……」

「多分そうだったと思うぞ。で、周りの期待に応えるための教育をしなきゃならなかった」

「オレは別に反発したことはねぇ──」

「けど、凌操さんには葛藤があったと思う。将来を期待される武人として、それでいて一人の女の子として、それを両立できるように育てたかったんだと思う」

「……アニキには、そう育ったように見えねぇか?」

「武人としては文句ねぇよ。けどまぁ、女の子らしいかって聞かれるとちょっと悩むな」

「……べ、別にオレは、なよなよしてるって見られたくねぇし……」

「そこだよ」

「そこ?」

「一言に“女の子らしい”って言ったって、いろんな形がある。この際はっきり言うけど、普段の服装も言葉遣いも、正直女の子らしいとは思えねぇな」

「し、仕方ねぇじゃねぇか!そういう風に育ってきたんだし……!」

「分かってるって。んで、凌操さんは今からでもやり直しがきかないかって模索してるんだよ、きっと」


きっと、思春と戦って敗れて、水軍を任せられる存在に出会えたって感じたんだろう。
だから一線から身を引いて、一人の親になろうとしてるんだと思う。
武人としては充分に育てられたから、今度はもう一つの目的を達せられるように……


「……今更オレが女っぽい喋り方して、気持ち悪くねぇか?」

「どうだかな。ま、今の話は俺の想像……一度凌操さんとじっくり話してみたらどうだ?それこそ、凌操さんが思春をどう思ってるかも」

「……………」


決して李緒は頭の回転が速いとは言えない。
俺が話したこともどこまで理解してもらえたか分かんねぇ。


「……じゃ、じゃあさ、アニキ……」

「ん?」

「オレが変わったら……受け入れてくれるか?」

「……フッ、くだらねぇこと聞くんじゃねぇよ」


雑に頭を撫でてやる。
李緒はされるがままだった。


「ま、女の子らしくなる前に……仲間を殺そうと考えないようにしてもらえた方が助かるけどな」

「……そ、それこそ、オレには難しいかも──」

「俺の頼みでもか?」

「っ?!そ、その……!あ、アニキに言われたんなら……その……ちょっとは、考える……」

「……今はそれでいいよ」












話が一段落した後、部屋の片づけを手伝った。
俺に言われたからか、散乱してた下着は早々と俺の目に届かない場所へとしまってた。
ま、いきなり意識したって変わるもんでもない。
そう言う部分に意識が行くようになっただけでもある意味成長か。
……で、そんなことしてたらとっくに夜も更けて……


「あ、晩飯食いそびれた……」

「作ってやろうか?」

「アニキの手料理?!喰う!」

「なら食堂に行くぞ」

「おうっ!」


すっかり元気を取り戻してくれたらしい。
二人そろって食堂へと向かう。
そしたら──


「「ぁ……」」


前から思春が歩いてきた。
向うは食事を終えてきたってとこだな。
で、お互いにやっぱり険悪なムードになってる。


「……………」


俺は敢えて口を出さないでいた。
そのまま無言ですれ違ったっていい。
これまでのことがあるんだ、そんなすぐに関係が修復できるとは思ってねぇ。


「「……………」」


距離が縮まるごとに、李緒の目つきが鋭くなる。
思春の方もいつもの事だと割り切ってるらしいけど、何となく雰囲気が違う。
向うも蓮華と話して何か変えようとしてんのか?


「……李緒」

「……何だよ」


口を開いたのは思春からだった。


「現状、戦績だけ見れば私が上だ」

「だから?」

「あの凌操殿の血を引いているなら、早く私を追い抜け」

「……言われるまでもねぇ」


交わした言葉はそれだけ。
けど、昼間ほど言葉も雰囲気も凶悪じゃない。
それ以上はお互いに何も言わずに反対方向へと歩いて行く。


「……アニキ、アレで良かったと思うか?」

「李緒はどう思う?」

「分かんねぇ……けど、何となく思春を違う目で見れる気がする」

「それでいいと思う」


どれだけ時間を要するかは分からない。
けど、一歩進展した気はする。
これからも二人には、頼もしい呉の将としてあって欲しい。
……俺の願望もついでに言えば、女の子らしくあって欲しいとも思う。
口に出すのは恥ずかしいけど──

──俺は、二人の事、好きだからな……











後書き

思うようにかけないと辛いです。
けど、呉のオリキャラの中では一番好きな子なので、今度はもっとイチャイチャさせたいですねw



ではまた次話で



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