シンのカガリに対しての暴言の後、すぐさまボギー・ワンを捕捉し、ミネルバ内にコンディションイエローの警報が鳴った。そして、ミネルバのブリッジで は、非クルーの、デュランダル、カガリ、アスランの三人もいた。

 通信士のメイリン・ホークが、シンのインパルスとルナマリアのザクウォーリアの発進シークエンスの声が響き、二機が発進するのを見ながら、デュランダル は呟いた。

「ボギーワンか。本当の名前は何というのだろうね……あの艦の」

「はぁ?」

 いきなりの言葉にアスランは眉を顰める。

「名はその存在を示すものだ。ならばもし、それが偽りだったとしたら……それが偽りだとしたら、それはその存在そのものも偽り、ということになるのか な?」

 そう言ってアスランの方を振り返って笑みを浮かべるデュランダル。カガリとタリアも、その言葉にハッとなった。

「アレックス……いや、アスラン・ザラ君」

 ブリッジに僅かな沈黙が訪れる。それにカガリが罰が悪そうに言った。

「議長、それは……」

「ご心配には及びませんよ、アスハ代表。私は何も彼を咎めようと言うのじゃない。全ては私も承知済みです。カナーバ前議長が彼等に執った措置のこともね。 ただどうせ話すなら、本当の君と話しがしたいのだよ、アスラン君」

 そう言って安心させるようなデュランダルの言葉。やがて、副長のアーサー・トラインの声が響いた。

「敵艦に変化は?」

「ありません。針路、速度そのままです」
 
「よし! ランチャーワン、ランチャーシックス、1番から4番、エスパール装填。シウス、トリスタン起動。今度こそ仕留めるぞ!」

 その言葉にアスランは眉を顰め、スクリーンを見る。ボギーワンも、ミネルバが接近しているのに動きが無いのは妙だった。

「インパルス、ボギーワンまで1400」
 
「未だ針路も変えないのか? どういう事だ?」

「何か作戦でも?」

 困惑の表情を浮かべるブリッジクルー。そして、アスランとタリアだけが、ハッとなった。

「しまった!」

「デコイだ!!」

 咄嗟に出たアスランの言葉にクルーが彼に注目する。アスランは、複雑な表情を浮かべ、顔を逸らしたのだった。

 

機動戦士ガンダムSEED Destiny〜Anothe Story〜

PHASE−02  太陽の兵器






「う〜む……綺麗に罠に引っかかったね〜」

「ですね」

 レンとリサは、モニターに映る光景にそう感想を漏らした。モニターに映っているのは、ザフトの新型戦艦ミネルバが、謎の戦艦と戦い、尚且つ白いMSと赤 いザクが、強奪された三機と戦っていた。

 ラストを両艦のセンサーに引っかからない程度に距離を置き、小惑星に隠れて、ずっと戦況を窺っていた。そして、見事に謎の戦艦の作戦にハマったミネルバ を見てレンはクスッと笑った。

 謎の戦艦の作戦は、デブリという障害物の多い宙域で、カオス、ガイア、アビスの三機を隠れさせ、ミネルバの主戦力を待ち伏せするというものだった。そし て、上手く謎の戦艦がミネルバの背後に回り込み、小惑星を破壊して、その下に埋もれさせたのだ。

「どうします、兄さん? 艦長にはアレを奪取するよう言われてるんでしょう?」

 ちなみに、アレとは強奪された三機だけではなく、きっとインパルスも含まれてるのだろう。レンは、大きく溜息を吐いた。

「あの戦場に飛び込むのはヤダな〜」

 しかもインパルスは、火力重視のブレスト装備をしているので下手したら狙い撃ちにされる可能性があった。

「そもそも二兎追うものは一兎も得ずと言うからね〜……欲張っちゃいけないよ」

「じゃあ、どうするんです?」

「この場合、強奪された三機と、データの無い新型……どっち持って帰ったらラディックは喜ぶと思う?」

「…………後者ですね」

「よし! じゃあ、まずはミネルバを自由にしますか」

 行き当たりばったりもいい所だと、リサはハァと嘆息するのだった。

 

「右舷のスラスターは幾つ生きてるんです!?」

 小惑星の岩盤に閉じ込められ、身動きの取れないミネルバ。そこへ更にMA(モビルアーマー)とMS二機がやって来て、狙い撃ちにするつもりだった。一 応、レイのブレイズザクファントムを出したが、何処まで持ち堪えれるか分からない。

 このままじゃやられると誰もが思っていると、突然、アスランが声を張り上げた。

「え?」

 いきなりの質問にタリアは驚き、デュランダルを見ると彼は答えるよう頷いた。

「6基よ。でもそんなのでノコノコ出てっても、また良い的にされるだけだわ」

「同時に、右舷の砲を一斉に撃つんです! 小惑星に向けて」
 
「ええ!?」

 その言葉にタリアは目を見開き、アーサーが驚きの声を上げる。
 
「爆発で一気に船体を押し出すんですよ! 周りの岩も一緒に!」

 それでアスランの意図をタリアは理解した。右舷の砲で小惑星を破壊すれば、艦は出れるし、その際、飛び散った岩石で相手のMSとMAを撹乱出来る可能性 があった。
 
「馬鹿言うな! そんな事をしたらミネルバの船体だって……」

 当然、飛び散った岩石はミネルバにも当たる。艦の損害は免れられないだろう。

「今は状況回避が先です! このまま此処にいたって、ただ的になるだけだ!」

 そう言われ、アーサーは反論できず呻く。タリアは、しばらく考える。確かにアスランの方法はベストかもしれない。が、彼は今、民間人であってその意見を 取り入れるのが躊躇われた。

「別の方向より熱源接近!!」

「「「「「「!?」」」」」」

 その時、索敵をしていたバート・ハイムが声を上げ、全員が驚く。

「また敵!?」

「ア、アンノウンです! ザフト、連合、オーブのどの機体でもありません!」

「えぇ!? じゃ、じゃあ何処の……」

 すると、高スピードで正体不明の銀色に、悪魔をイメージさせる黒い翼を持ったMSがミネルバの前にやって来て止まった。その機体を見て、アスランとカガ リは目を見開く。

「あれは……」

「ガンダム?」

 すると、銀色の機体は腰からビームサーベルを抜いて、赤い双眸を光らせる。

「(此処まで……)」

 タリアは、もうアスランの提案を実行しても間に合わないと悟り、目を閉じると銀色の機体が迫り、ミネルバを押さえ込んでいた岩石を細かく切り刻んでいっ た。

「(え……?)」

「な、何だ? 助けて……くれたのか?」

「(バカな!? 船体を傷つけずに岩石だけを……)」

 困惑するブリッジクルーの中、アスランは驚きを隠せないでいた。艦を傷つけず、押さえつけている岩盤を切り刻むなど、余程の操縦技術が無いと不可能だ。 あの銀色のMSのパイロットは並ではないと確信した。

 タリアも正体不明のMSが何であんな行動をしたのか不明だったが、これを好機と判断し、指令を飛ばした。

「スラスター最大! 脱出と同時にタンホイザー起動! ボギーワンを撃ちます!!」

 


「(ミネルバ!?)」

 シンは、カオス、ガイア、アビスの三機とルナマリアと共に交戦していたが、突如現れた謎の機体により、ミネルバが脱出した。

<シン!>

「ああ、分かってる……何だ、アイツ」

 通信機から聞こえるルナマリアの声に頷き、謎の銀色のMSを見つめる。

「!」

 その時、キィンとシンの頭に変な感覚が走った。思わず片目を閉じて頭を押さえるシン。痛いようなそうでないような……そんな感じを受けた。

「(何だ……今のは)」

 訳が分からぬまま、シンは再び三機の戦闘を再開した。しかし、次の瞬間、目を見開く。

 

「な、何だ、あのMSは!?」

 ミネルバの追うボギーワン――ガーティ・ルーの艦長イアン・リーは突然、現れたレンのラストに驚愕の声を上げた。彼らは地球軍第81独立機動軍、通称 ファントムペインと呼ばれる部隊で、アーモリーワンにてカオス、ガイア、アビスの三機のMSを奪取し、現在、ミネルバから逃げていた。

 そして、隊長であるネオ・ロアノークの機転で、見事、ミネルバを逆に追い詰めたのだが、謎のMSの出現で完全に予定が狂ってしまった。

「イアン君」

「は!」

 そのイアンの横には二つの席があった。一つは隊長であるネオの席。もう一つは、腰まである長い青色の髪に、切れ長の金色の瞳をした男性が肘を立てて座っ ていた。軍服の上に黒いコートを着て、予想外の出来事で騒然となっているブリッジの中で唯一、微笑を浮かべていた。

「私も出るとしよう」

「閣下が……ですか?」

「ああ。ネオ君も大変みたいだしね……それよりイアン君」

「は?」

「あのMSに驚いているようだが、大して驚くべき事じゃないよ。作戦、予定、計画にイレギュラーは憑き物だ。何が起こっても指揮官は驚いてはいけない…… 逆に予定外のものは楽しむぐらいのスリルが無くてはいかんよ」

「はぁ……」

 そう言って男性は席を立つ。そして、静かに目を閉じると、フッと笑みを浮かべて言った。

「恐らくあの三機もやられるね。帰還信号を出しておいてくれたまえ」

「え?」

「ネオ君にも戻るよう……頼んだよ」

「はっ……」

 イアンは頷いて、去って行く男性の背中を見る。

「(キース・レヴィナス中将………“未来の見える死神”か……)」

 地球軍では異例のスピードで出世し、その卓越した頭脳で“強化人間”を生み出し、また二年前、Gシリーズの基礎理論を考えたのも彼である。しかも軍人と しても優秀で、その実力はコーディネイターすら上回るものだった。

 彼の戦い振りは、まるで先に何が起こるのか予測するのではなく、先に何があるのか分かって戦っている姿から“未来の見える死神”という風に呼ばれるよう になった。

 そして今、彼はこのフェントムペインの監査委員という名目で、このガーティ・ルーに配属された。

「(しかし今まで大して何もしようとしなかったあの男が……何で)」

 イレギュラーの起こすスリルを楽しんでいるのかと思うイアンだった。

 


 パイロットスーツにも着替えず、MSのコックピットに座るキースに整備士が話しかけて来た。

「閣下。あのMSですが、かなりの運動性能です。ですが、閣下なら捉えられると思います」

「ああ。ありがとう……私も君の信頼に応えるよう頑張るよ」

「は、はい!」

 まだ若い整備班の彼は、そう言われると敬礼し、コックピットから離れた。キースはフッと笑うと、コックピットを閉じて操縦桿を握り締める。やがてハッチ が開き、目の前に星の海が広がった。

「キース・レヴィナス。クライスト……発進するぞ」

 宇宙空間に発射されるクライストは、灰色のボディが真っ白なボディへと変わった。

 

「これでミネルバは大丈夫みたいですね。さて……次は」

「やりますか」

 リサの言葉にレンが笑みを浮かべて続けて言うと、ラストのビームサーベルを抜いてカオス、ガイア、アビスに突っ込んで行った。相手の三機も、レンの行動 に敵と取ったのか、まずアビスがMA−X223E三連装ビーム砲を撃って迎え撃つ。レンは、それら全てをかわし切り、アビスの片腕を斬り落とした。

 次にガイアの脚、カオスの背中の兵装ポッドを高速で接近して破壊する。その強さは、正に圧倒的だった。

「流石ですね兄さん……昔とった何とやらですか」

「はっはっは。いや、それほどでも」

「さて、では驚いてるミネルバとコンタクトでも……」

「!」

 通信回線を開こうとしたリサだったが、突然、レンが操縦桿を強く握ったので彼女はその手を止める。

「兄さん?」

「何か来る……この感じは……」

 その時、キィンとレンは頭に電流が走ったような感覚に襲われた。そして、モニターを凝視すると、太陽の光を背に、一機のMSが迫って来た。それは、真っ 白い雪のようなボディに、腕全体を覆う肩のアーマーが特徴的なMSだった。かなりのスピードで迫るそのMSに、レンはゾクゥッと身を竦ませた。

「この感覚……間違いない」

 汗を垂らしながらレンは笑みを引き攣らせる。すると通信回線から声が入って来た。

<どうやら私の感じたモノは正しかったようだな、レン・フブキ!>

「キース・レヴィナス!?」

 咄嗟に叫ぶレンに、リサは大きく目を見開いた。相手のMSはビームランスを抜いてラストに襲い掛かって来ると、レンもビームサーベルで受け止めた。

「何で貴方が!?」

<私と君の間にその様な会話は野暮というものだろう! 今は二年前の決着をつけようじゃないかね!>

「ったく……本当、人の都合なんて考えてないな、貴方は」

 冷や汗を垂らしながらも笑みを浮かべて応戦するレンを、リサは不思議そうに見ていると、再び通信回線に別の声が割り込んで来た。

<何なんだよ、あんた達は!?>

「!? あのMSのパイロット!?」

 するとインパルスが物凄い勢いで迫って来ているのに気付いた。

<いきなり戦闘に割って入ってきやがって……何のつもりだよ!>

<邪魔だよ、坊や>

「! いけない!」

 そうキースが言うと、レンが声を荒げ、インパルスのパイロットに離れるよう言おうとした。が、既に遅く、キースの乗るMSの肩アーマーから幾つものポッ ドが飛び出し、インパルスを取り囲んだ。

<な……こいつは!>

 ―――ドラグーン・システム。先の大戦時にザフトが開発したプロヴィデンスというMSに搭載されていた兵器で、高い空間認識把握能力を持たないと扱えな い代物だ。

 ポッドはインパルスを取り囲み、照準を定めた。

<しま……>

「くっ!!」

 レンは舌打ちすると、操縦桿の脇についている赤いボタンを押した。すると、ラストの腰についていた巨大な砲門をキースのMSに向ける。そして、黒い翼が 開き、太陽を背にすると、翼が激しく光り始めた。

「キース! そのMSから手を引け! さもないと……」

<ほう? どうするね?>

「こうする」

 ニヤッと笑い、発射スイッチを押した。すると、砲口から凄まじいエネルギーのレーザーがキースのMSに向かって発射された。その威力は、戦艦の陽電子砲 をも上回り、キースのMSの肩を掠め遥か後方の小惑星群を破壊してしまった。

 ラストに搭載された最強兵器“SS(ダブルS)キャノン”である。ソーラ・システムを応用し、太陽光のエネルギーを収束して放つその威力は、戦艦の陽電 子砲をも上回る。



「な……!?」

 その威力を目の当たりにしたアーサーが驚きの声を上げる。タリア、アスラン、カガリだけではなく、ブリッジの誰もが驚愕の表情を浮かべていた。が、その 中でデュランダルは鋭い視線でラストを見ていた。

 


<………良かろう>

 キースのそういう返事が聞こえ、インパルスを取り囲んでいたポッドが戻って行った。

<まぁ今回は君と再会できた事を喜ぶとしよう>

「おや? 決着つけないの?」

<………あのようなものを見せられて、まだ続けるほど私も馬鹿じゃないよ>

 そう言い残すとキースのMSは飛び去って行った。レンは、フゥと息を吐く。

「兄さん」

「ん?」

「あの……非常に言い辛いのですが、エネルギーが……」

「え?」

 口篭るリサに言われ、レンはエネルギー残量を見る。すると、ほぼ0になっていた。

「どうやらSSキャノンの所為でエネルギーを使い切ったみたいですね。どうするんです?」

 彼女の言うようにラストのボディが、銀色から灰色になっていき、動かなくなってしまった。すると、インパルスとミネルバが、こちらに接近しているのが目 に留まり、ハァと息を零した。

「下手すりゃ死刑かな?」

「…………私のミスです。兄さんのお馬鹿な行動を見抜けなかった」

「はっはっは。安心しろ、妹よ。もしもの時はMSを自爆させてでもお前を守ってやる」

「自爆させちゃ私も死にますよ!!」

 これから連行されるであろうに、何故か余裕の兄妹であった。



「やれやれ……とんでもない拾い物ね」

 MSの格納庫ではタリア、デュランダルを始め、シン、アスラン、カガリ、ルナマリア、レイ、アーサー、メイリンと主要メンバーが集まっていた。皆、あの 強力な兵器を携えたMSのパイロットが気になるのだろう。シンにしても、まがりなりにも助けてくれた――と思われる――パイロットを見てみたかった。

 するとコックピットが開き、兵が銃を構える。中から出て来たのは、黒いパイロットスーツを着た青年と、ピンクのパイロットスーツを着た少女が出て来た。

「まったく……兄さんの考えが浅いから、こんな事になるんですよ」

「すんません。反省してますから、私の趣味を奪わないでください」

「駄目です。帰ったらベッドの下のディスク、全て始末します」

「ううぅ……」

 何やら珍妙な会話をしながら降りて来る2人は、ヘルメットを取ってその顔を露にした。その中で、まず目に留まったのは少女の方だ。老人のように真っ白い 髪に、眼帯をしていて、とても年頃の女の子には見えない。

 だが、デュランダルとアスランは、青年の方を見て驚いていた。レンも2人を見て、眉を顰める。

「おや? デュランダル……博士?」

「その呼び方は適切ではないな……レン・フブキ君」

「ああ、今は議長でしたね。つい昔のクセで」

 何やら親しげに話す2人に、周囲はキョトンとなっているが、突然、リサがレンの耳を引っ張った。

「兄さん。まずは挨拶が先です!」

「イタタタタ! わ、分かってる分かってるって!」

 リサはハァと呆れて溜息を吐くと、ペコッとミネルバのクルーに向かって頭を下げた。

「どうも、ミネルバの皆さん。私はリサ・フブキと申します。こちらは兄のレン・フブキです」

「どうも。親しみを込めてレンちゃんと呼んでくだごふっ!」

 余計な事を言うレンの腹にリサの肘鉄が入る。腹を押さえて震えるレンの姿に、皆の表情が引き攣ってしまうが、リサはニコッと笑った。

「すいません。お馬鹿な兄で」

「あ、い、いや……あなた達、一体、何者なの?」

 とりあえず正気に戻ってタリアが質問すると、リサが少し口篭った。

「えと……私達は……」

「海賊で〜す」

「「「「「「「海賊?」」」」」」」

 軽く答えるレンに皆が声を揃えて首を傾げる。すると、リサが兄の首を掴んで激しく揺さぶった。

「どうして、貴方はそうバカ正直に答えるんですか!!!?」

「リ、リサちゃん……絞まってる……綺麗に絞まってるよ〜……」

「一度、死んで反省して下さい!!」

「ぐぇ〜……」

 顔の色が青を通り越して紫になりかけているレン。

「海賊とは、ひょっとして悪名高いワイヴァーンの事かね?」

 デュランダルがそう尋ねると、リサはピタッと止まってレンから手を離した。レンは、ドサッと力なく床に倒れ痙攣する。

「…………折角、適当に誤魔化そうと思ってたのに、馬鹿兄の所為で無駄になりました。ええ、そうです。私達は、海賊ワイヴァーンのクルーです」

 もう隠すのも馬鹿らしくなったのでリサは全て話した。アーモリーワンへ新型のMSを強奪しようとした矢先、何者かに盗まれたという報告があり、怒り狂っ たアホ艦長の命令で、強奪された機体を強奪しに来た、と。もうオブラートに包む事無く、ありのままの事を話した。

「じゃあ、あなた達は、ボギーワンとは関係ないの?」

「ボギーワン?」

「例の三機を奪った敵戦艦の事よ」

「いえ、まったく……」

「じゃあ、あの白い機体は?」

「それは……私は知りませんが、兄さんの方が」

 チラッと床に倒れているレンを見るリサ。レンは、立ち上がるとコキコキと首を鳴らす。

「ああ、あの機体には私がザフトにいた頃の地球連合のパイロットが乗っていてね〜」

 その言葉に皆の表情が驚愕の彩られる。

「あ、ちゃんと除隊申請はしましたよ」

 あらかじめ自分が脱走兵ではないとアピールするレン。すると、それを裏付けるように、デュランダルが言って来た。

「それは間違いないよ。彼は以前、フブキ隊という一部隊を率いていたのだよ」

「ま、オペレーション・スピットブレイクで全滅しちゃいましたけど」

 肩を竦めて言うレンに、何人かが渋面を浮かべた。オペレーション・スピットブレイク……先の大戦で、ザフトが地球連合の本部であるアラスカのジョシュア に総攻撃を仕掛けた大規模な作戦。

 だが、連合側が密かに基地の地下に作っていたサイクロプスと呼ばれる大量破壊兵器を使用し、連合・ザフトに大きな被害をもたらした。

「しかし何でまた海賊に?」

「まぁ色々ありまして……時に私達はどうなるんですか?」

 まさか死刑に、とレンが質問するとタリアは表情を顰めた。正直、味方ではない彼らを自由にする訳にはいかない。しかし、敵と言えばそうでもない。彼らワ イヴァーンは、武力を奪い戦争回避を目的と主張する海賊だ。だから思想は今のプラント――正確にはクライン派の考え――と同じなのだ。多少、やり方が強引 だが。

 仕方なくタリアは、拘束し、部屋に軟禁すると言い、レンとリサもそれに納得した。

「シン、ルナマリア。あなた達は彼らを部屋へ連れて行って頂戴」

「あ、はい」

「りょ、了解しました」

 言われてシンとルナマリアは、手錠をかけられた2人を案内しようとする。その際、レンはアスランとすれ違い、彼にポツリと呟いた。

「元気そうで何より……」

「!?」

 その言葉にアスランはハッとなって振り返るが、レンとリサはシン達に連れられて行った。

「フブキ……先輩」

 アスランが士官学校にいた時、ザフトの赤服を着て講習に来ていたのがレンだった。頭脳明晰、容姿端麗、MSの操縦はかつて彼の所属していた隊の隊長であ るラウ・ル・クルーゼに匹敵し、世界樹攻防戦では彼と共にネビュラ勲章を授与されるものの辞退した。

 先程、レンを見た時、昔の彼とかなり違っていたので別人かと思ったが、今の気遣いの言葉で、やはり本物だと確信した。

「どう思いますか、議長? 彼の言う通りなら三機を奪ったのは連合……」

「いや、そうとは限らんだろう」

 ひょっとしら、あの白い機体のパイロットもレン同様、軍を抜けて独自に活動している可能性もあるので、一概には言い切れないとデュランダルは言うのだっ た。




「えっと……シン君だっけ? あの白いMSのパイロットって君?」

 軟禁部屋に連れて行く途中、レンがそう尋ねて来ると、シンは不機嫌そうな顔で頷いた。

「そうですけど?」

「いや〜、あの時は危なかったね。下手すりゃ蜂の巣だったよ」

「…………それは遠回しに俺をヘボパイロットって言ってるんですか?」

 僅かに怒気を孕んだ視線を送るシンをルナマリアが「やめなさいよ」と制するが、シンは更に突っ込む。

「それとも俺を助けて恩を売ったつもりでいるんですか?」

「いや……そんなつもりはないよ。ただ、君は性格も戦い方も一直線過ぎるから、そこを狙われ易いと思っただけだよ」

「貴方に俺の戦い方をどうこう言われる筋合いはありません」

 シンの態度にレンは苦笑いを浮かべ、ルナマリアは嘆息する。どうも、カガリに暴言を吐いてからシンの機嫌が悪いのだ。しかし、その中でリサは額に青筋を 浮かべた。

「さっきから聞いていれば……何なんですか、貴方?」

「あん?」

「兄さんに助けられなかったら死んでいたくせに、お礼の一つも言わないで何ですか? 貴方、兄さん以上の馬鹿ですか?」

「んな……!?」

 辛辣なリサの言葉にシンは表情を強張らせる。

「妹よ、何でそこで私を引き合いに出す?」

「私のサイコーの侮辱です。兄さん以上の馬鹿なんて、そうはいませんから」

「いや、ラディックが……」

「アレはアホ艦長です」

 馬鹿兄とアホ艦長……ワイヴァーンのトップとエースが揃って貶されるのは如何なものかとレンは思う。

「こ、このガキ……いい気になりやがって! 良いか!? 俺は誰も助けてくれだなんて頼んだ覚えは無い!」

「覚えは無くても助けられたのは事実でしょう? その事に対してお礼ぐらい言ったらどうです?」

「やだね!」

「…………子供ですね、貴方。そんな人がエースパイロットだなんて……」

「そっちだってエースの兄貴の事を馬鹿とか言ってるじゃないか!」

「兄は私生活では馬鹿この上ないですが、MSの操縦だけなら貴方より何枚も上です」

「(立派になったな〜)」

 もう兄ちゃん、心配要らないと言った感じで目頭を押さえるレン。ルナマリアも、何だか彼に同情の念を感じざるを得なかった。

「もう、シンもやめときなさいよ。女の子相手に」

「リサも……そんなに口が悪いとお嫁にいけないぞ?」

 そして、レンとルナマリアが両者を抑える。が、リサとシンは互いを睨み合ったまま、ちっとも譲り合おうとしなかった。

感想

眼堕さんが第二話を送ってくださいました♪

最近一周年記念で動きが取れないですから、作品を送ってくださる方が現在のシルフェニアを支えているといっても過言ではありません!

今回の目玉はレン君とキース君の掛け合いでしょうね。

レン君のセンスは図抜けているという事なのでしょうが、問題はキース君とお互いを分かり合えるということでしょうね。

つまりは、フラガな血族と同様である可能性が大と言う事でしょう。

レン君はもしかしたらキース君に近しい存在なのかも知れませんね。

こうなってくると先読みのし辛い展 開になってきますね。

オリジナルキャラが多数登場する以上、調整が大変そうです。

まあね、出すキャラの設定を必ずSS内部で生かしていかないといけないし。

出した以上、最初から最後まで徹頭徹尾端役って訳にも行かなくなる。

オリキャラが増えれば増えるほど話を構成する事と同時にキャラクター性の確立が必要になってくる。

オリキャラが多いと色々大変なのは事実だね。

そのままおいておく訳にもいきませ んからね。

物語に出てきた以上、活躍させないという訳にも行きません。

その辺りは眼堕さんの考え方次第だけどね。

活躍の場は上手く話と合わせながら考えていかないと大変だし(汗)

ですね、駄作家と違うのですから張った伏線を忘れる等と言う事は無いでしょう。

上手く活躍の場を与えてくださるでしょう。


どうせ私なんて…(泣)


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