「なぁ、私は…間違ってないよな?」

 窓の外に見える青く輝く星を見つめながら、俺の隣に座る彼女はつぶやいた。

「…どうした?藪から棒に…」

 いつもの君らしくない…その言葉は胸にしまっておいて、読みかけの本を閉じると彼女のほうに目を向ける。

「いや…ただ、ここまでくるのに犠牲を払いすぎた気がしてさ」

 彼女は窓から視線をずらし、自信なさげにつぶやいた。

「地球保存計画…俺は間違ってないと思うよ。地球は疲弊しすぎた。地下資源の枯渇、砂漠化、食糧危機…いずれも俺たち人間のまいた種だ。ここで、母なる星 には安らいでもらった方がいいという君の考えは―――――」

「63800人…昨日までに、この計画に賛同し協力してくれた人たちが亡くなった」

 彼女は己の力不足を嘆くように拳を握る。この計画に反対するものは少なからずいる。それらが集まり、テロを開始したのだ。貴賎を問わず…この計画に協力 した人間は殺されていった。

「だが…いつかは誰かが言い出さなければならなかった。でなければ…いずれ人は滅ぶこと以外に選択肢がなくなるんだ」

 俺は彼女の握り締めた拳をゆっくりと解いた。

「分かってはいる…分かっているんだが――――――」

「また、ラクスに何か言われたのか?」

 俺の言葉に反応して彼女の肩が僅かに揺れる。…本当に嘘がつけない性格なのだ。

「確かに、彼女の言うことも分かる…。人が、人として生まれた故郷を捨てることは難しいかもしれない。だが…あと少しじゃないか。現在建造中のコロニーが 完成すれば…」

 俺が言いかけたとき、物凄い衝撃が俺たち二人を襲った。

「な、何だ!?」

 彼女を傷つけぬよう、しっかりと腕に抱いて衝撃から守る。

「君はここにいろ!俺は操縦席に行って様子を見てくる!!」

 それだけ言うと、俺は返事を待たず座席の合間を縫って走った。何も問題ないはずだ。これは極秘ルート…しかもお忍びでの渡航だ。万が一にも情報がもれて いるはずがない。そう思っていた俺は、甘かったのかもしれない。操縦席の前まで来た俺は、暗証番号を入力し、客席とそこを隔てていた扉を開ける。


凄まじい光景だった


「くっ!」

 後ろからまるで台風のような風が起こる。操縦席は何者かに襲われ、穴だらけだった。空気が宇宙の中へと流れていく。

「くそっ!MSか!?」

 俺は吹き飛ばされそうな体を必死に堪え、再び暗証番号を入力して扉を閉める。

「まずいな…脱出艇へ急がないと…」

 俺は懐からガバメントを抜くと、弾が装填されているのを確認して安全装置を外す。恐らく相手はMSだろうから、こんなものが役に立つとは思えなかった が、何もないよりはましだった。そして、揺れは徐々に大きくなってきていた。

「くそっ!まずい事になった…操縦席は既にぶち抜かれてる。直ぐに脱出艇に向かおう!」

 俺は揺れるシャトルの中、座席にしがみつく彼女の腕を取ると、脱出艇の収納されている機体後部へと急いだ。

「なぁ…私、見たんだ」

「何をだ?」

 やけに長く感じる通路を走りながら、俺は彼女の言葉を聴いた。

「大きな翼を持ったMSが…その翼を放って、さっきこのシャトルを攻撃していたのを―――――」

 俺は、彼女の言葉に立ち止まった。

「そんなはずあるか!?あれは…あの機体は封印が施されたはずだ!大体、あの機体の場所は一部のものしか知らないし、たとえ発見されてもあれはあいつにし か操縦できない――――――」

 そこまで行って俺は気づいた。そう…最悪のシナリオに。

「あの機体の場所は一部のものしか知らない。そう…君と、ラクスだけだ」

「今回のプラントへの極秘訪問…ルートを作成したのはラクス。そして、あれを操縦できるのは、キラだけだ」

 俺の言葉を継ぐように、彼女が告げた。そして、俺は理解した。あいつらも…テロリストだったのだと。

「そうか。あいつらが…な」

 もう、涙すら出ない。信じていた友に裏切られた。欺かれていた。世界は…俺たちが必死に戦って守り抜いた世界は、あの頃から何一つ変わっちゃいなかった んだ。

「危ない!!」

 彼女の後方から爆炎が迫っていた。俺は咄嗟に彼女をその腕に抱くと、その場に伏した。そして、炎が全てを飲み込んでいった…。




































「…ラクス、終わったよ」

 ストライクフリーダム…“最強の代名詞”と呼ばれるこの機体を駆り、僕は大切な半身と友を殺した。

『ご苦労様ですわキラ』

 モニターの向こうに映る彼女の顔は妙に晴れやかだった。

「どうするつもり?」

『コーディネイターとナチュラル…共に過ごせる未来を目指しますわ』

 僕はそういうつもりで言ったわけじゃない…。

『勿論、キラも手伝ってくださいますわよね?』

「君が…そう望むなら」

『…やはり、お優しい方ですわね。他人のために涙を流せるなど』

 パイロットスーツのメットのバイザーを上げ、目元を拭う。確かに、僕は泣いていたのかもしれない。心が…張り裂けそうなほど痛いのだ。

『それでは、地球でお待ちしてますわね…キラ』

 それだけ言うと、彼女が映っていたモニターは消えた。

「ラクス…僕は、どうすればいいんだい?友を…姉をこの手で殺した僕が…」































―――――臨時ニュースをお伝えします。本日未明、オーブ代表首長カガリ・ユラ・アスハ氏の乗ったシャトルが何者かによって襲撃されました。氏は護衛のア スラン・ザラ氏と共にプラントへ極秘訪問の予定だったとの事です。現在も捜索は続いていますが、発見は絶望的との事です。アスハ氏は地球保存政策の中心人 物であり、この政策に携わった者を無差別に攻撃目標とするテログループに襲われたと見て、連合、オーブ、プラントの三国は合同調査を開始しております ―――――


















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