スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第四話「佐世保の攻防  立ち上がれ、悪を絶つ剣よ!!」


  ナデシコC ブリッジ

「ドック内にナデシコ固定。」

「相転移エンジン停止、完了。」

「異常なし、ですね。」

ハーリー・ラピス・ルリの報告が届き、

「みなさん、お疲れ様でした〜。」

ユリカの艦内放送が流れる。

これがナデシコの日常。


   格納庫

「よし、こっちも終わった。タカヤ〜そっちはどうだ?」

前のスペースに仰向けになっているグラディエーターに呼びかけるシン。

「こっちもエンジンの調整が終わったぜ。さすが香織、いい腕してるよ。」

端から見ればにぎやかな日常だが、顔の絆創膏が痛々しい・・・

「ここの整備士さん達はいい人ばっかだな。」

「ああ、みんな香織みたいだったらどうしようかと。」

と、

「私がどうしたって、タカヤ?」

ビクッと二人の肩はねる。

「ど、どうしたの?」

恐る恐る尋ねると、

「いや、香織のことを話してたんだよ。」

「やっぱ整備に関しちゃ香織が一番だからな。」

逃げたか。シン、タカヤ。

「ありがとう、でも前みたいな無茶はしないでよ。もししたらもっとすごいことになるわよ。」

もっとすごいことって?

二人は聞きたいのをこらえ、素直に謝る。

「「ごめんなさい。」」

と、目の前にウインドウが現れ、ハーリーが映る。

「みなさん、終わったならご飯にしましょうよ。食堂にいるので来てくださ〜い。」

といい、ウインドウが閉じた。

「もうそんな時間か。」

「朝から出撃だったからな。」

「食堂へ行きましょうか。」

そういい、三人は格納庫から出ていった


   食堂

「あ、みなさんこっちです。」

ハーリーが手を振っている。

席にいくとプロスを除くさっきのメンバーがそろっていた。

「すみません、相席させてもらいます。」

「どうぞどうぞ、ここの料理はどれもおいしいよ〜。」

「なんたってアキトさんが作っていますからね。」

と、ルリの発言にシン達は驚いた。

「え、アキトさん料理できるんですか。」

「パイロットが料理って、ここにはコックさんいないんですか??」

タカヤの最もな問いに、ラピスとルリがかえす。

「アキトはパイロット兼コックさん。」

「それはナデシコA時代からの決まりなんです。」

それにシンは感心していた。

「アキトさんって器用なんですね。」

「そうかな、元々俺はコックになりたかったからね。それにナデシコCはワンマンオペレーションの艦だからね、そんなに人数はいないんだよ。」

確かに、とシンは思った。

ナデシコCはいざとなれば一人で動かせる艦だ。最も、そのためにはマシンチャイルドと呼ばれるIFS強化体質の人間と優秀な人工AIが必要になる。

「でもマシンチャイルドといっても、普通の人と変わりませんよね。」

ルリ、ラピス、ハーリーをみるシン。

「でも、民間の中には結構反対の意見もでているんですよね。戦争のためなんかに生命を弄ぶなとか、反人道的とか・・・」

「おい、香織!」

タカヤの言葉に、香織ははっとなり口を手で覆う。

「ご、ごめんなさい。あなたたちが悪いってわけじゃないの。」

しかしルリ達は笑いながら、

「気にしてませんよ、そんなこと。」

「昔は嫌だったけど、今はアキト達がいるから。」

「僕もこの力を嫌いになったことはありません。大切な人たちを守ることができますから。」

「強いですね、あなた達は。」

シンは苦笑いをしながら言うが、

「それをいうならシンさん達もそうですよ、僕たちみたいに特別じゃないのに死ぬ危険がある軍に入るなんて。」

シンとタカヤはその言葉を聞き、上をみながら言った。

「俺は特別な力なんてもってないけど、平和を守りたい、人々の笑顔を守りたいと思ったんです。」

「火星の後継者の乱で奴等に協力していた人間が結構でてきて、一気に人材が不足しましたし、そんな時にまた戦いが起きれば大勢の人々が苦しむ。

 それを無くしたいと思ったんです。でも俺もタカヤも、いきなり実戦はきつかったです。」

リョーコとサブはそんな二人の肩を叩く。

「立派立派、そんなこと言えるなんてすごいぜ。」

「上層部もお前達みたいなら戦争なんて起きねえのになあ。」

話が終わったのをみて、アキトはパンっと手を叩く。

「さて、そろそろ注文を聞こうか。」

シンはアキトに質問をした。

「でもアキトさん、いつも一人でやってるんですか。いくら少ないといっても整備班は結構いますよ?」

「それは大丈夫さ、心強い助っ人がいるからね。」

「そうなんですか、じゃあ俺はこの」

キイン

シンは突如感じた寒気にゾクッとした。

「どうした、シン?」

「な、なあタカヤ。今何か・・・」


ヴイーヴイーヴイー


『ルリ、一大事』

と、オモイカネのウインドウが表示された。

「何があったの、オモイカネ?」

『アンノウン接近、データ照合中・・・アンデッド30体確認。空戦タイプ20、水中タイプ10だよ。』

「ユリカ!!」

アキトにいわれる前に、ユリカはコミュニケで艦内に通達する。

「総員第一種戦闘配備、全クルーは持ち場についてください。サブ君とリョーコちゃんは、私達とブリッジへ。」

「シン君タカヤ君、俺達も行くぞ。」

「私達もブリッジへ急ぎましょう。」

そうして、各自は自分の持ち場へ向かった。



   ブリッジ

「ハーリー君、敵はどんな様子?」

「空、海と同速度で接近中です。ドックの後ろは、市街地ですよ。」

「アンデッド、第一警戒ラインを突破、まっすぐ向かってきてる。ドックまで八km。」

「パイロット各員、出撃急いでください。」



    格納庫

「シン、ビームライフルはどう?」

香織は格納庫の司令室から指示をだす。

「ああ、バッチリさ。ENパックも四つ持った、こいつの威力を見せてやる。」

そういい、ファントムはライフルを構える。

「確かにそのライフルは強力だけど所詮はビーム兵器よ。ビームサーベルも水中では使えないからね。」

「なら水中は。」

「俺の出番だな。」

と、シンの前にタカヤのウインドウがでる。

「大丈夫か、水中は地上とはまるで違うぞ。」

シンはタカヤを心配するが、

「それでもやるしかねえさ、なあ香織?」

「ええ、この中で水中戦をするならタカヤのグラディエーターが適任よ。なんとかふんばってもらうしかないわ。アキトさん。」

「仕方ない、水中はタカヤ君、俺とシン君は空の敵を落とすぞ。」

「「了解」」



「第二警戒ライン突破、全機、各リフトで地上へ。」

「二人とも、行くぞ。」

そういい三機は別々のリフトに乗り、地上に上がる。

地上へのハッチが開き、機体に光が反射する。

「じゃあ空は任せます。シン、足手まといになんじゃねえぞ。」

「余計なお世話だ・・・気をつけろよ。」

「ああ。」

グラディエーターが跳ね、海中に飛び込んでいった。

「さあ、俺達も行くぞ。」

「はい。」

二機はこちらに向かってくるアンデッドを視認し、バーニアで空中に浮かび上がる。

「シン君、来るぞ。」

「こいつのお披露目だ。」

ファントムはビームライフルを構える。

このライフルは元々MS用の物を香織が改良したもので、威力を残し小型化に成功したものだった

普段は腰裏のハードポイントにつけている。


ピピピピッ ロックの照準音が響く。


「落ちろ!!」

エネルギーが砲身から放たれ、一体のアンデッドの頭部を貫く。

そのままアンデッドは落下しながら消えていった。

「いい射撃だ、確実に仕留めている。」

アキトはシンの技量に感心していた。まだ二回目で動き回る敵を落とすこと、かつての自分とはまるで違うということに。

そして、まだまだ強くなると。そう思いながらハンドカノンを二体に叩き込む。


   

「やっぱ水中じゃ動きが鈍いか、奴等、どこから来る?」

一旦機体を止め、レーダーを見る。

「二手に分かれたか、まずいな・・・」

水中で自在に動くアンデッドに、鈍重のグラディエーターでは不利だった。

そうしてる間に、アンデッドは迫ってくる。

「ちっ、まどろっこしいことなんて考えず、突貫あるのみだ!!」

背部のドリルを装備し、左の五体に突っ込む。

「喰らえ、ドリルフィスト!」

両手を前に突き出し、ブースターの加速とともに二体のアンデッドを貫通する。

「もう一丁、ドリルブーストナックル!!」

爆音とともに両手からドリルが発射される。

一体を葬ったが、もう一体は避けてしまった。

戻ってきたドリルを元に戻し、姿勢を制御する。

「あっぶねえ〜ドリルの威力でひっくり返るとこだ。ようやく三体、この調子で・・・!?」

すると、今まで固まっていたアンデッドがバラバラに分かれたのだ。

「何だこいつら、一体・・・うおっ。」

グラディエーターの背に衝撃が襲った。アンデッドが鉤爪で攻撃してきたのだ。

「この野朗!!」

振り向きながら拳を振るうが、アンデッドはすでに離れていた。

そしてアンデッド達は同じようにヒットアンドアウェイをしてくる。

グラディエーターの攻撃はすべてかわされている。

バキャン バキャン 何かが砕ける音がした。

「背部のドリル二対破損。装甲ダメージ三十%。」

AIが危険 危険と警告をする。

「くっ、このままじゃ・・・」


タカヤのグラディエーターはドリルを破壊され、使える武器は拳と蹴りだけだった。

そのことは上の二人、ナデシコにも伝わっていた。


    ナデシコCブリッジ

「グラディエーターの破損率三十%を突破。」

「背部のドリルも破壊されています。」

「ハーリー君、シンさんとアキトさんに至急援護に向かうよう指示を。」

「了解。」

返事をする前にハーリーはすでに指示を送っていた。

「シンさん、アキトさん、何とか突破してグラディエーターの救出を。」

しかし、シンとアキトもそれどころではないようだ。

「わかってる!そうしたいのは山々なんだが。」

「こいつら、お互いに連携をしてきてる。今までのデータにはなかった。」

「グラディエーターが引き離されてる。急いで!!」

焦るラピスの声が響く。

「ルリちゃん、ナデシコは?」

「あと10分はかかってしまいます。」

「おいハーリー、俺とサブの機体はどうなんだ?」

「だめです、オーバーホール中で組み立てもされていません。」

「くそ!!」

「そんな・・・二人ともがんばって!!」

こうしてる間にも、グラディエーターは攻撃を受けていた。


「こうなったら・・・アキトさん、今から機体のリミッターを解除して奴等を瞬殺します。その間に。」

「わかった、頼む。」

「リミッター解除、閃双・連牙斬!!」

メインカメラが強く光り、ブースターの輝きがます。

シンの機体が高速で動き、すべてのアンデッドの首を落とす。

「アキトさん頼みます。」

「ああ、後は俺が。」

「敵増援、空戦タイプ10体。二時の方向。」

アキトとの通信にハーリーが割り込んできた。その顔は青ざめている。

「マジかよ・・・こんな時に!!」 

「くそ!!」

アキトはコンソールを叩く。



「敵増援、ファントム、サレナと戦闘に突入。」

「グラディエーター、もう限界です!」

「タカヤさん、脱出してください!!」

ブリッジにルリの叫びが響く。



「だ、だめだ・・・逃げようにも進路をふさがれちまう。」

アンデッドは水中を動き回るだけでなく、巧みにグラディエーターの進路をふさいでいた。

「悪い、俺はここまでみたいだな。ちぇ、もうちょっと生きたかったぜ。」

そのタカヤの声を聞き、シンは激昂する。
    
「馬鹿野朗、何いってやがる。こんな奴等すぐに片付けて。」

「シン、お前は通常戦闘がやっとだろ。無理すんなよ。」

「あきらめてはだめだ、希望の光を消してはいけない!!」

アキトの脳裏に、今まで守ることのできなかった人達の姿が浮かぶ。あの時と同じ思いをしたいのか、俺は!!

「何か、何か方法があるはずだ!!」

と、シンの言葉に答えるように、

「そう、まだ希望はあるわ。」

香織のウインドウがコクピットに開く。

「何か方法があるのか、香織?」

「ええ、ようやく調整が終わったの。今から射出するわ、グラディエーターの『剣』を。シン、タカヤに渡して!!」

「任せろ!!」


「ミデア発進。」

ミデアが佐世保から飛び立つ。

「180度回答、後部ハッチ開け!!」

香織の言葉を、整備兵が行動に移す。

「了解、カタパルト射出OK。」

「往くわよ、射出!!」

大きな剣が射出された。



「何としても、あれをタカヤに。」

ファントムは今出せる最高スピードでそれに追いつく。

そこにアンデッドが一体立ち塞がるが、

「失せろ!!」

サレナのハンドカノンを喰らい、落下していく。

ファントムは腕を伸ばし、それの「柄」の部分をつかむ。

そしてグラディエーターの上空に行き、海に向かって投げた。

「受け取れ、タカヤーー!!」


ブンッ  バシャーン


それは光を反射させながら沈んでいく・・・


「くっ!?」

グラディエーターは急浮上し、それの「柄」の部分を両手で握る。

「確かに受け取ったぜ、シン!!」

そして、再び海底に降りる。

「よくもやってくれたな・・・お返しだ。」

その言葉とともに、鍔の部分が広がり刀身を中心に巨大な刃が現れる。

「これが斬艦刀・・・グラディエーターの真の姿。」

アンデッド達は斬艦刀に警戒していたが、一体が正面から向かってくる。

「斬艦刀・一文字斬り!」

グラディエーターはアンデッドの突進を避け、刀を振るう。

アンデッドは避けることなく、上下に分かれた。

「もうこれ以上やらせねえ、かかってきたがれ!!」

アンデッドにこの声が聞こえたかは解からないが、いいしれぬ気迫に襲われたのか再びグラディエーターを囲みだした。

「もう効かないぜ、斬艦刀 旋・風・斬!!」

グラディエータは渾身の力で刀を水平に振り回し、その勢いで上に振り上げた。



「これでラスト!!」

ビームライフルが最後の一体を貫く。

シンとアキトは肩で息をしながらナデシコに通信をいれる。

「こちらは全て倒した。タカヤ君から連絡は?」

「わかりません、現在通信不能です。」

シンはそんな言葉も聞かず、ファントムを動かす。

「これから水中にいきます。ナデシコも」


ドパーン 水中から水しぶきが上がる。そこからでてきたのは・・・


「こちらグラディエーター、目標撃破。これより帰還します。」

満身創痍のグラディエーターだった。

「無事だったか、タカヤ。」

シンは通信が出来ないことと知り、グラディエーターの正面に行きコクピットに話しかける。

「ああ、助かったぜシン。希望をあきらめてはだめだったな、ありがとう。」

二人はお互いの手を叩いた。

横にサレナも降りて来る。

「全機報告せよ。」

「ファントム、OKです。」

「見たとおりボロボロだが、帰還に問題ありません。」

「よし、帰還するぞ。」

「「了解」」



   ナデシコCブリッジ

ブリッジに行くと、プロスが立っていた。

「みなさんお疲れ様でした。ドックも無事ですし、市街地も大丈夫でしたよ。」

「いえ、ところでグラディエーターは・・・」

香織は手元のダメージチェックを見る。

「装甲を取替え、新しいドリルを持たせればいいだけです。機能中枢が無事だったのは幸いでした」

「ではすぐに発進できますかな、提督?」

「はい、例の調査ですね。」

「調査?」

「何のですか?」

「そうでしたね、三人はまだ知りませんでしたか。まあ詳しくは後ほどということで。提督。」

「はい、ハーリー君、ラピス、お願い。」

「了解です。」

「わかった。」


こうしてナデシコは戦いを終え、宇宙へ飛び立つ。



次回予告

戦いを終え、ナデシコは宇宙のデブリ帯で起こっている謎の失踪事件の調査に向かう。
兵どもが夢の跡、そこに潜むものとは?


スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第五話「デブリ帯に潜むもの」

シン「なぜだろう・・・ここは、とても冷たく感じる・・・気持ち悪い。」





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