スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第六話「ファーストコンタクト」


デブリ帯でのダメージを修理するため、ナデシコCは新地球連合所属コロニー「ロンデニオン」に向かった。


「ロンデニオン確認。通信来ます。」

ハーリーがロンデニオンからの通信をユリカにつなげた。

「こちら新地球連合所属コロニー「ロンデニオン」。貴艦の所属と艦名を。」

「こちら、宇宙軍第四艦隊所属ナデシコCです。入港の許可を。」

「了解した。ガイドビーコン発射。」

正面の一番ゲートからガイドビーコンがナデシコに発射された。

「では、車庫入れお任せしちゃいまあす。」

「了解、ロンデニオンへようこそ。」


ナデシコは、ロンデニオンへ入港した。


「さて、修理はどれくらいかかるのか、香織ちゃ〜ん。」

ユリカはコミュニケで香織につなげる。

「はい、話はわかっています。ここの整備士達と協力して一日ってとこでしょう。ただ・・・シンのファントム、

 リミッター解除と無茶な斬り込み、両足が完全にオシャカ、さらに爆発の影響で全身に相当ガタがきているんです。」

シンはしゅ〜んと小さくなる。

「私達整備班は徹夜確定、今日一日は絶対に無理です。」

「香織、本当にすまねえ。」

シンは香織のウインドウに頭を下げる。

「いいのよ、これくらい任せておきなさい。」

「わかりました。そちらに任せます。」

「了解。」

ユリカはプロスに問いかける。

「う〜ん、プロスさんどうします?」

「そうですね〜、私達がいても何も出来ませんし、今日一日は外への外出を認めましょう。」

サブとリョーコは嬉しそうに言う。

「お、マジか。」

「やったぜ。」

「決まりですね。艦には私が残ってますので、現在は午前十一時、午後六時までには戻ってきてください。」

「は〜い。」



「アキト〜どこ行こっか?」

「あ、あの・・・ルリさん。僕といっしょに。」

「アキトさん、行きましょう。」

「私も。」

「あ、ああ・・・」

「行こうぜタカヤ。」

「おう。んじゃ、また後で〜。」

「俺達も行くか、サブ。」

「ああ、がんばれよハーリー(笑)」


「・・・寂しいです。(泣)」


一人残されたハーリー。

「ま、今更ですしね。」

みんないなくなり、すでに慣れっこなのかハーリーも街へ行こうと動きだす。

「ゲーセンにでも行こうかな。」

特にすることもないので、ゲームセンターに行くことにしたようだ。

「え〜と、今ここだから・・・」

ガイドマップをみて、自分の位置を確認する。

「あ、あった。」

さっそく見つけて、中に入る。

今日の彼の格好は、黒いTシャツにジーパンというラフな格好だった。ただ両手には、IFSを隠す手袋をしている。

どこからみても、軍人には見えなかった。

「さてと・・・あ、エステのシミュレーターか。」

最近次々にバージョンアップしているもので、しかもネルガル製だったので何回かやったことがある。

彼も十八歳なので、こういうことに興味だってあるのだ。

「久し振りにやろうかな。」

スリットにコインをいれ、筐体が開き中に入って閉じる。

「コネクタはいらないっと。」

手袋を外し、選択でコネクタなしを選ぶ。

「ルートは、ハードルート。」

三つの中で一番難しいといわれるルートを選択する。

次に機体と武装を選ぶ。

「(エステの色は、蒼黒。)」

自分の瞳の色だけではサブと被るので、いつも髪の色もプラスした結果こうなっている。

そうしてステージは荒野だった。このゲームは全五ステージからなっており、ランダムで決まっている。

作戦内容は時間内の敵機殲滅。

「(フレームは空戦。武装はいつもどおり、メガラピッドライフル二丁にしよう。あとはイエデミットナイフ一本。)」




彼は五年前からサブロータとアキトに頼み、訓練として機動兵器での戦闘を教えてもらっているのだ。

腕もそれなりに良く、サブ曰く、素質があり呑み込みが早いとのことだった。

これは彼がよく使う武装であり、たまにアキトともシミュレーターをやっているのである。

理由は、初めはルリに認めてもらいたいからだったが、今は違った。

テンカワアキトに追いつきたい。自分がどこまで強くなれるのかと・・・新しい目標で、アキトの後ろ姿を追いかけているのである。

しかし、腕は同年代の頃のアキト(TV版)よりは、いいのだ。

ちなみに軍人として武術も教えてもらっているらしい。サブとアキトは以外と気が合うようで、いつも一緒に教えてくれていた。

二人はハーリーの目標であり、頼りになる兄貴分でもあった。




音楽が流れ、画面が変わり荒野になる。

「(よ〜し、行くぞ!)」


READY? GO!!


バッタが向かってくる。数は十五体ほど。

「まずは。」

左のメガラピッドライフルを連射。意外に正確な射撃である。彼は接近戦よりも射撃戦が好みなのだ。

多少フィールドに阻まれたが、四機の撃墜に成功した。

しかし残りのバッタ達が一斉にミサイルを発射する。

「(ここは後ろに。)」

エステを後退させ、ミサイルが自分に向かって来た頃合をみて、左のメガラピッドライフルを投げつけ破壊した。

これは、以前アキトのやっていたことを参考にしていた。

(TV版第1話のアキトがやったのと同じです。あの時投げつけたのはバッタでしたが。)

「危ない・・・は!?」

しかしやはり全ては爆発せず、何基かのミサイルが迫る。

それを右のメガラピッドライフルで撃ち落す。中々の技量だ。

「あと・・・百二十秒」

このゲームはエネルギー供給がなく、各ステージごとに武装や弾、エネルギーが回復するようになっている。

「一気に行くぞ。」

左にイエデミットナイフをもち、メガラピッドライフルを乱射しながらバッタに迫り、突き立てる。

これでバッタは機能を停止する。

「(よし、でもまだ遅い。)」

サブやアキトならもっと速いだろう、まだまだ甘いと思っている。しかし、この反応の速さはかなりのものだとハーリー自身気づいてなく、

二人はあえて黙っているのだ、彼が自惚れないようにと。

「もう少し・・・え!?」

突如画面が暗くなり、「WARNING」と表示される。

「(乱入か!!)」

このゲームも数ある格ゲーと同じ、乱入が可能なのだ。むしろこっちがメインである。

「ステージは、海上か。」

ステージは乱入者が自由に決められ、その後両プレイヤーが機体、武装を選択するのだ。

「ここならさっきと同じでいいか。」

両者の選択が終わり、場面が変わる。

一面の海。陸地はどこにも無い。相手は、

「く、紅・・・」

相手はハーリーと同じ空戦で、色は血のような紅だった。しかも、

「ナ、ナイフ一本だけ?」

エステは右手にイエデミットナイフ一本だけをもち、他はなにもなかった。ミサイルもはずしてある。

よほどの自信があるのだろうか?



READY? GO!!



「(とにかく、近付かせなければ僕の勝ちだ)」

そう思い、両手のメガラピッドライフルを向け、撃つ。

銃口が火を吹きながら、弾丸を発射する。しかし、

「(す、すごい!?)」

相手はその弾幕を器用にかわしながら、次第に接近してくる。

「なら引き付けて・・・そこ!!」

限界まで引き付けて放った攻撃を、エステは何と前かがみの機体を回転させて、避けたのだ。そして自分の弾丸がきれた。

二丁の場合、弾数は増えるが交換する時はかなりの隙ができてしまうのだ。

「しまった。」

慌ててマガジンを交換しようとしたが、すでに目の前にはナイフの切っ先が迫り・・・

画面がブラックアウトし、筐体が揺れる。


YOU LOSE


「やられた・・・のか。」

素人ではない、あの弾幕をかわしてくるのはかなりの経験が必要だった。

「はあ〜、まだまだ弱いな、僕は。」

筐体からでて、隣に目を向ける。

「(どんな人だろう?ま、関係ないか。)」

たった数分だったが、それなりに楽しめた。

「(戻ったら練習しないとな。)」

彼のエステの操縦がうまくなったのはこの真面目な性格のおかげだ。アキトやサブの動きなどを見て、それを自分の物にしようとする。

最近はブリッジよりもシミュレーターかトレーニングルームにいる方が多い。時間があれば常に訓練を続けていて、それゆえに上達も早いのだ。

だがそのことにもまったく彼は気付いていない(笑)まあ、真面目なのはいいことだけどね。

アキトもサブも、そんな一直線に前だけに進もうとするハーリーを見て、手助けをしているのだ。

時計を見ると、十一時半だった。

「マックでいいかな。」

向かいにある有名ファーストフード店に入り、ハンバーガーを二つ注文。二階の窓際の席に座り、ボ〜と下を見ていると、

「あれ、シンさんとタカヤさん??」

下で、シンとタカヤが二人組みの女性に話しかけてる。ナンパ中のようだ。

「ナンパか・・・あ。」

二人の女性は手を振りながらシンとタカヤの横を抜けていく。二人は灰になった(笑)

「(振られましたか。お気持ち、お察しします。)」

三年前まで何回も同じような目にあってるからな・・・と、ハンバーガーを食べ終え下に降りると、まだ固まっていた。

「(僕も毎回あんな感じだったんだろうな。)」

なんとなく、サブロータが自分をからかう気持ちがわかった。

逝っている二人を見ないようにし、歩いていくとショッピングモールで、

「アキトさん?」

どうやら服を買いに・・・いや、違うようだ。三人の女性が見える。



「ねえねえアキト、やっぱりこっちの方がいいかな?」

「アキトさん・・・あの、どうでしょうか?」

「アキト、似合う?」

ユリカ、ルリ、ラピスが服を持ってアキトに迫っている。

「そんな、いっぺんに言わないでくれよ〜(泣)」

どうやらアキトが三人に迫られているようだ。周りの男性客や店員が、殺意の波動をはなっているし。

アキトはそれに気づき、冷や汗を流している。これが嫉妬の力か・・・



「(ルリさん・・・はあ〜)」

彼女の目にはやはりアキトしか映っていない。十五の時勇気をだして告白し、見事に玉砕したのであきらめたつもりだったけど、

ルリが見ているのはアキトだけだと、自分に言い聞かせて納得したつもりだが。

「(吹っ切れたと思うのにな〜)」

まだ心のどこかで、ルリのことを思っているのか・・・と、

「今度は、サブロータさん達か。」

しかも何やら怒声が聞こえる。



「ま、待ってくれリョーコ。」

「てめえー!また女作る気か!!」

「いや・・・これは男の本能というもの。」

「(ぶちっ)馬鹿野朗ーー!!!!」

右の上段回し蹴りが、サブの左側頭部に炸裂。吹き飛ばされ道端に転がる(汗)

(ここは、公共の場ですよ。By ハーリー )  

「けっ」とはきすて、リョーコはその場を去っていく。

サブロータは・・・動かない、ただの屍のようだ。



「(またですか、よく夫婦生活続きますね。)」

半分あきれ、半分そんな仲のいい二人をうらやましく思いつつ、サブをスルーしてその場から離れた。

今声をかければ八つ当たりがくると知っているのだ。長年の付き合いから・・・

わざわざ自分から地雷を踏む気はない。こういう危機察知の力も、成長した証だろう。



「(どうしよう、ナデシコに戻ろうかな。)」

と、前の横断歩道を歩いている女性に、信号無視の車が迫っていた。

「危ない!!」

口より先に体が動き、間一髪その女性を押し出し、自分の体をしたにして受身をとる。

その車はそのままかけていった。

「つ、なんて奴だ!!」

さすがのハーリーも怒り、去っていった方向を睨みつける。

「あ・・・」

助けた女性は、無事のようだ。

「あの、大丈夫ですか?」

「いえ・・・その、手。」

「へっ??」

スーとその女性の視線を追っていくと、

しっかりと、掴んでいた。

何を?って聞いちゃダメだよ。

無意識に力が入り、すばらしい感触と共にグニャっと歪む。

「キャッ。」

「(あ、ユリカさんより大きい・・・って)うわ、ご、ごめんなさい!!」

慌てて手を離し、離れるハーリー。顔が真っ赤だ。

「あ、いえ、気にしないでください。」


ザワ・・・ザワ・・・


どうやらギャラリーが集まってきたようだ。

「あ、あの、少し向こうでお話しませんか?」

「へっ・・・ああ、はい。わかりました。」

彼女の意図を理解し、立ち上がってその場から移動した。



  街外れの公園

「はあ、はあ。」

「つ、疲れました。」

二人は視線を避けるため、ここまで走ってきたのだった。

「ふう〜、さっきはその、すみません。」

「あ、いえ。こちらこそ助けていただいてありがとうございます。あなたは命の恩人です。」

女性は頭を下げる。

「そ、そんな、当然のことをしたまでです。あの、ちょっと待っててください。」

そういい、ハーリーは近くの自販機で二本のスポーツドリンクを買い、戻ってきた。

「どうぞ。」

「ありがとうございます、何から何まで。」

「い、いえ。」

そうして、しばらく会話が途絶える。

「あの、あなたの名前は?」

「ぼ、僕の名前ですか。僕はマキビハリといいます。」

「マキビハリ・・・いい名前ですね。とても優しそうで。」

「あの、あなたは?」

「私?私の名前は・・・」


「ローズ、ローズクォーツです。」


彼女、ローズクォーツは腰まである長い赤い髪、瞳は銀色で、背は百六十ほど。

スタイルは、ユリカ以上ミナト以下かな。(ハーリーの予想)

おっとりした顔立ちである。美しいというより、可愛いといったほうがいいだろう。

「ローズクォーツ・・・それって、紅水晶の?」

「ええ、私は両親がいないんです。父は私が生まれる前に他界し、母は私を生んだ時に。私は両親以外に身寄りがいないので、

 私は孤児院に入って、そこでこの名をもらったんです。」

「ご、ごめんなさい。そんなことを聞いてしまって。」

「ふふ、いいんですよ。昔のことですし、この名前は気に入ってます。ハリ君のご両親は?」

「僕は養子なんです。でも父さんと母さんは、二年前に交通事故で亡くなったんです。」

ローズは手で口を押さえる。

「!?そうですか・・・ごめんなさい。」

「いえ。」

「でもあなたのハリというのは、水晶の?」

「そうです。僕はこの名前をもらって、誇りに思っています。」

「私と同じ水晶の名前ですか。何かうれしいです。それに、とてもいい名前。」

「あ、ありがとうございます。あなたもいい名前ですよ、雰囲気にピッタリですし・・・ローズクォーツさん。」

「ローズでいいですよ、ハリ君。」

「そうですか、ローズさんはどうしてここに?」

「観光です。」

「観光ですか、ここは確かにコロニーとは思えないほど自然がありますしね。」

「ハリ君は?ここにすんでいるのですか??」

「僕は・・・ちょっと用事で。」

「そうですか。あの、この後お時間はありますか?」

「時間?はい、有り余ってますが。」

「同じ水晶どうしここで出会ったのも何かの縁ですし、その、よろしければ私の買い物に・・・付き合ってくれませんか?」

顔を赤くしながら、消え入るような声で問いかける。

「ぼ、僕がですか。」

初対面の女性に突然そんなことを言われ、ビックリするハーリー。

「あ、やっぱり失礼ですよね。いきなり。」

ちょっと、いやかなり寂しそうな表情のローズ。ハーリーは自分の胸が高まったのを感じた。

「そ、そんなことありません。全然問題ないですよ!!」

「それでは?」

「はい、行きましょうローズさん。」




「それで、どこに行くんですか?」

「久し振りに服を買いたくて。ハリ君に、私に似合ってるか見て欲しいんです。こういうのって一人では分かりづらいので。」

「わかりました。」

二人は近くのブティックに入る。

「私、男の人と来るのは初めてです・・・(赤)」

「何か言いました??」

「な、何でもありません。さて。」

棚に置かれている服を、一着一着確かめていく。



「どっちが似合うでしょうか?」

「とりあえず試着してみたらどうでしょう?」

「そうですね、じゃあ待っていてください。」

カーテンを閉め、試着室に入る。

反対を見ながら待っていると、シャッと音がした。

「あの、どうでしょう??」

微笑みながら、ハーリーに尋ねる。

「(ポ〜)」

それは、おっとりした顔立ちのローズによく似合うピンクのワンピースだった。

彼女の髪の色、そして色白い肌にとてもマッチしていた。

「ハリ君?」

「とてもよく似合っています。」

下を向き、顔を赤らめながら答える。

「そうですか、じゃあもう少し待っていてください。」

再びカーテンが閉められる。

「(かわいいなあ・・・ルリさんとは違う、女性の感じ。)」

さっきのローズの笑顔が頭から離れなかった。と、

「お待たせしました。」

「(は〜)」

タイトなタンクトップのTシャツの肩紐により、ローズの白い肩がよく見える。豊かな胸が強調され、下も膝上のキュロットスカート。

すらりとした脚がまぶしい。

思わず右手で顔を覆ってしまう。普段感じない女性という物を感じたからだ。

「ハリ君、どっちがいいと思いますか?」

「あの、どちらも似合いすぎてて選べません・・・ごめんなさい。」

「ふふ、そう言ってくれると嬉しいですね。なら両方買ってしまいましょう。」

嬉しそうに微笑み、レジへ向かう。

「ありがとうございます。合計二万三千円です。」

た、高い・・・店員の言葉に思わずそう思ったハーリーだが、ローズは財布から現金で支払った。

「ちょうど頂きます・・・お二人は恋人同士ですか?」

「えっ?」

「ち、違います!!」

「そうでしたか、申し訳ありません。とてもお似合いのカップルだと思ってたので。」

店員の言葉に、二人はちらっと互いの顔を見て、すぐに伏せてしまう。

「またお越しください。」

だが二人にそんな言葉は耳に入らず、ギクシャクしながら店をでる。

しばらく、お互いに顔をあわせなかった。



「(私達って、そう見えるのでしょうか?)」

「(恋人同士・・・か)」


そうしてしばらく歩いていると、

「あの、ハリ君?」

「は、はい!?」

「私達は、恋人同士にみえるのでしょうか?」

突然ローズがハーリーの前にでて、そんなことを聞いてきた。

「僕と、ローズさんが?」

「はい、私は・・・男の人といっしょに出歩いたことがないんです。」

「それは僕も同じです。」

「こういうのを、デートというんでしょうか?」

「どうでしょう、情けないかもしれませんが僕には・・・わかりません。」

「・・・ハリ君、まだお時間はありますか?」

「へ?あ、はい。ありますが。」

「じゃあ、少し私の趣味に付き合ってください。」

「趣味ですか?」

そうしてローズの後をついて行く。と、着いたのは午前中にいたゲームセンターだった。

「あの、何を?」

「これです。」

指差したものは、あのシミュレーターだった。

「えっ。」

「意外・・・ですか?」

「え、ええかなり。」

「そうですね、私も友人によく言われます。ハリ君はこういうのって。」

「大丈夫です、いけます。」

「では私のパートナーでいいですか?」

「はい、任せてください。」

そうして二人はコインを入れ、筐体に入った。

共闘を選択し、ローズが通信をいれてくる。

「ハリ君、ハードで構いませんか?」

「いいですよ。」

「では。」

ハードルートが選択され、ステージは・・・佐世保ドック。作戦内容は五分間の生存、または敵機の殲滅。

手袋を外し、機体と武装設定が始まる。

「(ここは陸戦フレーム、武装はいつもどおりにしてと。カラーリングも良し、往きますか。)」

そして両機の設定が終わり、場面が変わってエレベーターが地上に向かって上がっている。

光が漏れ、地上に上がった。

「(さてローズさんは・・・えっ!?)」

横を見るとそこにいたのは、あの黒いエステだった。やはりナイフ一本しか持っていない。

「まさか、あの人が?」


「(ハリ君は・・・え!?)」

ハーリーの機体を見て、ローズは驚愕する。

「(あのカラーリングに武装、もしかして。)」

慌てて通信をつなげる。

「あの、ハリ君は今日の午前中には?」

「やっぱりあれはローズさんだったんですか。」

「ええ、やっぱり私達って何か縁がありますよね。」

「そうですね。ところでローズさん、あなたは腕がとてもいいのですが何か訓練とかを?」

「それは・・・あ、始まりますよ。」


READY? GO!!


「どうします?」

「私って意外と好戦的なんです。ハリ君は援護を。」

「わかりました。」

前衛にローズ、後衛にハーリーという形になった。


「それでは。」

黒エステは右手のナイフを構え、目の前に現れたジョロの一体に突撃する。

「往かせてもらいます。」

ジョロは機関銃を発射するが、黒エステはハーリーの弾幕を避けた時のように、鮮やかな動きで接近していく。

「そこです。」

避けた先にいるジョロの一体を右足で蹴り上げ、機関銃を撃とうとしていたジョロの集団にぶつかり、巻き込みながら爆発した。

「固まりすぎですね・・・!?」

と、黒エステに生き残っていたジョロが突っ込んできた。回避しようとした矢先、後ろから弾丸が飛び込みジョロが吹き飛ばされる。

「(やっぱりいい腕です。)ありがとうございます、ハリ君。」

「いえ、そんな。」

と、その後ろにバッタが。

「ハリ君飛んで!」

「!?」

ペダルを踏み、上昇する蒼黒エステの下をワイヤードフィストが飛んでいきバッタを吹き飛ばす。しかし、

「ローズさん、後ろです!」

さすがハードなだけあり敵も多い。三体のバッタが黒エステの後ろに降りてきた。

黒エステは動ける状態ではない。

「落ちろ!!」

両手のメガラピッドライフルを空中で連射し、バッタ達を破壊する。



ステージクリアー



どうやら今のが最後だったようだ。

軽快な音楽が流れ、作戦の評価が出される。

結果は・・・トップレベルの「S」だった。

「やった。」

「ハリ君、やりますね。」

「ローズさんもお上手ですよ。」

「それを言うならハリ君もですよ。」

ニコっと微笑む。

「(か、かわいいなあ・・・)」

その笑顔に、思わず顔を赤くしてしまう。

「ハリ君。」

「はい、何ですか?」

「ハリ君は素人とは思えない腕ですけど・・・何かやってらっしゃるんですか?」

「僕ですか?(軍人とは言わない方がいいですよね)いえ、ただやりこんでるだけですよ。」

「そうですか、あれだけの腕ならパイロットでもできそうですね。」

「あ、ありがとうございます。でもローズさんはIFSを持ってますよね、何故ですか?」

「それは、ちょっと事情がありまして・・・」

「(何があったんだろう?)そうですか。」

「何か暗くなってしまいましたね。次にいきましょうか、ハリ君。」

「はい。」

そうして二人は、中々息のあったコンビネーションで全ステージをクリアーした。

筐体が開き、二人は外に出る。

「ふ〜、結構疲れましたね。」

「ゲームとはいえ、本物と同じですからね。」

「そうですね。」


You Get To Burning 君らしく ほこらし〜く 向かってよ〜


「あ、ごめんなさい。私のです。」

ローズの持っているバッグからだった。携帯の着信らしい。(この時代って携帯あるのか?)

バッグから携帯をだし、少し離れて会話を始めた。

「・・・で・・・とこ・・・もう・・・りました。」

電話を切り、戻ってきた。

「ごめんなさい、友人が戻って来いというので。」

「そうですか、仕方ありませんよ。どこで待ち合わせですか?」

「しばらく行ったところの、大きなガイドマップの前です。」

「ならお送りします。またさっきみたいなことが無いともいえませんし。」

ハーリーはニコっと微笑む。

「ありがとう・・・ハリ君。」

か細い声でローズが答える。

「いきましょう、ローズさん。」

「はい。」

ハーリーの横について、ゲームセンターをでる。

五分ほど歩き、メインストリートの入り口にある大型ガイドマップの前に着いた。

「まだですか。」

どうやらまだ来ていないらしい。

「あの、ローズさんはおいくつなんですか?」

「え?」

「あ、すいません。女性に年のことは・・・」

「十九歳です。ハリ君は?」

あっさりと答えた。

「僕は十八です。」

「私と一つ違いですか。でも私のほうがお姉ちゃんですね。」

「・・・・・・」

その言葉に、ついルリのことを思ってしまう。

「ハリ君はどこの出身なんですか?」

「僕は地球です。ローズさんは?」

「私は・・・サイド3です。」

「サイド3ですか。まあ今はお金さえあれば簡単に行き来できますし、距離もありませんしねえ。」

「ハリ君は地球ですか。あの、ハリ君は今の新地球連合をどう思いますか?」

「え、何故ですか?」

「少し気になりまして。それでどう思っているんですか?」

「僕は連合こそ真の正義、そして平和を造れるところだと思っています。」

「・・・それが本当だと、思ってるんですか。」

か細い声で、ポツリと呟く。

「え?」

「いえ、何でもありません・・・あ。」

二人の少し離れた所に、車が一台止まった。

「迎えが来たみたいです。」

「そうですか、じゃあここでお別れですね。」

「少し待ってください。」

ローズはバックからメモ帳とペンを取り出し、何かを書き始めた。

「?」

そしてその書いた部分を破り、ハーリーの手に渡す。

「これは?」

「その、私のメールアドレスです。もしよかったらメールをください。」

ハーリーの手を握りながら、頼み込むようにローズは言った。

「そ、それでは、今日は本当にありがとう。ハリ君。」

あたふたと助手席に入り、出発していった。

「・・・・・・・」

しばらくボ〜っとしていたハーリーだが、ハッと気付き、手の中の紙切れを見る。

「・・・帰ろう。」

時刻は、三時を周ろうとしていた。



   

「どうだった、久し振りの休暇は?」

運転をしている女性がローズに話しかける。

「はい、とてもよかったです。」

「ところでいっしょにいたあの男、何者?」

「か、彼は・・・(赤)」

「惚れたの?」

ボンッ

顔が一気に赤くなった。

「私が仕事をしている時に・・・まあ、あなたも見る目あるわね。いい男だったけど何よりも、心が純粋に感じたわ。

 まっすぐに前だけを見て、進んでいこうって感じね。そしてなによりも」

「優しい・・・暖かいって感じたんです。彼、マキビハリ君からは。」

「ローズもそう感じたの。そして名前があなたと同じ水晶ね。またこれは・・・運命だったりして。」

意地悪そうにはやし立てる。

「も、もう。意地悪しないでください。」

「で、どうだったの??」

「実は、私が車に轢かれそうになったところを助けてもらって、そのまま服の見繕いを頼んで。」

「ふんふん。」

「その後エステのシミュレーターを。」

「は?あなた、もっと考え付かない普通??」

呆れた言葉遣いに、ローズはムッとする。

「だ、だって私は初めてだったんですよ。ハリ君もそうでしたし、楽しめたからいいんです。」

「はあ、まあそれならいいけど・・・アドレスとかは??」

「それは、渡しました。」

「がんばったじゃない。もし彼から連絡があれば、脈ありかもよ。じゃあ尚のことこの先生き残らないとね。でも・・・体は大丈夫?」

心配そうにローズを見る。

「そうだといいんですけど、体もだいじょうぶです。私は賭けに勝ったんですよね。この力も。」

「そうね、戦闘も問題なかったし大丈夫よ。後は例のネルガルの計画、「Z計画」の奪取よ。他にもあるらしいけど、そこまでは確認できなかったわ。

 どうやら全部で三機あり、この内二機はこれから輸送されるとのことよ。ネルガルも自分達の中、そしてフルムーンに協力者がいるとは

 気付かないでしょうね。さすがに三年もかかったしね。すぐに向かうことになるけど、私はナデシコCの向かう月ドックで陽動をおこなうわ。

 そちらは任せるわよ、ローズ。」

信号で一時停車する。

「わかりました。でもネルガルもフルムーンも、そして連合も、一枚岩では無いんですね。それだけ今の連合は腐っている。

 真実は、誰も知らない。まともなのは一部の軍上層部のみ。政府や他の将校は自分の私腹を肥やすために。

 コロニーの駐留軍の将官も同じ・・・私の父を。」

「そう、私達は真の平和のために戦わなければならない。今のままでは地球は押しつぶされ、人々は苦しみ続ける。

 誰かがやらなければならないのよ。例え後世で何と言われても。あのデータは必ず役に立つ。彼らも行動を起こすらしいし。」

信号が青に変わる。

「はい、私達の理想のため、真の平和のためにも、必ず。」



   ナデシコCブリッジ 

午後六時、どうやらハーリー以外のメンバーも帰ってきたようだ。

「ふ〜楽しかった。」

「結構買いましたね。」

「楽しかった。」

「それは・・・よかったね(疲)」

やはりアキトは女性三人分の荷物持ち、そして嫉妬の視線を浴び続けかなり疲労しているな・・・お疲れさん。

「ったく、あいつは〜。」

「まままリョーコさん。」

「何回やりゃあ気がすむんだ、あいつは!!」

「サブロータさんですし、仕方ないですよ。」

「あいつの場合、一生変わらないだろうな・・・おっ。」

ドアが開き、サブロータが飛び込んできた。

「リョ〜コ〜、頼む見捨てないでくれ〜」

「おわ、サブ!?」

「頼む、許してくれ〜(泣)」

「わ、わかったから・・・行くぞ。」

二人はブリッジから出て行く。

「ふふ、相変わらずだね〜。」

と、

「「ち〜す・・・」」

シンとタカヤが入ってきた。

しかし、何やら落ち込んでいるようだが?

「どうしたんだ?」

「全滅・・・でした。」

シンの言葉にルリは小首をかしげる。

「はい?」

タカヤは疲れた顔をしながら、

「部屋へもどってま〜す。」

それだけいい、出て行った。

「なんだろうな?」

「さあ?ところで、ハーリー君はまだでしょうか?」

『ルリ』

「オモイカネ?」

『下を見て。』

そのウインドウに疑問を抱きながら、全員は下を見る。と、

「あ・・・」

増設され改良された二つ内、右のサブオペレーターシートにハーリーがもたれかかる様に眠っていた。

「ハーリー君、寝てるの?」

『三時過ぎに帰ってきて、仕事をしながら僕と雑談してたんだけど、疲れてたのか寝ちゃったんだ。』

「そうか・・・しかし彼は本当に十八歳か?」

ウインドウにだしたハーリーの寝顔は、どう見てもあと二年で成人とは思えないほど幼かった。

「アキトもあんな感じだよ。多少年を取った感じだけど。」

「ハーリーはそのことを気にしてる。あまり言わないほうがいい。」

「そうですね、さて・・・」

ルリは下に降りて、ハーリーの前につく。


ユサユサッ ユサユサッ


「ハーリー君、起きなさい。」

「う〜ん、後・・・五分。」

「はあ。・・・起きなさい、ハーリー君!」

「うわ!?何ですか、敵襲?」

飛び起き、周りをキョロキョロと見るハーリー。

「やっと起きましたか。」

「へ・・・僕寝てたんですか?」

「ええ、まったく涎までたらしてだらしないですよ。」

「うえ!?」

慌てて口周りを吹くが、

「冗談ですよ。」

「る、ルリさ〜ん。」

「(ふふ、手のかかる弟ですね。本当に。)」

心の中で微笑ましくそう思っていた。

「さあ、もうすぐ出航ですよ。」

「は、はい!!」


こうして、ナデシコの休暇は終わった。



 次回予告

ロンデニオンを出航し、月にたどり着いたナデシコ。
だがすでに、次の敵は迫っていた。
ドックに迫り来るMS達、赤い機体・・・
それは、ナデシコを新たなる戦いへと誘う者達だったのだ。
そして同時刻、極秘輸送中のある物を狙い、動きだす者達が。




スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第七話「月面を死守せよ 奪われたZ計画」

シン「誰だ・・・誰なんだ!!」



あとがき

こんにちは、今回はハーリーのがんばりが目立ちました。いや、彼も結構重要なんですよ、ここでは。あまり好きじゃない人もいるかもしれませんが。
ロンデニオンは、現在連合の所属コロニーとなっており、観光名所にもなっています。
今後も、読んでくださると嬉しいです。






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