スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第七話「月面を死守せよ 奪われたZ計画」



ロンデニオンを出航し、ナデシコCは月のネルガルドックに向かっていた。


   ナデシコCブリッジ

一通りの仕事を終え、時間は正午になっていた。特にすることのないブリッジの四人は暇そうにしていた。いや、一人は違うか。

「はあ、これでまたデスクワークに戻っちゃうのか。」

ユリカが愚痴を言っている。

「何が不満なんですか?」

それをルリが呆れながら尋ねる。

「だってずっと机にかじりついてないといけないんだよ、つまんないよ〜」

「ではどうしたいんですか?」

「アキトとどっかいきた〜い。」

そんなユリカにルリはため息をつく。

「なら有給をとっては?」

「そうしたいんだけど、アキトが了承してくれないのよ〜」

ルリとラピスは自分が誘ったらどうかと考えていた。

「「(じゃあ、私が誘ったら・・・)」」


いろいろ考えてる三人。しかしもう一人はというと、


「(サイド3か、有給を使って一度行ってみようかな。かなり溜まってるし・・・)」

かなりご機嫌らしい。当の三人のことは耳にも入ってない。

「(まさかこんなに早く返信がくるなんてな〜)」

昨日ロンデニオンを出た後、夜誰もいない時に一般回線でこっそりローズにメール送信をしていたのだが、朝確かめた時に返信されていたのだ。

(オモイカネには秘密にしてもらっている。)

彼が上機嫌な理由は、このメールに「一度サイド3に遊びに来ませんか?」と書かれていたからである。

年頃のハーリーには嬉しい内容だった。

「(僕はやっぱり、ローズさんのことを・・・)」

彼は自分自身の変化に戸惑っていたが、かつてルリに感じたことと同じだと思っていた。要は一目惚れということか。

「(ここは男らしく、いやまずは友達からはじめたほうがいいかな?う〜ん。)」

腕を組んで悩む。

「(サブロータさん・・・はだめだ。絶対言いふらすし、アキトさんは論外。ユリカさんもルリさんもラピスもだめ。

 相談するならリョーコさんかなあ。こんな時ミナトさんがいてくれたら・・・)」

「ハーリー君〜?」

「(でもなあ〜、もしまたルリさんの時と同じだったら、僕もう立ち直れないかも。)」

振られた時は荒れに荒れて泣きまくったし。自棄になって飲みなれない酒をサブロータといっしょに飲んだことは今でも覚えている。

(自分が酒に強いと知った時でもあった。)

「ハーリー君?」

「(何て返信すればいいかな。やっぱりここは直球で、いや変化球から入ったほうが。)」

「ハーリー?」

「(う〜んどうすればいい)」


「「「ハーリー(君)!!」」」


「うわあ!?」

三人のウインドウが大きくだされ、ビックリした。

「な、何ですかいきなり。」

「さっきから呼びかけても反応しないいだもん。」

「へっ?」

「気付いてなかったんですか?」

「は、はい。」

ラピスのウインドウがハーリーの横に来る。

「腕まで組んで、悩み事?」

「・・・まあね。」

ユリカは興味が出てきたようで、ハーリーから聞き出そうとする。

「何の悩みなの?」

「気にしないでください、ユリカさん。」

だがハーリーは目を閉じながら手を振る。

「え〜、教えてよ。」

「気にしないでください。」

「教えて教えて〜」

「あの・・・」

「ねえねえ〜」

「・・・・・・」

あ、段々眉毛が逆八の字になってきた。

「ハーリー君、教えてよ〜。」

体が小刻みに震え始め、額にも青筋が。

「ハーリーく」


「いいって言ってるでしょう!!うざいんですよあなたは!!!!」


ブリッジに響く怒声、彼らしくない汚い言葉。

「あ・・・」

出した本人も、信じられないという顔で口を覆う。

沈黙が、その場を支配した。

「あの、僕先に休ませていただきます。」

そして逃げるようにブリッジから出て行った。

一分後、沈黙が消える。

「ハ、ハーリー君がグレちゃったよう。しかもちょっと怖かった。」

「今のはユリカが悪い。」

「私もそう思います。」

ラピスとルリが指摘する。

「え、何で?」

「ハーリー、嫌がってた。」

「ユリカさんがしつこく聞くから、ハーリー君も怒ったんですよ。あの子にだって聞かれたくないこともあります。」

「そっか、後で謝らないとね。それと私達も食堂に行こう。」(まったく反省してないですね。 Byルリ)

「でも、誰か一人はいないと。」

(いつもは順番で残っている)

ラピスは戸惑いながらユリカを見る。

「大丈夫だよ。もうすぐ月だし、オモイカネ自動航行に設定よろしくね。」

『了解』

そうして、三人は食堂へ向かう。


  食堂

食堂ではアキト、サブ、リョーコが談話していた。シンやタカヤはいないようだ。

「アキト〜来たよ。」

「ん、やっとか。」

三人も一緒の席に座る。

「何にする?」

「ラーメン。」

「私もそれで。」

「同じく。」

ユリカ・ルリ・ラピスは全員ラーメンのようだ。

「わかった。」

アキトは厨房へ向かう。

15分後、ラーメン三つが出来、三人は食べ始める。

「う〜ん、やっぱりおいしい〜。」

「提督、ハーリーはまだブリッジっすか?」

サブがハーリー不在なので、ユリカに尋ねるが、

ピタッ

ユリカの箸が止まる。

それを見て、アキトは目を細める。

「今度は何したんだ?」

「う・・・ハーリー君が、グレちゃったの〜(泣)」

「「「は?」」」

「このままじゃサブ君みたいに髪を染めて、背中に「無出死虎」って書かれた特攻服を着て、手に釘バットを持って、
   
 バイクに乗りながら夜の連合総司令部に吶喊(とっかん)しちゃうよ〜。」

いつの時代だよ・・・

「ユリカ、何言ってるんだ?」

「俺みたいにって、ハーリーに限ってそんなことありえませんよ。」

「まったく何をいいだすのかと思えば。」

「でも、少し見てみたいですね。」

「絶対ありえない。」

四人の感想は最もだが、一人まずい発言があるな。まあ確かにちょっと見てみたい気もするな、そこまで逝ったハーリーも・・・

「で、何があったんだ?」

「アキト聞いてよ、実は・・・」


かくかくしかじか


全てを聞き終わり、

「お前が悪い。」

即答か。ま、当然だな。

「ふえ!?」

「どう聞いても、提督が悪いぜ。」

「普段あまり怒らないハーリーがそこまでね。よほど触れられたくなかったんじゃないですか?しかもその態度・・・

 こりゃあ今までの分も入って、ついに嫌われましたかね?」

「ええ!!」

「彼はもう十八だぞ、当たり前だな。」

「本当に後で謝らないと・・・」

「アキトさん、肝心のハーリー君は?」

ラピスは周りを見ながら、

「ここに来てないの?」

と聞いてくる。

「ああ、俺達は見てないよ。」

ルリは仕方ないといった顔をしながらオモイカネを呼ぶ。

「オモイカネ、ハーリー君の現在地は?」

『検索中、発見!!』

そこは、

「瞑想ルーム?」

映し出されたハーリーは座禅中だった。



   瞑想ルーム

「(どうすれば。こうしていれば、きっと答えが・・・)」

静かな場所を探してここにきたようだ。どうやらメールの返信を考えているらしい。



   食堂

サブはそんなハーリーに疑問を持っていた。

「座禅か。」

「懐かしいな〜私もいったことあるよ。」

「俺もだ、ユリカに邪魔されたが。」

「む〜」

「それはいいとして、一体何で悩んでるんだあいつ?」

「・・・恋だな。」

ラピスとアキトはそれに反応する。

「恋?」

「ハーリー君がか?」

サブは顎に手を当てながら間違いないといった顔をしている。

「ああ、あいつが悩むのはこれくらいしかないだろう。」

「でもよ、あいつは確か。」

リョーコの言葉をユリカが引き継ぐ。

「ルリちゃんのこと好きだったはず・・・よね?」

「あ、それは。」

「前に振ったんですよね、艦長は。」

「はい。」

「え、そうだったの?」

知らなかった事実に、ルリとサブ以外のメンバーが驚く。

「三年前、でしたね。」

「そうですね。」

「・・・何で振ったんだ、ルリ?」

リョーコは真剣な顔でルリに尋ねる。

「彼を、私は弟としか見ていませんから。」

ラピスは首をかしげる。

「弟?」

「ええ、あの時からずっと。」

しかしその顔を見たリョーコは何故振ったか理解した。

「(ルリ、おめえまだアキトのこと・・・)」

アキトは納得したふうにうなずく。

「なるほど、彼が一時期荒れていたのはそういうことがあったのか。」

そうそうとサブは笑う。

「あいつ、あの時は滅茶苦茶荒れてたからな〜。俺もとばっちり喰ってよ、ひでえ目にあったぜ。まあ初恋ってのは中々実らないっていうしな。」

「でもよサブ、ハーリーって結構もてるんじゃねえのか?」

「あ、それは本当だよ。若い女性士官とかにはこの前のバレンタインでチョコたくさんもらってたし。」

ユリカはこういう情報はよく知っているのだ。

「だよな。まあサブよりマシかな。」

「おいおいリョーコ。」

「冗談だよ。でもルリ、おめえ惜しいことしたんじゃねえのか?」

「?」

「ハーリーは昔みたいに泣き虫じゃなくなったし、おめえに頼らず一人でも仕事をするようになったし、一途だし。

 何よりこの七年で一番変わってきたのはハーリーだぜ。ルリだって見てきただろ。」

「それは、そうですけど。」

「あいつだって、いつまでもおめえの近くにいるとは限らねえぜ?いつかは離れていくかも知れねえし。」

リョーコの言葉に、ルリはどう思っているのか・・・

「確かになあ、でもハーリーはもう艦長のこと何とも思ってないらしいっすよ。」

「本当なの、サブちゃん?」

「以前聞いてみたんすけどね、いつまでも未練を残さないって言ってたし欠片もなさそうでしたよ。ま、引きずらないだけマシですしね。」

「へ〜」

ラピスが感心したふうに呟く。

「・・・・・・」

ルリは無言になる。

「それにあいつ、あの後から急に強くなってきたしなあ、アキト。」

「ああ、三年前だから多分ルリちゃんに振られたあと、前にも増して訓練をするようになったんだ。何か目標が出来たのか、

 とにかくいい顔をするようになった。心が強くなったのかな?」

ユリカはよく三人がいっしょに訓練しているのを思い出す。

「そういえば、アキトとサブ君はずっとハーリー君と訓練してるよね。あの子って強いの?」

「彼のここ数年の成長速度はすごいよ。」

「ああ、エステの操縦も反応速度が速いし、何よりも射撃の正確さ。身体が大人に近付いてきてマシンチャイルドってこともあるだろうが。」

「やっぱり、何かきっかけができたからじゃないかな。サブはどう思う?」

「艦長を完全に吹っ切ったとも言えるぜ、でもなあ。」

「俺達も、いつまで彼に教えられるか、だな。」

その中の一言にルリは反応した。

「どういうことです?」

「ルリちゃん、俺達は世間では若いって言われるけど、もう三十なんだよ。でも彼はまだ十八。」

「パイロットも年には勝てねえのさ。だがハーリーにはまだ先がある、俺達を超える日も案外近いかもしれねえんだ。」

ユリカは上を見上げる。

「私達も、年を取ったってことか〜」

「それに、俺はハーリー君にあの時の俺と同じような間違いをしてもらいたくないんだ。」

急に暗くなったアキトを、心配するようにラピスが見つめる。

「アキト・・・」

「力がないから守れない・・・でもそれゆえに使い方を誤れば、また新しい憎しみを生む。

 かつての俺も、復讐と憎悪にまみれたように、彼にはなって欲しくないんだ・・・」

悲しい表情のアキト。

「あいつは、いつも信じて前に向かって進もうとする。そのせいか、予想外のことには・・・脆い。」

「あの子は純粋ですから。変わったようにみえても、本質は変わっていません。」

「ハーリー君は大丈夫だよ。強い子だもの。」

「そうだな、同年代だったころの俺とは大違いだ。」

「あのころは逃げてばっかだったもんな、アキトは。」

痛いところをつかれたな。

「うぐ!?」


あははは


と、

「みなさん、一体何をやってるんですか!!」

突然ウインドウが映る。

「キャって、ハーリー君?」

「もうすぐ月ドックですよ、だらけるにもほどがあります!!」

「ごめんなさい、もうそんな時間ですか。」

ルリの言葉を聞いても、表情は変わらない。

「もう月ドックへの着艦許可はもらいました、あと数分ですよ。」

それだけいい、乱暴にウインドウが閉じられた。結構怒ってるようだ。

「ハーリー君、いつの間に。」

「何だかんだいっても、あいつは真面目だな〜。サブも見習えよ。」

「無理無理。あいつも、もうちっとポケ〜とできねえのかね。」

そうして、全員はブリッジへと向かう。



   

「ごめ〜んハーリー君、待った?」

できるだけ明るく話しかけるが、

「・・・・・・」

「あの〜怒ってる??」

「・・・・・・(プイ)」

そっぽを向いた。さすがに怒ってる。

「うわ〜んごめ〜ん!!」

「ドック開放、ラピス。」

「着停します。」

「無視しないで〜(泣)」

ナデシコは月ドックに到着した。



「いやいやみなさん、ここまでお疲れ様でした。予定外のこともありましたが、無事ドックに来ることができました。

 例の失踪事件も犯人をつきとめましたので、次の任務まで月にとどまります。」

「じゃあ今後の予定は?」

「まったくありません。」

「仕方ないですよ、軍人は戦争以外で仕事はありませんから。」

「またデスクワークか。」

「・・・ユリカさん、不謹慎すぎますよ。何も無いほうがいいです。」

ハーリーが睨んでくる。

「ハーリー君、まだ怒ってるの?」

「いえ、ただその態度は何ですかって思ってるだけです。」

要は怒ってるってことか。

「そうだぞユリカ。平和が一番なんだから。」

「うん、そうだね。」

「そうですよ、ん?」

通信が入ってきた。

「こちら格納庫の香織です。補給作業を開始してもよろしいですか?」

「あ、そうですね。お願いしま〜す。」

「了解です。」



   格納庫

「香織、ファントムの調子はどうだ?」

「もう完全に直ってるわ。あと、シンにうれしいニュースよ。」

「ニュース?」

「ええ、ついにファントムの強化ユニットが完成したのよ。」

「何、マジか!?」

「ええ、もう搬入は終わってるわ・・・見る?」

「当たり前だ、見せてくれ!!」

香織はシンを連れて、奥に歩いていく。


「まず一つ目が高速近接戦闘用のユニット、「セイバー」よ。これは主に高速での近接戦闘用のユニットで、武装は左腕に新しく

 盾つきのパイルバンカー、右腕にはアンカーを装備してある。そして両肩にはメインの武器、セイバーが付けられているわ。

 これは刀身にそってビームがはしっている、ビームバスターブレードよ。二刀流のあなたにはもってこいの武装ね。

 後は、腰裏に標準装備のビームライフル。右腰に折りたたみ式の新型フィールドランサーが一つよ。

 そして背部に設置されるウイング型のブースター。加速はこれまでとは違うわ。」


「そしてもう一つが、遠距離用のユニット、「ガンナー」。こっちは相転移エンジンに接続することで、グラビティブラストを撃つことが可能よ。

 ただし連射はできないけどね。全体にMSに使うハイブリッドアーマーを装備し、衝撃に耐え得る重装甲。左肩にはビームマシンガンを装備。

 でもこっちは動きが重いしエネルギーを喰うから、援護用のユニットなの。盾とサーベルはそのまま、でもビームライフルは使えないわ。

 どっちを使うかは、シンが判断してね。」

「ああ、サンキュー香織。」

「あと、シンにはトライアルをしてもらいたいんだけど。」

「いいぞ、どーせ暇だしお前のことだ、事前に許可もらってるんだろ?」

「まあね。最初はガンナーよ。いいわね?」

「了解。」

「じゃあ五分後、ドック近くの場所でやるわ。整備班、ガンナーユニット装着開始よ〜!!」


  
   ナデシコCブリッジ

「ユリカさん。」

タカヤがブリッジに入ってきた。

「あれ、タカヤ君。シン君といっしょじゃなかったの?」

「そのことなんですが、これからあいつは新装備のトライアルをするそうで。」

「新装備?」

「ええ、何でもサレナと同じ追加装甲みたいな物だったんですけど。」

「ああ、以前から製作されていた強化ユニットですな。そうでしたすっかり忘れておりました。ここで受け取る予定でしたな。」

「サレナと同じ・・・タカヤ君、それは高機動ユニットか?」

アキトはタカヤに尋ねるが、

「さあ?俺も詳しくは知らないんですけどね。」

と、また通信が来たようだ。ラピスが応答している。

「ユリカ、格納庫から連絡。これからファントムの新装備のトライアルをするって。」

リョーコは腕を組み、タカヤを見る。

「まあ、どんなもんかはお楽しみってか。」



   ナデシコC格納庫 司令室

「シン、用意はいい?」

「ああ、全チェック問題なし。いいぞ。」

「ハッチ解放。ドックハッチ開放、いいわよ。」

「了解、「ガンナーファントム」行くぜ!!」

グラビティランチャーを持ち、一回り大きくなったファントムが、ドック上空に上がる。


   ドック上空

「よし、いいぞ香織。」

「了解、ドックハッチ閉鎖。ターゲットをだすわ。」

しばらく待つと、ドックから少し離れた荒野に二機に量産型エステが出てきた。

「あれがターゲットよ。」

「了解、試させてもらうぜ。」

エネルギーの接続を確認し、エステに照準をあわせた。

「ロック・オン。グラビティランチャー発射。」


砲身からグラビティブラストが放たれ、エステを消滅させた。



「く〜、すっげえ威力だ。銃身、及び機体に問題なし。香織、成功だ。」

「よっし、次はセイバーよ。ユニットを換装するからね。」

「了解。」


  ナデシコCブリッジ

「おいおいすげえ威力だぜ、サブ。」

「ああ、ジンタイプ以外でグラビティブラストが撃てるのか。」

「確かに俺のサレナと同じ追加装甲を付けてるようだな。」

ブリッジの一同は新しいファントムの力に驚愕していた。

「いいな〜シンの奴。これでファントムは大幅なパワーアップか。」

「いいじゃねえか、お前はもう斬艦刀もってるだろ。」

「俺達なんて、四年前の機体だぜ。」

「そういう俺は、七年前からだ。」

急に愚痴を言い始めたパイロット一同。

「まあまあ、みんな自分の機体に愛着あるでしょ?」

「まあ、俺はサレナを乗り換えるつもりはないしな。」

「俺はあのアルストロメリアに乗りて〜。」

「おいサブ、こうなったらアカツキに頼んでみっか?」

「サブロータさん、リョーコさんも。まったく・・・」

パイロットの面々は騒いでいたが、ここにも一人。

「僕も、乗ってみたいなあ〜」

「ハーリー君あなたまで。」

ルリはため息をついた。



  格納庫

「テストは順調っと。シン、セイバーユニットいいわよ。」

「了解、「セイバーファントム」行くぜ!!」

再び上空に上がる。

「じゃあ、今度はターゲットを増やすわ。」

そしてさっきとは逆方向に三機のエステが出てきた。

「簡単なプログラムをしてあるから、攻撃はしないけど動くわよ。」

「了解。」

シンはファントムをつっこませる。

「行け。」

右のアンカーを射出し、エステの一機を引き寄せる。

「砕けろ!!」

そして左をパイルバンカーを胴につける。


爆音


パイルバンカーにより、エステが粉砕された。

「すげえ、さすが接近戦最強の武器だ。」

空薬莢を捨て、元に戻しながら残りの二機を見据え、両肩からセイバーを引き抜く。

刀身にそってビームが奔る。ブースターの加速により一気に目の前に迫り、右を一閃。

そのまま回転しながらもう一機も左で切り裂く。

通り抜けた後、エステが爆発した。

「(速い、それにこのスペック。これならあのドーベンウルフにも、勝てる。)」

「シン、全ターゲット破壊確認。データもとれたわ、帰還して。」

「ああ・・・ん?」

シンは正面のモニターをジッと見る。

「・・・なあ香織。」

「何、シン?」

「テストでMSだす予定、あったか?」

「あるわけないでしょ。」

「じゃあアレは何だ!!」

シンは自分が見えている光景をナデシコに送った。



  ナデシコブリッジ

「ユリカ、ファントムから通信。月面ドックに接近する機影あり。数は・・・五。」

「え、でもレーダーには何も。」

それを聞き、ルリは以前と同じだと思った。

「多分、レーダージャマーですね。」

そこにファントムからの映像が入ってくる。

「ファントムからの映像受信、モニターへ。」

そこには、五機のMSの姿があった。

すぐさまハーリーはデータベースから照合を開始する。

「形式照合・・・赤い機体が、旧ネオ・ジオンのヤクト・ドーガ、青と紫、白と黒が同じく旧ネオ・ジオンのギラ・ドーガ。」

「またMS、しかも月にですか。ユリカさん。」

「うん、各パイロットに出撃要請。このままではシン君が危険です。ドックにも警戒態勢の指示を。」

しかし次の瞬間、

ネルガルドックのあちこちで爆発が起こった。

その衝撃がナデシコを襲う。

「い、今のって。」

「ドック各所で爆発が起きたようです。」

ハーリーの報告にユリカはある考えにたどり着く。

「まさか、爆弾。」

「これは・・・ドック各所で火災発生!」

ユリカはラピスに指示を飛ばす。

「ラピス、グラナダの宇宙軍に救援要請、急いで!」

「了解。」

ピピピ

「ユリカ、こっちは全員行ける。これより出撃する。」

パイロットはすでに準備ができているようだ。

「頼むね、アキト。」



   ネルガルドック上空

アキト達が来たのを確認し、シンはセイバーを抜く。

「行くか。」

セイバーを持ち、リーダー機と思われる赤いヤクト・ドーガに突っ込む。

「せい!」

左を突き出すがよけられる。

「くそ、ちょこまかと。」

ヤクト・ドーガは小刻みに動きながらビームライフル、ミサイルを撃ってくる。その一発一発が正確なのだ。

「く、何なんだよ、お前等ー!!」

ファントムはセイバーを仕舞い、ビームライフルを持つ。


一方、他のメンバーも一人一機の割合で戦っていた。


「これがMSか。」

アキトは黒いギラ・ドーガと戦っていた。

ギラ・ドーガはビームライフルでは無く、マシンガンを持っていた。フィールドでは完全には防げず、いくらサレナでもMSの武器を喰らえば、

かなりのダメージを受ける。アキトは焦りを感じていた。

「くそ、火力が足りないか!」

ハンドカノンはことごとくシールドに防がれている。エステ相手なら効くかもしれないが、サイズが違いすぎた。

さらにジンタイプとは比較にならないほどの高機動性だ。

どうやらこのMS達は通常とは比べられないほどカスタマイズされているようだ。

このギラ・ドーガも機動性がハンパではない。しかも、パイロットも凄腕のようだ。

「くそ、何とか格闘にもちこめれば。」



「ドリルフィスト!!」

ドリルを装備し、青いギラ・ドーガに突撃する。

しかしギラ・ドーガはシールドでドリルを受け流したのだ。

シールドをドリルが削りながらかわされ、回し蹴りを喰らう。

「マジかよ、ドリルを受け流した!?」



「後ろだリョーコ。」

「こんちくしょー!!」

サブとリョーコは白いギラ・ドーガ、紫のギラ・ドーガと戦っていた。

ハイパーエステがメガラピッドライフルを撃ち込むが、白いギラ・ドーガがシールドで防ぎ、その隙に紫のギラ・ドーガがマシンガンを放つ。

エステカスタムも腕部レールガンを放つが、避けられてしまう。

リョーコとサブは、言い知れぬ不安に戸惑っていた。

「何だよこいつら、こっちの動きが読めてんのか!?」

「シミュレーターとは全然違う。MSがこんなに強いとは。」



「く、何故こっちの動きが。」

自分の攻撃が全て読まれている。ファントムはビームライフルを構えるが、だがヤクト・ドーガは肩に付いている六つのポットを離した。

それら・・・ファンネルが、不規則な動きでシンを囲む。

シンは嫌な予感がして機体を急降下させる。と、そこに六つのビームが通り、ライフルを貫く。

ファントムはライフルを手放しフィールドを張った。爆発の衝撃が来る。

「くそ!」


「(これはあのドーベンウルフと同じ・・・また負けるのか。いや、負けられない!!)」


その時、シンの脳裏にファンネルの動きが視えた。

「!?視える。」

ファントムを左に動かす。

「そこだ。」

動き回るファンネルの一つをセイバーで斬る。

「いける、いけるぞ!」

そうして一つ一つ斬り、全ての破壊に成功した。

すると、今まで動かなかったヤクト・ドーガが腰から二本のビームサーベルを取り出す。

「こいつも二刀か。」

ヤクト・ドーガが上段から振り下ろす。

ファントムはそれを片方ずつで受け止めた。


エネルギーのスパークがおきる。


「パワーは、互角かよ。」

しかし、突如シンは寒気を感じた。

「何だ、このプレッシャーは?」

サーベルをぶつけ合ってる中、シンはヤクト・ドーガから何かを感じていた。

「誰だ・・・誰なんだ!!」

シンの脳裏に、赤いパイロットスーツを着る何者かの姿が視えた。ヘルメットをしているため顔は分からない。



   同時刻 某宙域

そこにはある艦が航行していた。マークは、ただの宅配業者らしいが・・・

「ふう、まったくいきなりこんな仕事を任せられるとは、しかも何故偽装せねばならんのだ?上もネルガルも一体何を考えてる??」

この艦の艦長が不満を放っている。

「さあ、大方後ろの「荷物」が、何かマズイ物じゃないんでしょうか?」

それを乗組員がなだめようとする。

「まあ、我々は仕事をすればよい。下手な詮索はクビに繋がるしな。」

「そうっすね〜、でも・・・予想外の事態ってのは起こるもんじゃないんですか、艦長?」

「何を・・・!?」

突如艦に衝撃が奔る。

「何だ?」

目の前にいるのは、あのドーベンウルフ。

モノアイが点灯する。

「モ、MSだと、何故こんなところに。いや、我々以外にこのことを知っているのはごく一部のはず。」

「・・・・・・」


ジャキッ


「!?まさか、貴様が。」

「すみません艦長・・・「あれら」は、俺達が有効利用させてもらいます。」

「お、おのれー!!」


ダアーン・・・


銃弾を受け、額に穴が開いた艦長が崩れ落ちる。

「(申し訳ありません。あなたの墓は俺が必ず立てます。どうか、安らかに・・・)」

亡骸に敬礼をする。

そうして通信機をいじり、ドーベンウルフの回線につなげた。

「任務終了。これから艦に向かう。」

「ええ、嫌な仕事ですね。」

通信から聞こえるのは、女の声だ。

明らかに嫌悪感を出している。

「ああ、後味が悪い。あの人は悪い人じゃなかった。」

「その人は、どうするんです?」

「俺が責任を持って墓を立てる。」

「そうですか、では帰還しましょう。「彼女」にも連絡をします、任務完了と。」

「了解だ。」

そうして一機と艦は、宇宙に消えていった・・・



   ネルガルドック上空

「くそ、まだ終わってはいない。」

シンはファントムの背部ブースター全開にする。推進の光が、背部で起きる。

「うおおおー!!」

凄まじい勢いで、赤いヤクト・ドーガを押し始める。

「負けられるかーー!!」

しかしヤクト・ドーガはそれを下から蹴り上げる。

「ぐ!?」

コクピットを蹴られ、衝撃がきた。

「・・・は!?」

慌てて振り向いたが、次の瞬間右腕を切り裂かれた。



「ちい!!」

黒いギラ・ドーガは中々懐にはいらせてくれない。攻撃を回避してはいるが、何発か外部装甲を掠めている。

「こうなったら・・・突っ込む!!」

フィールドを纏い、高速で撹乱しながら突撃する。

「(もらった!!)」

後ろを取った。しかし、

ギラ・ドーガは瞬時に後ろへマシンガンを向ける。

「何!?しまっ」

弾丸がフィールドを突き抜け、頭部に被弾した。



「斬艦刀 一文字・ぎ」

しかし、それより早く青いギラ・ドーガが懐に飛び込む。

「!?」

右手のビームソードアックスを振るう。

左の胴に入り、少しずつ斬り裂いていく。

「くっそー!!」

慌てて斬艦刀の柄で殴りつけ、後ろに下がる。



「落ちろよ、いい加減よう。」

「おらおらおらーー!!」

メガラピッドライフルを連射するが、白と紫のギラ・ドーガはあざ笑うかのように回避し、それぞれビームソードアックスを持ちながら

二機に接近、振り払いながら通過した。

間一髪でコクピット直撃は回避したが、ハイパーエステは左腕、エステカスタムUは首を切断された。



「く、何?」

すると、今まで攻撃だけだった敵の五機が一箇所に集まったのだ。

「何故下がる?」

向こうが有利のはずなのに・・・と、

「シン君、無事か?」

「あ、はい。」

ファントムの周りにアキト達が集まってくる。全部の機体が傷を負っていた。

タカヤも通信を入れてきた。

「ちょっと喰らっちまったが、大丈夫だ。」

「サブ、あいつらどうして攻撃しなかたんだ?」

「わかんねえな、何するきだ?」

だが、予想に反して五機は反転し、渓谷の中に入っていった。

「な、逃げる?」

「いや、アキトさんあれを!!」

そうして、そこから五つの光が宇宙へ飛び出していった。

「またゲタか。」

「でも何とか、生き残りましたね。」

タカヤはシートにもたれかかる。

「いや、見逃してもらったのかもな、俺達は。」

「やつらは一体。」

サブとアキトも、久し振りの危機感が頭をよぎっていた。

「・・・くそ!!」

ガンッ シンは歯を食いしばり、コンソールを叩いた。

「とりあえず帰還しよう。」

「ああ。いこうぜ、サブ。」

「了解。」

「・・・シン?」

タカヤは返事の無いシンに尋ねる。

「りょう・・・かい。」

こうして、五人は悔しさと共にナデシコへ帰還した。



   ナデシコCブリッジ

「あ、みんなお疲れ様・・・アキト?」

ブリッジに入ってきた面々は暗い顔をしていた。敵は明らかにこちらを倒せる力を持っていたのに。

見逃してもらった、それしか考えられなかったのだ。パイロットにとってそれは屈辱以外なんでもない。

「アキトさん。」

「アキト。」

ルリとラピスは、アキトに心配そうに尋ねる。

「・・・俺は平気さ。それよりも状況は?」

「現在、ドック全体の修理にはいっています。」

「周囲に敵影は無い。」

ハーリー・ラピスが報告する。

「ハーリー、あの五機の行く先わかるか?」

シンがハーリーに尋ねる。

「ごめんなさい、ミノフスキー粒子を散布されて。」

「そうか、ありがとう。」

と、

「いや〜、久し振りだねえ諸君。」

「ア、アカツキさん!?」

何とアカツキが通信してきたのだ。

「これは提督、そっちは無事かな?」

「アカツキ、何でお前が・・・」

アキトは久し振りに会った友人に疑問をぶつけるが、

「まあそれはちょっと待ってくれないかな?すぐ行くから。」


数分後、落ち目会長が入ってきた。


「お待たせ。」

「アカツキさん、何故ここに?」

「そう、そのことで君達に話があってねえ。」

ラピスはアカツキの言葉に反応する。

「話?」

「それはそうと、あなたは?」

シンとタカヤは知らない人間が来て、少し警戒しているようだ。

「あ、そうか、初めての人もいたっけ。僕の名前はアカツキナガレ、ネルガルの会長さ。」

「「ええ!!」」

二人はビックリする。

「まあ、そうだわな。」

ありきたりのリアクションに、リョーコが突っ込む。

「さてと、さっき言った話なんだが提督、このナデシコにある任務に就いてもらいたい。」

「何ですか?」

「・・・わが社、そしてフルムーンの新型機の奪還にだ。」

「新型、ですか?」

「ああ、先ほどの戦闘中ここに来る予定の極秘輸送中だった艦が消息を絶った。加えてあのMS達・・・タイミングがよすぎると思わないかい?」

「陽動か!?」

サブは瞬時にその考えを出す。

「多分ね。あれはトップシークレットで知っている人間は限られてるし、どうやらスパイがいたみたいなんだ。

 それにそのことから考えて、ただのテロリストとも考えられない・・・」

アキトは目を細める。

「まさか・・・」

と、

『ルリ、宇宙軍本部から緊急通信が来てる。』

オモイカネが通信を受信したようだ。

「緊急とは何事ですかな、この大事な時に・・・」

「とにかく繋げて下さい、ハーリー君。」

「了解、通信来ます。」



「宇宙軍総司令、ミスマルである。ナデシコの諸君、久し振りだな」

「お父様、お久し振りです。」

「おおユリカ〜元気にやっとるか?」

「はい、この通り元気です。」

「そうかそうか、アキト君も元気そうだな。」

「ええ、お義父さんもお変わりなく。」

「あの〜、そろそろ本題に・・・」

このままでは長くなりそうなので、ルリが会話を遮る。

「む、すまんな。久し振りに娘夫婦を見たのでな。ルリ君もラピス君も元気そうで何よりだ。ところで本題に入るが、これは

 ナデシコ諸君に耳の痛い話になってしまうのだ。」

「お父様、どういうことです?」

「先ほど我が連合軍に、火星の後継者が宣戦布告をしてきたのだ。」

ユリカは驚愕し、アキトは知らず拳を握っていた。

「か、火星の後継者・・・」

「お義父さん、やつ等は七年前に。」

「いや、我々が甘かった。現火星の後継者の指導者は草壁春樹、処刑されたのは影武者だったのだ。やつ等はこの七年でかなりの同士を

 集めていたらしい。そして木星のプラントを使い密かに戦力を強化。投獄されていた昔の仲間を救出し、いまや一大勢力となっている。

 さらに全てのターミナルコロニー、地球の統合軍本部「ペキンコア」、その近くの「マドラスコア」、火星軍事衛星フォボスがやつ等の手に落ちた。

 そのため火星宙域全てがやつ等の庭といっていい。」

「統合軍は何をしてたんです?」

「高杉少佐の質問は最もだが、前回と同じ、いやそれ以上の規模だな。どうやらあらかじめ息の掛かっている者達を配備していたらしい。

 残存統合軍は、コンペイ島に集結中だ。」

「しかし、木星プラントだけでそこまで強力になれるんでしょうか?」

「アキト君の言うとおりだ。恐らく、再び巻き返そうとクリムゾングループが力を貸していたんだろう。前回同様にな。

 しかし、私はそれだけではないとにらんでいるのだ。」

「つまり・・・まだ何かが起こると?」

シンはその言葉の意味を捉えていた。

「うむ、まだわからないが今回の戦いを機に、己が野望を叶えんとする者がでてくるかもしれんのだ。かつての大戦のようにな・・・」

ミスマルの言葉に、ハーリーは同意する。

「簡単には終わりそうにありませんね。今回は。」

「それで、私達に連絡したということは・・・」

「うむ、ナデシコCは再び火星の後継者討伐の任についてもらう。特命で君達を独立部隊に任命する。期待しているぞ、ユリカ。」

「わかりました、このナデシコにお任せを。」

「ではさっそくだがナデシコCは地上の宇宙軍と協力し、まずは「ペキンコア」奪還に向かってもらいたい。宇宙は宇宙軍、統合軍に任せよう。」

「開戦は「ペキンコア」ですか、戦力は?」

「コアにあった戦力に足して、先ほど降下した部隊がいるそうだ。戦力は相当のものだろう。」

「いきなりか。お義父さんまずはどこへ?」

「とりあえず「ニホンコア」へ向かい、合流をしてくれたまえ。すでに準備が進められている。作戦開始は、明日の午前十時だ。

 諸君らの働きに期待する。以上だ。」

通信が終わり、ユリカはみんなの方を向く。

「みなさん。聞いたとおりです。これよりナデシコCは地球へ降下、「ニホンコア」へ向かいます。」

「提督、多分それにはあの新型強奪の件も・・・」

「はい、同時にアカツキさんの言う新型奪還の任にも就きます。」

「そうか、じゃあ僕もご一緒させてもらうよ。提督、テンカワ君。」

「何!?」

「でも・・・」

アキトとユリカはアカツキを見る。

「少しでも戦力があった方がいいだろう、それに暇をみては訓練してたんだからね。」

「か、会長・・・」

プロスは不安そうにしているが。

「いいんだ、ドックをこんなにしてくれたお礼をしないと。たっぷりとね。」

「そうか、なら改めてよろしくな、アカツキ。」

「ああ、久し振りだねえこの雰囲気も。」

「しかし、アカツキさんの機体・・・どうするんですか?」

ルリはアカツキの機体が無いことを告げる。

「ああ、それならもう搬入済みさ。シン君と同じ、僕仕様のアルストロメリア・カスタムをね。」

「「何!?俺達のは?」」

「無い。(キッパリ)」

サブとリョーコの問いを、一撃で切り捨てる。

「理不尽だ。」

「このボンボンが〜。」

「(君達の機体は、まだ出来て無いんだよ。テンカワ君も、シン君もね。)」

アカツキは心の中で他の計画を考えていた。そして、奪われた二機の危険さを。

「(Z計画、三機の内の奪われた二機。もしあの「機能」を使える人間がいるなら、今のナデシコでは・・・勝てない。)」

しかしそれらを顔にはださず、笑顔で答える。

「ああ後は予備にハイパーエステを一機いれといたから。まあ使うこともないと思うけど。」

「ではみなさん、配置についてください。」

全員が己のポジションへ向かう。


「全乗組員の搭乗完了。」

「ハッチ開放、固定解除。」

「エンジン始動します。」

ハーリー、ラピス、ルリが報告する。

「ナデシコC、地球へむけ発進。」

ユリカの声とともに、エンジンがうなりをあげる。



   宇宙軍総司令部

「ナデシコは月を発ったか。」

「そうですね、これから忙しくなります。」

ミスマル司令が椅子に座り、顔の前で拳を握る。

「今度こそ叩き潰さねばならん。もう二度と、あのようなことが起きない為にも・・・」

「ええ、その通りです。」

「だがまだ安心は出来ん。最近各サイドコロニーで不穏な動きがあると聞いている。」

「何事も起きなければいいのですが・・・」

「うむ、ところで「トリントンコア」で最終調整が行われているネルガルの新型艦。」

「そうですね、新しい「ナデシコ」か。」

「クルーはどうなっている?」

「オールスターといいたいんですが、忙しい人もいるので、今回はあまり。全員ではありませんが。」

「新たな仲間を加えての旅立ちか。君も急がないとな。」

「はい。それと、連合が過去のデータから独自に製造したナデシコの彼の後継機も、直に完成らしいです。現在最終チェック中です。」

「武神か、あれは木連の軍人には似合いそうだな。」

「確かにピッタリですね。」

「ではユリカを頼むぞ、アオイ君。」

「了解しました、総司令。」



次回予告

「ニホンコア」へ降りたナデシコCは、ついに「ペキンコア」への侵攻を開始する。
連合軍は物量で徐々に火星の後継者を追い詰める。
同時に、宇宙でも各ターミナルコロニーに侵攻が始まっていた。
しかし火星の後継者はすでに「フォボス」へ向かっており、がら空きのコンペイ島を狙い、ついに本物の亡霊が動き出す。


スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第八話「ペキンの戦い 策謀の宇宙」

??「第一段階は終了ね。後は、「協力者達」が来るのを待ちましょう。」






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