スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第八話「ペキンの戦い 策謀の宇宙」


   ニホンコア ナデシコCブリッジ

「ということで、ナデシコCは部隊の先鋒を務めます。何か質問は?」

ユリカは全員を見渡す。

「ユリカ、敵戦力はどのくらいだ?」

アキトの問いに、ルリが答える。

「はい、それは諜報部から回ってきてます。見てください。」

スクリーンに現在の位置、そして「ペキンコア」が映し出された。

「現在、敵部隊のほとんどはコアの上空にいるようです。」

「戦力比は・・・ほぼ互角。」

ハーリーとラピスが補足をする。

「しかし、この図を見る限りじゃあ戦場は海上ってことになるかもな。」

「嫌だねえ、水中ってのは。」

サブとリョーコは嫌そうな顔をしている。

「大丈夫ですよ、このナデシコがいれば十艦分の働きができるもん。」

「ユリカさん、油断は大敵ですよ。」

「そんなこと言って、またデブリ帯の二の舞にならないように注意しませんと。」

「う、そうだね。」

シンとタカヤに指摘され、ユリカは身をすくめる。

「二人とも、軍人らしくなってきたな。」

アキトはそんな二人を感心するが、

「アキトさん、俺達は元々軍人ですよ。」

「それ以前に、ナデシコ自体が軍艦らしくないですよ。なあシン。」

最もな返事をされた。

「(ほんと、その通りです・・・)」

こっそりハーリーも同意する。

「でも、私はみんなの力を信じてるからね。」

ユリカはガッツポーズをする。と、ピーピーとコミュニケが鳴る。

「作戦開始30分前です。各員持ち場へついてください。」

「了解」



   格納庫

格納庫は機体の最終チェックで慌ただしい。

「シン、今回は海上の戦いになるから簡単な水中用チューンをしてあるわ。ビームライフルはだめだけど、セイバーユニットでいいのね?」

「ああ、セイバーの出力ならビームも消えないよな?」

「多分ね、まあ威力は多少落ちるし、機体の機動性もそうだけど・・・シンなら問題ないわよ。」

「そういってくれるとありがたいぜ。ところでアカツキさんの機体、ずいぶん長いライフルだけど?」

「あれは」

「通称「アポロンの矢」さ。」

アカツキがシンと香織の方に歩いてきた。

「アカツキさん。」

「やあやあ香織君、整備ご苦労さん。君も中々いい腕してるねえ〜。」

「ありがとうございます。」

「あのレールカノンは、エネルギー消費は同じでも以前の物より命中精度も威力も格段にアップしてる。射撃が好きな僕専用の装備さ、

 機体名と合わせてね。僕はシン君やテンカワ君、タカヤ君みたいに格闘はちょっとね〜。」

アカツキが詳しく解説してくれた。

「アポロン。正確無比の一撃、厄介払いの奇跡の矢・・・か。」

「まあね。僕にとっても、クリムゾン、火星の後継者を射抜くにはちょうどいいと思ってさ。」

「でも、グラビティランチャーは?」

「あれはエネルギーを喰うし、ま、時と場合によるね。」

「今回はどのような編成でしょうか?」

シンは一番気になる疑問を聞いてみたが。

「それはテンカワ君に任せよう。大体予想はできるけど。」

「では、私は他に回ります。」

香織はグラディエーターに向かった。



「お、来たか。」

「忙しいのよ。で、どうかしら?グラディエーター「シャーク」は??」

「おう、これで佐世保みたいな苦労はしないですむぜ。」

「あの時は水中用ユニットが間に合わなかったけど、これで水中戦闘も可能よ。普段は海上だけど、いらなくなったらパージしてね。

 恐らくあなたの役目は」

「戦艦の破壊・・・だな。」

香織の言葉を遮り、自分の考えを言う。

「ええ、斬艦刀ならフィールドごと斬り裂けるわ。私達はここまで、がんばってね。」

「任せとけ!!」



     ナデシコCブリッジ

「全部隊、準備完了。」

「ナデシコC、全システムオールグリーン。」

「作戦開始、五秒前。」

ハーリーとラピスの声がブリッジに響き、カウントダウンが開始された。

「五、四、三、二、一、〇。作戦スタートです!」

「ナデシコC、目標「ペキンコア」。全速前進!!」



  同時刻 ターミナルコロニー「コトシロ」宙域


   宇宙軍第十艦隊所属 旗艦リンドウ

「地上部隊、進軍開始しました。」

艦の通信士が報告を艦長に言う。

「よーしこちらもすぐコトシロだ、戦闘態勢に移行。索敵、どうか?」

「そ、それが・・・反応がありません。」

「何?よく捜せ!!」

「やはり反応無し。」

「やつらめ、逃げおったか?」

「!?艦長、あれを。」

正面モニターに映っているのは・・・

「な、何だあれは?」


そこにいたのは、真紅に染まった機体。MS、いやMAに近い。大きさは、ざっと30メートル近く。腰にはスカートアーマーが付いている。

そして見るものを威圧する感じの、つりあがったスリットに、一つのモノアイが点灯している。

左右の肩は長く伸びており、「何か」を納めていた。

さらに、頭部からは鬼のような角が二本、平べったい後頭部にも長い角らしきものが。

その周囲には、あの月ドックを襲ったカラーリングのギラ・ドーガ。そして真紅とは違う、紅き翼を生やした血染めのMSが一体。

それは額にアンテナ、そして顔には二つの緑色のモノアイが。

その六体が、迷彩マントも使わず堂々と立っていたのだ。


「まさか、たった六体だけだと。なめられたものだ、蹴散らせ!!」

全艦から機動兵器が出撃するが、真紅のMSが手を振り、戦闘が始まる。


五分後・・・


「ば、馬鹿な。たった五分で全滅だと・・・く、来るな。うわああーーー!!」

そして旗艦リンドウはブリッジを潰され、爆発した。


「第一段階は終了ね。後は「協力者達」が来るのを待ちましょう」

二人の女性が通信をしている。

「ええ、あっけないものですね。本当に・・・」



    ナデシコC

ナデシコは艦隊の最前線を進んでいた。

「もうすぐか、ハーリー君、異常はない?」

「はい、敵艦隊、以前として動きがないようです。」

「射程距離まであと十分。」

「では、各パイロットにも出撃用意を。」

二人の報告を聞き、ルリは出撃の要請をする。

「了解。」



    格納庫

「今回は敵の数が今までとは違う。そのため、前線に俺とシン君、タカヤ君。後衛をサブロータ、リョーコちゃん、アカツキでいく。」

「了解」×五

「タカヤ君は、戦艦を落とすのを優先してくれ。雑魚には目もくれないでいい。そこは俺達二人で片付ける。」

「任せたぜ、タカヤ。」

「おう、任されて〜。」

「後衛三人は、ナデシコ、及び味方艦の護衛を頼む。」

「はいはい。リョーコ、わかったな。」

「性にあわねえけどな・・・」

「ふふふ、この僕とアポロンに任せたまえ。」

「よし、全員気をつけて」

と、シンの脳裏に嫌な予感が奔る。

「!?これは・・・マズイ!」

シンは慌ててブリッジに通信を繋げる。



   ブリッジ

「ユリカさん!」

「シン君?どうしたの?」

「今すぐ出撃許可を!!」

「何故ですか?まだコアまでは。」

「急がねえとやばいんで「これは・・・後方で戦闘が発生!!」ち、遅かったか。」

ハーリーの報告を聞き、シンはラピスに頼み込んだ。

「早くハッチを開けてくれ!」

「わ、わかった。」



   格納庫

ハッチが開放される。

「タカヤ。」

「ああ、往くぜ!」

グラディエーターから順次発進していく。



   ナデシコCブリッジ

「一体何が起こったの?」

ユリカはハーリーに状況を聞く。

「待ってください・・・わかりました。敵の潜水部隊による奇襲とのことです。」

「潜水部隊。く、迂闊でした。ここが海上ならありえたことです。」

「コアの敵艦隊が向かってくる。戦闘体勢へ。」

ラピスの報告を聞き、ユリカは眉をひそめる。

「まんまと罠にはまったということか・・・やるね、敵も。」



「アキトさん、俺といっしょに後方の支援へ。タカヤは水中から来て、敵の潜水部隊の破壊を。

 サブロータさん、リョーコさん、アカツキさんはここでナデシコの防衛を。駐留部隊がこちらに向かってきているはずですから。」

その、あまりにも適切なシンの対応に驚きながらも、アキトも指示を出す。

「今言ったシン君の通りにしよう。俺達は後方へ。三人は、ナデシコを頼む。」

「了解」×五

そうして二チームに別れ、アキト・シンは空から、タカヤは水中に潜り、後方の戦場へ向かった。



「ラピス、敵は?」

アキトはナデシコに通信し、敵の数を聞く。

「ステルンクーゲル改二十、積尸気が二十。それにアクアダイバーが十四、ディープブルー四隻。」

「アクアダイバー?ディープブルー??」

タカヤは聞き慣れない言葉に疑問を抱く。

「それは統合軍で使用されている水中用の機体と潜水艦です。海戦フレームの発展型で、アクアダイバーは水中用のエステと思ってください。

 みなさん、今データを転送します。」

すると、ハーリーからアクアダイバーとディープブルーの細かいデータが送られてきた。

「対空ミサイルにサブロックガン。なるほど、完全な水中用か。」

「シン、俺がディープブルーを片付ける時、うるさいハエ避けのためにアクアダイバーを任せていいか?」

「・・・アキトさん。どうでしょう、持ちますか??」

「ふ、俺もなめられたものだね。君達が来る前に片付けてあげるよ。」

「了解です。空中は任せます。」

「さすが余裕ですね・・・すぐ片付けますから。」

シンとタカヤはアキトにかえす。

「ああ、安心して任せろ。水中は頼んだぞ。」

「「了解。」」

戦場に入り、ファントムも水中へ飛び込み、サレナはハンドカノンを構えた。



「しかし、かなりの戦艦が落とされてるな。」

宇宙軍の部隊は突然の奇襲、しかも真下からだったので、フィールドも張れず、エンジンや胴に被弾しひどい状態だった。

さらに飛び出したステルンクーゲル改、積尸気によって追い討ちをかけられているのである。出撃した機動兵器も少なかった。

サレナの横で、駆逐艦が爆発する。

「く、これ以上させるかー!」

戦艦を撃とうとしている積尸気の背後からハンドカノンを叩き込む。そのままサレナはフィールドを纏いながら敵の集団に突入した。

敵集団もこれに気付きサレナに一斉掃射をするが、アキトはかつてグラビティブラストやミサイルの雨をも突っ切った男。

この程度、しかもMS並の威力も無い武器ではサレナのフィールドは破れず、アキトの技量とあわさってサレナは白き閃光となり

何体かの積尸気、ステルンクーゲル改を吹き飛ばした。さらにテールバインダーを使ってなぎ払い、それにぶつかって誘爆していく。

「固まりすぎだ、撃ってくれといってるような物だな。」

しかしまだ敵は多い。だが、

「・・・水中からの攻撃が、止まった?」

いつの間にか水中からの対空攻撃がやみ、派手な水しぶきがあがっている。

「あの二人か、こっちも負けてられないな!!」

そして、再びハンドカノンを向ける。



   水中 

「シン、見えるか?」

「ああ、十四だったな。俺が撹乱する。その間に突っ切れ!」

「OK、だが大丈夫か?」

「俺のも簡単なチューンはしてある。こいつの機動性なら水中でも負けねえさ。往くぞ!!」

ファントムがアクアダイバーに突っ込む。

これに気付いた一体がサブロックガンを向けるが、

「甘いな。」

右手のアンカーを射出し、アクアダイバーをつかんで引き寄せる。

他のアクアダイバーもファントムにサブロックガンを向けるが、

「これはいらねえ。」

アンカーを外し、こっちに飛んできたアクアダイバーを殴り飛ばす。

そこに他のアクアダイバーが一斉射撃をしたが、全て殴られたアクアダイバーに命中し、爆散して泡が大量に生じた。

「タカヤ、今だ!」

「ああ、ここは任せた。」

この隙に後ろにいたグラディエーターが突入し、何体かのアクアダイバーを弾き飛ばしながら、先に進んだ。

「よし、後はこいつらの始末だ。」

ファントムは両肩からセイバーを抜く。刀身に沿ってビームがはしるが、

「やっぱ本来の出力は無理か。だが、十分だ。」

ウイングからバーニアが吹かれ、一気に距離を詰める。

そのまま右で一体を横薙ぎにし、胴を切断する。

その光景を見たアクアダイバー十二機は、四機ずつに別れた。

「三つに別れたか、タカヤが来るまでふんばらねえと。」

ファントムは一番近くの四機に向かう。

「一組ずつ潰す。」

サブロックガンが構えられ、とっさに上へ上昇する。

攻撃を回避したファントムはそのまま下に向かい右を振り下ろし、一体のアクアダイバーが頭部から腹まで切り裂かれた。

一機のアクアダイバーがオプションのナイフを刺そうと向かってくる。

「遅い!!」

それを左に避け、ナイフはシンが倒したアクアダイバーに刺さる。

ファントムは無理やり腹で止まっているセイバーを横にし、ナイフを刺しているアクアダイバーまで振り切った。


キイン


「(後ろ・・・)」

シンはとっさにファントムの左手のセイバーを翻し、後方に突き出す。

それは、ナイフで襲い掛かろうとしていたアクアダイバーに突き刺さる。

それを今度はもう一体のアクアダイバーに向かって投げ捨て、二機は爆発した。


「(何だ、今確かに動きが「視えた」?)」


だがその一瞬動きが止まり、アクアダイバー達が一斉にサブロックガンを発射する。

「しまった、フィールド。」

ファントムは迷わずフィールドを張る。シールドで受けきれる量ではないからだ。

連続で攻撃を受け、水中なので踏ん張ることができずに後方に吹き飛ぶ。やはり水中用ではないハンデは重かった。

「うわああーー!!」

海底に足を使って勢いを止めようとしたが、やはり無理で尻餅をついてしまう。

「フィ、フィールドが・・・」

アクアダイバー達はサブロックガンを向ける。

「く、やべえ。」

せめて最小限にと思い、セイバーをクロスし防ごうとする。だが、


「ドリルブーストナックル!!」


アクアダイバーの背後から二つのドリルが飛んできて、二機のアクアダイバーを貫き、戻っていく。

「生きてるか、シン!?」

「ああ、助かったぜ。しかし早かったな・・・」

グラディエーターがアクアダイバーの上を飛び越え、ファントムの前に着地する。

「まあな、ここは俺に任せろ。お前はアキトさんのところへ。」

「わかった、頼んだぞ!」

ファントムは立ち上がり、海上へ向かって浮上する。


タカヤはコクピットの中で目を細める。

「さ〜て、あまり水中はいい思い出がなくてな。しかも友人をいたぶってくれた分、速攻で消えてもらうぜ!!」

その言葉とともに、腰から抜き放った刀の鍔が広がり、刀から巨大な剣に変わる。

アクアダイバー達はナイフを突き刺すために一斉にむかうが・・・


「消えな・・・斬艦刀 旋・風・斬!!」


水平に振り回し、振り切った後残った物は、上下二つに分かれたアクアダイバー達だった・・・

「終わりか、俺も上にいくか。」

こうして水中の戦いは終わり、戦場は再び空中に場所を移す。



   

アキトは生き残りの部隊をまとめ、一気に攻勢にでていた。

「アキトさん、大丈夫ですか?」

「は〜、は〜・・・ああ、こっちは問題ないが、艦隊の被害がひどくてな。だが、もう大丈夫だろう。敵はほぼ落とした。」

「(一人でか、さすが。)了解、水中はもうすぐ・・・お?」

下からグラディエーターが姿を現す。

「こちらタカヤ。全機の破壊しました。もう安全です。」

「了解、これよりナデシコの救援に向かう。付いて来い!」

「「了解!!」」



    五分前 ナデシコC

アキト達が後方の支援に向かい、こちらでも戦闘が開始されていた。

「おらあー!!」


ガシャア!!


エステカスタムUが右手の甲でバッタを殴り飛ばす。

「いただき!!」

左手のメガラピッドライフルが揺れる。

爆音

量産型エステが海に消えていく。

「楽勝だな。」

「まあ確かに・・・無人機ばっかりだけどな。」

そう、何故かほとんどの機体が無人機だったのだ。

「サブ、どーでもいいぜそんなこと!!」

「確かに、な!!」

腕部レールカノンを発射。カトンボが崩れ落ちていく。

「!?おっと。」

いつのまにか近くに来ていたバッタをよけようとし、それが吹きとぶ。

「サンキューアカツキ。」

エステカスタムUはアカツキのアポロンに向かって親指を立てる。

「ははは、援護は任せてくれたまえ。このナデシコ、そして艦隊はこのアポロンの矢が守るとね。よっと・・・」

話ながら撃ち、お返しに銃をちょいちょいと軽く横に振る。

そんな会話を聞きながら、サブは心底すごいと思っていた。

「(まったく、旧ナデシコクルーはすげえなあ。俺もよくこんなやつらと戦えたもんだぜ。)」

すでに十年以上前のことだが、サブは初めてナデシコと戦った時のことを思い出していた。

「こちらアカツキ、ナデシコ、テンカワ君たちの状況は?」



   ナデシコCブリッジ

「どうやら後ろの戦闘は終わったようです。」

「そうかい、こっちも直に終わる。提督、後はそちらの出番かな。」

「了解。さ〜てハーリー君、グラビティブラストのチャージは?」

「終わっています。いつでもいいですよ。」

「他の艦も準備OK。」

「ラピス、全機体に射線上から退避させて。」

「了解・・・退避完了。」

「では、グラビティブラストの発射を。」

ルリはハーリーに指示を出す。

「了解。グラビティブラスト、発射!!」


ナデシコ、そして他のリアトリス、駆逐艦からグラビティブラストが放たれ、全てがつき抜けたとき、多くの爆発が起きる。


「敵残存・・・0。」

「周囲に敵影無し、「ペキンコア」完全に沈黙。」

二人の報告を聞き、ルリは安堵のため息をだす。

「・・・終わりましたか。」

「うん、ハーリー君被害状況を確認して。ラピスは後方の艦隊の状態を。」

「了解。」

「後方の戦闘も終了。しかし、被害は甚大。」

「そうですか。」

「あ、アキト〜。」

目の前にサレナとファントムが来た。

「ユリカ、これより帰還する。」

「お帰り。ラピス、ハッチ開放。」

「了解。お疲れ、アキト。」

「ああ、ありがとうラピス。」

「・・・・・(赤)」

アキトに微笑まれ、顔を赤くするラピス。

「(はあ〜、まったく・・・)」



   格納庫

「ふう・・・!?」

グラディエーターに寄りかかりながら上を見ていたタカヤの頬に、冷たい感触が。

「よう、こいつはおごりだ。」

シンは右手のスポーツドリンクをタカヤに渡す。

「シン、突然どうした?」

「な〜に、命を二度も助けてもらったからな。お礼さ。」

「律儀だな。まあありがたくもらっとくぜ。」

「おう。ところでよ、今回はほとんど無人機だったってこと、知ってたか?」

「ああ、アキトさんから聞いたよ。さすがに俺達が相手した潜水部隊は違ったが・・・それが?」

「妙じゃねえか?仮にもここはコアだぜ、しかもやつら昔の仲間を助け出したって言うし・・・人員は多いんじゃねえのか??」

「・・・つまり、あまりにも有人兵器が少ないっていうことか。」

「そうだ、やつらはどこへ行ったんだ?」

「マドラスコアか?」

「かもな。何か重要なことがあったのか、それとも・・・すでに宇宙か。」

と、アキトが二人に声をかけてきた。

「二人ともここにいたか、今後の方針を決める。すぐにブリッジに行くぞ。」

「あ、はい。」

「わかりました。」



   ナデシコCブリッジ

「ラピス、宇宙軍の被害状況は?」

「出撃の四割が撃沈、または航行不能。艦載機は、前衛の艦にいた方は無事だけど後衛の艦にいた方は・・・ほぼ全滅。」

「水中からの奇襲で、対処が遅れて出撃できずに撃沈された艦が多いですからね。」

ハーリーとラピスの報告は、後方でどれだけの戦闘があったかを物語っていた。

「そっか・・・救助の方は?」

「ほぼ完了しています。」

「ラピス、パイロットのみなさんは?」

「今こっちに来てる。機体もかすり傷程度だって。」

「そうですか、みなさんもさすがですね。」

そして、ペキンコアに向かった部隊から通信が入ってきた。

「・・・ペキンコアに向かった部隊より通信。異常なしだって。」

「了解、ナデシコもペキンコアへ入ります。ハーリー君。」

「了解、ナデシコ移動を開始します。」

プシュー

「あ、アキト〜みんな〜お疲れ様。」

「ああ、そっちもな。」

「久し振りの戦闘だけど、まだまだみんな現役だねえ。特にテンカワ君は。」

「世辞はいいよ、お前こそ中々だそうだな、アカツキ。」

「ま、俺達ほどじゃねえけどな。」

「さすがにそれは無理があるぜリョーコ。あちらはパイロットが本職じゃねえんだから。」

「まあね。しかしシン君とタカヤ君はすごいねえ。記録をみせてもらったけど、伊達に大尉の位をもらってないね。」

「あ、ありがとうございます。」

「・・・・・・」

しかしシンは黙ったままだった。

「シン君?」

「アキトさん、さっきの戦闘・・・おかしくありませんか?」

「・・・無人機が多いことか?」

「ええ、これは何かを意味してるんじゃないかって。」

「何かって、何だよ?」

「それは、まだわかりませんが・・・」

リョーコの疑問にシンは答えられなかった。

「とにかく勝ったんだからいいんじゃねえか?」


「(く、おかしいとは思わないのか、いくら何でも無人機ばかりってのは?)」


「まあ、シンの言うことは確かに妙だと思いますよ。向こうの人員だって不足しているわけじゃないのに。」

「そうですね・・・何か、見落としていることが?」

「とにかく、上層部の決定を待ちましょう。」

「!?噂をすれば、司令部からの通信です。」

「繋いでください。」

ウインドウにミスマル大将が映る。

「諸君、ペキンコア奪還の任務、ご苦労だった。だが休み無しですまないが・・・」

「マドラスコアですね、お父様。」

「うむ、マドラスはペキンよりは戦力が少ない。諸君らだけでも大丈夫だろう。」

「当たり前さ、俺達はナデシコのクルーだぜ。この程度なんて今まで何回もあったさ。」

リョーコは自信たっぷりに言い切る。

「何と心強いな。しかしこの雰囲気をぶち壊す情報が入ってきたのだ。」

「何ですか?」

「実はな、先の戦闘と同時に我が軍、そして残存統合軍が一斉に各ターミナルコロニーに侵攻し、奪還に成功したのだ。

 全て無人機だったからな。たった一つを除いて。」

「それは?」

「コトシロだ。ここに向かった宇宙軍が、三分で撃墜されたらしい。通信によれば、たった六体でな。」

「た、たった六体で、しかも三分だと!!」

「何だよそりゃ。」

サブとリョーコは驚愕する。他のメンバーも似たような反応だ。

「その後は?」

「救援に向かった艦隊がついたころには、すでに何もいなかったそうだ。そしてその後、さらに事件が起きた。

 統合軍拠点「コンペイ島」が占拠されたのだ。」

「な!?」

「そ、そんな。」

「お義父さん、火星の後継者ですか。」

「いや、やつらではない。その名を・・・」


「ネオ・ジオン」


「!?!?」


「ネ、ネオ・ジオンって。」

あまりの言葉に、ハーリーは目を一杯に開いている。

「あの、約100年前の・・・ですか?」

「ルリ君の言う通りだ、あっという間の出来事だった。そして先ほど声明が送られてきた。我が連合に対し、宣戦布告のな。」

「マジかよ・・・」

タカヤも驚きを隠せない。

「これが現ネオ・ジオン総帥、セレス・ダイクンだ。」

セレスの顔写真が出てくる。

「へえ、結構いい女だな。」

サブが口笛を鳴らし、リョーコがそれを睨んでいる。

金髪に碧眼、キリっとした顔をしており、肩まで髪を伸ばしている。

「彼女は、自らをあのシャア・アズナブルの血を受け継いだ者と言っておる。」

「このタイミングで、か。司令、これはやはり・・・」

「会長の思った通りだろう。我々はまんまとはめられたのだ。ターミナルは囮。そして地上を占拠したのも、

 私がナデシコを送ることをみこしてのことだろう。」

「そして、彼女らは火星の後継者と手を結んでいる。」

「会長の言うとおりだ、また新たな敵が出てきてしまった。今度は本物の亡霊がな。今回ネオ・ジオンはかなり前から、

 恐らく、最低でも三年前からは用意をしていたはず。彼女らの計画を判明できなかったのは、コロニーの市民が隠蔽していたのだろう。

 今だに地球の政府上層部は、各サイドコロニーを植民地としか思っていないからな。」

「お父様、それで私達は・・・」

「うむ、やはりマドラスをそのままにしておくことはできん。そのため、ナデシコCだけで制圧してもらいたいのだ。できるか、ユリカ?」

「はい、このナデシコにお任せを。」

「そうか、ならば独立戦隊の任を果たすのだぞ、ユリカ。すぐに補給をさせる。アキト君も、頼むぞ。」

「はい。」

「では、また情報が入りしだい報告をする。健闘を祈る。」



「ネオ・ジオン・・・か。」

「また七年前と同じ、いえ、あれ以上の戦いが起きるんですね。」

「亡霊が今更何をしようっていうんだ?」

「さあな。だがなサブ、何にしても倒すべき敵が増えただけさ。」

「一体、いつになったら戦いは終わるんだよ。なあシン。」

「・・・俺達人間が、全員消えれば終わるんじゃねえか?」

「シン君。」

アキトはシンを見つめる。

「すみません、失言でした。」

「とにかくパイロットのみなさんは休んでください。ナデシコはペキンコアに着停します、ラピス。」

「これより着停します。」

「マドラスコアは明日の補給がすみしだい、すぐに出撃です。」



しかし、ナデシコクルーはまだ知らない。マドラスコアにいるもの、それは・・・



次回予告

ペキンコアの戦いが終わり、ナデシコはマドラスコアへ向かう。
だがそこに待ち受けていたものは、かつての、倒したはずの宿敵達。
紅き目をした男が新たな力を手に、ナデシコ、そしてアキトを待っていた。
錫杖の音が鳴り響く時、白き百合は地に墜ちる・・・


スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第九話「蘇りし宿敵 敗北の白百合」

アキト「貴様・・・貴様だけはーー!!」





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