スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜





第九話「蘇りし宿敵 敗北の白百合」


ペキンコアを制圧したナデシコは、すぐにマドラスコアへ向かうため補給を行っていた。

ブリッジも普通は忙しそうだが・・・現在は午前五時、起きているのは一人だけ。



   ナデシコCブリッジ

「あと四時間か、みなさんはまだお休み中。この間に・・・」

どうやらハーリーが何かをしているらしい。

「オモイカネ。」

『OK、一般回線接続完了。』

コンソールに手を置き、作業を始める。

「やっぱり逃げずにストレートで。」

メールを書き始める。やっと返信が決まったらしい。

「しばらくは事情があり行けませんが、用事が終わったらぜひ行かせてもらいます。その時はよろしくお願いします・・・と。」

書き終え、送信する。

「ふ〜、メールでここまで疲れるなんてなあ。まあバレないようにするだけでも一苦労だし、今日もありがとうオモイカネ。」

『どういたしまして。うまくいくといいね、ハーリー』

AIのオモイカネも励ましてくれるとは、いい友人だね。

「ははは、ありがとうオモイカネ。僕もうまくいくといいなあと思ってるよ。」

と、

「ハーリー君?早いですね。」

「ル、ルリさん!?」

ドアが開き、そこに朝は弱いはずのルリが立っていたのだ。

「な、何でこんなに早いんですか?」

この時間なら誰も来ないと確信していたのだが。

「実は最近不眠症で・・・よく眠れなかったんです。」

ルリらしくない、目をこする仕草をする。

「そ、そうですか。大変ですね、じゃあ僕はこれで。」

何とかその場を流そうとするが、

「ところでハーリー君、一体何をしてるんですか?」

来た・・・とハーリーは思い、なんとか誤魔化そうとする。

「ぼ、僕は少し早起きをしてしまったんです。」

さすがに告白したことのある女性の前で、今好きな女性にメールを送ってました、なんて口が裂けても言えない。

「そうですか。で、一体何を」

「お腹すきませんかルリさん?」

ルリの言葉を遮り、無理やり話題を変えようとする。

「でも、まだ食堂は空いてませんよ?」

その言葉を聞き、心の中でガッツポーズをしながらも、

「大丈夫です、行きましょう。」

ルリを促し、二人は食堂へ向かった。



   食堂

「やっぱりアキトさんはいませんよ。」

ルリは食堂を見渡しながらハーリーに言うが、

「心配いりません。ここにもう一人コックがいます。」

自分を指差しながらハーリーは言う。

「え、ハーリー君は料理ができるんですか?」

さすがにルリも驚いている。

「はい、それなりには。何かリクエストはありますか?」

「ではチキンライスはできますか?」

「お任せください、少し待っていてくださいね。」

そして待つこと十分後。

トレイに置かれた二つのチキンライス、スプーン、水の入ったコップがテーブルに置かれ、ハーリーはルリの対面に座る。

「お待たせしました、どうぞ。」

ルリは前に置かれたチキンライスを見る。

色もよく、匂いもチキンライスのものだ。

ルリはいただきますと手を合わせ、スプーンを手に取り一口すくって食べた。

「おいしいです。」

それは間違いなくチキンライスだった。

「そうですか、お口に合ってよかったです。」

ハーリーはうれしそうだ。

「でも、ハーリー君何で料理ができるんですか?」

「僕の趣味の一つなんです。ナデシコBの時もちょくちょく作ってたんですよ。クルーで知ってるのはサクラさんぐらいで、サブロータさんも

 知らないんです。」

ルリは懐かしい名を聞いた。ナデシコB、そして元クルーの名を。今はどうしているのか・・・

「それに、今はアキトさんという先生がいますしね。」

そのことにルリは驚く。

「ハーリー君、料理もアキトさんから教わっているんですか?」

「はい。アキトさんってすごいですよね、僕に出来ないことを何でも出来て。きっと、すごい努力をしたんだと分かったんです。」

ハーリーは顔を伏せ、皿の上でスプーンをいじる。

「ルリさん、僕も・・・アキトさんみたいになれますかね?」

「アキトさんみたいに、ですか。ハーリー君、アキトさんを目標にしているのですか?」

「はい、それにルリさんも僕の目標の一人です。それにアキトさんはいろんな意味で強い人です。だから、僕も・・・」

そう言い空になった二枚の皿を重ね、その上にスプーンとコップを置き、ハーリーは席を立つ。

「ルリさん、もしよければ僕の料理を味見してくれませんか?今新しいレパートリーを考えているんです。」

そういったハーリーの顔は、昔とはまるで違っていた。

「ふふ、いいですよ。楽しみしてますからね、ハーリー君。」

「ありがとうございます。後このことは秘密にしてください、ユリカさんに知られたら大変ですから。」

口元でシーと人差し指をたてる。

「確かにそうですね、わかりました。じゃあ先にブリッジへ行ってますね。」

「はい、僕も片付けを終えたらすぐに行きます。」

ルリは席を立って出口から食堂を出ようとしたとき、振り返って厨房のハーリーを見る。

ハーリーの顔は、はつらつとしていた。

「(弟、か。)」

と、

「ルリちゃん?」

「え、アキトさん?」

後ろにいつの間にかアキトが来ていた。

「早いね、まだ食堂は空いてないよ。」

「はい、でもすでに頂きましたから。」

ルリの言葉をアキトは分からないといった顔をしていたが、食堂を覗きなるほどという顔をした。

「ハーリー君か、なら安心だな。ユリカだったらどうしようかと。」

アキトは心底恐れているようだ。まあ、わからなくもないけど。

「ユリカさんだったら私は逃げますよ。でもハーリー君には驚きました。」

「そうか、ということはもういいんだね?」

「はい、先にブリッジへ行ってオモイカネと話でもしています。」

アキトはそれに頷き、ハーリーの元へ歩いていく。

「おはようハーリー君。もしよければ仕込みを手伝ってくれないか?」

「あ、おはようございます。仕込みですか、いいですよ。」

二人はそれぞれ今日の朝食の仕込みを始めた。

残されたルリは、アキトとハーリーを見る。

「(本当に、仲のいい兄弟みたいですね。)」

クスッと笑い、ブリッジへ向かった。

そして二時間後、多くのクルーが食堂に入り、大繁盛だった。

ちなみにハーリーは直前に抜け出していた。



   ナデシコCブリッジ

朝食を終えたブリッジメンバー、パイロットメンバーは今日のマドラス攻略の作戦会議を始めた。

「では、今回の作戦を説明します。」

ユリカは凛とした表情で全員を見渡す。

「今回の作戦は・・・」

全員が固唾を呑んで見守る。

「何がいいかな〜?」

一瞬で雰囲気がぶち壊され、ユリカ以外の全員がコケた。

「おいユリカ、何言ってるんだお前は!!」

即座に復活したのはやはりアキトだった。中々いい突っ込みだ。

「だってね、偵察に行った人達がほとんど確認できなかったって言ってたし。」

「確認できなかった?」

「ここからは私が説明します。」

みかねたルリが代わりに話し始めた。

「昨日の戦闘後、マドラスコアへ偵察に言った部隊の話によれば、コア内部からまったく人気を感じなかったそうです。」

「何でえ、敵さん逃げちまったのか?」

「いえリョーコさん、人気はありませんが無人機がいたそうです。といっても、その数はペキンコアと雲泥の差ですが。」

「うん、だから正面からでも問題ないと思うんだけど、どうもねえ〜。」

「罠・・・かな。」

「アキトの言ったとおりだと思う。明らかにこっちを誘ってるね。」

「ユリカ、どうする?」

「でもいつまでもほったらかしは拙いからね、後味も悪いし。」

「ユリカさん、それでは。」

シンは左手の掌に右拳を打ち付ける。

「はい、正面から撃滅します。各員持ち場へついてださい。」

全員が移動し、ナデシコはペキンコアを出発しマドラスコアへ向かう。



   格納庫

「みんな、マドラスは近いからすぐに戦闘になる。機体のチェックはしてあるか?」

アキトが全員に確認をする。

「こちらシン、ファントム異常なし。」

「こちらタカヤ、同じく異常なし。」

「ハイパーエステ、問題なしっと。」

「俺もOKだぜ。」

「アポロンも異常なしだよ、テンカワ君。」

「よし、今回は俺とシン君が空、タカヤ君とサブ、リョーコちゃんが地上、アカツキは各機の援護だ。」

「了解」×5



  ナデシコCブリッジ

「ルリさん、マドラスコアを確認しました。」

「そうですか。ラピス、状況は?」

「索敵中、敵はやっぱりバッタとジョロ、後はカトンボが二隻だけ。人型機動兵器はなし。」

ラピスの報告を聞き、ルリはユリカの方を向く。

「どうしますか、ユリカさん。」

「さっきの通り、一気に攻めます。何かあってもアキトたちなら大丈夫だよ。」

ユリカの顔は自信にあふれていた。

「わかりました。ハーリー君、各パイロットに出撃を。」

「了解。」

そうしてナデシコから全機が発進し、戦闘が開始された。



「アキトさん、やっぱり少ないですね。」

「ああ、全部無人機だ。」

ファントムとサレナは空の敵、バッタやカトンボを相手にしていた。

しかし無人機ばかり、しかも数が少ないので苦もなく倒していく。

地上も似たような状況だ。

「テンカワ君、これじゃあ僕の出番がなさそうなんだけど?」

後方のナデシコにいるアカツキが不満そうに通信をしてきた。

「そういうな、まあそこで待機していてくれ。」

「ふう、了解。」

通信をきったが、

「アキトさん、こっちはもう終わりましたよ。」

「何か戦ったって感じがしねえな〜」

「リョーコの言う通りだ、昨日の戦いが嘘のように感じるぜ。何でこんなに少ないんだ?」

地上のタカヤ、リョーコ、サブからウインドウが開かれた。と、シンのウインドウも開かれた。

「最後のカトンボ撃墜。敵反応なしです。」

「そうか、こっちも今終わった。」

こうしてみると、結局十数機ぐらいしかいなかったようだ。増援の気配もない。

「アキトさん、敵はもういませんから突入しますか?」

「そうだな、シン君の言ったとおりだし、ナデシコ。」

アキトの通信にハーリーがでる。

「はい、どうしました?」

「この付近の敵の殲滅に終了。これよりコア内部に向かう。」

「了解です、ユリカさん。」

「うん、気をつけてね。」

そして今度は全機に通信を送る。

「全機、散開してコア内部の調査に向かってくれ。」

「・・・アキトさん。」

シンが真剣な表情で通信してきた。

「どうしたんだい?」

「何か、聞こえませんか?」

「?」

「鈴の音、いや違う。これは・・・何だ?」

アキトは耳を澄ましてみる。すると、


シャリーン・・・シャリーン・・・


何か金属同士がぶつかり合ってるような、弱い音が聞こえてきた。そしてだんだん大きくなってくる。

ブリッジメンバーも気付いたようだ。

真っ先に反応したのはラピスだった。

「この音、アキト!」


同時にサレナの中で、アキトは目を細めて拳を握っていた。

そしてコア一部の上部が開き、七つの機体が飛び出す。

七機が横一列に並んでいる。


中心の機体はリーダー機のようで、鮮やかな朱色だった。

それはナデシコCのクルーがかつて戦ったことのある機体、夜天光に似ていた。

しかしまず大きさが違う。グラディエーター並みの大きさで、二十八メートルほどだろうか。

両肩には棘のような物がついており、背部から突き出している二つの突起はバーニアだろう。

両足の先には筒のような物がでており、腹部には砲門のような物もみれた。

MSに似た吊り上ったスリットには紅いモノアイが一つ点灯しており、頭部には角のような物がはえている。


一方残りの六機もやはりかつて戦ったことのある機体、六連に似ていた。

機体のカラーリングはブラウンだが、脚部がスカートのようなバーニアになっており、その前後左右にノズルのような物がある。

背部には二本の白い棒のような物を背負っていた。大きさは二十メートルほどのようだ。


七機とも、右手に錫杖を握っている。


シンとタカヤはナデシコメンバーがおかしいことに気付いた。

「アキトさん、どうしたんです!?」

シンはアキトに問いかけるが、その顔はいつもの優しそうな雰囲気など欠片もない。

「ユリカさん、みなさんもどうしたんです!?」

タカヤもブリッジ、そして他のパイロットに問いかけるがまるで聞いておらず、目の前の七機を見つめていた。



「幾千夜、死国をいでしその道は、まごうことなき輪廻の螺旋。」



聞く者がぞっとするような声が響き、全員の前にウインドウが開かれた。

「久しいな、ナデシコC。そして・・・テンカワアキトよ。」

紅き目の男が、甲冑のようなパイロットスーツに身を包み、薄ら笑いを浮かべていた。

「―――っ!」

アキトが普段は出さない怒りに染まった唸り声をだしている。

「我が生きていることが不思議か、復讐人よ。」

「貴様・・・」

「くくくく、やはり群れても変わらんか。その目だ、その目を待っていたのだ。我が乗機、不知火(しらぬい)と六道(りくどう)の

 相手に相応しき者よ。」

「北辰ー!!」

アキトの怒声が響き、サレナは単機で向かっていく。他の三機も向かっていっている。

「シンさんタカヤさん、いますぐアキトさんの援護に向かってください。」

「ルリさん?」

珍しくルリが焦りの声をだすことにシンは驚いた。

「急いでください!」

「りょ、了解。タカヤ。」

「ああ、往くぜ!」



先行したサレナはすでに戦闘を開始していた。

サレナはハンドカノンで不知火だけを狙っていたが、六道達はサレナを無視し後方のシン達に向かっていった。

不知火もサレナだけを見ているようだ。サレナのハンドカノンが不知火に当たるが、全てフィールドに弾かれる。

そのまま両機がフィールド越しにぶつかり合うが、サレナは大きく後方に吹き飛ばされてしまう。パワー負けをしているのだ。

「くっ。」

アキトは飛ばされるサレナの中で必死に制御していた。

「貴様・・・貴様だけはーー!!」

しかし隙を逃さない不知火は、追撃のために錫杖を振り上げる。

「滅。」

錫杖が振り下ろされる。だが、二機の間に割ってはいる白銀の機体が、両手に持ったセイバーで受け止める。

「むっ。」

「シン君。」

それはファントムだった。だが不知火のパワーは凄まじく、間接が悲鳴を上げている。

シンはアキトに通信を繋げる。

「アキトさん、単機ではこいつに勝てません。連携でいくしか。」

だがアキトは、

「邪魔だ、シン君。」

「なっ!?」

「これは俺と奴の戦いだ。」

何とアキトはシンを邪魔に感じていた。

シンはその言葉に怒りを覚えた。

「ふざけるな!一人で勝てると思っているのかよ、あんたは。この!!」

ファントムは錫杖を弾き、左手のセイバーを不知火の右胴に振るう。

しかし不知火は右膝を上げる。すると足の甲の筒からビームサーベルが伸び、セイバーを受け止めたのだ。

「斬。」

不知火はその勢いを利用し、左足から伸びたビームサーベルを振るう。

ファントムは間一髪、後退してかわした。

「テンカワアキトの言うとおり、貴様は目障りだ。」

「うるせー!!」

そうういい、左のセイバーをブーメランのように投げつける。

「消。」

何と不知火は、腹部の砲門から漆黒のグラビティブラストを発射したのだ。

それはセイバーを消し、二機に襲い掛かる。

「くっ。」

二機は回避するが

「下がれ、シン君。」

再びアキトに言われ、シンは完全に切れた。

「そうですか、わかりましたよ!」

ファントムは反転し、グラディエーターの元へ戻って行った。



「ちくしょー、何だよこいつらは。」

タカヤはシンが抜けた後、一人で二機の六道と戦っていた。

だが、グラディエーターでは機動性が圧倒的に下だった。

しかし、六道達はまるで倒す気がないようにちまちまとしか攻撃してこない。

リョーコ達も似たような状況だ。

と、

「タカヤ、無事か!?」

ファントムがビームライフルを放ち、六道達を引き離す。

「シン、何で来たんだ?」

「ふん、アキトさんは俺の手助けはいらないんだとよ。」

シンはつっけんどんに答える。

「だから知らん。とにかくこいつらを倒そう、どうも旗色が悪い。」

「アキトさんがそんなことを?・・・まあいい、行こう。」

「ああ。」

ファントムは左のビームライフルを連射しながら一体の六道に接近する。

六道は横に回避するが、そこにドリルが飛んできた。

しかし六道は不規則な動きでそれらをかわしきる。

「何!?」

「何て反応だ、くそ!!」

シンとタカヤはその動きに翻弄され始める。

二機はファントムに狙いをつけ、錫杖を突きつける。

一機の攻撃を避け、もう一機の錫杖をセイバーで受け止めた。

だが、一向に切れる気配がない。

「ビームで切れない?こいつ、フィールドを纏っているのか!」

シンの思ったとおり、錫杖はフィールドを纏っていた。

「く・・・」

そのまま拮抗するかと思いきや、パワーで押されていた。

と、

「シン、後ろだ!!」

「!?」

前ばかりを気にしていて、後ろに気が回ってなかった。

もう一機の六道が手にする錫杖を投げつけた。

それはファントムの左胸に突き刺さる。

「シン!?」

ファントムは推力を失い落ちていく。

「てめえらー!!」

グラディエーターは斬艦刀を展開し、飛び上がって斬りかかった。

しかしそんな大振りが当たるわけもなく、かわされてしまう。

「この・・・!?」

だが、地面に着地した時信じられない光景が飛び込んできた。

「ア、アキトさん。」



アキトは焦りを感じていた。

「このおおー!!」

ハンドカノンを連射する。しかし全てかわされているのだ。

「何故だ・・・何故当たらない。」

サレナの攻撃全てが、当たらないのだ。

「ふん。」

「!?」

「つまらん、やはりあの時は違う。いつまで錆び付いた鎧を纏っているのだ?」

北辰が放つ一言。

「そのような輩は、我と戦う資格など・・・ない!!」

不知火は錫杖を投げつける。

サレナは左にかわすが、それは北辰に読まれ先回りされていた。

「斬。」

右足のビームサーベルがサレナの両足を薙ぎ払う。後数瞬遅れたら、コクピットも真っ二つだったろう。

「沈め。」

両手を組んで、上からサレナの頭部へ振り落ろす。

サレナは直撃を喰らい、地面に叩きつけられてしまった。

やがて限界を超えたのかサレナユニットがパージされ、白い煙を上げるアキトのエステが姿を現す。

アキトは衝撃で気を失ったようだ。

「ふん、興が失せたわ・・・」

不知火の周りに六道が集まる。

「テンカワアキトよ、我は貴様が戻ってくるまで待つとしよう。」

それだけいい、七機はコアの中へ入っていった。

全員が呆然としていると、コアのハッチが開かれ、HLV改が上空へ向かっていった。

誰も、動くことは出来なかった。


「アキト・・・アキトーー!!」



   ナデシコCブリッジ

「ユリカさん、全機の収容完了しました。」

「うん・・・ハーリー君、パイロットの方は?」

ユリカの声はいささか暗い。

「全員無事です。ただ、シンさんが打撲、アキトさんも軽い脳震盪が起こったようです。」

「ありがとう、これよりナデシコはマドラスコアへ入ります。ペキンコアへの連絡も、ラピス。」

「了解。」

「アキトさん・・・」

ルリは心配そうにアキトの名を呟いた。



   格納庫

「・・・・・・」

シンがアキトを無言で睨んでいた。やがて、口を開く。

「アキトさん、何故あの時俺に邪魔だといったんですか?」

「・・・君では奴の相手は無理だからだ。」

その言葉にカッとなる。

「そんなでかい口を叩いて、あのざまですか。」

右手の親指でサレナを指す。

今度はアキトがカッとなる。

「何だと・・・」

「あいつ、北辰でしたか。すげえやばい感じがしました。でも、二人でいけば勝てないこともなかったんじゃないですか?

 それなのにあなたは私情を挟んで、しかも負けた。どんな因縁があるか知りませんが、そんなものをいちいち戦場へ持ってくるなんて

 いい迷惑です。あなたの方こそ邪魔なんですよ。」

「貴様!!」

アキトはシンに掴みかかろうとするが、周りの四人に取り押さえられる。

「アキトさん。シン、言いすぎだぞ!」

「おい、やめろって。」

「落ち着けよアキト。」

「身内で争っても仕方ないだろ、テンカワ君。」

そんな光景を見ながらシンは、「ふん。」と冷たく言い、格納庫から出て行った。

それを見て、四人はアキトを放す。

アキトはまだ怒っているようだ。しかし、

「アキトさん。」

タカヤがアキトの前にでて、話し始める。

「シンのことは、俺がよく言っておきます。でも・・・」

「・・・何だ。」

「今回は、アキトさんが悪いと思います。」

アキトは黙って聞いていた。

「シンだってあなたが心配だから、大切な仲間だから、あなたの元に向かったんです。あいつは俺が空を飛べないから、

 あの六道って奴を二体相手に戦ってたんです。戦闘中に背を向けることが、あなたにもどれほど危険かわかるでしょう。」

「・・・・・・」

「俺達は昔のナデシコを知りません。あなたの過去も知りません。でも今は、共に戦う仲間じゃないですか。」

タカヤはジッとアキトを見る。

「もっと信じてください。シンを、俺を。・・・言いたい事はそれだけです。」

そして、タカヤもシンを追うため格納庫から出て行った。

タカヤが出て行き、アキトはサブ達を見る。

「サブ、俺って馬鹿だな。」

「ああ、本物の大馬鹿野朗さ。」

「ふっ、後でシン君に謝らないとな。」

「違うぜサブ、こいつは超がつく馬鹿だぜ。」

「きついね、リョーコちゃん。」

「それにしても信じろか、いいねえ若いってのは。」

「お前がいうと現実味があるな、アカツキ。」

「あらら、こりゃまたきついことを。」


「ははははは」×4


四人が大笑いする。

と、そこにユリカ、ルリ、ラピスがやってきた。

「アキト、何笑ってるの?」

「ユリカ、俺は超がつく大馬鹿野朗だってさ。」

「何言ってるの?」

ラピスが首をかしげる。

「いや・・・それよりルリちゃん、今後の方針は決まったか?」

「はい、それなんですが一度日本に戻り、ヨコスカドックに向かおうと思っています。」

「じゃあ日本に戻るってのか?」

「そういうことです、リョーコさん。」

「ところでサブちゃん、シン君とタカヤ君は?」

「ああ、あいつらなら心配ありませんよ、提督。」



   ナデシコCブリッジ

三人が出て行った後、ハーリーは一人で作業をしていた。

「ヨコスカドック、か。」

だが、どことなく表情は暗い。

「二年・・・早いなあ、時が経つのって。」

コンソールから手を離す。

「一度、帰ろう。」

背中のシートにもたれかかりながら上を見る。

「僕の家に。」




 次回予告

ペキン、マドラスと戦い続けたナデシコCは、次の指令を待つため日本へ帰還する。
それぞれが部所で過ごす中、一人の少年はナデシコCを出、我が家へと向かった。
今は誰もいない家。そして、両親に会うために・・・


スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第十話「悲しき過去」

サブ「気になりますよね、艦長?」


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