スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第十三話「三たび舞う蒼き凶鳥 剣闘士の最期」


コトシロ落としを阻止に向かったナデシコCは、落下するコトシロを砲撃し、共に大気圏に突入した。

そして現在、南太平洋に着水している。


   ナデシコC ブリッジ

「・・・うっ」

ユリカはシートベルトを外し、モニターを見る。

そこは真っ黒な闇、一面海だった。

「う、ん・・・」

「いたた・・・」

二人も無事のようだ。

「ユリカさん、私達は。」

「うん、降下できたみたいだね。」

「オモイカネ。」

ルリはオモイカネに呼びかける。

『現在は南太平洋に着水中。』

「そう、ナデシコの状態は?」

『相転移エンジン異常、ブレード部も同じ。それ以外は少し焦げた。』

「無理させてごめんね、オモイカネ。」

『気にしないで、ラピス。』

そういい、ウインドウを閉じる。

と、

「三人とも、大丈夫か!?」

ドアが開き、アキトを先頭にサブ、リョーコ、アカツキが入ってきた。

「私達は大丈夫ですが、そちらはどうですか?」

「格納庫は酷い有様だ、かろうじて機体の固定が間に合ってたからよかったけど、怪我人も数人でてる。」

顔をしかめ、アキトが言う。

「提督、現在地はどこかな?」

「今は南太平洋です。」

「ならちょうどいい、すぐにトリントンコアへ向かってくれ。」

「トリントンコア?」

「ああ、そこに行くはずだっただろう。新しいナデシコが待っている。」

「あ、そうでしたねアカツキさん。」

ユリカはルリとラピスの方を見る。

「ナデシコの移動、出来るかな?」

「相転移エンジンが使えない今は、補助で泳いでいくしかありません。」

「じゃあお願い、ラピス。」

「了解。」

ナデシコは移動を開始した。

「では僕達も休ませてもらうよ。さすがに疲れた。」

パイロット一同はブリッジから出て行った。

「じゃあ二人も休んでて。ここは私がいるから。」

「えっ。」

「でも。」

「大丈夫、何かあったらすぐ連絡するから。もう夜の一時だしね。」

ルリとラピスはしばらく考え、

「わかりました。」

「私も、眠い。」

二人はナデシコを自動航行に設定し、ユリカにお休みなさいといいながらブリッジを出て行った。

「・・・・・・」

ブリッジに、ユリカ一人だけが残される。

「(静かだなあ、いつもの賑やかさが嘘みたい。)」

自分以外いないブリッジ、いつもは四人いるのだから寂しく思う。

「お前も少しは休んだらどうだ、ユリカ。」

「アキト・・・びっくりするじゃない。」

アキトがブリッジに来ていた。

「その割には驚いてないみたいだけどな。」

「う〜ん、何となく来てくれるかなって思ってたの。」

「そういうところは鋭いな。」

「だってアキトのことだもん♪」

アキトはユリカの隣に立つ。

「きれいな海だな。」

「そう・・・だね。」

ブリッジから見えるのは一面真っ黒な海だが、多くの星が、そして月明かりによって照らされた海面が光っていた。

二人はしばらく無言だったが、やがてユリカが口を開く。

「アキト、平和ってなんだろうね。」

正面を見たまま、呟く。

「ユリカ・・・」

「私達が作ろうとしてた平和って何なのかなあって、時々思うんだ。多くの人と出会って出来た思い出。」

「・・・・・・」

「いつまでもこんな楽しい日々が続くって、そう思いたかった。」

ユリカはアキトを見上げる。

「アキトが思う平和って何なの?」

「・・・平和、か。人が争いを無くした世界かな。」

「でも、それなら何度もあったよね。」

「そうだな、確かに何度もあった。造る度に壊され、壊される度に造り直す・・・その繰り返しだ。」

「戦争、平和、革命・・・まるで終わることのないワルツみたい。」

「面白い例えだな。俺達がこの世界という舞台で踊り続ける役者か・・・だが、その通りだ。」

二人は一度口をつむぐ。

「彼も、それを感じたのかもしれないな。」

「ハーリー君のこと?」

「ああ、彼は人一倍正義感が強い。ネオ・ジオンが世界を変えようとしてるのを感じたのかもしれない。いや、好きな女のために戦うのは

 悪いことじゃない。でも彼の心の奥には、憎しみの想いもあるんだ。それが・・・彼をいつか修羅へと変えてしまうかもしれない。」

ユリカは黙って聞いていいる。

「だが俺は認めない。一度過ちを犯した俺は、その悲しさを知っている。もし彼が戦うというなら、俺が・・・彼を迎え討つ。」

「アキト。」

「このナデシコを、そしてユリカを守るためにも。」

ユリカはいつの間にか立ち上がり、アキトを見つめ目を閉じる。

アキトはそっとユリカの顔に近付け・・・唇を合わせた。

だが、この二人の会話を聞いていた者がいた。

その人物は、顔を歪めながら逃げるように居住区へ向かった。桃色の髪をなびかせて・・・



朝日が昇っている。ナデシコは少しづつ進み、半日かけてトリントンコアへ辿り着いた。

海中から中に入り、ドック内に固定する。



   ナデシコC ブリッジ

「ユリカさん、通信です。」

「回して。」

そしてモニターに通信主の顔が映る。

「ようこそ、トリントンコアへ。」

「ジュ、ジュン君!?」

それは、宇宙軍アオイジュン大佐だった。

「久し振りだね、みんなも。」

「ジュンさん、どうしてここに?」

ルリも驚いているようだ。

「まあとにかくこっちに来てくれ。そこで話すよ。」



   トリントンコア内部 ブリーフィングルーム

「やあ、アキトもユリカも久し振りだね。」

「ジュン、何故お前がここにいるんだ?」

「それは僕から説明」


「説明しましょう。」


アカツキの言葉を遮るこの声は。

「イネスさん!?」

「ご名答よ、提督。」

ドアが開き、入ってきたのはナデシコの説明おばさん(ギンッ)・・・麗しきドクター、イネス・フレサンジュだった。

「イネスさん、何でここに?」

「アキト君、私だけじゃないわよ。」

と、再びドアが開き、

「ユキナ、ただ今参上。みんな久し振り。」

「ふふふ、元気にしてた?ルリルリ。」

「おうおう、久し振りだなお前ら。相変わらず荒っぽい使い方してんな〜。」

「ここはやっぱり変わらないねえ。」

入ってきたのは四人。ルリは目をいっぱいに開く。

「ユキナさん、ミナトさん、セイヤさん、ホウメイさんまで。」

「私達が急遽ナデシコの助っ人として着たということよ。」

「アカツキ君に言われてね。急いで来たのよ。」

イネスとミナトが理由を話す。

「おいアカツキ、他のメンバーはどうしたんだ?」

「メグミ君、ホウメイガールズは今でも忙しいし、ヒカル君もイズミ君も同じさ。すまないねえリョーコ君。」

「まあ、みんなそれぞれ仕事もってるしな。」

「でも、何か昔のナデシコに戻ったって感じだよね、アキト。」

「ああ、そうだな。」

「そうなんだけど・・・ユキナ、何でお前まで来たんだ?」

「ジュンちゃんの行くとこユキナありよ。ミナトさんこっそり行こうとするんだもん。」

「ごめんね、ジュン君。」

「いえ、ミナトさんのせいではありません。」

「いいじゃん、迷惑かけないからさ〜、ねっ。」

「はあ〜分かったよ。」

「相変わらずだな。」

「アキトに言われたくないよ。」

と、今まで黙っていたシンがユリカに問いかける。

「ユリカさん、この人たちは?」

「あ、そうだね。三人は知らないか。みんなナデシコA時代のクルーなんだよ。」

「へえ〜、そうなんですか。」

「あ、でも一応自己紹介してくれないかな。」

「分かりました。」

香織が答え、シン達は一列に横へ並ぶ。

「初めまして。カワシマ・シン、二十歳です。パイロットをしています。」

「同じくパイロットのモリナリ・タカヤです。年も同じ二十歳です。」

「ナデシコ整備班のサイトウ・カオリです。年は二十二です。」

「よろしく〜」×六

場が和やかになったのだが、ミナトはルリに聞きたいことがあった。

「そういえばルリルリ、ハーリー君はどこ?」

「えっ・・・」

「そういやみねえなあの坊主。」

「・・・・・・」

「昔はおいしくあたしの料理を食べてくれてたねえ。元気かい?」

「彼は・・・その。」

「ルリルリ?」

「何?ハーリー風邪でもひいたの??」

ミナトとユキナがルリ、他のクルーの様子がおかしいことに気付く。

「あの子に何があったの、ルリルリ。」

様子がおかしいルリに、真剣な表情で聞くミナト。

「・・・ません。」

「?」

「彼は、もうここにはいません。」

「いないって、どういうこと?」

「マキビ・ハリは、ナデシコを裏切ってネオ・ジオンに脱走したんだ。」

アカツキが詳しく話す。

「ちょ、脱走ってどういうこと!?」

「言葉通りの意味さ、彼はナデシコを裏切ったんだ。」

ミナトは呆然としている。

「そんなことありえないわ。あんないい子が・・・」

「事実ですよ、ミナトさん。」

「・・・そう。」

アキトにまで言われ、ミナトは顔を伏せてしまう。

「では、そろそろナデシコDの方に移ろうか。もうオモイカネの搭載も終わって、機体の積み込みも完了しているだろう。」

「アカツキ、俺達のエステはどうするんだ?」

「僕達の機体はシン君やタカヤ君、アキト君の機体以上に破損している。ここにおいていくしかないだろうね。」

「そっか、仕方ねえか。」

「んじゃま、とりあえず移動しましょうか。」

サブが言い、各員は通路を通りナデシコDへ向かう。

と、向かおうとしていたタカヤをジュンが引きとめた。

「アオイ大佐?」

「ああ、階級で呼ばなくていい。ジュンでかまわない。」

「わかりましたジュンさん、何か?」

「忘れたのかい、君の新型機。」

「あ、そうでしたね。」

「ついて来てくれ。」

ジュンの後ろを付いていき、別の格納庫に着いた二人。ジュンが横についているスイッチを押す。

照明がつき、そこにあったものは・・・一機のロボットだった。その横にはグラディエーターの姿もある。

「これは・・・」

「連合のデータに記録されていたαナンバーズの機体の一つ、それを新しく作り直し改良した。

 君と同じく斬艦刀を振るい、悪を、そして神をも断った男の乗機・・・ダイナミック・ゼネラル・ガーディアン、通称ダイゼンガー。」

「ダイ、ゼンガー。」

「ダイゼンガーは格闘仕様の機体だが、今回は新しい武装も積んでいる。操縦はグラディエーターと同じダイレクト・モーション・リンク。

 全長は若干小型化した50メートル、その分小型相転移エンジンをなんと四基搭載しているんだ。

 武器は両手のドリル。普段は手首を軸に二つに分かれていて、攻撃を受ける盾代わりにもなる。

 それを展開し、今回はディストーションフィールドを纏うことが可能だ。腹部には高出力のグラビティブラスト、ファイナルブラスター。

 そしてメインの武器は、改良された斬艦刀・村正。名前の由来は、妖刀からとったものさ。これもフィールドを纏うことができ、

 斬れないものは・・・ほぼないだろうね。君のグラディエーターのデータも入っているんだ。」

「これが俺の、新しい相棒。」

「君にはしばらく慣れてもらうためにここで二日訓練しててもらう。その後、ナデシコに合流してくれ。こっちも急いで他の機体の

 調整をしないといけないから。本格的な調整は月じゃないと無理だからね、もうナデシコは行く用意ができてるし。」

「了解しました、早速!?」

突如警報が鳴り出した。

「ジュン君!」

「ユリカ、どうしたの?」

ユリカのウインドウが慌しく開いた。

「うん、海洋からアンデッドが接近してきてるの。」

「な、こんな時に。まだナデシコDは武装面の調整だって。」

「ジュンさん、ここは俺に任せてあなた達は宇宙へ行ってください。」

「だけど君が。」

「ここの防衛部隊、ほとんど被災地救援に行っていないんですよね。ナデシコの機体だって満足に動くのは俺とシン、アキトさんだけなんですし。」

「・・・いいのかい?」

「任せてください、必ず俺も行きますから。」

「わかった、任せたよ。」

「了解。」

ジュンはナデシコDに向かって走り、タカヤはグラディエーターのコクピットに入った。

「全武装OK、エネルギーも問題なし。やつらをコアには近付かせるわけにはいかない。行くぜ、グラディエーター!」

ハッチを開け、ホバーを使い外へ飛び出す。



   ナデシコD ブリッジ

「遅くなってごめん。ユリカ、すぐに発進だよ。」

「え、でも。」

モニターに映るのはグラディエーターの姿。

「ジュンさん、タカヤさんがまだ乗っていません。」

「そうよジュンちゃん、待ってよ。」

「大丈夫さ、彼が行ってくれと言ったんだから。」

「・・・本当にそう言ったんだね。ジュン君。」

「うん、だからユリカ。」

ユリカは頷く。

「ラピス、ナデシコDを発進させて。」

「ユリカさん!?」

ルリが驚きの声を上げる。

「タカヤ君も、ナデシコの一員だもん。きっと戻ってくるよ・・・ねっ。」

「ユリカ、上部ハッチ開放。浮上するよ。」

そうしてナデシコDは、陽に照らされその姿を現した。



「綺麗だな。」

タカヤはその光景を綺麗だと思っていた。

だが、そこから一つの白銀が飛び出した。

「・・・はあ!?」



   ナデシコD ブリッジ

「!?ユリカ、格納庫のハッチが。」

と、そこに格納庫のウリバタケから通信が入る。

「お〜い、シンって奴がファントムに乗り込んで出て行っちまったぞ!」

「シン君!?」

モニターに移るのは、地上へ降りていくファントムの姿。

「ファントムから通信。」

そしてシンのウインドウが映る。

「ユリカさん、悪いけど俺も残らしてもらいます。」

「シン君・・・」

「あいつ一人じゃきついですよ。すみません。」

「・・・シンさん、私達は先に宇宙へ向かいます。」

「はい、すぐ追いかけますから。ルリさん。」

と、そこにアキトが割り込んできた。

「シン君、なら俺も。」

「アキトさんまで来たらナデシコが丸裸です、任せてください。」

「・・・分かった、必ず来いよ。」

「了解。」



  トリントンコア 地上

通信を終え、シンはタカヤに繋げた。

「まったくよ、一人でカッコつけるつもりか?」

「うるせえ・・・でもありがたいぜ、お前が来てくれてよ。」

タカヤがシンに向かって笑いかける。

「そうかい、親友だから当然だろ。それと香織から伝言だ。」

「何だ?」

「無事に帰ってきてだと、この色男♪」

「その♪はやめろ。」

「はははっと、団体さんのおでましだぜ。」

アンデッド達がこちらに迫ってきていた。

「ああ、でもその武器・・・ガンナーのやつだろ。使えるのか?」

グラディエーターはファントムが地面に下ろしたグラビティランチャーを指差す。

「まあ、もしものためさ。来るぞ!」

アンデッド達が雄たけびを上げる。

「コアには人がたくさんいるんだ。一匹でも通したら終わりだ!」

「おう!」

ファントムはビームライフルを構え、空中を疾走する。アンデッド達はファントムに集まってくる。

だがファントムの後ろから光りが迫ってきた。

「なっ!?」

慌てて上空に昇る。

それはグラディエーターのライトニングブラスターだった。

「殺す気かあ!」

「いや、ちょうど集まってたもんでな。お前なら避けると信じてた。」

「後で締める!!」

「だが後二十体ぐらいだろ、一気に決めようぜ。」

「おいってうわ!?」

文句を言おうとした時、残ったアンデッド達が再び襲い掛かってきた。

「ちい!」

ファントムはアンデッドの薙ぎ払われる鉤爪を横回転しながら後退し、ビームライフルを連射する。

三連射されたビームがアンデッドを貫いた。

「遅いぜ。」

すぐさま追撃に来るアンデッド達の攻撃を回避するファントム。鮮やかに、軽やかに空中を凌駕し、エネルギーパックを交換しながら

「(見えた。)そこだ!!」

全部のビームライフルを残りのアンデッド達に叩き込んだ。しかし、

「げっ!?」

僅かにズレがあったようで、一体逃してしまった。

その一体に後ろを取られるファントム。

「ドリルブーストナックル!」

しかし、そのアンデッドはグラディエーターのドリルに貫かれ消えていった。

「おいおい、気をつけろよ。」

「今のは礼を言うよ、タカヤ。」

そうしてファントムはグラディエーターの隣へ降りる。

「終わったな。」

「ああ、じゃあコアに戻るか・・・ん?」

レーダーに反応が出る。それは、

「シン!?」

「な、何だよ・・・あれは。」

コアに面する海上に出てきたのは、ゆうに30メートルはある巨大なアンデッドだった。

だが、明らかに違うといえた。何故なら・・・長い首が二つあり、顔といえる部分に巨大な一つ目が口の上にあるのだ。

胴の部分は硬そうな甲羅のようなものに覆われ、その手と思われる場所には、長い触手のようなものが伸びていた。

それ以外は空戦アンデッドと同じだが、生理的にも気持ちがわるくなる、まさに怪物の姿だった。

「う・・・」

「データに載ってない。まさか新種か?」

そして、その新種は二つの目をこちらに向け、大きな口を開き雄たけびを上げる。

「どう見ても友好的には見えないな、シン。」

「こんな奴を通したらコアは・・・行くぞ!!」

ファントムはビームライフルを、グラディエーターは斬艦刀を装備し、空中と地上から新種に接近する。

一気に距離を詰めたファントムは新種の顔、右眼にビームを放つ。新種は痛覚があるのか、悲鳴のようなものをあげる。

そしてファントムが上空に移動しつられて首が上に上がった瞬間、斬艦刀が横薙ぎに振るわれ二本の長い首を吹き飛ばす。

新種は地に倒れた。

「終わったな。」

「あっけないな。しかし何だこいつ?」

シンとタカヤはモニター越しに新種を眺める。

「・・・やはりデータ該当なし。まさか突然変異?」

「さあな。まあ首を斬ったんだ、生きてるわけないだろう。」

そういい二人は、機体をコアに向ける。

しかし二人は忘れていた、アンデッドは死ねば溶けて消えてしまうことを・・・

ファントムは突如後方からの衝撃で前に倒れる。

「ぐっ。」

「シン!?ちい!」

グラディエーターは振り向きざまに斬艦刀を振るおうとしたが、倒したはずの新種が右の触手を伸ばし、グラディエーターの両手を弾く。

そのせいで斬艦刀は手を離れ、グラビティランチャーが置いてある横に突き刺さる。新種は新しい首が生えていたのだ。

「死にぞこないが!」

拳を握って殴りかかるが新種の両目が光り、とっさに左腕でかばうがその光りは左腕、頭部を溶かしてしまった。

「まさか・・・生体レーザー!?」

グラディエーターに追撃をかけようとした新種が爆音とともに吹き飛ばされた。

ファントムがパイルバンカーを使ったのだ。

「大丈夫かタカヤ。」

「すまん、危なかった。」

ファントムは空薬莢を捨てる。

「あいつ再生能力があったのか。しかも何て硬さだ!」

「おまけに生体レーザーだぜ。こっちの方が不利だな。」

「それでもやるしかねえだろ。」

「あいつを倒すには・・・同じこと考えてるだろ。」

「そうだな、一度下がる。」

ファントムとグラディエーターは大きく後方にジャンプする。

「今出せる力、この一撃に掛けるぜ!」

グラディエーターが両足を地面に固定する。

「リミッター解除・・・消えろ!」

ファントムは置いてあったグラビティランチャーを接続した。


「ライトニングブラスター!!」

「ハイパーグラビティランチャー!!」


白と漆黒の閃光が立ち上がった新種の胴にぶつかる。

しかし新種はこの攻撃に耐えていたのだ。異常なほどの丈夫さである。

その間にも、グラディエーターは限界を超えたエネルギー放出により、コクピット内にアラームが鳴り続けている。

ファントムも、本来ある装甲をつけずのリミッター解除の砲撃で、全身からスパークを起こしている。

「耐えろ、グラディエーター。」

「まだだファントム。」

新種は両首をこちらに向け、レーザーを放とうとしている。


「「うおおおー!!!!」」


二つの砲門が融解を始めている。

しかし二筋の光りが新種の胸部を貫き、何かが砕け、新種は断末魔をあげながら消えていった。

新種が消えた後、ファントムは焼け焦げたランチャーを落とし、グラディエーターは片ひざをついた。

「や、やったか・・・」

「ああ、でもこっちも相当ダメージがある。お互いイカレル寸前だな。」

「タカヤ、とにかくコアに行こう。」

「そうだな。」

グラディエーターは残った右腕で斬艦刀を使い何とか立ち上がり、コアへ向かおうとしたが、

「!?タカヤ、危ねえ。」

ファントムがグラディエーターに体当たりをする。

と、グラディエーターがさっきまでいたとこに一つの漆黒の光りが突き刺さった。

「な、何だ?」

「上だ!」

そして上空にカメラを向ける。

そこにいたのは、グラディエーターと同じぐらいの大きさのPTだった。

だが明らかにグラディエーターとは違う。体型はスマートで、スーパーロボットではない、エステ同様のリアルロボットなのだ。

色は紫が掛かった蒼。額のアンテナなど、何処となくガンダムに似ていた。

「あれは・・・PTか?」

と、二人のコクピットに通信が入ってきた。

それを受信する。映し出されたのは、シンやタカヤと同じくらいの年の青年だった。

黒髪の長髪を後ろで縛っている。気の強そうな茶色の瞳に、口には笑みが浮かんでいる。

「初めましてかな、カワシマ・シン。そして・・・久し振りだな、タカヤ。」

「まさか・・・お前は!」

「タカヤ、知ってるのか?」

シンは二人が知り合いだということに驚く。

「知ってて当然さ、俺とタカヤは昔、隣同士の家だったんだから。」

「!?」

「・・・サクマ・ユウイチ。」

タカヤは目を細め、その青年・・・ユウイチを睨みつける。

「ふふ、覚えていてくれたか。懐かしいな、俺がサイド3に引っ越して以来会ってなかったからな。」

「何故お前が。」

「肩のマークを見ろよ。俺の機体、ヒュッケバインMk-W・・・フェンリルの肩を。」

その言葉を聞き、二人はフェンリルの肩を見る。そこには、ネオ・ジオンのマークが。

「ユウイチ、お前はネオ・ジオンの。」

「そうだ、そして俺が来たのは君達に共に来て欲しいからさ。今頃宇宙でもあいつが説得に行ってる頃だろうしな。」

「あいつ?」

「ふっ。シン、タカヤ、一緒に来てくれないか?」

「断る!!」

タカヤはキッパリと断る。

「・・・変わってないな、そういうところは。カワシマも同じか?」

「悪いが俺もだぜ、サクマ。」

「そうか、ならば・・・友人としてせめてもの情けだ、俺がお前達を討つ!!」

ユウイチからの通信が消える。

「くっ、やるしかねえのか。」

「タカヤ、お前は下がってろ。仮にも友達だったんだろ。」

「シン。」

ファントムはセイバーを右手に持ち、フェンリルに向かっていく。

そのまま振り下ろすが、すでにフェンリルの姿は無かった。

すぐに左手のビームライフルを上に向けるが、すでに姿は無かった。

「(はっ!?)」

シンはとっさにファントムを横へ飛ばし、後ろからのフェンリルの攻撃、メガロシュセイバーを避ける。

「ふっ、やるな。だが・・・」

フェンリルは後方にジャンプしながら、

「運がいいとはいいきれないな!!」

メガロシュセイバーを投げつけた。

それは避けたファントムの右太ももに突き刺さり、動きを封じてしまう。

「し、しまった。」

「終わりだ。切り裂け、ツイン・ファングスラッシャー!!」

両肘から突き出された二本の棒が十字になり、投げられた勢いとともに回転しながら刃が展開される。

ツイン・ファングスラッシャーは回転しながらファントムに向かって・・・


「やめろー!!!」


グラディエーターがファントムを突き飛ばし、二つのファングスラッシャーが直撃する。

「なっ!?」

グラディエーターは斬艦刀で受け止めるがその威力に耐え切れず砕かれ、胴を切り裂かれながら後方に吹き飛ばされ、空中で上下に別れた・・・

その、かつてグラディエーターだったものはコアに墜落し、爆発する。

シンはその光景を呆然と眺めていた。

「おい・・・嘘だろ。タカヤ・・・返事をしろ!タカヤー!!」

トリントンコアから黒煙が上がり、その前にはグラディエーターから離れ、破壊された斬艦刀が墓標のように突き刺さっていた。




次回予告

グラディエーターが破壊され、シンは怒りを胸にフェンリルへ向かう。
しかし機体のダメージと性能差は隠せず、力尽きるファントム。
その時、ファントムの危機を救うものが。その名は・・・武神装甲ダイゼンガー。
そして衛星軌道でシンとタカヤを待つナデシコD。
だがそこに現れたのは、白き翼を持つ美しき機体。そして、かつての仲間の姿。
さらば、ホワイトサレナ。


スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第十四話「その名は武神装甲 ゼロと呼ばれたG」

??「・・・殺す。」




あとがき

何故ヒュッケバイン!?と思う人もいるかもしれません。

このフェンリルは過去の連合のデータから独自にネオ・ジオンが改良しフルムーンに製作させています。

当然トロニウムエンジンではなく、小型相転移エンジンを搭載し、ウラヌスシステムも搭載していません。





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