スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第十四話「その名は武神装甲 ゼロと呼ばれたG」


「タカヤ!」

シンは何度もグラディエーターへ呼びかけた。しかし、その返事が返ってくることはなかった。

「自ら仲間を庇うか。タカヤ、お前が味方だったらどれだけ心強かったか・・・」

ヒュッケバインMk-W・フェンリルは、ファントムから抜けたメガロシュセイバーを拾う。

シンは身体を震わせ、怒りの眼をフェンリルへ向ける。

「お前・・・お前はー!!」

右手のIFSが光り、ファントムは右脚から煙を上げ、全身の間接からスパークを出しながらも立ち上がる。

「(その状態で立ち上がるか。)やはりお前は危険だ、必ず俺達の障害になる。」

「そんなことはどうでもいい!だがな・・・今の俺は完全にキてるぜ!!」

両手にセイバーを持つ。

「うおおおおおー!!」



   トリントンコア 格納庫

「・・・うっ、助かったのか。脱出装置がいかれてなくてよかった。」

グラディエーターのコクピットは胸部。ギリギリの所で回避できたのだ。

「いや、これのおかげかもな。」

胸の辺りを叩く。そこには、香織から渡されたお守りが入っているのだ。

「ありがとよ、香織。おかげで助かったぜ。」

そう言い、タカヤはコクピットブロックから外に出る。

「ここは。」

タカヤは後ろを振り返ると、そこには倒れたダイゼンガーの姿が。と、

「シン!?」

黒煙の向こうでは、シンのファントムが全身ボロボロになりながらも立ち上がろうとしている。

「待ってろ、すぐ行くからな!」

そうしてダイゼンガーのコクピットに滑り込んだ。

「同じだ、グラディエーターと・・・よし、ダイゼンガー起動!」

しかし、

「お、重い。」

それは予想以上に重かったのだ。グラディエーターとは全然違った。

「くっ、これが訓練が必要な理由か。納得だぜ。」

しかし、タカヤの顔はあきらめではなかった。

「動きやがれ、うおおおおー!!」

気合の一声と共にダイゼンガーは上体を起こし、ふらつきながら立ち上がった。

「何とかいける。シン、待ってろ!」

ダイゼンガーは前へ踏み出す。



   トリントンコア 地上
 
「ああああー!!」

ファントムは闇雲にフェンリルへ突っ込む。

そして左のセイバーを振るうが、いつもの軽快な動きは形もなかった。

「機体のダメージ、そして怒りによる攻撃の単調・・・死ににきてるな。」

ユウイチはそう呟き、セイバーをかわす。

そのままメガロシュセイバーを振るった。

ファントムの左腕が爆発し、コクピットに限界のウインドウが多く表示される。

「くそ、うるせえぞ!」

コクピット内はアラームが鳴り続けているが、シンにはそれが耳障りに聞こえていた。

その警告を無視し、再び空中からフェンリルへ突っ込んでいく。

もう彼には、この方法しか頭になかったのだ。

フェンリはすでに限界を超えたファントムの斬りを受け止める。

エネルギーのスパークが起きるが、ファントムは押された勢いに踏ん張れず、後ろへ弾かれてしまった。

そこへフェンリルの一閃。右手のセイバーが中心から切られ、爆発の威力で右腕までもが粉々になってしまう。

「ぐっ!?」

「終わりだな。」

フェンリルはメガロシュセイバーを仕舞い、バックステップしながら両肘の下から二本の棒を取り出し振りかぶる。

「ツイン・ファングスラッシャー!」

二つの凶器が、ファントムに迫る。だが・・・

突如爆音が響き、何かが二つのファングスラッシャーを弾いたのだ。

「何!?」

ユウイチは飛んできた何かの出所を見る。それは、トリントンコアからの攻撃だった。

「今のは・・・まさか!?」

シンはそれに見覚えがあった。そして、もうもうと上がる黒煙の中から・・・巨大な人影が姿を現す。

一歩一歩歩みだしており、その手にはグラディエーター以上のドリル。それが二つに別れ、手首に戻っていく。

両目が点灯し、その姿が太陽の光に照らされた。

「武神装甲ダイゼンガー、ここに見参!!」

オープン回線で響く声。

「タカヤ!」

「シン、待たせちまったな。」

アラームが鳴り響くコクピットにタカヤのウインドウが開かれた。

「二回目だが、おせえよ、ば〜か。」

「そうだな・・・ユウイチ!」

タカヤはフェンリルに向かって声を飛ばす。

「今日のところは退け。もし退かないなら・・・」

ダイゼンガーは腰の鞘に手を伸ばし、


「この斬艦刀・村正が、お前をたたっ斬る!!」


抜刀し、フェンリルへ向ける。

「・・・まさか生きてるなんてな。分かった、今日はお前のしぶとさに免じて退かせて貰おう。」

ゆっくりと、二機に背を向ける。

「だが覚えておけ。タカヤとダイゼンガーを倒すのは、この俺だ!」

そして宙に浮き上がる。

「タカヤ、俺は先に宇宙へ行く。決着は宇宙でつけるぞ。」

そのまま上空へ上がっていき、加速していく。

フェンリルが完全に見えなくなって、ダイゼンガーは片膝をついた。

「ふう、退いてくれたか。あのままだったらやばかったぜ。」

「おいおい、マジやばかったのかよ。」

それにシンはゾッとした。

「何とか歩くことはできるんだが、ファントムは?」

「もう・・・動かねえんだ。」

「・・・そうか。」

ダイゼンガーはゆっくりとファントムを抱き上げ、トリントンコアへと向かった。



   トリントンコア内部 休憩室

しばらく整備士と話し込んでいたタカヤが戻ってきた。

「どうだった?」

「だめだった・・・エンジンは完全に死んでいたし、全身のフレームも、よくもったとしかいえない状態だったんだ。

 ファントムはもう動かない。俺のグラディエーターと同じように。」

それはシンにとってどれほど辛い宣告だったのだろうか。タカヤも、拳を握っている。

「積み込みは、終わったか?」

「ああ、もう準備はできてる。ナデシコまでは持つはずだ。」

「なら・・・「あいつら」に、別れを告げに行こう。」

「俺も、そのつもりだ。」

二人は立ち上がり、格納庫の一角へと向かう。



  格納庫 最奥部

二人の前には、勇敢に戦った二機の亡骸がある。この二機は二人の専用機であり、何度も二人を守ってきてくれていた。

少しの間だったが、二人の心の中には今までの戦いが蘇っていた。

シンとタカヤは背筋を伸ばす。

「今まで共に戦い、数々の困難を切り抜け」

「そして、最後まで勇ましく戦い、我ら二人を守りぬいた戦士達に、哀悼の意を表し」


「「敬礼!!」」


ザッと敬礼のポーズをとる。

二人は目を瞑り、静かに涙を流しながら別れを告げる。

「いっしょに戦ってくれて、ありがとう・・・ファントム。」

「安らかに眠ってくれ・・・グラディエーター。」

二人の頬を涙が伝っていく。

そして二人は振り返らず、格納庫を後にした。



十分後、二人は打ち上げシャトルの中にいた。

「カワシマ大尉、モリナリ大尉、カウントダウンを開始します。」

「了解。」「操縦はこちらでやります。」

そして、カウントダウンが始まる。

「十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、ゼロ!」

二人と一機を乗せたシャトルは宇宙に先行したナデシコを追う。

決戦の地となる、宇宙へ・・・



時間は戻り、三時間前。


   衛星軌道 ナデシコD

「大気圏を離脱完了。」

「ユリカさん、どうしますか?」

ラピスが報告し、ルリはユリカに尋ねる。

「シン君とタカヤ君を待ちます。二人を置いて月へなんて行けないもん。」

ユリカは当然と言わんばかりに腕を組む。

「相変わらずだな、ユリカ。」

「本当、変わってないわねえ。」

ジュンとミナトが笑いながら言う。

「あ、でも一応パイロットのみなさんは待機して置いてくださいって伝えて。ユキナさん。」

「はいは〜い、と言ってもアキトさんだけだけど。」



   レウルーラ セレスの部屋

セレスの私室で、セレスとレミーが話している。

「ユウイチはもう行ったの?」

「ええ、ナデシコはすでに上がったみたいだけど。」

「レミー、ナデシコの現在地は?」

「索敵班からの情報では、衛星軌道にいるようね。」

「ユウイチとはすれ違いか。連絡は?」

「すでにしておいたわ。でもどうする?他の子に頼むの??」

「・・・ここからいけるかしら?」

「行けない事もないけど、エピオンクラスじゃないと時間かかるわよ。」

「そう・・・彼に頼みましょう。」

その言葉に、レミーは複雑そうな顔になる。

「大丈夫なの?」

「ナデシコなら彼がうってつけよ。彼ならうまく説得してくれるかもしれない。」

「ミイラ取りがミイラにならないかしら?」

「その時はそれまでの男ってことよ。女を捨てて行くような男じゃ、とてもローズを任せられないわ。」

「テストってことね、わかったわ。」

レミーは手元の通信機をいじる。


   レウルーラ 格納庫

「というわけよ、ローズ。」

「いいんですかレミーさん、彼はまだシステムに慣れていません。・・・下手をすれば飲み込まれます。」

「不安ならローズも行く?私は別に」

「いえ、僕が行きます。」

レミーの間に割り込んできた。

「行けるのね?」

「大丈夫です。」

「上等よ、期待してるわ。」

通信が切れた。

ローズは心配そうに見つめる。

「本当に行くんですか?」

「はい。」

格納庫横の部屋に入り、白を基調とした専用パイロットスーツを着込む。その左胸には、蒼い六角形の水晶が描かれている。

部屋をでてヘルメットを被り、重力制御のされていない格納庫の床をけり、自分の機体の前へ行く。

コクピットの中に入ると、ローズが中を覗き込んできた。

「帰ってきて、くれますよね。」

「どんな結果になっても、僕は必ず戻ります。」

「・・・私もエピオンの整備が終わったら行きます。気をつけてください。」

「はい。」

コクピットのハッチが閉じられ、真っ暗になる。

パイロットはコンソールに右手を置いた。IFSが光り、機体に火が入る。左手はレバーを握っていた。

正面のやや下にある球形のレーダースクリーンが点灯し、コクピットに三六〇度の視界がうまれる。

機体を動かし、カタパルトへ接続する。

ランプがレッドからグリーンへ移り、猛烈なスピードと共に足が離れ飛び立つ。

レバーを前へ突き出す。ブースターの光りと、白き翼をはためかせながら・・・



   ナデシコD ブリッジ

一通りの調整を終え、ブリッジクルーは雑談をしていた。

「へえ〜、ユキナちゃんジュン君とラブラブなんだね。」

「そうそう、もうすぐ結婚一年目だしね。ジュンちゃん♪」

「まったく、独り身の私のことも考えずにいちゃいちゃと・・・」

「ミナトさんには私というお婿さんがいるでしょ?」

「あ〜はいはい、ありがとね。」

ミナトはいい加減そうに手を振る。

「でもさあ、ルリとラピスはどうなのよ?」

「何がです、ユキナさん?」

「?」

ルリとラピスは首をかしげている。

「男よ男。いい加減彼氏作ればいいじゃない。」

「な、何を言うんですか突然。」

珍しくルリが慌てている。ラピスはため息をついてるが。

「もう二十三でしょ、早くしないとすぐにおばさんだよ。」

「ユキナさんの方が年上でしょう。」

「私は結婚してるもん。」

「で、ですが・・・」

「ユキナ、そろそろやめなよ。」

上から呆れ顔のジュンが口をだす。しかしユキナは敢えて無視したようだ。

「でも二人とも可愛いじゃん。いつまでも若いままじゃないんだからさ、早く行動しないと。」

「この年で可愛いというのはちょっと。」

ルリは恥ずかしそうに下を見る。

と、

『接近する機影を確認!』

突如オモイカネが警告のウインドウを表示してきた。

全員の顔つきが変わり、ラピスが解析に入る。

「二時の方向に一機だけ。スピードがすごく早い。」

「パイロット各員は」

「モニターに視認可能。」

「え、もう!?」

ラピスからの報告でユリカはパイロット達に出撃を頼もうとしたが、すでに近くまで来ていたのだ。

その機体はナデシコの正面から少し離れた場所に止まった。

まるで天使のような白い翼を左右に広げ、緑のモノアイと胸部の球体が発光している。

その光景に、ブリッジクルーは見とれていた。

「綺麗・・・」

ユリカがポツリと呟く。

「データ照合。アカツキが言っていたウイングガンダムゼロに間違いない。」

「(白い翼を持ったガンダム・・・まるで天使。)」

ラピスの報告の中、ルリは心の中でそう思っていた。

「!?ユリカさん、あの機体から通信がはいてる。」

「繋いで、ユキナちゃん。」

「わかったわ。」

そしてウインドウに映し出されたのは、

「ハ、ハーリー・・・君。」

映し出されたのは、紛れも無くマキビ・ハリだった。

ユリカは唖然とした声を出す。他のクルーも目を開いている。

「何で、君が。」

「お久し振りですユリカさん。僕は、あなた方ナデシコの説得に来ました。」

「・・・降伏しろと言うの?」

「はい、セレスさんもそれを望んでいます。これはネオ・ジオン全体の意思でもあります。」

「だから君が来たんだね、ハーリー君。」

「ユリカさん、今の連合がこの戦争の原因となっているです。だから僕は、それを変えたいと」


「言いたいことは、それだけか!!」


突如ハーリーの声を遮り、オープン回線で怒声が入る。

そして、ナデシコから一機の機影が飛び出した。その機体は、ホワイトサレナ。

「!?アキトさん。」

アキトのウインドウがブリッジ、ウイングゼロのコクピットに表示される。

「ハーリー君・・・いや、マキビ・ハリ。俺達は降伏などしない、最後まで自分達の正義を信じる!」

「お願いします、話を聞いてください。」

「俺はナデシコを守るために戦う。君が敵なら・・・俺は君を殺す。」

サレナがハンドカノンを放った。

「くっ!?」

とっさにウイングゼロはシールドで防いだ。

だがサレナはその隙を突き、フィールドを纏いながら体当たりをしてきた。

「うわあ!!」

装甲にぶつかりウイングゼロは吹き飛ばされ、コクピットが衝撃で揺れる。

サレナはそのまま反転し、向かってきた。一撃一撃に殺気がこもっていた。

「(ほ、本気だ。アキトさんは本気で僕を・・・)」

サレナが迫る。コクピット内に警告のアラームが鳴り響いた。

「(こ、怖い・・・まだ、まだ死にたくない!)」

ハンドカノンがコクピットに向けられた。

「(嫌だ・・・嫌だ嫌だ嫌だ!!)」

だがその時、球形のレーダースクリーンが点滅していた。


お前の敵はなんだ?


ハーリーの脳裏に、「何か」が語りかけてくる。

「(僕の・・・僕の敵は?)」

そして、気付かない内にコクピットが闇に閉ざされていたのだ。

「(何だ?)」

その闇は、不思議と恐怖を感じなかったのだ。

そしてハーリーの眼には、見えるはずの無いハンドカノンにエネルギーが集まるのが「視えて」いた。


お前の敵はなんだ?


「(僕の敵は僕を殺そうとするもの・・・そして大切なものを奪う存在。)」

サレナからハンドカノンが放たれた。

「(僕の両親も殺された・・・こいつも僕を殺そうとしている。)」

脳裏に轢き殺されるマキビ夫妻の姿が浮かび、自分が殺される光景がよぎる。

そして顔から「恐怖」が消えた。


なら・・・こいつを殺せ!


「・・・殺す。」

ハーリーは呟き、IFSを使い左のレバーを操作する。

そして当たると思われたハンドカノンを仰向けに回避したのだ。アンテナに僅かにかする。

サレナはそのまま真っ直ぐ進み、その下には仰向けになったウイングゼロ。

モノアイが点灯し、右の拳がサレナにぶち込まれる。

「くっ!」

アキトの驚きの声が聞こえ、次の瞬間サレナはテールバインダーを振り下ろした。

しかしウイングゼロはそれを右手でつかみ、そのまま思いっきり投げ飛ばした。

「ぐうう!?」

凄まじいGがアキトを襲うが、何とか体勢を立て直す。

だがウイングゼロは、体勢を立て直したサレナに向かって突っ込んできた。

アキトはサレナにフィールドを展開する。

そしてウイングゼロは左のシールドの先端をサレナに突きたてようとした。

「(甘い。)」

アキトが思う通りシールドは確かにサレナに届かなかった。しかしハーリーは左手のレバーについているボタンの一つを押す。

するとシールドの先端部が左右に別れ、スパークとともにフィールドが消失する。

「!?」

アキトが驚愕した時、ウイングゼロは左肩から突き出したビームサーベルをつかみ、振り払った。

その斬撃によってサレナは両足を斬られてしまい、爆発によって吹き飛ばされていく。

アキトは必死に制御をし、ハンドカノンを向け発砲するが全てかわされてしまった。

動きが変わったことにアキトは気付いていたが、理由を考える暇は無かった。

ウイングゼロはビームサーベルを左手に持ち、右手にグラビティライフルを持ち直す。

銃口から漆黒の閃光が放たれ、サレナのハンドカノンを破壊した。

「うおおー!?」

両サイドからの衝撃がコクピットを揺らす。辛うじて両腕は無事だった。

ウイングゼロはマシンキャノンを解放し、サレナへ放つ。

サレナは拳にフィールドを纏い、その弾丸を弾くがそこにグラビティライフルを撃ち込まれてしまった。

両手が破壊され、スパークを上げている。

そしてウイングゼロは、左手のシールドを投げつけたのだ。

シールドは一直線にサレナに飛び、先端が左肩に突き刺さる。

後方に吹き飛ばされるサレナ、ウイングゼロはいつのまにかビームサーベルを右手に持ち直し、サレナへ突進する。

柄を両手で持ち、腰の位置に構えながらスピードを上げていく。背部のバーニアが強い輝きを放ち、翼のように広がっていく。

ハーリーは、モニターを見つめ僅かに頬を歪ませながら左のレバーを前に押し出す。それは・・・狂喜の笑みだった。

サレナは既にフィールドを纏う力は残っていない。

その切っ先は、コクピットへ向かう・・・


「ハーリー君、だめ―――!!!!」


突如「誰か」の声が、ウイングゼロのコクピットに響いた。

その声は、闇に包まれたハーリーの耳に届く。

「(・・・ル、リ・・・さん?)」

そして視界に飛び込んできたのは、サレナに向かう自分の姿。

「(!?)」

ビームサーベルの向かう先を見、

「や、やめろ―――!!」

右手のIFSが強く光り、ウイングゼロは両腕を左へずらす。

だがその切っ先はサレナを貫き、背部まで貫通した。

その影響でバーニアが点滅し、サレナが痙攣を起こしたように震える。

アキトは驚愕の顔をし、爆発がコクピットを襲った。

その時ハーリーの眼は、見えるなずのない映像を「視て」いた。


ビームサーベルによってコクピットを貫かれ、血反吐を吐くアキト。そして爆発するサレナ、その爆風がウイングゼロに襲い掛かってくる。

映像が変わり、自分が笑いながらナデシコのブリッジへと攻撃し、宇宙に吹き飛ばされていくルリやラピス、ユリカ達の姿。

ナデシコが閃光とともに消滅する。


だが突然全身を激痛が襲い、脳を左右に揺さぶられるような不快感に襲われる。

「う・・・。」

そして視界が闇から再び三六〇度を映す。ハーリーは両手を見ながら震えていた。

「(僕は何を・・・今、何をしようとした?)」

エネルギー供給が止まり、ビームサーベルがサレナから消える。

時が動き出すようにサレナはウイングゼロから離れていき、各所でスパークを起こしながらナデシコのフィールドにぶつかる。

しかしサレナは動かない。まるで・・・死んだように。

「(殺そうと・・・アキト、さんを、殺そうと・・・)」

そして思い出される自分の行動。

「あ、ああ・・・ああああああああああ!!!!」

頭を抱えながら絶叫する。

と、ウイングゼロに軽い衝撃がきた。

いつのまにかエピオンが来ていたのだ。

「ハリ君、ハリ君!」

ローズのウインドウがウイングゼロのコクピットに開かれる。

「ああ・・・ああ。」

ハーリーの眼は光りを宿しておらず、涙を流しながら震えていた。

「くっ!」

エピオンは動かないウイングゼロを抱き寄せ、ナデシコDから離れていく。

二機が消え、ブリッジメンバーの止まっていた時間が動き出す。

残っているのは・・・無残に破壊されたホワイトサレナだった。

「いや―――!!」

ユリカの叫びがブリッジに響いた。



   レウルーラ 格納庫

格納庫内が騒がしい。帰還したウイングゼロとエピオンの固定作業中だからだ。

ローズはエピオンから飛び出し、無重力を利用しウイングゼロのコクピットへ飛び、開放した。

「ハリ君!?」

ローズは中に入り、未だに震えているハーリーの肩をゆする。

「ああ・・・ああ。」

ハーリーは呻き声しかださず、涙が止まっていない。

彼のヘルメットを外し、ローズは呼びかけた。

「私です、ローズです。」

しかしその震えは止まらない。

ローズはハーリーの背に手を回し、彼の頬を自分の胸に強く押し当て、優しく話しかける。

「もう大丈夫です。怖がらないで、ハリ君・・・」

そのまま頭をなでる。彼女の体温が、そして心臓の鼓動が、ハーリーの眼に光りを宿らせた。

震えが止まり、全身から力が抜けたようだ。

「ローズ、さん?」

「ハリ君、よかった。」

ローズはハーリーを放す。

「僕は、ゼロに飲み込まれて・・・アキトさんを。」

「違います。あなたは正気に戻った、ゼロに勝ったんです!」

「・・・う、うう。」

ハーリーは再び両の目から涙を流す。

あの時、ルリの声が自分を正気に戻してくれたのに気付いていた。そして今もローズの暖かさに助けられていることも。

「僕は「恐怖」に、ゼロに負けてしまった。何で・・・何でこんなに・・・僕は弱いんだ。」

歯を食いしばり、顔を伏せる。

「僕は・・・ローズさんを、守れない・・・」

ローズはハーリーを優しく抱きしめる。と、その時スイッチに触れたのかハッチが閉じられた。

「ハリ君、あなたの横にはいつも私がいます。苦しい時も、悲しい時も、私が・・・ハリ君の心を守るわ。」

ハーリーは顔を上げる。

「私もあなたがいるから戦える。ずっと一人だった私を、冷たい闇から救ってくれたハリ君がそばにいてくれるから。

 だから・・・泣かないで、ハリ君。」

「う、うう、うあああ。」

ハーリーもローズの背に手を回し、子供のように泣いた。

だがその涙は悲しみの涙ではない、暖かさに満ちた涙だった。

新たなる決意の証として。

大切な者を守るための、誓いとして・・・




次回予告

シンとタカヤと合流したナデシコDは、再び月ドックへ辿り着く。
自らの鎧を失ったシンとアキト、そしてサブ、リョーコ、アカツキの新たなる力がついに姿を現す。
そして連合は、歴史上三度目のソロモン攻略、「星三号作戦」の発動を決定した。発動は五日後。
しかしこの情報はすでにネオ・ジオンへ伝わっていた。そして未だに動かない火星の後継者。
それぞれの思惑が漆黒の宇宙に木霊する。
戦場は地上から宇宙へ移り、舞台は次なるステージへ。


スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第十五話「新たなる力 受け継がれる遺志」

??「待ってたわよ、会長。」



あとがき

ハーリーがアキトに勝った!?ということで第十四話を終わります。

今回登場したウイングゼロ。元はTV版ガンダムWで登場する「ウイングゼロ」と、劇場版ガンダムWの「ウイングゼロカスタム」を

併せた様な機体です。カスタムには無かったシールドを装備し、今回は新しく造ったということで全天周囲モニター、リニアシートが

組み込まれており、ゼロシステム起動時にコクピットが闇に包まれます。

次回はナデシコパイロットとシンの新機体登場です。







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