スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第十五話「新たなる力 受け継がれる遺志」


ナデシコDは無事シン、タカヤと合流し、月ドックへ向かっていた。

しかし先の戦闘でホワイトサレナは完全に大破し、もう使用は不可能となっていたのである。

アキトは全身を強く打ち、未だ意識が回復していなかった。



   ナデシコD ブリッジ

ブリッジでは誰も喋っていない。やがてユリカが口を開く。

「ルリちゃん、アキトはどう?」

「・・・まだ、意識が戻りません。」

「そう。」

ユリカは視線を下に落とす。

「何で、こんなことになっちゃったの?」

その言葉に、誰も返すことは出来ない。

「この前までいっしょに笑いあってたのに。本当の兄弟みたいに仲がよかったのに。」

「ユリカさん・・・」

「アキトだって、ハーリー君を殺すだなんて・・・どうして、どうして二人が戦わないといけないの。殺しあわなければならないの?」

「違うよ、ユリカ。」

ラピスが口を開く。

「私は、ハーリーが昔のアキトみたいに見えた。」

「えっ?」

「多分今のハーリーには、連合に対する憎しみの心がある。」

「・・・憎しみ、か。」

「両親が殺されたことが、一番の要因だと思うの。」

「ちょ、ちょっとどういうこと!両親が殺されたって?」

事情を知らないミナトが問いかける。

「ハーリー君の義両親は、連合兵士の車にはねられ亡くなったんです。しかもそれは、ひき逃げだったんです。」

ルリが悲しそうに言う。

「そんな・・・そんなのって。」

ユキナが口を押さえる。

「私は、あの時のハーリーが怖かった。」

顔を伏せながらラピスが言う。

「あの顔はアキトと同じ。ただ破壊することしか考えていない顔・・・昔のアキトの顔。」

ラピスは一番身近でアキトの戦いを見た時のことを思い出していた。

今とは比べられないくらい冷たい、まるで刃のようなアキト。そして・・・狂気の笑み。

今度はハーリーがそれになろうとしていると、思えて仕方ないのだ。あの光景は二度と見たくなかった。

「でも、どうすれば止められるの?」

誰も答えれなかった。

「ユリカ。」

今まで黙っていたジュンが口を開く。

「アキトのところへいって来い。僕が代わりをするよ。」

「・・・ありがとう。」

ユリカはブリッジから飛び出て行った。

ジュンはため息をつく。

「あいつも人騒がせな奴だな。」

「ジュンちゃんそんな言い方ないでしょ。」

ユキナがジュンをとがめる。

「・・・ルリちゃん、彼は今何歳だっけ?」

「歳は十八です。」

「なら立派な大人だ、僕達がいちいち彼の行動を注意する必要はない。戦うこともおかしくないさ、アキトだって十八の時から戦ってるんだし。」

「ではジュンさんはハーリー君と戦うと言うんですか!?」

ジュンとは思えない厳しい言葉にルリは驚く。

「ああ、そのつもりだよ。」

「何故ですか、彼だってナデシコの。」

「今はネオ・ジオンの軍人だ。それに軍人が自軍を裏切るのは相当の覚悟がいる。彼だってその覚悟でナデシコを出たんだ。」

「そんなこと、どうして言えるんです・・・」

「軍人だからだよ。アキトだってそんなに甘い人間じゃない。ルリちゃん、君もいい加減割り切るんだ。でないと死ぬことになる。」

「で、ですが。」

そんなルリにジュンは問いかけた。

「君は何故、そこまで彼に固執するんだい?」

「・・・大切な、弟だからです。」

「なら言ったはずだ、彼は立派な大人だと。もう昔みたいなルーキーじゃない、いつまでも君のそばにいるわけじゃないんだ。

 それにそういった感情は簡単には止められないんだ。憎しみも、恋もね。」

昔を思い出すようにジュンは語る。

「大人・・・なんですね。」

「そうさ。」

と、ユリカがブリッジに戻ってきた。

「ただいまって、みんなどうしたの?」

事情を知らず首をかしげていると、ルリがブリッジを飛び出していった。

「キャってルリちゃん?みんなどうしたの??」

「やれやれ、相変わらずだねユリカも。」

「ふえ?」

ジュンが苦笑しながらユリカを見る。

「ジュン君も変わったわね。」

「そうですか、僕は僕のままだと思うんですけど。ま、経験ですよミナトさん。」

「・・・ハーリーの馬鹿。」

ラピスがポツリと呟いた。


   格納庫

今ここでは一人の男が絶叫していた。

「うおおおお〜、これが噂のスーパーロボットか!」

その名を、ウリバタケ・セイヤ。

「男気あふれる顔、重量感、ロマンあふれるドリル、刀、そしてお肌もスベスベ〜。」

「一生やってろ!!」

まるで変わっていないウリバタケにリョーコは吐き捨てる。

「面白い人ですね、ウリバタケさんって。」

「気をつけろよタカヤ。知らんうちに機体が改造されちまうぞ。」

「えっ!?」

リョーコの言葉にタカヤも嫌そうだ。

「だ、大丈夫ですよ。香織だっているし、なあシン。」

「いや・・・あれ見ろよ。」

タカヤはシンの指差す方を見ると、そこにはウリバタケと話し込む香織の姿が。

「やっぱバラして各所を改造してみるか。」

「そうですね、こんな獲物・・・もとい、機体が目の前にあるんですし。」

「そうかそうか、若いのに見所あるなおめえさん。さて・・・」

キラーンと二人の目が光り、ダイゼンガーをジッと見る。

「待て香織!獲物って何だよ、ウリバタケさんもやめてくれ〜!!」

タカヤは慌てて二人の元へ走った。

「あはははは。」

その光景をサブロウタが笑っているが、やはり元気がなさそうだった。



   医務室

ブリッジを飛び出したルリは、寝ているアキトののそばの椅子に腰掛け、アキトを見ていた。

何故かイネスがいないようだ。アキトはまだ寝ている。

「アキトさん・・・」

あの戦闘後、急いで回収されたサレナは酷く損傷し、もう乗ることは不可能だった。

それでもサレナは最後までアキトを守っていたのだ。

「何で、ハーリー君を殺そうとしたのですか?」

顔を伏せながらルリは言う。

「私はどうすればいいんです。もしまた二人が出会った時、二人が殺し合うところなんて見たくないんです。」

「・・・ルリちゃん。」

「!?」

いつの間にかアキトは目を覚ましていた。

「君の言いたいことは分かる。でも仕方ないんだよ、彼は敵だから。」

ゆっくりと上半身を起こす。

「討たなければ新しい犠牲が増える。ネオ・ジオンのしようとしていることは危険なんだ、あのコロニー落としも。」

「でもハーリー君は。」

「俺だって討ちたくない。でもこれは・・・戦争なんだ。」

アキトは立ち上がり、額のガーゼをはがす。

「敵というものを全て殺して、それで何が残るんですか!正義ですか、達成感ですか!」

「じゃあ気持ちだけで何が守れるんだ!!・・・そうしなければ何も守れないんだよ、あの時と同じように。」

強く言い放ち、アキトは医務室から出て行った。アキトの脳裏に浮かぶのは、かつての記憶達。

そしてしばらくし、イネスが入ってきた。

「あら、ルリちゃんだけ?アキト君は出て行ったみいね。」

落ちていたガーゼを見て、イネスは判断する。

「どうしたの?」

だが一向に動かないルリにイネスは近寄ると、彼女は・・・泣いていた。

「私が・・・甘いんですか?」

ルリは涙を流しながら言う。

「二人とも、馬鹿です。」


そしてナデシコDは、月ドックに到着した。



  ブリッジ

「ユリカ、宇宙軍より通信。」

「つないで。」

そうしてミスマル大将のウインドウが映る。

「ナデシコの諸君、地球での任務ご苦労だった。コトシロは仕方ない、君達は最善を尽くしたのだ。」

「お父様、宇宙の状態はどうなっているんですか?」

「うむ、現在宇宙のパワーバランスは我が連合が上だが、中立以外の各サイドコロニーはネオ・ジオン。

 火星、そしてその宙域、軍事衛星フォボスは火星の後継者が握っている。ほぼ拮抗しているといえよう。」

「そうですか。」

「だがいつまでもこうしている訳にはいかん。」

「どういうことですか?」

「ネオ・ジオンの占拠したコンペイトウ、旧名ソロモン奪還作戦を決定したのだ。」

「!?」

「これが成功すればその後、本拠地スイートウォーターに侵攻し、ネオ・ジオンを壊滅させる。」

「ソロモン攻略。」

「作戦名は「星三号」作戦。今日から五日後の十二月十七日午前八時にグラナダからソロモンへ侵攻する。

 ナデシコDもその時参加してもらうつもりだ、よいなユリカ。」

「了解しました。」

「うむ、以上だ。」

通信が切れた。

「みなさん聞いたとおりです。五日後ナデシコはソロモンへ出撃します、それまで各自やるべきことをしてください。」



   月ドック 一番格納庫

今ここにはタカヤを除くパイロット一同が集まり、固定された機体をみていた。

「ではみんなに紹介しよう。まずはリョーコ君の機体、「アンスリウム」だ。これはリョーコ君が得意な接近戦闘を主体とした機体で、

  F90というガンダムをベースにしたんだ。頭部や操縦はエステと同じだけど、小型相転移エンジンを二基搭載。

 フィールドバスターシールド、グラビティライフル一丁に二本のハイパービームサーベル。これは出力を調整すれば長さを自在に変えられる。

 後は胸部のマシンキャノン。花言葉は飾らない美しさ。」

「ガンダムをベースにした機体に乗れるのかよ、やったぜ!」

「その隣がサブロータ君の機体、「サルビア」だ。これもリョーコ君と同じF90というガンダムをベースにし、性能もほぼ同じだ。

 ただこっちの武装はフィールドバスターシールド、グラビティライフル一丁にビームサーベル一本、マシンキャノンに

 両肩から下がっているツインガトリングレールカノン。これは僕のアポロンの矢を更に強力にし、三つの銃口からレールカノンが連射されるんだ。

 もちろん威力は保障するし、パワー調整も可能だ。しかも可動式で、腰の位置に下ろした後はグリップを握って上下左右に

 向けることができる。花言葉は燃える思いだ。」

「ヒュウ〜、すげえぜ。」

「エステの中にMSの技術が組み込まれているからね。そしてこれが僕の機体、「トールギス」だ。

 これも過去のデータを元にリファインしたものだが、小型相転移エンジンを連結させメインのメガグラビティキャノン。並のフィールドは貫通するよ。

 そしてフィールドバスターシールドにビームサーベルが一本だ。」

「すごいですね、これじゃナデシコCでは確かに入りませんね。」

シンが素直に言う。

「アカツキ、俺とシン君の機体は?」

「君達のはこっちだ。」

アカツキは更に奥へ向かい、一つの扉の前で暗証番号を打ち込む。

そして扉が左右に開き、中へ入っていく。中は真っ暗だった。

アカツキが真ん中まで歩き指を鳴らす。

そしてそこにあったものは、一機の白銀。

「過去の大戦で、活躍した伝説のパイロットの乗機、「最強」の名を持つもの・・・」

アカツキはそれを見上げながら言う。


「機体名、Hiーνガンダム」


「これは特別な機体。そしてシン君、君の新しい相棒でもある。」

シンはアカツキと同じように、いや、何かに魅入られるように見上げていた。

「これは・・・なんでしょう、まるで始めて見たような感じがしませんね。」

「君の感想は当たっているよ。シン君、僕と連合軍は君にある隠し事をしてきた。」

「?」

アカツキは一度言葉を切り、シンを真っ直ぐ見つめる。

「君は、すでに消えたと言われていたニュータイプと言う存在なんだ。」

「ニュー・・・タイプって、まさか。」

「アカツキ、それは本当なのか!?」

アキトが声を驚いたような声を出し、リョーコとサブも似たような状態だ。

軍人なら誰でも知っている。過去の戦争を終わらしたαナンバーズには、そのニュータイプが大勢いたのだから。

必ず一度は聞く言葉であった、それは百年経った今でも・・・

「ああ、本当さ。彼の先読みする能力は異常だった、そしてそれに気付いた連合は密かにテストをしていたんだ。

 君の機体、ファントムにもバイオセンサーというものが取り付けられていてね。明らかに強い反応をしていた。

 そして確信したんだ、君はニュータイプであると。」

「・・・じゃあ、俺が今まで感じたものや、プレッシャーのようなものは。」

「やはり戦闘時、または直前に感じていたようだね。この機体のかつての搭乗者の名は、アムロ・レイ。

 そして君の素性を調べていく内に分かったことがる。君は・・・アムロ・レイの血を引く人間だと。」


アムロ・レイ。この名は過去の戦記文庫で必ず名が出るほど有名な人物なのだ。


「!?俺が。」

「君の曾お祖父さんの名は、オルマ・レイ。これをローマ字にひっくり返すと、ORUMA・REYがAMURO・REYになる。

 彼は過去の大戦後唯一生き残ったとされてきたが、その後の消息は不明だった。恐らく名を変え、ひっそりと暮らしていたんだろう。」

「そんな、マジかよ。」

「だからこそ、君にこの機体を使ってもらいたいんだ。あのセレス・ダイクンを倒せるのは、同じニュータイプである君だけなんだ。

 かつてのアムロとシャアのように。」

そこまで言われて、シンはようやく気付いた。あのセレスの言葉の意味を。

「(出会うのは運命でなく宿命、血は争えない、白銀の悪魔か・・・セレスのやつ、そういう意味だったのか。)」

「シン君、この機体は小型相転移エンジンを三基搭載し、頭部バルカン、大型グラビティライフル一丁、ニュー・ハイパーバズーカ一丁、

 フィールドバスターシールド、そしてメインのサイコミュ兵器、フィン・ファンネルが十基だ。

 フィン・ファンネルは小型ジェネレータと開放型のメガ粒子加速帯(メガ粒子偏向機)を搭載し、

 既存のビットなどのサイコミュ制御兵器より遥かに強力なビームで攻撃が可能となっているほか、

 発生するメガ粒子をファンネル間に膜状に展開し、防御障壁として使用する事が可能であるフィン・ファンネル・フィールドが展開される。

 しかも再充電も可能で、射出後戻して時間が経てばすぐに使用できる。エンジンが相転移だから宇宙ではほぼ百パーセントの稼動率だ。」

「待てよアカツキ。ってことは遠くに離れていても攻撃が出来るってことか!?」

「そうだね、彼の感じ方によって変わるだろうけど、遠距離で、しかも素早い動きからのビーム連射。フィールドがあってもいつまで

 耐えられるか分からないね。最悪張る前に倒されるかもしれない。」

それを考えると、アキトやリョーコ、サブ、アカツキは物凄く嫌そうな顔をした。

「最悪だな、そんな相手と戦うのは。」

「ろくに場所もわからず攻撃されるってのはな、嫌を通り越して逃げたいぜ。」

「下手すりゃ反撃できず沈むな。」

「まあ、そういうことだね。」

「セレスも、ファンネルを使えるんでしょうか?」

「恐らく、いや、あのシャアの血を引く者だとしたら使える確立が高いだろうね。だからこそ、同じ土俵に立つ必要があるのさ。」

シンは黙って機体を見ている。

「さて、次はテンカワ君のだな。」

アカツキは再び歩きだし、別の扉を開ける。

「さあ、こっちだよ。」

全員が中に入り、ライトに照らされた先にあるのは・・・

「ホワイト・・・サレナ?」

アキトは思わず呟く。

「いや、違うぜアキト。」

「そうだな、何処と無く似てるが、別もんだ。」

リョーコとサブがいい、アカツキも頷く。

「そう、これは我がネルガルが独自で作り上げた最新機、その名を「ゼラニウム」。Z計画の三番機だ。」

その白い機体、ゼラニウムはホワイトサレナに似ていた。確かに頭部や肩の模様は同じだったが、全長は二七メートルほどで

サレナよりスマートになっている。そして奇妙なのは両手の甲がやけに膨れていることと、背部に二本の放熱板のようなテールバインダーが

突き出していたことだった。

「ゼラニウムはホワイトサレナのデータを運用し、小型相転移エンジンを三基搭載。だがこれはあくまでコアの役割なんだ。」

「コア?」

リョーコが聞き返す。

「じゃあ残りはどこにあるんだ?」

「君達の左にあるじゃないか。」

アカツキの言葉通り全員が左を見て驚愕した。

それは一言でいうなら白い山のようなもの。まず大きさがとんでもない。ざっと百メートルほどだろうか、ナデシコDの格納庫でも

半分が埋まってしまいそうである。先端には一本の長い筒が伸びており、最後尾には巨大なブースターらしきものがあった。

肩らしき部分には、コンテナのようになっている。

「アカツキ、これは?」

「過去の大戦で幻の撃墜王と呼ばれた男の乗機、それに使われていたユニットをリファインし、改良したものさ。名は「オーキス」。」

「ユニット・・・サレナでいう高機動ユニットか?」

「そう、だけどそれだけじゃない。このオーキスは「動く弾薬庫」なんだ。相転移エンジンを一機搭載し、左右のコンテナにはマイクロミサイル。

 一面36発×3の小型ミサイルを一斉発射する。敵部隊の中枢にブチ込んだり、牽制用の弾幕を張ったと、搭乗者のやり方次第で幅広い運用が可能だ。

 そしてモビルスーツの大きさに匹敵するミサイル3基を一組として射出され、その後それぞれに分離する「大型集束ミサイル」が左右に二本ずつ。

 弾頭も特別で、フィールドを消去することができるんだ。

 更にコンテナの中にはゼラニウム用の武装も入っていてね、あのフォールディングアームを展開して使用することができる。

 格闘戦用の武器として大型グラビティサーベルが二本、そして普段は右側に折りたたんである砲筒からはメガグラビティブラスト。

 現段階で存在する機動兵器中最強の火力を誇っている。フィールドもサレナとは比べられないほど強力になった。

 さらに分離した後でも呼び出しが可能で、ドッキング時にテールバインダーから発射されるレーザーで正確に行うことができる。」

そのあまりの凄さにアキト達はしばし呆然としていた。

「アカツキ、俺に使えるのか。この化け物が?」

「君ならできるさ、サレナユニットの強化版だと思ってくれたまえ。必ず使えるはずさ。」

「・・・礼を言うアカツキ。こいつは、確かにサレナの遺志を継いでいる。」

アキトは目の前のゼラニウムから何かを感じたようだ。

「だが、こいつはナデシコDでもギリギリじゃないか?」

「その点は大丈夫さ。砲筒は出撃時に展開すればいいし、今回は格納庫が大きい。スペースはあるよ。」

その言葉に頷き、アキトはシン達を見る。

「じゃあ俺達も訓練を開始しよう。」

「おっしゃあ、久し振りに燃えてきたぜ。」

「サブ、徹底的にやるぞ!」

「何とか五日後までにものにしてやります。」

「いいねえ、じゃあ行こうか。」

と、

「待ってたわよ、会長。」

突如扉が開き、一人の女性が入ってきた。

「誰ですあなたは?」

面識のないシンは知らないが、他のメンバー、特にアカツキは驚いていた。

「エ、エリナ君・・・」

「会長、私にあいさつ無しとはどういうことですかね?しかもいきなりナデシコに乗り込むとは・・・自覚が足りないようですね??」

「知り合いですか?」

あまり機嫌の良さそうには見えない女性は、アキト達を知っているようだ。

「ああ、アカツキの秘書であり妻でもあるエリナさ。ここの責任者でもあるんだ。」

「へえ〜。」

シンはエリナを見る。

「久し振りねアキト君。」

「ああ、エリナもな。」

「タカスギ夫妻も元気そうね。」

「おおよ、あんたもな。」

リョーコが笑いながら答える。

「家の人が世話になってるわ。ナデシコに乗っていると聞いた時は眩暈がしたわ。」

「くくく、会長さんやっぱ黙って来てたのか。」

サブがアカツキの肩を叩く。

「それで月まで急いで来たのよ。そして・・・君がカワシマ・シン君ね。」

「はい、初めまして。」

「こちらこそ。君がニュータイプだってことは聞いてたわ、そのことで少し話があるの。」

「?」

「君の機体、Hiーνガンダムに使われているサイコ・フレームとの調整をしてもらいたいの。ファンネルの相性をみないといけないからね。」

「そうですか、てっきり俺は実験でもされるかと思いましたよ。」

だがその言葉にエリナ、アキト、アカツキは・・・

「(昔の私だったらしていたわね。)」

「(するどいなシン君。)」

「(いい読みだ・・・)」

などと思っていたのは秘密だ。

「じゃあ早速始めましょう。」

「はい、アカツキさんも幸せ者ですね。エリナさんのような美人の奥さんがいて。」

「ふっふっふ、僕もそう思うよ。彼女のような優秀な秘書も・・・」

ドスッと肘がわき腹に入る。

「さ、行きましょうか。」

顔が赤いのは伏せておこう、シンはそう思っていた。

「アカツキ、俺達も行くぞ(笑)」

「あ、ああ・・・げほっ。」



   レウルーラ リビングルーム

ここリビングルームには、セレスをはじめ、主要のメンバーが集まっていた。その中にマキビ・ハリの姿も。

「情報では五日後、連合軍はソロモンに侵攻するようね。その中には新型戦艦、ナデシコDもいるらしいわ。」

それを聞き、顔を歪めるハーリー。

「でも私達にとっては予定通り。この機に乗じてもう一つの「拠り所」を手に入れるわ。その指揮はレミーとローズ、二人に任せるわ。

 向こうの内乱と同時に攻めなさい。」

「セレス、本当に使えるんですか?」

「安心しなさいローズ、すでに極秘で行ってるそうよ。後は推力と老朽化したパーツの交換ね。」

ローズはコクリと頷く。

「しかしま、連合政府はつけ込みやすいわ。推力提供なんてこと、あっさりしてくれたなんて。」

「レミー、私ががんばったのよ。」

「そうね・・・この作戦も、本当なら百年前に実行されるはずだったもんね。」

「それでまずはソロモンに連合軍の目を惹きつける。私とユウイチ、ヴァルキリーチームとハーリー君はソロモンに留まり、ある程度の戦闘後

 離脱。そのために裏手にベースジャバーを用意してある。有人機の分だけあるから遠慮なく、やばいと思ったらすぐ離脱しなさい。

 もしくは私の合図とともによ。その時置き土産を残していくからね、遅れたら巻き込まれるわよ。それと・・・今回ルカにはハーリー君と

 コンビを組んでもらいたいの。」

「僕がルカちゃんとですか?」

「ええ、ルカもいいわね。」

「分かりました、任せてください。」

小柄な少女、ルカ・フォーマットはセレスに返す。彼女は一四五センチという身長で、長い黒髪をポニーテールにしている。

歳もまだ十四歳と聞いて、ハーリーは驚いていた。しかし・・・

「ハーリーさん、よろしくで〜す。」

そういい、ハーリーの腹部に抱きつく。

「わっ!?」

「あ、何してるんですか!」

「えへへ〜。」

二人が反応する中、ルカは更に力を込めて抱きつく。

「ル、ルカちゃん離れてくれない?」

「いいじゃないですか、減るものじゃありませんし。」

「そ、そうだけど・・・」

「ハーリーさん、私のこと嫌いなんですか?」

少し悲しそうな表情のルカ。

「いやそうじゃなくてね。(と、歳のわりに意外と・・・)」

「いつまでそうしてるんですかハリ君?」

地獄の底から響いてきそうな声色でローズが言う。思わず背筋が寒くなった。

「ち、違いますよ。ルカちゃんが。」

「そのわりには、鼻の下伸びてるぜハーリー。」

ユウイチが笑いながら火種にガソリンを注ぎ込んだ。


ちなみに彼らはハーリー自身からあだ名を聞いているので、それを使っているのである。


この言葉に、ローズからプチンっと音が・・・

「ルカ、離れなさい。」

「いや〜っです。私とハーリーさんはコンビを組むんですから。」

ピクッ

「離れなさい!」

「ハーリーさ〜ん、鬼婆がいじめるんです!」

ローズがピタっと止まる。

「おに・・・ばば?」

「だって赤い髪ですし、角が生えたら赤鬼です。あと少しで十代卒業ですから、その先は怯えながらじわじわと歳を重ねていくんです。

 次の節分はいつでしたっけ?」

「・・・ふ、ふふふふ・・・」

顔を伏せ、ローズが薄笑いを始めた。艶やかな赤い髪によって表情は分からない。

補足すると、この三人以外はすでに角っこへ移動している。

「ハーリーさん、シミュレーターで訓練しましょう。」

「・・・私もいくわ。」

顔を上げたローズは能面のように無表情だった。ハーリーはかなりビビッてる・・・情けない。

「じゃあいっしょに鬼婆退治ですね♪」

「ルカー!!!!」

「キャ〜。」

ルカはハーリーの手を掴み部屋を出て行く。彼は流されるままだ。

「ハリ君も待ちなさい!!」

「何で僕まで!?」

ドアが閉じる。

「は〜、まったくあの三人は。」

「セレス、ルカってあんな子だったかしら?」

「レミー、もう分かってると思うけどあの子ハーリー君が好きらしいのよ。だからローズにも突っかかることも多くなってね。」

「どうやら初めて会った時から、つまり一目惚れらしいです。」

と、ヴァルキリーチームリーダーの少女、ミレイ・ルースが言う。彼女は茶髪にブラウンの瞳、顔立ちも西欧系だ。身長は百六十ほどだろう。

「マキビさん、結構女たらしなんでしょうか?」

「ロリ・・・コン?」

と、双子の姉妹エリとシズが答える。双子なだけあってそっくりだが身長は一五五ほど。二人ともアジア系で瞳も髪も黒い。

エリはセミロングで活発な印象だが、シズは髪を背中まで伸ばし、口数が少なくおとなしそうな少女だ。歳もミレイと同じらしい。

「女たらしにロリコンね〜、彼ってそういう人間には見えないし、どちらかというと兄に甘える妹?」

レミーの言葉にユウイチは異議を唱えた。

「違うな、あいつは漢の夢ハーレムを作るつもりなんだ。あの童顔の下には恐ろしい悪魔が・・・今にみんなを毒牙にガフッ!?」

「あんたといっしょにするな!すまないわね、馬鹿が迷惑かけたわ。」

床にめり込んで停止しているユウイチに誰も声を掛けない。すでに慣れっこなのだろう。

「まあ、どうするかはハーリー君に任せるしかないわ。私達はでしゃばらない方がいいでしょうし。」

「ではセレスさん、私達も訓練に行きましょう。」

ミレイがセレスに言う。

「そうね。」

そう言い五人は出て行った。ユウイチをほおっておいてるが、しばらくしムクッと起き上がる。

「おいおい、彼氏でも容赦ねえんだからあいつは。しっかし・・・賑やかになったね、ここも。」

ユウイチは立ち上がり出て行った五人を追いかけた。



   ???

「ふっふ〜ん、ふんふんふ〜ん。」

白衣を着た中年の男が、鼻歌を歌いながら何かの作業をしている。

「いいねえこのMDってのは。もうすぐ改良もすむし、北辰君のデータで一気にはかどどったよ。」

そしてそこから見える窓の外には・・・あの六道の姿が。しかしその数が多すぎるのだ。

「あと少し、あと少しさ。楽しみだな〜、僕の「子供達」は間に合わないけど・・・ま、いっか。」

その男の見つめる先には三つの培養槽があり、その中には三つの人影があった。



      月面ドック 三番格納庫

シンは自らの機体、Hiーνガンダムのコクピットに入り、サイコミュの調整を行っていた。

頭にいくつものケーブルをつけ、目の前のモニターに奔る脳波の動きを見ていた。

「(これがサイコ・フレームか。何ていうか・・・俺の意思を拘束する傾向があるな。)」

「どうかしら?」

エリナが中のシンに問いかけてくる。

「何と言うか・・・自分の意思を前へ前へ突進させるような強制力がありますね。」

「そう、しかしあなたは紛れも無くニュータイプよ、シン君。」

「!?イネスさん・・・ビックリさせないでください。」

「あらごめんなさい。さすがの私もこんなテストは始めてだから興味がわいてね。」

「ドクター、彼はどうかしら?」

「やはり並外れた動物的直感と空間認識能力を持っているわ。こんなデータは初めてよ、まさかアキト君以上とはね・・・」

イネスもエリナも驚きの顔をしている。

「そんなにすごいんですか?」

「ええ、これほどだなんて。あなたの場合は敵を視認する前に、気配・・・殺気を感じているみたいね。」

「そうっすね、確かに嫌な感じがする時が何度もありました。」

「でもその力が兵器として使用されることも」

「ドクター!」

普段のエリナは言わないほど大きな声を出す。

「あ、ごめんなさい。」

イネスも失言だと思っていた。

「仕方ありませんよ。強すぎる力は嫌われやすいですし・・・でも俺は人間です。怪物でもありません。」

「そうね、でも連合はあなたをどう見ているか・・・」

「はあ、そんなことだからセレスに漬け込まれるんだ。」

「まったくね。」



       二番格納庫

アキトはゼラニウムの中で、必死に火器管制の操作をしていた。

ただでさえ武装が多く複雑なのだ。それを制御するのはかなり骨が折れる作業だ。

「くっ!」

瞬時に変える動作をもう何回繰り返しているか。額にも手にも汗が浮き上がっていた。

IFSが光り続け、アキトはひたすらモニターを見ていた。



    ナデシコD シミュレーター

ここでは、サブやリョーコ、アカツキが己の最新機を使って訓練していた。

「ふう、前のエステ以上だなあやっぱ。」

「ほんとだぜ、俺もMS級は初めてだからな。」

「僕もそうだよ。しかしまあ・・・これぐらいやらなくちゃこの先生き残れないよ。あの頃とは違うんだし。」

三人は筐体から一度出て、一息つく。

「アキトはまだ中か、辛そうだな。」

「あれは規格外だから仕方ないさ。」



    ナデシコD トレーニングルーム

「百三、百四、百五。」

タカヤが汗を流しながら木刀を振るっている。しかしそれは普通のとは違い、重しが付けてある。  

ダイゼンガーはグラディエーター以上に操縦が難しいので、彼は克服のため必死に訓練をしていた。

「百四十八、百四十九、百五十!」

目に映るのは、フェンリルとユウイチの姿だった。




   ソロモン宙域 レウルーラ

「レミー、ヴァルキリーチームのテストかしら?」

「ええ、新型ヤクト・ドーガの試運転を兼ねてね。結果はよさそうよ、ほら。」

モニターにヤクト・ドーガ達のファンネルがターゲットを破壊する部分を映し出している。

「初めは不安だったけど、あの子達に副作用がでなくてよかったわ。技術が進歩してくれてよかった。」

「そうね、でもこんなことはもう二度としたくないわ・・・ニュータイプを人工的に造るなんて。」

と、セレスは視界の端に二つの光りが奔っているのを 見つけた。

「あれは・・・」

二つは並ぶように動いている。エピオンとウイングゼロだ。

「やるわね、五人の中で一番のローズについて行くなんて。オールドでもニュータイプに劣らないってことか。」

「ローズのおかげよ。恋は人を強くするっていうでしょ、あの子もかなりの実力になってきてるわ。」

「・・・いいわね、独り身の私からしたら羨ましい限りよ。」

ジト目のセレスが、低い声で言う。


「(ハリ君、まったく離れない!?)」

「(くっ、速い!?)」

ローズはエピオンの中でハーリーの成長に驚き、ハーリーはウイングゼロの中でエピオンの動きをひたすら追う。

そして二分間動き、二機は止まった。

「また上手になってますね。」

「あ、ありがとうございます。」

と、そこに四機のヤクト・ドーガが来た。

「ローズさん、マキビさん、戻りましょう。」

ミレイがウインドウに映る。

「そうね。」

「了解。」

六機は順に格納庫へ入って行った。


機体が固定され、ハーリーは無重力の中をふわふわと浮いていた。

「ふう。」

ネオ・ジオンへ来てすでに一週間が経った。

最初の一、二日はあまりクルー達にいい顔をされていなかったが、段々話しかけてくれるようになった。ヴァルキリーチームがいい例だ。

それはローズの働きと、食堂のメニューが増えたことだろう(笑)代わりに彼は毎日大変だが。

まるでナデシコみたいだと思うこともたびたびあった。自分のようなマシンチャイルドを人間として見てくれること。

これが何よりも嬉しかった。だが同時に、ナデシコのことを思ってしまうこともよくあった。

二日前の出来事を思い出し、ハーリーは思わず寒気がした。ゼロシステムに支配され、ホワイトサレナを破壊した自分に。

アキトは無事だったのか、その事が気がかりだった。それに、アキトに勝てたのは性能によるものだと理解していた。

そしてブリッジクルーの顔が浮かぶ。懐かしい顔ぶれもいた。だが自分はルリやラピスにも完全に嫌われてしまっただろう。

アキトを殺そうとしたのだから。

「ハーリーさ〜ん。」

ドフっという衝撃が腹部を襲う。

「ぐはっ!」

鳩尾にもろに入った。さらにその勢いでウイングゼロに背中を打ちつけた。中々いい音がする。

「〜〜ルカちゃん、痛い・・・」

「どうしたんですか、難しい顔して。」

ハーリーの前にルカが来ていた。

「いや、何でも無いよ。」

「ふ〜ん、考え事ですね。」

ジッとハーリーの顔を見る。

「それも・・・女のことですね。」

「(ギクッ!?)」

「そうなんですね?」

「ち、違うよそんなこと。」

「ならどうして顔が引きつってるのですか?」

バッと顔を両手で触る。

「やっぱり・・・分かりやすいです。ハーリーさんって。」

「へっ?・・・しまった!?」

そうやら鎌をかけられたらしい。だが時既に遅し。

「いいこと聞いちゃった。ローズさんはっと。」

キョロキョロと辺りを捜し始める。そしてセレスと話すのを見つけた。

「ロー」

「待った待った、頼むから言わないで。」

以前もあったが、彼女は嫉妬がすごいのだ。今度もどうなるか・・・

「ええ〜、でもね〜。」

「・・・何が望み?」

まるでドラマのシーンみたいな台詞を言うハーリー。年下の少女にいいようにされている。

「なら、この戦いが終わったら私とデートしてください。」

「え、それは・・・」

「ロー」

「今日から犬とおよびください。」

「じゃあ約束の指きりです。」

ルカが白い小指をだす。

ハーリーは苦笑いしながら小指を絡めた。

「「ゆ〜びき〜りげんまん、うそついたらはりせんぼんの〜ます。ゆ〜びきった。」」

そして小指を離す。

「じゃあ約束ですよ、ハーリーさん。」

ルカは壁をけって格納庫を出て行った。

「・・・約束、か。」

自分はすでにあの人との約束を破っている。それに、この戦争で生き残れるかもわからないのに・・・

ゴツッ

額を壁に軽く当てる。またルリのことを考えていたので、振り払っただけだ。

自分の居場所はここしかないんだと、強く言い聞かせる。

「ハリ君。」

ローズが自分を呼んでいる。そこに向かうため、壁をけった。



そして、五日がたった。



   ソロモン内部

「では私達は行くわ。セレス達も気をつけてね。」

「ええ、ローズもしっかりね。」

「はい・・・ハリ君。」

ローズのウインドウがハーリーを向く。

「向こうで待ってますね。」

「はい。また後で。」

全員が敬礼し、レウルーラを初めとするムサカ改十二隻がついて行く。

レウルーラ艦隊を見送り、パイロット達は格納庫で最後の打ち合わせをしていた。

「みんないいわね。開始三十分が限界よ。ソロモンは気にせず生き残ることを優先しなさい。」

「わかってるさ、しかも敵さん真正面から来るなんてな。」

「そうね。ミレイ、エリ、シズもいいわね?」

「ええ。」

「問題なしです。」

「・・・(コクッ)」

「ハーリー君とルカも。」

「はい。」

「任せてください。」

「なら三十分後、敵はくるわ。それまで各自待機。」

「了解。」×六

七人は自機の最終チェックに分かれた。

ハーリーもウイングゼロの中で全武装、機能の調整を行っていた。

と、

「ハーリーさん。」

「ルカちゃん?どうしたんだい??」

「・・・・・・」

ルカは何も言わず中に入ってきた。

「ルカ?」

「ハーリーさん、私・・・あなたのことが好きです。」

「え、ええ!?」

「ハーリーさんのことが好きなんです、私は。」

あまりのことにハーリーは慌てていた。

「ハーリーさんは、私のことどう思っているんですか?」

「・・・僕は。」

「やっぱり、ローズさんが一番なんですか?」

「うん・・・ごめん。僕は答えられない。」

「・・・そうですか・・・残念。」

ルカは照れたように頬をかく。

「振られちゃいました。わかってたことですけど・・・やっぱり悔しいです。」

「本当にごめん、気持ちは嬉しいけど。」

「いいんです、ハーリーさんの事情は知ってますし、そんな二人の間に入れるなんて思ってませんでした。

 でも・・・後悔はしたくなかったんです。」

ルカは目にたまっていた涙をぬぐう。

「ねえハーリーさん、お願いがあるんです。」

「お願い?」

「はい、この戦いの間だけ、私を守るナイトになってください。」

「僕が、ナイト?」

「いいですよね、天使のナイト様。乙女の心を切って捨てたんですから。」

「・・・僕でよければ、喜んで。」

「やった。私だけのナイト様、よろしくね。」

「うん。」

ルカはいきなり唇をハーリーの頬に当てる。

「!?」

「前払いです、それじゃ。」

そうしてルカは自分の機体に入っていった。

「・・・まったく。」

ハーリーは余韻が残る頬をさすった。

「(僕がナイト・・・か。裏切りの者の僕が。)」

彼の脳裏には、以前整備班長のケンに言われたことを思い出していた。


「いいか坊主、おめえの機体は人間を兵器にしちまう恐ろしい機体だ。あのゼロシステムに飲み込まれた者の末路は・・・己を殺す。

 ローズはまあ、強化してあるから問題ねえが、坊主はそうはいかねえ。マシンチャイルドってやつでも、少し耐性があるだけだ。

 だが坊主はゼロに勝った、ということは才能はあるということだ。ならもっと自信を持っていけ。戦場はビビッた人間から死んでいくからな。」


「(もし僕がまた暴走したら、誰も止めることのできない本当の兵器になってしまう・・・それだけは。)」


「全機出撃用意。敵さんのお出ましよ。」

セレスのウインドウが開き、全機のモノアイが点灯する。

すでに誰もいない格納庫の扉が開いていく。

「全砲門一斉掃射後、無人機に続いてでるわ!」

「了解」×六

そしてミサイル、グラビティブラストの嵐が吹く。




    ナデシコD ブリッジ

「ソロモン確認。」

「けん制にミサイル発射!全機に出撃要請、行くよ!!」

ラピスの報告が届き、ユリカは指示を出す。

ユキナが格納庫の各パイロットに通信をする。

「各機発進してください。」



   格納庫

砲撃による揺れがしていた。そして格納庫の扉が開き、カタパルトが起動する。

「まず俺から行くぜ!」

「続いて行くぜ。」

「さあ行こうか。」

アンスリウム、サルビア、トールギスが順に発進する。

「待ってろよセレス!Hiーνガンダム、カワシマ・シン、行くぜ!!」

その後を武神、ダイゼンガーがつく。

「見せてやろうぜダイゼンガー、俺達の実力を。モリナリ・タカヤ、発進する!!」

そして巨大な機体、ゼラニウムがリフトによって位置につく。

「アキトさん。」

「ルリちゃんか、来ると思っていたよ。」

「あの子と・・・戦うんですか。」

「ああ。」

「・・・止めてください。あの子を。」

それだけ言い、ウインドウが閉じられた。

「テンカワアキト、ゼラニウム出るぞ!」



    ソロモン内部

「ヴァルキリーチーム、ミレイ行きます。」

「同じくエリ、いっきま〜す。」

「・・・でる。」

「ルカ・フォーマット、行きます。」

四機のヤクト・ドーガが一斉に飛び出す。

「サクマ・ユウイチ、ヒュッケバインボクサー・フェンリル、行くぜ!」

改良され、完成したフェンリルが飛び出す。それは一回り大きく、巨大な拳を付け、各所がアーマーに覆われている。

「行くぞ。マキビ・ハリ、ウイングゼロ、行きます!」

発進しながら回転し、翼を展開しブースターが火を吹く。

「ナイチンゲール、セレス、行くわ!」

最後に赤いMSが飛び出していく。

そしてソロモンは、再び戦場となる。



次回予告

多くの英霊達が眠る地、ソロモン。
そして歴史は再び繰り替ええされる。
ぶつかりあう両軍。その中を駆け抜ける死神の行進。
そしてまた、ここに新たなる修羅が生まれようとしていた。
その白き翼を闇へと染めて・・・


スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第十六話「ソロモンの嵐 戦場は憎しみ深く」

??「全て消えろ・・・敵は!!」
 





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