スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第十六話「ソロモンの嵐 戦場は憎しみ深く」


「敵砲撃、グラビティブラスト及びミサイル多数!」

「急速回避!!」

ユリカの言葉とともに、ミナトはナデシコを左へ回避させる。

「うわ〜、凄い量ね。」

「ユキナちゃん、他の艦からも情報を。」

「了解。」

「ユリカ、次は機動兵器が来るよ。」

「ラピスの言うとおり、みんな気を引き締めてね。」

「でも、さすがソロモンだ。かなりの武装がある。敵も正念場らしいね。」

「うん、でも・・・ジュン君、何で戦艦の数が少ないと思う?」

「数が少ない?これでかい??」

「私もそう思います。それにネオ・ジオンの保有する戦力は有人MSが主のはずです。でもここには無人機の割合の方が大きいです。」

「なら本隊は・・・別の場所?」

その言葉にルリは異議を唱える。

「いえ、ソロモンはネオ・ジオンの拠点として重要なはずです。ここが囮とは考えにくいのですが・・・」

「今は目の前の戦闘に集中してましょう。機動兵器はアキト達に任せます。」




   ソロモン宙域 

ソロモンから出撃した七機は予定通り各チームに分かれた。

その中に、ウイングゼロの姿もある。

「これが戦場・・・すごい。」

彼だって何度も実戦を経験してきた。しかしそれはブリッジでのこと、機動兵器に乗ること自体無かったのだ。

初めての経験である。

そしてセレスが通信を入れてきた。

「全機予定通りに動きなさい。行くわよ!」

ナイチンゲールとフェンリルは左右に分かれ、四機のヤクト・ドーガとウイングゼロは正面に向かう。

前方には大量の無人兵器の姿。

と、目の前から大量のミサイルが降り注ぐ。

「うわ!?」

慌ててマシンキャノンを撃ちながら回避する。だが無人兵器たちはかなり潰されたらしい。

ルカのヤクト・ドーガはウイングゼロといっしょにいたが、他の三人は別方向へ向かっていく。

「ハーリーさん、行きますよ。」

「う、うん。」

ルカと通信をし、二機も無人機の爆発した中に向かっていった。



一方ナデシコから出撃した六機も、それぞれに分かれ戦闘をしていた。

アキトは正面、シンは左へ単独で。タカヤはリョーコ達と共に右へ向かっていく。

「くっ、数が多すぎるか・・・なら!」

アキトは前面のモニターに表示される敵全てに照準を合わせた。

「落ちろ!!」

と、左右のコンテナが開き、マイクロミサイル弾頭が射出される。

それは敵集団の直前で開き、計七十二発のミサイルが敵へと向かっていった。

そして爆発。多くの閃光が生まれ、ゼラニウムはその中に突っ込む。

両手のギミックアームを操作し、コンテナからバズーカを両手に持つ。

そして爆発の中を抜け、目の前に現れた駆逐艦に向ける。

引き金がひかれ、弾はフィールドを貫通し突き刺さった。

「さすがソロモン、どれだけの敵がいる?」



グラビティライフルから放たれた漆黒は、エステを貫く。

「・・・ごめんなさい。」

ハーリーは有象無象と出てくる連合軍に戸惑っていた。

なにせ物量が違うのだ。ルカもがんばっていたが、いつの間にかパーティーを分断されてしまっていた。

「ルカ、どこにいるんだ?」

モニターに目をこらしても、見えるのは多くの閃光ばかりだ。

「は!?」

いきなり横から黒煙を上げた連合艦が飛び込んできて、慌てて上昇する。だが、

「ナ、ナデシコ・・・D」

回避した彼の前に出てきたのは、ナデシコDの姿だった。



ナデシコの目の前に、ウイングゼロが突然現れた。

「(ウイング・・・ハーリー君。)」

ブリッジのメンバーも至近距離の状態だったので、動きが止まっていた。

だがその中で、ルリはウイングゼロに通信を送った。

「ハーリー君、答えてください。」



ナデシコからの通信を彼は受信した。

「(ルリさん・・・)」

「もうやめてください、あなたには戦争なんて似合いません。ナデシコに帰ってきてください。」

だがその言葉は、彼には聞こえていなかった。

「(ナデシコに、か。私の元じゃない、僕はやっぱり弟何ですね・・・)」

「断ります。僕はもうナデシコとは関係ない、ネオ・ジオンの兵士です。」

冷たく言い放つ。

「何をいってるんですか、あなたの居場所はここなんですよ。Bの時からいつもいっしょに、戦ってきた仲間じゃないんですか!」

「(居場所・・・僕の居場所はあそこには無かった。ローズさんの隣が、僕の・・・)」

「ハーリー」

「何を。」

「えっ?」

「何が帰って来いですか、僕の気持ちを知らないで。ナデシコは・・・僕の居場所なんかじゃありません。」

その言葉は、完全な決別の言葉。

ルリはそれを一時的なものと思っていた。七年前、彼が嫉妬によって私のもとから逃げたのと同じように。

「連合は僕の両親を殺した。あんな優しい、いい人たちを殺したんだ!」

その瞳が向く先は、何なのか。

「あなたも、いつまで僕を子ども扱いするつもりなんですか?」

「そんなこと」

「僕が・・・いつまでもあなたの言うことを聞いてると思わないでください。」

ルリは目を大きく開く。そう、彼は変わってしまっていた、大人へと。

「あくまで連合へ協力するなら。」

その銃口を、

「動けなくさせてもらいます。」

ナデシコの機関部へ向ける。

「ハーリー君、本気なの!?」

「ミナトさん、僕はあなたにこんな姿を見られたくありませんでした・・・ごめんなさい。」

そして引き金に力がくわわろうとしたその時、

ウイングゼロが後方に後退し、上から二機の機影がナデシコの前に降り立った。

「あのカラーリングは、まさか。」

それはアンスリウム、サルビアだった。


「ナデシコ、大丈夫か!?」

「リョーコちゃん・・・うん。」

「提督、艦を下がらせてくれ。」

「わかりました。ラピス。」

「了解。」


ウイングゼロはナデシコへライフルを向けるが、その前に二機が立ちふさがる。

「ハーリー!」

「サブロウタ、さん。」

「お前、自分が何をやってるのか、本当にわかってるのか!」

「・・・・・・」

「おいハーリー、黙ってんじゃねえ!」

リョーコも通信をしたが、彼は黙ったままだ。と、ウイングゼロの背部に火花が散る。

「くっ。」

それはエステからの攻撃だった。

ウイングゼロはライフルをしまい、一気に距離を詰めビームサーベルを振るった。

「ハーリー、お前!!」

爆発するエステ。搭乗者は即死のようだ。

サルビアが右のガトリングレールカノンを向ける。

「何でこんなことになるんだよ!」

連射されるレールカノンを、回転しながらかわす。

そしてそのまま上昇し、翼から一本のグラビティバスターライフルを取り出し、銃口から漆黒の剣が飛び出す。

「(僕は。)」

剣を横に向け、二機へと向かう。

「くっ、やめろハーリー!」

アンスリウムはメガビームサーベルを構えた。

「僕は!」



アキト達と別れたシンは、単騎でソロモンへ向かっていた。

「くそ、奴は・・・セレスはどこだ!?」

モニターに目を向けても、両軍が入り乱れ混戦状態だった。

「雑魚に用はねえ!」

向かってくるバッタや量産型エステにグラビティライフルを浴びせ、戦場をかける。

「セレス・・・はっ!?」

上からミサイルが降ってきた。

「新型か、だがこの感覚は何だ?」

それはヤクト・ドーガ三機の部隊。ヴァルキリーチームだった。

「あれはガンダム。」

「ミレイさん、白銀のガンダムです。」

「あのパイロット・・・強い。」

「噂のカワシマ・シンね。エリ、シズ、行くわよ!」

「「了解。」」

三機はそれぞれ三方向から向かう。

「ちぃ!?」

シンは囲まれるのを阻止するため正面の黒いヤクト・ドーガ、シズの機体へ向かいライフルを放つ。

「・・・回避。」

シズは冷静に回避し、接近するHi−νガンダムへグラビティライフルを撃ち返した。

「正確だな、くそ!」

だがシンの脳裏に予感がはしり、機体を加速させる。

その後方に白いヤクト・ドーガ、エリの機体がビームソードアックスで斬りかかっていた。

「かわされた!?ミレイさん。」

「そこよ、ファンネル!」

しかしミレイの青いヤクト・ドーガの両肩から二つずつファンネルが飛び出し、Hi−νガンダムの周囲を不規則に飛び回る。

「くっ、四つの敵か・・・やられる!?」

シンはフィンファンネルに念じ、五つを使ったフィールドを作り出す。ビームがピンクの四角柱を描いていた。

「ファンネル!」

それはヤクト・ドーガのファンネル達のメガ粒子を防いだのだ。

「な、何よあれ!?」

「何でファンネルがあんなにもつの!?」

「・・・すごい。」

三人はその光景に驚いていた。

「まだこれからだぜ、行くぞ!」



「ファイナルブラスター!」

ダイゼンガーの腹部から強力なグラビティブラストが発射され、木連艦が爆発する。

「何て量だよ。」

だが・・・爆炎の中に影が。

「!?」

それは一直線にダイゼンガーに向かって突っ込んできた。

「なっ。」

それは巨大な拳で殴りかかる。

「これは!?」

受け止めた先にあるのは・・・フェンリルの姿。

「ユウイチ!」

「待ってたぜタカヤ!」

右が使えず、ダイゼンガーは左の拳で殴ろうとするが、

「甘いぜ!」

それはフェンリルの右手に受け止められ、お互いは一歩も引かず押し合う。

「くっ!」

「おおおお!」

二機が同時に手を離し、後退しながらダイゼンガーはドリルを、フェンリルはガントレットを装着する。

「ユウイチー!!」

「タカヤー!!」

フィールドを纏い激突する。



一方、ハーリーと分断されたルカも、戦闘を開始していた。

「何なんですか、この機体は。」

相手は・・・アカツキの駆るトールギス。

ヤクト・ドーガの攻撃を素早い動きでかわす。ファンネルのオールレンジ攻撃を回避し続けていた。

恐るべき腕前、いや予測というべきだろうか。

ファンネルといえど動きは直線的であり、それを見極めることができればオールドタイプといえど回避も可能なのだ。

「やれやれ、大物みたいだねえ。ファンネルを使うってことはニュータイプか。運がいいのか悪いのか・・・落させてもらうよ。」

右手に持つグラビティバスターライフルに似た銃が前部に展開し、エネルギーが集まっていく。

「バスターライフル?違う、ハーリーさんの機体と同じ!?」

同時にアカツキは味方に通信をする。

「こちらアカツキ、メガグラビティキャノンを発射する。」




「くそ。ハーリー、いい加減にしろ!」

ウイングゼロは横薙ぎにロンググラビティブレードを振るう。

アンスリウムはそれをメガビームサーベルで受け止めるが、

「(パワー負けしてるか。やっぱビームサーベルじゃ・・・)」

少しずつサーベルが切られていく。一時エネルギーをカットし、後退する。

そこにサルビアがツインガトリングレールカノンを連射した。

弾雨にウイングゼロはひるみ、フィールドを展開する。

「降伏しろハーリー、俺はお前を殺したくねえんだ!」

サブロウタは通信を送る。

「おめえじゃ俺達には勝てねえのがわかんねのか。」

リョーコの言葉に彼は反応する。

「(・・・勝てないことなんてことはないはずだ。)」

と、急に二機が下に下がった。

何だ?と思っていたら、グラビティブラストの反応が接近していた。

「なっ!?」

ウイングも間一髪で回避する。

それは、トールギスの放った攻撃だった。

「高出力のグラビティブラスト!?」

と、

「ハーリーさん。」

「ルカか。」

アカツキと戦っていたルカが合流した。

「大丈夫ですか?」

「こっちはね。でも・・・相手は最悪だよ。」

二機はナデシコの前に立ち塞がる三機を見る。

「(ファンネルも効かない・・・どうすればいいんです?)」

だが、ウイングゼロはルカのヤクト・ドーガの前に出てきたのだ。

「ハーリーさん。」

「今のうち逃げるんだ、僕がなんとかするから。」

「でも、それは。」

「僕がルカを守るよ。怖いけど・・・約束したから。だから」

「!?ハーリーさん、上です!」

上空からミサイルの雨が降り注ぐ。

「な!?」

フィールドを張り、盾を構える二機。しかしそのミサイルはフィールドを消滅させ、シールドに突き刺さっていく。

「うわあ!?」

「きゃあ!?」

二機は後方に吹き飛ばされる。


「ナデシコ、無事か!」

「アキト!」

ゼラニウムが、その巨体を駆りナデシコDの横についた。

「ハーリー君・・・君は、本当に変わってしまったのか!」

そして両手のバズーカを構える。

「ホワイトサレナ?違う、アキトさんか・・・くっ、まずい。」

そしてウイングゼロはナデシコに向かう。

「ハーリー!」

「お前!」

「君ってやつは!」

サルビア、アンスリウム、トールギスがそれぞれの武器を構え、発砲する。

ウイングゼロは翼をはためかせながら回避していくが、そこにゼラニウムが立ち塞がる。

「!?」

バズーカが二発撃たれウイングゼロはシールドで受け止めるが、

シールドは大きくへこみ、砕かれてしまった。さらにその勢いによって吹き飛ばされる。

そしてゼラニウムは再びバズーカを放つ。その弾丸は・・・

「ハーリーさん!」

ウイングゼロを突き飛ばしたヤクト・ドーガに命中する。

「な!?」

「あ、ああ・・・」

アキトは驚愕し、ハーリーは目を開いた。

そしてノイズ交じりのウインドウには、ルカの姿が映し出されていた。

「ハ、ハーリー・・・さん。にげ・・・て」

全身から火花を散らし、閃光となりヤクト・ドーガは消滅した。

思わず手を伸ばした右腕。その光りと破片が、ウイングゼロに降りかかる。

コクピットの中で、ハーリーは茫然としていた。

そして他で戦っていたヴァルキリーチーム、セレス、シンもそのことに気付いた。

「ルカ!?」

「まさか。」

「・・・!?」

「くっ。」

「今のは、誰だ?」

ヴァルキリーチームはHi−νガンダムを無視し感じた方向へ向かっていく。その途中でセレスのナイチンゲールと合流した。

そしてナデシコの前、動かないウイングゼロの側に集まった。

「ハーリー君、答えなさい!」

しかしセレスの問いにも答えない。彼は顔を下に向けていた。

「くっ・・・ナデシコ!!」

そしてHi−νガンダムもナデシコDの前に来た。

「アキトさん、何があったんですか。」

「俺が撃ったバズーカを、一機の機体がハーリー君をかばって爆発したんだ。」

「かばった?まさかさっきの感じは、そのパイロットの・・・はっ!?」

Hi−νガンダムに襲いかかる拡散グラビティブラスト。

「セレス!」

「シン、あなたたちは!」

ナイチンゲールはモノアイを強く光らせHi−νガンダムへ向かう。

ゼラニウムはバズーカを捨て、グラビティライフルを両手に持ちナデシコDへ向かってくる無人兵器へ撃った。

それに続いて三機のヤクト・ドーガもサルビア、アンスリウム、トールギスへ突撃する。

しかしいまだにウイングゼロは動かない。

それを見て、他のエステが攻撃を仕掛けてきた。

ラピッドライフルとミサイルが飛んでくる。


「(ルカ・・・僕は、また・・・)」

付近でミサイルが爆発する。

「(守れなかった・・・約束、したのに・・・)」

弾丸が当たり、衝撃がコクピットを揺らす。

「(僕は・・・僕は・・・)」

コクピットが闇に包まれ、球形のレーダースクリーンが光りだす。

膝の上に、流れた涙が落ちていく。身体の震えが止まる。

背後のエステが、イエデミットナイフを振り上げていた。


「うわあああ!!!」


咆哮とともに、ウイングゼロは振り返ってエステに拳をぶつける。

そしてエステをビームサーベルで斬り捨てた。

動かないエステを無視し、その正面に見えたリアトリス級戦艦に向かって突撃していく。

フィールドを張る前にブリッジへビームサーベルを突き立てる。

そして次の戦艦へ向かった。

駆逐艦はウイングゼロの接近に対し、ミサイルを発射しフィールドを張る。

だが今のハーリーは、頭に流れる情報から自然と手足が動く。ミサイルをマシンキャノンで破壊する。

ビームサーベルをしまい、翼からグラビティバスターライフルを一丁取り出し、ロンググラビティブレードをだす。

そして一時後退し、上から下へ振り下ろす。

ブレードはフィールドを切り裂き、戦艦を真っ二つに分けて、戦艦がズレた。

だが、まだ頭の中には敵が映し出されていく。

そこに他のリアトリス級がグラビティブラストを撃ってきた。

「くう!」

ウイングゼロは背部の翼を前面を覆い、翼へグラビティブラストが直撃する。

しかしグラビティブラストは翼の、フェアリーの力に弾かれていたのだ。

そしてバーニアが火を吹き、グラビティブラストを押しながら戦艦へ突撃していく。

フェアリーを展開して飛び込み、グラビティブレードを槍のように突き刺す。

機関部をやられ、リアトリス級は爆発した。

そしてもうひとつのグラビティバスターライフルを手に取り、頭上で合わせて、宇宙軍の集団に向けた。

「全て消えろ・・・敵は!!」

その眼にすでに理性はなかった。

銃口へ集まったエネルギーが、巨大なグラビティブラストとなり集団を巻き込む。


その光景を、ナデシコブリッジのメンバーは見ていた。

「ハーリー・・・君。」

「戦艦が一二隻消滅・・・機動兵器も多数。味方も・・・巻き込んだ。」

ユリカが茫然とつぶやき、ラピスがとぎれとぎれに状況を報告する。

「いや・・・だめです。」


ウイングゼロは大量の爆発を背にモノアイと胸の球体を光らせていた。美しいはずの白き翼は、閃光のせいで黒く染まって見える。

そして右手に持つツイングラビティバスターライフルが、さらにその姿を恐ろしく見せる。

それはまさに・・・死を振りまく堕天使の姿。

そして光を失った瞳は、いまだ戦っている機体たちに、ナデシコDに向けられる。

彼の顔は、人形のように冷めていた。ゼロシステムによって支配されている。

ウイングゼロは二つのロンググラビティブレードを伸ばし、その剣を持ってナデシコDに向かう。

「しまった!?」

それにいち早く気づいたシンは、機体を向かわせようとしたが、

「よそ見してる暇あるの!」

「ちぃ!」

ナイチンゲールのファンネルが行く手をふさぐ。

他の三機も動けず、ツインロンググラビティブレードが振られる。

しかし、その剣は・・・ゼラニウムのグラビティブレードが未然に防いでいた。

「くっ、ハーリー!!」

アキトは激昂し、弾いたウイングゼロへメガグラビティブラストを発射する。

しかしウイングゼロはすでに回避していた。

「(そうだ・・・こいつが。)」

光の宿っていなかった瞳に黒い光が宿る。

「(こいつが、テンカワアキトが。)」

IFSが強く光り始めた。

「あなたが、あなたがルカを殺したんだ!」

「!?」

その言葉にアキトは昔の記憶が甦えった。

かつての自分も似たようなことがあったからだ。

「くっ!?」

「あなただけは許さない!」

そしてウイングゼロは回り込みながらツインロンググラビティブレードを振るう。

「やめろ!」

だがウインドウに映るハーリーは、目から涙を流しながら咆哮を上げている。

そう・・・すでに止めることはできないのだ。




「落ちなさい!」

「当たるか。」

互いのグラビティライフルを撃ち合い、交差する。

「セレス、お前たちは何故戦う!?」

「今更何を!」

腹部からの拡散グラビティブラストがまき散らされる。

「お前もニュータイプなら、何故分かり合おうとしないんだ!」

それを回避し、バルカンを放つ。

「何を言う。私達はどれだけ分かり合おうとしたかも知らないで、何を!」

互いのビームサーベルをぶつけあう。

「セレス、何故人を信じられないんだ!何故未来を信じない!!」

「黙れ、俗物が!!」

と、

「「!?」」

二機の間を巨大な二機の機体が通り抜ける。

「タカヤ!?」

「ユウイチ!?」

そう、それはダイゼンガーとフェンリルだった。二機は周囲に目もくれず、お互いの拳で殴りあっている。

ダイゼンガーの右とフェンリルの右がスパークをあげぶつかり合う。

パワーは互角のようだ、フェンリルは追加されたアーマードモジュールの効果もあって負けていない。

一言でいうなら、ものすごくレベルの高い喧嘩だった。

そして・・・

「時間か、ここまでのようね。」

ナイチンゲール内の一個のウインドウが時間切れと表示されていた。

「全機撤退しなさい、早く!」

「「「了解」」」

ヤクト・ドーガ達はファンネルを使い、撹乱しながら逃げていく。

それにはリョーコ達もうかつに近寄れなかった。

だがユウイチとハーリーは尚も戦闘を続けていた。

「ユウイチ、ハーリー君、撤退しな・・・は!?」

だがHi−νガンダムが襲いかかる。

「くっ!」

セレスはダミーを放出し、グラビティライフルをフェンリルとダイゼンガーの間へ放つ。

Hi−νガンダムはダミーに気付いたが、突如爆発し視界がふさがれる。

「ちっ!」

その隙にナイチンゲールは離れたフェンリルへ近づき通信をする。

「ユウイチ、撤退よ!」

「何だと、まだ」

「ルカが死んだわ。」

「!?」

「わかってるわね。」

「・・・了解。」

そしてフェンリルも撤退していく三機のヤクト・ドーガに続いていく。三機が消え、リョーコ達はアキトの元へ向かおうとしたが

またも無人機達の妨害にあう。ダイゼンガーも同じだった。

だがウイングゼロは、いまだ戦っている。


「早く、もっと早く。あの人を、テンカワアキトの反応速度を超えるんだ!」

「こ、これは。」

ハーリーの反応がさらに早まっていた。すでにGは吸収しきれないほど。

だがゼロシステムはそんなことを考えていない、その証拠に、彼の視界は赤く染まっていた。

Gの影響である。しかしそれでも脳裏に流れる情報が、体を動かす。例え目が見えなくとも。

「ああああ!」

すでに別人のように、ハーリーは雄たけびをあげツインロンググラビティブレードを振るった。

それはオーキスの右コンテナを切り落とす。

「うお!?」

だが・・・

「ハーリー君、撤退よ!」

セレスがウイングゼロを止めようとする。

しかし、止めに入ったナイチンゲールを逆に殴ったのだ。

これにはシンもアキトも驚いていた。

「ハーリー君!?」

そしてナイチンゲールに向け剣を振るう。

「やめなさい。」

ナイチンゲールが下がったのを見て、ウイングゼロは再びゼラニウムへ向かう。

「時間がない。」

セレスは通信を繋げたが、彼は見向きもしない。

「ハーリー!」

シンが機体を動かし、ゼラニウムの前へでる。

「もうやめろお前も!」

そしてフィン・ファンネルを放出する。

メガ粒子の嵐がウイングゼロに襲いかかる。

しかしウイングゼロは、その中に突っ込んできたのだ。

「!?」

まるで、自分から死にに来ているように。そしてビームサーベルに切り替え、Hi−νガンダムに切りかかった。

それをシールドで受け止める。

「くそ!?」

だが・・・その時。

「うぅ!?」

突如ハーリーが苦しみ始めた。

しかし、彼だけではない。

「う、くうぅ。あ、頭が・・・」

「な、何なの・・・これは・・・」

シンとセレスまでもが苦しみ始めたのだ。

そして、ハーリーの脳裏に再現されるさっきまでの戦闘シーン。それが頭の中を駆け巡っていく。

「い、痛い!」

ウイングゼロのモノアイが点滅し、胸の球体が強い光を発している。そして身体に力が入らなくなった。

シンとセレスも似たような感じだ。両手が動かず、機体が何かに反応している。

バシュウー 両機の排気口から蒸気が漏れ、機能を停止させる。

「はぁ、はぁ、はぁ。」

ウイングゼロの視界が元に戻った。

「今のは、シンさんとセレスさんの・・・痛っ!」

脳が締め付けられるような圧迫感。体に力が入らない。

ウイングゼロの機能も停止してしまった。

「な、何が起きてるんだ?」

アキトはその異常を見て、動かなかった。

「(今のは・・・セレスの?)」

「ゼロシステムに、サイコフレームが・・・時間ね。」

何とか機体を再起動させる。

「セレス!」

「シン、私達が決着をつける場はここではないわ。ハーリー君も撤収しなさい。」

ナイチンゲールはソロモンの裏手に向かっていった。

ウイングゼロも起動したようだ。それは、さっきまでの狂気は感じられなかった。

だが・・・

「テンカワ、アキト。」

苦しそうに息をつくハーリーのウインドウが、ナデシコの機体全てに開く。

つりあがり、憎しみに満ちた蒼き瞳、そして歯を食いしばりながら涙を流していた。それが見た者達を貫く。

そしてウイングゼロも、ソロモンの裏手へ向かっていった。

その光景に全員が動かなかった。

そして全ての敵機が撃破されたらしい。いつの間にか閃光が消えていた。

「・・・ユキナちゃん、全機に追撃させず帰還命令を。ラピス、ナデシコ及び他の艦など被害状況確認して。」

「了解。」

「了解・・・」

だが、この時すでにセレスの仕掛けた罠が発動していたのだ。


「3、2、1・・・0。」

移動中のナイチンゲール内で、もう一つのウインドウが時間切れと表示する。



「全機帰還。被害はかすり傷だって。」

「ユキナちゃん、他からの情報は?」

「被害がすごいみたい。でも見えない敵からの攻撃を受けたっていう情報もあるの。」

「見えない敵・・・シン君が使うファンネルのことかな?」

「多分そうだろうね、さっきも見えてたけどあれは気づいてからじゃ遅いね。」

ユリカの言葉にジュンが言う。

「ソロモン宙域の敵部隊は完全に撃破、内部も異常無いとの報告。入港OKだって。」

だがルリだけは難しい顔をしていた。

「ルリちゃん、大丈夫?」

「え、ええ。」

「・・・彼のことかい?」

ジュンがルリに問う。

「それも、ありますが・・・おかしいとは思いませんか、ここは仮にも」

と、

「光熱源体出現!」

ラピスが声を出す。

「位置は!?」

「ソロモン付近の、デブリから・・・来る!」

「フィールド最大!」

ナデシコDの強化ディストーションフィールドが展開される。

そして、強力な衝撃がナデシコを襲った。

「な、何なの!?」



    格納庫

「うわああ!?」

格納庫では機体の固定がすんだばかりだった。

だがこの衝撃はまるで地震のよう。

資材が吹き飛び、そこらかしこにまき散らせる。

パイロット、整備士一同も揺れによって動けない。




    ブリッジ

ようやく揺れがおさまり、状況の確認し入った。

「ラピス、今のは何ですか?」

「これは・・・周囲の艦がほとんど大破、または中破してる。原因は、衛星ミサイルだよ。」

「衛星ミサイルって何なの、ルリルリ?」

ミナトがルリに尋ねた。

「衛星ミサイルとは岩石などにブースターを付け、発射するものです。安価ですが、狙いがつけられないのが難点なんですが・・・

 量がそろえば、フィールドを張っていても被害を受けます。物理攻撃には弱いですから。」

「しかも時限式で、だから反応がなかった。デブリ帯にあったのも、発見を遅らすためだったみたい。」

「だから、もし遅れてもいいように無人機ばかりだったってことか・・・まって、じゃあ本隊は!?」

そう、ならば本来の戦力は別の場所ということになる。

「これが火星の後継者からの戦力ならば、ここは罠?」

ユキナが考える仕草をする。

「でも、拠点となるような場所は全てマークされています。使えるようなところは。」

「・・・ある。」

と、ジュンがポツリと呟いた。

「えっ、あるって・・・どういうことなの、ジュン君!」

「ネオ・ジオンがソロモンを捨ててでも、行くところが一つだけ思い当たる。」

「何なんですか、ジュンさん。」

「あくまで予測だけど、それは過去、ネオ・ジオンの本拠地でもあった場所。彼らの拠り所なんだ。」

そこまで言われ、ユリカとルリ、ラピスは気付く。過去の戦記で名前が挙がったことのあるその場所。

「もしかして・・・宇宙要塞アクシズ?」

「ああ、恐らくね。あそこは過去の大戦後、邪魔にならないように移動をして誰も手を付けず放置されている。一部の宇宙軍がいるだけだ。」

「まさか今頃!?」

「わからない、しかしハーリー君達は戦艦にも乗らずベースジャバーで離脱していった。」


「それは・・・近場までしか行かないってことになる。アクシズはここから少し離れた旧サイド2付近にあるんだ。」


ジュンの言葉に、ルリはすぐ連合宇宙軍本部、ミスマルに通信をした。

「司令。」

「ルリ君、まさかそちらから通信が来るとな。こちらも今するところだったのだ。」

「お父様。」

「ユリカ、ソロモンでは御苦労だった、しかし・・・我々は踊らされていたのだ。」

「アクシズですね。」

ジュンが言う。

「!?気づいていたのか。」

「はい、彼らの戦力を考えれば想像がつきます。」

「うむ、さすがアオイ君だ。君の言うとおり、つい先ほど連絡が入った。アクシズにて内乱、ネオ・ジオンによる占拠とな。」

「ソロモンを占領したのも、こちらの目をアクシズから離すため・・・はめられたましたね、私達は。」

ルリの言葉に、ブリッジは沈黙した。

「だが、彼らは何故アクシズを奪ったのか、その理由がいまだに不明なのだ。ユリカ、お前はどう」

と、

「ユリカ無事か!?」

ドアが開きアキトが入ってきた。

「む、アキト君か。」

アキトはウインドウにミスマルが映っているのに驚く。

「お義父さん、どうしたんですか?」

「大変なことになったの。」

「ラピス?」

「アクシズが占拠された、ここは囮だった。」

「何だと!?」

「それで今、ネオ・ジオンの行動理由を考えているのだが・・・」

全員が考える仕草をする。

「アクシズを領土としてみとめさせるとか?」

「ユキナ、そんなわけないでしょ。」

「でもミナトさん、拠り所っていうほどだから大切なんじゃない?」

「う〜ん、どうかしら。平気でコロニーを落とす人たちだし・・・」

「!?ミナトさん、今。」

「え、何?」

「今なんて言いましたか?」

突然ユリカがミナトに詰め寄ってきた。

「な、何って・・・コロニーを落とすって・・・まさか!?」

この言葉に全員が気付いた。

「まさか・・・アクシズを。」

「地球に、落とすとか?」

それは、遅すぎた理解だった。

「馬鹿な!」

だがミスマルは声を荒げる。

「そんなことをすれば地球は寒冷化し、長い氷河期が訪れるぞ。人もすべて死んでしまうではないか。」

そう、普通はありえないことだった。

「なら、何故彼らはアクシズを手に入れたんですか?まさか本気で領土と考えてはいませんよね??」

ルリはミスマルに問いかける。

「し、しかしそんなことをすれば人類は地球に」

「あいつは、やりますよ。」

シンがいつの間にか入ってきていた。

「総司令、セレスはこう言っていました。粛清、人が変わると。

 奴は、人類全体をニュータイプにするために、地球を人の住めない星にするつもりなのかもしれません。

 長年の苦汁、それを清算するために。」

「・・・・・・」

「お父様。」

「・・・わかった、ナデシコDはソロモンで補給を完了次第、すぐ・・・ん?」

どうやら別の通信が入ってきたらしい。ミスマルがそれを受け取っている。

「何だと!?くっ、ナデシコの諸君、すぐにルナツーへ向かってくれ。」

その様子は尋常ではない。

「たった今、ルナツー防衛部隊が火星の後継者の強襲を受けているのだ。」

ブリッジメンバーは驚く。

「奴らは動かないかわりに力を蓄えていたようだ。ソロモン攻略時、すでに木星プラントは奪取したが、すでに部隊は撤退していたのだ。

 情報では数は大したことないらしいが、それでも押されているのだ。我が軍が進軍のため出撃していることをみすこし手の攻撃だ。」

「でも、奴らはどうやってルナツーへ?」

「不明だ、ターミナルコロニーはこちらで全ておさえてあるが・・・信用は完全ではない。」

アキトは強く拳を握っている。そう、宇宙軍といえどこうも反乱があっては当然だ。

「ルナツーが落ちれば宇宙は完全に掌握されてしまう。ユリカ、無理を承知でいう。ボソン・ジャンプで向かってくれ。」

「・・・わかりました、ナデシコDはこれよりルナツーへ向かいます。」

「頼む!」

そしてウインドウが閉じる。

ユリカは振り返り、見据えた。

「艦内連絡、ラピス。」

「いいよ。」

「総員第一種戦闘配備、これよりナデシコはボソン・ジャンプでルナツーへ跳び、防衛部隊の援護に向かいます。」

「ユリカ、しかしジャンプは。」

「イネスさん、ウリバタケさん。」

アキトの言葉に、イネス、ウリバタケのウインドウを開く。

「提督、本気なの?」

「はい、一人ではきついですけど、私も手伝います。」

「二人か・・・なんとかいけるわ。」

「ウリバタケさん、準備を。」

「あいよ、ったく整備もまだだってのにな。」

そしてウインドウが閉じる。

「ユリカ、大丈夫なのか?」

「うん、アキトは格納庫へ行って。すぐ戦闘になるから。」

「・・・わかった、無理するなよ。」

「うん、ジュン君、ジャンプ後しばらくルリちゃんのサポートをお願い。」

「ああ、伊達に「副」はついてないからね。」

そしてアキトはシンを連れて格納庫へ走る。

「ルリちゃん、戦闘指揮をお願い。」

「はい、ユリカさんも。」

そうしてユリカも出て行った。

「ラピス。」

「うん、わかってる。」



    格納庫

「さあさあ、これを食って体力つけな。」

ここでは、ジャンプ準備に入る前に、簡単な腹ごしらえが行われていた。

ホウメイが握り飯を大量に作っており、それを自分で持ってきたのだ。

「あの子たちがいないからね、あたしがやるしかないんだよ。」

パイロット達は腹に詰め込んでいく。

「お前ら、機体の簡単な整備は終わったぞ。」

ウリバタケがやってきた。

「ただアキト、おめえの機体、ゼラニウムのオーキスは無理だ。時間が足んねえし、あの部分はさらに時間がかかる。

 分離していくことになるぞ。」

オーキスは弾薬をいれるのも一苦労だ。しかもウイングゼロとの戦闘で異常が発見されていた。

「わかりました。」

今のゼラニウムは両手にグラビティライフル、フィールドバスターシールドを持っている。ビームサーベルは脚部に入っていた。

そして、

「全乗組員、これよりナデシコDはルナツーへボソン・ジャンプします。」

ユキナの声が響く。

「みんな、各乗機で待機。すぐに戦闘になるぞ。」

「了解」×五




「ジャンプフィールド形成。」

「イメージ・・・」

「「ジャンプ。」」


こうしてナデシコDは跳ぶ。恐怖の待つルナツーへと・・・








    ???

「・・・長かった。」

「あれから百数年、力を封じられ私は機能を停止した。」

「しかし今、全ての「血」は途絶えた。」

「争いを忘れない者達よ。」

「この星を守るために・・・」



「永久なる無に還りなさい。」



次回予告

ルナツーの危機にボソンジャンプで向かったナデシコD。
しかし彼らを待っていたのは・・・多くの六道。
その動きに翻弄されるナデシコクルー。それは今までとは違う、冷たい機械の意思。
裏で笑う山崎、その側にいる三人の子供とは・・・


スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第十七話「ルナツーの罠」

アキト「何だ、こいつらは?」




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