スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜

第十七話「ルナツーの罠」



      ルナツー宙域 

「こちら第二防衛部隊、何だあの敵は!」

「援軍求む。繰り返す、援軍求む。」

「ば、化け物だ。うわああ!!」

「くそくそくそ!たった数機ごときに・・・」

「司令部、こちら第六防衛部隊。現在敵機動兵器三機と交戦中。援護の機体を!」



    ルナツー司令部

「ええい、一体どういうことだこの有様は!ここは宇宙拠点ルナツーだぞ、六つの防衛部隊がこうも簡単に。」

ルナツーの司令部も大混乱していた。

各所で飛び交う怒号、そして命散る輝き。

現在、ルナツーは危機に陥っていた。

地球に最も近い拠点として重要な場所である。それゆえ六もある防衛部隊が配備されていたのだが、

今壊滅へのカウントダウンが始まろうとしていた。

「司令、ルナツー第一防衛ライン外にボソン反応。」

「何、敵の援軍か!?」

「いえ違います。これは・・・」

少し離れた場所に、粒子の輝きとともに巨大な何かが実体化していた。

そう、ソロモンからボソン・ジャンプしたナデシコDである。



    ナデシコD ブリッジ

「ジャンプアウト。現在位置はルナツー宙域の外れ。」

「ラピス、ルナツーをモニターへ。」

そうして映し出されたルナツー。

「ル、ルナツーが・・・」

ミナトが呟いたように、ルナツー全体では多くの閃光が生まれていた。

「ルリ、通信を傍受したよ。」

「まわしてください。」

そうして流れてきた通信の数々。



「援護を!ちくしょうちくしょう、死にたくねえ!!」

「うわあぁーエリザベスー!!」

「いや、来ないで!いやー!!」



そこに流れるのは、軍人たちの断末魔。

「ルリちゃん!」

ジュンの言葉を聞きながらルリは指示をだす。

「わかっています、ユキナさんお願いします。」

「うん。」

「ミナトさん、ナデシコをルナツーへ。」

「了解。」

「ラピス、分析結果は?」

「データ照合・・・判明、六道を九機確認。」

「!?パイロット全員に通達、これより戦闘空域に入ります。」

「各パイロット、発進してください。」

ユキナの言葉ともに、ハッチが解放される。

しかしルリは疑問に思っていることがあった。

「(あの機体が九機も?それほどのパイロットが向こうにいるのですか??)」


そしてナデシコDから出撃した六機はルナツー宙域へと入った。


先頭を行くゼラニウムとHi−νガンダム。その後方にダイゼンガー、そしてアンスリウム、サルビア、トールギスが続く。

「シン君は俺と来い。タカヤ君はリョーコちゃんたちと行くんだ。」

「「了解。」」

「行くぞ!」

アキトの声とともに、二チームへ分かれ戦闘空域に突入する。


アキトとシンは最も光の多いルナツー上部へ向かっていた。

「こ、これは。」

「ひでえ、ほぼ全滅かよ。」

すでに部隊の大半が破壊されており、エステや戦艦の残骸が大量に漂っていた。

と、残骸の奥で閃光が生まれていた。

「アキトさん。」

「ああ、まだ生き残りがいる。」

そして二機はその場所へ駆ける。

そこには、五機の六道を相手に交戦している二機のアルストロメリアがいた。

量産型ではなくシンが使っていたカスタムで、カラーリングも違う。エース級のようだ。

一機は紫のカラーに、ナイフではなく双剣を持っていた。それは以前のファントムが使っていたセイバーだった。

もう一機はダークグレーで、やはりファントムが使っていたガンナーユニットを装備している。しかも脚部にはミサイルも

つけられているようだ。

二機はうまく残骸を使いながら攻撃をしのいでいるが、今の六道はマドラスコアの時とは動きが違っていた。

明らかにアルストロメリア達を破壊しようとしている。

「ちくしょう、この反逆者め!」

紫カラーの機体、「スラッシュ」の搭乗者サコミズ・マサシは悪態をつき六道の攻撃をかわす。

しかしこちらの攻撃が当たらないのだ。

「落ちなさい!」

そういいダークグレーのアルストロメリア、「ブラスト」がビームマシンガンを放つ。

しかしパイロットのエリス・バーティーは焦りを感じていた。

彼女らの所属していた第一部隊はルナツー最強のチームなのだ。

それが今となっては二人を残すのみ。それが動きを単調にしてしまう。

「おいエリス!」

「え・・・は!?」

少し気をとられていたのか、背後の六道に気がつかなかった。

「しまっ・・・」

振られる錫杖。だがそれがコクピットを斬り裂くことはなかった。

「白銀の機体!?」

シンのHi−νガンダムが間に割り込み、その攻撃を盾で防いでいたのだ。

そしてアキトのゼラニウムが両手のグラビティライフルを連射し、六道を引き離す。

助けられたエリスは、すぐさま通信をする。

「こちらルナツー第一防衛部隊「スターズ」、あなた達は何者ですか?」

「こちらナデシコD所属、カワシマ・シンだ。」

「ナデシコ!?」

それを聞いていたマサシも通信してきた。

「まじかよ!?何でここへ?」

「今は理由を説明してる暇はねえ、そちらを援護する。」

そう言いシンは機体を二機の前に移動させる。

「アキトさん大丈夫ですか?」

「シン君気をつけろ、こいつらはマドラスの時とは違う。反応が段違いだ!」

そしてゼラニウムに近づく一機の六道にバルカンを浴びせる。

しかし六道は人間が操るとは思えない、不規則な動きで回避する。

「何だこいつら、本当に人間が操ってるのか?」

と、

「カワシマ、奴らの背負っている二本の棒に気をつけろ!」

二機のアルストロメリアが横につく。

「あんたらは後ろにいろよ。」

「ここは俺達の居場所だ、簡単に奪われてたまるか!」

「そうよ、仇討ちもしないとみんなが報われないわ。」

「そんな理由なら下がれ!余計な感情で戦われちゃあ邪魔なんだよ!!」

「「!?」」

それはかつてアキトにも言った言葉だった。

「戦場にいる死神は、そういうやつからあの世へ引きずり込んでいくぜ。」

そう言ってグラビティライフルを六道に撃つが当たらない。

「(そう・・・その通りだ。)」

アキトも、何度死神に誘われたかわからないほどだったから。

「だからこそ、無駄に命を捨てるな!」

「「・・・」」

シンは機体を奔らせ六道一機に接近する。

「落ちろ!」

ビームサーベルを振るう。しかしそれは錫杖によって受け止められるが、

「そんなもん!」

右足を振り上げ蹴り弾いた。

そのまま六道に振りおろそうとする。だが、シンは猛烈に嫌な感じがしたのだ。

「まずい。」

慌てて後ろに下がると、六道がいつのまにか右手を後ろに持っていて、一本の白い棒を水平に振り切っていた。

「何だ?」

それは白い棒の端に上へ伸びる取っ手のようなものがついており、そこを握っている。

取っ手とは逆の部分には、先端から先っぽまで鋭くなっており、まるで武器のトンファーに似ていた。

「あれは・・・トンファーか?」

六道は両手にその武器を持つとHi−νガンダムに向かってきた。

「へっ、そんな武器。」

Hi−νガンダムはビームサーベルを振るい、それを切り裂こうとした。しかし、

「なっ!?」

それは切れず、スパークが起きる。よく見ると、尖った部分に沿ってビームがはしっている。

「これは、セイバーと同じ!?」

止められるとは思わなかったシン、そして左手のトンファーが振れられる。だが、

「させるかよ!」

スラッシュが横から飛び込み、六道に体当たりをかます。そこにグラビティランチャーを放つブラスト、しかしかわされてしまう。

「おいおい気をつけろよ。」

「大丈夫?」

「悪い、礼を言う。」

「いいってことよ、お相子さ。」

そして三機に再び六道が、今度は三機向かってきた。



アキトは迫りくる六道二機の動きに翻弄されていた。

「こいつら・・・速い!」

その動きはかの傀儡舞を超える動き。

たった二機ではあるが、それはゼラニウムを翻弄し惑わせる。

「何だ、こいつらは?」

六道達は肩のスラスターノズルと脚部バーニアを使い、巧みに接近しては錫杖を振るい、離れれば腕部のミサイルを放つ。

かつて六機の六連とも戦ったアキトだが、この六道は違う。確かに動きはすごいが、人間らしさがまるでない。

機械の意思のように感じられていたのだ。

アキトの思うところは他にもあった。

動きに無駄がなさすぎるのだ。どんなエースでも、どこか自分の気付かない部分に無駄な動きがでてしまう。

アキトでも、いや人間なら誰でも無駄な動きはある。

しかし六道達からはそれが感じられない。ゆえにアキトは動きの先を読む。完璧なほど、読みやすいのだ。

ゼラニウムは六道の錫杖による突きをかわし、懐に飛び込んだ。

「捉えた!」

胴にグラビティライフルを押し付け撃つ。

「一機め。」



一方、タカヤ達はナデシコDに向かってきた六道四機と交戦していた。

ダイゼンガーが斬艦刀・村正を振るうが、やはり当たらない。

「くっ、サイズが違いすぎるか。」

しかし隙が生まれてもリョーコ達がうまくカバーしてくれていた。

「まるで蠅だぜ。」

「ぶんぶんうるさいな。」

「まったくだね。」

リョーコ、サブ、アカツキが攻撃を当てることができずイラついていた。

「(こうなったら・・・)」

と、ダイゼンガーが突如背を向け飛んで行ってしまった。

「お、おいタカヤ!」

六道達はそれを追いかけていく。

だが、タカヤの狙いは別にあった。

「(よ〜し追って来い。もう少し・・・)」

そしてそのままルナツーの表面に近づく。

「(ここだ!)」

ダイゼンガーはルナツー表面ギリギリで反転し、足を立てる。

「波斬一閃!」

横に向けていた通常状態の村正を振り切る。

と、その刃から漆黒の斬撃が六道達に飛んで行った。

村正に纏うフィールドを飛ばした技、それが鮮やかな三日月を描き六道四機に迫る。

ほぼ一直線に並んでいた六道は、一機目はかわしきれづず胴から二つに分かれる。

しかし残りの三機にはかわされてしまった。

「ちっ、やっぱそううまくいかねえか。」

村正を構え、ルナツー表面をける。

そのまま六道三機をぶった切ろうと水平に振り払った。

しかしまたもかわされる。

「こいつら!」

だがダイゼンガーを囲むように飛び回り、腕部ミサイルを撃ち放つ。

しかしフィールドを張ることはできなかった。

斬艦刀・村正を展開時は大きさのせいでフィールドが張れないのだ。

故にタカヤはダイゼンガー内で刀を使い自らを庇う動作をしたが、それは正面の攻撃しか防げなかった。

背部と左脇腹にミサイルが着弾し、爆発を起こす。

「がっ!?」

ものすごい衝撃がコクピットを揺らす。

だがそこにリョーコ達が到着し、三機の六道に攻撃し引き離してくれた。

「大丈夫かタカヤ!」

「サブロウタさん・・・はい、まだいけます!」

「一機仕留めたようだね、やるじゃないか。」

アカツキがほめながら六道にシールドで突き刺そうとする。

「くっそ〜、埒があかねえぜ!」

「こうなったら、フォーメーションでいくしかねえなリョーコ!」

「ああ、確実に一機ずつね。」

「それっきゃねえか。タカヤ、悪いがしばらく囮になってくれ。」

「囮・・・わかりました。」

「おっしゃー、行くぜ!!」

この間わずか十数秒、しかも六道の攻撃をかわしながらである。

ダイゼンガーが村正をしまい、フィールドを展開して突っ込んでいく。

そこに群がる六道達。あちらも離れた機体から破壊するようである。

しかしダイゼンガーはフィールドを張っており、六道の攻撃を防いでいる。

そこにリョーコ達が飛び込んできた。

狙いは、一番外の六道。

「ふっ。」

トールギスの右手に持つメガグラビティキャノンが展開され、

コクピット内のアカツキの顔の部分に精密射撃用のモニターが現れる。

「おらー!」

リョーコの気合の入った声とともに、アンスリウムがディストーションアタックを試みる。

六道はその攻撃をかわすが、その先に待ってたのはツインガトリングレールカノンを構えているサルビア。

「いらっしゃいっと!」

連射されるレールカノン。さすがにこの連続攻撃に六道は必死に回避をしていた。

だが・・・その中に戻ってきたリョーコのアンスリウムが飛び込んだのだ。

「そこだ!」

充分な加速からのメガビームサーベルによって脚部が切断される。リョーコはレールカノンの弾雨も恐れず駆け抜けた。

リョーコはサブの腕を信頼していたのだ、すでにサルビアからの攻撃は止まっていた、しかしまだ終わってはいない。

離れた場所にいたトールギスが、モノアイを光らせていた。

コクピット内の照準が合わさる。

「これでフィニッシュだよ!」

両手に持たれたメガグラビティキャノンから飛び出すグラビティブラストが六道に直撃、この世から消滅させた。

「これが新しいフォーメーション、千日紅 (せんにちこう)だ!」

そうして三機は再びダイゼンガーに攻撃をしかけている一機の六道に向かう。

リョーコ達が一機の六道を相手にしてくれた間、タカヤは何とか攻撃を防いでいた。

「(このままじゃジリ貧だぜ・・・やるか!)」

ダイゼンガーは急上昇しフィールドを解除する。

そこにもう一機の六道が追いついた。

ダイゼンガーは再び斬艦刀・村正を手にしていた、そして振りかぶっていた村正を急降下しながら振り下ろした。

六道は連続な動きに反応していたが、それよりも早くタカヤは刀を握った両腕を振り下ろしていた。

急激な動きで身体にもかなりの負担がきたが、問答無用といった感じだ。そして、頭部から真っ二つに斬られた六道が爆発する。

「あと一機。」

ダイゼンガーはリョーコ達が戦う場所へ向かう。

リョーコ達が六道を追い詰めている、そこへダイゼンガーは加速した。

「奔れダイゼンガー、この宇宙を!」

そして六道の動きをとらえた。

リョーコ達はダイゼンガーが猛スピードで接近してきたことに気づき、何かを感じ離れたのだ。

「この一太刀・・・かわせるか!」


「奥義、草薙の閃光!!」


それは背景の太陽ごと切り裂くような勢いで振られた。

リョーコもサブもアカツキも、あまりの速さに太刀筋が見えなかった。

そしてダイゼンガーが通り過ぎた後、時が動きだしたように六道が上下に分かれ爆発した。

「この妖の剣、村正の錆びになれ。」

爆発の光を背に、ダイゼンガーは静かに鞘へと刀を収めた。

「・・・ヒカルが見たら何ていうかな。」

思わずそう呟いてしまうリョーコだった。



そしてアキト達も、六道を巧みに追い込み包囲していった。

だが六道四機も何とか突破しようとしているのか、素早い高速移動を繰り返し攻撃をかわす。

「(このままじゃ終わらない、一気にきめるか。)」

シンはそう思い頭に念じる。

「行け、フィン・ファンネル!」

背部から斜め上へ伸びている二本のファンネルラックから、六つのフィン・ファンネルが飛び出す。

それらは複雑に動き、六道の行く先を塞ぎメガ粒子を放つ。その攻撃で体勢を崩す六道達。

「今だ!」

その言葉とともにゼラニウムはグラビティライフルを二連射し、スラッシュは高速で接近し両手のセイバーでX字を描き、

ブラストもグラビティランチャーを撃つ。動きを封じられていた三機の六道を沈める。

そして残りの一機も周りをフィン・ファンネルに囲まれ、フィールドを張る前にメガ粒子の餌食となった。

「・・・終わったか。」

フィン・ファンネルがファンネルラックに戻っていく。

「(あれがニュータイプの戦いか、俺達とはまったく違う・・・)」

アキトはそう思いながら全機に連絡をとる。

「みんな無事か?」

「はい、俺は大丈夫です。」

「助けてもらってすまない。」

「私は無事です、テンカワ大佐。」

他の三機から通信を聞き、ナデシコDにつなげる。

「こちらナデシコD。」

応答したユキナに尋ねる。

「ユキナちゃん、こっちは終わったが、タカヤ君達はどうなっている?」

「あっちも終わったみたいだよ、今救助活動をしているって。」

「そうか、こちらも開始する。」

「りょうか〜い。」

通信を切り、全機に救助活動を命じ、その場で散開した。



    ルナツーの外れ 

「向かった九機撃破か、さすがナデシコだね〜強い強い。」

白衣を着た一人の中年の男がモニターを見てうなずいている。

「でもこれで終わってはないんだよな、まだ持ってきてるし、挨拶がわりにっと。」

その男が乗っているのは、巨大な漆黒の戦艦だった。ステルス機能を兼ねているらしい。

だがどこかで見たこともあった。その戦艦は、あの「かんなづき」をさらに巨大化させたようなものだ。

しかし各所も違う部分がある。ボソン砲・・・チューリップを使わないボソンジャンプによって、

敵の内部に直接攻撃をしかける兵器だが、二つになっている。その部分も巨大になっており、大型のものでも送れそうなのだ。

「では、三人ともよろしく。例の措置を忘れないでね。」

そう言うと、その男・・・ヤマサキヨシオはにこにこしながらブリッジをあとにした。

ヤマサキ退出後、残っているのは三人の少女だった。

一人は紫の髪を背まで伸ばしており、三人の中で一番年が上のようだ。切れ長の目をしている。

その両隣にいるのは同い年ぐらいの、まだ十にもなっていないだろう少女たちだ。

右の少女は青い髪を肩でそろえ、おっとりした目をしている。

反対の少女は、ボーイッシュな姿で髪は茶髪のかかった髪をショートにしており、その目は真剣だ。

だが三人に共通している点がある。それは・・・瞳が金色であり、IFSが見たこともない、炎のような形をしていたことだ。

三人の手がコンソールに置かれ光りだす。そして、ルリやラピスと同じように指示を出した。

「二連跳躍砲スタンバイ完了。六道のMDシステム構築。」

「戦艦「夜魅」、全システムオールグリーン。座標を固定。」

「残りの六道、放出。」

そして普段とは違い、球形に丸まった六道がボソン砲の中に送り込まれる。


「ふっふ〜ん、さあてどうするかな、ナデシコの諸君?彼女たちは君たちより強いかもね。なんせ・・・だから。」


と、ヤマサキは笑い、その戦艦は消えた。



   ルナツー

戦闘を終え、各機は救助活動をしていた。

「こちらシン、Dポイント捜索終了。生存者数名発見、ルナツー外部ハッチに連れて行きました。」

「こちらタカヤ、Sポイントに生き残っていた戦艦、エステを発見。被弾していましたが自力で本部へ向かうとのことです。」

「了解。」

ユキナが通信をきる。

「ユリカさん、ひとまず救助は終了したようです。」

ユキナは戻ってきたユリカに報告する。

「そうだね、ラピス、ルナツーの被害は?」

「待って・・・防衛部隊の80%が壊滅、死者もかなりの人数。外部防衛衛星、ルナツーの砲台も多数やられてる。」

「酷いな、宇宙拠点ルナツーがここまでやられるなんて。」

「ジュンさんの言うことも最もです。しかしそれが不意打ちなら別ですが。」

「どういうこと、ルリルリ?」

「どうやら急襲を受けたようです。先ほどの通信でルナツー司令部が言ってましたから。」

ミナトは訳がわからないというような顔をする。

「急襲って、ここは宇宙軍の大事な場所なんでしょ。何でそんなことが起きたの?」

「ミナトさんの言うとおりです、普通の敵ならこんなことにはならなかったでしょう。」


「私も驚きましたが、敵は・・・ボソンジャンプで現れたそうです。」


「え、それって。」

「ボソン反応が増大したとたん、六道がルナツー各場所に出現したと言っていました。」

「うん、ルリちゃんの言う通りだよ。私もびっくりしたもん。」

「でもそれって、できることなの?」

「普通はできない。A級、または短距離ジャンプのB級ジャンパーでない限り不可能。」

ラピスの言葉にユリカが頷く。

「もしくは・・・私と同じようなジャンパーが向こうにいるか。」

ユリカのその言葉は、かつて自身にふりかかった悲劇のことを指している。

「でもA級ジャンパーは全員ここにいる。それはありえないよ。」

ジュンが言うとおり、現存するA級ジャンパーはアキト、ユリカ、イネスの三人だ。

「じゃあ一体・・・」

と、

『ボソン反応増大!』

オモイカネがウインドウを表示する。

「数は・・・十二!?」

確認をしたラピスの驚いた声が響く。

「場所はどこ?」

「ナデシコDの周囲に・・・来た!」

そしてモニターに映し出された、十二機の六道。

囲むように現れたのだ。

「ディストーションフィールド最大。各機に連絡、総員第一種戦闘配備!」

再びアラームが艦内に鳴り響き、すぐにルナツーの反対にいるアキト達へ連絡が届く。

「敵攻撃。」

囲まれているため、こちらからの攻撃はできない。

ミサイルがフィールドに多くぶつかる。

「フィールド出力が一気に50%まで・・・普通のミサイルじゃない。」

「まさかフィールドを無効化する特殊弾頭?」

「提督、どうするの?」

ミナトの問いにユリカは考え、答えを出した。

「ミナトさん、ここからアキト達のいる反対方向へ突っ走ってください。一点突破しつつ、合流します。」

「また〜?毎回だけど大変ねえ。まあいいわ、行くわよ!」

操舵士の腕の見せ所だった。ナデシコはその巨体に似合わない機動性で加速していく。

その前に六道が数機立ちはだかったが、

「邪魔邪魔!」

錫杖を突き立てたがそれより早く加速のついたナデシコのフィールドをぶつけられ、外側へ弾かれる。

豪快な動きだった。

「弾き飛ばしちゃいましたね、ミナトさん。」

「気にしないのルリルリ、前に出る方が悪いのよ。」

どこかノってるミナトにユキナはため息をついた。

「(すごく楽しそうな顔・・・)」

だが六道達も黙ったままではない。すぐにその周囲に集まりエンジン部分やブレード部へ向かい錫杖を立てようとする。

「フィールド出力さらに低下!」

ラピスの報告が響くが、ユリカは動じていない。

「大丈夫、来たよ。」

その声とともに、

「ナデシコ、無事か!?」

「アキト!」

アキトのウインドウが開き、Hi−νガンダム、ダイゼンガー、アンスリウム、サルビア、トールギスが各所の六道に攻撃し、

ナデシコから引き離している。

「すまない少し遅れた。」

「いいよ、来てくれたもん。」

「ルリちゃん状況は?」

「六道十二機が突如ボソンジャンプで現れました。」

「何だって!?」

「ボソン反応も確認してるから間違いないよ、アキト。」

ラピスにも言われ、アキトは驚きと疑問を深めていた。

「付近に戦艦は?」

「確認できない、この周囲にはいないよ。」

「(なら一体どうやって・・・まさかジャンパーだというのか?しかし長距離はA級でないと不可能のはず。)」

そしてもう一つ、アキトは気になっていることがあった。

「(これだけ動きのいいパイロットをどこから・・・しかも全員ジャンパーなのか?)」

「アキト、一つ頼みたいことがあるの。」

「何だ?」

敵機の攻撃を回避しながら通信を続ける。

「六道を一機捕獲して。そうすればわかると思うから。」

「捕獲だと!?」

「うん、大変かもしれないけど、お願い。」

「・・・わかった、できる限りやってみるよ。切るぞ。」

そうして通信回線が閉じた。

「ナデシコは後退します、アキト達の邪魔になるから。」

「了解。」

ミナトの操舵のもと、ナデシコはルナツー表面まで後退した。


ナデシコの後退を見送り、全機は本気を出し始める。

「よし、これで心おきなく全力で」

「リョーコちゃん、みんな。」

アキトのウインドウが全機に開く。

「何だよアキト。」

「ユリカからの頼みだ、敵六道を一機捕獲しろと。」

「なにぃぃ!!!!」×五

「無茶苦茶なのはわかってるが、敵の秘密を知るためには必要らしい。」

「おいおいこの動きでか。」

サブの言うこともわかる。六道の動きを捉えるのでも一苦労なのだが。

「すまない、何とか頼む。」

「・・・わかりました、俺がやってみます。」

シンが言い、ウインドウを閉じた。

「じゃあシン君に任せるが、俺達は残りの六道を沈めるぞ。」

「了解」×四

Hi−νガンダムは単騎離れ、そこに三機の六道が向かっていった。

他の六道達は錫杖を構え、アキト達を包囲していく。

「(シン君、頼んだぞ)」

アキトは思いながら、グラビティライフルを二連射する。

六道達は散開し、三機ずつに固まりながら向かってきた。

そのうち二組はゼラニウムへ、もう一組はダイゼンガーへ向かってきた。

「へっ、もらった!」

そこにダイゼンガーの横にいたサルビアのツインガトリングレールカノンが放たれる。

しかし・・・

「な、何だと!?」

レールカノンは全て弾かれてしまったのだ。

「落ちろ!」

「そこだぜ!」

そこにグラビティライフルを撃ちこむゼラニウムとアンスリウムだが、やはり弾かれてしまう。

「なんだってんだ?」

「そうか、みんな聞いてくれ。敵は一点に集まり強力なフィールドを張っている。」

アカツキの言葉に全員が納得した。

だがアキトは向かってきた六機に意識を集中させた。

「そういうことか、なら。」

ダイゼンガーが前にでる。

左手を覆うようについている手甲がせりだし、一つに重なる。

「ダブルD・ブーストナックル!」

フィールドを纏ったドリルが火を吹き高速で飛んでいく。

ドリルが六道のフィールドにぶつかる前に、六道達は散開した。

「いただき!」

「落ちな!」

「もらった!」

そこにリョーコ達が群がり、一気に肉薄、シールドでフィールドを消し各ビームサーベルを突き刺した。

「余裕だぜ、固まるなら崩せばいいだけだ。」

左手を元に戻し、斬艦刀・村正を構える。


アキトはその間、六機の六道と戦っていた。

「ちい!?」

かつての六連との火星での戦いと同じように、錫杖を投げつけてきた六道達。

それはゼラニウムの各所に刺さっていた。

「くそ!」

いくらアキトが多数の敵と戦いなれていても、さすがにこの素早い動きの六道を援護無しで六体も相手にするにはきつかった。

巧みに先回りをし錫杖を投げつけられ、全身に刺さってしまったのだ。

「(まだか?)」

と、そこにダイゼンガーが振り下ろした村正が一機の六道を頭部から真っ二つにしていた。

「アキトさん、待たせました。」

「ああ、待っていた。」

「こいつらはフォーメーションを組んでいます。さっき確信しました、それを崩せば。」

「なるほどな、わかった!」

アキトは一機抜けた場所から脱出し、ダイゼンガーの隣へつく。

そしてリョーコ達が来る前に、二機は六道に向かっていた。

「行きます。」

ダイゼンガーが村正を横に向ける。

「波斬一閃!」

水平に振り切られた村正から、漆黒の三日月が六道へ飛んでいく。

六道達は受けきれると判断したのか五体で固まり斬撃を受けきった。

しかし、それこそがタカヤの狙いだった。敵を固めておくことが。

「「「「落ちろー!!」」」」

ダイゼンガーが横に移動した後ろには、ゼラニウム、アンスリウムがグラビティライフルを、

サルビアがツインガトリングレールカノンを、トールギスがメガグラビティキャノンを構え、一斉に発砲する。

一点に集中した防御も、許容の限界を超えれば崩壊する。

この四機による一斉射撃は六道達のフィールドを打ち破り、大ダメージを与えていた。

四機が爆発し生き残った一機が爆炎から飛び出してきたが、そこにいたのは砲門を展開していたダイゼンガー。

「消えな!」

そしてファイナルブラスターをまともに喰らい、消滅する。



アキト達から離れたシンは、単騎で奮戦していた。

「フィン・ファンネル!」

フィン・ファンネルが執拗に相手を追い込み、六道の行く手を塞ぐ。

しかし六道達も黙ってはいない。回避しながら懐へ飛び込み、錫杖を、ビームトンファーを振るってくる。

「(・・・やっぱりおかしい。こいつらは・・・)」

シンは戦闘開始時から不審に思っていたことがあった。

六道からは、殺気というものがまるで感じないことに。

ニュータイプであるシンは、サイコ・フレームを通してそういうものを今まで以上に敏感に感じられるようになっていた。

「確かめるか。」

左手に持っているバズーカを連射し、一機の六道を離す。

「そこだ!」

そこにビームサーベルを振るう。しかし狙ったのはコクピットの部分だった。

水平に振られ、コクピット部を斬り裂く。パイロットがいれば即死だ。しかし・・・

「!?やっぱり。」

そこには誰もおらず、その六道もまだ動いていた。

「無人兵器か、でもこんな知能の高い無人兵器なんて一体どうやって?」

と、再び攻撃をしようとした時、六道達は反転し逃げて行ったのだ。

「?・・・はっ!?」

その先にいるのは・・・ナデシコD。

「まずい!」

慌ててシンも機体を向かわせる。



   ナデシコD ブリッジ

「ユリカ、六道三機がこっちに向かってきてる。」

「三機!?ミサイルで迎撃!」

「了解。」

そうしてナデシコから放たれたミサイルだが、六道に当たるわけもない。

「フィールド展開!」

「ラピス、アキトさん達は?」

「だめ、まだ向こうにいる。シンさんが来てるけどこのままじゃ。」

ルリの問いに返したラピスも焦っていた。

そうして六道三機がフィールドにとりついた。

しかし違うのは、一点突破をめざしていること。

いくらナデシコDの強化型ディストーションフィールドでも、一点に集中されてはいつかは破られてしまう。

錫杖が突き立てられ、序々に入ってくる。

だが、Hi−νガンダムが六道の一機を後ろから急加速しビームサーベルで串刺しにする。

ナデシコがあるため、射撃系の武装は使えないからだ。

しかし一機が爆発した影響もプラスし、二機の六道が侵入してしまった。

二機はブリッジ部へ真っ直ぐ突き進む。そう・・・道連れにしようとしているのか。

ブリッジメンバーは動けない。二機の六道が突っ込んでくる、いや、一機は視界から姿を消した。

一機はコクピットをビームサーベルで串刺しにされている。

もう一機の六道はHi−νガンダムが上から下へ叩きつけたのだ。だがその瞬間、六道は甲板上で爆発し、揺れがナデシコDを襲う。

「きゃあ!」

ブリッジ部でも強い衝撃が襲う。しかし、その爆発は威力が違った。

「こいつ・・・初めから自爆用に作られていたのか!?」

明らかに強い爆発で、甲板上の装甲がひしゃげてしまった。


「フィールドブレード部、前部の三本が中破。グラビティブラストも使用不能。」

「まさか自爆用なのか?」

「・・・そうですね。ジュンさんの言うとおり、この威力はそうとしか考えられません。」

ユリカはしがみついていた机から顔を上げ、ラピスに指示を出す。

「ラピス、周囲の反応は?」

「待って・・・敵反応なし、ボソン反応もない。」

「そう。ユキナちゃん、アキト達は?」

「戦闘は終了したって。あ、来たよ。」

モニターにゼラニウム達が映る。

と、

「ユリカさん。」

シンのウインドウが開かれた。

「申し訳ありません、自分のせいで・・・」

「気にしないで。シン君のおかげで助かったんだから。」

「あ、ありがとうございます。あと、後で少しお話があるんです。」

真剣な表情でシンが言う。

「?」

「とりあえず帰還します。」

そう言いウインドウが閉じられた。


そうして全機が帰還したが、しばらく格納庫でウリバタケと香織の絶叫と怒号が響いたのは・・・まあ置いておこう。

そのとばっちりを喰ったパイロットも数人いたが。


    ブリッジ

ドアが開き、パイロット一同(一部疲れた顔)が入ってきた。

「みんなお疲れ様。」

ユリカが笑顔でねぎらいの言葉をかける。

「ああ、ほんと疲れたよ。年寄りにはこたえるねえ〜テンカワ君。」

アキトは肩を回しながらジト目で答える。

「俺はまだおっさんじゃないぞ、アカツキ。」

「二十代すぎりゃおっさんだぜアキト、まあ俺もそうだけどな。」

と言っている三人を尻目に、リョーコはまだ頭部を押さえているタカヤを見る。

「大丈夫かタカヤ?」

「かなり痛いです・・・香織の奴、ハリセンはねえだろ。」

どうやら格納庫での犠牲者は二人らしい。全身を刺されたアキトと、ミサイルの直撃を喰らったタカヤのようだ。

「ところでシン君、私に話があるって言ったよね。」

「あ、はい。重要なことです。」

「大丈夫、もうわかってるから・・・」

「!?そうだったんですか、さすがユリカさん。」

シンは感心したようにユリカを見る。

自然と全員が注目していた。

「シン君が言いたいのは・・・」

ゴクッ のどが鳴る。


「私と付き合いたいってことなんだね!」


ズルッ 全員がこけた。

「あんな真剣な顔して・・・でも私にはアキトという旦那さまがいるの。それでも思ってくれるなんて、ユリカったら罪な女♪」

体をくねくねさせながら興奮しているユリカを、復活したシンが怒鳴りつけた。

「何言ってるんですか、俺の好みはもっと若い女です!ユリカさんのようなおば」

「おば・・・何かな?」

急に動きをやめてシンを笑顔、いや微妙にひきつってる顔だ、で見つめる。シンは自分の失言を何とか誤魔化そうとした。

「い、いえ。何でもありません。」

だがユリカの後ろでラピスが微妙に笑っていた。

「(おばさん・・・シンさんいいところをつく。)」

ちなみにアキトも陰で笑っていた。

「じゃあ、何のお話ですか?」

みかねたルリが変わりに話す。

「はい、ユリカさんは現在の無人兵器がエースパイロット並に動けると思いますか?」

「無人兵器が?う〜ん無理じゃないかな、そんな高度な機能はないと思うけど。」

「では・・・俺達が戦った六道が、全て無人で動いていたのはどういうことなんでしょう?」

「!?」

シンの言葉に、全員が驚愕する。

「俺は敵からまったく感情が伝わらない、つまり殺気がないことに疑問を持っていました。そしてコクピット部分に攻撃をしたところ、中は無人だったんで す。」

「ちょ、ちょっと待てよ。シンの言うことが本当ならどうやってボソンジャンプしたんだ!?」

リョーコの言うことはもっともだ。しかしルリは何か思い出したような顔をする。

「まさか・・・」

「ルリちゃん、何か思い当たることがあるの?」

アキトの問いにうなずくルリ。

「はい、私達は七年前、似たような敵の襲撃を受けたことがあります。サブロータさんとリョーコさんはご存じのはずです。」

「七年前・・・あったけか?」

「う〜ん、思い当らねえな。」

「ナデシコで新任艦長のテストを行っていた時のことです。あの、南雲率いる火星の後継者との戦い・・・」

「・・・ああ!」

「あの時のことか!」

二人は思い出したようだ。

「えっ、何があったの?」

「これはまだユリカさんと合流する前のことです。」

「ええ、あの時も、突然ボソンジャンプでバッタが出現したんですよ。」

「バッタが?」

「ああ、ひとつだけ思い当たるぜ。提督、ナデシコA時代にもあったろ、ボソン砲ってやつ。」

「!?あの時の艦か。」

リョーコの言葉にアキトも、初代クルーのメンバーも思い出したらしい。ユキナとラピス、シンとタカヤはわからないようだが。

「そう、十二年前に俺は秋山さんとともにボソン砲を持つ艦、「かんなづき」に乗っていた。そしてナデシコAと戦ったんだ。」

サブが昔の自分を話し始める。

「あの艦は、爆弾を送りつけてきたからね。しかもいきなりだったから。」

「うんうんジュン君の言うとおり、なつかしいなあ〜。」

初代クルーが懐かしいといった顔をする。

「私達もまだ若かったわよね、提督。」

「まだ若いです!」

「ミナトさんもユリカさんも、一体どういうことなんですか?」

昔を知らないユキナ、シン、タカヤ、ラピスはついていけず不満顔だ。

「ああ、カラクリだがおおよそ読めたよ。敵はかんなづき級の艦で、六道をボソン砲で送ってきたんだ。」

「アカツキさん、そんなことが可能なんですか?」


「説明しましょう!」


と、いきなりドアが開きイネスが入ってきた。

「イ、イネスさん・・・」

「久し振りの登場ね、ここは私に任せなさい。」

「でも。」

「いいから。さて三人とも、ナデシコA、つまり初代ナデシコが木連と戦っていた時、それは起こったのよ。オモイカネ?」

『はい。』

「戦艦かんなづきのデータを出してくれない?」

『了解』

そうしてウインドウが表示される。

「これが戦艦かんなづき、まあサブロータ君は懐かしいでしょうね。」

「ええ、かつて乗っていましたから。」

「そしてこの艦の最大の特徴が、ボソン砲を搭載していること。ボソン砲とはチューリップを使わないボソンジャンプによって、
  
 敵の内部に直接攻撃をしかける兵器です。有効射程は約100kmといわれているわ。当時ナデシコAはこのボソン砲の攻撃で

 かなりのダメージを負わされたの。ここは初代クルーも知ってるわね。」

「あの時はウリバタケさんの発明で助かりましたよね。」

「しかし、この攻撃で恐ろしいのはそれだけにあらず。このボソン砲の最大のポイントは、ディストーションフィールドを通り越して

 送ることができることなの。」

「フィールドを通り越す?では、直接送り込めるってことですか!?」

「タカヤ君の言うとおりよ。そして先ほどの六道達がもし無人兵器ならば、人間が乗っていなくてもボソンジャンプできるわ。

 前回、つまり七年前私達が戦ったのは「ゆめみづき」、こっちもジャンプの距離は同じくらいだったけど、このかんなづき以上の戦艦が存在するならば・・・ ね。」

全員が考えている。本当に実在するならば、脅威以外なんでもないからだ。

「火星の後継者の新造戦艦かしらね、でもこれだけの艦を気づかれずに離脱させることができるのかが疑問だわ。
 
 さっきの戦闘で付近に反応はあったの、ラピス?」

「付近に反応は無かった。最も、近くのデブリにいたら発見は難しい。」

「そうね、でも考えられるのはこの方法だけよ。ジャンパーで、しかもあれだけの動きをするパイロットはそうそういないわ。」

「しかし、あれだけの動きをする高度な無人兵器は聞いたことがありません。」

ジュンが言うことを、ユリカは考えていた。

「・・・ラピス、過去のデータベースに何か記録はないかな?」

「記録?」

「うん、もしあれが現代の技術でなく、過去の、つまり前大戦で使われていた何かだったとしたら・・・」

ユリカの指摘に、ルリも賛成した。

「ありえますね、もしそうならこの時代に残ってるはずがありません。MSにしろPTにしろ、あまり数がないように、復刻された技術だとしたら。」

「あるいは・・・ネオ・ジオンからもたらされたものかもね。彼女達はMSを多くもっているし、前大戦でも存在していた軍だから。」

ジュンも納得したようにうなずく。

「ラピス、二人でデータを洗いざらい探します。」

「わかった。」

ルリとラピスはそれぞれの席につき、コンソールに手を置いてウインドウボールを展開させる。

「・・・」

全員が黙ってそれを見ていた。

「・・・みつけました。」

「こっちも。」

二人ともデータをみつけたようだ。

「二人とも、それをウインドウに出して。」

「「了解」」

そして全員の前に大きなウインドウが表示される。


「モビル・・・ドール?」


そこに表示されていたのはモビルドールシステムという言葉だった。

「はい、今オモイカネに詳しく表示させてます。」

「オモイカネ、お願い。」

『OK。』

ウインドウが変わり、モビルドールの詳しいデータが表示された。


『モビルドール (MOBILE DOLL) とは、 "MOBILE Direct Opertional Leaded Labor" の略で、旧組織OZで採用された、

 他のパイロットの戦闘データを戦闘アルゴリズムとして組み込んであるモビルスーツ(及びモビルアーマー)のことであり、

 自立行動が可能であるほか、他者が遠隔操作することも可能である。

  人が乗っていないことでスペースに余裕があるため補充の必要性が少なくなるほか、人体が耐え得る以上の高G機動が出来るという効果が

  ある。しかしその反面、戦争がゲーム感覚になってしまい、殺戮を行うにもかかわらずモビルドールで

 攻撃する側は血を流すことがないため、戦争を始めたという責任を感じなくなり、戦争の悲惨さを省みなくなってしまうものとして、

 当時はその存在を否定されていたこともある。しかしその能力は高く、当時は量産機に多く使われていた。』


オモイカネが出した答えは、正確にかかれていた。

「モビルドール・・・まさに戦争の道具だね。」

「痛みも感じず、感情も何もない。だから傷つかない・・・か。」

ユリカとアキトが辛そうな顔で言う。

「とんでもねえな、こんなものが量産されてたら太刀打ちできねえよ。」

「いえ、もう手遅れかもしれません。今まで火星の後継者が動かなかった理由が。」

「モビルドールの量産・・・もう成功してるかも。」

そのルリとラピスの言葉は、大きな意味があった。

「じゃあネオ・ジオンどころじゃねえ!今すぐフォボスへ攻め込もうぜ!!」

「落ちつけリョーコ、今の状態じゃあいくらなんでも無茶だ。」

「で、でもよ。」

「まあリョーコ君の言うとおりだね、僕も先にフォボスを叩いた方がいいかな。」

「俺は反対です、ここはネオ・ジオンのアクシズへ向かった方がいいと思います。」

「シンに賛成です。ここは先にアクシズへ向かった方が。」

シンとタカヤはアクシズへ向かいたいようだ。

「ユリカ、どうする?」

ジュンは最高指揮官のユリカに任せることにした。

「・・・・・・」

ユリカは真剣に、口に手をあて考えている。

「(火星の後継者、ネオ・ジオン。どちらかにいっても片方が手薄になる。でも今動かないと間に合わない。どうすれば・・・)」

「ユリカさん。」

「何?ルリちゃん。」

「いえ、どうやらミスマル司令からの通信のようです。」

「わかったわ、モニターに。」

そうしてミスマルがウインドウに映し出された。

「おおユリカ、ルナツーの防衛ご苦労だった。さっきルナツー司令がお礼を言ってきたよ。」

「お父様・・・でもルナツーはもう。」

「うむ、仕方あるまい。だが君たちナデシコのおかげで救われた命があるのだ。胸を張るがよい。」

「はい!」

「ところでお義父さん、アクシズの方はどうなっていますか?」

「アキト君か、アクシズでは全てのネオ・ジオン艦隊が集結している。寝返った宇宙軍もな。」

やはりネオ・ジオンもかなり戦力を残しているらしい。

「だが、いい情報もあった。現在アクシズ後部にある核パルスエンジンが先の戦闘でダメージを負ったらしい。」

「えっ!?」

「生き残って戻った兵士の話によれば、相当重症らしい。こちらでも確認した、当分やつらは動かないだろう。」

これは貴重な情報であり、ユリカの腹は決まった。

「・・・お父様、お話があります。」

「うん、何かな?」

「私達ナデシコDは、修理が済み次第火星の後継者本拠地、「フォボス」へ向かいたいと思ってます。」

「・・・フォボス、か。」

「今行かなければ何もかも間に合いません。お父様、許可をください。」

「ユリカ、戦力は期待できないぞ。」

「わかっています、向かうのはナデシコのみ。他の部隊はネオ・ジオンの牽制のため集結させてください。」

「・・・・・・」

「お父様。」

「他のクルーは、どういう考えかな?」

ミスマルのウインドウが周りを見る。

「行かせてください。俺は、奴らと決着をつけなければなりません。」

「私も、同じです。七年前の清算をしなければいけませんから。」

アキトもルリも、いや、全員の顔がそう言っていた。

「・・・いいだろう、君たちは独立ナデシコ部隊だ。存分にやりたまえ。」

「ありがとうございます、お父様。」

「だが、やはりジャンプでいくのか?」

「以前はターミナルコロニーのネットワークを奪われました。この前の奪還時は大丈夫でしたが、もしものことがあり、今回もその危険はあります。」

「そうか・・・奴らの戦力はルナツーを落とすほどだ、皆、必ず帰還してくれ。

 しかしすでに全ターミナルには宇宙軍はいない。今はグラナダ、ロンデニオンへ集結しておる。こちらは任せ、行ってきなさい。」

「了解しました!」

「うむ、ルナツー司令部に補給と修理を頼んでおく。頼むぞユリカ、ナデシコの諸君。」

そうしてウインドウが閉じられた。

「みなさん、ナデシコはこれよりルナツーへ入港します。身体を休め、ゆっくり休養をとってください。ラピス。」

「うん、ガイドビーコン確認、これより入港する。」



そしてナデシコDはルナツーへ入港した。次なる決戦に向けて・・・



次回予告

ルナツーに入ったナデシコD。クルー達は新たなる戦いへ向け、休養を取っていた。
だがその中、アキトは悩んでいた。ソロモンでの戦いで変わり始めた少年のことを。そして、待ち受ける宿敵との戦いを。
そしてフォボスでも、全ての準備が整っていた。ナデシコを迎え撃つために。
一方アクシズでは、悲しみを帯びた空気が漂い、蒼き瞳の少年は一人、怒りと憎しみに捉われていた。
その少年をおもう少女の想いが、彼を救うことになるのか。いま決戦へのカウントダウンが始まる。


スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第十八話「守るべきものと倒すべきもの」

ユウイチ「お前は同時に、ルカの命を吸って今ここにいるんだ。」



技紹介 ダイゼンガー


波斬一閃(はざんいっせん)

村正が纏っているフィールドを斬撃としてとばし、敵を斬りつける。


ダブルD・ブーストナックル 正式名称「ディスートーション・ドリル・ブーストナックル」

ダイゼンガーの装備したドリルにフィールドを纏わせ発射する、ドリル・ブーストナックルの進化版。


草薙の閃光

タカヤの全集中力を注いだ渾身の一振り。限界の加速から繰り出される横薙ぎの一閃。






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