スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜

第二十二話「メビウスの輪を超えて」



   アクシズ ナデシコD

「爆破部隊はどう?」

「爆破ポイントまで残り1km。でも・・・ギリギリかも。」

ラピスの報告に、ユリカは机の上で拳を握る。

「(でもこのままじゃ、いつかは。)」

と、

目の前のモニターに白い閃光が二筋通っていく。

「あれは!?」

「ゼラニウム・・・ウイングゼロ!」

そう、激しくぶつかり合いながら目の前で戦う二機は、ゼラニウムとウイングゼロだった。

「ラピス、通信は?」

ルリはラピスに問いかけた。

「何とか拾える。」

「流してください。」

「了解。」

ルリの焦りを含む声、ラピスも同様だった。

他のメンバーも注視している。



一分前


グラビティライフルを発射するウイングゼロ。

アキトはフィールドを再び展開させる。

「ハーリー君、やめろ!」

「うるさい!」

尚も連射をし、マシンキャノンを放つ。

「くっ。」

フィールドも先の戦闘で発生装置に無理をさせすぎ、今もオーバーヒート寸前のようだ。

何とか回避しようと右に逃げる。

しかしハーリーは目でそれを追い、翼に伸ばしていた左手にはグラビティバスターライフルが。

ロンググラビティブレードが飛び出し、それを右に投げつけたのだ。

その先には回避しようとしていたゼラニウム。

「なんだと!?」

迫る剣。この巨体では避けられず、フィールドも限界だ。

やむなくゼラニウムはコンテナからシールドとグラビティライフルを射出し、オーキスを分離させる。

そしてロンググラビティブレードは、主のいないオーキスに突き刺さり爆発する。

「(これが、ゼロシステムの力なのか!?)」

あれは明らかに動きを読まれていた、ニュータイプでないハーリーがである。ゼロシステムを使いきっている証拠であった。

爆風に流されながらもシールドと二丁のグラビティライフルをとり、機体の制御をする。しかし、

「おおおお!」

上空から雄たけびを上げ、ウイングゼロがグラビティライフルを放ちながら急降下してくる。

ゼラニウムはブースターを吹かせ左に回避する。

そのままウイングゼロはライフルをしまい、左肩横から突き出されたビームサーベルを抜く。

ゼラニウムも同時にライフル二丁を腰裏に固定し、右肩からビームサーベルを引き抜いた。

一閃し、互いを軸に戻り二機は相手のサーベルをシールドで受ける。

スパークが起こり、機体が震える。

「あなたは、どれだけ僕から大切な人を奪えば気がすむんだ!!」

ハーリーの脳裏に、始めてアキトと会い突っかかった時が、そして操縦の教授を、武術の教えをして貰っている時のことが思い浮かぶ。

だからこそ、許せなかった。

「ハーリー君、君は戦ってはいけない人間なんだ!」

ウインドウのアキトは叫ぶ。

「何を言うんですか、そんな綺麗事をいつまでも!」

アキトの言葉がさらに怒りを誘う。

「あなたも僕を討つと言ったくせに!!」

「くっ!?」

ゼラニウムはサーベルを弾き、アクシズに向かう。

「逃がすか!」

ナノマシンの輝きが、更に強くなっていた。



そして今、ナデシコの目の前で二機はぶつかり合う。

だがアキトは押されている。ウイングゼロの猛攻に。

グラビティライフルを両手に持ち、ゼラニウムは動きながら連射する。

ウイングゼロも周りながらライフルを放つ。

そのままウイングゼロは一旦離れ、翼からもう一本もグラビティバスターライフルを持つ。

ゼラニウムはそれを見て、右のグラビティライフルを左のグラビティライフルに突っ込む。

お互いが長いライフルを持ち、同時に発砲した。

二つの重力波はぶつかり、消滅する。

だがゼラニウムの方が二発目を撃つが、ウイングゼロは両翼の翼で前を覆う。

フェアリーがゼラニウムの攻撃を逸らしたのだ。

「もうやめろ!これ以上戦って何になるんだ!!」

「あなたを殺すことができる。例え僕が限界を超えても、ゼロシステムを使って殺す!」

そう、本当の限界を超えれば、ゼロシステムは操主の心をも壊してしまうのだ。

意思を持たない人間は人形と同じである。それは、ただの戦う兵器と化すということである。

ハーリーはケンに言われたことを覚えていた、しかし殺意がそれを上回っているのだ。


ナデシコに流れてくる二人の会話、それをルリも聞いていた。

「ハーリー君、やめてください!」


ウイングゼロにルリの声が響く。

「何故そこまでするんですか、そんなにアキトさんが憎いんですか!?」

「・・・」

そしてラピスも、ミナトも通信をいれてくる。

「そんなのはハーリーじゃない。私の知ってるハーリーは、もっと優しい人間だよ!」

「ハーリー君、私に言ってたことは嘘だったの!」

アキトにも、その声は届いていた。

「俺だけじゃない、みんな君のことを思ってるんだ!俺達は戦争するために戦うのは」

「なら何故。」

ハーリーはアキトを睨む。

「じゃあ何故、僕達マシンチャイルドは生まれたんですか!」

「!?」

「それは人が分かり合えないから、戦いが終わらないからではないんですか!」

「・・・それは。」

今まで貯めていた鬱憤を吐き出すように、彼は叫ぶ。

「僕は戦うために造られた命です。それは人が戦い続けるから、そのためだけに造られた。」

アキトは茫然としている。

「僕もナデシコで多くの戦いを見てきた、平和が来ると信じて。それでも人は戦いをやめず、変わらなかった。

 地球も、木連も、コロニーも!」

ハーリーはモニターを強い眼差しで見る。

ゼロの影響で光を失ったように見える蒼い瞳、しかしアキトにはその奥に、今までで一番の気迫を感じていた。

「あなたも、自分の戦いにラピスを巻き込んでいただろうに!」

「!?」

ラピスが、口をつむぐ。

「人が変わらない限り、こんな戦いが繰り返される・・・それはもう嫌なんです!」

悲しそうな表情でハーリーは言う。

ブリッジメンバーも、ハーリーの思いに言葉が出なかった。

だがアキトは、首を横に振りながら言う。

「ハーリー君、俺と同じ過ちを繰り返してはだめだ!!」

だがハーリーは、否定をこめた声で叫ぶ。

「僕は・・・僕はあなたとは違う!」

「今の君は、かつての俺と同じだ。いい加減目を覚ませ!」

「僕は復讐で戦っているんじゃない!!」

ウイングゼロはグラビティライフルを放つ。

「では何故戦うんだ!」

ゼラニウムは回避し、まっすぐにウイングゼロを見る。

「ローズもルカも、造られた存在のマシンチャイルドである僕を好きだと言ってくれたんです。戦争のために造られた僕を。」

「なら君はその力を、何のために手に入れたんだ!全てを破壊して、また新たな憎しみを生み出すつもりなのか!!」

「違う、僕はこの力で彼女を守るためだ。もう失いたくないんだ!」

「じゃあこれが、本当に君が望んだ答えだったのか!」

ゼラニウムは落下するアクシズを指さす。

「今まで僕は逃げていたんです・・・もう僕は最後まで、自分から、テンカワ・アキトからも逃げないと決めたんだ!」

「その想いが、意思が、未来までも殺そうとしているのがわからないのか!」

「あなたがそれを言うんですか!ルカを殺し、ローズまでも殺そうとしたあなたが!プリンスオブダークネス!!」

その言葉に、アキトの脳裏に守り切れなかった人たちが浮かぶ。

「そうだ、俺は一度過ちを犯した。知っているからこそ、俺達が戦う必要はないともう君も気付いているはずだ!!」

その言葉に、ハーリーの顔に激しい怒りを浮かばせる。

「・・・あなたは、そうやってまた逃げるんですか!」

ビームサーベルを取り出し、ゼラニウムへ斬りかかる。

「何!?」

ゼラニウムもビームサーベルを取り出す。

そのまま互いのビームサーベルがぶつかり合う。

そしてハーリー口調が、いつもの彼のようになる。

「あなただって気付いてるはずです。あの二人の・・・」

そのエネルギーがスパークを散らす。

「ルリさんとラピスの気持ちを!」

「!?」

ウインドウの二人も、驚愕に目を開いていた。

「二人がいつもどんな気持ちでいるか、何も知らない。」

「・・・・・・」

アキトは目を開き、黙っている。

ハーリーはルリに告白する前から、彼女たちがアキトをどう思っているのか気付いていた。

そして何も出来ない自分に、彼女達を助けてあげることも出来ないのが悔しかった。

「あなたのことを、どれだけ想っているか・・・」

互いを軸にしながら押し合う。

「テンカワアキトという一人の男が好きだということを!」

「ハーリー君・・・」

いくら鈍感なアキトも、ナデシコに戻ってからの二人の様子に薄々だが最近になって気づいていた。

よく自分を見ていたことにも。だが自分にはユリカがいる。だから答えることも出来ず、黙っていたのだ。

「二人が苦しんでいるのに、なのにあなたはいつまでも答えようとせず、逃げてばかり・・・」

徐々に均衡が破れ始め、ゼラニウムが押されている。

「そんな奴に・・・」

IFSが強く光り、ビームサーベルの出力が上がる。

「逃げてばかりのお前なんかに・・・」

背部のウイングが展開される。蒼き瞳に、強い意志が光る。口調も、先ほどのように乱暴になってきた。

「負けられないんだー!!」

ブースターから強い光りが飛びだし、ゼラニウムを押し込める。

そしてゼラニウムはナデシコのフィールドにぶつかる。

「・・・君は、君は。」

アキトは己の中で納得していた。

彼は、変わっていない。

どこまでも真っ直ぐで、優しいままだった。自分とは違う、ただ己の道を最後まで進もうとしているからだ。

大切な者を守ろうという想い、それはアキトもよく知っていた。

自分はまだ、彼のことを子供だと思っていたのだ。

今の彼はこんなにも強く、そして成長し目の前に立ちふさがっている。

さきほど感じたものは、これだったのだ。

アキトは七年前の、ユリカのために戦ったことを忘れてもいない。

しかしそれは同時に多くの悲しみを、憎しみを、破壊を生み出してしまっていた。

今のハーリーは自分と同じやり方で、同じ悲劇を繰り返そうとしているのだ。

「ハーリー君!」

アキトのIFSも強く光る。

バーニアがうなり、ビームサーベルを弾いた。

「なら・・・俺は君を倒す。俺と同じ思いを繰り返させないためにも!君の思いがそうなら、俺が止めてみせる!!」

モノアイがうなり、ゼラニウムはウイングゼロへ向かった。




「ええい、くそ!」

リョーコの悪態を遮るようにファンネルが飛び交う。

「ちょこまかちょこまかと、いい加減にしやがれー!!」

グラビティライフルを撃つが、巧みに動くファンネルは捉えられない。

一機がファンネルを、もう一機はそれを援護という、この双子のコンビネーションは辛口だ。

「リョーコ、止まるな!」

動きが鈍くなったアンスリウムを見、サブロウタが叱咤する。

「わかってらあ、ってサブ!?」

サルビアの後ろにエリのヤクト・ドーガUが迫っていた。

「もらいです。」

「そう簡単に!」

何とサルビアはバーニアの角度を変え、下半身を上に上がらせたのだ。

「なっ!?」

ビームサーベルを突き刺そうとしていたが、その下を通過していく。

通り過ぎ、一回転したサルビアが両肩のツイングラビティキャノンを向ける。

「!?」

「悪いな。」

二門の砲門がうなり、白いヤクト・ドーガUを襲った。

フィールドを展開したが、間に合わず右肩のファンネル・ラックが破損する。

「・・・よくも!」

「おおっと。」

激昂したエリはサルビアへ腰のグレネードを発射する。

しかし単調な攻撃がサルビアに当たるわけが無い。

サルビアはマシンキャノンで迎撃し、後退した。

「エリ、無事?」

「ええ・・・さすがナデシコのパイロットね。」

シズの通信に答えるが、表情は硬い。

「私が行く、援護お願い。」

「わかったわ。」

黒のヤクト・ドーガUが前進し、ファンネルを飛ばす。

「そこ。」

ファンネルのビームが動き回るアンスリウムに向かう。

「当たるかよ!」

リョーコは機体をジグザグに動かし、急接近する。

ここに来て、シンとのシミュレーションでの模擬戦が役にたっていた。

「おらあ!!」

「くっ・・・」

ビームサーベルをグラビティナイフで切り裂く。

援護に入るはずのエリはサルビアとの戦いで動けない。

「まだ。」

ビームサーベルを捨て、アンスリウムの両腕を押さえる。

「何!?」

「これで。」

至近距離からグレネードを発射した。それはすぐさま爆発する。

「ぐわああ!」

「ううう!」

そして二機の下半身を爆炎が襲う。

「ちっ、右脚にエネルギーが。」

「・・・脚部バーニア損傷、でもまだ。」

二機は直前で被害を減らすためバーニアを使い最小限のダメージに抑えていたのだ。

「リョーコ!?くそ!」

「シズ!?もういい加減!」

サブとエリも援護に行きたかったが、下手に背を向けられなかった。



一方、トールギスは少しずつ追い詰められていた。

「くっ、まだやられるわけにはね!」

やはり強化されているミレイの実力は、オールドタイプのアカツキを確実に押していく。

トールギスは他の二機と比べて強化ユニットなどは付けていないのだ。

ファンネルに攻撃をフィールドで受け続けていても、そこにグラビティライフルやミサイルを撃ち込まれれば耐えられない。

ミレイはそれをわかっているのだ。

「(このままじゃ落とされる、か。賭けにでるか!)」

しかしアカツキには秘策があった。

このトールギスを開発した時、同時期のアンスリウム、サルビアにはないスキルがあったのだ。

アカツキが独断でいれた力、武装に乏しいトールギスの最終手段である。

「いくぞ!」

フィールドを解除し、一旦後退する。

「なにを?」

それにミレイは嫌な予感を感じた。


「トールギス、リミッター解除!!」


アカツキの言葉と共にトールギスはモノアイが光り、背部から白いマントの様にエネルギーの放出が起こった。

その姿はまさに騎士と呼ぶに相応しい姿だった。

これはシンのファントムと同じ、一定時間の解除である。

「このエネルギーは・・・拙いわね。」

「言っただろう、このトールギスを甘く見ないでくれと。」

そして、メガグラビティキャノンの先の銃身が中間まで左右に曲がり、グラビティサーベルとなる。

「!?」

アンスリウムのナイフより長く、エピオンやウイングゼロのブレードよりも短い。

威力もある、振り回しに適した剣となった。

「僕は銃の方が好きだけどね・・・斬る!」

横に振るい、アップしたスピードでヤクト・ドーガUに奔る。

「させないわ!」

「はあああ!!」

ミレイも自分の直感に全てを託す。

バーニアの輝きと共にトールギスが奔る。

「(下ね!)」

高速からの一閃、それはミレイの読みどおり下からの攻撃だった。

「まさか!?」

「残念だった・・・え!?」

しかしやはり機体の加速は凄まじく、かわしきれなかったらしい。

左の足首から下が消えていた。

「くっ、まさかオールドタイプに・・・」

「(拙い、今のがかわされたのは計算外だ。)」

そしてリミットがきて、マントが消える。

「互角ね。」

「・・・勝つのは僕さ。」

そうして再び銃を向け合う。



「破斬一閃!」

ダイゼンガーが振るう斬艦刀・村正から漆黒の三日月が飛び出す。

「せい!」

だがフェンリルは片手に持ったファング・スラッシャーを展開し、それを真ん中から切り裂く。

そのまま両手のファング・スラッシャーを投擲した。

「くっ。」

タカヤは迫り来る二つの牙を見、村正を振り回し弾き返したのだ。

「やるなタカヤ、だが・・・」

ユウイチは余裕の表情を見せる。

「俺には勝てないぜ、今のままじゃな!!」

返ってくるファング・スラッシャーを掴み、それを持ちながら斬りかかる。

ダイゼンガーは両手の手甲でそれを受け止めた。

「俺には守らなきゃいけねえ者がある。例えタカヤ、お前が相手でも負けるわけにはいかねえんだ!!」

「俺だって同じだ、守りたいものがいるから・・・戦えるんだー!!」

両手を上に上げ、膝蹴りをフェンリルへ喰らわせる。

吹き飛ばされたフェンリルだが、すぐに体勢を戻し右手のファング・スラッシャーを投擲する。

それはダイゼンガーの左肩を切り裂いた。

「ぐう!?」

シンも、ナデシコクルーも知らないことがあった。

自分の父親がタカヤを剣の道へ招き、そしてタカヤの武も剣も、ユウイチに教えてもらっていたことを。

故にユウイチはタカヤの太刀筋を一番知っている人間でもあり、タカヤにとっては最悪の相手だったのだ。

タカヤが己の剣を高みへと昇らすのは、師であるユウイチを越えたときなのだ。

「俺も何もしてなかったわけじゃない!己の剣を極め、鍛えてきたんだ!!」

ダイゼンガー内で剣を握り締め、フェンリルを見つめる。

「俺を超えるか、タカヤ!」

「超えてみせる・・・ユウイチを!!」

フェンリルの素早い蹴りをかわし、タカヤは叫ぶ。


「決して退かず、立ち向かえと!死んだ親父がいつも言っていた言葉だ!!!」

「お前の親父さんか、今となっちゃ懐かしいな。だが守るものは俺だって同じなんだよ!!!」


ユウイチの叫びも響き、二機は離れ再び構えをつくる。

「うおおおおおお!!」

「あああああああ!!」

二機の拳が激突し、真空の世界でも気迫が辺りを埋める。

「・・・ん?ローズ!?」

だがユウイチはモニターの片隅に映る機体を見つけ、そしてその先の閃光を見た。

「ハーリー!くそ!?」

迫るダイゼンガーをうまくかわし、右胴に蹴りをいれ別の場所へ向かう。



   アクシズ後部

Hi−νガンダムはバルカンを撒き散らし後退する。

「くそ、核パルスのフィールドか・・・」

すぐ下には火を吹く核パルスがあるというのに、フィールドが展開されており入れない。

「!?上。」

脳裏に奔る殺気、上を見ると赤い機体、ナイチンゲールが向かってくる。

「ファンネル!」

セレスの叫びと共に両肩から赤いファンネルが飛び出す。

メガ粒子を放ちながら不規則に動く。

Hi−νガンダムはメガ粒子の嵐を最小限の動きでかわしていく。

「(だが、今は核パルスに取り付くのが先だ。)」

グラビティライフルを浴びせるが、簡単には当たってはくれない。

そこでHi−νガンダムは突如三つのダミーを放出する。

「ダミー!?」

ナイチンゲールはそれを避けるため上昇するが、そこにはフィン・ファンネルの姿が。

「!?」

「当たれ!」

放たれるメガ粒子。セレスは機体のシールドで何とか防ぐ。恐るべき反応速度だった。

しかし先ほどのダミーが爆発し視界がふさがれる。

「くっ、また同じ手を・・・いない!?」

そこにはすでにHi−νガンダムの姿が無かったのだ。

周りを索敵するが気配を感じられなかった。

そして艦隊を抜けてきた連合のエステバリスがナイチンゲールに向かってくる。

「抜けられ始めたのね、仕方ない!」

セレスは機体をエステバリスたちに向かわせ、血祭りにあげていく。

一機をビームサーベルで、もう一機をグラビティライフルで、そして二機をまとめて拡散グラビティブラストで破壊した。

「シン、どこに?」



セレスを撒いたシンは機体を核パルスへ向かわせていた。

「ん?」

しかしその途中に一隻のムサカが止まっていたのだ。

「何故こんな所に・・・そうか、セレスめ!」

何かに気付いたシンはフィン・ファンネルを全て射出し一斉にメガ粒子を放つ。

ムサカは回避も行おうとせず全弾を喰らい、Hi−νガンダムは後方にさがった。

そして戦艦とは思えないほどの大爆発を起こす。

「やっぱり核か・・・」

読みどおり、ムサカは核を積んでいたようだった。

恐らく確実に地球を寒冷化させるためだろう。

「次は核パルスだ。」

シンは、機体を核パルス前のフィールドに止める。

「こいつの全弾くれてやるぜ。」

腰裏のニュー・ハイパーバズーカを取り出し、ロックオンした。

「いけよ!」

特殊弾頭のバズーカ弾が連続で放たれ、爆炎がフィールドについてく。

「フィールドレベルが下がったか、行くぞ!」

そして弾切れのバズーカを捨て、十分な加速から左のシールドを突き刺す。

フィールドバスターシールドが展開され、スパークとともに僅かな隙間が出来た。

そしてHi−νガンダムは中に飛び込む。

「よし、後は止めるだけだ。」

そのまま進み、火を吹く核パルス部に到着した。




   アクシズ内部

アクシズに侵入した爆破班は順調に進んでいた。

だが突然アクシズ全体が揺れだす。

「な、何だ!?」

「これは・・・」

「みなさん、付近の何かにしがみついてくださいよ!」

「くっ、拙いな。」

「何かが爆発したようだな。しかしこの威力は?」

ウリバタケ、香織、プロス、ツキオミ、ゴートは必死にプチMSを操作し耐えていた。

「な、何だったんでしょうか?」

「さあな、だが爆弾ってレベルじゃないようだが。」

迫り来る破片があったが、プロスやツキオミ、ゴートのプチMSがアームで叩き落としていった。

「ん?」

だがウリバタケが何かを発見したようだ。

「こいつは・・・外に繋がってる?」

それは一本のエネルギーケーブルのようだったが、太さが普通とは違っていた。

「・・・そうか、こいつはフィールド用のか!おい、みんな!!」

「何ですか?」

「ここに外の核パルス部に張っているフィールドの維持エネルギーのケーブルがある。多分相転移エンジンからのエネルギー伝達用だろうな。」

「じゃあ。」

「香織が思ってる通りさ、こいつをこうしてっと。」

ウリバタケがアームを操作し、エネルギーケーブルを切断した。

「これでいいはずだ。」

「では急ぐぞ、時間がない。」

ゴーとの声とともに五機は再び坑道を走っていく。



「はあああ!!」

ウイングゼロの加速からの蹴りがゼラニウムのシールドに当たる。

「ぐっ!?」

蹴りの反動で若干下がったウイングゼロは、右手にビームサーベルを持ち突撃した。

しかし振り抜く直前に体勢を立て直したゼラニウムが両手でウイングゼロを止める。

「!?」

「ハーリー君、もうやめるんだ!!」

アキトのウインドウが大きく表示される。

「離せ!」

ハーリーは機体を離脱させようとするが、両手をゼラニウムに押さえられていた。

お互い動けないのだ。

「ルリちゃんとラピスのことを大切に思っている君とは、これ以上戦いたくないんだ!」

「あなたはいつもそうだ!そうやってまた逃げようとする!!」

「違う!二人には君が必要なんだ。俺も、ナデシコのみんなも!」

「嘘だ!そんなことあるわけない。」

「どうしてそう思う!?」

「僕はあなたを殺そうとした。今もこうして・・・だから僕をナデシコの人たちが、ルリさんやラピスが許すわけない!」

「あれは君の意思ではなかったはずだ!」

「・・・それでも僕は、あなたが許せないんだ!」

「過去に囚われたまま戦っている君のその力は、本当の「強さ」じゃない。偽者の、まやかしの力だ!」

「!?」

アキトの言葉に、ハーリーじゃ気圧される。

「思い出せハーリー君!ナデシコでの日々を。昔平和を造ろうと俺達が誓ったことを!!」

アキトはかつてハーリーとの訓練で、いつかいっしょに戦おうと言っていた。

ハーリーも自分の信じる正義のために、アキトを目指し励んでいた。

「く、ううっ・・・」

そのことが思い出され、ノイズとして頭に流れる。

そして、アキト達と肩を並べて戦う自分の姿が浮かんだのだ。

「(何でこんなビジョンが?)」

ゼロシステムが見せる光景は多くある。しかしその中でもこれはひときわ強くだされていた。

ハーリーの脳裏に、初めてナデシコに来た日からの思い出が浮かび流れていく。

「僕は、僕は」


「聞くな、ハーリー!!!」


ハーリーとアキトの耳に届く声は、ユウイチだった。

「コロニーを潰していた貴様が、何をのこのこ平和だと!?ふざけるな!!」

フェンリルがファングスラッシャーを投擲する。

「くっ。」

やむえずアキトは機体を離しシールドで弾く。

「おらあああ!」

そのまま殴りかかるが、かわされる。

「ちっ。」

アキトは舌打ちし、両手のグラビティライフルを発砲する。

これにフェンリルはフィールドを張るが、後方からダイゼンガーが来た。

「ユウイチー!」

そのままファイナルブラスターを撃ち、フェンリルは耐え切れず吹き飛ばされる。

きりもみしながら飛ぶフェンリルに、ハーリーはウイングゼロを向かわせようとした。

「ユウイチさん!?」

だがその前にゼラニウムが立ちふさがる。

「ハーリー君!」

「・・・!?」

ゼラニウムはライフルを仕舞いビームサーベルを右手に持つ。

「憎しみのまま、殺意に任せて戦ってはだめだ!君は!!」

「くっ・・・うわあああ!!」

だがウイングゼロはビームサーベルを振り被り、ゼラニウムはビームサーベルで受け止める。

「何も、何もわかってないくせに!テンカワ・アキトー!!」

ナノマシンの輝きがいっそう強まり、ウイングゼロのパワーが上がりビームサーベルを弾く。

「ぐうっ!?」

そしてウイングゼロは両手でグラビティバスターライフルからブレードを出して持ち、天に掲げるようにあげる。

背部の翼からバーニアの光があふれ、ブレードを横にし突撃してきた。

だがゼラニウムはビームサーベルを手に向かっていき、そして・・・交差した。

グラビティバスターライフルの中間に線が入り、爆発する。

「あ、ああ・・・」

ハーリーは呆然としながらグラビティバスターライフルの残骸を手放す。

「(何で、何で倒せない?)」

これが、アキトの言っていた「強さ」だというのか・・・



ユウイチはフェンリルの制御をしながらハーリーのことを心配していた。

「(テンカワ・アキト・・・どこまでハーリーを苦しめる気なんだあの野朗!)」

ハーリーからアキトのことを聞いていたユウイチは、むしろ怒りが沸いていたのだ。

ルカを殺したのも許せないが、七年前コロニーを多く潰した男が平和などと口にしていたのだ。

「(それに女の気持ちも気付かねえ野朗に、ハーリーを責める権限なんてねえだろうが!)」

だが、今の彼の敵はアキトではない。

「タカヤ・・・!」

かつて自分とともに技術を高め、自分が教えをしていた男。

そしてタカヤも俺も、やはり同じらしい。

アクシズのことが頭から消えるぐらい、こいつとの戦いは・・・血が、身体が熱くなる。

俺もタカヤも、ようは戦闘狂なのかもしれない。

試合をしたことも何度もあった、そのたびに楽しくなる。

タカヤも負けても立ち向かってくる、そのたびに倒す。

だが今はわからない、どちらが上かは。

「いいぜえ・・・ここまで俺を追い込むとはなあ。」

レバーを握る手に力が入る。

「沈め!」

ダイゼンガーが村正を振り上げ向かってきた。しかしグラビティブラストが突撃を止める。

「レミーか!?」

そう、それは後退していたレウルーラだった。

「ユウイチ、無事?」

「レミー・・・」

「さがりなさい、前に出すぎ」



「男同士の間に入るな!!」



突如ユウイチが怒声をあげ、レミーを睨む。

「なっ。」

「引っ込んでろ!お前が出るとこじゃねんだよ!!」

それだけいい、ダイゼンガーに突っ込んでいく。



   レウルーラ ブリッジ

レミーはブリッジで呆然としていたが、気を取り直す。

「・・・はあ、わかったわよ。レウルーラは連合戦艦を撃滅する。全砲門、スタンバイ!」

「(核搭載ムサカが撃墜されてしまった、もうこれ以上は!)」

レウルーラはアクシズに接近する連合艦へ二連装グラビティブラスト砲門を全て向ける。

「放てー!!」



   アクシズ 核パルス部

セレスはムサカの撃墜に、そしてフィールドの消失に気付いていた。

「ムサカも、フィールドも!?・・・ナデシコに上陸されたのね!」

そのまま機体を核パルス部に向かわせると、一つのノズルからの噴射が消えた。

「ノズルを!?シン、これ以上は!!」

赤き彗星は加速し向かった。


シンは機体のビームサーベルでノズル部の動力パイプを切り裂いていた。

「二つ目・・・!?」

「(ふふふ。)」

だが、突如脳裏に女の笑い声が聞こえた。

「何だ?」

目線をモニターの右から左に移す。

「今のは・・・セレスじゃない、よな。」

そしてまたビームサーベルを振り上げた時、

「(あなたは彼と同じね。)」

「!?」

またも聞こえる。

「誰だ!」

怒声をだすが、周りには誰もいない。

「(こうやってあなたを見ることが出来る・・・でも私は過去のものなのよ。)」

その言葉が呟かれた時、頭の中に一つの言葉が浮かぶ。

「ラ、ラ、ァ・・・?」

シンは気がついていない。今コクピットの周りが若干の光に包まれていることに。

しかし、それを遮るように強いプレッシャーを感じた。

「ちい!」

シンは機体を上空に上げる。

そこに放たれる拡散グラビティブラスト。

プレッシャーがシンを襲う。

「シン!」

ナイチンゲールがビームサーベルとビームトマホークを取り出しクロスしながら切り裂こうとする。

Hi−νガンダムも左のファンネルラック上部からもう一つのビームサーベルを取り出し受け止めた。

「これ以上は!」

「くそ、こんなことしてる場合じゃあ。」

Hi−νガンダムの背部のファンネルラックが翼のように展開され、青と白銀に染まったフィン・ファンネルが射出される。

シンはタイミングを見計らい、一気に下がる。

そこに不規則に動くフィン・ファンネルがメガ粒子を放ちながら飛び交う。

だがセレスはビームサーベルとビームトマホークを使いメガ粒子を防ぎ、避けながらシールドの下にあるミサイルを放つ。

そのミサイルを右腕のバルカン砲で迎撃した。

「(さすがセレスだ、でも・・・)」

シンはある感情が芽生えていた。

先ほどの女の声が聞こえてから、セレスとの戦いに疑問が生まれていたのだ。

「セレス、お前はまだ戦うというのか?」

「何を!?」

「俺達は・・・分かり合えるはずだろう!」

そのシンの真剣な表情にセレスはひるむ。

「もうやめるんだ、こんなことは!」

「ふざけないで。私達は百年前からの争う血筋を引いているのよ、私も今の連合を許す気はないわ!!」

「過去に縛られても、人は変わることは出来ないぞ!」

「そういう風にしたのは自分の保身しか考えない連合軍、そしてアースノイドせいよ!

 あなただって、その力を無駄にし愚かな軍に使われていることに気付かないの!?」

「俺は・・・兵器じゃない。自分の意思でここにいるんだ!」

「連合から見ればあなたは一つの兵器としか見ていない。いつもそう、ニュータイプを戦いの道具としか思ってないから、

 同じ過ちが繰り返される!」

激昂し、ナイチンゲールは再び両手の武器で切りかかってくる。

「くっ。」

シンはとっさに両手のビームサーベルを一つに繋ぎ合わせ、右腕でそれを掴む。

「なっ。!?」

そして一本になった筒から、両端にビームサーベルが生まれる。

ツインビームサーベルはナイチンゲールとビームトマホークを同時に受け止めた。

空いた左手はシールド下から出された予備のビームサーベルを掴み、ナイチンゲールに振り払う。

セレスは機体を後退させたが、ビームサーベルはナイチンゲールの右胴をかすり、スパークを起こさせる。

そのままHi−νガンダムは左手のビームサーベルを投げた。

ナイチンゲールはフィールドを展開しそらしたが、頭部と右腕のバルカンを撃たれ動けなかった。

Hi−νガンダムはきびすを返しアクシズの上部へ向かっていこうとし、ナイチンゲールはすぐさま拡散グラビティブラストを放ったが、

岩に阻まれ届かない。そしてナイチンゲールに警告のウインドウが表示されていた。

「えっ、パワーダウンですって!?くっ。」

だが迷ってる暇はなく、Hi−νガンダムの後を追っていく。

そしてしばらくすると、アクシズにあるMSのハッチにHi−νガンダムの姿を見つけた。

しかし動かないことに不審を抱いたセレスは、コクピットが空いてるのに気がつく。

「まさか、中から直接破壊する気なの!?させる訳には!」

セレスも機体を周りの鉄骨に掴ませ、スーツのエアを、拳銃を確認し、腰につけるミサイルラックを装備し中に入っていく。




   アクシズ内部

「香織達、まだ上がってきてないのか・・・来たか。」

シンは香織達のことに気付き、迫り来る気配に意識を向ける。

そして手榴弾をセットし内部に入っていく。

セレスは薄暗い通路を浮遊しながら進んでいた。

シンは息を殺し、セレスが近付く気配を感じワイヤーを引っ張る。

ワイヤーに留められていた安全ピンが外れ、手榴弾が爆発するがセレスはとっさにエアを噴射し走り抜けていた。

「かわされた!?」

シンは驚きそのままむき出しの岩などで入り組んだ場所に入る。

セレスもすぐに来たようだ。

『セレス、お前はそんなにアースノイドが憎いのか。』

「!?」

入り組んだ地形に、シンの声が響く。

『無理矢理力で人を従わせようとすれば反発が起こる。そんなことも分からないお前じゃないだろう。』

「・・・四方から電波が?」

セレスはシンの言葉に顔をしかめながらも、冷静に状況を判断していた。

『こんな革命を起こしても、理想などではないただの夢物語だ。』

セレスは声のするほうに銃を撃つが、それは小型の発信機だった。

『夢のようなことを言って世界が変わると思っているのか!』

その言葉にセレスは激昂する。

「私は、世直しなど考えていないわ!!」

「そうかよ!!」

「!?」

とっさにシンが通ったほうに銃を撃ち、すぐさまエアを使い追いかける。

シンは無重力を利用し上の方に飛び上がる。

そして手に持っていた手榴弾を投げる。

それを撃ち抜き、セレスの足を止める。

爆炎が舞う中、セレスはシンに向かって腰のミサイルを撃つ。

「くっ。」

それは直撃しなかったが、拡散した岩がヘルメットのバイザー部にヒビを入れたのだ。

吹き飛ばされたが受身を取り、シンは応急テープですぐにヒビを塞ぐ。

目を向け、すぐにセレスの人影を確認し拳銃の弾丸を全て撃ち込む。

セレスはそばの岩陰に隠れ、腰のミサイルラックを放るとそれに銃弾が命中した。

その隙に躍り出て銃を撃つが、すでにシンは外に出ていた。

セレスはナイフを構え、エアの力で加速する。

「ちい!?」

シンもナイフを構え、岩に足をつけナイフを受け止める。

しばらく押し合うが、やはり男と女で力ではシンが上だった。

しかしセレスは無重力の中身体を沈み込ませ右手で岩をつかみ水面蹴りでシンの脚を払う。

「うわっ!?」

シンは両足が宙に上がり、無防備な背中をさらしてしまう。

「もらったわ!」

しかしシンは仰向けのままエアを噴射し、セレスからの攻撃をかわしたのだ。

シンはそのまま飛んでいき、うまく調整し再び地面に足をつく。

「セレス、お前はそこまで人を信じられないのか!?」

「私は宇宙に出た人の革新を信じてる。いつまでも地球というゆりかごにいては人は永遠に分かり合えないのよ!」

「確かにそうかもしれない、だがお前のやり方ではいたずらに戦火を広げるだけじゃないのか!」

「強い力を持っても有効に使おうとしない貴方に言われたくないわ!」

「・・・セレス。」

シンはそのまま外に出て行く。

セレスも追いかけ、愛機のコクピットに滑り込んだ。

機体を両者は起動させ、再び飛び上がる。




   アクシズ内部

「爆破準備完了です。」

「こっちも終わったぜ。」

整備班の二人が爆破の準備を終え、三人に通信する。

「では行きましょう。あまり時間はありません。」

「しっかり付いて来い。」

「ナデシコ、ナデシコ・・・だめか、さきの影響で通じないようだ。戻るぞ。」

ゴートがナデシコに通信が繋がらないことを知り、時限爆弾はあと数分で爆発する。

「急ぐぞ、我々も巻き込まれる。」

そして五機は元来た道を全速で戻っていく。



   ナデシコD ブリッジ

「ユリカさん、爆破班帰還してきます。」

「わかりました、フィールド解除。」

そしてフィールドを解除した瞬間、

「キャア!?」

目の前にギラ・ドーガが降り立ち、モノアイがブリッジを捉える。

今は回収中でフィールドを張れない。護衛のメンバーは全員動けない状態だった。

「あっ・・・」

ユリカの呆然とした呟きがブリッジに浸透し、全員は向けられる銃口に目を閉じた。


「させるかよ!」


だがその時、聞き覚えのある声が響きギラ・ドーガが吹き飛ばされる。

「落ちなさい!」

そしてグラビティブラストの直撃を喰らい爆発する。

「・・・?」

いつまで経ってもこない攻撃に、ブリッジクルーは目を開く。

そこにいたのは・・・二機のアルストロメリア・カスタムだった。

「ナデシコ、無事か?」

「あ、あなたは。」

ジュンは見覚えのある声にようやく合点がいったという顔をする。

「こちら「スターズ」のサコミズ・マサシ。」

「同じくエリス・バーティーです。」

「き、来てくれたんですか。」

ルリの言葉に二人は頷く。

「あの時助けてもらったしな。」

「今度は私達が助ける番です。急いでください、援護します。」

そして二機はナデシコに迫る敵機に攻撃を仕掛ける。

「ラピス、収容は?」

「もうすぐ、来た。」

モニターにナデシコの下部へ入っていく五機のプチMSが映る。

「収容完了。ハッチを閉じる。」

「ミナトさん、浮上してください。ラピス、フィールド展開。」

「「了解。」」

「ユキナ、ウリバタケさんに通信を。」

「了解、ジュンちゃん。」

そうして爆破班の姿が映る。

「提督、セット完了だ。そっちにタイマーを送るぜ。」

そうして時間のウインドウが表示された。


『5・4・3・2・1・0』


ウインドウ内の数字がゼロを示す。

そして・・・アクシズに内部から炎が上がり、亀裂が走った。



   アクシズ宙域

二機と二機はお互いが一歩も譲らず戦う。

だが張り詰めていた均衡が破れ始めた。

「リョーコ!」

「おお!」

サルビアが全武装を、アンスリウムがグラビティナイフを持ちヤクト・ドーガ二機に突っ込む。

「エリ!」

「シズ!」

エリとシズもファンネルを一斉に飛ばし、機体を走らせた。

「「当たれー!!」」

目の前を縦横無尽にかけるメガ粒子の嵐をアンスリウム、サルビアは駆け抜けていく。

「これが、年季の違いってやつだぜ!!」

「女は度胸だ、行けよー!!」

肩や脚部をメガ粒子が当たっていくが、二機は交差しながら進み、そして・・・


「「往け――!!!」」


サルビアの全ミサイルがアンスリウムの両脇を通って向かい、それをかわした二機はツインレールガトリングガンを喰らう。

フィールドで防いでいるが弱まり、そこにアンスリムのグラビティナイフが高速の一撃。

二機のフィールドが消え、迫ルサルビアがツイングラビティキャノンを撃ち、上からアンスリウムが再び突撃した。

グラビティキャノンが二機の頭部を吹き飛ばし、グラビティナイフが二機の武装を排除したのだ。

「「きゃあああ!?」」

エリとシズは凄まじい衝撃に襲われ、ヤクト・ドーガUはほとんど動けない。

二人は死を覚悟したが、アンスリウムとサルビアは背を向けていたのだ。

そして、通信が来る。

「さっさと帰りな。」

リョーコがそれだけ言い、二機は浮上するナデシコDに向かって飛んでいった。

取り残された二人は呆然としていたが、その時アクシズの異変に気付く。

「エリ・・・」

「うん・・・負けたね。私達は。」

そうして、残っていたバーニアを使いレウルーラに戻っていく。



「くっ。」

ミレイはトールギスの攻撃に歯軋りしている。

やはり左足をやられたのは厳しかった。

「トールギスにここまで付いてくるなんてね。」

アカツキもパワーが落ちていることに気付いていたが、あと一撃当てたほうが勝ちだったのだ。

二機はすでに銃を撃つのをやめ、ビームサーベルで斬り合っている。

スパークが二機の間で起き、距離を一定に保ちやっていたがアカツキは冷静に見ていた。

「(狙いは・・・やはり。)」

そして、弾き後ろへさがる。

「(さがった!)」

それを見てミレイは一気に詰め寄ろうとした、しかし・・・

「えっ!?」

突如トールギスは急加速してきたのだ。

「しまった!?」

ミレイは慌てて避けようとしたが、左足首がないので不安定な格好になってしまう。

「・・・!?」

そして目の前に迫るビームサーベルは・・・直前で止まる。

「?」

「僕の勝ちだね、中々強かったよ。」

アカツキはウインドウ内で微笑み、機体を反転させる。

「君の仲間だろう、連れて行って上げな。」

そうして指差す方向には、かろうじて認識できる二機のヤクト・ドーガUの姿が。

「あなたは、そのために?」

「さあね、僕は女性にあまり乱暴なことをしたくないだけさ。」

そうして歯を光らせる。

「・・・私、優男は嫌いです。」

「ありゃ。」

「でも・・・戦士としてのあなたは、嫌いではありません。」

「・・・そうかい。じゃあね。」

トールギスはバーニアの輝きを残し去っていった。



「うおおお!!」

「はあああ!!」

ダイゼンガーとフェンリルが、互いの機体をぶつけ合う。

どちらも退かず、けっしてさがらない。

弾かれては向かい、それを繰り返す。

だが、そこに隙などは見えない。

二機は突如迫り来る岩塊に距離を開けた。

二人はアクシズに視線を向ける。

「アクシズが。」

「終幕だな、ユウイチ。」

「そうだな。俺達も・・・終わらせようぜ。」

ユウイチの声が低く、しかし強くタカヤにプレッシャーをかけてくる。

決着をつけようと、フェンリルまでも言っているようだった。

ならば、答えは唯一つ。

「ユウイチ・・・勝負だ!!」

ダイゼンガーは斬艦刀・村正を展開し、両手で天に振りかざす。

しかしフェンリルはアーマー部が外れ変形し、戦闘機のような形態へと変わっていた。

そしてその上にフェンリルは乗る。

「スラッシュ・モード起動!」

「一意専心!」


「Gソード・ダイバー!!!」

「剣征・布都御魂(ふつみたま)!!!」


戦闘機形態となったアーマーにフェンリルは乗ったまま向かっていく。

目の前のダイゼンガーは村正を槍のようにし突撃してくるというのに、避けようとも、動こうともしない。

「「(逃げたら、負けを認めるようなもんだ!!)」」

先端がフィールドに包まれ、二つの力が激突した。

もしここが地上だったら物凄い炸裂音が響いていただろう。

それぞれの刃は軋み、そして・・・

フェンリルはダイゼンガーを飛び越え、その後方に降り立つ。

ダイゼンガーはその場で動きを止めた。

そしてフェンリルが右手にアーマー部を受け止める。

「・・・」

「・・・」

ピシッ フェンリルの右手部から亀裂音が鳴り、スパークが起こっている。

ダイゼンガーは村正を振るい、鞘に収める。


「俺とダイゼンガーに、敗北は無い!!」


そしてそのままアクシズへと向かっていった。

「・・・へっ、いっちょ前に言いやがるぜ。」

コクピット内でユウイチは言うが、その顔はどこか晴れ晴れとしていた。

「強くなったな、タカヤ。」



   ナデシコD ブリッジ

「アクシズの中心から亀裂が広がってる。でも・・・まだ戦いが終わってない。」

「みんなは、みんなはどうなの?」

ユリカはルリに尋ねる。

「ナデシコに向かって来ています。リョーコさんとサブロウタさん、アカツキさんです。」

だがその中に、シンとタカヤ、そしてアキトの名はない。

「シン君は、タカヤ君は?アキトは、アキトはどうしたの??」

「・・・アキトは目の前にいるよ、ユリカ。」

「!?」

そう、まだ二人の戦いは終わってはいない。

ブリッジクルーは、その戦いを逃さず見ている。



   アクシズ上部

互いにグラビティライフルを撃ち合い、周る白い機体達。

「くそー!何で、何で貴方なんかに!!」

ビームサーベルを振り下ろすが、それは岩壁を斬りつけただけだ。

「ハーリー君、君はわかっているはずだ!」

「!?」

「俺達の未来が、本当の世界が!!」

「く、ううう。」

先ほどのビジョンが一層強くなっていた。

でもハーリーは認めたくない、その一心で戦っている。

「僕の、僕の未来は・・・うっ。」

「君の優しさを、そして強さを俺は知っている。君は、復讐に生きてはいけないんだ!!」

「・・・!?」

「俺の不甲斐無さが二人を傷つけ、君を苦しめていたんだ・・・」

「だから俺は、ハッキリと言う。」



「俺は、ユリカを・・・愛している!!!」



「アキト、さん。」

アキトはナデシコに通信が流れていることも知っている。

それでも、叫んでいったのだ。

そして両機は向き合い、互いにビームサーベルを構える。



「君にはもう、未来が視えているはずだ!」

「!?」

「マキビ・ハリー!!」



互いの機体が、最高スピードで交差する。

そして・・・

ウイングゼロの右翼が、途中から斬られていた。

そして両機体のビームサーベルが消える。



「何で・・・殺さないんですか?」

「ルリちゃんも、ラピスも・・・いや、ナデシコのみんなが悲しむからさ。」

「・・・」

「俺は行くよ、ハーリー君。本当の平和のために。」

そしてゼラニウムはナデシコに接近する敵機の元へ向かっていく。

「・・・僕は。」

ウイングゼロのモニターには、漂うエピオンが映る。

そしてハーリーは、通信を開いた。

「ナデシコ聞こえますか、こちら・・・ウイングガンダムゼロ。負傷機の救助を要請します。」

モニターに映る、テンカワ・ルリの姿。

「それは、投降するということですか?」

「・・・はい。」

「了解しました、一時フィールドを解除します。」

「感謝します。」

そしてフィールドが消えた瞬間、ウイングゼロはエピオンを抱え飛び込み、格納庫へ入った。



    アクシズ

「シンー!!」

「セレスー!!」

赤と白銀がぶつかり合い、交差する。

「はあああ!」

ナイチンゲールのビームサーベルがHi−νガンダムのグラビティライフルを切り裂く。

「こいつ!」

Hi−νガンダムはそのままナイチンゲールの右手を蹴り上げ、ビームサーベルを飛ばす。

だがナイチンゲールは隠し腕のサーベルを使いHi−νガンダムの股間の前を、左ファンネルラックを切り落とす。

「うおおお!」

シンは気にもしないで機体を動かし、ビームサーベルを振るい腹部を切りつけ、返す刀で左腕を断つ。

そして左手の拳で殴りつけようとしたが、右手に受け止められ、ナイチンゲールのバーニアが勢いよく吹き出る。


「貴方がいなければ・・・シーン!!」

「おおおおお!!」


ナイチンゲールの右拳をよけ、左足で右胴を蹴りつけた。

そのままナイチンゲールは吹き飛ばされる。と、突如地面から炎が噴出す。

「くっ、アクシズが!?」

体勢を立て直すがその炎を突きぬけHi−νガンダムが迫った。

「セレース!!!」

そしてHi−νガンダムの右がナイチンゲールの顔面にヒットし、地面に打ち付けられその衝撃でコクピットが開放されてしまった。

「!?キャアアアー!!」

セレスはそのまま慣性に従って飛んでいってしまう。

「ちっ。」

シンは舌打ちし、機体を飛び交う岩塊からセレスを守るように覆い、コクピットを開ける。

「乗れ!」

「えっ!?」

シンは手を伸ばしセレスをコクピットに引き込む。

「アクシズが!?」

シンの眼下で、アクシズは爆発と共に二つに分かれた。

だが・・・



    ナデシコD ブリッジ

先ほどのアキトの言葉を聞いていたルリとラピス。

ユリカは顔を赤らめていたが、やはりいつものはしゃぎはない。

二人のことを思えば、悲しみが強いと思ったのだろう。

だが、二人は悲しい気持ちもあったが、何故か嬉しい気持ちもあった。

「アクシズが割れる。」

と、ジュンが呟く。

そしてモニターに見えるアクシズが、爆発と共に割れた。

「!?これは。」

「ルリルリ、どうしたの??」

「オモイカネの計算では、アクシズの前部は地球への軌道からそれます。でも、後部は・・・」

「後部は?」

「・・・爆発が、強すぎたんです。さらにスピードを増した後部は、地球に・・・落ちます。」

「何だって!?」

ジュンの叫びは全員の気持ちだった。



   アクシズ

「ふふふ、あはははは。」

「何がおかしい!?」

「シン、見えないの?アクシズの後部は地球の重力に引かれて落ちるわ・・・貴方達のがんばりすぎでね。」

「!?」

確かに、アクシズの後部はスピードを増したようだ。

「貴方のまけよ、シン。もう止める術は・・・」

「まだあるぜ。」

「えっ。」

「こいつで、アクシズを押し戻す!」

シンの強い意志の言葉が、セレスの心に響く。

「な、何ですって!?」

「舌噛むぜ。」

Hi−νガンダムは急加速をし、アクシズ後部の最前部に到達した。

「貴方は・・・正気なの!?」

両手が落下するアクシズにつけられる。

「おれはいつだって真面目だ、お前のように人類に絶望もしなけりゃ、答えを急ぎすりたりしないぜ!」

「たかが機動兵器で何が出来るというのよ!」

「たかがだと?セレス、お前は何もわかっていないぜ。」

「?」

「こいつは・・・」


「この機体は・・・ガンダムの名は、伊達じゃねえんだ!!!」


叫び、IFSが強く光りバーニアが最大で噴射される。



    格納庫

「おらー急いで固定しろ!」

ウリバタケの叫びが響いている。その中でハーリーはエピオンから気絶したローズを引っ張り出す。

「お願いします。」

「後はこちらに任せなさい。」

そして待っていたイネスの医療班に引き渡した。

担架が運ばれていく。

だがハーリーは、その時何かを聞いた。

「えっ?」

それは、脳裏に直接聞こえてくる。今はゼロに乗っていないのに。

「・・・行かなきゃ。」

「ハーリー。」

「!?サブ、ロウタさん。」

振り向いた先に、サブロウタが立っていた。

そしてしばらく無言だったが、

「行って来い。」

それだけ言い、周りの保安部のメンバーを抑える。

ハーリーは頷き、何かに引き寄せられるように再びウイングゼロに飛びこむ。

「ユリカさん。」



   ブリッジ

「ハーリー君?」

さきほど艦に投降してきたハーリーが通信を入れてきたのだ。

「な、何故またそこにいる!」

ゴートが声を荒げて言う。

「すいません、でも行かないといけないんです。」

「どこに、行くんですか?」

ルリの問いに、彼はまっすぐ見つめ答えた。

「・・・アクシズへ行かなければと、そう思えるんです。投降した者の言う言葉ではありません。でも無理を承知でお願いします。

 一瞬でもフィールドを解除してください。」

「そんな無茶です。この破片の嵐の中にフィールドを解除など、損失しか。」

「許可します。」

「て、提督!?」

「何を言うんですかあなたは!?彼は先ほどまで敵だったのですよ。」

「あの子の目を見ればわかります、責任は私がとりますから。ラピス。」

「わかった。」

そうしてハッチが解放される。

「・・・ありがとうございます、ラピス、ユリカさん。」

そうしてウイングゼロはフィールド前に立つ。

「フィールド解除。」

「今だ。」

一瞬解除された隙に外へ飛び出す。

ナデシコDに破片が飛び込んできた。

「もう一回展開して、後退!」

飛び出したウイングゼロも、まっすぐアクシズへ向かう。

その時、首もとのロケットが微かに光りを帯びていることにハーリーは気付かない。

そして、その途中ナデシコを護衛していたゼラニウムとダイゼンガーが向かっているのが見えた。



    アクシズ

大気圏に突入するアクシズの先端部に、バーニアを吹かせ押し戻そうとする機体があった。

「ナンセンスよ、こんなやり方は!?」

「うるせえ、俺はあきらめねえ。最後までな!!」

揺れる機体を必死に制御し、投げ捨てたヘルメットが足元に転がっている。

その姿にセレスは哀れみを含んだ言葉をかける。

「馬鹿ね、このまま燃え尽きるだけよ?」

「俺は馬鹿かも知れねえ。でもな、地球にはたくさんの命が生きているんだ!それを人間の勝手で死なせるかよ!!」

「・・・シン、何故貴方は。」

セレスは尚も汗を流して制御を続けるシンに目を向ける。

「地球上の人類は、人の革新を妨げる存在でしかない。ニュータイプのあなたなら、わかるはずよ。」

「それでも生きる権利はある。一握りのニュータイプがそんなことを決めることはおかしいんだ!」

「生きる、権利・・・」

「俺はお前のような野望も理想もない。だが地球を、多くの生命を守りたい気持ちは、誰にも負けないつもりだ!!」

「!?」

「あきらめないぞ、たかが石っころ一つじゃねえか!Hi−νガンダム、お前の力はこんなもんなのかよ!!」

と、その時、Hi−νガンダムの周りに同じようにアクシズへ取り付く影が。

「ゼラニウム・・・ダイゼンガー。」

「ウイングゼロ・・・フェンリル。」

シンとセレスは目を開き、呟く。

「シン、俺達もやるぜ。」

「君にだけ、任せるわけにはいかないからな。」

「すみませんセレスさん、でも・・・止めないといけません。」

「命令違反だが、黙ってみてるわけにはいかねえよな。」

タカヤ、アキト、ハーリー、ユウイチが通信に出てきた。

「なっ・・・やめろ!こんなことに付き合う必要は無いんだ!!」

シンはタカヤ達に向かって怒鳴るが、

「何言ってんだよ、お前一人で何が出来るってんだ?」

「君は言ってくれただろう、仲間だって。なら助けるのが当然じゃないか。」

「タカヤ、アキトさん・・・」

そしてセレスにも。

「セレスさん、何故かわからないですけど・・・ルカの声が、聞こえたんです。止めてくれって。」

「俺も、地球が駄目になるかどうかの瀬戸際でな。へへっ、タカヤ達に毒されたかな?」

「あ、貴方達・・・」

だが、アクシズの速度が更に加速する。

「うっ。」

「や、やべえか?」

ダメージを受けていたウイングゼロとフェンリル、そして激戦で疲弊していたゼラニウムもダイゼンガーも限界が近かった。

いくら特別な機体でも、フィールドを張らず高熱にさらされれば爆発は避けられない。

「くっ・・・みんな離れてくれ、これ以上は。」

しかし四機は離れようとせず、尚もバーニアが強く噴射される。

シンは赤くなっていくコクピットで、涙を目に溜め叫んだ。



「離れるんだ!Hi−νガンダムの力なら・・・これくらい!!!」



そして突如Hi−νガンダムから光があふれ、四機はそれに弾き飛ばされていく。

セレスはコクピットの中で、その光に触れた。

「こ、これは、サイコフレームとの共振?でも・・・オーバーロードにしては、恐怖を感じない??」

それはとても暖かく、優しい想いが溢れていた。

セレスの目にも自然と涙が溢れ、流れていく。

そして分かったのだ、人の心・・・その暖かさを。

「・・・でも、この暖かさを持った人が、地球を汚染し、破壊して、互いに殺し合うのよ。」

「だから私達は、地球に対し、自然に対し贖罪しなければいけないのに・・・」



「シン・・・どうして貴方は、戦えるの?」

「セレス、人は未熟な生き物だ、いつまでも戦いを忘れることはできないかもしれない。

 でも・・・だからこそ、希望を・・・世界に人の心の光りを見せなきゃいけないんだ!」



その瞬間、Hi−νガンダムから巨大な光りが溢れ、多くの形を作っていく。

「あれは・・・」

その光りたちは、多くの姿となり、地球の周りに向かっていく。

そして信じられない速度でもどってきたのだ、その光りの筋が続いてるところを見、恐らく地球を一周したのだろう。

シンは、セレスは前に現れる姿に自然と口が動く。


「「α、ナンバーズ。」」


大小様々な形になっていく光りは、Hi−νガンダムを連れて行くように動き出す。

そしてその光りの筋に流れるようにアクシズの後部が引かれていくのだ。



    ナデシコD ブリッジ

「アクシズの後部が、地球から離れていく。」

ラピスの報告をユリカは聞きながら、目から溢れてくる涙を止めることはできなかった。

「どうして、涙が・・・お母様?」

それは、クルー全員に起こっていた。

「白鳥さん?」

「お兄ちゃん?」

「何で急に涙が・・・止まらない。それに、この暖かさは?」

ミナトも、ユキナも、ジュンも同じだった。

「・・・アキトさん、ハーリー君・・・」

「・・・」

ルリもラピスも、心が包まれるような感覚に、止まらない涙を拭う事もしなかった。



    地球

「?何かな。」

とあるマンションで、何かを感じた女性が窓を開け上空を見る。

「・・・ナデシコ?」


そしてとあるバーでも、同じ光景があった。

「終わった、ようね。」

ポロンと、ウクレレが鳴り響く。



そして光りの筋が途切れ、溢れていた光りが消えていった。

アクシズの後部も、地球の軌道から離れ、停止していた。

すでに戦闘は止まっており、静寂が支配していた。



そして、Hi−νガンダムはアクシズを見、地球を見ていた。

「セレス。」

シンは、セレスを見ながら優しく言う。

「セレス、優しさを否定してはだめだ。人類に必要なのは、全てを受け入れる優しい心なんだ。」

彼女の顔を見つめ、心臓に手を当てながら。

「それを失ってしまっては、人類は生きていても意味がない存在になってしまう。」

「シン・・・私は、急ぎすぎたのね。」

「そうかもな、でも人はいつか」


『人はいつか、時間さえ支配できるようになるさ』

『その時は、必ず来る』

『私達と同じようにね』


「!?」

「シン?」

周りをキョロキョロしだしたシンに、セレスは尋ねる。

「今、何か聞こえなかったか?」

「?いいえ。」

「そう、か・・・」

男性の声が二つと、女性の声が一つしたような気がした。どこか、懐かしい感じの。

「とりあえず、ナデシコに行こう。」

「ええ。」

セレスは素直に頷き、シンはIFSを使い機体を動かした。



少し離れた所で、ダイゼンガーとフェンリルは並んで地球を見ていた。

「タカヤ、お前はこれが正しかったと思うか?」

「・・・わからねえ、今はまだ、な。」

「そうだな。あの光りが、地球とコロニーの人々に届けば、戦争は・・・なくなるかもな。」

「・・・」

「セレスは、『人類から戦争をなくすためには、兵器をなくすだけではだめ。心を変えてしまわない限り。』って言っていた。

 それも間違いではない、でも・・・そうしなくても、人は変われるんだな。」

「ああ、あの光りこそ、人の力なんだ。」

そして、互いにコクピットを開け、二人は向き直る。

「また、今度な。」

「ふっ、ああ・・・じゃあな。うちの総帥さんを頼むぜ。」

拳を当て、二人は別れてそれぞれ自分を待つ者達の場所へと戻っていく。

と、ダイゼンガーはゼラニウムを見つけ、近付く。

「アキトさん。」

「・・・タカヤ君か。」

「どうしたんですか?」

「いや、ちょっと、な。」

アキトは、先ほどの光に包まれた時、会ったのだ。

「(父さん、母さん・・・ガイ。)」

今はもういない両親、そして早すぎる死を迎えた親友の姿を見たのだ。

「・・・何でもない、行こうか。」

流れていた涙を拭い、タカヤに言う。

「ええ、戻りましょう。ナデシコに。」

「ああ・・・!?あれは。」

その時アキトはモニターに映る影を見つけた。

「タカヤ君、先に帰っていてくれ。」

「えっ?」

「俺は寄り道をする。」

そうして機体を右下に向かわせていった。

「・・・」

タカヤはそれを見送り、ナデシコに向かった。

そして、一つのウインドウが開かれる。

「よう。」

「タカヤ。」

香織が、涙を流しながら微笑んでいた。




    ナデシコD ブリッジ

「Hi−νガンダム、ダイゼンガー帰還しました。」

「えっ?ラピス、アキトは??」

アキトだけが、まだ帰還していないのだ。

「わからない、残骸が多くて・・・(ウイングゼロも、見つからない。)」

「(アキトさん、ハーリー君・・・どこにいるんですか?)」

ラピスもルリも、ポツリと呟いた。




マキビ・ハリは、動かないウイングゼロの中で先ほどの体験を思い出していた。

あの光りが溢れた時、自分の目の前に死んだはずのルカがいたのだ。

「ル、カ?」

「ハーリーさん、ありがとう。」

「えっ。」

「私のことを、好きでいてくれて。」

「でも、僕は君を。」

ハーリーはルカを守れなかったことを思い出し、涙を流す。

「もう泣かないで、ハーリーさん。私は・・・また会えますから。」

「また、会えるの?」

コクッとルカは頷く。

「きっと、会えますから・・・」

「ルカ・・・!?」

「また、絶対に。」

手を伸ばそうとするが、届かない。

「だから・・・ローズ義姉さんのこと、お願いね。」

ルカが涙を流し、微笑んでいる。

「ルカー!!」

そして光りが溢れ、まぶしさに手で顔を覆ってしまう。

「うっ、くうう。」

思い出し、また涙が出てきてしまう。

「僕は、弱いままなんだな。」

そして、同時に頭の中に視えたあの光景。

「ナデシコ、レウルーラ。」

浮かび上がる人々。

「僕の道は、あの人たちと同じになる・・・?」

それは強く印象に残っていた。

だが、彼はもう一つ、気になることがあった。

「あの、白髪の少年は・・・一体?」

最後に、一人の少年が自分を見ていたのだ。

それはどこか自分に似ており、顔はバイザーのようなものをつけており、詳しくはわからなかった。

その直後に、ゼロシステムがオーバーヒートを起こしたのだから。

と、機体を軽い衝撃が襲う。

そして目の前に、

「ハーリー君。」

アキトのウインドウが開かれた。

見ると横にゼラニウムが来ており、肩に手を乗せている。

「帰ろう・・・俺達の、ナデシコに。」

「・・・」

そしてゼラニウムは、機能を停止したウイングゼロを持ち、ナデシコへ向かっていく。



   ナデシコD ブリッジ

「・・・アキト!!」

モニターに映る、ゼラニウム。そして支えられているウイングゼロ。

「ナデシコ、こちらテンカワ・アキト。これより帰還する。」

「アキトさん・・・」

ルリは微笑み、了解と返した。



   格納庫

すでにナデシコ所属の機体は帰還し、セレスもシンとタカヤに連れられブリッジへ向かっていた。

そして、ゼラニウムとウイングゼロも固定される。

アキトもコクピットから降り、ハーリーは両手を挙げて降りてきた。

「じゃあ、行こうか。」

「・・・はい。」

ウリバタケ達の視線を感じながら、二人もブリッジへと向かっていった。




   ブリッジ

「ユキナちゃん、レウルーラに通信回線を。」

「はい、どうぞ。」

そして、ノーマルスーツを着たレミーが映る。

「こちら、宇宙軍第四艦隊所属ナデシコDです。これ以上戦闘を継続する理由はありません。

 ネオ・ジオンの全艦隊に、戦闘の停止を呼びかけてください。」

「レウルーラ艦長、レミー・ローザです。・・・切り札を失った以上、私達に戦闘を継続する理由はありません。

 貴官の通達どおりにします。」

「了解しました。」

「あと・・・セレス、いえ総帥は無事でしょうか?」

「はい、こちらに。」

そうしてセレスに代わる。

「レミー、心配かけたわ。」

「セレス。」

「全艦隊に武装解除をさせてね。ハーリー君も、ローズもいるから。」

「了解・・・また後で。」

そして、通信をきる。

「テンカワ少将、敵である身を救ってくださり、感謝します。」

「私ではなく、シン君に言ってあげてください。」

「そうね・・・ありがとう、シン。」

そうして微笑むセレスに、シンは顔を赤らめそっぽを向く。

「れ、礼はいらねえよ。」

「ふふ、そう?」

先ほど殺し合いをしていた時とは別人みたいな柔らかい表情で言うセレスに、シンはなんともいえない気持ちになる。

「ユリカさん、本部から通信です。」

「まわしてください。」

ユキナが答え、ミスマルのウインドウが表示される。

「うおっほん、諸君、ご苦労であった。そして初めまして、セレス・ダイクン。」

「こちらこそ、ミスマル大将。」

敬礼をし、答える。

「さて、貴官らはすでに武装解除をしているのかね?」

「ええ・・・もう、私達に戦闘の意思はございません。ただ、負傷者も多数います。私達でもすでに連合兵士の救援を行っています。

 後日、お渡しします。」

「そうか、宇宙軍にもそうさせておる。そして君らの処遇の件だが。」

だが、セレスはスーツの収納スペースから一枚のマイクロチップを取り出す。

「その前に、見ておいて欲しいものがあります。よろしいでしょうか?」

「うん?何だね??」

「・・・すみません、これを送っていただきますか?」

「わかった。」

セレスはラピスに尋ね、ラピスはチップを読み込ませ、データをミスマルの下に送る。

「それをご覧になれば、お分かりになるはずです。」

「こ、これは!?」

その反応を見て、セレスは眉をしかめた。

「やはり、ご存じなかったのですね。」

「・・・信じられん。」

「今まで何度も送ったのですが、握りつぶされていたようですね。」

「・・・」

「敗軍の将が言う台詞ではありませんが、私は人の行く末を見てみたいのです。よくお考えになってください。」

「うむ、よく教えてくれた。その件は出来る限り対処しよう。」

「ありがとうございます。」

「それでは、失礼する。」

ミスマルは通信をきった。


「・・・秋山君。」

「はい。」

「この件について、すぐさま、徹底的に絞り込むのだ!」

「了解しました。」

滅多に見せない怒りに染まったミスマルを見、秋山自身も怒りに震えていた。



「セレス、一体何を送ったんだ?」

「あれ?そうねえ、言うなら・・・連合の闇、といったところかしら。」

「闇?」

シンはセレスに問う。

「何だよ、一体?」

「連合の将、政府の高官の不正行為、脱税や横領の数々といったところかしら。」

「な、何だって!?」

ブリッジメンバーが声を荒げる。

「私が調べたのと、ハーリー君に頼んでね。」

シンはセレスを見る。

「ミスマル大将も分かるはずよ、もしこれが世界に流れたら・・・」

「・・・悪人め。」

タカヤが嫌そうにセレスに言う。

「もちろん、もっとあるけどね。それは今度ゆっくり渡すわ。私達の処遇しだいでね。」

セレスの言うことは、ある意味脅しである。しかし連合はそれほどのことをやっているという事実でもあった。

「腐りきった者達、それが私達に戦いを起こさせた原因でもある。今までも何度かミスマル大将の元に送っていたのに、

 全て握りつぶされていた。だから宇宙軍はただの反乱と思っていたようね、演説もしたのに、誰一人気付いてなかったようだし。」

「そうだな、元は全てそいつらのせいなんだな。そのために・・・たくさんの命が消えた。」

シンはやりきれない顔をしたが、

「でも、貴方が見せてくれたあの光、人の心の力が、人類の希望へ変わっていくはずよ。」

「・・・だといいな。」

「シン君、今は無理かもしれないけど、必ず来るよ。」

ユリカが笑顔で言い、シンは苦笑いをする。

「そうですね・・・あっ。」

と、ドアが開き、そこにはアキト、そして保安部に連れられたハーリーがいた。

アキトはそこで保安部のメンバーをはらい、彼らは敬礼だけをし退出していく。

「・・・さ〜てセレス、さっきの戦闘で怪我したって言ってたよな。ちょっと医務室まで行くか。」

シンはセレスに目配せをする。

「(なるほど。)そうね、頼むわ。」

同時にタカヤにも目配せをした。

「じゃあ俺も付いていかないとな。」

そうして三人はドアから出て行った。

残されたメンバーは、沈黙が支配している。

が、やがてリョーコが口を開く。

「ハーリー、何か言うことがあるだろ。」

「・・・」

だが、ハーリーは黙ってこちらを見たままだ。

「おい!何とか言えよ!!」

リョーコが胸ぐらを掴もうとしたが、その手をハーリーは掴む。

「!?」

「怒鳴らなくても、聞こえています。」

彼らしくない、低い声で言う。

「聞こえて、いますよ・・・」

そのままじっと、リョーコを見る。

「リョーコちゃんやめるんだ、君も。」

アキトがリョーコを制し、ハーリーは緩んだ手を離す。

「・・・今更、何を聞くんですか?」

「ハーリー、悪いとは思ってないのか!?」

「思ってる風に見えますか?」

その言葉に、ミナトは激昂する。

「何を言ってるの!君は・・・自分のしたことをわかってるの!?」

「はい、たくさんの命を奪い、傷つけました。」

まるで悪びれた雰囲気はない。

「ハーリー君!」

「じゃあミナトさん、聞きますけど・・・僕が殺した人たちは、戻ってくると思うんですか?」

「なっ。」

「後悔して、それで何か還ってくるというんですか?」

淡々とハーリーは答える。

「僕は、自分のしたことに後悔などしていません!」

バチーン ミナトの張り手が、右頬に当たる。

「どうして・・・どうして、君はそんな風になっちゃったのよ!」

頬が赤くなるが、ハーリーは気にしてないといった様子だ。

「ミナトさん、やめてください。」

「アキト君!」

「彼は、間違ったことは言っていません。」


「俺は、その何倍もの命を奪いました。・・・復讐という理由だけで。」


その言葉に、ミナトは声を詰まらせた。

「彼を責めるなら、俺を責めてからにしてください。」

「・・・」

「ハーリー君。」

だが、ルリが前に出てハーリーを見る。

「私には、言うことはありませんか?」

ハーリーは顔をそらすが、ルリは続ける。

「私はあります・・・でもその前に。」


右手をミナトと同じように振り上げ、叩いたのだ。


逆の左頬を叩かれたハーリーは、ミナトの時とは違い、唖然とした顔を向ける。

あのルリが、自分を叩いたのだ。

「言いたいことは、一杯あるんです・・・」

「ルリ、さん。」

涙を流しているルリ。

そして・・・

「!?」

ハーリーの胸に、飛び込んだのだ。

周りの面子も、ルリの行動に・・・いや、ラピスだけは少しぶすっとしている。

「は、離れてくだ、さい、ルリさん。」

上ずった声でハーリーは言う。

「嫌です。」

「僕は・・・アキトさんではありません!」

「嫌です!!」

胸に顔を埋め、ルリは叫ぶ。

「ごめんなさい・・・私に勇気が無かったから・・・ハーリー君を、傷つけていたんです。」

「違います、そんなこと。」

「貴方の想いを切って捨てて、また優しさに甘えている・・・酷い女です。」

「・・・」

「アキトさんへの想いを、言うことすら私には出来なかった。三年前にも、言ってくれましたよね。

 前に進まなければ、何も手に入りませんよって。」

三年前、自分はハーリーの告白を拒否した。彼はわかっていたから、自分にも行動をして欲しかったのだ。

「あの時も、貴方は私を励ましてくれました。さっきも、私やラピスのことを思っていてくれた・・・」

ハーリーはさっきのアキトとの戦いを思い出し、顔をしかめる。

「だから、私は・・・貴方から、離れたくないんです。」

「!?」

顔を上げ、ハーリーの蒼い瞳を見つめる。

「ナデシコに帰ってきて、ハーリー君。」

「ルリさん・・・」

思わずハーリーは両手をまわしそうになったが、動きを止め、手を肩に乗せた。

そして、身体を離す。

「ごめんなさい、ルリさん・・・僕は、もうナデシコにはいられないんです。」

そのまま、一歩、二歩とさがる。

「裏切った僕は、もうナデシコクルーじゃない。」

悲しそうな顔で言い、ルリに謝る。

「だから、もう二度とあなた方の元へは現れません。」

「えっ・・・」

「おそらく僕は軍法会議で銃殺が待っています。だから・・・お別れです。」

「そんなことさせません!」

「そうね、私もさせないわ。」

と、いつの間にかセレスが戻っていた。

「ハーリー君、貴方にはまだやるべきことがあるわ。」

セレスは目を瞑り、答える。

「ローズを、幸せにしてあげないと。」

「!?」

「そして、ルカの分も生きなさい!あの子がくれた命を・・・もし逃げ出したら、私が許さないわ。」

「セレスさん・・・」

「ハーリー君。」

アキトが近寄り、正面からハーリーを見る。

「俺は過ちを犯し、そしてたくさん傷つけてしまった。だから君には、同じことを繰り返して欲しくない。」

「・・・僕に、出来るんですか?」

「君になら出来るさ、きっと・・・」

そしてアキトは、右手を差し出す。

ハーリーはそれを見、ロケットがある場所に手を当て、そして・・・右手を合わせ、強く握手をした。

「アキトさん、僕は。」

「俺は、君に教えられたんだ。いろんなことをね。」

「そんな、大したことはやっていませんよ。」

「違うよハーリー君、君はもう・・・」


「君は、俺を超えたんだ。」


その言葉を言われた時、ハーリーは顔を上げる。

アキトは微笑みながら頷き、離した右手を肩に乗せた。

「君は、強くなった。本当に・・・」

ハーリーの眼からは自然と涙が溢れていた。

そう、目標として追い続けていたアキトから、ずっと言ってもらいたかった言葉。

「うっ、ふうう。」

嗚咽が漏れるのをこらえ、涙を拭う。

そして視線を向け、頭を下げる。

「ありがとう、ございました!!」

アキトは頷き、ルリとラピスに言う。

「ルリちゃん、ラピス・・・気持ちに気付かなくて、ごめん。」

「「・・・」」

「でも、俺はユリカを愛している。だから・・・答えることは出来ない。」

「アキト・・・」

ユリカがアキトを見、二人を見る。

「・・・ふふふ。」

「振られちゃったね、ルリ。」

二人はお互いを見て、苦笑いを浮かべる。

「これからも、俺の義娘としていてくれるかい?」

「はい。」

「もちろんだよ、アキト。」

「・・・ありがとう、ルリちゃん、ラピス。」

そうして、二人を抱きしめた。

家族としての愛情を持って。

「ハーリー君、君はこれからどうするんだ?」

二人を放し、アキトは問いかける。

「僕はネオ・ジオンで処分を待ちます。僕は、ローズといっしょにいたいです。」

「そうか、やっぱり君は一途なんだな。」

アカツキが冷やかすように言い、ハーリーは顔を赤らめる。

「い、いいじゃないですか、別に。」

「ほ〜んと、ハーリーは真面目だこと。」

「・・・浮気ばっかして女性を泣かせるサブロウタさんよりはましだと思いますけどね。」

ピクッとサブロウタが反応する。

「何だと、俺がいつ浮気してるんだよ?」

「おいサブ、どーゆうこった?あ??」

聞いているリョーコの額に青筋が。

「ち、違うぞ。ハーリーのでまかせに決まって。」

「・・・ユリカさん、このオモイカネはCのですか?」

「え?うんそうだけど。」

「なら・・・オモイカネ、聞こえる?」

『ハーリー、何か久し振り。』

「うんごめんね、こんなことして。」

『ハーリーは悪くない、でもルリを悲しませたのは許せない。』

「・・・反省してるよ。それと僕のファイルってまだある?」

『ハーリーの?うん、まだ残ってるよ。』

ハーリーは頷き、ラピスとは反対のサブオペレーターの席に座る。

「(これをリョーコさんに見せてあげて。)」

『い、いいの?』

「(いいよ・・・別にね)(邪)」

悪巧みをしているような笑いを浮かべ、オモイカネに頼む。

『何か性格変わったね、ハーリー。』

「(そうかな?)」

そうして、また戻ってきた。

「じゃあリョーコさん、よく見てください。オモイカネ、3Sのファイルオープン。」

『了解。』

と、ウインドウに映し出されたのは宇宙軍の基地・・・サブロウタが、女性士官と話している。

「げっ、まさか!ハーリーやめ」

そして、女性士官がサブにハート型のチョコらしきものを渡していた。

ここで映像が切れる。

「・・・サブ。」

リョーコが無表情でいる。

「は、はい!?」

「あの女誰だ?」

「え、彼女はただの同僚で、木連出身らしいからさあ。」

「・・・この後どうした?」

「な、何もしてないって。なあハーリー。」

サブはハーリーを見るが、

「あれ、そうでしたっけ?」

考えるような仕草をする。

「あの後僕になんか自慢していたようなムグッ」

サブはハーリーの口を塞ぐが、時既に遅し。

「後で、じっくりと、聞かせてもらうぜサブ・・・」

ドスの聞いた声を出し、サブを睨む。

そのままリョーコは出て行ってしまった。

サブは絶望した顔でハーリーを見る。

「お前・・・しばらく見ない内に随分性根が腐ったな。」

「腐ってなんかいません、サブロウタさんが僕をからかうのと同じことをしたまでですよ。」

「(何かハーリー君性格変わってない?)」

「(俺もそう思う。)」

ユリカとアキトはひそひそと話しているが、サブはゆら〜りと立ち上がる。

「なら・・・俺も黙ってようと思ったが、仕方ねえな。」

サブは少し歩き、隅っこから一つの手提げ袋を持ってきた。

「なんだいサブロウタ君、それは?」

「会長さんよお、まあ見てくれ。」

そうしてアカツキはその中身を見ると、

「うおっ!?」

声を上げ、驚いていた。

「(すげえだろ、これ。)」

「(・・・レアものかな?)」

二人で盛り上がってるのを不審に思ったジュンも来た。

「一体どうしたんだい?」

「まあ見てくれ。」

と、他のメンバーに見えないように背中を向け、中身を取り出しジュンに見せた。

「・・・ええ!?」

普段冷静なジュンも声を出し驚いた。

「ねえねえジュンちゃん、一体何なの?」

「えっ、いや何でもないよ、あははは。」

乾いた笑いをユキナに向け、二人に向き直る。

「(何ですかこれは!大体戦艦にこんなものがあるなんて。)」

「(CからDに移る前、ハーリーの部屋の私物を漁っていたんだが・・・あいつも男だったようだな。)」

「(彼の荷物は・・・そうか、君が指揮をしていたしね。しかしまあ彼は若いからねえ、これは。)」

男三人で内緒話はちょっとアレだが、ハーリーはサブに尋ねる。

「一体何なんですか?」

「ハーリー、俺はお前の秘密を知ってるんだぜ。」

「秘密・・・!?」

何かに気付いたらしい。

「ま、まさか、僕の部屋に!?」

「さすがだな、その通りさ。」

「あ、あ、ああ。」

急にうろたえ始めたハーリーに、他のメンバーが不審がる。

「サブロウタさん、何なんですか?」

「何なの?」

ルリとラピスがサブに近付く。

「艦長、ラピス嬢ちゃん、まあ見りゃ分かる。」

と、その手提げを二人に渡した。

「だ、駄目です!それだけはムグッ!?」

再びハーリーの口を塞ぎ、腕を押さえるサブロウタ。その表情はまさに悪魔だ(笑)

「「??」」

二人はその袋に手をいれ中にあった手ごたえの物体を引き上げる・・・そして。


「「キャアアアアア!!!!!」」


普段見せない悲鳴を上げる。

「ルリちゃん、ラピス!?」

ユリカとアキトが二人に近付き、落とした物を見た。それは・・・

女性の裸体が描かれた本、そして怪しげなディスクなどが散乱している。

「・・・(汗)」

「こ、これは。」

ブリッジメンバーで女性陣が固まり、男性陣はアキトが固まり、サブとアカツキは笑いをこらえている。

ハーリーはというと・・・見ないようにしよう。

逝ってしまったようだ、いろいろと。

「ハーリーやるなあ、戦艦に「こんなもの」持ち込んでたなんて。」

「いや〜若い証拠じゃないか、しかし量も中々だねえ、ジャンルも幅広いし。」

と、大人二人が笑ってる中、ミナトは気まずそうな視線を向けた。

「そ、そうよね。ハーリー君まだ十代だからね。」

ユリカも続く。

「う、うんハーリー君は悪くないよ。思春期の男の子はみんな持ってるって聞くし。」

しかし、ここにまた悪魔のささやきが。

「まあ、ずっと戦艦の中じゃあたまにムラムラきちゃってたとか?」

その言葉にこういうことにあまり免疫がなさそうな二人がビクッとした。

ハーリーはふらふらと立ち上がり、そのブツを仕舞い始める。

ここまで来るとすでに言葉のいじめである。

「はあ・・・ええそうですよ!僕はたま〜にですけどそういうことも思っちゃいます!僕だって男なんですから、近い年齢の女の子と

 いっしょにいたらそういう気持ちになっちゃうこともありますよ!しかもルリさんやラピスをそういう風に見てしまったことも、

 感じることだってあります!お風呂上りの雰囲気とか、転んでスカートが捲くれてしまった時とか、偶然でもこれは拷問に近いんですよ!!

 ええそうですよ、僕は助平です!悪いですか!!」

一気に喋り、息遣い荒く呼吸を整える。

「いや、何もそこまで言わんくても。」

サブも、涙目で言うハーリーにさすがに悪いことしたかなあという感情があった。

「どうせ僕は助平です、こんな男で悪かったですね。」

「ハーリー君、別に気にしなくても。思春期真っ只中だったんだししょうがないさ。」

「そうだよ、気にすることないって。」

アキトとジュンはなだめるように言う。

そして・・・

「「ハーリー(君)」」

ルリとラピスがハーリーに視線を向ける。

「ご、ごめんなさい!そんなことを考えてしまってすみません!!」

だが二人はじっと頭を下げたハーリーを見、ルリが口を開く。

「私のこと、どう思っていたんですか?」

ルリの問いに、ハーリーはひるむ。

「うっ。」

「どう思ったんですか?」

「・・・その、色っぽいと。」

「私も?」

「ラピスも・・・うん。」

ぼそぼそと言うハーリーは、二人の反応がなく怖かった。

仕方ないとはいえ、汚れた部分を見られたのだ。完全に嫌われたと思っている。

と、そっと顔を上げると、いつの間にか二人の顔が目の前にあった。

「うわっ!?な、何ですか?」

と、二人がそれぞれの腕に抱きついて、笑顔を向ける。

「へっ!?」

「許しますよ。」

「今回は、許す。」

「あ、あの、ちょっと離れてください。む、胸が・・・その。」

ルリとラピスは気にしてないといった風である。どうしたというのか?

だが、二人の顔は何故か嬉しそうである。

アキト達は先ほどの言葉と今の二人を見て何か確信した様で、微笑ましい視線を向けているのだが、ハーリーはわけが分からなかった。

しかし、

「ハーリー君モテモテねえ。」

「セ、セレスさん!?」

セレスがにやつきながらハーリーを見る。

「まさに両手に華ね。」

「あう。」

「でもいいの?ローズが知ったら・・・」

ローズという単語に、ルリとラピスが不機嫌そうな顔になった。

「そーいやさあ、ハーリーは彼女とどこまでいったんだ?」

サブロウタが興味津々といった風に聞く。

「そうねえ、もう近寄っただけで団扇がいるぐらいねえ。」

両腕に掛かる圧力が増したような感じがし、ハーリーは何かを感じ取った。

こういう時の彼の予感は・・・大抵当たる。

「それに、昨晩もお楽しみだったみたいなのよ。」

「お、お楽しみって・・・まさか。」

「確かサブロウタさんでしたね。多分想像通りよ。ハーリー君出会って二週間もしない内に手を出すなんて・・・艦内風紀を無視してねえ。」

若さって怖いもの無しねえと言うセレスは、明らかに楽しんでいる。っていうか彼女はまだ二十一だが。

「・・・さてと。」

ハーリーはいつのまにか腕を離したルリとラピスから離れ、ドアへ向かおうとしている。

だがこの女悪魔は逃がしてはくれない。

「あらハーリー君、どこ行くの?」

「えっ、いやそのウイングゼロが僕を呼んで・・・」

「オモイカネ。」

と、静かな声が響き開いていたドアが閉まった。

「へっ、ちょっとオモイカネ!?」

「ハーリー君、そういえばまだしていませんでしたね。」

背後から聞こえた声に、おそるおそる応える。

「ル、ルリさん?」

「私達を裏切ったことへの、お仕置きが。」

「!?」

「私もやるよ、ルリ。」

「そうですね、手伝ってもらいましょう。ミナトさんはどうです?」

ルリは顔をミナトへ向けるが、彼女は汗を流し首を横に振る。何を、見たんだろうか?

「あの、ルリさん。先ほど許すと言ってませんでしたか?」

「・・・もう十八歳なら、大丈夫ですよね。」

「何をですか!?」

マジでやばいと思ってしまう発言だ。

「久し振りですねえ、五年ぶりといったところです。ではラピス、行きますよ。」

「了解。」

先ほどとは打って変って、冷たい。そして二人は片腕ずつ押さえ、引きずっていくのだ。どこにそんな力があるのか・・・

そしてドアが開く。明るく見える通路が、何故かハーリーには処刑台への通路に見えてしまう。

「ど、どこに行くんですか?」

「「・・・」」

二人は答えなかった。それが一層恐怖心をあおる。かつての悪夢も蘇ってきた。

そしてドアが閉まり、残されたメンバーは黙ったまま、ドアを見ている。

と、しばらくしてアキトがオモイカネに尋ねた。

「オモイカネ、三人はどこにいるんだ?」

『ごめん、ルリに口止めされてるんだ。』

「じゃあ、部屋のウインドウは?」

「・・・ハーリーの名誉のために、音声だけにしてあげて。』

そして、真っ黒なウインドウが表示される。

※音声のみでお楽しみください。


「な、何ですかここは?」

「震えていますね、どうしたんですかハーリー君?」

「ふふふ。」

「お、お仕置きって・・・」

「五年前にもやりましたよね、まだハーリー君しか受けてませんよ。」

「大丈夫、痛くないから。」

「あ、あの許してください。」

「許すも何も、お仕置きなんですから。」

「少し我慢。」

「あ、アキトさ〜ん!!助け」


と、ウインドウが閉じた・・・

「・・・」

『ルリとラピス、本気になったみたい。』

「サブ、お前は何か知ってるか?」

「いや、艦長のお仕置きはハーリー専用みたいなものだったし・・・ただ。」

「ただ?」

「終わった後艦長は肌つやが良くなって、すっきりした顔をしてたんだが・・・ハーリーはガタガタ震えていたんだ。」

「・・・ルリちゃん、一体何をしたの?」

ユリカの言葉は全員が思っていることだろう。

そして数分が経った時、ドアが開きルリとラピスが戻ってきた。やはりサブの言ったとおりの顔をしている。

しかし、その後ろから来たハーリーはというと、

「あはは、ちょうちょ〜。」

壊れていた。

「おいハーリー!」

サブはハーリーを揺らし、眼を見た。

「大丈夫か?」

「・・・はっ!?僕どうしたんですか?」

「いや、無事みたいだな。」

「・・・あれ?何か記憶が飛んでいるみたいで。」

と、ルリとラピスはくすりと笑う。

何をしたんだ?とブリッジメンバーは思った。

そしてセレスは場を切るように言う。

「じゃ、じゃあそろそろ行きましょう、ハーリー君。」

「あ、はい。」

セレスはユリカ達に向き、微笑む。

「ナデシコのみなさん、次は和平会談の場でお会いしましょう。」

「ええ、今度は平和のために。」

「そうですね・・・あと、シンに連れて行ってもらっても?」

「シン君ですか?彼がいいというなら・・・」

「だそうよ、シン。」

ドアのところにシンが立っており、タカヤと誰かを支えていた。

「別にいいが、ハーリー、お前の連れだぜ。」

「!?ローズ!!」

ハーリーは自慢の脚力で一気にドアへ向かった。

「大丈夫なんですか、イネスさん?」

「弱ってるけど、大丈夫よ。一日眠れば治るわ。」

「・・・ハリ、私は大丈夫だから。」

「ローズ!!」

と、ハーリーは強く彼女を抱きしめた。

「ハ、ハリ。苦しい。」

ローズがうめき、慌ててハーリーは力を緩める。

「ごめん、でも・・・嬉しくって。」

「・・・ハリは、私のために戦ってくれたんでしょ。」

「えっ?」

「あの時、声が聞こえたの。貴方の声が・・・」

気絶する直前、ハーリーが叫んでいたのをローズは覚えていた。

「覚えていたんだ。」

「うん・・・(ルカに、会ったわ)」

聞こえないように小さい声で言う。

「!?」

「・・・さっきのことも、特別だからね。」

「えっ!?まさか。」

チラッとセレスを見ると、両手を合わせて笑っていた。

「セレスさん、貴方という人は・・・」

威厳の欠片も見せないセレスに、呆れた声をだす。、

「(でも、これからはもう私しか見ないようにしてあげるんだからね。)」

ローズはボソッと言い、ハーリーの背におぶさる。

「歩けないから、お願いね。ハリ。」

「う、うん。」

と、ドアから出る直前、後ろを振り向きクルーを見る。

「・・・また、お会いしましょう。」

「はい・・・行ってらっしゃい、ハーリー君。」

「またね、ハーリー。」

「次は、和平会談の場でね。」

「身体に気をつけろよ、ハーリー。」

ルリ、ラピス、アキト、サブの言葉を受け、コクリと頷き、彼らの姿はドアの向こうに消えた。

「・・・ルリちゃん、ラピスちゃん、いいの?」

「何がですか、ミナトさん?」

「ハーリー君のこと・・・好き、なんでしょ。」

その言葉に、ルリとラピスは俯く。

「まだ間に合うかもしれないよ、ハーリー君のことを呼びとめ」

「ミナトさん。」

言葉を遮り、ルリは口を開く。

「いいんです・・・彼は、もうローズさんしか見ていません。」

「でもそれじゃあ。」

「いいの、ミナト。ハーリーは私達を大切に想ってくれている。それでいいよ。」

「・・・ルリちゃん、ラピス。」

アキトは二人に向かうが、ユリカが制した。

「(アキト、二人のことを考えてあげて。)」

「・・・ユリカ。」

「難しいね、恋っていうのは。」

ミナトの言葉に、二人は顔を上げる。

「私もラピスも、つまらない意地を張って、一番大切に想ってくれる人に気付かないでいたんですね・・・」

「・・・馬鹿だよね、私達。」

二人は、涙を流していた。それは、どんな思いからなのか・・・

と、モニターにHi−νガンダムとエピオンを抱えたウイングゼロが映った。

そしてウイングゼロはブリッジ部を見ながらゆっくりと離れていき、反転して加速していった。

「(またね・・・ハーリー君。)」

その姿に、ルリはポツリと呟いた。


Hi−νガンダムの中、シンは途中であるものを見つけた。

「!?セレス、あれは。」

「・・・そう、お前も帰りたいんだね。お願いシン。」

「ああ。」

それは、くたびれていたナイチンゲールの姿だった。ちょうど進路上に漂ってきていた。

まるで、主の帰りを待っていたように・・・

そして二機はレウルーラに着き、Hi−νガンダムは再びナデシコに戻った。



新西暦312年十二月二十二日、スペースノイドとアースノイドの戦いは終わりを告げた。

多くの死者を出しながら、人は・・・心の光を目の当たりにしたのだった。




   ???

「・・・ついに、時は来ました。」

「忌まわしき巫女、最後のマシアフが起こした強大な呪縛。」

「それも直に解ける・・・その時こそ。」

「血脈途絶えしこの星を、護る為に・・・」

「私が、ガンエデンに代わって封印するのです。」


「この・・・最後の楽園を。」



次回予告

人類の戦いに終止符を打ったナデシコ。
そしてナデシコ、レウルーラの両艦では和平への準備が進められていた。
しかしそこに飛び込む謎の飛行庭園出現の報。
急遽ナデシコDはそれの調査に向かう。
そしてそこで待ち受けし者。それこそが・・・過去の真実を知るもの。


スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜


第二十三話「解き放たれしもの」

???「ようこそ・・・この星の守護者たちよ。」






作者とキャラによる座談会

カタカタカタッ キーボードを打つ手を一端休める。コーヒーを手に取りすする。

犬夜「・・・ふう。」

ゴスッ

犬夜「ぐはっ!?な、何をするんだ!」

突如背を蹴られた作者。その背後にいるのは・・・巨悪の首領とその使いっぱしりこと、セレス、ユウイチ、ハーリーだ。

セレス「待ちなさい、巨悪の首領って何よ!」

ユウイチ「誰が使いっぱしりだ!」

ハーリー「あながち間違ってないと思いますけど・・・」

犬夜「よく来てくれましたね、やられキャラ三人組み!」

「「「余計なお世話だ!!!」」」

青筋を立てる三人。

犬夜「まあ怒らないでよ、準主役的存在なんだから。君達がいないと話が進まないし、重要なんだよ。」

セレス「私はコテンパンにやられたけどね。っていうかあなたシンにやられたのによく生きてたわね。」

犬夜「死にそうだったけどね。君達もいいじゃないか、目立ってたし。」

ユウイチ「・・・まあそうだけどよ。」

ハーリー「僕も、がんばりました。」

犬夜「確かにハーリーはがんばったよ、俺の一番力を入れたキャラだし。」

ハーリー「あ、ありがとうございます。」

セレス「でもハーリー君はアキトさんとの戦闘シーン、目立ってたわね・・・」

犬夜「以前からアキトのはっきりしないところを、決着つけさせたかったしね。ルリとラピスはアキトに想いを寄せている設定だったから。」

ユウイチ「まあ長かった恋に決着をつけたな、しかしハーリーもよくあそこで耐えたなあ。俺だったら腕回しちまうし。」

ハーリー「僕が好きなのはローズです。・・・ルリさんとラピスは守りたい、大切な人ですけど。」

犬夜「でも、この劇中のハーリーには結構裏話があるんだよ。」

「「「?」」」


犬夜「劇中で、ハーリーは死ぬ予定だったんだ。」


ハーリー「へっ!?」

セレス「そうだったの?」

ユウイチは元となったレジェンドの設定資料を手に取る。

ユウイチ「どれ・・・あ、ほんとだ。」

犬夜「まあ具体的に言うなら、完全な死ではなく、精神崩壊なんだけど・・・」

セレス「ようは、カ○ーユみたいになるってこと?」

犬夜「そうだよ、アキトとの戦いで暴走、そしてゼロの逆流で精神崩壊にする予定だった。」

ユウイチ「またディープなことを・・・」

犬夜「そしてもう一つ、本当はローズクォーツは出す予定には無かった。」

ハーリー「ちょっと作者さん!どれだけあるんですか僕の裏設定って。」

ローズ「そうですよ!」

セレス「あら、ローズまで。」

ローズ「作者さんがとんでもないこと言ってるから飛び入りしたんです。」

犬夜「いや〜ハーリーがルリしか見ていないことじゃあだしてもあれだし、ねえ。」

ユウイチ「ま、すでに済んだことだけどな。」

犬夜「ハーリーはルリをあきらめきれずっていう設定だったんだけど、君はそういうことをいつまでも引きずらないと思ったからボツにしたんだ。」

セレス「まあ未来の話だから、わからないけど。」

ユウイチ「確かにな、それと最後の秘密がばれたシーンだが・・・」

ローズ「あの後、ハリには全て処分させましたよ。あんなもの必要ありません・・・」

横目でハーリーを睨む。

ハーリー「うっ、仕方ないじゃないですか。僕は十から戦艦にいるんですよ。」

ユウイチ「まあ男たるもの一度は通る道だ、もしなかったらそれは病気か危ない人間だ。ハーリーは感情豊かだしな。」

犬夜「そんなことになったら、ハーリーのBGMを「思春期を殺した少年」に変えないといけないし。」

セレス「それもいやね・・・でも、これで話は終わりではないのよね。」

犬夜「それは次回に明かされますけど、とにかく今は和平に向けて準備していてください。」

セレス「そうね、じゃあお決まりのやつを。」


「また本編で!」×4

犬夜「これからも、よろしくお願いします!」





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