「・・・全機へ通達。」

ユリカの声が響く。

「私達の戦いが、人類の命運を分けます。敗北は・・・許されません。」

「・・・」×全クルー

「これが最後の作戦です!全機、アンデッド及びテオディアを撃破してください!!」



『争いを忘れれぬ者達よ・・・神の元で眠りなさい。』



スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜

最終話「輝ける明日へ」



「全機へ。攻撃を開始してください!」

「了解!!」×パイロット一同

全機のブースターが光り、突撃していく。

先頭を突っ切っていくゼラニウムとウイングゼロ。

そして他の機体も一斉に突撃していく。

「落ちろ!」

「はあああ!」

ゼラニウムが左右のコンテナを開き、マイクロミサイルのラックを射出する。

ウイングゼロも続けて限界まで伸ばしたツイングラビティブレードを振り払った。

爆発、そして斬撃。

悲鳴すら上げることなく消えていくアレクト、ティシポネ、メガイラ達。

だが・・・

「何!?」

「そんな!?」

二人は確かに倒した・・・しかし、再び現れたのだ。そう、気がつけばハーリーが先ほど倒したアンデッド達も。

『無駄です、この子たちは私の半身・・・私がいる限り、存在するのです。』

テオディアが言い、全員は微かな恐怖が起こる。

生身では、いつか限界が来てしまうのだ。

「・・・ならてめえを倒すだけだ!!」

タカヤが叫びテオディアに向かう。

しかしその前に一度タカヤが戦ったアンデッド、ティシポネが立ち塞がった。

「くそ、またお前か!」

ダイゼンガーが村正を振り上げ斬りかかるが、ティシポネは両首を伸ばし、二つの一つ目からレーザーを撃つ。

「何度も喰らうか!」

持っている村正を振りレーザーを弾いた。

村正が纏っているフィールド、そしてタカヤの技能が成せる斬り払いだ。

だが後方にいるテオディアの翼が左右に広がり、闇が生まれ始める。

「!?」

『荒ぶる魂よ、静まりなさい・・・』

そして球場になった二つの闇が撃ちだされた。

「くっ!」

ダイゼンガーは村正を構え、横薙ぎに払うが、二つの闇はそれに耐え向かってきた。

何とかかわしたが、タカヤは手に残るしびれに驚愕していた。

「(こいつのパワーでも弾けない・・・喰らったら終わりだ。)」

しかし前に出る三機、アンスリウムにサルビア、トールギスが攻撃を加える。

各射撃がヒットしたのしたのだ。

『オオオオオ!!』

痛覚があるのか苦痛の声を出すテオディア。

「ざまあみろ!」

すぐさまアンデッド達が攻撃をするが、それらをかわしナデシコに戻る。

「チャージ完了・・・援護攻撃開始。」

ラピスからの通信が届き、ナデシコDのハイパーグラビティブラストが放たれる。

アンデッド達を貫通し、テオディアは再び傷を負う。

しかしすぐさま復活したアンデッド達、狼のようなもう一体の新種メガイラが大地を蹴り高速で飛びかかってきた。

「ガオオオ!!」

口を開き、鋭い牙が光りを放っている。

メガイラはトールギスに飛びつく。

「な、何!?」

アカツキの声がメガイラの雄たけびに消される。

モニターに牙が映し出され、メガイラはトールギスの右肩に噛みついた。

バキッ メキッ

嫌な音を出し噛み砕かれていくトールギス。金属をも砕く牙は、すでに生物のとは言い難い硬さだ。

「くそ!」

アカツキはトールギスを動かすが、メガイラは離れない。

モニターに警告ウインドウが表示される。

「アカツキ!」

しかしそこにアキトのゼラニウムがギリギリのところを通り、メガイラをオーキスの長い砲門で突き刺し引き離した。

アキトの技量は紙一重の距離をかわしながらやったことなのだ。

「この長い砲身にも、使いようはある!」

そしてそのままメガグラビティブラストを発射し、メガイラはあとかたもなく消滅した。

しかしまた塔の付近から出現する。



    ナデシコD ブリッジ

「くっ、本当に倒せないのか?」

「・・・」

ジュンの言葉を聞きながら、ルリはある考えを持っていた。

「(アンデッドは生物兵器と同じ存在、それが出てくるのは・・・塔の付近。)」

そう、彼女はアンデッドが造られていること、つまりプラントのようなものがあると睨んでいるのだ。

「ラピス、どうですか?」

「・・・やっぱり、塔の付近にある丸い紋章みたいな部分から強い反応がある。多分あそこが。」

「了解です、みなさん。」




「みなさん、敵アンデッドは塔の付近にある紋章の部分から出現しています。あれを消せば。」

「そうか!さすがルリさんですね。」

ハーリーのウインドウがルリの前に映り、ルリは照れたように若干顔を赤らめるが、

「・・・私も、頑張ってたんだけど。」

かなり不機嫌そうなラピスのウインドウが遮るように映り、ハーリーとルリを睨んでいる。

「あ、ラピスもさすがだね!」

「なんかとってつけたような言い方だね、ハーリー。」

「ご、ごめん。」

じっと睨まれ、ウインドウが小さくなる。

この間にもアンデッド達の攻撃をかわし続けているのだからさすがだ。

「私傷ついた。」

悲しそうな顔で言う。

「うっ。」

「悲しい、無視された。」

「あう。」

「・・・」

「・・・」

ラピスは横のルリを見ながら言う。

「ハーリーの料理食べてみたいなあ・・・いっつもルリだけ」

「ぜひ作らせてもらいます!いえ新作も全て!!(泣)」

「デザートとか・・・」

「やらせていただきます!(泣)」

「私専用でね。(笑顔)」

「はい・・・(大泣)」

表情と言葉に負け、ハーリーはラピスと約束した。

だが本人は悲しそうな顔からいっぺんし、笑顔である。

彼はやはり女性には勝てないようだ・・・ローズにも。

しかしもう一人いる、ルリだ。

「・・・」

今度はこちらが不機嫌そうだ。

「ハーリー君、私に言ってくれましたよね。」

「へっ?」

「今度新しい料理の味見をしてほしいって・・・」 (第九話参照)

思い出したのか顔が若干青ざめる。

「あ、いやその。」

「また嘘をついたんですね。」

「はう!?」

優しいハーリーの胸に突き刺さる言葉。

一度破っているのでその威力は増大されている。

「楽しみにしていたんですよ、私は。」

「う、うう・・・」

無表情から目が哀しみを帯びる。

「また裏切られてしま」

「この埋め合わせは必ずしますから!!」

そう言いウインドウが閉じられる・・・逃げたな。

「・・・クスッ。」

それを見ながらうっすらと笑った。

ラピスは不満そうにルリを見る。

「一人だけ抜け駆けはなしですよ。」

「ルリ〜〜!」

と、三人の会話があったのだが・・・

「(怒)」×六

他のブリッジメンバーは青筋を立てている。

この緊急事態に他でやれやゴラァ!!というオーラが出ているようだ。

だが彼の本領発揮はここからである。最近忘れがちだがハーリーといえば、不幸。



「話は終わったかハーリー?(怒)」

「やけに長かったなあおい(怒)」

「僕たちががんばってるというのに君は・・・(怒)」

「奴らの前にお前が村正の錆びになりてえみたいだな?(怒)」

「フィン・ファンネル一斉に喰らってみるか?あ??(怒)」

「・・・やはり君とは相容れないみたいだね、ハーリー君(怒)」

サブを筆頭に全員の怒りマークがついたウインドウがコクピットに表示されていた。

特にアキトが一番怖い。黒い皇子様全開みたいだ。

彼だけ攻撃せずアキト達はずっと忙しかったんだから当然だろう。

「す、すみません!!」

と言い、先ほどルリとラピスが言っていた地点に対し、ツイングラビティバスターライフルを向ける。

だがそれに気づいたテオディアが、今度は翼と衣のようなものに隠れていた両手を出し、頭の上で合わせ漆黒のオーラが放たれる。

「!?」

同時にウイングゼロも発射したが、二つはぶつかりあい消滅した。

「グラビティブラストが相殺された!?」

リョーコが驚愕し、すぐさまサブがツインガトリングレールカノンを放つ。

しかしそれらはテオディアの前にいるオリジナルのアレクトが、翼を前にし何と受け止めたのだ。

レールカノンは直前で止まり、消えていく。

「何てインチキだ・・・」

アカツキは呟く。オリジナルの三体は他とは違い、特殊な力を持っているようだ。

「これでどうだ!フィン・ファンネル!!」

しかしその中シンは念じ、フィン・ファンネルを飛ばした。

そう、いくらアンデッド達でもこんな小型のファンネルを止められるはずがない。

フィン・ファンネルは各機の援護の中、アンデッド達の間をすり抜け紋章の部分にメガ粒子を放つ。

紋章部はそのまま爆発し、同時にテオディアも動揺しているかのように見えた。

「どうだ!」

『・・・あくまで、神に逆らうというのですか?』

テオディアの言葉に、シンは返す。

「当たり前だ!俺達が自分たちで手にしてこそ本当の平和なんだ、神様なんて出る幕じゃねえんだよ!!」

『αナンバーズと同じことを言い、そして死んでいったのです。あなた達も同じ運命になるでしょう。』

「俺達はαナンバーズじゃねえ!自分の未来は自分で決めるんだ!!」

タカヤの言葉に、全員が頷く。

『・・・ならば、私も本気になりましょう。この星の永遠なる平和のために。』

と、急にテオディアの周りにオリジナル以外のアンデッドが集まる。

「?」

それを見ていた全員はその意味が分からなかった。

しかし、

「なっ!?」

テオディアが両手を交差し胸の前に持っていき、テオディアの全身にアンデッドが吸い込まれていく。

そして光がテオディアを包み、晴れた場所には・・・

巨大な、漆黒のドラゴンのようなものに変わっていたのだ。

『ギシャアア!!』

牙が並んだ口を開き、雄たけびを上げる。

その光景に、全員は声が出なかった。

大きさは先のテオディアを軽く上回る。

「・・・冗談、きついぜ?」

リョーコがポツリと言う。

だが、シンは臆さずに叫ぶ。

「へっ、とうとう化けの皮剥がれやがったな!何が神だ!今のてめえはただの怪物にしか見えねえぜ!!」

『・・・あなたがたを倒し、この星を封印するのです。』

「言ってろ!」

シンは機体を動かしグラビティライフルを放つ。

しかし、

「!?」

今度は届く前に弾かれてしまった。

「何!?」

そしてドラゴンの姿をしたテオディアは、口を開け、漆黒の光を撃ち放つ。

Hi−νガンダムは下に急降下し地面に機体をつける。

その攻撃は、先にある地面にぶつかり大爆発を起こす。

「・・・なんてパワーだ。」

その威力にシンは圧倒される。

『神に逆らいし者達よ・・・無に還りなさい。』


「いいえ、無に還るのはそっちよ!」


「!?」

シンの耳に聞きなれた声が響く。



    ナデシコD ブリッジ

「上空より接近する機影を確認。」

「えっ?」

「これ・・・ネオ・ジオン旗艦、レウルーラ!」

モニターに映し出されたのは、赤に染まった戦艦、レウルーラである。

「テンカワ提督、しばらくです。」

「セレスさん!」

モニターに映るセレスは、パイロットスーツを身につけていた。

「テンカワ・ユリカさん、私たちも行動をおこしました。今全世界で、連合とネオ・ジオンによる共同作戦が展開されています。」

「セレスさん、本当ですか?」

「はい。ようやく掴みかけた平和のために、私たちも戦います。」

「ありがとうございます・・・これで終わりするためにも。」

コクっとセレスが頷き、ウインドウがレミーに切り替わる。

「テンカワ提督、私達レウルーラが援護します。」

「はい、お願いします。」

「各機発進!」

レウルーラのハッチが開き、機動兵器群が出撃した。



「セレス、来てくれたのか。」

Hi−νガンダムの隣についたナイチンゲール。すぐに通信を繋げた。

「ええ・・・あなたが見せてくれた人の力が、今世界を覆っているわ。私達も・・・もう一度信じてみる。

 人の可能性、そして本当の平和を。」

「お前が来てくれれば百人力だ、見せてやろうぜセレス。俺達の力を、神様を語る化け物にな!」

「ええ!」



「ようタカヤ、苦戦してるみてえじゃねえか。」

ダイゼンガーの肩に、フェンリルが手を置く。

「へっ、余計なお世話さ。俺はこれから本気を出すとこだったんだ。」

「そうかい・・・ま、とりあえずあのいかれた奴を潰せば終わりだ。」

「ああ、俺達の未来を勝手に決められてたまるかよ!」

「その通りだ・・・行くぜ!!」



バード形態からMS形態へと戻ったエピオンが、ウイングゼロの横につく。

「もうハリったら、いきなり飛び出していくんですから。」

「ごめん、ローズ。」

「いいですよ、あなたの気持ちはわかってます。」

「うん、そういえばミレイ達は?」

「あの子たちは他の地域に行っています。」

「そうなんだ・・・ローズ、今度の戦いはとっても厳しいよ。」

「大丈夫よ、ハリ。あなたがいるから。」

「・・・行こう、ローズ!」

「ええ!」



テオディアは降りてきた三機、レウルーラを見る。

『なぜ・・・そこまでするのです。なぜ・・・敵であるナデシコと共に戦うのですか?』

「私たちは自分の、人自身の力で未来を創っていかなければいけないのよ!」

「確かに俺達も一度は人類に絶望したさ、だが・・・それをこいつらが変えたのさ!未来への人の可能性を見せてな!!」

「私は、大切な人たちと・・・愛する人と生きたいんです!この世界で!!」

「あいにく、神様に頼るほど私たちは落ちぶれてないわ・・・未来は、自分達で切り開くものよ!!」

レミー、ユウイチ、ローズ、セレスが言い、

「レミー、世界の兵士に通信を!」

「ええ。」

中継衛星を通じ、セレスは全世界に向かったネオ・ジオン兵に伝える。

「世界で戦っているネオ・ジオン全兵に言うわ。この戦いは、いままで以上に辛く、苦しいものよ・・・」



    ペキンコア

「セレスさん・・・」

ペキンコアで必死に戦っている、ミレイ。



『しかし、私たちに敗北は許されない!』



    ジャブロー

「そう、そのとおりです!」

連合総本部で、敵の侵攻を食い止めているエリ。



『アースノイドも、スペースノイドも関係ない!私たちは・・・人類の未来のために、戦うのよ!!』



    ニューヨーク

「・・・ファンネル。」

通信を聞き、民間人の避難のためにファンネルでアンデッドを落としていくシズ。



「連合に遅れをとらないで、ネオ・ジオンの底力、地球の人々に見せてやりなさい!!!」

『おおおおおお!!』

全世界に散ったネオ・ジオン兵の雄たけびが、レウルーラからこの場に響く。

「(セレス、お前を信じ戦っている奴らがこんなにいるんだな・・・アースノイドでも、助けてくれんだな)」

シンは、素直に嬉しかった。

「人の想いが、一つになってゆく・・・私たちも、負けられないよアキト!!」

「ああ、分っているさユリカ!!」

「こうまでしてくれちゃあ、後には引けねえなサブ。」

「おう、当たり前だぜ!」

「僕も会長としてではなく、一人の男として燃えてきたよ。」

ナデシコクルーも、気力がさらに増していた。

「行くぜ!」

ユウイチが言い、全機がテオディアに向かう。

だがアレクト、ティシポネ、メガイラが立ち塞がる。

「邪魔すんじゃ・・・ねえー!!」

アンスリウム、サルビア、トールギスがメガイラを、ウイングゼロ、エピオン、ゼラニウムがアレクトを、

Hi−νガンダムとナイチンゲールがティシポネと対峙し、戦闘を開始した。

その間、ダイゼンガーとフェンリルがテオディアに向かう。



地上にいるメガイラは、素早い動きで三機の攻撃を避ける。

「くそ、早すぎる。」

「こうなりゃ同じ地上で戦うしかねえな。」

「それもやむなし・・・か。」

三人は離れたままでは無理だと判断し、空中庭園に降り立つ。

メガイラは待っていたかのように雄たけびを上げる。

「へっ!犬はお座りでもしてやがれ!!」

アンスリウムが右腕のグレネードを放つ。

グレネードは確かに当たったかのように見えた、しかし、

「な、なにぃ!?」

爆炎から無傷のメガイラが飛び出し、アンスリウムに襲いかかる。

「リョーコ君!」

それをトールギスが飛び込みシールドで防いだ。

エステのキャタピラと違い、MSの脚部スラスターを採用してある全機はホバーによる高速移動ができるのである。

「くっ、このお!!」

シールドを使いメガイラを弾き返す。

メガイラは地面にたたきつけられる前に体勢を立て直し、今度は全身に光を纏い始めた。

「くっ。」

アカツキは咄嗟に危険を感じ、フィールドを展開する。

しかしメガイラは光とともに駆け抜けフィールドに接触、いともたやすく突き破り、トールギスに襲いかかる。

「しまっ」

だがすでに遅く、メガイラはトールギスを押し倒し上に乗る。

その衝撃でメガグラビティキャノンを手放してしまった。

そして全身の発光が強まり、それらはコクピット内のアカツキに襲いかかった。

「ぐおおおお!?」

「会長さん!」

「くそー!」

トールギスの上で雄たけびを上げるメガイラに二機はフィールドアタックを敢行した。

同時攻撃で弾き飛ばしたが、やはりあまりダメージが見られないようだ。

「無事かアカツキ!?」

「うっ・・・スーツのおかげで何とか。でも機体がレッドゾーンのダメージだ。」

ウインドウに危険危険と表示されている。

二人の視点からもトールギスは全身からスパークを上げ、白煙も上がっている。

しかしメガイラは再び突っ込んできた。

「ちっ!?リョーコ!」

「おお!」

サルビアとアンスリウムはトールギスを庇うように立ち、グラビティライフルとツイングラビティキャノンを放った。

メガイラは攻撃が放たれる前に回避し、側面に回る。

「くそ!おめえはシンかよ!!」

そう、攻撃をした時はすでにそこにはいない。

まるでシンと戦っている感じがしていたのだ。

「これでも喰らえ!」

サブは機体を向かせ、グリップを握りツインガトリングレールカノンをばらまく。

さすがにこれはよけきれなかったようで、数発被弾し動きが止まった。

「そこだ!!」

その瞬間サルビアは全ミサイルを発射し、大爆発が起きた。

「・・・やったか?」

「わからねえ、手ごたえはあったが。」

やがて爆炎が晴れていく・・・そこには、うずくまりながらも牙を向けるメガイラの姿が。

「くそ!」

ダメージは与えたらしいが、致命傷ではなかった。

「どうなってんだよあいつの構造は!?」

二機はホバーで動く中、アカツキは半壊したモニターからメガイラのあることに気付いた。

「(・・・そうか!)」

何かに気付いたアカツキは、機体を必死に、地面に這わせながらも動かしある場所へ向かう。

そこにあるのは・・・手放したメガグラビティキャノン。

それを握り、今出せる出力を絞りだし銃口を展開する。

「(これがラストチャンスか。)」

「二人とも、少しでいい。奴に背を向けさせてくれ!」

アカツキの通信を聞き、様子を見た二人は頷く。

そしてホバー移動しながら注意を自分たちに向けさせ、


「二人とも避けろ!!」


アカツキの言葉と同時に空中へ上がる。

メガイラは二機を見上げ動きが止まった。

「トールギス、リミッター解除・・・フルパワー!」

地面に伏せスナイパーのような体勢でメガグラビティキャノンを構える。

「消えろ!!」

そして撃ちだされたメガグラビティキャノン。地面をえぐりながらメガイラを飲み込み、

「や、やった・・・」

メガイラの姿は跡形もなく、トールギスは全エネルギーを使い果たし地に伏せた。

「アカツキ、やったな!」

「あ、ああ。」

「会長さん、どうやったんだ?」

「奴は、自分の正面からの攻撃は完全に防いでいたが、側面の攻撃は防ぎきれていなかったからね・・・」

「なるほどな、よく見てるぜ。」

アンスリウムとサルビアは動かないトールギスを支える。

「他は・・・まだか。」

「とりあえずナデシコまで運ぶからな。」

「すまない、頼むよ。」



一方、ティシポネと戦っているアキト、ハーリー、ローズは、驚異的な再生力に苦戦していた。

「何て生命力だ、生半可なダメージでは回復してしまう。」

「どうすれば・・・」

「なら、再生できないほどのダメージを!」

と、痺れを切らしたローズが、エピオンを加速させる。

「!?ローズ、だめだ!」

飛び出したエピオンはグラビティブレードを横薙ぎした。

しかしそこにティシポネの姿がなく、ローズの脳裏にビジョンが映る。

「(下!)」

視えたとおり下からの攻撃。両目から撃ちだされたレーザーを避ける。だが・・・

「えっ!?」

撃ちだされたレーザーが消え、避けたエピオンの背後から出てきたのだ。

「逆方向から!?」

すんでのところでかわすが、表面をかすっていく。

「・・・さすがに、常識は通用しないな。」

アキトは唖然とし、対応策を考える。

「アキトさん、どうすれば・・・」

「(攻撃が全く効かないはずはない、あの攻撃をかわすには最速で動き、一撃を決めるしかない。)」

「ハーリー君。」

「?」

「タイミングを完全に合わせるんだ、俺と君の一撃を。」

「・・・もしかして。」

タイミング、一撃。この言葉に昔のある一コマが思い浮かぶ。

「あれだよ、君も好きだったんだろ?懐かしさで俺もいっしょに見ていたし。」

「や、やれるんですか!?失敗したら大きな隙が・・・」

「出来るさ、俺と今の君なら。」

「・・・分りました。あの掛け声も、ですね。」

「ああ!」

「ローズ、少しでいいからあいつの動きを止めてくれ!」

ハーリーに言われ、ローズは頷き再び機体をティシポネに向かわせる。

エピオンは両肩のクローを展開する。

そして急接近とともにクローを突き立てようとする。

だがティシポネは黙って喰らうはずもなく、回避しレーザーを放つ。

レーザーはまたも消え、今度はエピオンの真上に現れた。

「くっ!?」

エピオンはフェアリーを展開し、それらを逸らす。

と、同時にティシポネが左右の両手を鞭みたいに振るい、エピオンを直撃した。

「ううっ。」

だがエピオンは耐え、シールドに装備されているヒートロッドを振るい、ティシポネをからめとった。

ヒートロッドは発熱し、ティシポネを焦がしながら動きを封じた。

「ハリ!テンカワさん!」

ローズは二人に叫ぶ。

そして・・・その言葉と共に、ティシポネに向かう二機。

ゼラニウムとウイングゼロだ。

アキトは高速で動く中、機体のロックを解除しゼラニウムがオーキスから飛び出す。

同時に下にいたウイングゼロが最高速で飛び出したゼラニウムの下に、仰向けになりながらついていく。


「全てを、この拳に。」

「受けてみろ!」


ゼラニウムの左腕とウイングゼロの右腕に最大でフィールドが収束される。

二つの白は一つとなり、一筋の白き閃光となり奔る。



「「ダブルゲキガンフレア――!!!!」」



ティシポネがレーザーを放つが、二つの力により弾かれ、拳が胸部に接触した。

硬い皮膚は突き破られ、何かが砕かれる音がし五十メートルの巨体は風穴を開け悲鳴と共に消滅した。

「す、すごい。」

その流れるような動きにローズは驚き、改めて二人の実力を知った気がした。

「(でも、あれが初めてのコンビのはずなのにあそこまで・・・信頼、しあってるということですか。)」

そのことが何となくおもしろくなかったローズである。

「(まだ私では・・・いえ、必ずハリの隣を私のものに!)」

恋人だけでなく、戦場のパートナーとしても一番になるためにローズはアキトをライバル視していた。

ゾクッ

「・・・何だ、今の寒気は?」

アキトは言い知れぬ寒気に襲われていた(笑)



   シン・セレス

「こいつ、でけえ・・・」

「フェンリルと同じぐらいか。」

シンとセレスはモニターに映るアレクトの姿に目を細める。

見た目は空戦アンデッドだが、先ほどの特殊能力は侮れない。

「喰らえ!」

Hi−νガンダムが先手必勝とグラビティライフルを放つ。

しかしアレクトは翼を広げ高速で動きかわす。

「ちぃ、セレス!」

「そこよ!」

今度はナイチンゲールが拡散グラビティブラストをまき散らすが、それを軽やかに回避しながら下から接近してくる。

「なっ!?」

慌ててシールドを構えるが、それをものともせず体当たりをしてきた。

「うう!?」

強烈な一撃によりコクピットが揺れる。頭部をメット越しにシートにぶつけてしまうほどである。

「こいつ!」

シンは機体を素早く反転させライフルを撃つが、やはり当たらない。

「ウイングゼロやエピオン以上のスピードなんて・・・」

「ちっくしょー!!」

Hi−νガンダムはバズーカを放つが、弾丸をよけ再び向かってきた。

両手の爪を輝かせて。

「くっ!」

シンはバズーカを横にし爪を受け止めたが、すぐに切り裂かれてしまう。

そのままアレクトは牙の並んだ口を開き、Hi−νガンダムにかみつこうとする。

「シン!」

だがそこにナイチンゲールが割って入った。

牙はナイチンゲールの首元に食い込み、砕いてゆく。

エネルギーチューブが噛み千切られ、モノアイも点滅している。

「貴様ー!!」

Hi−νガンダムがアレクトを横からシールドで突き、無理やり引き離し蹴りつける。

「大丈夫か!?」

「え、ええ。コクピットは無事よ。でもエネルギーチューブにダメージを受けて、予備カメラしか働かないわ。」

「・・・セレス、やるぞ。」

「え?」

「俺とおまえなら、奴の動きを止められる。」

「・・・わかったわ、サポートは任せて。」

「行くぞ!」

同時に二機は加速する。アレクトの動きの先を視、念じた。


「フィン・ファンネル!!」

「ファンネル!!」


射出させる計二十のファンネルがあっという間にアレクトの周囲を囲み、動きを封じようとする。

アレクトは翼で身を完全に包み、亀になったが・・・

「落ちろ!」

「終わりよ!」

二十のメガ粒子が全身を襲い、アレクトは防ぎきれず翼を広げる。

そこに飛び込んだナイチンゲールが、両手のビームサーベルとビームトマホーク、隠し腕をつかい切り刻む。

翼すら斬られ、アレクトが落ちる寸前、

目の前には両手にビームサーベルを持ったHi−νガンダムが構えをとっていた。

「消えろ!閃双・連牙斬!!」

かつての愛機、ファントムの最強技を超えたスピードで繰り出し、アレクトは細切れにされ消滅した。



一方、タカヤとユウイチはテオディアの作り出す謎のバリアに攻撃を跳ね返され続けていた。

「ツイン・ファングスラッシャー!」

「ダブルD・ブーストナックル!」

フェンリルとダイゼンガーから放たれる武器はテオディアの直前で止まり、激しく空間を歪ませながら戻ってきた。

『無駄な抵抗を・・・人は、何故こうも愚かなのか。』

「黙れ化け物!!」

「俺達はてめえみてえな悪魔には屈しねえよ!!」

タカヤとユウイチは叫び、互いの重力波を撃ち放つ。

だがやはり、テオディアには届かない。

『人は、今も自然を破壊しこの星を脅かす。己の欲を満足させるためだけに動き、命を奪い互いに殺し合う・・・』

テオディアは二機に向けて話しかける。

『憎み、妬み、その身を喰い合い、更なる憎悪を、破壊を生み出す存在・・・』

翼を大きく広げ、目を細める。

『故に人は、この星にふさわしくない存在なのです。』

「・・・確かにな、人はおめえの言うとおりの存在かもしれない。」

「だけどな、俺達にも大切な人が、守りたいものだってあるんだよ!化け物のお前にはわからねえだろうがな!!」

『・・・愚かな感情。人は同じ過ちを繰り返し、その度に傷つけあう。それを打開するには・・・!?』

と、急にテオディアの様子がおかしくなる。

『ぐっ・・・私は・・・テオディア・・・星を・・・星を・・・』

「様子がおかしいぞ。」

テオディアの言葉がとぎれとぎれになる。

『システム、異常・・・損傷・・・封印・・・ふう、い・・・』

と、急にテオディアの目が赤く染まり、雰囲気が変わる。

『危険値オーバー・・・消去・・・全て・・・消去・・・す、る。』

「!?」

と、テオディアの背後の塔から再び光が撃ちだされるが、今度は様子が違っていた。

光が一直線に伸び、その塔の周囲が光りのようなものに包まれていったのである。

「なに!?」

「ナデシコ、どうなってる!?」

タカヤは慌ててナデシコに問う。

「これは・・・塔から伸びた光が月付近で静止していたアクシズ後部に直撃。引き寄せられている。」

「な、なんだって!?」

「このままいくと、十分後にアクシズが大気圏に突入する。」




    ナデシコD ブリッジ

「アクシズ後部の進路は!?」

「このままいけば、98パーセントで地球に直撃する!」

ジュンの言葉にラピスが返す。

「何故だ、奴の目的は地球の封印。それが何故?」

「もしかしたら、さっきのナデシコの攻撃がテオディアの思考回路に損傷を与えていたのかもしれません。」

ルリの言葉通り、ナデシコの攻撃は直撃していたからだ。

「くっ、ユキナちゃん。各宇宙軍からの情報は?」

「・・・駄目。ほとんど先の戦闘で行動不能、それ以外は世界各地でアンデッドと戦闘中。」

「テンカワ提督、私達の軍も全て散らばっているため宇宙には残っていません。」

レウルーラのレミーからの通信も、現実をみせられていた。

「くそ!」

ジュンは自分の机に拳を叩きつける。

だが気持ちは全員同じだった。

世界が、いや地球が再び破滅を迎えようとしているのだから。

「ナデシコD、ハイパーグラビティブラスト用意!」

ユリカは消沈しているクルーに檄を飛ばす。

「目標は光の塔!」

そう、あくまでアクシズを引き寄せいるのはあの塔からの光なのだ。

「りょ、了解。チャージ・・・完了。」

「てえー!!」

ラピスが引き金を引き、ハイパーグラビティブラストは一直線に向かう。しかし、

テオディアと同じように、直前で弾かれてしまった。

「くっ!」


各パイロットも、ナデシコから放たれるハイパーグラビティブラストが弾かれるのを見ていた。

「こんな時に相転移砲が使えれば・・・条約を無視してでも入れておくべきだったか。」

収容されたアカツキはモニターを見ながら言う。



「もう一度!」

そして今度はレウルーラからも来る、しかしまたしても弾かれてしまった。

「そんな、このままじゃ・・・」

と、モニターに映っていたウイングゼロは突如急上昇し、レーダー外へ向かってしまう。

「ハーリー!?どこ行くの?」

ラピスが言うが、あっという間にウイングゼロはその姿を消してしまう。



その光景は、シン達も見ていた。

「ハーリーおい!どこいくんだよ!!」

サブが言うが、まるで聞いてないと言った風に上空へ消えてしまう。

「あ、あいつ・・・逃げる気か!?」

「何を言うんですか!ハリはそんな人ではありません!!」

リョーコの言葉にローズは反抗する。

だが・・・シンとアキト、タカヤとユウイチだけは、ハーリーの行動に気付き始めていた。

「まさかあいつ!?」

「そうか・・・それしかないのか!」

「しょうがねえ!」

「こっちは俺達がやるしかねえか!」

それだけ言い、ダイゼンガーとフェンリルは再びテオディアへ突っ込む。

そしてシンは香織に通信を繋げた。

「香織!あれを射出しろ!!」

「えっ、シン?」

ウインドウに映し出された香織は驚いている。

「Hi−νガンダムの最終形態だ!やるしかねえ!!」

「で、でもテストもしてないのに。」

「やるんだ!ウリバタケさん!!」

ウリバタケのウインドウも開かれる。

「・・・わ〜た!すぐに出すからな。受け取れ!!」

そしてハッチが解放され、一つの長い銃身が射出される。

それを受け取ったHi−νガンダムは、右手をトリガー部に差し込む。

「アキトさん、俺を乗せていってください!」

「ああ。ユリカ、みんな。ここは任せる!」

Hi−νガンダムがオーキスのコンテナ部にしがみつき、二機はウイングゼロと同じ方向に加速していった。

「アキト、何をする気なの・・・まさか!?」




    衛星軌道

「・・・見えた。」

全出力で大気圏を脱出したウイングゼロを、ハーリーは必死に動かしとある地点を目指していた。

それは・・・アクシズ後部の目の前に出ることである。

今の地球の全戦力は、ほとんどが戦闘、または行動不能なのは聞いていた。

再びそらすことは不可能なのである。

それならば破壊するしかない。

しかしその戦力すら無いのが今の地球圏である。

だからこそハーリーは賭けにでた。

ケンが新しく改良してくれたツイングラビティバスターライフルは、フルパワーでも三発まで撃てる。

完全なアクシズでは不可能だが、半分に割れたアクシズ、しかも核パルスを搭載した後部なら、一撃を与えれば破壊できるはずなのだ。

下手をすれば死ぬかもしれない。しかしそれによって多くの人が死ぬのをハーリーは見たくなかったのだ。

自分が奪った命と同じような目にあう人々の姿を。

「(僕もこのアクシズに関わっていたんだ、なら・・・決着をつけるんだ!)」

さらに加速し、アクシズ後部の前に躍り出る。

しかし、撃つ為には全てのエネルギーを使うのだ。

銃口をアクシズへと向け、チャージを開始する。

だが機体は地球の引力に引かれ落ちていく。

機体の表面温度が上昇し、モニターは赤に包まれていく。

ハーリーはゼロシステムをフルに使用していた。

だが表示されるロックは共に引かれる破片に邪魔され、ゼロシステムも混乱している。

「くっ!」

一発目を放ったが、それは外部をかすめただけであった。

すぐさま二発目をチャージする。

銃身が摩擦熱やチャージ時のエネルギーによって悲鳴を上げ始めている。

「今度こそ!」

二発目が放たれる。だがまたしてもかすめるだけであった。

ハーリーの脳裏に絶望という言葉が浮かび始めていた。

そしてその瞬間、一際大きな破片がウイングゼロを直撃した。

「!?」

機体が大きく揺れバランスを崩してしまう。

「うわああああああ!?」

だが突如ウイングゼロを何かが受け止めた。




    ミラの園

『消去・・・全て・・・消去。』

口を開け、再び漆黒の光線を放つが、それをダイゼンガーは最大出力のフィールドで受け止める。

「けっ、やっぱただの人口知能じゃねえか。」

タカヤは悪態をつく。

「やらせねえ・・・絶対に地球はやらせねえ!!」

ユウイチは今一度気合いを入れ、タカヤと目を合わせ頷く。

「「みんな、少しでいい。あいつのフィールドを弱めてくれ!!」」

「任せなさい、レミー!」

「行くぜサブ!」

「おお!ナデシコも頼むぜ!」

「行きますよ!!」

先手にナデシコとレウルーラからグラビティブラストが放たれ、止んだ瞬間ナイチンゲール、アンスリウム、サルビアがフル武装を撃ち、

歪みに向かってエピオンのグラビティブレードが突きささる。

「行くぜユウイチ。」

「ああ、昔作った・・・あの技をな!」

二人は全神経を集中させる。

「「そこだああああ!!」」

そのグラビティブレードを目印にダイゼンガーとフェンリルは突進する。

ダイゼンガーは村正を展開し、フェンリルはアーマー部を変形させる。

「一意専心!」

「スラッシュ・モード起動!」

二つの切っ先が、グラビティブレード部を目指す。



「「覇慟双剣神(はどうそうけんじん)!!!」



すさまじい衝撃が機体を揺さぶる。

そして・・・

バリーン!

何かが砕ける音がし、その瞬間フェンリルのアーマー部は爆発。

フェンリルは弾き飛ばされるが、ダイゼンガーはテオディアの懐に飛び込む。

「うおおお!!」

そしてそのまま村正を突きさし、ナデシコを超すであろうテオディアの中に飛び込んで行ったのだ。

「タ、タカヤー!」



    衛星軌道

「あっ・・・」

下に見えるのは・・・ゼラニウム、そしてHi−νガンダムだった。

「ハーリー!てめえこの馬鹿野郎!!」

「シン、さん。」

「一人で何が出来る!・・・仲間だろ。」

「アキトさん。」

二人は微笑み、すぐに顔を引き締める。

「おめえの考えは悪くねえ、ナデシコも一度やったことだしな。」

「ああ、あの時みたいに一点突破だ。俺達三人の力でな!」

「はい!」

ウイングゼロはコンテナの上で機体を固定する。だがコクピット内はスパークが発生している。

右側にはHi−νガンダムも同じような体勢で、バスターライフルに似た武器を構えていた。

「俺達は自分の手で未来を掴む。神様なんて必要ない!!」

「僕も、自分の道を探し続けていた・・・やっと、答えが見つかったんだ!!」

「一発限りだがな・・・見せてやるぜテオディア!人間の力を!!俺達は・・・」

ゼラニウム、ウイングゼロ、Hi−νガンダムは各々の銃口をアクシズへと向ける。



     テオディア内

「ここが・・・」

タカヤは周囲の様子に驚愕していた。

多くの命が周りに蠢いている、そんな感じがするのだ。

「!?あれか。」

そして少し上方に一際大きく躍動している部分がある。

そこにあるのは脳の形をしている。

「奴の中枢か!?」

そこに向かうとする。だが目の前に、ダイゼンガーと同じサイズのテオディアが現れた。

『消去・・・消去。』

「ちっ、狂った機械風情が!」

だがテオディアは同サイズのまま二つに分裂した。

「!?」

そしてまた分裂し、また分裂し・・・八体になったのだ。

「分身だと!?」

八体になったテオディアは、一斉に漆黒の球体をダイゼンガーに撃ち放つ。

「ぐうう。」

全身に喰らってしまい、コクピットにも衝撃が奔り、計器全てが異常をきたす。

「うっ・・・くそ。こいつを倒さなければ・・・地球も、みんなも・・・香織。」

ショートした機械の一部分がタカヤの頬を切り裂いていた。

血が止まることなくあふれる。

そして再び追撃の一撃がダイゼンガーを襲った。

「・・・ここまで、かよ。」

すでにモニターはブラックアウトし、意識も朦朧としてきた。

刀を握る力も・・・無くなりかけていた。

だが、その時タカヤの前に光があふれる。

「あ、あれは。」

そこに見えるのは、自分と同じように斬艦刀を振るい、勇ましく戦うダイゼンガーの姿。

そして、叫んでいる。一人の漢の声が。


「我は・・・神を断つ、剣なりぃぃぃぃ!!!」


そして一刀に斬り倒される、白き巨人があった。

『あきらめては駄目。』

光の映像が終わり、女性の声が聞こえる。

「君は・・・イ、ル、イ?」

『まだあきらめては駄目。私は封印の時の残留思念だから・・・長くは、話せない。』

「・・・」

『ゼンガーと同じ、剣よ。』

「ゼン、ガー?」

『立ちあがって、モリナリ・タカヤ。』

すると、全身に再び力が湧いてきたのだ。

「はあ、はあ・・・俺は。」

目に、強い意志が宿る。

「俺は。」

すでに見えないが、そこに確かに感じる。

「俺は!」

両手で強く、柄を握りしめ、振り上げる。



「神を断つ、剣だああああ!!!」



同時に衛星軌道でも、三人の男たちが叫ぶ。



「「「絶対に死なない!!!」」」



ダイゼンガーのモノアイが光り、口から雄叫びが響く。

振り下ろされた神速の剣は・・・目の前にいるテオディアごと、中枢を分断した。

そして三機の最大出力のグラビティブラストが同時に放たれ、一点に集中し・・・アクシズを貫いた。

アクシズはあふれ出す光と共に、大爆発を起こす。

三機はオーバーヒートを起こし、至近距離からも爆発が襲い、三機はバラバラに別れ地球に破片とともに落ちて行った。



そして同時刻、地球では・・・クリスマスに似合う、雪ではない流星群が確認されていた。

軍人も民間人も、戦いが終わり、それを見上げていた。

新しい年の近づきを感じながら・・・




















     地球連合軍事裁判所

「これより、元ナデシコC所属、マキビ・ハリ中尉の裁判を開始する。」

普通の裁判所とは違う、厳重に警備されたここに、今地球連合、そしてネオ・ジオンとナデシコクルーがそろっていた。

「マキビ・ハリ中尉は戦時中ナデシコCを裏切り、ネオ・ジオンへ逃亡した。間違いはないかね?」

「・・・ありません。」

ハーリーは裁判長を見、はっきりと答える。

「ならば離反は軍の規定により、マキビ・ハリ中尉は銃殺」

「ちょっと待ってください!」

そこに手を上げたのはルリだ。

「裁判長、彼は確かに私達の元から去りました。しかし理由を聞いても、納得できるのですか?」

「ふん、理由だと?貴様らの言う不正などでっちあげだ!本当ならそこにいる宇宙人どもなどこの場に呼びたくなかったわ!」

その発言に、真っ先にキレたのはシンだ。

「なんだと・・・てめえ、今なんつった?」

「何度でも言ってやろう。戦争を仕掛けてきた宇宙の亡霊など、この場に呼びたくなかったわ!」

「てめえ!」

シンは跳びかかろうとしたが、セレスが彼の手をつかむ。

「・・・!?」

だが、セレスの手も震えていた。

「そもそもそのデータすら怪しいものだ。貴様らはマシンチャイルドとかいう兵器だろう、この手のものは簡単に造れるのでは?」

「!?」

「そんな・・・そんな言い方って!」

ローズもあまりの言葉に怒り、ハーリーは明らかに目つきが、雰囲気が変わった。

「ん?何だねその目は?同じ兵器を馬鹿にされて怒ったのかね??」

ハーリーの両隣りにいた軍人が彼を抑える。

だが、怒りを感じているのは・・・ネオ・ジオン、ナデシコクルーもいっしょのようである。

「まったく、そもそもニュータイプやマシンチャイルドとうものは兵器と変わらんのだよ。立場を理解しているのかね?」

「ええ、理解しているつもりですわ。裁判長。」

と、セレスが柔らかな声で言う。

「宇宙人が何だね?」

「その前に、これを皆様にも見ていてもらいたいのです。」

と、目線を反対側に座ってたミスマル大将に送る。

ミスマルは頷き、手を振るった。

そして裁判長の背後にある巨大モニターに、様々な情報・・・その、裁判長自身のが、流れ始めたのである。

「なっ、なに!?」

「覚えがありますわよね・・・ご自分のことですもの。」

「で、でたらめだ!!」

だが、明らかに取り乱し、汗をかいている裁判長に、全員が冷ややかな視線を向ける。

「だまされんぞ・・・そうか、貴様らはそうやって再び戦争を起こす気なのだな!?そうだそうに決まって」


「だまらっしゃい!!」


と、ミスマル司令が立ち上がり、拳を机に叩きつける。

「君の悪事は全て明るみに出たのだ!拘束されるのは君なのだよ。」

ミスマル司令が側に控えているジュンに言う。

「アオイ君、この愚か者を連れていくのだ!」

「了解です。」

ジュンは裁判長に歩み寄る。

「・・・おのれ、兵器の分際で!」

と、裁判長は持っていた銃をハーリーに向けたのだ。

「!?」

「貴様のせいで!!」

だが銃弾が放たれる前に、持っていた拳銃が弾き飛ばされる。

「ぐおっ!?」

「おいおい、人の弟分に手えだしてんじゃねえよ。」

サブが拳銃を撃ち、弾き飛ばしたのだ。

「く、くそー!!」

尚も逃げようとする裁判長を、目の前に躍り出たユウイチが一本背負いで床に叩き付ける。

「悪党は悪党らしく、縛につけや!」

気絶した裁判長に言い放ち、目でジュンに合図し、それに応えジュンが引きずって退場して行った。

「・・・さて、裁判が途中になってしまったな。」

と、今度はミスマルが裁判長のいた席に座る。

「ここからは私が判決を出そう・・・マキビ君。」

「は、はい。」

「君は・・・自分のしたことを、後悔してないかね?」

「!?」

それは、以前リョーコに言われたのと同じであった。

ナデシコ、ネオ・ジオンのメンバーも真剣な表情で見ている。

「ありません・・・後悔など、していません!」

はっきりと、言いきった。

「そうか・・・君は、自分の正義のためにナデシコを裏切ったのかね?」

「違います、僕はもう正義なんてどうでもいい。自分の信じた道を、歩みたかっただけです。」

「・・・」

「・・・」

しばらく二人は無言になり、張りつめた空気が辺りに立ち込める。

「ならば、判決を言い渡そう。」

ミスマルは一度目を閉じ、再び開ける。

「マキビ・ハリ中尉は離反という重罪を犯した。」

「・・・」

「本来は銃殺だが、今までの功績をたたえ・・・罪を取り消しとする!」

その瞬間、裁判所は大きな歓喜の声が響いた。

「しかし!」

だが、まだミスマルの言葉には続きがあった。

そして声もピタリと止む。

「奪った命の数はあまりにも多く、その分も償いをしてもらわねばならない。」



「罪も取り消すが、軍籍も取り消す!以後、連合、ネオ・ジオンへの所属は不可能とする!以上!!」



ミスマルの言葉に、真っ先に反対したのがユリカだ。

「お、お父様!」

「ユリカ・・・」

「どうして、どうしてです!ハーリー君も最後は地球を救ってくれたのに!」

あの最後の戦いは、確かにハーリーがいなければ勝てなかっただろう。

「それなのに何故」

「ユリカさん。」

と、そこにハーリーの言葉が割って入る。

「銃殺でないだけいいです。僕が犯したのは、許されるものではありません。ミスマル司令、ありがとうございます。」

「うむ・・・(死に急ぐな、若き力よ。)」

「・・・はい。」

小さく、ハーリーに聞こえる声で言い、ハーリーは控えていた二人の軍人の後についていき、ドアの前に立つ。

そこで一度、仲間の方を見る。

どこか寂しそうな瞳が、全員を貫く。

ルリを、ラピスを、そしてローズを見、ハーリーは微笑み、ドアから外に出て行った。

「・・・また、仲間がいなくなっちまったな。」

シンはポツリと言い、帰って来なかった友を思い出す。

あの最終決戦の後、シン、アキト、ハーリーはボロボロの機体で奇跡的に助かった。

だが・・・タカヤは、帰って来なかった。

テオディアは崩れ落ち、ミラの園とともに海中へと消えたと聞いている。

中にいたタカヤも、巻き込まれてしまったのだろう。

香織はその事実に失神し、気が付いたあとも泣き続けていた。

今は立ち直りかけているが、まだ傷は癒えていない。

「でも、完全な別れじゃないわよ。シン。」

セレスが慰めるように言い、ルリとラピスも頷く。

「そうですよ、あの子のことだからまた連絡でもしてくれます。」

「なんだったら、こっちから連絡すればいい。」

「・・・私も、待っています。」

ローズも、しっかりと前を見ていた。




     裁判所外

「・・・」

外に出る途中で私服に着替えたハーリーは、空を見上げながら考えていた。

「(これからどうしようかな、お金はしばらく困らないけど・・・バイト、探すしかないのかな?)」

学歴などないハーリーは、普通の会社は雇ってくれないだろう。

「(・・・どこかの定食屋とかに行こうかな?でも家のこともあるし・・・売り払うのも、考えるしかないのかな。)」

このご時世にフリーターというのも、考えものである。

「(いや、いっそ自衛隊とかに入隊して機動兵器部門にいくのもいいかな。)」

とりあえず家に帰るという考えに落ち着き、タクシーを拾おうと停留所に向かおうとした時、

パッパー クラクションが鳴り響き、ハーリーはそちらを向くと、

「いやあ奇遇だねえハーリー君。」

「ア、アカツキさん?エリナさんにプロスさんまで・・・珍しい組み合わせですね。」

「確かにそうですなあ。」

運転席に座ったプロスがほほ笑みながら答える。

「ところで・・・君に話があるんだけど。」

エリナがハーリーをジッと見ながら言う。

「話ですか?」

「そう・・・ま、とりあえず乗りなよ。その後ゆっくりと話したいことがあるんでね。」

後部座席に座ったアカツキがドアを開け、ハーリーを招き入れる。

「・・・わかりました。」

何かを感じ、ハーリーは車に乗り込む。

ドアが閉じ、車は走り出した。

アカツキはそこで、一つのウインドウをハーリーに見せる。



「実は我がネルガルの・・・」



車は走っていく、次の場所へ向かって。

争いの終わった世界を・・・青い空の下を。















作者とキャラによる座談会(最終回)

犬夜「どうもお久しぶりです、犬夜です。まずは・・・完結いたしました、このお話が!!」

正座で、深々とお辞儀をする。

犬夜「応援してくださった方もおり、私も励みになりました。まずはお礼の言葉を」


シン「お〜い作者!早くこっち来てはしゃごうぜ!!」


犬夜「・・・え〜今何か聞こえましたが無視して、まずは皆様読んでくださりありが」


ユウイチ「さ〜くしゃ〜!!」

ブチッ

犬夜「うるせえぞこらー!」

セレス「何よ、一人だけ大人ぶっちゃってさ。」

犬夜「だから、今まで読んでくださった人たちにお礼の言葉をだな。」

ルリ「読んでくださる人、いましたっけ?」

犬夜「・・・さて、つづきまして。」


「(逃げたな。)」×全員


犬夜「主役三人、一言づつよろしく。」

シン「いきなりか?まあこんなお話だが、読んでくれてありがとう。」

アキト「まさかここまで続くとは思っていなかったが、とにかくありがとう。」

と、ここで言葉が止まる。

犬夜「あっ、タカヤは・・・そうか、香織に捕まってるな。」

ユリカ「ラブラブだね、私とアキトみたい。」

ハーリー「(・・・アキトさん、毎度毎度大変ですね)」

アキト「(ありがとうハーリー君、わかってくれるのは君だけさ。)」

ラピス「ユリカは終わっても変わらないね。」

レミー「しかし最後は悲しいわね。結局タカヤ君は帰ってこず、ハーリー君は軍から追放なんて。」

サブ「会長さん、今ここにいないが何する気だったんだか・・・」

リョーコ「ろくなことになりそうもないがな。」

犬夜「あははは・・・まあ、いいじゃないですか。」

ハーリー「はあ、僕は最後まで不幸に・・・(泣)」

ローズ「大丈夫ですよハリ、私はいつでも待ってますから。」

ハーリー「うう、ありがとうローズ。」

犬夜「ま、とりあえず戻りましょうか。宴会の場へ。」

と、犬夜も来ていたジャンパーを脱ぎ、近くの椅子にかけ宴会場へ歩いていく。

だが・・・

シン「ん?」

犬夜が脱いだジャンパーのポケットに、何かが入っている。

シン「これは・・・設定資料か。」

入っていたのは〜Future Story〜の資料だった。

シン「どれ、どんなこと書いて」

セレス「シ〜ン、何してるのよ。」

シン「あっ、悪い悪い。」

セレスに呼ばれシンは、どうせ終わった話だと思いポケットに入れなおし戻って行った。

しかしシンはタイトルをよく見ていなかった。

そこに・・・「第二次」の文字が、書かれていたことに気付かなかったのだ。




第二次スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜 始動決定!!



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