「・・・そんなことがあったんですか。」

「ええ、三年前に起こったもう一つの事件。それが今回のロストライフ現象の始まり。」

居間には、テーブルを挟んで二十代後半の女性と、若干幼さが残る顔の青年が話していた。

周りにも一人の少女と、鋭い目つきの青年も居る。

「あまり軍でも知られていないはずよ、私たちのこともね。」

「そうですね、少なくとも僕は知りませんでした・・・あの、人型兵器の存在も。」

「だから・・・フリーのあなたに、手を貸してもらいたいの。」

「・・・」



全ての始まりは、三日前にさかのぼる。



   深夜 東京上空

「南!」

「見つかった!!」

三機のヘリがワイヤーに吊るされたコンテナを運んでいる途中、二機の人型兵器の攻撃を受けていた。

そのうちの一機の放った攻撃がワイヤーに当たり、衝撃がヘリを襲う。

「痛ッ!?」

「ワイヤーが・・・本機だけでは維持できません!」

「くっ、持って行かれるくらいなら。」

後ろに乗っていた女性がワイヤーの切り離しを強行した。

コンテナは落ちていく・・・それを見ていた少女が、そのコンテナを強く睨む。

その時、コンテナでは何かが起きていた。

人型兵器二機も、それを見ながら撤退していく。

「・・・まったく!」



そしてこれが、多くの少女達を巻き込み、地球での戦火の狼煙を上げることになろうとは・・・




第二次スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜

第二話「落ちてきた「守人」 広がる波紋」




   二日前 東京市内

「じゃあ私は夕飯の買い物に。」

「あっ、私も手伝います。」

「いえ、赤緒さんは地鎮祭を手伝ってもらいましたし。」

「あんなの手伝いのうちに入りません!居眠りまでしてしまいましたし、私もっと役に立ちたいです。」

すごんで言う変わった巫女服の少女、赤緒が元気に言い、それに神主の格好をした人、五郎は微笑みながら言う。

「そういえば、赤緒さんはさっき寝言を言ってましたが、どのような夢を?」

「へっ?あ、それは・・・見知らぬ小学生くらいの男の子とちょっと女の子が遊んでいる夢なんですけど、

 それを見ているのは私のはずなんですが、何故か私でない気がして。」

「何ですかそれは?相変わらずおかしな人。」

「あっ!まさか私三年前にもう子供がいたんじゃ・・・」

と、いきなりとんでもないことを言う赤緒に五郎は呆れた風に言う。

「有り得ませんよ、その男の子が小学生くらいなら赤緒さんがいくつの時に産んだんです?」

「ええ、でも私記憶がないから・・・不安で。」

と、横のショーウインドウに置かれているテレビがニュースを流しているのが聞こえる。

『ニュースをお伝えします。今月に入って南米での「ロストライフ現象」はすでに11件。いずれも原因はわかっておらず・・・』

「怖いですね、日本で起きなければよいのですど・・・」

「そうですね。(ロストライフ現象、三年前から世界各地で起き始めた怪事件・・・私が記憶を失った時と同じ・・・三年前。)」

二人は一旦無言になったが、

「それでは先ほどの件ですが、家のお風呂を掃除しておいてくれませんか?」

「はい!ピッカピッカにして待ってますね。」

五郎の言葉に頷き、赤緒は五郎の荷物を奪い取るように取り、駆け出していった。



    東京市内

「ったく、これだから日本は狭くてキライよ。」

と、渋滞に愚痴をこぼす妙齢の女性が運転する車の中、後部座席に座っていた少女は何かに反応したように外を見た。

「・・・居る!」

と、そのまま外に出て行ってしまった。

「ちょ、ちょっとルイ!?そんな身体で・・・」

だが人ごみに隠れてしまった。




「ふんふふん♪」

と、赤緒は鼻歌を歌いながら鉄橋の下を歩いていると、ふいに先ほどの夢の光景がよぎった。

「えっ・・・」

脚を止める。と、

「?」

目の前に旅人のような格好の男が現れた。

「強力な血族反応・・・見つけた。」

「はい?」

だが次の瞬間、男は一瞬で距離をなくし、赤緒の首を右手で締め上げ、壁に押し付ける。

「あうっ!?」

そのまま締め上げながら男は問う。

「言え!お前らの仲間に刀使いはいるか!」

「な、なんのこと・・・」

「とぼけるな、答えろ!」

「あ、ああ・・・」

だが、赤緒が流す涙を見、男は手を離した。

咳き込む赤緒を見ながら懐に手を伸ばす。

「本当に知らないのか・・・血続でこの反応、てっきり八将陣かと思ったのに。」

そこから出した不思議なY字型の物体を見ながら、「こいつもあてにならんなあ」と呆れた風に言う。

「違ったならいい、悪かった。」

だがいまだ咳き込む赤緒に脚が止まる。

「・・・」



    橋の下

「(せっかく家に帰って掃除しようと思ってたのにい・・・)」

赤緒は先ほどの出来事を思い出し、目の前のカップめんと男を見る。

これで水に流せと、そういうことらしい。

「どうした?喰えよ。反省を物で現したんだから。」

ため息をし、「夕食前なのに」と心の中で呟く。

と、そこにいかにもホームレスといった感じの男が出てきた。

「小川原さん、可愛い娘連れてデートですかい?」

「馬鹿、んなんじゃねえよ。」

「(デ、デートってえ!?)」

赤緒は一人ビックリした風に反応するが、あることに気付く。

「小川原?」

「ああ、小川原両兵だ。別に覚えなくてもいいぜ。」

「あ、私は柊赤緒といいます。あの、さっきはどうして私を?」 

「ヒイラギか・・・それを聞きたいのはこっちだぜ。お前本当にただの血族か?だとしたらあの反応は異常だ。」

「血族って?」

まったく知らない言葉に赤緒は首を傾ける。

「本当に何も知らねえみてえだな。じゃあそれ喰って帰りな、知らぬが仏さ。」

それを知り、興味をなくしたらしい。

「家はお寺じゃありません・・・あの、いつもあんなことを?」

「ああ、時々な。」

「私が血族だったら・・・どうする気です?」

「・・・」

「まさか殺す?」

小川原は不適に笑いながら、赤緒を見る。

「だとしたらどうする?」

カップめんを地面に落とし立ち上がった。


「許しません!!!」


怒りを顔に表し小川原を睨む。

「どうしてそんなことが出来るんですか!自分の都合だけで人を傷つけちゃいけません。そんな人最低です!!」

「・・・じゃ俺は最低だ。」

「私帰ります、ちょっといい人だと思ってたのに。」

と、反対方向に歩いていこうとするが・・・

「おい。」

「何です!?」

「忘れもん。」

と、手に自分が持っていた荷物を渡される。

若干恥ずかしながら受け取ると、


ドオオオン


「な、何!?」

「・・・始まったな、いよいよ。」

「えっ?」

小川原が立ち上がり、音の鳴った方を見る。

「こっちじゃあロストライフ現象だなんて呼ばれてるがな。まず間違いねえだろう。」

「そんな、あそこには神社があるのに・・・五郎さん!」

駆け出していく赤緒に小川原は声をかけるが聞いてはいないようだ。

「・・・」



    山中

爆発が幾つも起こる中、次第に煙が晴れていく。

「はは、さすがだねえ。丈夫にできてらあ。」

そこには大鎌を持った男、そして・・・そして砲門らしきものをいくつも付けた小型の機動兵器らしきものが二機いた。

「こんな古代人機じゃ役にたたねえぜ、ん?」

男は通信が来たらしくしばらく会話し辺りを見る。

「リバウンドで衝撃を消していたとなると・・・強え血族が恐らく近くに」

と、柄の部分を頭の上に掲げる。

そこに真上からの蹴りが打ち込まれた。

「居やがった。」

弾き返したその主を、男・・・カリスが見る。

綺麗に着地したのは、先ほど車に乗っていたルイと呼ばれていた少女だった。

こちらを睨むルイにカリスは口笛を吹く。

「丸腰で相手たあいい度胸だな、けどよお。」

と、ルイの背後の土が盛り上がり、そこから金属の触手が伸び、身体を絡め取った。

「女だからって手加減しねえぜ。」

「・・・よかった。」

「!?」

「私もそのつもりよ。」

と、不適に笑った瞬間、ルイの右足につけられていたY字型の物が光と共に衝撃を放った。

「ハッ!」

しばらく眼を瞑っていたルイは、肩で息をしながら眼を開ける。

だが・・・

「やっぱりお前か、昨日人機を遠隔操作でリバウンドさせた奴。聞いたことあるぜ、血続の力でな。」

目の前に無傷のカリスがおり、ルイは地に手をつけたまま水面蹴りを放つが、

「あっ。」

後ろに倒され、服のしたから大鎌の刃が首筋に向けられる。

「だが力の消耗が激しい・・・その点俺達はいくら力を使おうがそんな苦痛は感じない。そうだ、お前も「虚無」にきて強化手術受けな。

 そしたら俺の女にしてやるよ。」

その言葉にルイは口をつぐみ、言い放つ。

「・・・お喋りな男は大キライよ!」

「!?」


ザンッ


鎌の刃が服を左右に引き裂いた。

「んだとてめえ!人がせっかく誘ってやってんのによ!!」

そのままカリスはルイの身体に覆いかぶさる。

「気取ってんじゃねえよふざけやがって!ただ殺すだけじゃすまさねえぞ。今オレぁテメエの恐怖に引きつった顔が見たくてたまんねえ・・・

 いい声で泣いてくれよ、じゃないとつまんねえぜ。」






「はあ、はあ、はあ・・・」

赤緒は全速力で山を登り、問題の場所に辿り着き、そこに巨大なコンテナを発見した。

「ここれ何?昨日こんなのあったかしら・・・まさか、これがロストライフ現象の原因!?」

と、ドサッという音がし、そちらを見ると、

「人!?あ、あなた大丈夫?しっかり・・・」

だが、服は無残に引き裂かれていた。

「ひどい、どうしてこんな。」

だが、そこに大鎌を振り回しながら再びカリスが現れた。

「くそったれがあー!何だよテメエは!泣くどころか叫び声一つ上げやがらねえ・・・胸糞悪いんだよー!!」

鼻と口から血をながしながら叫び散らす。

「だ、誰です!?まさか・・・あなたがこの子を!?」

「ああッ!!??」

その眼が、赤緒を捉えた。

「おぉ、女じゃん。次はテメエか!?」

その言動に寒気を感じた。

「ちょっと待ってな今そのつまらない女ぶっ殺すから・・・ああ殺す。つまんねえしもういい殺す殺・・・」

「(い、いけない!)」

大鎌を振り上げ、

「コロスッ!!」

「だめえー!!」

赤緒はとっさにルイを庇おうとした。

と、その時ルイの右足からさっきより強い光と衝撃がカリスに放たれた。

「なにい!?」

その衝撃はカリスを吹き飛ばす。

「・・・えっ?何が起きたの??」

訳も分からず呆然としていると、ルイが赤緒を見る。

「あ、青葉・・・」

「えっ?」

と、そのまま苦しそうな声を上げる。

「だ、ダメ死なないで!」

カリスはその間に立ち上がり、憎しみがこもった目で二人見る。

「てめえも血族だったのか、さがす手間がはぶけたぜ・・・いっしょに殺してやる!!」

「どうして、どうしてこんなことするの!何で平気で人を傷つけるの!!」

「黙れよくそ女――!!!」

と、殴りかかろうとした右手が何者かに掴まれる。

「なっ!?(こいつ、強化人間の俺の腕を片手で。)」

「(あ、あの人は。)」

ボロを纏った男、両兵は口を開く。

「お前、八将の一人だな。それなら仲間に相当腕の立つ刀使いがいるはずだ、答えろ!」

「知るかよ!男がさわんじゃねえ!!」

「そーかい。」

両兵は頭を後ろに引き、


「そいつは悪かったな!!」


おもいっきりカリスにぶつける。

「ぐあああ!?」

カリスは額から血を流し倒れる。

両兵は赤緒を見、驚いた。

「(こいつは、黄坂ルイ・・・てことは、こいつは人機か!)」

「あ、あの・・・」

「お前、何で逃げない?」

「えっ?」

「今からでも遅くない。そいつを置いて逃げろ。巻き込まれるぞ。」

「で、でも放って置くのは・・・」

「たとえそいつに意識があろうとなかろうとされてることは同じだ!分かったらとっとと行け!!」



「そうはさせるかよ!!」


立ち上がったカリスが叫び、後ろに人型兵器が二体現れる。

「ろ、ロボット!?」

「ちっ、ロボットじゃないありゃ人機だ!」

「人機!?」

「あれがロストライフ現象の正体だ!殺人は奴ら強化人間が、町は人機が破壊する・・・

三年前から始まり、二年前の戦争後もずっと起こってる。南米じゃもう当たり前のことだがな。」

「やれっ!!」

と、カリスは激昂し命令を下した。

「こっちだ、来い!」

両兵は赤緒を連れ巨大なコンテナの後ろに隠れる。

「バーカ、どこに逃げても同じなんだよ!」



目の前の地面を銃弾が抉る。

「くそっ!だから早く逃げてりゃよかったんだ!」

「・・・だめよ・・・だめ。殺させない」

「!?」

赤緒はポツリと呟きながらルイを抱きしめる。

「この子の中には今まで生きてきた沢山の思い出が詰まってる。たった三年しかない私と違って・・・」

その言葉に両兵は驚く。

「三年前私は柊神社に拾われて・・・けどそれまでの記憶、思い出なんて一つもない。だからこの子の思い出が消えるようなことがあれば・・・」


「私が代わりになったほうがずっといい!!!」


「!?」

だが両兵はそんな赤緒の胸ぐらを掴む。


「マジで殺すぞテメエ!人間何年生きたかで価値が決まるみてえな言い方しやがって・・・笑わせるな!!!」


赤緒はそんな両兵の真剣な顔に目を開く。

「確かにそつが死んだら思いでは消えちまうだろうがよ、けどその記憶の中に何がある!たった一人で思い出とやらが出来んのか?

 いいか!悲しむのは死んだ本人じゃないその思い出を共にすごした仲間なんだよ!テメエの三年間何もねえなんて本当に言えるのか!?」

赤緒の脳裏に五郎の顔が浮かぶ。

「たとえ一ヶ月でも一日でもそんな記憶があるなら命を粗末にするな・・・それが一番人を傷つけることじゃねえのか!?」

「・・・・・・」

と、近くで銃弾が飛び込み土煙が起こった。

「おおーいかくれんぼはもう終わりにしよーぜ。」

カリスが楽しそうに言う中、両兵は悔しそうな顔をする。

「・・・でも・・・だったら。」

赤緒は俯かせていた顔を上げ、涙を溜めた・・・力を感じる瞳ではっきりと言う。



「私は大切な人が傷ついたり苦しんでいるのを・・・黙って見てるなんてできません!!」



その顔に両兵は驚愕したが、思ったことを口に出した。

「分かった、ならお前が人機に乗れ。」

「え・・・人機って・・・」

「こいつだ。」

赤緒の疑問を目でコンテナを指し答える。

「もうこれは俺の動かせるシロモノじゃない・・・だがお前なら出切る筈だ、血族のお前なら。」

「ど、どういう・・・」

「人を守れる力をやると言ってるんだ。」

そう言い両兵はルイを抱きかかえる。


「人のためにどこまでも自分を犠牲にして・・・勝手に死ね。」


それだけ言い両兵は走って行く。

「あっ・・・」

一人残された赤緒は、コンテナを見つめ、立ち、

「人を守れる力・・・私がこれに乗れば・・・みんな助かる。」

そうして触れた手に別の・・・自分以外の誰かを感じ、扉が開いた。

「・・・」




カリスは一向に出てこない赤緒に痺れを切らしていた。

「出てこねえつもりだな、かまわねえプレッシャーガン用意。」

すると二機のうちの一機の銃口が光り始める。

「発射だ!」

轟音とともに光の筋が延び、コンテナを直撃し周りに衝撃が奔る。

「ハーハハハ・・・は・・・」

だが、煙が晴れ目の前に巨大な人型がいた。

「人機が!?」

コンテナだったものは形を変え、両足を強く地面につける。

それはMSと似た大きさの、青い人型兵器。

「これはロボッ・・・いえ、人機!」

「なっ!?モリビト二号・・・」

離れてみていた両兵は人機の型に驚愕する。

「バカな!あのプレッシャーの中で・・・無傷!?」

そのころ赤緒はコクピットの中で手足を動かしていた。

人機はまったく同じ動きをする。

「すごい、体の通りに動く。」

だがカリスはその素人っぽい動きに疑問を抱いていた。

「(まるで素人だ・・・だがあの性能は気になる。モリビトタイプは他に無いしな。)」

そうして後ろに控えている黒い機体に命令をした。

「よっしゃ、あの機体俺が貰う!各機接近戦で頭部を潰せ!!」

「く、来る!きゃあああ!!」

慌てて両手で庇う仕草をすると、モリビト二号も頭部を両手でかばい、敵の斬撃を受け止めた。



「な、何て操縦・・・ルイじゃないの?一体誰が??」

野次馬の中に先ほどの車を運転していた女性がつぶやく。

そこに無線で通信が入ってきていた。

「私よ、至急モリビトと敵人機のデータとって頂戴。」



赤緒はコクピットからすぐ後ろに神社があるのを確認した。

「だ、だめ、これ以上下がったら・・・神社が!?」

と、目の前の敵人機の胸の辺りに光のようなものが見えていた。

「(何・・・アレ、何か光ってる。さっきはあんなのなかったのに・・・人機に乗ったときから見えてる?)」

だがそこに敵人機が攻撃を仕掛けようとしている。

「やっ!来ないで!!」

とっさに手が動き、右手が胸の光に当たった。

その瞬間、敵人機が発光し、後ろに倒れたのだ。

「・・・動かない?い、今のは・・・私がやっつけたの??」

その様子にカリスは激昂していた。

「どうしたんだ!動けよオイ!!」



それは車から見ていた女性、黄坂南も驚愕する光景だった。

「し、信じられません。モリビトが接触しただけで敵人機が完全に停止しました。」

「な、なんですって!?」

無線の声にさらに驚愕する。



赤緒はもう一機の人機を見る。

「(やっぱり見えてる・・・)」

もう一度触ろうとしたが、敵人機は後ろに跳躍し空中に浮かびながら背を向け逃げようとしていた。

「(町の方に行っちゃう、止めないと!)」

と、強く思った瞬間、モリビト二号の両脚部にバーニアのようなものが現れた。

「これは!?」

それを使い一気に距離を詰め、光の部分を押し下に叩き落した。

「はあ、はあ・・・」

カリスは二機がやられ困惑していた。

「ど、どうなってんだよ!ありえねえこんなこと!!」




「私は、夢を見てるの?やっと・・・見つけた。」

南は呟く。

そのニュースは、すでにテレビを通じ流されていた。




    ???

「また・・・始まるのね。」

どこかの地で、背後に人機を従えた女性が言った。






    柊神社 居間

「それが・・・始まりの事件ですか。」

時間は戻り、居間で南は一人の青年と向き合っている。

「ええ、そして・・・その後シュナイガー・トウジャが現れ、赤緒はやられたわ。」

「先ほど見せてくれた銀の機体ですね。」

「そうよ。」

「・・・」

青年は一旦黙り、再び口を開く。

「ロストライフ現象は僕も何度か耳にしてます。でもアンヘルという組織、いえレジスタンスのことは知りませんでした。」

「そうでしょうね、私達はあくまで南米のベネズエラ所属ですし、軍の将校でもかなり上じゃないと知らないでしょうね。」

「そして「キョム」という組織との戦争に使われていたのが人機、それを動かせるのは血族と呼ばれる人々・・・でしたね。」

そういい隣の少女を見る。

「人機相手に通常の兵器は役に立たない・・・そう言ってましたよね、小河原さんは。」

「ああ、そうだ。自衛隊や軍の機体ごときじゃどうにもなんねえ。」

「・・・」

その言葉に青年は、自分の知っている戦友達の顔を思い出し、心の中で有り得ないとおもっていたが、顔に出さず続きを言う。

「そしてその次の日、また事件が起きたんですね。」

「そうよねえ、朝になって赤緒が襲われ、解決したら報道陣が押しかけ、テレビで事件の説明をして、乗ってくれる人募集して、

 まさかあれだけの人がチャレンジしてくるなんて・・・そして川本君の妹さんがきて、結局一人しかみつからなかったんだけど。」

「川本さつきさん、離れで休んでいる子ですね。」

「ええ、彼のお兄さんは今南米で人機開発チームの重要なポストについてるからね。」

「・・・」

大切な人に会えない、それを青年は痛いほど実感していた。





    昨日 市街地

「・・・シバ、戻ってねえぜ。」

カリスは目の前に居る黒髪の女、シバに話しかける。

「多少腕のたつものならゾールごとき容易い。」

その隣にいる大柄な男が続けて言う。

「しかしこれで分かった、先ほどの戦闘でのモリビト二号の起動・・・あの場所には血族が集う。」

「よおし、一気に叩き潰してやる。」

「いや・・・それは許さん。」

「何?」

「?」

意外な言葉に二人はシバを見る。

「確かに我らは血族の可能性がある者を抹消してきた、しかし操主として覚醒した者は別だ。その体を調べる必要がある。」

「ちょっと待てよ!なら何故今までそうしなかった?中には覚醒した者もいたはずだぜ!?」

「気付かんか、今まで殺してきた者全てにこの国の者の血が混ざっていたことを。」

「!?」

「父上もこの国出身、日本には何かがある・・・そして力を持つものがこの国はよく集うしな。

 しかし必要なのは体だ、出切れば無傷の方がいい。」

一旦口を閉じ、カリスの胸に手を当てる。

「そこでお前に頼みがある・・・奴らの心を殺せ、心などという余計なものはいらん!」

「へっ、何かと思えばそういうことか。」

「どうするかは貴様に任せる、女の扱いは得意なんだろ?」

シバは不適に笑う。

「人機操主で血族か、乗ったぜ!多少抵抗してくれねえとおもしろくねえしな。」

「・・・くだらん、私は勝手にやらせてもらう。」

「ふっ、好きにしろ。」

大柄な男はそれだけいい、姿を消した。




    柊神社

朝再び襲い掛かってきた敵、人造人間ゾールの襲撃を退け、テレビでの会見が終わり、賭け気分で人機パイロットの募集をし、

やっとこさ一息ついていた南だったが、五郎がY字型の物体、「アルファー」が反応していた人物が来ていたことを告げられ、

慌てて赤緒に連絡していた。

「み、南さん?」

「あの子はどこ!?さつきちゃんは?」

「へっ?」

「あの子も血族だったのよ!!」

と、そこに再び無線が入る。

「えっ、八将陣の人機が町に!?」

「わ、私はどうしたら?」

「とりあえずモリビトで出て。私はあの子を捜すから!」

「さつきちゃんのことお願いします!」

それだけいい赤緒はモリビト二号に乗り込んだ。



数分前 市街地外

バイクに乗った青年が、自販機で買ったコーヒーを飲みながら一休みしていた。

「ふう・・・まったく大変だなあ。あっちこっち行ったりきたりだし、今日も研究所で機体のチェックか。」

と、突如町のほうで爆音が鳴り響く。

「!?あ、あれは・・・」

そこには数機の黒い人型兵器が、自衛隊のエステバリスと交戦していた。

「あっ!?」

一機が敵の攻撃に倒され、コクピットからパイロットが這い出て行った。

「・・・また、また!」

青年はヘルメットをかぶり、バイクを市街地へ向けた。



    市街地

「くっ、現代兵器が通用じんだとそんなバカな話があるか!!」

隊長機の量産型エステバリス2がライフルを撃つが、当たらない。

「だ、だめです!速過ぎて照準が!」

すでに一機はパイロットが脱出している。と、そこに敵人機が銃口を向けるが、

「させない!」

青の人型兵器、モリビト二号が横から体当たりをし敵人機、バーゴイルを吹き飛ばす。

「ロボットか!?」

「あなたたち・・・許さないから!」

と、そのバーゴイルの背後に天から一点の光が降り、そこに・・・新しい人機が降り立っていた。

「モリビト・・・あの方と同じ機体か。相手いとって不足はない。」

「また、新しい人機!?」



    山中

「きゃっ。」

先ほど赤緒と別れたさつきが地面に倒され、目の前でカリスが笑っていた。

「安心しな、別に殺しはしねえ・・・ただ死んだほうがマシって思うかもな!」

「!?」

そうしてカリスはさつきの服を破り捨てる。

「いやああああー!!!」


    
    市街地

「・・・・・・」

エステバリス隊の隊長は、無残に首を掴まれ動けないモリビト二号を見ていた。

「この程度かモリビト二号!!」

「うっ・・・くう!」

そのまま後ろに倒されてしまう。

だがそこには隊長機や部下のエステバリスがあり、赤緒はとっさに四つんばいになり直撃を回避した。

それを見ながら敵人機は巨大なオートタービンを作動させ、回転しながらうなり始めた。

そして横から叩きつけ、赤緒は必死でガードするが吹き飛んでしまった。

「さあ戦え!あの方と互角に渡り合った腕を見せてみろ!」

だがモリビト二号は反撃しようとしない。

「何故反撃しない?」

「わ、我々が居るから・・・先ほどから動けない我々を、そして町を守るように・・・町を壊さないようにしているように見えます。」

「ばっ、バカな!」

「・・・そういうことか。」

自衛隊の二人の話を敵人機、O・ジャオーガのパイロット、ヴォルクスは聞いていた。

「失うことを恐れる者に操主など務まらん、バーゴイル、邪魔なエステバリスを破壊しろ!」

「ま、待って!」

「なら私を倒すことだ・・・そうすればバーゴイルは命令を撤回される。」

赤緒は震えながら叫ぶ。

「・・・みんな逃げてえー!!」

だが、それを見たヴォルクスは怒りしか浮かばなかった。

「どこまでも人をナメた奴だ・・・やれ!バーゴイル!!」

そしてバーゴイルからプレッシャーガンが放たれる。

爆音が響き渡る。


「い・・・いやああ!!」


だが、煙が晴れた所には、多少ダメージを受け倒れたエステが二機と・・・一機の、最初にやられたエステが立っていた。

「あっ、ぶ、無事なの!?」

赤緒は間違いなく直撃だと思っていたからだ。

ヴォルクスも、間違いなく破壊したと思っていた。

と、そこに声が響き渡る。

「なんで・・・なんでこんな。」

それは若い男の声だった、そして・・・



「また戦争がしたいのか!あなた達は!!」



ウインドウがコクピットに映る。

それは蒼い瞳にボサボサの黒髪、少し幼さが残った顔をしている。

「何だ貴様は?・・・まあいい、我々の邪魔をするなら排除するまでだ。」

と、再びバーゴイルがプレッシャーガンを放つ。

「あ、危ない!」

赤緒は慌てて叫ぶが、

「何!?」

そのエステはローラーダッシュで意図も簡単に避け、バーニアで空中へ飛び上がり、一機のバーゴイルにワイヤードフィストをぶち込んだのだ。

「まだだ!」

そのまま反転し、ハードポイントに留めていたライフルを連射する。

バーゴイルはかなりの機動力で回避するが、そのエステは左に持ったナイフを投げつけ、回避した瞬間再び発砲し敵のライフルを破壊する。

「(あの動き、かなりの修羅場を潜り抜けてきた証か・・・ふん、思わぬ掘り出し物だ!)」

ヴォルクスは腑抜けなモリビトよりこちらのほうがいいと思ったのであろう。

「はああああ!!」

ヴォルクスの気合とともに、オートタービンがうなりエステに向かう。

「くっ!?」

エステはその攻撃をバーニアを吹かせ飛んで回避したが、右脚に異常をきたす。

「(やっぱりダメージが残ってるのか、どうすれば・・・)」

着地し、再びライフルを構え発砲する。

しかし攻撃は敵機の見かけとは違う素早い動きにかすりもしなかった。

「いい射撃だ、だが・・・正確さゆえに読みやすい!」

「しまっ」

その言葉を言う前に、エステはオートタービンの直撃を受け吹き飛び、ビルにめり込む。

「あ・・・う。」

その青年の視界は衝撃によりぼやけていく。

「ふっ、中々の腕だ。機体がそれで無ければ私が負けていたのかもな・・・だが戦場では通じん、そのようなことはな。」

敵機は背を向け、モリビト二号に近付いていく。

それを見ながら、青年は気を失った。





    居間

「そして僕は自衛隊の人々に助けられた。」

「いえ、あなたが彼らを助けたのよ・・・マキビ・ハリ君。」

青年、マキビ・ハリは苦笑する。

「そんな大したことはしていません、あの時は必死でしたから。」

「その必死が命を救ったのよ。それに奴らは平気に人を、町を破壊する・・・少しは羅螺軍みたくしてほしいわ。」

「でも、羅螺軍もやってることは変わりません。結局は戦争なんですから、勝手に領土を造ってるとこも。」

その言葉に両兵は頷く。

「同感だ、神の力だか何だか知らねえが、キョムみたく好き勝手にやりやがって。」

「まあそうね、今の連合軍では対処できる範囲を超えてる。条約で無差別攻撃をしないというのは苦肉の策ね。

 あちらの防衛軍との共闘が実現できればいいんだけど、私達同様私設部隊だから。」

「(・・・弱体化していたとはいえ、連合のほかにこんなにも力をもった人々がいるなんて。)」

「それでマキビ君、先ほど私が言ったこと、考えてくれたかしら?」

真剣な表情でジッと見つめる。

「手を貸してくれ、ですか?」

「そうよ、今はまだ始まりに過ぎない。対抗するためには、少しでも歴戦の人が必要なのよ、私達は。」

「・・・」

「あなたが軍を辞めた理由は知らないけど、エステバリスで八将陣と渡り合ったのは事実。」

「人機を動かすパイロット、血族がいないからじゃないんですか?」

「・・・そうよ、私達は年端もいかない子供を戦場に送らなければ戦えない。でもやらなければ破滅が待ってるわ。」

ハーリーはそっと、南の隣で座っている少女を見る。

「確かエルニィさんでしたね、あなたも操主なんですか?」

ハーリーは緑色の髪の活発そうな少女、エルニィに聞く。

「そうだよ、僕も血族さ。」

「(ルカと同じくらいの子か。)少し、待ってくれませんか?」

南はそんなハーリーを見、頷く。

「私達はこれから赤緒さんを救出に行くわ、本拠地があるとされる衛星軌道までね。」

「そんなことが!?」

と、そこにエルニィが話し出す。

「可能だよ。さっき自衛隊の人たちにも話したけど、人機の動力源「血塊炉」は永久電流を用いた超電導体のこと。

 人機の飛行システムはそれをリバウンドに変換、その下にある磁力ミストに反発して空を飛ぶんだ。」

「単機で成層圏離脱が出来るの機体ってのは、そんなにないんですけどね。」

「そんなものを確実に、大量に持ってるのさ。未だ戦力が回復してない軍じゃ相手にならねえ。」

「・・・小河原さんの言うとおりですね、僕も甘く思っていたようです。」

「だからこそ、今あなたの力を貸して欲しいの、マキビ君!」

「・・・」

「俺達は今から戦力の心当たりがある場所に行ってくる。だが・・・生半可な覚悟ならこっちから願い下げだ。」

「両兵!」

あまりの言葉に南は怒るが、両兵は気にしてない感じでエルニィとともに外で待っている自衛隊の元へ向かった。

「ごめんなさい、彼あんなんだけど、本当は」

「分りますよ、みなさんの反応を見てれば。」

ハーリーは両兵をどこか、もう一人の兄貴分に似ていると思いクスッと笑う。

「僕は席を外します・・・戻ってくるかは、分りませんが。」

「多分昼ごろには出るはず、私も君が来てくれると信じてるわ。自衛隊のエステを貸してもらえるようにもね。」

それだけ言い、南はハーリーを連れ外に出る。

ハーリーは持って来たバイクにまたがり、山道から出て行った。

「・・・二年前の英雄、か。」




    山道

「さて。」

適当なとこでハーリーはバイクを止め、設置されている通信機を作動させた。

「こちらネルガル第一研究所所属、マキビ・ハリです。アカツキ会長に至急繋げてください。」

ウインドウが映り、見知った女性社員が回線を繋げるのを待っていた。今日彼が会議などないのをハーリーは知っているのだ。

「こちら愛の伝道師アカツキ・ナガレです・・・マキビ君急にどうしたんだい?仕事以外で来るなんてさ。」

馴染みのセリフを言いながらアカツキは微笑む。

「突然ですがアカツキさん、人機というものをご存知ですか?あとアンヘルという組織の名を??」

「どこでそれを!?」

アカツキは自分も一部しか知らない言葉を言われ驚愕する。

「今僕はそれがいる東京にいます、研究所に戻る途中戦闘に巻き込まれたんです。」

「東京・・・なるほど、さっきニュースやってたしねえ。いやはや、トラブルはナデシコの名残りかい?」

「ふふ、皮肉ですかそれ。まあ否定しませんが。」

「で、わざわざ僕に言いに来るなんてどういった要件かな?」

「実は・・・長期休暇を、頂きたいのです。」

「?それならプロス君に言った方が」

「封印を解いてください。」

「!?」

アカツキは顔を真剣なものに変える。

「僕はもう戦わないと誓いました・・・けど、今僕の力を必要としている人々がいるんです。」

「・・・」

「また、あの時みたいな戦争が起きようとしています。僕は・・・僕は・・・止めるためにも、戦場に戻ります。」

それは、二年前と同じ顔だった。

「マキビ君・・・」

「アカツキさん、お願いします。封印の解除を!」

「今の君に何を言っても無駄みたいだね・・・」

ハーリーは覚悟を決めた顔で頷く。

「わかった、連合には僕から手を回すよ。ミスマル元帥にネルガルの試作機の実戦テストでアンヘルに合流させると。

 何せ戦力が足りない状態だしね、表はネルガルとの繋がりってことにしておこうか。

 元帥なら知っているだろうし、君のことも知らない訳じゃない。二年前のデータはルリ君とラピス君に消去してもらったし、

 そして君はテストパイロット扱い、軍属じゃないからね。」

「あ、ありがとうございます!」

「ただし!」

アカツキは人差し指を突き付ける。

「ただって訳にはいかない。人機のデータとか、まあそんな物を持ち帰ってくれ。後はウイングの戦闘データもね。

 本命のシステムは大体完成してるから君がやることはないし。」

「は、はい。」

「まっ、大体は君に任せよう。それともう一つ。」

アカツキはハーリーをジッと見る。

「死ぬことは許さないよ、君が死ぬと悲しむ人が大勢いることを忘れないこと・・・いいね?」

「・・・はい!」

「君がいなくなったらこちらも大損害になっちゃうし、企業家としてもだけど。」

そんなアカツキの気遣いが、ハーリーには嬉しかった。

「了解しました。」

「ああそれと、君を刺激したくなくて黙ってたんだが・・・ナデシコDが月のドックで戦闘に巻き込まれたらしい。」

「えっ!?」

「ドックは被害がすごくてね、かなり怪我人も出ている。ナデシコクルーは無事みたいだけど。」

「そ、そうですか。」

「・・・気をつけたまえマキビ君、最近物騒になってきてるからね。」

「はい。」

「よし、じゃあ研究所で・・・いや、そこにいてくれ。すぐトレーラーをまわすから。」

「わかりました・・・あの、彼女はどうです?」

するとアカツキは心底疲れた顔をする。

「いやあまいったよ、救出後僕達と君以外に懐かないんだから・・・言い訳だけで胃が痛くなる。」

「す、すみません。彼女には毎日メールすると言っておいてください。」

「年ごろだから気を使わないとねえ。じゃ、待っててくれたまえ。」

そうしてウインドウが閉じた。

ハーリーはそっと、空を見上げる。

その先で、戦友達はすでに戦いを始めているのだと・・・




     ネルガル本社

「マキビ君、本気なの?」

「ああ、あれは止められそうにないよ・・・エリナ、彼女にも頼むよ。」

「分かったわ。でもあの子、傷つくでしょうね。」

「・・・でもいかんせん年がねえ〜」

「不謹慎よ会長!」

エリナはアカツキを怒鳴る。

「でもねえ、義理とはいえ「娘」の願いを叶えてあげたいじゃない。」

「親馬鹿・・・でも、私も同じ思いだけど。」

二人はそう言いデスクにある写真立てを見る。

「歴史は繰り返す、でいいのかな?」

「・・・ほんと、アキト君と同じ運命ね。マキビ君も。」

そこには赤ん坊を抱えたアカツキ夫妻と、9歳ぐらいの少女が映っていた。



そして一時間がたち、ハーリーの前に一台の超大型トレーラーが到着した。





     柊神社

「ん、来たか。」

ハーリーが戻ると、そこには銀色の機体、シュナイガー・トウジャと黄色の見たことのない機体がいた。

「お待たせしました・・・南さん、僕も行きます。」

「決心してくれたのね。」

「ええ、だけど少し条件があります。」

「条件?」

「僕はネルガルの所属で、普通は拙いんですよ戦闘に介入することが。だからアカツキ会長が何とかするから

 代わりに人機のデータを寄越すようにと。」

「えっ!?」

「それなら僕の方から物資の援助も頼んでおきます、構いませんね。」

南はしばし考えていたが、援助も必要で遅かれ早かれ明かされるのだから構わないと考えた。

「分かったわ、条件を飲みましょう。じゃあ改めて、今回のメンバーを紹介するわ。」

そうしてハーリーは人機のパイロット達を見る。

「両兵とエルニィはいいわね、それと彼女がシュナイガー操主、メルJよ。」

金髪に白いコートをはおり、きつい眼差しをサングラス越しに向けてきた。

「ふん、どんな奴かと思えば・・・足手まといにしか見えんな。」

「ちょ、ちょっと。」

何やら険悪そうな雰囲気に、南は慌てる。

「大体エステバリスで行けば死ににいくようなもの・・・それすら分かっていないようだな。」

「メルJ!いくらなんでも言いすぎじゃないか!」

「天才、貴様は黙ってろ。無駄な荷物が増えるなら私は自力で」

「僕は自力でいきますから構いませんよ。」

「へっ?」×一同

突如ハーリーが言った言葉に全員が目を丸くする。

「おいマキビ、お前エステごときが衛星軌道までいけると思ってるのか?」

「まさか。」

「じゃあどうするのさ、マキビさん。」

エルニィが目を細めて聞いてくる。

「こうやって行くんです。」

と、ハーリーは再び山道の方に入って行った。

そして・・・

何かの駆動音が響き、鳥たちが一斉に飛び立つ。その中には、

「!?」

一機の、白い翼を持つ美しい機体が立っていた。

そして頭部を両兵達の方に向けると、緑のモノアイが光る。

「も、MSだあ〜!!」

エルニィは興奮しじっと観察を始めた。

「トリコロールカラーに額のアンテナ・・・間違いない、ガンダムだよ!」

「ガ、ガンダムだと・・・」

さすがに両兵も、その名は知っていた。

そのガンダムはこちらに歩いてきて、シュナイガーの隣で膝をついた。

コクピットから白を基調としたパイロットスーツを着たハーリーが降り、全員の前に戻る。

「僕はこの機体、ウイングガンダムゼロを使わせてもらいますので、気にしないでください。」

だが一同はさすがに警戒しているらしい。

「あのマキビ君、何故あなたがガンダムを持ってるの?」

「・・・二年前の戦争に原因があります。みなさんの知らない、ね。」

「マキビ・・・信用していいんだな?」

両兵は鋭い目をさらに細め、睨んでくる。

「みなさんが僕を不審がるのも当然です・・・でも、僕も平和を守りたいとう思いは誰にも負けないつもりです。」

その表情を見て、両兵は警戒を解いたようだ。

「なら、頼りにさせてもらうぜ!」

「任せてください。」

それを見、メルJも納得したという顔になる。

「ではいくぞ、ぐずぐずしている時間はない!」

「よ〜し、赤緒待ってなよ。」

メルJとエルニィはそれぞれ自分の機体に乗り込む。

「では行ってきます、南さん。」

「ええ・・・頼むわ。」

ハーリーもウイングゼロに乗り、両兵はエルニィの機体、ブロッケンに乗り込んだ。

そのままシュナイガーが後ろからブロッケンを支える。

「目的は柊赤緒の救出よ!頼んだわ!!」

メガホンで南が言う。

「シュナイガー出るぞ!」

「マキビ・ハリ、行きます!」

そうしてブロッケンを抱えたシュナイガー、ウイングゼロは上空に上がって行った。



そこに待つのは、一体何なのか・・・









次回予告

赤緒を救出するため衛星軌道に上がった三機。
しかしそこで見たものは敵の脅威を知らしめるものだった。
そして潜入した時、現れた敵機は・・・
その中両兵は一人、赤緒を探しに向かう。


第二次スーパーロボット大戦α 〜Future Story〜

第三話「勝者の言葉 現れし亡霊」



両兵「敗者の意地を見せろ!勝ってあいつに言ってやれ!!」

ハーリー「何故あの機体が!?」






作者とキャラによる座談会

犬夜「こんにちは、犬夜です。今回はマキビ・ハリ君に来てもらいました。」

ハーリー「お久しぶりです作者さん。」

犬夜「今回君はアンヘルに助っ人として参戦になったんだね。」

ハーリー「そうですね。アカツキさんに無理いってやってもらいました。」

犬夜「ウイングゼロも復活し、地上はしばらく君らがメインになってくからね。」

ハーリー「えっ!?じゃあついに僕も主役になったんですか!」

犬夜「あっ、それなんだけど」

ハーリー「やった!念願の主役、前作は準主役でしたしね。」

犬夜「なあハーリー、悪いがそうとは限らないぜ?」

ハーリー「へ?だって今メインって。」

犬夜「まあそれは置いといて・・・君に関して聞きたいことがある。」

ハーリー「何でしょう?」

犬夜「劇中に出てきた彼女って誰だい?」

ハーリー「えっ!?そ、それは・・・」

犬夜「アカツキが関係してるのは判明したが・・・君とどんな関係?」

ハーリー「・・・(さっ)」

とっさに目をそらす。

犬夜「まあいいが、はっきりさせないと後が怖いぞ。いい反面教師を見てきただろ。」

ハーリー「うっ!?」

浮かぶのはとある黒い人(笑)の姿だった。

犬夜「二の舞になるなよ、女って怖いぞ。」

ハーリー「覚えておきます・・・」

急に震え始めたハーリー。

犬夜「んじゃ今日は君に任せるよ。」

ハーリー「はい・・・では、また本編で!」





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