第5話「遺物再び」


「それでは、演習を始めます」

オペレータが話し終わると同時に、デュアルファイスは肩のグレネードを撃ってきた。
流石にいきなりだったので回避は不可能だった。
グレネードがクルスタルヴァイスに当たり、大きな衝撃がカタスを襲う。

「くっ!!」

カタスはすかさず体勢を立て直し、ブースターを吹かす。
そしてカタスはグレネードを撃った。
グレネードが一発デュアルフェイスに当たり、デュアルフェイスは後ろへ吹き飛ばされた。
その直後にブースターを吹かし、こちらに向き直る。

「驚いたな。まさか君が強化人間だったとは・・・。しかもそのブレード、君は”イレギュラー”だな」

ジノーヴィーから通信が入る。カタスは言い返す。

「確かに俺は”イレギュラー”だ! それがどうした!」


カタスは咄嗟にバズーカを構え、撃った。しかし全弾とも回避されてしまった。

「”イレギュラー”を発見した以上、見逃す訳にはいかない」

ジノーヴィーがそういうとライフルの銃口をこちらに向ける。そしてこう言った。

「消えろ、”イレギュラー”!」

もうこれは”演習”じゃない、殺し合いだ・・・!

カタスは思った。
その瞬間、アリーナの壁が破壊され、中に何か入って来るのを見た。
どうやらACのようだった。

「なんだ・・・!?」

カタスは入ってきたACの方に視線をやった。どうやら中量二脚のACで、前にみたナインボールと似た機体構成と彩色が施されていた。
カラサワと呼ばれる最強のエネルギーライフルと「月光」のブレード、そして肩にはプラズマキャノンとミサイルが搭載されていた。

「誰だ貴様は・・・?」

強い口調でジノーヴィーが問う。
しばしの沈黙の後、返答が帰ってきた。

「我が名はアレス。貴様らを排除するためにここに来た・・・」

「なっ、アレスだと!?」

アレスはかつての火星のアリーナで長年王者の座にいたレイヴン。
「ナインブレイカー」と呼ばれ、敗北することは無く勝利することにも退屈を感じていたと言われている。
「ナインボールを超えた者」とも呼ばれていた。

もしかしてこいつも・・・

そう思いカタスはアレスに通信を入れた。

「一つ聞きたいことがある」

「・・・何だ」

「お前、ナインボールを知っているか?」

しばしの沈黙。そして、

「あぁ・・・あいつか。俺はもう奴を超えて、恨みを晴らした。家族を皆殺しにされた恨みをな」
この言葉で確信した。こいつも過去の遺物だ。
カタスはそう思った。

「・・・それがどうかしたのか?」

「いや、何でもないが・・・」

しばらくの沈黙の後、ジノーヴィーから通信が入る。

「ここは一時休戦して、共闘して奴を倒すぞ!」

「・・・了解!」

デュアルフェイスとクリスタルヴァイスは、アレスのACプロビデンスに武器の銃口を向けた。

「二機同時相手か・・・まぁせいぜい私を楽しませてくれよ」

アレスはただどちらが自らを超えてくれるのか、それにしか興味が無かった。



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