『聞こえるか、ルークよ』

聞き覚えのある、何処か威厳のある声に目を覚ます。

「………ローレライ?」

『そうだ』

此処は何処なのだろう?

ルークは疑問に思ったが、考えてもわからなかった。

確か自分はローレライを解放した後………どうなったのだろうか?

その後の記憶がない。

もしかして自分は、もう死んでしまったのだろうか?

『お前のお陰で我は解放された。礼を言おう』

「……アッシュは?」

『お前の被験者は、既に地上に戻った。―――が、残念ながら、我にはお前を地上に戻す手立てが無い』

「そっ、か」

約束を果たせない事が残念だったが、それは仕方がない事だろう。

最後に見た、ティアの顔が思い出される。

(―――ティア、ごめん)

『なのでまぁ、お前には過去に戻ってもらう事にした』

「――――は?」

あっさりと、それはもうあっさりとローレライが言った。

「ちょ、過去!?」

『そうだ。今のお前は、我の力によって繋ぎ止められた残滓。本来なら大爆発の影響でお前すら残らないはずだったが』

『まぁ、それだとお前があまりにも不憫なので、な』

ちょちょいと、ってな感じに言う。

「でも、過去って……」

『うむ。レプリカが誕生する時まで時間を遡らせる。お前なら、良い意味でまた別の未来を作る事も可能だろう』

そんなあっさりと……。

『さしあたって、作り出される予定のレプリカとお前をコンタミネーションの応用で一つにする』

「そんな事が出来るのか?」

『我なら可能だ。もっとも、それをする相手が第七音素の塊だからこそ出来る芸当でもあるのだが』

つまり、レプリカ相手にしか使えない技だと言うわけだ。

『その時にちょこっと細工をして、アッシュとの間に大爆発が起こり得ないように配慮する。後は……まぁ、我からの贈り物だと思ってくれて良い』

『ふむ、そろそろ時間が危うくなって来た。では―――また会おう』

その瞬間、ルークの意識は光に包まれた。


TALES  OF  THE  ABYSS
あっしゅとぅーあっしゅ

第零譜  もしものはなし


試験管の中、ルーク―――レプリカ・ルークは目を覚ました。

(此処は……コーラル城のレプリカ施設?)

目を覚ましたルークはまず此処が何処かを確認した。

思ったより早く場所がわかったが、このままでは以前と同じように自分が『ルーク』としてバチカルの家に帰される事になるだろう。

「…功だな」

そこではじめて、自分が入っている試験管の前に人が居る事に気がついた。

(―――あ、髭だ)

何やら色々と幻想を壊されていたルークは、良い感じにすれていた。

以前は師匠師匠ー、とヴァンの後ろをちょこちょこついて回った純真なルークの姿は無い。

主な原因は、ローレライによってもたらされた物の一つである、以前のヴァンの様子だった。

ヴァンの様子―――つまりはローレライがヴァンの中に封じ込められていた時の、ローレライから見たヴァンの様子の事だ。

ぶっちゃけ、ローレライからもたらされた其れを見る限り、アレはただのシスコンだ との決断が下された。

色々と幻想が砕かれた瞬間だ。

そんな訳で、今ヴァンを見ても、ただたんに『髭だ』としか言わないのである。

ローレライから色々と贈り物を貰ったルークは、良い感じに最強だった。

・特典その一

身体能力の継続。

ぶっちゃけた話、ローレライを解放したときのままの身体能力を保有。

・特典その二

なんちゃって第二超振動。

何故か第二超振動が使えそうな感じ。

第二超振動を応用すれば移動も楽々だ。

これに付随して、超振動も完全に制御出来る。

・特典その三

ローレライが保有していた知識。

何だか余計なものまであるが、まぁ使えない事もないだろう。

ちなみに、色々幻想が壊されたのもこの知識のせいだ。

・特典その四

ローレライの鍵(完全版)

コンタミネーションで簡単に取り出せる。

ローレライが何かしたのか、刀身も調整できたりする。

・特典その四

もれなくローレライから色々優遇されます。

ちなみに、ルークは知る由も無かったが、此処に居るローレライはルークが解放したローレライだったりする。

何気に戻って来ている辺り、ルークが気に入ったようだ。

・特典その五

これはまぁ、後のお楽しみに。

……これだけ見ても、いかにローレライがルークを贔屓しているかがわかる。

ローレライは所謂、親ばか状態になってしまったのだ。

そんなこんなで、研究者(恐らくディスト)とヴァンが会話をしているのを眺めるルーク。

(とりあえず、アッシュになってみるか)

つまり、ルークは自分が六神将として働く事を決意したのだ。

まぁ、その理由が単にあの屋敷に行きたくない、というのもアレだが。

ぶっちゃけた話、ルークにとってあの屋敷に『帰る』事はあまり意味を成さなかったのだ。

あの家で執着があるとすれば、レプリカと知っても変わらず接してくれた母と、一部のメイドだけだ。

それ以外は正直どうでも良かった

あれだけ化け物を見るかのような視線を向けられれば、そうなるのも当然と言えよう。

父親に関してなど、最初から自分がレプリカと知ってた風があるので、その信用など地に落ちるどころか地中にもぐっている。

神託の盾騎士団(以下オラクル)に入ればまずそんな事はないだろう、という打算もあった。

何故なら、オラクルは実動隊ともなると、実力重視で経歴は二の次になるからだ。

もし自分がレプリカだと知れても、実力さえあればごちゃごちゃ言われなくなる。

ルークにとって、それは何よりも魅力的な事だった。

ともあれ、まずはどうやって以前のアッシュの位置に収まるかだが………

(とりあえず、この試験管―――割ってみるか

と、言うわけで思いっきりパンチを繰り出す。

砕け散った試験管の破片の先に、唖然としているヴァンの姿。

恐らく、作りたてのレプリカが動いた事に驚愕しているのだろう。

そんな様子のヴァンを見上げながら、ルークは思った。

そして一言。

「ファッキン髭」

中指を立てるオマケ付き。

今までの鬱憤を晴らす勢いの―――ファーストコンタクトであった。



























後書け!

ども、神威です。

また新作か!? と思った方が居るかもしれませんが―――実は違います。

これは当初、というか本来なら(既に公開していますが)
―AshToAsh―になるものでした。

色々あって先に公開したものに変えたんですが、何だか捨てるのが勿体無くなったのでついでにこれも出しちゃえ、と。

これ以降この作品を裏と称します。裏
―AshToAsh―。

まぁこれを見る方は、もう一つの
―AshToAsh―、 もしも、の話として読んで下さるとありがたいです。

……ちなみに、何故今頃になって公開したかというと、本編が行き詰ったからです。

色々と構成に手間取ってまして……(汗)

なので、息抜き代わりに楽しんでいただけると幸いです。

尚、今回短いのはいわゆるプロローグだからですので。

神威



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