視点:ルルーシュ


「「「「「あー!!!」」」」」

義勇軍を率いていた者の一人は、俺の知っている顔だった。

俺たちは、盗賊討伐のため、ある街へと来ていた。
最近盗賊がさらに増え、その盗賊たちの多くは黄色い布を巻いている。
おそらく俺の知識にある、黄巾党にあたるものだろう。

その黄巾党に街が襲われているという情報が入り、先遣隊として秋蘭と季衣が少数の兵を率いて出撃し、あとから大軍を率いて華琳、春蘭、刃、桂花、稟、俺で出撃。
つい先ほど、街を襲っている盗賊たちを討伐し、秋蘭たちと共に街を守ってくれた、義勇軍と合流したわけだが・・・

「皆知り合いなのですか?」

一人声を上げなかったのは稟だけだった。

「確か、このあいだ街にいたのカゴ屋だな」
「はい、あの時はありがとうございました! おかげでカゴが全部売れました」
「俺は別に何もしてねぇよ」


「前に服屋であった、お姉さんと猫耳ちゃんなのー」
「おお、久しぶりではないか」
「あのときのカゴ売りの子」


「街で会った絡繰師のカゴ屋ね」
「そっか、・・・あの時の姉さんが、陳留の州牧さまやったんやね・・・・・・兄さんは?」
「俺はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」
「おお〜!、えらいイケ面やと思ったら、天の御遣いさまやったんか〜」
「絡繰を見せにこないと思っていたら、義勇軍になっていたのか」
「ん〜、そうやねん。ウチもいきたかってんけど、凪たちが義勇軍やる言うて、ほっとくわけにもいかんし、すんません」
「・・・・・・そうか。そういうことなら、気にするな」

これからの話しだいでは、同じ結果になるだろう。

「・・・・・で、その義勇軍が?」
「はい。黄巾の賊がまさか俺だけの規模になるとは思いもせず、こうして夏候淵さまに助けていただいている次第・・・・・・」
「そう。己の実力を見誤ってたことはとにかくとして・・・・・・街を守りたいというその心がけは大したものね」
「面目次第もございません」
「とはいえ、あなた達がいなければ、私は大切な将を失うところだったわ。秋蘭と季衣を助けてくれてありがとう」
「はっ!」

確かに義勇軍がいなければ、かなり危険な状況だっただろう。

「あの、それでですね、華琳さま。凪ちゃんたちを・・・・・・華琳さまの部下にしてもらえません?」
「義勇軍が私の指揮下に入るということ?」
「聞けば、曹操さまもこの国の未来を憂いておられるとのこと。一臂の力ではありますが、その大業にぜひとも我々の力もお加えくださいますよう・・・・・・」
「・・・・・・そちらの二人の意見は?」
「ウチもええよ。陳留の州牧さまの話はよう聞いとるし・・・・・・そのお方が大陸を治めてくれるなら、今よりは平和になるっちゅうことやろ?」
「凪ちゅんと真桜ちゃんが決めたなら、わたしもそれでいいのー」
「秋蘭。彼女達の能力は・・・・・・?」
「は。ひと晩ともに戦っておりましたが、皆鍛えればひとかどの将になる器かと」
「そう・・・・・・。季衣も真名で呼んでいるようだし・・・・・・良いでしょう。三人の名は?」
「楽進と申します。真名は凪・・・・・・曹操さまにこの命、お預けいたします」
「李典や。真名の真桜で呼んでくれてもええで。以後よろしゅう」
「于禁なのー。真名は沙和っていうの。よろしくおねがいしますなのー♪」
「凪、真桜、沙和。そうね・・・・・・ルルーシュ、三人はあなたに下につけるは、星の警備隊副隊長の仕事を引き継がせなさい。星には今後、軍の方に専念してもらうわ」
「・・・・・・ああ、わかった」

黄巾党のこともそうだが、そのあとのことも考えれば、星は軍に専念してもらうのが、正しいだろう。
警備体制は、出来るだけ星に頼らなくてもいいように改正してある。
秋蘭が認めるほど有望な者が入るなら、問題ないだろう。

「ルルーシュ殿良いのですか? 星にいないところで、勝手に決めてしまって」
「?・・・・・・華琳が決めたんだ。星がいたところで結果が変わらないだろう」
「それは、そうですか」

稟が何故か不安そうな、それでいて不服そうな顔をしている。

「おお〜、御遣いさまの下で働けるんか、そういつは嬉しいな〜」
「沙和もなの〜、前の真桜ちゃんが言っていたとおり凄くカッコイイの〜♪」
「陳留の天の御遣いさまの噂はよく聞いています、実際に陳留の街を見て、本当に治安の良い街だと思いました。そんな方の下で働けるのは光栄です」

この三人も星に負けず劣らずの個性的な者達のようだ。

「これからよろしく頼むよ。三人とも」
「よろしゅうな、隊長」
「了解しました、隊長」
「はーい。隊長さーん」







物資の配給準備の後、俺達はこの後の方針を決めるため、話し合っていた。

「黄巾党はもうかなりの数になっている。ならば、必ずどこかに連中の物資の集積地点があるはずだ」
「なるほど、・・・・・・あれだけの大部隊が動いていたのですから、現地調達だけで武器や食料が確保できるはずがありませんものね」
「おそらくその集積地点ここからそう遠くないはず」
「そこを叩ければ、連中の動きは、かなり鈍ることになるわね・・・・・・秋蘭」
「御意。すぐに各方面に偵察部隊をだし、情報を集めさせます」
「いくつか、可能性の高そうな場所を知っている、優先して調査するか?」

軍儀はスムーズにすすみ、今後の方針がすぐに決っていく・・・・・・のだが、

「凄いなー、全然話について行かれへんで」
「正規軍はやっぱ違うのー」
「ぼくも兄ちゃんたちの話には着いていけないから、気にしなくていいよ」

いや、気にはしてくれ。

「さすが、曹操軍の軍師ということですか」
「荀ケは、雑用だがな」
「うるさいわね!夏候惇! あんたはいつも話について来れてないでしょう」

曹操軍の武官で軍師の話合いについてこれるのは、秋蘭と刃、あと星ぐらいだ。
季衣には今後の成長に期待したいところだが、春蘭は・・・・・・諦めよう。


「相手の動きは極めて流動的だわ。仕留めるには、こちらも情報収集の早さが勝負よ。皆、可能な限り迅速に行動なさい!」
「「「「「「「御意」」」」」」」








偵察部隊により半日ほどいったところに敵の陣地が発見され、俺達は迅速に準備を行い、敵の陣地へと向かうこととなった。
だがその途中、周りを偵察していた刃より新たな報告が入る。

「私達を同じ、目的地に向けて行軍している軍がいる!?・・・・・・黄巾党ではないのね?」
「はい、旗を揚げていますし、装備も明らかに違います」
「何処の旗かしら、・・・・・・まぁここにいるということはだいたい察しが着くけど」
「軍の旗は銀地に袁、袁術軍でまちがいないかと。そして率いる将の旗は紀」
「袁術軍の紀霊か・・・・・・やっかいな相手ね」

袁術といえば、俺の知っている歴史では袁紹の異母弟で、一時期自ら皇帝を名乗っていたが、多くの戦での敗戦と悪政で惨めな最後を迎えていたはず。
袁術軍の紀霊も名なの知れた将だが、それなりにといった感じだ。
だがこの世界では大きな歴史の流れはともかく、個人に関してはあまりあてにならないからなこの知識は。

「袁術ですか・・・あまりいい噂は聞きませんね」
「そうなのー、袁術の治める土地はすっごく税が高いって聞くし、賊も多いらしいのー」

確かに悪い噂は多い、だが。

「税は大分安くなったそうだ、まぁ元々高かったのが、普通になっただけだが。最近は政もまともになってきて、悪政ってほどではないらしい」

それに賊が多いのも、それは奪う物があるからだろう。

「そうなんや。ひょっとして、統治する人変わったんですか?」
「いや、変わったのは袁術の考え、と言うより変えさせられたらしい。今同じ盗賊の砦に向かって軍を率いている紀霊将軍にな」
「将軍に?・・・軍師とかではなくてですか?」
「ああ。噂だと、袁術の我が侭に堪忍袋の尾の切れた紀霊が、袁術の頭にゲンゴツ落として一刻ほど説教したそうだ」
「ゲンコツって・・・、家臣が主に手を上げたん?」
「ありえないのー」
「そうだな、普通そんなことすれば、打ち首確定なのだが・・・袁術軍は、将軍筆頭である紀霊に実質決定権あると聞いている」

それは紀霊が有能だということもあるが、何より周りの人望が厚いということだろう。
紀霊は袁術の親、袁逢の代からの袁家に使えている古株の将らしく、統治者である袁術が子供であるため、軍部だけでなく全体の影響力でも紀霊のほうが上と言われているぐらいだ。

「袁術の命を聞いて、紀霊を捕らえれる者など、袁術軍にはいないということだろう」
「でもここは華琳さまの領地のはずなのー、なのに他所の軍がくるのはおかいしのー?」
「ここらは、袁術の領地との境目あたるからな。だから盗賊の討伐のためであれば袁術軍が来てもそうおかしいことではない」
「じゃ袁術軍と協力して討伐ということですか?」
「それは・・・・・・向こうの出方しだいだな」

手柄を上げるため、協力などせず足の引っ張り合い、なんてことも考えられる。

「華琳、まずは袁術軍と話すべきだろう」
「そうね・・・・・・」

「伝令!!」

華琳が指示を出そうとしたとき、偵察隊から新なた報告が届く。

「袁術軍より、盗賊討伐のため話し合いの場を設けたい。とのことです」
「・・・速いわね」

向こうから言いだしてきたか・・・

「協力戦の為の話し合いか、または手を出すなという一方的な話か」
「どちらかしらね、まぁ会ってみればわかるわ。・・・承諾したと袁術軍に伝えなさい」
「はっ」

華琳が袁術軍との話し合いを承諾する。
袁術軍の紀霊・・・・・・噂は色々聞くが、実際はどれほどの者かな。




あとがき
続く。



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