シルフェニア1000万Hit記念
機動戦艦ナデシコ

アキトとルリの逆行LOVE?


火星の後継者事件終結後━━━━


「ルリちゃん! もうあきらめてくれ! 俺はみんなのところになんて帰るべきじゃない!」
『イヤです! ようやくすべてが終わったのに貴方がいない毎日なんて考えられません!』


この二人は追いかけっこを続けていた。



なにせ、ユーチャリスもナデシコCもワンマンオペレーションシップであるため極端な話、他の乗組員はいらないといってもいい。


アキトはラピスとのリンクを切ってオモイカネダッシュを供に星の海に乗り出した。
死に場所を探して……。


ルリは他の乗組員を下ろし、喚くハーリーは三郎太に任せ、オモイカネを供に星の海に乗り出した。
共に生きる伴侶を追いかけて……。


そして二人は出会った。


火星宙域で慣性航行中のユーチャリスをナデシコCが発見。
全力加速したナデシコCでユーチャリスに一気に肉薄し、逃げる隙を与えずアンカーを射ち込み拿捕した。
しかしアキトも往生際が悪く、何とかして逃げようとアンカーを引きちぎろうと加速する。
そこで冒頭の会話になるわけだが━━━━


「ルリちゃん! 俺はテロリストなんだ! みんなの元に戻ってもみんなに要らぬレッテルを貼ってしまうだけだ! 俺はこのまま消えたほうがいいんだ!」
『そんなことありません! 確かにやったことは犯罪かもしれません! けどそんなもの情報操作でもみ消せばいいんです!』
いや、それは犯罪だルリちゃん!(天の声)
「だめだ! 君にそんなことはさせられない! 早く離れるんだ!」
『イヤです! やっとユリカさんのことを忘れてくれたのに貴方から離れるなんてできません!』
<マスター>
痴話げんかの最中にオモイカネダッシュが割って入る。
「どうした、ダッシュ!?」
<ジャンプフィールド発生器が先ほどのアンカーで破壊されました。また、ナデシコCから送り込まれたウィルスでジャンプシステムが暴走しています。ランダ ムジャンプまで三十秒>
滅茶苦茶ヤバい事を淡々とのたまうダッシュ。
「なんだと!? くそっ、ルリちゃん聞こえたか!? すぐにユーチャリスから離れるんだ!」
『イヤです! ここで離れたら二度と会えないかも知れないじゃないないですか!』
一度はじけた感情は収まらないのか、頑として聞き入れないルリ。
「どこへ行くかも判らないんだぞ!」
『なら、なおのことです! 何があっても離れるなんてイヤです! もうあんな思いで生きているか死んでいるか判らない人を待ち続けるなんて御免です! た とえ行く先が地獄だってついていきます!』
<ジャンプまであと十秒>
「くそっ! イメージング!」
せめてイメージでジャンプを安定させようとするアキト。しかし……。
<マスター、間に合いません>
『アキトさん!』
<ジャンプします。よい旅を……>
ダッシュの皮肉とも願いとも取れる台詞の後……、二隻はジャンプする。


そして、二隻の戦艦は永遠にこの世界から消えたのだった……。




「はっ!? こ、ここは!?」

慌ててあたりを見渡すアキト。

そこは乗りなれたエステバリスのコクピットのようだった。そしてあることに気づく。
「バイザーをしていない!? 視覚が戻っているのか!? それにこの服は……昔の私服!? それにゲキガンガーの人形? これはまるでエステで初めて出撃 したときみたいじゃ……」

その瞬間コミュニケが開く。

『誰だ、君は? パイロットか!?』

フクベ提督だった。


『フクベ提督……?』
「ム? 私を知っているのか?」
いぶかしむフクベ提督の声にかぶさるように叫ぶ馬鹿一名。
「あーっ! アイツ俺のゲキガンガーを!」
やかましい男を無視して改めてフクベ提督が質問する。
「所属と名前を言いたまえ!」
『え?』
事態が飲み込めないアキトが重ねて質問され、戸惑っていると涼やかな声が聞こえる。
「テンカワ・アキトさんです。所属は生活班ナデシコ食堂のコックさんです」
それはルリの発言だった。
「なにぃぃぃ! 何でコックが!?」
熱血馬鹿の声が響く。


ここはまさかあの時のナデシコ……? だとすると俺は過去へ帰ってきたのか……?
だがしかし、そうだとするとなんでこの時のルリちゃんが俺を知っている?
まさかルリちゃんも……?


脇で聞こえる喧騒をよそにもの思いにふけっていたアキトの耳に超音波が鳴り響く。
「アキト! アキトだぁーっ!」
『ぐおっ!?』
その声を聞いたアキトは一瞬失神しかける。
次の瞬間にはルリが音量をカットしたのでユリカの強引グマイウェイトークはアキトには届かなくなっていた。

「なつかしいー! そっかー! アキトかぁ! 何でさっき知らんぷりしてたのー? そっかー! 相変わらず照れ屋さんだね!」<サイズ変更+2>
「艦長、聞こえてません。音声はカットしました」
ルリの声はユリカには届いてないらしい。
「ユリカはナデシコの艦長さんなんだぞ、エヘン!」
聞いてもいないのに話し続けている。
仕方が無いのでルリがアキトに作戦を伝える。
「アキトさん、とりあえずナデシコが発進できるようになるまで十分間囮になってください。全部撃破しちゃってもかまいませんけど、無武装のエステでは面倒 でしょうから。あと、後でアキトさんのお部屋で話があります」
『判った、ルリちゃん』
この会話でルリも過去へ帰ってきていることを確信したアキトだった。


エレベーターが地上に近づく。
『エレベーター停止。地上に出ます』
『がんばってください』
『ゲキガンガー返せよな!』
「あーもう五月蝿い!」
励ましやら喧しいやらのコミュニケをアキトが怒鳴って切ると同時にガコン、とエレベーターが止まりバッタたちのド真ん中にエステが出る。

『作戦は十分間。兎に角敵をひきつけろ。健闘を祈る』


そしてどうなったかと言うと……二度目な上に黒い王子様なアキトにとってこのころのバッタたちは敵とは言えず、ナデシコが来るまでに六割ほど撃破してし まっていた。
「なによあれ……。本当にコックなの……」
戦慄するムネタケ。
「むう見事だ」
「これは思わぬ拾い物でしたかな?」
感心するゴートとプロス。
「すっごーい!」
「さっすがアキト! やっぱり私の王子様だね!」
ヒーローを見る目のメグミとユリカ。
「注水八割がた終了! ゲート開きます!」
そんな中、黙々と発進準備を進めるルリ。
「エンジン、いいわよ」
ミナトもきっちり仕事をしていた。
「ナデシコ発進です!」
「ナデシコ発進」
ユリカの号令を復唱してナデシコを発進させるルリ。


「アキトさん、海に飛んでください!」
『了解!』
唐突に聞こえたルリちゃんの声に余裕を持って反応するアキト。


海に飛び込んだ陸戦フレームは海面に接触するかしないかのところでナデシコの艦橋に飛び乗る。
「早かったな」
『貴方のために急いで来たの!』
思わず出た台詞に答えるユリカ。
「そう。ありがとうルリちゃん」
『いえ、アキトさんのためならいくらでも……(赤)』
『なんでルリちゃんにお礼を言うのよ〜!? 艦長は私だよ〜!』
その台詞を聞いていたミナトは、後で二人にじっくりと質問することが出来たと考えていた。

「敵残存兵器、すべて有効射程内に入っています」
「目標、敵まとめてぜーんぶ! 撃ーっ!」

重力波の黒い輝きと共に虫型兵器はすべて消え去っていた。


「戦況を報告せよ!」
「バッタ・ジョロとも残存ゼロ! 地上軍の被害は甚大だが戦死者数は五!」
「そんな……。偶然よ、偶然だわ!」
「認めざるを得まい。よくやった艦長」
「まさに逸材!」
そんな声をバックにしながらそっらを完全に無視し、愛しの王子様に声をかけるユリカ。
「アキトぉっ! すごいすごい! さすがぁっ!」
しかしアキトにコミュニケは繋がらなかった。
「え〜! 何で繋がらないの〜?」
まだコミュニケを持っていないのだから当然である。さっきはエステに乗っていたから繋がっていたのだ。
「もう! ルリちゃん、アキトにコミュニケをつない……、あれ?」
ルリはいつの間にかブリッジから居なくなっていた。


で、アキトは今はどこにいるかと言うと……。
格納庫で整備班に機体を引き渡していた。
「すいません、結構無理させちゃったかも……」
「なあに、艦を守ってくれたんだ。堅いことは言わねぇよ。整備はまかしときな。しっかし初めてのクセによくやってくれたもんだぜ」
「はは……。じゃ、よろしくお願いします」
「アキトさん」
整備班に頭を下げるアキトの後ろからルリの声が聞こえて、アキトが振り向くとそこには、走ってきたのか息を切らせ気味のルリがいた。
「ルリちゃん」
「じゃあ行きましょうか?」
アキトは頷くとルリの後についていった。



「……つまり俺たちは、精神が過去に戻ってこの時代の俺たちになったということか?」
「それ以外には考えづらいですね。原因はランダムジャンプだと思いますが」
アキトはエステで出撃直前、ルリはその前日だったためアキトより調べる時間が多かった。
アキトの自室でお互いに起こった事を確認して今後の行動を考える。
「しかしそうだとすると……やり直しができると言うことか?」
「そうですね。今後の選択肢次第であの未来は回避できる可能性が高いです」
「やり直しか……。いいのかな? 俺が、俺みたいな奴が人生やり直して……」
自分で起こしたテロ事件の数々を思い出し、ふと俯くアキト。
「いいに決まっているじゃないですか! アキトさんはきっと誰よりも苦しんできました! だからやり直す権利ぐらいあります! 他の誰が認めなくても私が 認めます!」
そんなアキトを普段とは打って変わった滅茶苦茶な理屈で正当化するルリ。
「ありがとうルリちゃん……」
「……いえ、どういたしまして……」
ルリの頭をなでながら笑顔になるアキト。
「さて、未来を変えるとしてどうしたもんだかな……」
「一つ手っ取り早い方法があります」
アキトのぼやきに即答するルリ。
「え? どんな?」
驚いて聞き返すアキトに、ルリは答えずオモイカネに指示を出す。
「オモイカネ。この部屋をロックして。私の許可無しで誰もこの部屋の扉を開けられない様にして」
<艦長でも?>
「そうです」
<了解><OK!><ラーサ!><大丈夫!><まーかして!>
「ル、ルリちゃん?」
飛び交うウインドウに嫌な予感のするアキト。
「じゃあ始めましょうかアキトさん」
そういって服を脱ぎ始めるルリ。
瞳には危険な色が燈っている。
「な、何を始める気なの!?」
「ユリカさんじゃなくて私を選んでください。そうすれば大きく未来は変わるはずです。あの未来はアキトさんとユリカさんが一緒になったから、ああいう結果 になってしまったんですし。そうなる前に違う人を恋人にすればあの未来にはなりません」
そう言ったルリの表情は真剣だった。
ものすごい勢いで後ずさって逃げようとするアキト。
しかし完全に扉を塞がれた上、かつて黒い王子様だったときのように木連式柔を会得しているわけでもなく、C.Cも無い今のアキトには脱出手段が無かった。
「って、ちょっと待って! ルリちゃんはまだ十一歳…!」
「大丈夫です。ギネス記録には八歳で子供を生んだ少女もいるそうですから」
「そういう問題と違う!」
怒鳴るアキトだが、怒鳴ったところで逃げ道は無かった。
ルリは薄く唇をなめてアキトに近づいていく。
「さあ、始めましょうか……? あ、私初めてなので優しくお願いしますね(はぁと)」
そう言いながらルリが手にしたものはロープとスタンガンだった。


「アキトー。アキトぉ?」
アキトの部屋をノックするユリカ。
「ホント、アキトったらあたしが艦長なんで遠慮して会いに来てくれないだもん」
再度アキトの部屋をノックするユリカ。
しかし返事は無し。
「アキトー、アキトー。いないの〜?」
返事が無いので考え込むユリカ。
「あ、そうか。私艦長だからマスターキー持ってるんだっけ」
それを通すも、扉は開かない。
「え〜! 何で〜!?」
ガンガンガンガンガンガン!
ユリカが扉を叩く叩く叩く!
あまりの五月蝿さに根負けしたルリがコミュニケを開く。
「どうしたんですか艦長」
「あ、ルリちゃん。今ね、アキトの部屋に入ろうと思ったんだけどマスターキーでも扉が開かないの〜」
犯罪行為を悪びれず話すユリカ。
「他人の部屋に勝手に入るのはいくら艦長でも犯罪ですよ」
「え〜!? 何でよ〜!? アキトとお話ししたいだけなのに〜!?」
ホントにこいつ二十歳なのか? と思わせる言動である。
ジュンも大変な女に惚れたもんだ……。
「アキトさんは特に話すことはないそうです」
「何でルリちゃんがそんな事知ってるのよ〜……って、あれ? ルリちゃん裸みたいだけど、もしかしてシャワーの途中だった?」
「いえ、シャワーは終わりました」
「ゴメンね〜。邪魔しちゃって〜。じゃあアキトが今どこにいるか知らない?」
「アキトさんなら自室にいます。でも扉は開きませんから諦めてください」
「だから何でルリちゃんがそんな事……え?」
その時、ユリカは確かに見た。
コミュニケに移る裸のルリの後ろに裸のアキトの姿があったことを!
「ルリちゃん、後ろにいるのはもしかして……」
「では艦長、今取り込み中なのでこれで失礼します」
「ちょっと待ってルリちゃん!」
ピッ、っという小さな音と共にルリの姿が消える。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


「さて、ちょっと邪魔が入りましたが……、アキトさん私の『初めて』をもらってください」
「むーっ!?、むむむむむーっ!?」
ルリちゃん、手足をベッドの四隅に縛り付けた上、猿轡はどうかと(天の声)<サイズ変更+1>

「これが夢にまで見たアキトさんの……なんですね」
何を夢に見たの!? 何を!?(天の声)

さわさわ

「むーっ!?、むむむむむむーっ!?」
「それにアキトさんの乳首……」

ちゅっ!

「むむーっ!?、むむむむむーっ!?」
「それにアキトさんのおへそ……」

ぺろっ

「むむむーっ!?、むむむむむむーっ!?」
「それじゃあ始めましょうか……?」
いや始めちゃまずいだろ。こう、倫理的というか法的というか(天の声)



ユリカがウリバタケたちを呼び出し、アキトの部屋のドアを破壊してこじ開けたのはおよそ一時間後のこと。
部屋に突入した彼らが見たものは……。
裸でベッドに縛りつけられ、猿轡をされたアキト(笑)と同じく裸で未熟な女性器から破瓜の血とそれ以外の血や薄黄色っぽい粘っこい液体も流してアキトに寄 り添って気を失っているルリの姿だった。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ルリルリ!? ちょっと!? しっかりしなさい! 何があったの!?」
アキトの姿を見て悲鳴を上げる艦長とルリのことを気遣うミナト。
「む〜………………」
さめざめと泣くアキトは猿轡をされているからしゃべれない。
その泣きざまはまるでジュンのようだった。
「す〜…………」
ルリは疲労はあるが幸せそうな顔をして眠っている。
何があったんだ!?(いや状況を見れば丸判りだが(笑))


「困りますな〜。契約書にも『男女の交際は手をつなぐまで』となっていると言うのにこういうことをされては……」
「なにぃっ!? そんなことどこに書いてあるんだ!?」
やっぱり契約書をよく読んでいなかったウリバタケが喚く。
「ここに書いてあるでしょう?」
そう言ってどこからともなく取り出した契約書のその部分を指し示す。
「読めるか! こんな小さい字なんぞ!」
まあ、ウリバタケの怒りももっともだろう。
しかしこれで火星付近での反乱はなくなるだろう(笑)
結果的にルリとアキトは未来を変えたことになる。

一方、アキトは━━━━
「アキト! これは一体どういうこと!? 私と言う恋人が居ながらルリちゃんに手を出すなんて! 犯罪よ! 犯罪!」
「アキトさん! ルリちゃんはまだ子供なんですよ! さっきロボットで活躍してたからすごい人だと思ったのに!」
「アキト君! 例えルリルリと相思相愛だったとしてもこれは酷すぎるわ! きっちり説明してもらうわよ!」
「おい、コック! 君は一体ユリカとどういう関係なんだ!?」
━━━━ブリッジクルー女性陣(+1)に詰め寄られていた。

(ちなみに先ほどの『説明』という単語が出た瞬間、火星の某所に隠れ住んでいる女性がニュータイプのように何かを感じ取ったと言うことだが、ここでは関係 ないので割愛する)

詰め寄られてもアキトは答えない、いや答えられない。
なぜなら……まだ縛られて猿轡をつけられたままだからだ(笑)
誰か外してやれ。

「むーっ! むむむむむむーっ!」
ベッドに縛りつけられ、猿轡をつけられたまま首を振るアキト。
その顔は必死だ。
自分が手を出したわけではないと伝えたいが誰も猿轡を解いてくれないため、それを伝えることが出来ない。
まるで魔女裁判である。
ただ、確かに事を最後まで遂行してしまった(されてしまった)のは事実であるので、確実に某条例等に引っかかる以上ルリの申告がなかったとしても刑務所行 きは確定だが。


こと、ここに至ってようやくルリが目を覚ます。
「……アキト…さん……?」 
アキトを放ってミナトとメグミがルリに駆け寄る。
「ルリルリ! 大丈夫!? 怪我はない!? 大丈夫よ、お姉さんは貴女の味方だからね! いい弁護士を知っているからアキト君はすぐに刑務所へ送ってあげ る! だから…その……気を落とさないで!」
「そうよ、ルリちゃん! 確かにつらいことだったかもしれないけど、泣き寝入りなんて駄目だからね! 私も全面的にバックアップするから!」
二人ともアキトが無理矢理ルリを犯したと考えているらしい。
無理もないが、せめて縛られて猿轡をされているのがアキトのほうだということぐらいは気づいてやれ(笑)
「……アキトさんが何か……?」
きょとん、とするルリ。
今の自分の格好を自覚して欲しいと思うのは詮無きことなのか?


そのころアキトのほうは━━━━
「だーっ! 待て艦長! それはヤバい!」
「離してー! アキトを殺して私も死ぬー!」
「艦長! 止めてください! 殺すのはまずいです! 危ないですよ!」
━━━━修羅場を迎えていた。

どこからか取り出した日本刀を振りかざし、アキトに斬りつけようとするユリカとそれを止めにはいるウリバタケ・プロス両名。

「ちょっと待ってください……。テンカワさんは何も悪くありません」
ようやくアキトに抱かれた(強姦した?)喜びから帰ってきたのか、タオルケットを身に纏い、ユリカの前に立つルリ。
「ルリルリ、どういうこと?」
ミナトも思わぬ台詞に戸惑っている。
「私が望んでアキトさんに抱いてもらったんです。以前からずっと好きで、もう会えないと思っていたアキトさんに再会できて……、嬉しくて……離れたくなく て……。アキトさんを愛したことは私の中で紛れもない『真実』ですから……。
でもアキトさんは……パイロットになってしまいました……。パイロットと言うのはいつ帰ってこなくなるか……判らないお仕事です……。そうでなくて も……、配置が換わってしまえば会うことはできなくなります……。もう離れたくないです……。離れるにしてもせめて……アキトさんを愛した『証』が欲し かった……んです……」
最後のほうは涙声になるルリ。
それを聞いていたミナトとメグミの怒りは収まりきってはいないものの、収束の方向へ向かっていった。


しかし……、納得できないのがここに三人。
「アキト! アキトは私の王子様じゃなかったの!?」
「テンカワさん、困るんですよね〜。契約は守っていただかなければ。ただの紙じゃないんですから!」
「だから! 君は一体ユリカとどういう関係なんだ!?」
ユリカ・プロス・ジュンの三人であった。
……って言うか、いい加減アキトを解いてやれ。



ようやく縄を解いてもらったアキトが服を着てみんなの前に立つ。
その隣にはルリの姿もあった。
ただし破瓜を迎えたばかりの彼女はいまいち辛そうだったので椅子に座ってもらっている。
「で? どういうことなのかきっちり説明してもらうわよ?」
ルリの言い分は聞いたのでアキトの言い分を聞こうとしているミナト。
プロスも脇で頷いている。
ユリカとジュンは『こんなこともあろうかと』用意してあったウリバタケ特製スタンガンで動けなくした後、椅子に縛り付けられていた。しかもアキトと同じよ うに猿轡をつけられて(笑)。

「確かに俺とルリちゃんは以前から知り合いで……、でも火星で死にそうな目にあって二度と会えないと思っていたから、再会できたことは嬉しかった。ただ俺 はルリちゃんの事を妹としてずっと思っていたけど、ルリちゃんはそうじゃなかったって聞いた……。ルリちゃんが俺の事を『好き』っていう感情は兄とかに対 するものだと思っていたけれど、そうじゃないって……。死んでも離れたくないって……言われたんだ……」
上手いことごまかしているアキト。
一部に真実が含まれているため、聞いたほうが勝手に誤解するように言っているのである。
さすが未来のプロスペクターの仕込である(笑)。
「だからルリちゃんから俺の事を『好き』だって聞いたとき、その気持ちを俺は受け入れた。……ただ、いきなりスタンガンを押し付けられて縛られるとは思わ なかったけど……(汗)」
赤くなるルリ。
確かに既成事実を作るためとはいえ、やりすぎたと思ってはいるらしい。
「後は……、まあみんなが見た通りの結果となったわけだ……」
さすがに事の内容を説明する気はないアキトはそれで話を打ち切った。

「しかしテンカワさん、やはり契約書に反したことをされるのは……」
「プロスさん、ちょっと」
「はい、何でしょうホシノさん?」
アキトに文句を言おうとしていたプロスを呼び止め、自分のところに手招きするルリ。
それを受けて近づいたプロスにルリが小声で耳打ちする。
「アキトさんとの事による契約書の条項違反の件なんですが……」
「困りますよ〜。こんなことをされては。減俸の対象です」
「ハイ、覚悟の上です。ですがアキトさんは悪くないので私だけの処罰になりませんか?」
「無理ですな〜。両者を対象とするものですから、そういうわけには……」
「では、契約し直しということで、アキトさんと私の男女交際条項の撤廃を……」
「それもちょっと……」
「代わりに私のお給料、アキトさんと同じでいいです」
「ふむ…………」


なにやら電卓を取り出し、計算しだすプロスペクター。
あんた一体どんな計算式で計算してるんだ?

「いいでしょう。ではそういうことで」
「ありがとうございます、プロスさん」
「では、私はこれで」
そう言ってプロスペクターは帰っていった。
つくづく計算高い男である。

「え〜と、つまりどういうこと?」
ミナトのハテナマークも当然だろう。
「アキトさんへの処罰は無し。私との関係もネルガル公認ということになりました」
「「「「「え〜!?(む〜!?)」」」」」
まあ、確かにそう言いたくもなるだろう。
「ルリちゃん、一体何を……?」
「アキトさんは知らなくてもいいです」
非常に不安な顔のアキト。
当然だろう、何が取引材料に使われたのか判らないのだから。
そのことに気づいたのかルリは台詞を付け加える。
「アキトさんが支払うものは何もありません。私がすべて何とかします。アキトさんは昔のようにコックさんを目指してください」
とても良い笑顔でそう言うルリにアキトは見惚れるのだった。

「ふぅ……。そこまでされたんじゃ外野が言うことはないわね。戻りましょ、メグちゃん」
「そうですね、ミナトさん」
そう言って二人が席を立つ。
後ろ手にユリカとジュンを引きずって。
猿轡がついたままのユリカは唸り続け、ユリカとアキトの仲が自分が心配したようなものではないことを知ったジュンはほっとした表情になっていた。


「あ、アキト君?」
行ったと思ったミナトが扉から顔を出す。
「そこまで慕われているんなら、ルリルリを捨てちゃ駄目よ? そんなことしたら……」
「したら?」
「社会的に抹殺しちゃうからね(はぁと)」
ミナトはそれはそれは素敵な笑顔でそうのたまった。
アキトには首を縦に振る以外手段がなかったことは言うまでもない。

「まったく……。おいテンカワ!」
「はい!」
ウリバタケが剣呑な目でアキトを見る。
「ルリルリを泣かしやがったら承知しねえぞ。五体満足で居られると思うなよ?」
「は、はい」
そう言って二人に背を向けて歩き出すウリバタケ・セイヤ。
ニヒルに笑った彼の背中は、自分の世界がある男の背中だった……。


なお、ヤマダ・ジロウ『ダイゴウジ・ガイだー!』……、うっとうしいからガイでいこう。こいつもアキトの部屋に来る予定だったがユリカに呼び出された整備 班に踏みつけられ、廊下でノシイカになっていた。
当然、骨折も悪化である(笑)。



この後、ナデシコ艦内ではルリとアキトの仲は一人(ユリカ)を除いて公認となり、概ね皆に受け入れられた。
もっとも、アキトは『ロリコン』呼ばわりされ食堂の女の子たちやパイロットの女の子たちとの距離がやや遠くなったり、整備班にしょっちゅうからかわれたり することになるが、とりあえず問題はなかったという。



戦争終結後、二人はピースランドのルリの実家で暮らすことになった。
正確には国王が半ば拉致する形で二人を招いたのである。

当然アキトはコックをやりたがったが、ルリと問題ある年齢で肉体関係を結んだことや、ルリの給料でそのことをもみ消したことなどを盾に取られ、あえなく敗 退。
ただし、趣味として王族であることを隠してコックをやることにはOKをもらったので、いつぞやのまずいピザ屋の隣にラーメン屋を構え大繁盛となった。
勿論売り上げは国の収入である(笑)。
ルリも手伝いに来る上、一週間に一度はナデシコクルーの誰かが来るので、美人がよく来ると評判の常ににぎやかな店であったことは言うまでもない。



店の休みに王宮の庭園の木陰で寄り添う二人。
完全に変わった未来を噛み締めながら、ルリはアキトに問う。
「今、幸せですか……?」
と……。
そしてアキトは答える。
「勿論、幸せだ……」
と……。



Fin



あとがき

喜竹夏道です。
1000万Hitおめでとうございます!
記念作品として書きましたが、ルリ×アキトハッピーエンドのよくあるパターンに。
でもルリ×アキトの多いシルフェニアではオッケーかな?
黒い鳩さん、今後もがんばってください。




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