シルフェニア 5000万Hit記念作品
マヴラブ えくすとら?
 〜白銀武の日常〜
 
 
 
 主人公白銀武は改造人間……ではなく、ちょっとゲームが上手く、背が高く、比較的顔も整っており、不真面目なくせに何故か女の子に良くモテるというゲームの主人公としての王道の体質を持つ男である。
 くそ、ちんこもげろ。
 
 ……それはさておき、今日も今日とて遅刻寸前に教室に飛び込んでくる武とその幼馴染みである鑑純夏嬢。
 「はぁっ、はぁっ、はぁっ……。ふう、どうにか間に合ったか……」
 「ふぅ、ふぅ、ふぅ……。うう〜、タケルちゃん酷いよ〜」
 「んだよ、純夏の足が遅いのがいけないんだろーが」
 「タケルちゃんがもっと早く起きてくれれば、もっとゆっくり来れるんだよ〜!」
 「ふん、早起きなど断固として断る!」
 「なにさ〜、今日だって私が起こさなきゃ昼まで寝てたでしょー!?」
 「だからどうしたっていうんだ?」
 そう言う武を鼻で笑う純夏。
 「いいの〜? 命の恩人にそんなこと行って〜?」
 「何で恩人なんだよ?」
 「はぁ…、やっぱり忘れてる。……今日の一限目の授業は何?」
 「何ってそりゃお前、今日は……」
 そこまで言いかけて青くなる武。
 「確か……物理……」
 「香月先生の授業だよ〜? サボれるのかな〜?」
 香月夕呼。白稜柊学園の物理教師にして天才科学者にしてマッドサイエンティストという特殊スキルの持ち主である。
 アホの子である武はしょっちゅう遊ばれていた。
 「おまけにタケルちゃん、今日宿題で例題を解かなきゃいけないんじゃなかったっけ〜?」
 やらなかったらどうなるのか……。過去にやらなかった連中は例外無く口をつぐむため何があったのかは不明である。
 そのことがさらに恐怖を増長していた。
 「ど、どこの問題だったっけ!?」
 「さあね〜? たっぷり怒られなよ?」
 「て、てめ純夏!?」
 絶対知っている! と確信した武は純夏に近寄り……いきなり抱きしめた。
 「純夏……、俺が悪かった。今度からちゃんと起きる。だから……」
 「もう……しょうがないなぁ……。今度だけだよ?」
 「サンキュー! 純夏大明神さま!」
 調子の良い事を言う武。いったい何度目の『今度だけ』なのだろうか?
 「で? 面白い寸劇はそれでお終い?」
 ビクッ、となった二人が辺りを見るとすでに他の生徒は着席しており、教壇にはすでに夕呼の姿が……。
 「あ、あれ? 香月先生?」
 「ゆ、夕呼先生、いつの間に!? ホームルームは!?」
 「あんた達が寸劇やってる間に終わったみたいよ?」
 辺りを見渡す二人に『やれやれ』といった表情で返す夕呼。
 最近はまりももそういった二人をスルーする技術がついてきたらしい……。
 「「はうあうあ〜!?」」
 「さて、二人とも。アタシが授業を始めようってのに騒いでいるなんて良い度胸ね? しかもラブシーンまで見せつけてくれちゃってまぁ……」
 「ああああああああ、あのっ! せんせい、これは!」
 「はいはい、おおむね聞いてたから。じゃ、白銀、前回の授業で言っておいた問題を解いてちょうだい? そんな寸劇やってるヒマがあるんだったら完璧よね?」
 慌てる純夏を手で制すると、武に目を向ける。
 「あ、あははは……えっと、その……」
 「やってない、と……。白銀」
 「はいっ!」
 笑顔の夕呼の言葉に背筋を正す武。ここでうかつな対応をすると己の命に関わることを良く知っている反応である。
 「掃除用具入れからバケツを三つ持ってきなさい」
 「はいっ!」
 即座にバケツを持ってくる武に夕呼は次の指示を出す。
 「それに水を汲んできて」
 「はいっ!」
 ダッシュで廊下に飛びだし水道へ走る。一度に三つの水入りのバケツを持つことは出来ないので、二回に分けて持ってくる武。
 「汲んできましたっ!」
 「そしたら前へ来てこのカードを首からかけなさい」
 「はいっ!」
 武の首に掛けられたカードには「この男、馬鹿につき、救援無用』と大きく書かれていた。
 「じゃあ、このバケツを二つ持って」
 「はいっ!」
 黒板の横で両手にバケツを持って直立不動。そこへさらに。
 「動くんじゃないわよ」
 「はいっ!」
 そう言って夕呼は武に歩み寄り……最後のバケツを武の頭に乗せた。
 「水をこぼしたら今日は出席しなかったことになるから」
 「はいっ!」
 素直に肯くしかない武は一時限分をクラスメイトの生暖かい視線に晒され続けるのだった……。
 
 
 
 夕呼の物理を立たされ坊主ですごした武は純夏に食って掛かる。
 「だいたい何で毎朝毎朝殴られなきゃならないんだよ!? おかげでまた夕呼先生に宿題を出されたじゃねぇか!」
 完全に八つ当たりである。
 「そもそも武ちゃんが殴られるようなことをするからでしょ! 宿題は夜にやればいいんだし!」
 「なにおぅ!? 夕べだってお前がどりるみるきぃぱんちなんぞを食らわせなければ宿題の事を忘れることもなかったんだ!」
 「でも結局は私のノートを写しにくるんだよね〜?」
 八つ当たりだと判っている純夏は慣れた物でやり返す。
 クラスメートにもすっかりおなじみの光景である。
 「それで毎回成層圏突破かよ!? ぜってーワリが合わねえだろうが!」
 「だいじょぶだいじょぶ……」
 いきなり話に割り込む慧。
 「何がどう大丈夫なんだよ!? こっちは毎回死にかけてんだぞ!」
 「だって……」
 「だって?」
 言い淀む慧に武は尋ね返す。
 「白銀の身体は『ギャグ』で出来ているから……」
 「オイ!」
慧の言葉にツッコむ武。
 「血潮はノリで、心はジョーク……」
 「マテコラ」
 それを気にせず続ける慧と再度ツッコむ武。
 「幾たびも劇場を変えても不発……」
 「どこが劇場だ!?」
 酔ったように続ける慧と発言を止めようとする武。
 「ただの一度も拍手はなく……」
 「されてどうする!?」
 この辺りで元ネタを知っている連中は吹き出す寸前であった。
 「ただの一度も喝采されない……」
 「だから、されてどうする!?」
 元ネタを知らない連中でも納得する内容である。
 「彼の者は常に独り 成層圏で気圧に酔う……」
 「んな生易しいもんじゃねえっての!!」
 『普通の人間は生身で成層圏までは行かない』というツッコミは無い。これが主人公補正プラスギャグ補正というものである。
 「故に発言に意味はなく……」
 「人の話聞けよ!!」
 そして渾身の一言が慧の口から出る。
 「その身体は、きっとギャグで出来ていた……?」
 「んなもんで出来てねぇよ!! しかも何故疑問系だ!?」
 とうとう暴発する武。周辺の連中も爆笑寸前である。
 「さあ?」
 いつものとぼけた表情で返す慧。その慧に近づく人影が一つ。委員長こと榊千鶴である。
 「彩峰さん」
 「……なに?」
 委員長の言葉に振り向く彩峰。
 教室に緊張が走る。すわ、戦闘勃発かとクラス全員が思った瞬間……、その彩峰に千鶴は……、
 (^-^)b
 とサムズアップして、
 「上手いわ、それ」
 と、のたまった。
 どうやら元ネタは知らなくてもウケたようである。
 直後、クラス中で大爆笑が起こるのであった……。
 「くそっ! 純夏のせいでみんなに笑われたじゃねぇか!」
 「なんだよ〜! 武ちゃんが悪いんじゃないか〜!」
 八つ当たりする武に言い返す純夏。
 「うるせー!」
 「あいたー!?」
 しかし、いつものごとく武チョップが純夏の頭に炸裂した。
 「なにするんだよー!?」
 「うるせー! 口答えすんな!」
 文句を言う純夏に怒鳴り返す武。
 その言葉を聞いた純夏はピーカブースタイルに構え、頭を左右に振り出す。
 「どりるみるきぃ……」
 「ま、待て待て純夏君!? 暴力は何も生まない! 話し合おうぢゃ……」
 純夏が何をやろうとしているのか気づいた武が止めようとするが、時すでに遅し。
 「ぱーんちっ!!」
 「シルフェニア5000万ヒットおめでとおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………」
 勢いよく打ち上げられる武の身体。
 本日は特別に地球を二周しておりま〜す!(笑)、と言わんばかりの勢いで空の彼方へ消えていく武をいつものごとく見送るクラスメートたち。
 今日も三年B組は平和であった(笑)。
 
 
 
 この少し後……武の人生を大きく狂わす者が来訪するのだが……それはまた別のお話。
 
 
 
 

あとがき
 
 ども。喜竹です。
 と言うわけで5000万Hit記念作品です。
 武ちゃんの空を飛ぶ時の絶叫を使用してみました。
 時期的には冥夜ちゃんが来るちょっと前くらいです。
 
 今後も頑張りますのでよろしくお願いします。



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