2010年ジューンブライド企画
機動戦艦ナデシコ短編
 六月の『花嫁』? 通
 
 
 リンゴーン、リンゴーン
 チャペルに鐘が鳴り響く。
 今日は結婚式である。
 快晴の六月の空は二人の門出を祝福しているようだった。
 
 
 
 控え室でタキシードに着替えを済ませ、そわそわして出番を待つ花婿に職場の同僚から次々と賛辞が送られる。
 「おめでとう!」
 「おめでとうございます副長!」
 「羨ましいぜ!」
 「やったなこの野郎!」
 「しかし以外だったよな〜。お前が彼女に選ばれるなんてよ〜」
 皮肉もボディブローも今日は軽く受け流す。
 なにせ今日は彼女との結婚式なのだから。
 この僕、アオイ・ジュンと彼女の!
 苦節十年。ようやくこの日がやってきた。
 横にある姿見に映った自分の姿を見て微笑む。
 そこに映っていたのは完璧なほど『花婿』と化したアオイ・ジュンがいた。
 
 
 「さ〜さ〜、花嫁さんが待ってんだ。そろそろ式場に行かねぇとな〜!」
 ウリバタケに背中を押され、にやけた笑顔のまま立ち上がるジュン。
 控え室に来ていた皆に背中を押され式場入り口に立つと後ろ姿でも判るナデシコクルーたち。
 そして式が始まり、後から来る花嫁を待つため神父の前に立ったジュンは目の前の光景が信じられなかった。
 なぜなら神父はミスマル・ユリカだったからである(大笑)。
 
 (え? ユリカが何で神父? 新婦じゃないの? じゃあ、僕が結婚する相手って一体?)
 先ほど見た後姿から、ほぼ全てのクルー(特に女性クルー)がいる事を確認できていたジュンは一体誰と結婚になるのか全く判らなかった。
 混乱したまま立ち尽くすジュンをよそに式は進行し、いよいよ花嫁が登場する。
 しずしずとジュンの隣に並ぶ女性。
 その女性の顔を見たジュンは絶句した。
 薄く化粧を施されたその人物は……テンカワ・アキト(女)だった!
 「なんでだぁぁぁぁぁぁっ!?」
 思わず叫ぶアオイ・ジュン。だが神父から返ってきたのは駄々っ子を叱る視線であった。
 「ジュン君、ダメだよ? お式の最中!」
 「だ、だって!?」
 ユリカの言葉に泡を食うジュンだがそれをスルーして式を進行するユリカ。
 「では、誓いのキスを……」
 神父(ユリカ)の言葉にジュンは焦り、アキ子(笑)は瞳を閉じてあごをス……と上げるのだった。
 怖気づくジュンはなかなかキスをしない。
 式の参列者からは殺気が上がってくる。
 ユリカも小さな声で「ジュン君、キス! キース!」とジュンを急かす。
 そうこうするうちに時間は過ぎていき……アキ子の眦(まなじり)で涙が光った。
 それを見た参列者の怒りはピークに達した。
 「何やってんだ副長! それでも男か!? 結婚式で女を泣かすな!!」
 「なんでさっさとキスしないのよ!?」
 ジュンに対する怨嗟と罵倒が飛んでくる。
 「「「「「「「「「「キース! キース! キース!」」」」」」」」」」
 参列者からの『キス』コールにますますジュンは追い詰められていく。
 そして……諦めたジュンは……現実逃避していた(爆笑)。
 (こ、これは夢だ! きっと土壇場で目が覚めて、『ゆ、夢か……』なんて事になるに決まってる!)
 顔を僅かに下に向け、ゆっくりと近づいて行く二人の唇。
 そして……。
 温かく柔らかい感触……と思った次の瞬間!
 口の中になにやらヌメったものが侵入し……口を舌を咽喉の中を蹂躙し始める。
 「んー!? んーー!?」
 口を離そうとしたが、アキ子がガッチリとジュンの頭を挟み込んで離さない。
 そのままアキ子はジュンの口を凌辱し続ける。
 
 十分後……。
 壇上には完全に腰が砕けたジュンと、なにやら満足しきったような表情のアキ子がいたのだった。
 
 
 舞い散るライスシャワーの中、アキ子にお姫様抱っこされて式場を出るジュン(笑)。
 そのまま車に乗せられ、アキ子の運転でホテルに向かう二人。
 そしてベッドに寝かされたジュンはアキ子に服を脱がされる。
 自分も服を脱いだアキ子はジュンの上に跨り……。
 
 
 
 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
 布団を跳ね上げ、起きるジュン。
 慌てて辺りを見渡し、自分がナデシコ内の自分の士官室にいること、自分がパジャマ姿であることを確認し、盛大なため息を吐く。
 「ゆ、夢か……。良かった……」
 夢であった事に酷く安堵し……、なにが悲しくて二日連続で同じ男と結婚式を挙げなければいけないのか、と嘆くのだった……。
 
 
 
 その後、ジュンが食事に向かう途中、またもフラッシュバックした夢の内容に前回以上に自己嫌悪に陥り、
 「僕はホモじゃない!!」
と壁に頭を打ちつけ続け、二日連続で血溜まりに沈んでしまったのは……仕方ないことなのかもしれない。
 
 治療に当たったイネスは二日連続で運び込まれたジュンに呆れてしまい、夢も見ないで眠る事が出来る薬を処方したという。
 もっとも飲み方を間違えると夢から覚めなくなるような薬だったため、その事を知っていたクルーは何時そうなるか、裏で賭けをしていたそうである。
 結局、飲み方を間違えなかったためドローになったが。
 
 
 
 

あとがき
 
 ども、喜竹夏道です。
 六月と言うことで! またもやってみました『ジューンブライド』ならぬ『ジュンブライド』(笑)。しかも2! 前回の翌日という設定です。
 「短かっ!? しかもコピペ作品!?」と言わずに楽しんでいただけましたら幸いです。
 前回の夢と対比するためにワザとコピペにしてみました(汗)。
 決して手抜きじゃ無いですよ!?
 来年以降のジューンブライド作品でこのシリーズを完結にしたいと思います。
 それまでよろしくお願いします。



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