機動戦艦ナデシコ 逆行のミナト


  第九話 奇跡の交渉『愛撫か?』 外伝 その2
   〜妖精たちのお正月〜
 
 
二一九八年一月一日 十時十五分━━━━
 
「「「「明けましておめでとうございます」」」」
「?」
年始の挨拶する面々を不思議そうに見るラピスはミナトの作った晴れ着を着ていた。ルリも晴れ着姿である。
「ええとね……『明けましておめでとうございます』っていうのは『昨年一年が無事に終わってよかったですね』って言っているのよ。『また一年無事に終わらせられるように』って願いもこめられている言葉なのよ」
ミナトの説明に一応納得したのかラピスも新年の挨拶を返し、全員で初詣に行く事になった。さすがに食堂も今日は休業である。
初めての初詣にルリもラピスもとても嬉しそうにしていた。
 
 
途中でマキビ一家と合流し、近くの神社に向かう一行が目にしたのは、神社の鳥居の外まで並んでいる参拝者の姿だった。
「凄い混雑ですね」
「これでも少ない方よ。昨夜のうちに済ませている人が多いから。一月一日になったと同時にお参りを済ませちゃう人が多いのよね」
そう言ってお参りの列の最後尾につくミナトたち。
そこはすごい人ごみでしっかりと手をつないでいないとすぐに引き離されてしまいそうであった。そのためアキトが年少組のラピスとキラの手を握っていた。ルリはミナトと、ハーリーはマキビ夫人とである。
「アキト君、ラピスとキラちゃんの手を離さないでね!」
「はっ、はい!」
必死なアキトとは対照的にラピスとキラの二人はアキトと手を繋いでご満悦のようだった。
 
 
そうしてようやくミナトたちの順番が回ってきた。
ミナト一行が全員並んで二礼二拍一礼を行い願い事をする。
(アキトさんともっと親密になれますように……)
そう声に出さずに願うルリの隣にいる二人の幼女は声に出して願い事を言っていた。
「アキトと恋人になれますように」
「アキトお兄ちゃんと結婚できますように」
「あ〜! キラずるい!」
「へへ〜ん、言ったもの勝ちだよ〜!」
「じゃあ私だって言うもん! アキトと夫婦になれますように! アキトの奥さんになれますように! アキトに前と後ろの処女をあげられますように!」
ブハァッ!!!
最後の一言にアキトを含めた周辺にいた参拝客がいっせいに吹く。
しかし『どこでそんなネタ仕入れてきた!?』というツッコミは起きなかった。
なぜならラピスの発言直後、境内にいた全員が凄まじい殺気を感じたからである。
「……ラピス、キラちゃん……?」
「「は、はい!?」」
何やら黒いオーラをまとったルリが二人に微笑む。だがその目は笑っていない。
「みんなに迷惑だからもう少し静かにお願いしなさい。いいですね?」
「「はっ、はい!!」」
背筋を伸ばし、返事をするラピスとキラ。その膝はカタカタと震えていた。……いや、周辺の人間たちも同様であった。
ちなみにこの時、境内中にいたはずのハトとカラスとスズメはものすごい勢いで逃げ出していた……。
足元でもネズミや猫が全力で逃げ出していた……。野生動物でも怖いモノは怖いらしい。
そんな中、ミナトが何を願っていたのか?
それはミナトだけが知っていた。
アキトの願いは『早く火星の人たちが助かりますように』だった。
ハーリーは言わずもがなである。
なお、サイゾウの願いは『平穏無事』だったそうである……。
 
 
 
出店を回ってから食堂に帰ってきたルリとラピスとキラはアキト達にお年玉を貰い……ルリはぽち袋ごと大事に保管し、ラピスとキラは食べ歩きに行ってしまった。
また、巫女さんに鼻の下を伸ばしたアキトを見たラピスが巫女服を欲しがったのでルリ・ラピス・キラの分を作るミナトであった……。
……そうかそうか……巫女萌えか、アキト……。
翌日、アキトが丸一日ルリに口を聞いてもらえなかったのは余談である。
 
 
 
 
あとがき
 
あけましておめでとうございます。新年早々の喜竹です。
お正月と言う事で、短いですがまたも外伝を用意してみました。
ルリ・ラピス・キラの初めての『初詣』。
いかがだったでしょうか?
とりあえずアキトは巫女萌えにしてみました。
でも人の嗜好って変わりますから、次回のアキトは別のものに萌えているかもしれませんが(笑)。




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