【注意】

 このSSはニトロプラスのゲーム『デモンベイン』のネタバレを少し含んでいます。

 先にゲームをプレーすることをオススメします。

 やってないと解らない所もあります。

 よろしければ先へお進みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  亡霊の逝く先は…

 

作者 くま

 

 

 

 

彼女達はこの夜、

その短くも激しい人生に、

ピリオドを打つこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった。

死に逝く彼らに手を差し伸べる存在があった。

それはおおよその所でガイアの意志と呼ばれる『存在』だった。

『存在』は彼らににとても魅力を感じていた。

彼らの能力、つまり人殺しの能力に。

だから死ぬ間際の彼ら一人一人に契約を持ちかけた。

『死後を捧げるのなら、望みを叶えよう』 と。

 

男は迷わず答えた。


「いいだろう。俺の死後を捧げよう。」

 

 

女は疑いの眼差しを持って答えた


「フン、いいさ。あたしの死後をくれてやるよ。」

 

 

彼女は両膝を付き、両手を組んだまま答えた。


「私の死後で良いのなら、喜んで捧げましょう。」

 

 

『契約は成った。確かに死後は貰いうける。望みを述べよ』

 

『存在』は三人と契約を交わし、存在が支払うべき対価を確認する。

 

「俺に関わっちまったあの二人が何時までも幸福であることだ」

 

「あたしが殺しちまったアイツに、世界からの永遠の祝福を与えて」

 

「あの人が、あの人が望む人と何時までも共にありますように」

 

三人からの答えを聞いた『存在』は硬直してしまった。

それってどう言うこと?と。

時間という概念があるのかどうか怪しい『存在』故に、

どうやって処置するかをとりあえず留保し、

他の『存在』主に平行世界における自分に聞いて回った。

根本的なところで同じ存在であるが故に、

中々良い方法は浮ばなかったが、

やがてある答えに辿り着く。

それは元々の死後を捧げられたもののあり様とはかけ離れた結論だった為、

それで良いのかどうか『存在』の上司に当る【存在】に確認を取った。

少しばかり驚いた【存在】だったが結局は条件付でOKをだすこととなった。

無論、責任は『存在』持ちでということだったが。

許可を貰った『存在』は三人と死後の契約を結び、その対価を支払った。

 

「あ、あんまり引っ付くなよ、キャル」
「しょうがないじゃん、あたしら三人で一つな訳だし」
「そうね、仕方が無いわね」
「あのエレンさん、なにやら柔らかいものが当ってるんですが…」
「気にしないで、仕方が無いことなの」
「そうそう、仕方がないの」
「ぐわ、だからってキャルも押しつけるなよ」
「「好きなくせに」」

 

『存在』に死後を捧げた『ファントム』と呼ばれた彼らは、

三人一括りで英霊の座に付くこととなった。

こうして一つの座に三人が居るというイレギュラーな英霊が産まれる事となった。

 

 

 

 

 

 



グシャッ!!

ドクターウエストは己の身体が肉塊へと変わる音を、その体内に伝わる振動を通じ聞いていた。

そして漠然と『死』というものを理解した。

彼は思った。

やはり正義の味方の真似事などするべきではなかったと。

 

ウエストの身体を押しつぶしたのはアーカムの街を復興させる為、

走り回っているはずの二台の大型トラックだった。

大導師マスターテリオン率いるブラックロッジとの戦いが終ったアーカムシティ。

覇道の最終兵器たるデモンベインがヨグ・トースの扉の向こうに消えた後も人々の暮らしは続いていた。

扉の向こうの死闘を余所に、世界は平穏を取り戻していたのだ。

とはいえ戦いで破壊された街並みが元に戻るわけでは無い。

急速に進む街の復興の為に走り回るトラックはシティ全体では100台を下ることがなかった。

事の起こりはこうだった。

偶には日の光でも浴びてみようと街に散歩に繰り出したウエスト。

復興工事の喧騒に包まれる街中でウエストが発見したのは反対車線を突き進む一台の大型トラック。

よくよく見ると運転手が眠りこけているのが見て取れた。

暴走トラックを前に恐れ慄く街の人々。

悲鳴の上がるその先には、横断歩道の真中で腰を抜かした老婆の姿。

ウエストは即座に判断を下した。

 

「この街の凡人どもに悲鳴を上げさせて良いのはこの大天才足る我輩、ドクターウエストのみである。

 よってあのトラックは我輩の敵である。

 エールザ!やっておしまい!」


「アイアイサー!!」

 

ウエストの口上にエルザは答え、彼女愛用のトンファー片手に暴走トラックの前に立ち塞がる。

 

「ロボッ!!」

 

エルザらしい気合と共に放たれたトンファーの一撃は向ってくるトラックを捕らえた。

その一撃で10tトラックが軽々と宙を舞い、近くの取り壊し予定のビルへと突っ込ませた。

エルザは一仕事終えた満足感に軽く髪を梳き、風になびかせる。

一方のウエストは腰が抜けた老婆を背負い、歩道まで運んでいた。

 

「この大天才ドクターウエスト様がユーをキャーリー。

 我輩は天才故に礼など求めぬが、我輩を褒め称える許可をプレゼンチュー。

 さあ褒め称えたまえ、そこはかとなく、爽やかに!!」

 

突然の言葉に二の句を継げない老婆。

 

「ははは、良いのである。

 凡人がこの大天才を褒め称える言葉を即座に思いつくなど不可能なこと。

 やむを得まい。ではな、アデュー♪」

 

そう言い残しウエストは横断歩道へと足を踏み入れる。

そんなウエストの耳には聞こえるのは奇妙な音と声。


ドガッ!!


「ロボー!?」

 

奇妙な音と声に何事かと降りかえったウエストの目の前には鉄の壁。

暴走していた10tトラックの後から、20tトラックが同じ様に暴走してきていたのだ。

さしもウエストもこのような事態は完全に予想外で、そのままなすすべなくグシャっと逝ってしまったのだ。

こうしてドクターウエストは普段の奇妙奇天烈な行動とはかけ離れたあっけなさで死んだ。

そしてこの男にも手が差し伸べられてしまった。

『死後を捧げるのなら、望みを叶えよう』 と

 

 

「フッ、この大天才ドクターウエスト様の死後をプレゼンチューなど片腹痛いわ!!

 と、言いたい所であるが、大天才であるが故何でも器用にこなす我輩にも、

 一つだけ望みが在ったり無かったりなので、

 話を聞いてみても良かろうとか思ったりしちゃってますか、軍曹?

 ちなみに税抜き価格ですので5%税がかかります。なんてのはノーセンキューの方向で!」

 

『存在』からの問いかけに、どこからとも無く取り出したギターをかき鳴らしつつ答えるウエスト。

決めポーズなのかウエストの右の人差し指は在らぬ方向をビシッと指していた。

そのウエストの語りっぷりというか奇天烈な行動にさしもの『存在』も1歩引いた。

ガイアの意志とも呼ばれる『存在』から引かれるドクターウエスト。

恐るべし。

 

「ちなみに我輩が望むのは我輩の最大にして最高の、

 ただしロリペド変態鬼畜故に人類的には抹消の方向性が高い、

 あの大十字九朗と白黒つけること也。

 あやつらを追うことはさしもの我輩にも困難であるからな。

 って、人に訊いておいてだんまりを決め込むとはどういう事よ、メーン?」

 

ギターを激しくかき鳴らし続けられるウエストの言葉。

 

『ちょ、ちょっと上司に相談してきます』

 

『存在』はウエストの奇行にそう返すのがやっとだった。

今まで『存在』が声をかけた中にウエストのようなタイプは居らず、対応にとても戸惑っていた。

『存在』は足取りも重く【存在】のところに向った。


【君は―――何かね、目を覚ましながら寝言を言うタイプなのかね?

 いくら世界を救った英雄の一人とはいえ、限度があるべきでは無いかね?】


とか


【忠告させてもらうが、勇気と無謀を同じポケット入れるべきではないな。

 君の場合、馬鹿も一緒に入っているようだがね】


等々、『存在』は散々嫌味を言われた後、条件付で【存在】に許可を貰う事が出来た。

無論責任は『存在』持ちでだ。

そして『存在』はウエストと契約を結びその死後を捧げられることとなった。

ウエストは【存在】から付けられた条件である、ウィンフィールドと同じく『英霊』に成ったのだ。

 

 

 

 

 

 

そして舞台は冬木の町へと移っていく。


あとがき

どうも、くまです。

黒い鳩さん二万ヒットおめでとうございます。

記念SSを投稿させていただきました。

内容的には『月の夜星の空』の続きです。

が、あり得ない方向に展開しました。

まあ、良くある事という事で、勘弁してやってください。

ではまた。



感想です。

凄いです!

昨日に今日は20000HITしそうだな〜という風に書いたらすでに本日お目見え!

くまさんの素早さに声も出ません(だって文字だし)

内容は凄い設定ですね…お話の奇抜さ面白さは当然の事、クロスした世界の数も凄いです。

少なくとも現時点でファントムとデモンベイン、そしてFateが確認されております♪

やった事のある範囲がそれだけと言うだけなのでそれ以外にもクロスしている可能性がありますが…

これはもしや…スーパーロボット大戦みたいに大きなお話となるのでは…

今後も目が離せませんね♪

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