【注意】 

  このSSにはニトロプラスのゲーム『Phantom PHANTOM OF INFERNO』

  のネタバレを多大に含んでいます。

  未プレーの方は是非先にゲームをプレーすることをオススメします。

  つーかやってないと訳わかんないと思います。

  それでもよろしければ先へお進みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星の夜、月の空

作者 くま

 

 

 

 

 

ガァァァン!!


使われなくなって久しいであろう礼拝堂。

朽ちかけた聖人像の前。

ステンドグラスから差し込む斜陽の中。

ただ一発の銃声が、鳴り響いた。

10mほど距離を取り、教壇の左右に別れ、向かい合った男女。

立っている力を失い、ゆっくりと倒れたのは、マテバM2006Mを手にした男だった。


「クソッタレ!!」


女は忌々しげに吐き捨て、倒れた男に駆け寄った。

そして銃弾を受けた男の血に染まるシャツを掴み、強引に立ちあがらせる。


「テメエ!!」


女はそう怒鳴りつけたが、その後の言葉を続けることが出来なかった。

『先に抜いていたのに何故撃たなかったか』と、問い詰めれなかったのだ。

即死では無いものの、明らかな致命傷を受けた男。

その目が、自分を全く見てはいなかったからだ。


「へっ……ざまあ…見やがれ。

 ―――今度こそは……愛する…女を

 ……撃た…ずに………済んだ。

 だから…俺…の……勝ち…だ―――ゴフッ」


そこまで言い終えた男の口からは、

内臓からの出血による血の塊が溢れ出す。


「レイジ!!」


女は男の名を叫ぶ。

それが切っ掛けだった。

合っていなかった男の瞳の焦点が、女の顔へと合わせられる。


「ああ、……キャルか…。

 ――俺は……消えるが

 ―――――お前は……生きろよ」


男は最後にそう言って薄く微笑むと、その目を閉じた。

そして男の頭が力なく垂れ下がる。


「レイジ!?」


女は再び男の名を呼ぶ。

何度も、何度も。

両腕で掴みなおした男の肩を、

何度も、何度も揺すりながら。

されど、男はもう二度と目を開くこと無く、

その口も二度と言葉を紡ぐことが無かった。

ただ、ただ、徐々に体温を失ってゆく男の感触だけが、

男の身体を抱きしめた女の手の中に残った。


ゴトッ


力なく下がった男の手から、マテバが落ちる。


キィィイン


落下の衝撃でシリンダーが開き、装填されていた弾丸が抜け落ちた。

その弾丸を見た女の目が驚愕に開かれる。


「うあぁぁあああぁああぁぁあぁぁぁああ」


そして女は吠えた。

怒り、哀しみ、憎しみ、ありとあらゆる感情全てを込め、女は咆哮しつづけた。

女の慟哭は、少女達を連れた白い男が、その場に表れるまで続いた。

そして女は紅い『死神』に生まれ変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 


本国に帰った女は、やはり『死神』のままだった。

女は、女に関わっていた全てを殺し、

関わっていなかったものもまた、同じ様に殺した。

暴走車、

凶刃、

殺戮者。

かつての自分の同胞すら、笑顔で殺して見せた女には、

女を恐れる相手から、数々の名が送られることとなった。

が、女はいつも、ただ一つの名を名乗った。

『ファントム』 と。

 

 

 

 

 

 

 

 

回りの全てを殺し、殺し、殺しつづけた女だったが、

今はその身に銃弾を受け倒れていた。

月の明るい夜。

サンフランシスコの砂浜。

女が男を殺してから、三回目の冬のことだった。

 

 

月明かりに誘われるように、

幽鬼のような足取りで砂浜までやってきた女。

元々女の行動基準に明確な指針は無い。

いつも気まぐれそのものだった。

その夜も何をするわけでも無く、

ただ砂浜まで出歩いただけだった。

流れてきた雲が一瞬月をよぎり、

辺りが暗闇に近づいた瞬間のことだった。


パシュ、パシュ!


サイレンサーで削られた銃弾の発射音は、

女の耳に届くことは無かった。

一欠片の殺気すら消し去った二発の弾丸。

女はその二発の弾丸が己の身体を貫くまで、

その存在に気付けなかったのだ。

腹部を貫かれ、海岸に倒れる女。

その目に写るのは、再び顔を出した満月だった。


シャリ、シャリ


靴が砂を食む音の方に、女が視線を向ける。

そこにあったのは見知った顔。


「―――ああ、やっぱりか。

 結局、あたしを殺すのは、

 ―――あんたなんだね」


大して驚きもせず、逆に自嘲的な笑みすら浮べ女はそう口にする。

女が自覚しているのは、自分がこのまま死ぬということ。

腹部の傷は、女から確実に命を奪い取っているし、

女の目の前にいる相手は、女に止めを刺しに来たのだから。


「―――フンッ。

 まあ、いいさ、殺しなよ。

 そしてあんたも、精々余生を楽しむこった」


ガゥン!


構えたコルトパイソンの引き金が引かれた。

放たれた357マグナム弾は狙い通り女の頭部を貫き、

その中身を砂浜へとぶちまけた。

女が懐に手を入れたのを見た彼女は、

女の眉間を打ち抜くことを躊躇しなかった。

懐に入れた女の手が自重に引かれ、

砂浜へと引かれるように降りて行く。

その指先にでも引っかかったのか、

1丁の銃がその懐からこぼれ出る。

マテバM2006M。

女を殺した彼女はそのマテバを見て硬直する。

そして彼女は、恐る恐るマテバを手に取った。

感じた違和感に、

彼女はシリンダーを開きその弾丸を確認する。


「―――!!」


そして彼女は再び硬直し、力無く膝から崩れ落ちた。

マテバに装填されていた総真鍮造りの本物そっくりの弾丸は、

彼女にも見覚えが在ったものだった。

それは偽りの学生生活の中、持ち込んでいたマテバを、

玩具だと誤魔化す為に男が作ったものだった。

そして彼女は全てを理解した。

あの時、男が何を決意し、

そして女が何を思って、

最後に、このマテバに手を伸ばしたのかを。


「――――――」


彼女はマテバを胸に抱き、ただ、ただ、涙を流す。

声すら立てずにひたすら泣き続けた。

泣いていた彼女だったが、

しばらくすると、おぼつかない足取りで立ちあがった。

そして自ら殺した女に肩を貸す様にして担ぎ上げ、歩き出す。

向かう先は黒く穏やかな冬の海。

冷たいなどという表現すら生温い冬の海に、

彼女は濡れるのも構わず、そのまま入って行く。

彼女の頭の中で繰り返される言葉があった。


『精々、余生を楽しむこった』


女が今際の際に残した言葉が、

彼女の頭の中をぐるぐると回っている。

言葉はひたすら彼女に事実を付きつけた。

女を殺した瞬間、彼女もまた同じ様に終ったのだと。

それは奇しくも、

男を殺した女が抱いていたのと同じモノだった。

ただ彼女は女と違い、

男からのたった一言がなかったのだ。

男が女に言った『生きろ』の一言が。

いや、違う。

男が死んでからの日々が、

彼女の内側に在った『生きろ』の言葉を、

かつて男に言われた『生きろ』の言葉を、

消し去ってしまっていたのだ。

彼女は気が付いてなかったが、

女は男のその一言だけで、今まで生きてきたのだ。

だが彼女に、男の言葉はもう残っておらず、

本当に全てが終ってしまっていた。

だから彼女は死ぬことにすら、一切の迷いを持たなかった。

その彼女はすでに、腹の高さまで冬の海に浸かっていた。

肩に担ぎ上げていた女は、

波にさらわれてしまい、

彼女の周りのもうどこにも居ない。

彼女は胸に抱いていたマテバを取り出し、

コルトパイソンから357マグナム弾を移しかえる。

そのまま自らのこめかみにマテバの銃口を押し当て――


ガァァァン!!


迷うことなくトリガーを引き絞った。

凍てつく冬の海の中、

力を、いや命すら無くした彼女のからだが漂い始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

星の夜。

 

月の空。

 

冬の砂浜。

 

『ファントム』

 

かつて暗黒街の住人達に、

畏敬の念を込め、

そう呼ばれていた少女達。

彼女達はこの夜、

その短くも激しい人生に、

ピリオドを打つこととなった。

 


あとがき

ども、単価500円の顔の無い月のヤツより、単価200円CCさくらのフィギアの方が出来が良いのでは?

と思ってしまったくまです。

黒い鳩さん、HP開設おめでとうでございます。

えー、あー、あと、メリークリスマス?

つーかクリスマスに、この暗い話はどうよ?

と思いつつも送らせていただきました。

これが掲載されていたら、黒い鳩さんの広い心に感謝を。

あと、このSSはPS2版の『月輝る夜に独り』ENDの焼きなおし、みたいなモノになってます。

パク……ゲフンゲフン、オマージュというものだと思っていただければ幸いです。

今夜はこの辺で。

ではまた。

 


感想

悲しいお話っすね…

主人公のレイジが死んでるんですから仕方無いっすけどね…

残された二人のファントムのお話ですね…

私は殺されるパターンまで網羅しておりませんので良く分からない部分もありますが、

やはりレイジが必要ですね。そして全員を助けたければ…ファントムIFになると…そう言う訳っすね♪

IFはリバホでも名作だと思いますよ♪ くまさんの知識を見せ付けられましたしね(汗)

で、くまさんお祝いの品ありがとう御座います♪

HPこれからも頑張っていきますので今後ともよろしくお願いします♪
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