BLUE AND BLUE

 第5話

作者 くま

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、ホシノルリ。これからよろしく」

 

そんな言葉と共に、私は彼女に向かって右手を差し出した。

彼女は私の右手と顔を交互に見比べて、なぜだか戸惑っている。

 

「どうしたの?握手の仕方ぐらいは知ってるでしょう?」

 

そう言われて差し出した手を、おずおずと握り返してくる彼女。

そんな彼女の手は、私の手よりも幾分か小さいものなのだ、と感じた。

それが私とホシノルリの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナデシコCを手に入れるため、

私達はこの時代のオリジナルのホシノルリを捕まえる事にした。

幸いにもその辺のノウハウは、アレの性癖が講じて色々な情報やつてが 在った。

わざわざ、地球で物色してきた相手というのも、

レの過去には在ったと残されていたデータが示していた。

とは言え、今回は正攻法で行くことにした。

今のホシノルリは、研究所の被験者という身分だ。

乱暴な方法も取れないことも無いが、

リスクが大きすぎると言う結論に、トゥリアも私も辿り着いたのだ。

トゥリアを通じ、ホシノルリの居る研究所との交渉に入る。

通常通信による時差は40分もあるので、随分とゆったりとしたペースで交渉は進む。

研究所のホシノルリに対する研究に異見を挿み、

ホシノルリを有効活用できないのなら、彼女を引き取らせてくれと申し出る。

その異見も、色々と研究の進んだ数年後のものを用いているものだ。

当然研究所からは、いくばくかの反論と共にこちらの申し出を辞退する返答が返ってくる。

そこで送りつけるのは、あの女がニロケラスシティで行ったという処理のデータ。

ホシノルリが最新鋭のIFS強化体質でないことを証明して見せよう。

という言葉で、私とホシノルリの勝負を持ち掛ける。

あからさまな挑発なのだが、

研究所にも自分達が最新鋭であるという矜持があったのか、

私達の話に乗ってきたのだ。

そうして私とアレは、火星政府が付けた護衛(監視ともいう)と共に地球へと向かうことになった。

特別便を使い、通常よりも幾分早く地球へと降り立つ私達。

もちろん、観光をするために来たのではないので、その足でホシノルリが居る研究所へと向かう。

特別製の車椅子で護衛を引き連れたアレや、

私の金色の瞳、そしてトゥリアの作り出す老執事など。

研究所の研究員達は随分と驚いていた様子だった。

それでも、取り決めてあった通りに勝負を行うことになり、

私とホシノルリは、初めて顔を合わせる事になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

握手を交わした後、

勝負する為に、それぞれに用意されたIFSの端末へと向かう私とホシノルリ。

あの女の過去であるホシノルリなのだが、私は特にこれといった事を思わなかった。

あの女とホシノルリは違うものだと、会って改めて理解したからだ。

テンカワアキトがあの人でないのと同じに、ホシノルリもあの女ではない。

両者は、やはり違う存在なのだ。

その実感を得られたというだけでも、火星を出てここまで来た甲斐があったと思った。

そのまま、特に言葉を交わすことなく勝負は始まった。

何回戦か行われた勝負だったが、結果は全て私の圧勝だった。

ぐうの音も出ずに黙り込む研究員達よりも、

っとショックを受けているのは、ホシノルリ本人だろう。

私からすれば私が勝って当然の勝負なのだが、ホシノルリはそうは思っていなかったようだ。

別に、ホシノルリに力がないという訳じゃない。

ホシノルリという成功例を超えるべくデザインされ、

何年もの訓練とそして幾多の実戦を潜って来た私とは、

純粋に力の差があったというだけのことだ。

まあ、私も小娘ごときに遅れを取るものか、と持てる限界の力で挑んで いたけれど。

そして私の圧勝の結果を受けて、トゥリアが研究との交渉に入る。

私は横から口を挟まずに、そのまま黙って見ているだけだった。

この場ではトゥリアがアレの代理人という事になっているからだ。

中々首を縦に振らない研究所の代表に、トゥリアはストレートに金額を表示する。

『共同研究活動費として用意いたしましょう』

そう付け加えられた言葉に代表の表情が変わる。

次に映し出すのは幾つかのグラフ。

よくよく見てみると先ほどの私とホシノルリとの勝負のデータの様だ。

『我々は開かれた研究機関を目指してましてね』

とトゥリアの作る老執事が続けたところで、勝負あったようだ。

先ほどまで渋っていた代表が態度を変えたのだ。

 

「ぜ、是非、共同研究を」

 

代表は多少どもりながらも。トゥリアの老執事にそう申し出てくる。

 

「ふむ、ありがたい申し出ですな。こちらこそ、よしなに」

 

と笑みを浮かべ大きく頷くトゥリアの老執事。

 

「他の研究も忙しいでしょうし、

 彼女の身の回りの世話などは全てこちらに任せていただきます。

 勿論、滞在費用などといった事は申しません。

 ああ、先ほどの提示した共同研究活動費も早急に用意させましょう。

 それと、共同研究のデータは公開いたしません。

 我々はともかく、色々とお困りになるでしょうからね。

 良き協力関係を築いて行きたいものですな」

 

内容を再確認しつつ、最後に釘を刺すトゥリア。

暗に、裏切ったら……と言っている。

研究所の代表は引きつった笑顔でそれに答えていた。

こうしてホシノルリは私達の元へと来ることが決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


善は急げ。

というわけでも無いのだが、

翌日にはホシノルリは私達の元へと引き渡されることになった。

小さめのスーツケースを一つだけ持たされたホシノルリを連れ、私達は研究所を後にする。

思い通りに行った事に、分が良かった所為で見逃していた、ホシノルリの異変にようやく気が付く私。

それは、防弾仕様の黒塗りの車に乗り込んで30分も経った頃のことだった。

私は自分が抜けていた事を思い知り、ショックを受けた。

きっと、こんなことでは私の目的を達せられない。

もっと気を引き締め無ければ。

そう決意を新にし、私はホシノルリに話しかける。

 

「どうしたの、ホシノルリ、目が赤い。

 そういった病気だとは、報告されていないけれど?」

 

私の言葉どおりに、瞳を充血させたホシノルリは一瞬ビクッとして、何も答えずに俯いてしまった。

しばらくそのまま、ホシノルリからの答えを待っていたのだが、

彼女は何も答えることなく、ずっと俯いたままだった。

ただ、その頬を伝ったしずくが、膝の上で握り締められた手の甲へと落ちるのみ。

つまり、ホシノルリは声を押し殺して泣いていたのだ。

なぜだろうか?

 

「どうしたの、ホシノルリ。なぜ、泣いているの?」

 

私にはまるで解らないその理由を聞いてみる。

が、ホシノルリは俯いたままで何も答えてはくれない。

正直、困った。

こういう時には、口が良く回るトゥリアなら、きっといい対応が出来るはずなのに。

そう思ってトゥリアが居るであろうアレの方へと私は視線を向ける。

そこに写しだされた老執事は、

いつも私をからかう時のようにニヤニヤ笑いを浮かべてこちらを向いていた。

後でネチネチと苛めてやろう。

そう思いトゥリアを苛めるネタを考え出した頃。

ホシノルリがぼそぼそと呟き始めた。

 

「私はもう要らないんでしょうか?」

 

細いその声は、確かに私の耳には届いていた。

けれど、私は問いかけに答えることが出来ない。

それはホシノルリの言葉が足りない所為で、彼女の言うことが良く理解できなかったからだ。

その言葉のみで、ホシノルリの心情を察する能力が私に無い所為でもあるけれど。

 

「アナタに負けてしまった私には、もう価値が無いのですね」

 

瞳から零れ落ちる涙を拭きもせず、私を見るホシノルリ。

私はようやく彼女の言わんとすることを理解した。

 

「だから、私は捨てられたんですね?」

 

そう続けるホシノルリの言葉に、私は狭い車内で立ち上がり、

彼女の胸倉を掴み引き寄せると、その頬を張り飛ばした。

手加減はしたのだが、それでもホシノルリにとっては痛かったのか、

叩かれた頬を押さえ、ホシノルリが私に恨みがましそうな視線を向けてくる。

なるほど、痛みに対する耐性はそんなに無いのか。

やはり世界で最初の成功例は、大事に取り扱われていたのだろう。

それ故に、彼女は現実と言うものをあまり知らない。

だから私は、その視線を正面から受け止めて、

その思い上がりにも似たホシノルリの言葉を、否定する事にした。

 

「あなたには、本当に不要となった実験体の末路が解ってない。

 それなのに知った風なことを言わないで」

 

ホシノルリに向けた自分の言葉に、思い出すのは随分と前の光景。

私がまだ番号で呼ばれていた頃のことだ。

同じように番号で呼ばれていた存在がどうなったのか?

その末路を知りたければ、その辺のスナッフムービーを見れば良い。

そこに写しだされているのとだいたい同じような結末が、

不要の烙印を押されたものの結末なのだ。

私の言葉が響いたのか、ホシノルリは再び黙り込み俯いてしまった。

少し、失敗したのかもしれない。

そう思いながらも、私は口を開く。

 

「ごめんなさい、暴力を振るった事は謝るわ。

 だからと言って、さっきの言葉を取り消すつもりはない。

 でも、ホシノルリ、これだけは覚えておいて。

 貴方をこうして引き取ったのは、貴方が必要だからよ。

 ほかの誰でもない貴方を、私達は必要としたの。

 それは嘘偽り無い、事実よ」

 

更にそう続けた私の言葉に、

ホシノルリは一瞬視線を上げて私と目を合わせ、

そしてまた先ほどと同じように俯いていしまった。

その様子に、やはり失敗したのだと、私は一つため息を吐く。

そのまま視線を外へと投げかけることにした。

まあ良い。

ウソを吐いたつもりはないし、

ホシノルリがそれを受け入れるかどうかは当人の問題だ。

尤も、どう取られようとも私達には関係が無い。

ただ、ナデシコCの鍵としての役割は果たしてもらうだけだ。

思考を落ち着かせた私は外の流れる景色へと向けていた視線をホシノルリへと戻す。

いつからか私の方を見ていたホシノルリと視線が合い、ホシノルリは慌てて私から視線をそらした。

 

「何?」

 

そのホシノルリの態度に疑問を抱いた私はストレートにそう聞いていた。

 

「いえ、何でもありません」

 

視線を伏せたまま、相変わらず細い声で答えるホシノルリ、

 

「言いたいことがあるのなら、言いなさい。怒らないから、…多分だけど」

 

言っている途中で、先ほどホシノルリを叩いてしまったことを思い出し、

最後にそうフォローする私。

自分で言っていて説得力が欠けていると思った。

 

「いえ、本当に何でも無いんです」

 

と、やはりホシノルリからは要を得ない答えが返ってきた。

どうにも上手くいっていない気がする。

そう考えた私は一つの事に気がついた。

私がホシノルリのように自分より幼い人物と、こうして挨拶以外に長く話すのが始めてだということ。

ということは今まで火星で交流した経験だけでは、通じない部分というものがあるのかも知れない。

何処をどう変えれば良いのか?

私は己の行為を振り返りながら、自分の内へと没頭してゆく。

時折私へと視線を向けてはそらす、ホシノルリの態度を少しだけ気にしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホシノルリの確保を終えた私達は、

先に買い取っていた都市部にあるビルの一角に、地球上の拠点を設けることにした。

地球で買い揃えた端末とコンピューター類、そして火星から持ち込んだ幾ばくかの機器。

小1時間ほどかけて、それらのセッティングを終えて、

ホテルで待機させているホシノルリと合流することにした。

そしてその足で来た時と同じように特別便を使い火星へ戻る。

その移動時間を使い、ホシノルリとこれからの事に付いて話をすることにした。

ホシノルリがアレの養女となること。

そしてアレの火星における立場。

それ故にアレを人前ではお義父様と呼ぶこと。

アレ自体は生かされているだけの存在であり、

実質的にはトゥリアと私が執務関係などを行っていること。

おおよそ、そこまで話を進めたところで、ホシノルリが疑問をはさんできた。

 

「あの、私と貴方の関係はどうなるのですか?」

 

どうなると聞かれて私ははたと考えた。

火星政府への登録では、私もアレの養女という事になっている。

ということは、同じ養女である私とホシノルリは姉妹になるということだ。

 

「どうやら、私達は姉妹になるらしい」


「姉妹…ですか?」

 

私の言葉にピンときていない様子のホシノルリ。

勿論、言った私だって、

ホシノルリと姉妹だということが、どういうことなのか理解は出来てない。

正確に言えば、大した感慨もなかった。

比較対象があまり無いのだが、仮にホシノルリでなく、あの女と姉妹になったと想定すると…。

うん、どうやらこの状況は割りと良好なものなのだ、と理解した。

 

「ホシノルリ、良く解らないのは私も同じ。

 ただ、これからは姉妹なのだから、仲良くしよう」

 

私はホシノルリにそう提案する。

兄弟姉妹が不仲であるのは、他から見てて気分が良いものではない。

前に色々と調べた人間関係の資料がそう語っている。

ましてや、成年に達していない私達が、

嫌悪し合っているのは、かなりの違和感を相手に与えるだろう。

それは他人に悪印象を与えることに繋がるし、悪印象をを与えることは、

アレの持つ組織の実質的トップに居る私達にとって、マイナス方向にしか作用しない。

それによって計画に支障が出る可能性は低いだろうが、余計な火種を作る必要が無いのも事実だ。

 

「そうですね、仲良くしましょう、お姉様」

 

そんなことを考えていた所為で、ホシノルリが発した言葉をそのまま聞き流しそうになった。

今、ホシノルリが、物凄く違和感のある呼び名で、私を呼んだ気がする。

 

「どうしたのです、お姉様?眉間に皺が寄ってますよ?」

 

私の表情の変化に対する首を傾げたホシノルリの言葉。

ああ、そうだ。

私をお姉様と呼んだ事が引っかかったんだ。

 

「ホシノルリ、どうして私を『お姉様』と呼ぶの?」

 

恐らく眉間に皺を寄せたまま、私はホシノルリに聞き返す。

 

「違いますよ、お姉様。

 私達は姉妹なのですから、ルリと呼んでくれないとダメです。

 あと、お姉様がお姉様なのは、

 あちらがお義父様ですから、お姉様なんですけれど、違いましたか?」

 

私の問いかけに答えるホシノルリの、いや、ルリの答えは、もっともなモノだった。

私とルリが姉妹だとすると、ルリが妹で、私が姉なのは当然のことだ。

そしてアレがお義父様なのだから、私はお姉様になる。

至極もっともな理由であり、そこに思い至らない自分は、やはり色々と足りないのだと思った。

 

「いえ、正解よ、ルリ。

 でも人前でなく、普段に私を呼ぶのならラピスで良い。

 私は様付けで呼ばれる程、良いモノじゃない」

 

その言葉の通りに私の違和感はそこにあった。

アレの養女として振舞っている時ならともかく、

普段の私は様付けで呼ばれていいモノではない。

なにせ、人として生きることですら、出来ているのかあやふやなのだから。

 

「でも、私、呼び方を上手く使い分けるなんて出来ないと思います。

 普段からお姉様じゃダメですか?」

 

少し伏目がちに続けられるルリの言葉もまた、良く理解できるものだった。

私が慣れればいいだけで、無理やり強要しなければならないほどの事でないのも確かだ。

それに、呼び方が統一されていた方が、効率的なのも間違い無い。

 

「ルリ、アナタの好きにしていい。私もアナタをルリと呼ぶから」

 

ルリにあわせてという訳でも無いが、私も彼女を常にルリと呼ぶことにした。

 

「はい、お姉様」

 

そうして続けた私の言葉にルリが大きく頷いて答えてくる。

こうして私とホシノルリは、『ルリ』、『お姉様』と呼び合うことになった。

ただ私は、随分と奇妙な事になったものだと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルリを連れて、私達は火星へと戻った。

私が居なくても、トゥリアの一部が管理しているプラントやら組織やらに何の影響もなく、

これといった問題が起きたふうでもなかった。

そう思っていたのだが、火星当局に再び動きがあったと、

火星政府のマザーコンピュータに巣食っているトゥリアの一部から報告があった。

どうやら、ルリ連れ帰っている事が原因らしい。

今までのアレの行動パターンからすると、飽きるまで一人に固執し、

前のを処分してから次の獲物に手を出してというパターンだった。

今回はそのパターンが崩れ、私とルリの二人を同時にという事で当局も注目しているようだ。

目立つような表立った動きは無いけれど、投入される捜査員が倍増されたということだった。

ある意味、これはチャンスなのかも知れないと私は思った。

アレが心変わりし、慈善を心がけるようになったと印象付けるにはいい機会なのかもしれない。

ただでさえこちらには探られたくない腹がある。

物理的に大容量を閉めるユーチャリスやら、そのドッグやら、その他兵器製造関係諸々。

政治的な発言力が強くなっているとはいえ、現時点で当局に見つかるのは問題だろう。

いや、逆に発言力があるからこそ問題なのかもしれない。

 

『まあ、いざとなれば個人用のクルーザーと言うことで誤魔化しますよ。

 今の火星の技術レベルでユーチャリスの武装を理解出来ないでしょうからね』

 

とはトゥリアの弁。

けど私は、余計なリスクを背負い込むことは避けたかった。

今はただ水面下でのみ、事を進めるべきだと考えたのだ。

とは言え、戦力の充実は急務であることには違いが無かった。

そして火星に着いて三日後、私達はルリをナデシコCへと連れて行く事にした。

 

「何も言わずに着いて来て」

 

その私の言葉を守ったのか、ルリは何も言わず、先導されるままに私達の後を付いてきた。

工場に偽装されたドッグに固定されているユーチャリスや、

乗り込んだユーチャリスがドッグから飛び立つのには、目を見開いて驚いていたけれど、

私に何か言いたげな視線を投げかけるだけで、決して口を開こうとしなかった。

 

「ルリ、システムを起動させて」

 

ナデシコCのブリッジに再び来ていた私達は、メインシートにルリを座らせ、そう促した。

そして自分はサブシートに座り、トゥリアと共にオモイカネ掌握のタイミングを計っていた。

初めて触るであろうオモイカネというシステムを、

おっかなびっくりながらも、ゆっくりと立ち上げていくルリ。

私の時とは違い、時間こそかかっていたが、ルリはオモイカネの起動に成功する。

 

「お帰りなさい、ル……リ?」

 

ルリの前にウインドウが開かれそんな文字が表示される。

その瞬間、私とトゥリアはサブシートからオモイカネの制圧に乗り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バタンキュー』

そして30秒後、オモイカネはその抵抗も空しく私達の軍門に下ることになった。

ここまで簡単だったのは、

途中、オモイカネが訳の解っていないルリに助けを求めた所為でもあるのだろう。

思わぬところで、ルリを連れて来た効果があったようだ。

 

「あの、お姉様?

 この後はどうすれば良いのですか?

 さっきから反応が無いみたいですし…」

 

メインシートに座ったままのルリが、首を傾げてそう聞いてくる。

反応が無いのは当然で、私とトゥリアがオモイカネを落とした所為だからだ。

 

「もう十分よ、アナタは十分に役に立ったわ」

 

ナデシコCの起動、そして予期せぬ形でのオモイカネ制圧への助力。

言葉の通りにルリは十分に役にたった。

わざわざ火星まで引っ張ってきた甲斐があったというものだ。

後は、トゥリアがオモイカネからデータを引き上げ、ナデシコC本体の回収をすれば事は完了だ。

ナデシコCはパーツごとにばらしての回収になるので時間がかかりそうだったが。

私はトゥリアに指示し、ルリの座るメイン側に展開している端末を終了させる。

 

「そうですか、私、お姉様の役に立てたんですね。良かった」

 

IFSの端末から手を離し、その手を胸に当てたルリの言葉。

その表情はほっとした様にも、そして喜んでいるようにも見える。

私には良く理解できる感情だ。

私だってあの人に良くやったと言われた時は、随分と心が弾んだのだから。

そして手持ち無沙汰になったルリは、サブシートで作業をしている私の方へと視線を向けてくる。

何が嬉しいのか知らないが、その表情には喜色を浮かべてだった。

目的の作業も終わって、後はトゥリアに任せるだけとなり、

私も目の前の端末を終了させることにした。

端末を終わらせながら、少しだけ気になった事をルリに訊ねることにした。

 

「ルリ、聞くなといった私が訊くのも変なのだけれど、

 どうしてアナタは何も訊かないの?」

 

私にはルリの考えがイマイチ理解できていなかった。

共感する部分というのは確かにあるのだけれど、それでも理解できない部分も多い。

もちろん、完全にルリの事を理解できるとは思っていない。

でも、比較的身近に居るルリの事を解っていても、損は無いはずだ。

 

「もちろん、お姉様に言われたというのはありますけど、

 私にはきっと知る必要の無いことだと考えたんです。

 私は数日間しかお姉様の事を見ていませんけれど、

 それでも、お姉様のことは少しだけ解った気がするんです。

 お姉様は必要な事しか言わない人なんだなって。

 だからお姉様が何も言わない以上、私には必要の無い事だって思ったんです。」

 

私の問いかけに、正直予想外の答をだしてきたルリ。

ただその答えは間違いだと私は思った。

私は必要なことしか言わないのでは無く、必要な事しかいえないのだ。

経験の足りない私には、所謂日常会話というものが人並みにですら出来ない。

その場しのぎの誤魔化しなら覚えたが、何気ない会話というのが苦手なのだ。

私に出来るのは精々トゥリアと言い合うことぐらいだろう。

どうやら、ルリは完全に勘違いしているらしい。

けれど私はそれを訂正する気はなかった。

酷く悪印象を与えていない事がわかれば、あとはどうでも良いことだからだ。

 

「ルリ、私の方も終わったわ。屋敷に帰りましょう?」


「はい、お姉様」

 

端末の終了処理が終わったところで私はルリに提案し、ルリのまたそれを二つ返事で返してくる。

まだトゥリアが作業中ではあるのだが、私達はナデシコCを後にすることにした。








 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、お姉様、訓練とかしなくて良いんですか?」

 

火星に来てから1月も経ち、

ここでの生活にも慣れてきたであろうルリが、訊き難そうに私に訊ねてきた。

そうやって訊かれてようやく、ルリが共同研究という名目で火星に来ていることを思い出した。

もちろん、そんなものはトゥリアのでっち上げで、嘘っぱちでしかないのだが。

でも、ルリの言うことには一理在った。

日常的にはIFSを使ってはいたが、

戦闘状態のような、ある意味極限状態での使用は、しばらくしていない。

つい先日ナデシコCのメインシステムの回収も終わったことだし、幸い私にはルリという訓練相手もいる。

そろそろ、開戦に向けての訓練を始めても良い頃合なのかもしれない。

2195年の10月には、戦争が始まるのだから。

 

「そうね、ルリ、今日は訓練をすることにしましょう。

 私は少し準備が在るから、ルリは先に『温室』に行っていて」

 

ルリの言葉にしばらく考えた私は、そう結論を出した。

もちろんここで言う『温室』は、普通の温室を指すのではない。

ユーチャリスやナデシコCが係留してある工場に偽装した隠しドッグを指していた。

 

「『温室』…ですね?

 解りました、先に行ってます。

 でもなるべく早く来てくださいね、お姉様」

 

不可思議には思ったのだろうけど、

ルリは首を傾げながらもそう言い残し、温室へと向かい部屋から出て行った。

その背を見送り扉が閉まったところで、私はトゥリアを呼び出した。

 

「トゥリア、今からルリにオモイカネを扱わせる心算だけれど、危険性はあると思う?」

 

私はトゥリアの表示している老執事向けてそう訊ねる。

危険性というのは私達の計画の障害となる危険性だ。

IFSを用いたルリの操作の上手さは、行動を共にしていた私には良く解っている。

ルリのIFSの操作に付いては全く危険性は無いとすら認識していた。

 

「反逆のという意味でしたら、極めて低い確率になりましょう。

 暴走も、まあ、よほどのことが無い限り大丈夫でしょうな。

 その辺は貴女次第だと私は考えますよ、ラピス」

 

私はトゥリアのその答えに首を傾げる。

一体どういう意味なのだろうか?

私の態度で、ルリが考えを変えるということなのか?

 

「ラピス、貴女、気が付いて……。

 まあい、良いでしょう、その辺は当人同士の問題ですし。

 要するに今と同じ接し方をしていれば、大丈夫だろうということです」

 

トゥリアが続けた言葉に私はもう一度首を傾げることになったけれど、

とにかく、今まで通りで良いというのなら何の問題も無い。

 

「わかった、それなら良い、そろそろ『温室』に行くわ。

 あんまりルリを待たせるのも、非効率なだけだもの」

 

私はそうトゥリアに告げて、温室へと向かうことにした。

トゥリアの言葉が理解できないことや、その考えが良く解らないのは何時もの事だ。

本当に計画に支障が出そうな問題があるのなら、トゥリアから警告が入るはず。

それならば、今はまず行動することが優先だと、私は考える。

大勢に影響を与えないような細事で悩んでいられる程、私達には時間的な余裕がないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルリとオモイカネ(4番目になるはずだ)との2回目のコンタクトは上手く行っているようだった。

オモイカネはデータをかなり抜かれているはずなのに、

それなりに良い連携をするものだ、と私は関心させられた。

さすが、ホシノルリの為に調整されたオモイカネだけのことはある。

ちなみにトゥリアは、私の為に調整されているわけではない。

あくまで、あの人のサポートの為に作られているので、

その在り様からして、オモイカネとは違うのだ。

どちらが優れているという訳ではなく、その性能の生かし方が違うのだ。

トゥリアはAIとしての独立性が高く、独自の判断をもってあの人のサポートをしてきた。

私がユーチャリスのトリガーを握っていたとはいえ、

状況判断の多くは、あの人かトゥリアが行っていたのだ。

そんな風に独立性が高い故に、トゥリアはよく私をからかうのだが…。

一方のルリとオモイカネの間に築かれているのは、完全な主従関係だ。

もちろんルリが主人で、オモイカネは召使い。

基本的にはルリの言葉に、オモイカネは逆らわないだろうし、

もし反対するにせよ、よほどの理由が在っての事になるはずだ。

トゥリアと違い、初代のオモイカネの影響を色濃く受け継いでいる所為でもある。

そしてトゥリアのように、オモイカネがルリをからかう事は無いだろう。

ある意味、オモイカネはルリを恐れているのだから。

私とトゥリア、ルリとオモイカネ。

それぞれに組んで訓練は開始された。

それぞれのAIの違いはあるにせよ、実体験の差からして、

数回行われた模擬戦では、私とトゥリアに負けはつかなった。

ただ、ルリとオモイカネの上達速度は驚くべきもので、

そう遠くない未来に、追い抜かれるのは必至だと思った。

休憩を挟んで4時間ほどのトレーニングを終え、

私達はアレの屋敷に帰ることにした。

ナデシコC以外の端末を持たないオモイカネは置き去りだったけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その帰り道、ルリが戸惑いながらも私に声をかけてくる。

 

「あの、お姉様、聞きたいことがあるんですけど…」

 

こちらを、ちらちらと伺いながらのルリの言葉に、私は頷いて返すことで先を促す。

 

「あのオモイカネは戦艦のAIですよね?

 今さっきやった訓練も、ハッキングこそメインですが、戦艦同士の戦闘訓練ですし…。

 お姉様は、一体何をするつもりなんですか?」

 

ルリの口から出てきた質問は、何時かは訊かれるだろうと思っていたものだった。

ルリが文句の一つも言わずに私を手伝うのは、

きっと、火星に連れてこられた以上、仕方が無い事だと考えているのだとは解ってる。

私の手伝いを仕方がなくやることと、

その行為が何を目指しているのかを知りたいと思うことは、全くの別問題だ。

もちろん私が何をするつもりか?という疑問に対する答えは決まっている。

ただ、それをルリに何処まで話せば良いのかは難しいところだ。

 

「ラピス、彼女を連れてくると言ったのは貴女です。

 如何するかは自分で考えなさい」

 

助けを求めた私の視線に、トゥリアは先手を取ってそう答えてくる。

このようにルリに関して、トゥリアは我関せずといた姿勢を取る事が多い。

まさかとは思うけれど、

以前のテンカワルリとホシノルリとの絡みで、苛めた事を根に持っているのだろうか?

まあ、それはどうでも良いことだけれど、

とにかく、この件に関して私は自分で結論を出さねばならないということだ。

不安げな視線を向けてくるルリに、私は何処までを話すべきなのか考える。

そして、ある意味博打にも似た結論を導き出した。

 

「きっと話が長くなるから、屋敷に戻ってから話すわ。

 ルリ、それで良い?」

 

悩んだ挙句にルリに告げたのは、少しだけ問題を先送りする言葉だった。

その言葉の通りに、移動しながら話すべきことでは無いと思ったのも確かだ。

 

「はい、お姉様」

 

単純に答えが先送りされたのだけれど、

ルリは、先ほどの不安げな表情など何処にもない笑顔で、大きく頷いて答えてくる。

それから15分後、私達はアレの屋敷に帰宅していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティーセットを用意したリビングで、先に言ったとおりに私はルリに話し始めた。

私がルリに話すと決めた内容は、これまでの全てのことだった。

これから木星トカゲと呼称される相手と戦争になること、

その木星トカゲの正体が100年前に地球圏を追放された人類であること、

私達がボソンジャンプで未来から来たことや、

そのボソンジャンプが原因で私の全てだったあの人を失ったこと、

そして私の目的があの女、

つまり未来から共にこの時代へやって来たホシノルリへの復讐であることを。

全てを話したことによって、ルリが今後私達に協力しなくなる可能性は十分に考えられた。

が、私はそれでも良いと思っていた。

私は隠し事をし続ける事が出来るほど器用ではないし、

そのうちルリにも本当の目的は知られてしまうだろう。

その段階になって離反されるより、袂を分かつのなら早めにと考えたのだ。

そもそも、ルリを引き取った本来の目的である、

ナデシコCの起動とそのシステムの回収には成功しているのだから、

ルリがいなくなったからと言って、何ら問題はない…はずだ。

ただ、あまり派手に動き回られても計画に支障が出かねないので、

しばらくはその身柄を預からせてもらうつもりでもあった。

そして私の言葉を聴いたルリは……泣いていた。

 

「ごめんなさい、お姉様、ごめんなさい…」

 

そうやって泣きながら、私に謝ってくるのだ。

なぜ?

私にはホシノルリのその行動が理解できなかった。

未来のとはいえ自分に復讐しようという相手に、謝ることなど何も無いはずだ。

 

「ルリ、どうして泣いているの?どうして私に謝るの?」

 

視線を投げかけても沈黙したままのトゥリアに嘆息し、

私はストレートにホシノルリに問いかける。

ルリは瞳を濡らしたまましゃくりあげつつも、私の問いかけに答え始める。

 

「だって……私の所為で…お姉様の……大切な人が…」

 

途切れ途切れに語られるルリの言葉。

それでもルリの言わんとしていることは解った。

ルリはあの女の行為を、自分がした行為と同一視しているのだろう。

だったら私が続けるべき言葉は決まっていた。

 

「相変わらずね、ルリ。

 思い上がるのもいい加減にして。

 これは私とあの女の問題よ。

 無関係のアナタが、さも関係者のような振りをして口を出さないで。

 それとも何?

 アナタごときが、あの人を殺したとでも言うつもりなの?」

 

怒気を含む私の言葉に泣いているルリが更に表情を歪める。

 

「そうじゃないです、でも…」

 

そう否定しつつも、言葉を続けようとするルリ。

気がつけば私はルリの胸倉を掴み上げていた。

 

「いいこと、ルリ。

 アナタはあの女じゃない。

 この火星に居たテンカワアキトが、死んでしまったあの人じゃなかったようにね。

 これ以上くだらない事を言うなら、その舌を引き抜いてやる!」

 

そう言葉にした直後、私は強烈に後悔した。

明らかに言い過ぎだ。

そう認識した瞬間、ルリの胸倉を掴んでいた手の力が抜けた。

ルリは呆然とした表情で、力なくぺたんとその場に座り込んでしまう。

そして私は自らを恥じていた。

相手は泣いて駄々をこねていた10歳の子供だ。

いくらあの人とあの女の事に触れたとは言え、自制心があまりに足りなさ過ぎる。

自分の失態にあまりにもバツが悪すぎた私は、

床に座り込んでしまたルリをまともに見ることが出来ないでいた。

ただ、今は少し時間を置こう。

そう決めた私はルリに背を向け部屋から立ち去ろうとする。

 

「ゴメン、ルリ、言い過ぎた。

 私は冷静さを欠いていたと思う。

 頭を冷やしたいから時間を置こう。

 だから少し早いけれど、今日はもう休むことにする。

 明日、また、話そう。おやすみ、ルリ」

 

そう言い捨てて私はその部屋を後にした。

いや、その部屋から逃げ出したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルリには休むといったのだが、私は自室に鍵をかけ、

最近はルリとすることが多かった仕事に手をつけていた。

傍らにはルリの様子を映し出しているウインドウ。

トゥリアを通じてリアルタイムで映し出されているものだ。

ちらちらとそのウインドウを見ながらの仕事は、ちっともはかどらない。

と同時に今こうしてルリの様子を伺っている自分が腹立たしくも思う。

けれど、これを容認したい自分もまた存在した。

感傷だと思いながらも、どうしても割り切れないのだ。

ウインドウの中ではルリが座り込んだまま泣いていた。

声を上げず、両手で顔を抑え、その下から涙だけを流して泣くのだ。

そうしてしばらく泣いていたルリだったが、やがてテーブルに伏したまま動かなくなった。

トゥリアに確認させたけど呼吸も脈拍も少し低めだが正常で、

泣きつかれて寝入っただけということだった。

そして私は自室を出て、ルリの居る部屋へ向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、定例のトレーニングを終えた私は、

シャワー室で掻いた汗を流し、何時ものように食堂へと向かった。

食堂で私より先にテーブルに付いていたのは、アレとそしてルリだった。

アレについては正直食事の必要性が無いのだが、

『偽装とは言え家族は一緒に食事を取るものです』

とトゥリアに強弁されアレと共に食事をという状態に至っている。

そして、昨日のことなど無かったかのように朝食は進む。

アレは元よりしゃべらないし、私も最低限度しか口を開かない。

そいてルリも似たようなものだった。

一番多く話すのはトゥリアで、それも昨日現在の報告をしてくるだけだ。

何時もと変わらぬ、静かな朝食も終わり、次の行動に移る前に食休みをしていた。

 

「お姉様、ごめんなさい」

 

食後のお茶を飲んでいる私の側まで来たルリが、そう言いながら頭を下げた。

反射的に手を上げかかったけれど、何とか自制して私はルリの次の言葉を待つ。

 

「昨日の私、随分と勝手な事を言ってました。

 お姉様がどんな風に考えて、私に話をしてくれてたかなんて、全然気がつけなくって。

 だから、その、ごめんなさい」

 

そう言って再度頭を深く下げるルリ。

危なかった。

ルリは昨日の自分の行動について謝っているのだ。

勘違いで、手を出してしまうところだった。

ただ、気になることも、ルリの言葉にはあった。

昨日は、ええいままよ、とあまり深く考えずにルリに全てを話したのだが、

ルリの中では、私はどういう考えで話したことになっているのだろうか?

まあ、良い、勘違いだろうと、そう悪くは取られてないはずだ。

そして、私は振り上げた手を誤魔化すように、そっとルリの頭に乗せる。

 

「解ってくれれば良いの。私はもう気にしてないから」

 

ルリの頭に置いた手で、軽く撫でつけながらそう続ける私。

正直に言って、多少の嘘が混じった言葉だった。

 

「はい、ありがとうございます、お姉様」

 

が、ルリはその言葉を信じたようで、そうやって大きく頷いて返してくる。

そして、私は昨日の話の続きをする事にした。

先送りしても良いものとは思えないし、私達には限られた時間しか残ってないからだ。

 

「さて、ルリ、私の状況は昨日話した通りよ。

 私とトゥリアはその為に色々と行動している。

 アナタを火星に連れてきたのもその一環でしかない。

 それで、ホシノルリ、アナタは如何するの?」

 

私はルリの目をじっと見つめそう問いかける。

私達の予定にあったホシノルリの役割はもう終わっていた。

ナデシコCのシステムは無事私達の手に落ちたし、船体の回収も順調だ。

確かにルリがいれば、私に掛かる負担は減るし、それは良い事だ。

逆に、どうしてもルリがいなくてはならない理由も無い。

強いてあげるのなら、

火星政府に対し、アレの正確が変わった様に見せかけるカモフラージュの為ぐらいだろう。

あとは従前どおりに、私達だけでも計画は進められるのだ。

だが、ルリからは意外な答えが返ってきた。

 

「違いますよ、お姉様。

 私達は姉妹なんですから、ルリと呼んでくれないとダメです。

 それと、私はお姉様のお手伝いがしたいです。

 お姉様にやるべき事が在ると言うのなら、私はお姉様に協力します。

 だからこれからも、私達は姉妹で、一緒に居たいです」

 

私の視線を正面から受け止め、堂々とそう返してくるルリ。

その表情には何の迷いも無く、ルリが本心からそう思っているのだと私は理解した。

 

「私の手伝いをするということは、

 自分への復讐を、如いては自分を殺す手伝いをするということよ。

 それでも良いの?」

 

恐らく一番ネックになるであろう部分を、私はルリに問いかける。

 

「かまいません。

 その人は私じゃありませんから。

 昨日、お姉様もそう言ってましたよね?」

 

ルリはそう意思を示し、逆に聞き返してくる。

確かにその通りだ。

私が昨日ルリにそう言ったばかりではないか。

 

「ええ、その通りね。

 解ったわ、ルリ、アナタにはこれからも協力してもらうわ。

 ただし、これだけは覚えておいて。

 もしアナタが、私の障害となって立ち塞がるなら、

 私は躊躇わずにアナタを排除するわ、良いわね?」

 

改めてルリを見て、そう告げる私。

この場合、見ると言うよりも、睨みつけるの方が正しいだろう。

 

「はい、解りました、お姉様」

 

けど私のその行為は無駄だったかのように、ルリは私の視線に笑顔で答えてくる。

本当に解っているのだろうか、この娘は?

私の中に、大きな疑問と不安が残るのだった。

 

 

 

 

 

続く


あとがき

今回の話は、ラピス、ルリ(オリジナル)を懐柔す、でした。

結構、強引な展開だっただけに、突っ込みどころは多々あるかと思いますが、

そこはアレです、笑って見逃してやってください。

あと、今後も読んでやっていただければ、幸いに思います。

出来れば感想などもいただけると、かなり嬉しかったりします。

ではまた。


神威さんに代理感想を依頼しました♪(感想メンバーに入ってないですが… 爆)

代理感想

ども、何故か代理感想を頼まれてしまった神威です。

では早速感想に入りましょう。

正直、この手の作品(ラピス逆行&復讐)ってのは見た事無かったので新鮮味がありますね。

割とあっさりとルリルリも懐柔されちゃいましたし、今後が気になります。

個人的に今回一番の見せ所はルリがラピスをお姉様呼ばわりした所ですね(笑)

まぁ、私自身がまだ未熟なものなので、私から見れば全体的にも良い感じだと思います。

ちと言わせて貰えれば、誤字・脱字が少し残っていたのが気になる所でした。

……あ、作品の感想になってないや。

とりあえずは、この後ラピスがどう動くかに注目したいです。


 



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